説明

塗布装置および塗布方法

【課題】塗布領域における流動性材料の塗布の終端側において流動性材料の乾燥時間が他の領域よりも短くなることを抑制する。
【解決手段】塗布装置は、基板9に向けて有機EL液を連続的に吐出する塗布ヘッド、塗布ヘッドを基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動するヘッド移動機構および基板移動機構、並びに、これらの構成を制御する制御部を備える。塗布装置では、制御部により各構成が制御されて、基板9上の塗布領域91に有機EL液が塗布されるとともに、副走査方向における塗布ヘッドの相対移動の基板9上の終端側において塗布領域91の外側の非塗布領域92に有機EL液が塗布される。これにより、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の終端側において、雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなり、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に流動性材料を塗布する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)上にレジスト液等の流動性材料を塗布する装置として、特許文献1ないし3に開示されているように、流動性材料を連続的に吐出するノズルを基板上で走査することにより、基板の主面全域に対して互いに接触する複数の平行線状に流動性材料を塗布する塗布装置が知られている。
【0003】
このような塗布装置により流動性材料が塗布された基板では、基板上の流動性材料の膜厚の均一性が低下してしまうことがある。また、基板上に塗布された流動性材料が順次乾燥していくことにより、後から塗布された流動性材料が先に塗布されて乾燥が進行している部位に引っ張られて膜厚の均一性が低下してしまうこともある。このため、流動性材料の膜厚の均一性を向上するための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、レジスト塗布装置により塗布液が塗布された基板を、レジスト塗布装置とは別に設けられた溶剤雰囲気装置において塗布液の溶剤雰囲気に曝すことにより、溶剤を塗布液表面に付着させて塗布液表面の粘性を低下させ、その後、基板が収容されている容器内に気流を形成して当該気流により塗布液の表面を平坦化する技術が開示されている。特許文献1では、また、塗布液が塗布された基板が収容されている容器内を加圧することにより塗布液の揮発を抑制する技術も開示されている。
【0005】
特許文献2の塗布成膜装置では、基板の上方2mm以内の位置に乾燥防止板を設け、当該乾燥防止板に形成された直線状の隙間において、絶縁膜用の塗布液を吐出するノズルを基板に対して走査することにより、基板上に一様に塗布液が塗布される。これにより、基板と乾燥防止板との間に高濃度の溶剤雰囲気が形成され、基板に塗布された塗布液の乾燥が抑制される。また、特許文献3の塗布膜レベリング装置では、塗布液が塗布された基板を容器内に収容し、当該容器内に溶剤蒸気を供給することにより塗布膜中の溶剤の揮発が抑制される。
【特許文献1】特開2003−17402号公報
【特許文献2】特開2005−13787号公報
【特許文献3】特開2005−13804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、流動性材料を吐出するノズルを走査することにより基板に流動性材料を塗布する塗布装置は、平面表示装置用の基板に対して画素形成材料を含む流動性材料を塗布する際にも利用されている。典型的な例では、流動性材料は基板上に形成された隔壁間に塗布され、これにより、流動性材料は所定のピッチにて配列されるストライプ状に塗布される。
【0007】
基板上では、流動性材料の各ラインから溶媒成分が蒸発し、これらのラインが塗布された順に乾燥していく。流動性材料は、乾燥するまでの間に画素形成材料が十分に分散して基板上に均一に定着するが、塗布から乾燥終了までの時間が短いと、画素形成材料の分散の程度が他の領域と異なる状態で流動性材料の乾燥が終了してしまうこととなる。
【0008】
基板上の塗布の開始端側および終端側では、塗布領域の中央部に比べて、周囲の流動性材料から蒸発する溶媒成分の量が少ないため、雰囲気中の溶媒成分の濃度が低くなる。このため、流動性材料の乾燥時間が他の領域に比べて短くなり、画素形成材料の分散状態が中央部と異なってしまう恐れがある。
【0009】
特に、塗布領域の終端側において最も外側に塗布されたラインは、一方側に他のラインが存在しないため、内側の他のラインよりも早く乾燥してしまう。また、外側から2番目のラインも、それよりも内側のラインよりも早く乾燥してしまう場合がある。このように、塗布した順序とは異なる順序でラインが乾燥した場合、隣接するライン間で塗布の質が大きく異なってしまい、塗布ムラとなってしまう。そして、このような乾燥時間のばらつきに起因する塗布ムラは、製品となった後の平面表示装置において、表示機能の低下として現れる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、塗布領域における流動性材料の塗布の少なくとも終端側において流動性材料の乾燥時間が他の領域よりも短くなることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板に向けて第1流動性材料および前記第1流動性材料の溶媒を含む第2流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、前記吐出機構を前記基板の主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記吐出機構を前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記吐出機構および前記移動機構を制御することにより、前記基板上の塗布領域に前記第1流動性材料を塗布するとともに、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料を塗布する制御部とを備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗布装置であって、前記第1流動性材料と前記第2流動性材料とが同一種類である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の塗布装置であって、前記第1流動性材料および前記第2流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含む。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の塗布装置であって、前記第1流動性材料が平面表示装置用の画素形成材料および前記溶媒を含み、前記第2流動性材料が前記溶媒である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、前記吐出機構が、前記塗布領域に向けて前記第1流動性材料を吐出するとともに前記非塗布領域に向けて前記第2流動性材料を吐出するノズルを備える。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、前記吐出機構が、前記塗布領域に向けて前記第1流動性材料を吐出する第1ノズルと、前記非塗布領域に向けて前記第2流動性材料を吐出する第2ノズルとを備え、前記移動機構が、前記第1ノズルを移動する第1ノズル移動機構と、前記第2ノズルを前記第1ノズルとは独立して移動する第2ノズル移動機構とを備える。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の塗布装置であって、前記制御部の制御により、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側においても前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布される。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、前記基板保持部、前記吐出機構および前記移動機構を内部に収容するチャンバと、前記チャンバの内部空間に前記第1流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構とをさらに備える。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の塗布装置であって、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記第1流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給する端部ガス供給部をさらに備える。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の塗布装置であって、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記第1流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するもう1つの端部ガス供給部をさらに備える。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の塗布装置であって、前記端部ガス供給部が、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記基板保持部の主面上に形成されるとともに前記第1流動性材料の前記溶媒が貯溜される溝部である。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の塗布装置であって、前記基板の前記塗布領域において、所定のピッチにて配列されたストライプ状に前記第1流動性材料が塗布される。
【0023】
請求項13に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板の主面上の塗布領域に向けて流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、前記吐出機構を前記基板の前記主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記吐出機構を前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給する端部ガス供給部とを備える。
【0024】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の塗布装置であって、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するもう1つの端部ガス供給部をさらに備える。
【0025】
請求項15に記載の発明は、請求項13または14に記載の塗布装置であって、前記端部ガス供給部が、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記基板保持部の主面上に形成されるとともに前記流動性材料の溶媒が貯溜される溝部である。
【0026】
請求項16に記載の発明は、請求項13ないし15のいずれかに記載の塗布装置であって、前記基板保持部、前記吐出機構、前記移動機構および前記端部ガス供給部を内部に収容するチャンバと、前記チャンバの内部空間に前記流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構とをさらに備える。
【0027】
請求項17に記載の発明は、請求項13ないし16のいずれかに記載の塗布装置であって、前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料および溶媒を含む。
【0028】
請求項18に記載の発明は、請求項13ないし17のいずれかに記載の塗布装置であって、前記基板の前記塗布領域において、所定のピッチにて配列されたストライプ状に前記流動性材料が塗布される。
【0029】
請求項19に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布方法であって、a)吐出機構から基板に向けて第1流動性材料または前記第1流動性材料の溶媒を含む第2流動性材料を連続的に吐出しつつ前記吐出機構を前記基板の主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動する工程と、b)前記吐出機構を前記基板の前記主面に対して平行であって前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する工程と、c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを備え、前記a)工程ないし前記c)工程の実行により、前記基板上の塗布領域に前記第1流動性材料が塗布されるとともに、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記基板上の前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布される。
【0030】
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載の塗布方法であって、前記a)工程ないし前記c)工程の実行により、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記基板上の前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布される。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、塗布領域における第1流動性材料の塗布の終端側において、第1流動性材料の乾燥時間が他の領域よりも短くなることを抑制することができる。
【0032】
請求項2および3の発明では、塗布装置の構造を簡素化することができる。請求項4の発明では、平面表示装置の製造工程を簡素化することができる。請求項5の発明では、塗布装置の構造を簡素化することができる。請求項6の発明では、塗布作業の自由度を向上することができる。
【0033】
請求項7、10、14および20の発明では、塗布領域における第1流動性材料の塗布の開始端側においても、第1流動性材料の乾燥時間が他の領域よりも短くなることを抑制することができる。請求項8および16の発明では、第1流動性材料の乾燥時間が短くなることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置1の構成を示す平面図であり、図2は塗布装置1の右側面図である。塗布装置1は、平面表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)9に流動性材料を塗布する装置である。本実施の形態では、塗布装置1において、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板9に、有機EL材料および溶媒(例えば、メシチレン)を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される。
【0035】
図1および図2に示すように、塗布装置1は、基板9を保持する基板保持部11、および、基板保持部11を基板9の主面に対して平行な所定の方向(すなわち、図1中の左右方向であり、以下、「副走査方向」という。)に水平移動するとともに垂直方向に向く軸を中心として回転する基板移動機構12を備える。基板保持部11は、内部にヒータによる加熱機構(図示省略)を備える。
【0036】
塗布装置1は、また、基板9上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するアライメントマーク検出部13、基板保持部11上の基板9に向けて3本のノズル17から有機EL液を連続的に吐出する吐出機構である塗布ヘッド14、塗布ヘッド14を基板保持部11の移動方向である副走査方向とは垂直な方向(すなわち、図1中の上下方向であり、以下、「主走査方向」という。)に水平移動するヘッド移動機構15、塗布ヘッド14の移動方向に関して基板保持部11の両側に設けられるとともに塗布ヘッド14からの有機EL液を受ける2つの受液部16、塗布ヘッド14の3本のノズル17に同一種類の有機EL液を供給する流動性材料供給部18、および、これらの構成を制御する制御部2を備える。
【0037】
塗布装置1では、ヘッド移動機構15および基板移動機構12が、塗布ヘッド14を基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動する移動機構となる。後述するように、塗布装置1では、基板9に対する有機EL液の塗布時に、基板9が基板保持部11と共に図1中の右側から左側に向けて移動する。以下、図1中における基板9上の左側を、副走査方向における塗布ヘッド14の相対移動の基板9上の開始端側といい、基板9上の右側を、副走査方向における塗布ヘッド14の相対移動の基板9上の終端側という。
【0038】
塗布装置1では、制御部2により塗布ヘッド14が制御されて、3本のノズル17から同一種類の有機EL液が吐出される。3本のノズル17は、図1中の上下方向(すなわち、主走査方向)に略直線状に配列されるとともに図1中の左右方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置される。隣接する2本のノズル17の間の副走査方向に関する距離は、基板9の塗布領域91(図1中において破線で囲んで示す。)上に予め形成されている主走査方向に伸びる隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)の3倍に等しくされる。
【0039】
基板9の塗布領域91に有機EL液が塗布される際には、3本のノズル17から隔壁間に形成される3つの溝部に有機EL液が吐出されて塗布される。塗布装置1により有機EL液が塗布される2つの溝部の間には、他の塗布装置等により他の種類の有機EL液が塗布される2つの溝部が挟まれている。基板9では、塗布領域91の外側の領域92は、ドライバ回路の組み込みや後工程における絶縁膜による封止等に利用されるため、有機EL液が塗布されるべきではない領域であり、以下、「非塗布領域92」という。なお、非塗布領域92には隔壁は形成されていない。
【0040】
次に、塗布装置1による有機EL液の塗布の流れについて説明する。図3は、有機EL液の塗布の流れを示す図である。塗布装置1により有機EL液の塗布が行われる際には、まず、基板9が基板保持部11に載置されて保持され、アライメントマーク検出部13からの出力に基づいて基板移動機構12が駆動されて基板9が移動し、図1中に実線にて示す塗布開始位置に位置する(ステップS11)。塗布ヘッド14は予め図1および図2中に実線にて示す待機位置(すなわち、図1中の下側の受液部16の上方)に位置している。このとき、基板9の塗布領域91の図1中における左側(すなわち、副走査の開始端側)のエッジは、塗布ヘッド14の3本のノズル17よりもわずかに右側に位置する。
【0041】
続いて、制御部2により塗布ヘッド14が制御されて3本のノズル17から有機EL液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構15が制御されて塗布ヘッド14の移動が開始される。塗布装置1では、3本のノズル17から同一種類の有機EL液を基板9に向けて連続的に吐出しつつ塗布ヘッド14を図1中の下側から上側へと(すなわち、主走査方向に)移動することにより、基板9の塗布領域91の左側(すなわち、副走査の開始端側)の非塗布領域92に有機EL液がストライプ状に塗布される(ステップS12)。このとき、基板9上において隣接する有機EL液の2本のラインの間の距離は、隔壁ピッチの3倍に等しくなる。
【0042】
塗布ヘッド14が図1および図2中に二点鎖線にて示す待機位置(すなわち、図1中の上側の受液部16の上方)まで移動すると、基板移動機構12が駆動され、基板9が基板保持部11と共に図1中の左側に(すなわち、副走査方向に)隔壁ピッチの9倍に等しい距離だけ移動する(ステップS13)。このとき、塗布ヘッド14では、3本のノズル17から受液部16に向けて有機EL液が連続的に吐出されている。
【0043】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、基板9および基板保持部11が図1中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動したか否かが制御部2により確認され(ステップS14)、塗布終了位置まで移動していない場合には、ステップS12に戻って塗布ヘッド14が3本のノズル17から有機EL液を吐出しつつ図1中において上側から下側へと(すなわち、主走査方向に)移動する(ステップS12)。これにより、基板9の開始端側の非塗布領域92、および、塗布領域91の開始端側のエッジに最も近い溝部に有機EL液が塗布される。
【0044】
図4は、基板9を示す平面図である。図4に示すように、塗布装置1では、塗布ヘッド14の主走査方向における2回の移動(すなわち、1往復)により、基板9上の副走査の開始端側(すなわち、図4中における塗布領域91の左側)の非塗布領域92に5本の有機EL液のライン93が塗布され、塗布領域91の開始端側に1本の有機EL液のライン94が塗布される。非塗布領域92に塗布された有機EL液のライン93は、有機EL液の塗布終了後に除去されるため、以下、「ダミーライン93」という。塗布装置1では、図4中における塗布領域91の上下の非塗布領域92は図示省略のマスクにより覆われているため有機EL液は塗布されない。なお、図4では、図示の都合上、ダミーライン93およびライン94のピッチを実際よりも大きく描いており、また、塗布領域91の中央近傍のライン94の図示を省略している。
【0045】
次に、副走査方向における基板9の移動が再び行われて3本のノズル17が基板9の塗布領域91の図1中における下側に位置し(ステップS13)、基板9が塗布終了位置まで移動したか否かが確認される(ステップS14)。その後、基板9が塗布終了位置に位置するまで、基板9に対する3本のノズル17の主走査方向への移動が高速に繰り返し行われる毎に、副走査方向への相対移動が行われ(ステップS12〜S14)、これにより、基板9の塗布領域91において、有機EL液が所定のピッチ(すなわち、隔壁ピッチの3倍に等しいピッチ)にて配列されたストライプ状に塗布される。
【0046】
塗布装置1では、塗布領域91全体に対する有機EL液の塗布が終了した後も、基板9が塗布終了位置に位置するまで3本のノズル17の主走査および副走査が高速に繰り返されることにより、図4に示すように、基板9上の副走査の終端側(すなわち、図4中における塗布領域91の右側)の非塗布領域92にも、5本の有機EL液のダミーライン93がストライプ状に塗布される。
【0047】
そして、基板9が図1中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動すると、ノズル17からの有機EL液の吐出が停止されて基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。上述のように、基板9上の副走査の開始端側および終端側において非塗布領域92に塗布された10本のダミーライン93(図4参照)は、塗布領域91に塗布された有機EL液の乾燥工程において同様に乾燥し、ダミーライン93に含まれていた有機EL材料が非塗布領域92に残置される。非塗布領域92上の有機EL材料は、当該乾燥工程の終了後に除去される。
【0048】
以上に説明したように、塗布装置1では、塗布ヘッド14、ヘッド移動機構15および基板移動機構12が制御部2により制御されることにより、基板9上の塗布領域91に有機EL液が塗布されるとともに、副走査方向における塗布ヘッド14の相対移動の基板9上の終端側において塗布領域91の外側の非塗布領域92に有機EL液が塗布される。そして、非塗布領域92に塗布された有機EL液は、塗布領域91に塗布された有機EL液と同一種類であり、有機EL材料およびメシチレン等の溶媒(すなわち、塗布領域91に塗布された有機EL液の溶媒)を含む。
【0049】
塗布装置1による有機EL液塗布後の基板9では、副走査の終端側において、非塗布領域92に塗布された有機EL液から溶媒が蒸発することにより、周囲の雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなる。これにより、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の終端側において、有機EL液の乾燥(すなわち、溶媒成分の蒸発)が抑制され、有機EL液の乾燥時間(すなわち、有機EL液が塗布されてから乾燥終了までに要する時間)が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができる。
【0050】
特に、塗布領域91において、最も終端側のラインや当該最も終端側のラインに隣接するラインが、それ以前に塗布された近傍のラインよりも早く乾燥してしまうことを抑制することができる。その結果、塗布領域91における有機EL液の塗布の終端側において、乾燥時間のばらつきに起因する塗布ムラの発生を防止することができる。なお、ここでの塗布ムラとは、一のラインの乾燥するまでの時間が短くなって有機EL材料の分散の程度が他の領域と異なる状態で有機EL液の乾燥が終了してしまい、近傍のラインに比べて当該ラインの塗布の質が低下してしまうことにより、複数のライン全体として見た場合に発生するムラを意味する。
【0051】
塗布装置1では、また、基板9上の副走査の開始端側においても、塗布ヘッド14、ヘッド移動機構15および基板移動機構12が制御部2により制御されることにより、塗布領域91の外側の非塗布領域92に有機EL液が塗布され、塗布された有機EL液から溶媒が蒸発することにより雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなる。これにより、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の開始端側においても、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができる。
【0052】
ところで、有機EL表示装置等の平面表示装置用の基板に対する流動性材料の塗布では、塗布領域91において隣接する有機EL液のラインの間に間隙(すなわち、隔壁)が設けられるため、ライン間に間隙を設けることなく塗布された場合に比べて、各ラインが比較的乾燥しやすい。本実施の形態に係る塗布装置1では、上述のように、塗布領域91の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が短くなることを抑制することができるため、有機EL液を所定のピッチにてストライプ状に塗布する塗布装置として特に適している。
【0053】
ここで、塗布領域91に塗布される流動性材料を第1の流動性材料と捉え、非塗布領域92に塗布される流動性材料を第2の流動性材料と捉えた場合、塗布装置1では、これらの流動性材料はいずれも有機EL液であり、同一種類となる。このように、塗布装置1では1種類の流動性材料にて塗布領域91および非塗布領域92に対する塗布が行われるため、塗布装置1の構造を簡素化することができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る塗布装置1aについて説明する。図5は、塗布装置1aの構成を示す平面図である。図5に示すように、塗布装置1aは、もう1つの塗布ヘッド14a、塗布ヘッド14aを塗布ヘッド14とは独立して図5中の上下方向(すなわち、主走査方向)に移動するもう1つのヘッド移動機構15a、および、塗布ヘッド14aに流動性材料を供給するもう1つの流動性材料供給部18aを備える。以下の説明では、塗布ヘッド14および塗布ヘッド14aを区別するために、それぞれ「第1塗布ヘッド14」および「第2塗布ヘッド14a」という。また、ヘッド移動機構15およびヘッド移動機構15aをそれぞれ、「第1ヘッド移動機構15」および「第2ヘッド移動機構15a」といい、流動性材料供給部18および流動性材料供給部18aをそれぞれ、「第1流動性材料供給部18」および「第2流動性材料供給部18a」という。
【0055】
第2塗布ヘッド14aは、図5中において第1塗布ヘッド14の右側に位置するとともに2本のノズル17aを備える。以下、ノズル17およびノズル17aをそれぞれ、「第1ノズル17」および「第2ノズル17a」という。第2塗布ヘッド14aでは、2本の第2ノズル17aが、図5中の左右方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置される。塗布装置1aのその他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0056】
上記のように、塗布装置1aでは、第1ヘッド移動機構15が第1ノズル17を移動する第1ノズル移動機構となっており、第2ヘッド移動機構15aが第2ノズル17aを移動する第2ノズル移動機構となっており、第1ヘッド移動機構15、第2ヘッド移動機構15aおよび基板移動機構12が、第1ノズル17および第2ノズル17aを基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動する移動機構となっている。
【0057】
塗布装置1aでは、第1流動性材料供給部18から第1塗布ヘッド14に有機EL液(すなわち、有機EL表示装置用の有機EL材料および溶媒を含む流動性材料)が供給され、3本の第1ノズル17から基板9の塗布領域91に向けて有機EL液が吐出されて塗布される。また、第2塗布ヘッド14aには、第2流動性材料供給部18aから有機EL液の溶媒(以下、単に「溶媒」という。)が供給され、2本の第2ノズル17aから基板9の非塗布領域92に向けて溶媒が吐出されて塗布される。換言すれば、塗布装置1aでは、第1塗布ヘッド14および第2塗布ヘッド14aが第1ノズル17および第2ノズル17aを備える吐出機構となっている。本実施の形態では、基板9上の副走査の開始端側および終端側のそれぞれにおいて、非塗布領域92に4本の溶媒のダミーラインが塗布される。
【0058】
図6.Aおよび図6.Bは、塗布装置1aによる有機EL液の塗布の流れを示す図である。塗布装置1aにより有機EL液の塗布が行われる際には、まず、基板保持部11に保持された基板9が移動されて図5中に実線にて示す塗布開始位置に位置する(ステップS21)。このとき、基板9の塗布領域91の図5中における左側(すなわち、副走査の開始端側)のエッジは、第2塗布ヘッド14aの2本の第2ノズル17aよりもわずかに右側に位置する。
【0059】
基板9が塗布開始位置に位置すると、制御部2により第2塗布ヘッド14aが制御されて第2ノズル17aから溶媒の吐出が開始されるとともに、第2ヘッド移動機構15aが制御されて第2塗布ヘッド14aが図5中の下側から上側へと移動されることにより、基板9の塗布領域91の左側(すなわち、副走査の開始端側)の非塗布領域92に溶媒が2本のストライプ状に塗布される(ステップS22)。続いて、基板移動機構12により基板9が図5中の左側に(すなわち、副走査方向に)移動する(ステップS23)。
【0060】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、副走査の開始端側の非塗布領域92において溶媒のダミーラインの塗布が終了したか否かが制御部2により確認され(ステップS24)、終了していない場合には、ステップS22に戻って第2塗布ヘッド14aの主走査方向への移動と基板9の副走査方向への移動とが行われる(ステップS22,S23)。
【0061】
開始端側の非塗布領域92に対する4本のダミーラインの塗布が終了すると(ステップS24)、制御部2の制御により、第2塗布ヘッド14aにおいて第2ノズル17aからの溶媒の吐出が停止されるとともに、第1塗布ヘッド14において第1ノズル17からの有機EL液の吐出が開始される。そして、第1の実施の形態と同様に、第1塗布ヘッド14の主走査方向への移動および基板9の副走査方向への移動が行われ(ステップS25,S26)、基板9の塗布領域91に有機EL液がストライプ状に塗布される。このとき、塗布領域91において互いに隣接する有機EL液の2本のラインの間の距離は、隔壁ピッチの3倍に等しくなる。
【0062】
副走査方向における基板9の移動の後、塗布領域91全体に対する有機EL液の塗布が終了したか否かが制御部2により確認され(ステップS27)、塗布領域91全体への塗布が終了するまで第1塗布ヘッド14の主走査方向への移動と基板9の副走査方向への移動とが繰り返される(ステップS25〜S27)。
【0063】
塗布領域91全体に対する有機EL液の塗布が終了すると、制御部2の制御により、第1塗布ヘッド14において第1ノズル17からの有機EL液の吐出が停止されるとともに、第2塗布ヘッド14aにおいて第2ノズル17aからの溶媒の吐出が開始される。そして、基板9の塗布領域91の右側(すなわち、副走査の終端側)の非塗布領域92に対する溶媒の塗布が終了するまで、第2塗布ヘッド14aの主走査方向への移動と基板9の副走査方向への移動とが繰り返され(ステップS28〜S30)、副走査の終端側の非塗布領域92にも4本の溶媒のダミーラインが塗布される。
【0064】
基板9が図5中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動すると、第2ノズル17aからの溶媒の吐出が停止されて基板9に対する有機EL液(および溶媒)の塗布が終了する。基板9上の副走査の開始端側および終端側において非塗布領域92に塗布された8本のダミーラインは、塗布領域91に塗布された有機EL液の乾燥工程において自然に蒸発して基板9上から除去される。
【0065】
以上に説明したように、塗布装置1aでは、塗布領域91に対する有機EL液の塗布の前後において、基板9上の副走査の開始端側および終端側の非塗布領域92に溶媒が塗布される。これにより、第1の実施の形態と同様に、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができ、その結果、乾燥時間のばらつきに起因する塗布ムラの発生を防止することができる。
【0066】
塗布装置1aでは、特に、非塗布領域92に有機EL材料を含まない溶媒のみが塗布されるため、塗布領域91に塗布された有機EL液の乾燥工程の後に、非塗布領域92から有機EL材料を除去する必要がなく、有機EL表示装置の製造工程を簡素化することができる。
【0067】
また、塗布装置1aでは、塗布領域91への有機EL液の塗布と非塗布領域92への溶媒の塗布とを独立して行うことができるため、塗布作業の自由度を向上することができる。例えば、塗布領域91への有機EL液の塗布よりも前に、基板9上の副走査の開始端側および終端側において、溶媒のダミーラインが非塗布領域92に塗布されてもよい。塗布装置1aでは、第2塗布ヘッド14aを副走査方向に移動する移動機構が設けられ、第2塗布ヘッド14aが第1塗布ヘッド14に対して副走査方向に相対的に移動可能とされてもよい。これにより、塗布領域91に対する有機EL液の塗布と非塗布領域92に対する溶媒の塗布とを並行して行うことができるため、塗布作業の自由度をより向上することができる。
【0068】
このように、第2の実施の形態に係る塗布装置1aでは、塗布領域91および非塗布領域92への塗布作業を独立して行うことができるため、塗布領域91と非塗布領域92とで異なる種類の流動性材料(本実施の形態では、有機EL液と溶媒)を塗布する場合に特に適している。
【0069】
一方、第1の実施の形態に係る塗布装置1の塗布ヘッド14(図1参照)では、塗布領域91に向けて有機EL液を吐出して塗布するノズルと非塗布領域92に向けて有機EL液を吐出して塗布するノズルとが個別に設けられるのではなく、同一の3本のノズル17により塗布領域91および非塗布領域92の双方に有機EL液が塗布されるため、塗布装置1の構造を簡素化することができる。当該塗布ヘッド14の構造は、塗布領域91および非塗布領域92に同一種類の流動性材料を塗布する場合に特に適している。
【0070】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る塗布装置1bについて説明する。図7は、塗布装置1bの構成を示す平面図である。図7に示すように、塗布装置1bでは、基板保持部11の主面上において、基板9の左側および右側(すなわち、副走査方向における塗布ヘッド14の相対移動の基板9上における開始端側および終端側)に溝部111,112が形成される。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0071】
塗布装置1bでは、溝部111,112に有機EL液の溶媒が貯溜されており、当該溶媒が蒸発することにより、ガス化した溶媒が雰囲気中に供給される。換言すれば、溝部111,112は、基板9上の副走査の開始端側および終端側において、有機EL液の溶媒成分を含むガスを供給する2つの端部ガス供給部となっている。
【0072】
塗布装置1bでは、溝部111,112に予め溶媒が貯溜された状態で、ノズル17から有機EL液を吐出しつつ塗布ヘッド14が基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対移動されることにより、基板9の塗布領域91のみに有機EL液がストライプ状に塗布される。
【0073】
塗布装置1bでは、基板9の副走査方向の開始端側および終端側において、溝部111,112からガス化した溶媒が雰囲気中に供給されるため、周囲の雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなる。これにより、第1の実施の形態と同様に、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができ、その結果、乾燥時間のばらつきに起因する塗布ムラの発生を防止することができる。
【0074】
塗布装置1bは、第1の実施の形態と同様に、有機EL液を所定のピッチにてストライプ状に塗布する(すなわち、有機EL液の各ラインが比較的乾燥しやすい態様にて塗布される)塗布装置として特に適している。
【0075】
塗布装置1bでは、上述のように、雰囲気中への有機EL液の溶媒成分を含むガスの供給が、基板保持部11上に形成された溝部111,112に有機EL液の溶媒を貯溜することにより実現されるため、別途貯溜部を設ける場合と比べて塗布装置1bの構造を簡素化することができる。なお、溝部111,112には、溶媒に代えて溶媒を含む流動性材料(例えば、有機EL液)が貯溜されてもよい。
【0076】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る塗布装置1cについて説明する。図8は、塗布装置1cの構成を示す平面図である。図8に示すように、塗布装置1cは、図1に示す塗布装置1の構成に加えて、基板保持部11、基板移動機構12、アライメントマーク検出部13、塗布ヘッド14、ヘッド移動機構15および受液部16を内部に収容するチャンバ3、並びに、チャンバ3の内部空間に有機EL液の溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構4をさらに備える。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0077】
塗布装置1cでは、第3の実施の形態に係る塗布装置1b(図7参照)と同様に、基板保持部11の主面に有機EL液の溶媒が貯溜される溝部111,112が形成されている。溝部111,112は、チャンバ3の内部において、基板9上の副走査の開始端側および終端側にて有機EL液の溶媒成分を含むガスを供給する2つの端部ガス供給部となっている。
【0078】
塗布装置1cにより有機EL液の塗布が行われる際には、ガス供給機構4からチャンバ3の内部空間に有機EL液の溶媒成分を含むガスが供給される。また、溝部111,112に溶媒が貯溜されることにより、基板9の副走査方向の開始端側および終端側において、溝部111,112からガス化した溶媒が雰囲気中に供給される。
【0079】
塗布装置1cでは、このように雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くされた状態で、ノズル17から有機EL液を吐出しつつ塗布ヘッド14が基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対移動されることにより、第1の実施の形態と同様に、基板9上の副走査の開始端側において非塗布領域92に有機EL液のダミーラインが塗布され、塗布領域91に有機EL液がストライプ状に塗布され、さらに、基板9上の副走査の終端側において非塗布領域92に有機EL液のダミーラインが塗布される。
【0080】
塗布装置1cでは、第1の実施の形態と同様に、非塗布領域92に有機EL液のダミーラインが塗布されることにより、基板9の塗布領域91における有機EL液の塗布の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることを抑制することができる。また、第3の実施の形態と同様に、溝部111,112に貯溜された溶媒が蒸発することにより、塗布領域91の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることをより確実に抑制することができる。
【0081】
さらには、基板保持部11、基板移動機構12、塗布ヘッド14およびヘッド移動機構15等がチャンバ3の内部に収容され、基板9の塗布領域91に対する有機EL液の塗布時に、チャンバ3の内部空間に有機EL液の溶媒成分を含むガスが供給されることにより、基板9の周囲の雰囲気中における有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなる。これにより、塗布領域91に塗布された有機EL液の乾燥時間が短くなることを抑制することができる。また、塗布領域91の開始端側および終端側において、有機EL液の乾燥時間が他の領域に塗布された有機EL液の乾燥時間よりも短くなることをさらに確実に抑制することができる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0083】
例えば、第1の実施の形態に係る塗布装置1では、第2の実施の形態と同様に、非塗布領域92に対して塗布領域91とは異なる種類の流動性材料(例えば、有機EL液の溶媒)がダミーラインとして塗布されてもよい。この場合、塗布装置1では、塗布ヘッド14においてノズル17に供給する流動性材料の切り替えが行われる。あるいは、塗布ヘッド14において、非塗布領域92への塗布用のノズルがノズル17とは別に設けられてもよい。
【0084】
第1および第2の実施の形態に係る塗布装置では、塗布領域91の両側の非塗布領域92において、それぞれ4本または5本のダミーラインが塗布されるが、ダミーラインの本数は有機EL液の種類等に合わせて適宜変更されてよい。
【0085】
第3の実施の形態に係る塗布装置1bでは、制御部2により塗布ヘッド14、基板移動機構12およびヘッド移動機構15が制御されることにより、基板9上の副走査の開始端側および終端側において、非塗布領域92に有機EL液のダミーラインが塗布されてもよい。また、第2の実施の形態と同様に、塗布ヘッド14およびヘッド移動機構15とは異なるもう1組の塗布ヘッドおよびヘッド移動機構が設けられ、非塗布領域92に有機EL液の溶媒のダミーラインが塗布されてもよい。
【0086】
第3および第4の実施の形態に係る塗布装置の基板保持部11では、主走査方向に関する基板9の両側にも、有機EL液の溶媒を含む流動性材料が貯溜される溝部が形成されてよい。また、溝部111,112に代えて、当該溶媒を含む流動性材料が貯溜される貯溜槽が基板保持部11の周囲に設けられてもよい。当該貯溜槽は、基板保持部11の主面上に載置されてもよい。
【0087】
さらには、溝部111,112に代えて、基板保持部11を貫通する複数のガス供給孔が設けられ、当該ガス供給孔が基板保持部11の下面側に接続される配管を介して有機EL液の溶媒成分を含むガスを供給する供給源に接続されることにより、基板9上の副走査の開始端側および終端側において、雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くされてもよい。なお、第4の実施の形態では、ガスの供給源はチャンバ3の外部に設けられる。
【0088】
第1ないし第3の実施の形態に係る塗布装置でも、第4の実施の形態と同様に、装置の各構成を内部に収容するチャンバ、および、チャンバの内部空間に有機EL液の溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構が設けられてよい。
【0089】
上記実施の形態に係る塗布装置では、塗布ヘッド14の3本のノズル17から、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が同時に吐出されて基板9に塗布されてもよい。この場合、塗布ヘッド14では、隣接する2本のノズル17の間の副走査方向に関する距離が隔壁ピッチと等しくされる。また、塗布ヘッド14では、ノズル17の本数は必ずしも3本には限定されず、1本または2本、あるいは、4本以上のノズル17が塗布ヘッド14に設けられてもよい。上記塗布装置では、正孔輸送材料を含む流動性材料が基板9に塗布されてもよい。ここで、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0090】
上記実施の形態に係る塗布装置は、1枚の基板から複数の有機EL表示装置を製造する(いわゆる、多面取りを行う)場合にも利用できる。また、上記塗布装置は、必ずしも有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を含む流動性材料の塗布のみに利用されるわけではなく、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面表示装置用の基板に対し、着色材料や蛍光材料等の他の種類の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する場合に利用されてもよい。
【0091】
上述のように、塗布装置は、乾燥時間のばらつきに起因する塗布ムラの発生を防止することができるため、製品となった際の表示機能の低下として塗布ムラが感得されやすい平面表示装置用の画素形成材料(上記実施の形態では、有機EL表示装置用の有機EL材料)を含む流動性材料の塗布に特に適しているが、上記塗布装置は、平面表示装置用の基板や半導体基板等の様々な基板に対する様々な種類の流動性材料の塗布に利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1の実施の形態に係る塗布装置を示す平面図である。
【図2】塗布装置の右側面図である。
【図3】塗布の流れを示す図である。
【図4】基板を示す平面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る塗布装置を示す平面図である。
【図6.A】塗布の流れを示す図である。
【図6.B】塗布の流れを示す図である。
【図7】第3の実施の形態に係る塗布装置を示す平面図である。
【図8】第4の実施の形態に係る塗布装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0093】
1,1a,1b,1c 塗布装置
2 制御部
3 チャンバ
4 ガス供給機構
9 基板
11 基板保持部
12 基板移動機構
14 (第1)塗布ヘッド
14a 第2塗布ヘッド
15 (第1)ヘッド移動機構
15a 第2ヘッド移動機構
17 (第1)ノズル
17a 第2ノズル
91 塗布領域
92 非塗布領域
111,112 溝部
S11〜S14,S21〜S30 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に向けて第1流動性材料および前記第1流動性材料の溶媒を含む第2流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、
前記吐出機構を前記基板の主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記吐出機構を前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構と、
前記吐出機構および前記移動機構を制御することにより、前記基板上の塗布領域に前記第1流動性材料を塗布するとともに、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料を塗布する制御部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記第1流動性材料と前記第2流動性材料とが同一種類であることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置であって、
前記第1流動性材料および前記第2流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含むことを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記第1流動性材料が平面表示装置用の画素形成材料および前記溶媒を含み、
前記第2流動性材料が前記溶媒であることを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記吐出機構が、前記塗布領域に向けて前記第1流動性材料を吐出するとともに前記非塗布領域に向けて前記第2流動性材料を吐出するノズルを備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記吐出機構が、
前記塗布領域に向けて前記第1流動性材料を吐出する第1ノズルと、
前記非塗布領域に向けて前記第2流動性材料を吐出する第2ノズルと、
を備え、
前記移動機構が、
前記第1ノズルを移動する第1ノズル移動機構と、
前記第2ノズルを前記第1ノズルとは独立して移動する第2ノズル移動機構と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記制御部の制御により、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側においても前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布されることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記基板保持部、前記吐出機構および前記移動機構を内部に収容するチャンバと、
前記チャンバの内部空間に前記第1流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構と、
をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記第1流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給する端部ガス供給部をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
請求項9に記載の塗布装置であって、
前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記第1流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するもう1つの端部ガス供給部をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の塗布装置であって、
前記端部ガス供給部が、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記基板保持部の主面上に形成されるとともに前記第1流動性材料の前記溶媒が貯溜される溝部であることを特徴とする塗布装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記基板の前記塗布領域において、所定のピッチにて配列されたストライプ状に前記第1流動性材料が塗布されることを特徴とする塗布装置。
【請求項13】
基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板の主面上の塗布領域に向けて流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、
前記吐出機構を前記基板の前記主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記吐出機構を前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構と、
前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記流動性材料の溶媒成分を含むガスを供給する端部ガス供給部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項14】
請求項13に記載の塗布装置であって、
前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するもう1つの端部ガス供給部をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の塗布装置であって、
前記端部ガス供給部が、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の前記終端側において前記基板保持部の主面上に形成されるとともに前記流動性材料の溶媒が貯溜される溝部であることを特徴とする塗布装置。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記基板保持部、前記吐出機構、前記移動機構および前記端部ガス供給部を内部に収容するチャンバと、
前記チャンバの内部空間に前記流動性材料の前記溶媒成分を含むガスを供給するガス供給機構と、
をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料および溶媒を含むことを特徴とする塗布装置。
【請求項18】
請求項13ないし17のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記基板の前記塗布領域において、所定のピッチにて配列されたストライプ状に前記流動性材料が塗布されることを特徴とする塗布装置。
【請求項19】
基板に流動性材料を塗布する塗布方法であって、
a)吐出機構から基板に向けて第1流動性材料または前記第1流動性材料の溶媒を含む第2流動性材料を連続的に吐出しつつ前記吐出機構を前記基板の主面に対して平行な主走査方向に相対的に移動する工程と、
b)前記吐出機構を前記基板の前記主面に対して平行であって前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する工程と、
c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を備え、
前記a)工程ないし前記c)工程の実行により、前記基板上の塗布領域に前記第1流動性材料が塗布されるとともに、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の終端側において前記基板上の前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布されることを特徴とする塗布方法。
【請求項20】
請求項19に記載の塗布方法であって、
前記a)工程ないし前記c)工程の実行により、前記副走査方向における前記吐出機構の相対移動の前記基板上の開始端側において前記基板上の前記塗布領域の外側の非塗布領域に前記第2流動性材料が塗布されることを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6.A】
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【図6.B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−144240(P2007−144240A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338065(P2005−338065)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】