説明

塗布装置

【課題】基板に対する前処理後、塗布までの間に基板の表面の状態が変化するのを抑えること。
【解決手段】易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、前記液状体が塗布される前の前記基板に対して前処理を行う前処理部と、前記塗布部によって前記液状体が塗布される塗布空間と前記前処理部によって前記前処理が行われる前処理空間とを接続する接続空間を有し、前記接続空間の雰囲気が不活性ガスの雰囲気となるように調整可能に設けられた接続部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Cu、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ga、In、Ti、Znおよびこれらの組合せなどの金属と、S、Se、Te、およびこれらの組合せなどの元素カルコゲンとを含む半導体材料を用いたCIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、高い変換効率を有する太陽電池として注目されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。CIGS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として例えば上記、Cu、In、Ga、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。また、CZTS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として、例えばCu、Zn、Sn、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。このような太陽電池の構成として、例えばガラスなどからなる基板上にモリブデンなどからなる裏面電極が設けられ、当該裏面電極の上に上記光吸収層が配置される構成が知られている。
【0003】
CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて光吸収層の厚さを薄くすることができるため、曲面への設置や運搬が容易となる。このため、高性能でフレキシブルな太陽電池として、広い分野への応用が期待されている。光吸収層を形成する手法として、従来、例えば蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成する手法が知られていた(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340482号公報
【特許文献2】特開2005−51224号公報
【特許文献3】特表2009−537997号公報
【特許文献4】特開平1−231313号公報
【特許文献5】特開平11−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を液状体で基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、以下の課題が挙げられる。
【0006】
裏面電極(例えばモリブデン膜)の表面に例えば金属酸化膜などが形成されると、液状体が金属酸化膜の表面で弾かれてしまい、塗布膜が基板上に均一に形成されない場合がある。したがって、塗布膜を基板上に均一に形成するためには、下地基板に対して液状体の塗布前に酸化膜を除去する前処理を行うことが有効である。しかしながら、前処理によって酸化膜が除去された基板を塗布位置まで搬送する場合、搬送経路の雰囲気によっては、搬送中に再度基板の表面が酸化されてしまう場合がある。この問題点は、基板上の裏面電極の酸化膜を除去する前処理に限られず、他の前処理を行う場合においても想定されうる。
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明は、基板に対する前処理後、塗布までの間に基板の表面の状態が変化するのを抑えることが可能な塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗布装置は、易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、前記液状体が塗布される前の前記基板に対して前処理を行う前処理部と、前記塗布部によって前記液状体が塗布される塗布空間と前記前処理部によって前記前処理が行われる前処理空間とを接続する接続空間を有し、前記接続空間の雰囲気が不活性ガスの雰囲気となるように調整可能に設けられた接続部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、塗布部によって液状体が塗布される塗布空間と前処理部によって前処理が行われる前処理空間とを接続する接続空間を有し、接続空間の雰囲気が不活性ガスの雰囲気となるように調整可能に設けられた接続部を備える構成であるため、前処理空間から塗布空間までの接続空間を不活性ガスの雰囲気とすることができる。これにより、基板に対する前処理後、塗布までの間に基板の表面の状態が変化するのを抑えることが可能となる。
【0010】
上記の塗布装置は、前記接続空間に前記不活性ガスを供給する第一供給部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、接続空間に不活性ガスを供給する第一供給部を更に備えることとしたので、接続空間に直接不活性ガスを供給することができる。これにより、接続空間を効率的に不活性ガスの雰囲気にすることができる。
【0011】
上記の塗布装置は、前記前処理空間に前記不活性ガスを供給する第二供給部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、前処理空間に不活性ガスを供給する第二供給部を更に備えることとしたので、前処理空間を介して接続空間に不活性ガスを供給することができる。この場合、前処理空間についても不活性ガスの雰囲気にすることができるので、前処理空間及び接続空間において不活性ガスの雰囲気を連続させることができる。
【0012】
上記の塗布装置は、前記塗布空間に前記不活性ガスを供給する第三供給部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、塗布空間に不活性ガスを供給する第三供給部を更に備えることとしたので、塗布空間を関して接続空間に不活性ガスを供給することができる。この場合、塗布空間についても不活性ガスの雰囲気にすることができるので、接続空間及び塗布空間において不活性ガスの雰囲気を連続させることができる。
【0013】
上記の塗布装置は、前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間のうち少なくとも1つの空間を囲うチャンバ部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、塗布空間、前処理空間及び接続空間のうち少なくとも1つの空間を囲うチャンバ部を更に備えることとしたので、塗布空間、前処理空間及び接続空間の雰囲気を調整しやすくすることができる。
【0014】
上記の塗布装置は、前記チャンバ部は、前記接続空間を囲うロードロックチャンバを有することを特徴とする。
本発明によれば、チャンバ部が接続空間を囲うロードロックチャンバを有するため、接続空間の雰囲気を効率的に調整することができる。
【0015】
上記の塗布装置は、前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間のうち少なくとも1つの空間を吸引する吸引部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、塗布空間、前処理空間及び接続空間のうち少なくとも1つの空間を吸引する吸引部を更に備えるため、各空間の雰囲気をより精密に調整することができる。
【0016】
上記の塗布装置は、前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間の間で前記基板を搬送する搬送部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、塗布空間、前処理空間及び接続空間の間で基板を搬送する搬送部を更に備えることとしたので、基板は前処理空間から塗布空間までの間、不活性ガスの雰囲気になっている接続空間を搬送されることになる。これにより、搬送中に基板表面の状態が変化するのを抑えることができる。
【0017】
上記の塗布装置は、前記基板は、表面に金属が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、表面に金属が形成されている基板に対して前処理を行った後に塗布を行うまでの間に、金属の表面に金属酸化膜が形成されるのを防ぐことができる。これにより、液状体を基板の表面に均一に塗布することができる。
【0018】
上記の塗布装置は、前記液状体は、ヒドラジンを含むことを特徴とする。
本発明によれば、ヒドラジンを含む液状体を塗布する場合において、基板に対する前処理後、塗布までの間に基板の表面の状態が変化するのを抑えることができるため、ヒドラジンの劣化を防ぐことができる。
【0019】
上記の塗布装置は、前記基板上には、裏面電極が設けられており、前記前処理は、前記裏面電極から酸化膜を除去する酸化膜除去処理であることを特徴とする。
本発明によれば、前処理として、基板上の裏面電極から酸化膜を除去する酸化膜除去処理を行うことにより、液状体の濡れ性を高めることができる。
【0020】
上記の塗布装置は、前記酸化膜除去処理は、前記基板に対するアルカリ性溶液による処理、及び、前記基板に対して不活性原子を用いてスパッタリングを行う処理、のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明によれば、酸化膜除去処理として、基板に対するアルカリ性溶液による処理、及び、基板に対して不活性原子を用いてスパッタリングを行う処理、のうち少なくとも一方を含むため、基板から確実に酸化膜を除去することができる。
上記の塗布装置は、前記基板に対するアルカリ性溶液による処理は、アンモニア水による処理又はアンモニア蒸気による処理のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明によれば、基板に対するアルカリ性溶液による処理は、アンモニア水による処理又はアンモニア蒸気による処理のうち少なくとも一方を含むため、基板から確実に酸化膜を除去することができる。
【0021】
上記の塗布装置は、前記前処理は、前記基板を洗浄する洗浄処理であることを特徴とする。
本発明によれば、前処理として、基板を洗浄する洗浄処理が行われることとしたので、基板を清浄に保持しつつ塗布処理を行うことができる。これにより、膜質を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板に対する前処理後、塗布までの間に基板の表面の状態が変化するのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係る塗布装置の構成を示す図。
【図2】(a)(b)スリットノズルの構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図4】同、動作図。
【図5】同、動作図。
【図6】同、動作図。
【図7】本発明の第二実施形態に係る塗布装置の構成を示す図。
【図8】本発明の第三実施形態に係る塗布装置の構成を示す図。
【図9】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図10】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
以下の各図において、本実施形態に係る塗布装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、図中左右方向をX方向と表記し、平面視でX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、基板搬入部LDR、前処理部PRE、接続部CNE及び基板処理部PCSを有している。塗布装置CTRは、基板S上に液状体を塗布する装置である。
【0026】
本実施形態では、基板Sに塗布する液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)または銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、セレン(Se)といった易酸化性の金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。本実施形態では、他の液状体として、ヒドラジンなどの溶媒にナトリウム(Na)を分散させた液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS太陽電池の光吸収層のグレインサイズを確保するための物質を含んでいる。勿論、液状体として、他の易酸化性の金属を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。本実施形態では、基板Sとして、例えばガラスや樹脂などからなる板状部材を用いている。本実施形態では更に、基板S上に裏面電極としてスパッタにてモリブデンを形成している。勿論、裏面電極として、他の導電性物質を用いる構成としても構わない。
【0027】
基板搬入部LDRは、ロードロックチャンバCBLを有している。ロードロックチャンバCBLは、収容室RML、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLを有している。収容室RMLは、ロードロックチャンバCBLによって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLは、ロードロックチャンバCBLに形成された開口部である。基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLは、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENLは、ロードロックチャンバCBLの−X側の壁部に形成されており、例えば塗布装置CTRの外部に接続されている。基板搬出口EXLは、ロードロックチャンバCBLの+X側の壁部に形成されている。
【0028】
収容室RMLには、不活性ガス回収管90aが接続されている。不活性ガス回収管90aは、接続部90を介してポンプ31に接続されている。また、収容室RMLには、不活性ガス供給管95aが接続されている。不活性ガス供給管95aは、接続部95を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。また、収容室RMLには、基板搬送機構TRLが設けられている。基板搬送機構TRLは、収容室RMLにおいて基板Sを搬送する。
【0029】
基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLには、それぞれゲートバルブG1及びG2が設けられている。ゲートバルブG1及びG2を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLがそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG1及びG2を閉じることにより、収容室RMLが密閉されるようになっている。収容室RMLには、例えばポンプ機構などの減圧機構DCLが接続されている。
【0030】
基板搬送機構TRLは、複数のローラー部材48を有している。ローラー部材48は、基板搬入口ENLから基板搬出口EXLにかけてX方向に配列されている。各ローラー部材48は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー部材48は、それぞれ等しい径となるように形成されており、Z方向上の位置が等しくなるように配置されている。複数のローラー部材48は、+Z側の上端において基板Sを支持するようになっている。
【0031】
各ローラー部材48は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。なお、基板搬送機構TRLとしては、図1に示すように例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送機構を用いても構わない。
【0032】
前処理部PREは、前処理チャンバCBPを有している。前処理チャンバCBPは、収容室RMP、基板搬入口ENP及び基板搬出口EXPを有している。収容室RMPは、前処理チャンバCBPによって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENP及び基板搬出口EXPは、前処理チャンバCBPに形成された開口部である。基板搬入口ENP及び基板搬出口EXPは、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENPは、前処理チャンバCBPの−X側端部に形成されており、ロードロックチャンバCBLに接続されている。基板搬出口EXPは、前処理チャンバCBPの+X側端部に形成されており、接続部CNEに接続されている。
【0033】
基板搬入口ENP及び基板搬出口EXPには、それぞれゲートバルブG2及びG3が設けられている。ゲートバルブG2及びG3を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口ENP及び基板搬出口EXPがそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG2及びG3を閉じることにより、収容室RMPが密閉されるようになっている。ゲートバルブG2は、ロードロックチャンバCBLの基板搬出口EXLと、前処理チャンバCBPの基板搬入口ENPとで共通して用いられているようになっている。
収容室RMPには、不活性ガス回収管91aが接続されている。不活性ガス回収管91aは、接続部91を介してポンプ31に接続されている。また、収容室RMPには、不活性ガス供給管96aが接続されている。不活性ガス供給管96aは、接続部96を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。
【0034】
収容室RMPには、基板搬送機構TRP、表面処理装置60が設けられている。基板搬送機構TRPは、収容室RMP内で基板Sを搬送する。基板搬送機構TRPは、複数のローラー部材49を有している。ローラー部材49は、基板搬入口ENPから基板搬出口EXPにかけてX方向に配列されている。各ローラー部材49は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TRPとして、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送機構を用いても構わない。
【0035】
表面処理装置60は、基板S上の裏面電極膜の表面に形成された酸化膜を除去する処理や、基板Sの表面を洗浄する処理を行う。表面処理装置60は、基板Sに対して超音波を照射する超音波照射機構や、基板Sに対して例えばアンモニアなどの液体をスプレー状で供給したり液体に不活性ガスを混合させてミスト状で供給したりする液体供給機構、基板S上に供給された液体を加熱して乾燥させる加熱機構、基板Sの表面を洗浄する純水などのリンス液を供給するリンス液供給機構、基板S上のリンス液を除去するエアナイフ機構、などの不図示の処理機構を有している。
【0036】
基板搬送機構TRPは、基板移動機構65を有している。基板移動機構65は、複数のローラー部材49上の位置63と、液槽60のアンモニア水61に浸漬される位置64との間で基板Sを移動させる。基板移動機構65により、基板Sが複数のローラー部材49によって搬送される搬送状態と、アンモニア水61に浸漬される浸漬状態とを切り替えることができるようになっている。基板移動機構65は、基板Sを保持する保持部を有している。
【0037】
洗浄部RSは、基板Sの表面を洗浄する。洗浄部RSは、例えば洗浄液供給源62を有している。洗浄液供給源62は、複数のローラー部材49上の基板Sの表面に対して洗浄液を吐出する不図示の洗浄液ノズルを有している。洗浄液としては、例えば純水などが用いられる。洗浄液供給源62は、基板Sの+Z側に配置されている。洗浄液供給源62は、位置が固定された構成であっても構わないし、X方向又はY方向に移動可能に設けられた構成であっても構わない。
【0038】
接続部CNEは、接続チャンバCBNを有している。接続チャンバCBNは、収容室RMN、基板搬入口ENN及び基板搬出口EXNを有する。収容室RMNは、接続チャンバCBNによって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENN及び基板搬出口EXNは、接続チャンバCBNに形成された開口部である。基板搬入口ENN及び基板搬出口EXNは、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口ENNは、接続チャンバCBNの−X側端部に形成されており、前処理チャンバCBPに接続されている。基板搬出口EXNは、接続チャンバCBNの+X側端部に形成されており、基板処理部PCSに接続されている。
【0039】
基板搬入口ENN及び基板搬出口EXNには、それぞれゲートバルブG3及びG4が設けられている。ゲートバルブG3及びG4を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口ENN及び基板搬出口EXNがそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG3及びG4を閉じることにより、収容室RMNが密閉されるようになっている。ゲートバルブG3は、前処理チャンバCBPの基板搬出口EXPと、接続チャンバCBNの基板搬入口ENNとで共通して用いられているようになっている。
【0040】
収容室RMNには、基板搬送機構TRN、不活性ガス供給部GSN及び排気部EHNが設けられている。基板搬送機構TRNは、収容室RMN内で基板Sを搬送する。基板搬送機構TRNは、複数のローラー部材50を有している。ローラー部材50は、基板搬入口ENNから基板搬出口EXNにかけてX方向に配列されている。各ローラー部材50は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TRNとして、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送機構を用いても構わない。
【0041】
不活性ガス供給部GSNは、収容室RMNに例えば窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部GSNは、ガスボンベ71及びガス管72を有している。ガスボンベ71は、ガス管72を介して収容室RMNに接続されている。不活性ガス供給部GSNには、不活性ガスの供給量を調整する不図示の供給量調整部が設けられている。当該不活性ガス供給部GSNにより、収容室RMNを不活性ガスの雰囲気にすることができるようになっている。
【0042】
排気部EHNは、収容室RMNの気体を排気し、当該収容室RMNを減圧させる。排気部EHNは、排気駆動源73及び排気管74を有している。排気駆動源73は、排気管74を介して収容室RMNに接続されている。排気駆動源73としては、例えば吸引ポンプなどが用いられている。排気管74は、収容室RMNに設けられる端部に排気口を有している。当該排気口は、収容室RMNの底部(−Z側の面)に配置されている。
【0043】
基板処理部PCSは、第一チャンバCB1、第二チャンバCB2、第三チャンバCB3及び第四チャンバCB4を有している。第一チャンバCB1、第二チャンバCB2、第三チャンバCB3及び第四チャンバCB4は、例えばX方向にこの順で直列に接続されている。
【0044】
第一チャンバCB1は、収容室RM1、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1を有している。収容室RM1は、第一チャンバCB1によって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、第一チャンバCB1に形成された開口部である。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN1は、例えば収容室RM1の−X側端部に形成されており、接続チャンバCBNに接続されている。基板搬出口EX1は、例えば収容室RM1の+X側端部に形成されており、第二チャンバCB2に接続されている。
【0045】
基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1には、それぞれゲートバルブG4及びG5が設けられている。ゲートバルブG4及びG5を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1がそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG4及びG5を閉じることにより、収容室RM1が密閉されるようになっている。ゲートバルブG4は、接続チャンバCBNの基板搬出口EXNと、第一チャンバCB1の基板搬入口EN1とで共通して用いられているようになっている。
【0046】
収容室RM1には、基板搬送機構TR1、塗布部CT、メンテナンス部MNが設けられている。基板搬送機構TR1は、収容室RM1内で基板Sを搬送する部分である。基板搬送機構TR1は、複数のローラー部材51を有している。ローラー部材51は、基板搬入口EN1から基板搬出口EX1にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材51は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TR1としては、上記の基板搬送機構TRLと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
収容室RM1には、不活性ガス回収管92aが接続されている。不活性ガス回収管92aは、接続部92を介してポンプ31に接続されている。また、収容室RM1には、不活性ガス供給管97aが接続されている。不活性ガス供給管97aは、接続部97を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。
【0047】
塗布部CTは、第一チャンバCB1の収容室RM1に収容されている。塗布部CTは、長尺状に形成されたスリットノズルNZを有している。スリットノズルNZは、収容室RM1のうち例えばX方向において基板搬入口EN1と基板搬出口EX1との中間の位置に設けられている。
【0048】
図2は、スリットノズルNZの構成を示す図である。図2(a)は、スリットノズルNZを+Z方向に見たときの構成を示している。図2(b)は、スリットノズルNZを+Y方向に見たときの構成を示している。
【0049】
図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZは、例えばY方向が長手の長尺状に構成されている。スリットノズルNZのうち−Z方向に向けられた先端部分NZaには、当該スリットノズルNZの長手方向に沿って形成されたスリット状のノズル開口部21が設けられている。
【0050】
図2(a)に示すように、ノズル開口部21は、例えば長手方向が基板SのY方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。スリットノズルNZは、Z方向のほぼ中央部から当該先端部分NZaにかけてX方向の寸法が当該X方向の中央部へ向けて徐々に小さくなるように先細りに形成されている。
【0051】
スリットノズルNZは、ノズル開口部21から、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体Q(図3参照)を吐出する。スリットノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体の供給源(不図示)に接続されている。スリットノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。スリットノズルNZは、保持部に保持された液状体の温度を調整する温調機構(不図示)を有している。
【0052】
スリットノズルNZには、ノズル駆動機構NA(図1参照)が設けられている。ノズル駆動機構NAは、スリットノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向に駆動する構成を有している。例えば、ノズル駆動機構NAは、収容室RM1の待機位置と塗布位置(図1に示す位置)との間でスリットノズルNZを移動可能な構成を有している。
【0053】
図1に示すように、メンテナンス部MNは、例えばスリットノズルNZの先端部分NZaを管理するノズル先端管理ユニットNTCを有している。ノズル先端管理ユニットNTCは、収容室RM1を移動可能に設けられている。ノズル先端管理ユニットNTCは、塗布部CTによる塗布精度を高めるため、スリットノズルNZの先端部分NZaの付着物を除去するなど、スリットノズルNZの先端部分NZaが最適な状態となるように管理する。ノズル先端管理ユニットNTCは、例えば基板Sの搬送経路上に移動可能に設けられている。
【0054】
第二チャンバCB2は、収容室RM2、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2を有している。収容室RM1は、第二チャンバCB2によって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、第二チャンバCB2に形成された開口部である。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN2は、例えば収容室RM2の−X側端部に形成されており、第一チャンバCB1に接続されている。基板搬出口EX2は、例えば収容室RM2の+X側端部に形成されており、第三チャンバCB3に接続されている。
【0055】
基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2には、それぞれゲートバルブG5及びG6が設けられている。ゲートバルブG5及びG6を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2がそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG5及びG6を閉じることにより、収容室RM2が密閉されるようになっている。ゲートバルブG5は、第一チャンバCB1の基板搬出口EX1と、第二チャンバCB2の基板搬入口EN2とで共通して用いられているようになっている。
【0056】
収容室RM2には、基板搬送機構TR2、加熱部HT2、不活性ガス供給部GS2及び排気部EH2が設けられている。基板搬送機構TR2は、収容室RM2内で基板Sを搬送する部分である。基板搬送機構TR2は、複数のローラー部材52を有している。ローラー部材52は、基板搬入口EN2から基板搬出口EX2にかけてX方向に配列されている。
【0057】
各ローラー部材52は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TR2としては、上記の基板搬送機構TRLと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
【0058】
加熱部HT2は、基板S上に塗布された液状体を加熱する部分である。加熱部HT2は、内部に赤外線装置やホットプレートなどの加熱機構を有している。加熱部HT2では、当該加熱機構を用いることにより、例えば液状体の乾燥が行われるようになっている。このため、第二チャンバCB2では、減圧下において乾燥を行うことができる構成となっている。
【0059】
不活性ガス供給部GS2は、収容室RM2に例えば窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部GS2は、ガスボンベ81及びガス管82を有している。ガスボンベ81は、ガス管82を介して収容室RM2に接続されている。不活性ガス供給部GS2には、不活性ガスの供給量を調整する不図示の供給量調整部が設けられている。当該不活性ガス供給部GS2により、収容室RM2を不活性ガスの雰囲気にすることができるようになっている。
【0060】
排気部EH2は、収容室RM2の気体を排気し、当該収容室RM2を減圧させる。排気部EH2は、排気駆動源83及び排気管84を有している。排気駆動源83は、排気管84を介して収容室RM2に接続されている。排気駆動源83としては、例えば吸引ポンプなどが用いられている。排気管84は、収容室RM2に設けられる端部に排気口を有している。当該排気口は、収容室RM2の底部(−Z側の面)に配置されている。
【0061】
第三チャンバCB3は、収容室RM3、基板搬入口EN3及び基板搬出口EX3を有している。収容室RM3は、第三チャンバCB3によって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN3及び基板搬出口EX3は、収容室RM3に形成された開口部である。基板搬入口EN3及び基板搬出口EX3は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN3は、例えば収容室RM3の−X側端部に形成されており、第二チャンバCB2に接続されている。基板搬出口EX3は、例えば収容室RM3の+X側端部に形成されており、第四チャンバCB4に接続されている。
【0062】
基板搬入口EN3及び基板搬出口EX3には、それぞれゲートバルブG6及びG7が設けられている。ゲートバルブG6及びG7を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN3及び基板搬出口EX3がそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG6及びG7を閉じることにより、収容室RM3が密閉されるようになっている。ゲートバルブG6は、第二チャンバCB2の基板搬出口EX2と、第三チャンバCB3の基板搬入口EN3とで共通して用いられているようになっている。
【0063】
収容室RM3には、基板搬送機構TR3及び加熱部HT3が設けられている。基板搬送機構TR3は、収容室RM3内で基板Sを搬送する部分である。基板搬送機構TR3は、複数のローラー部材53を有している。ローラー部材53は、基板搬入口EN3から基板搬出口EX3にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材53は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TR3としては、上記の基板搬送機構TRLと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
収容室RM3には、不活性ガス回収管93aが接続されている。不活性ガス回収管93aは、接続部93を介してポンプ33に接続されている。また、収容室RM3には、不活性ガス供給管98aが接続されている。不活性ガス供給管98aは、接続部98を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。
【0064】
加熱部HT3は、基板S上に塗布された液状体を加熱する部分である。加熱部HT3は、内部に赤外線装置やホットプレート、オーブン機構などの加熱機構を有している。当該加熱部HT3としては、例えば上記の加熱部HT2で用いた加熱機構よりも強力に加熱することができる加熱機構を用いることが好ましい。加熱部HT3では、当該加熱機構を用いることにより、基板Sのベークが行われるようになっている。収容室RM3には、加熱部HT3が複数箇所、例えば2箇所に設けられている。このため、収容室RM3における加熱動作は、収容室RM2における加熱動作に比べて、より高い温度で基板Sを加熱することができる構成となっている。
【0065】
第四チャンバCB4は、収容室RM4、基板搬入口EN4及び基板搬出口EX4を有している。収容室RM4は、第四チャンバCB4によって区画されており、基板Sを収容可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN4及び基板搬出口EX4は、収容室RM4に形成された開口部である。基板搬入口EN4及び基板搬出口EX4は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板搬入口EN4は、例えば収容室RM4の−X側端部に形成されており、第三チャンバCB3に接続されている。基板搬出口EX4は、例えば収容室RM4の+X側端部に形成されており、外部に接続されている。
【0066】
基板搬入口EN4及び基板搬出口EX4には、それぞれゲートバルブG7及びG8が設けられている。ゲートバルブG7及びG8を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN4及び基板搬出口EX4がそれぞれ開閉するように構成されている。ゲートバルブG7及びG8を閉じることにより、収容室RM4が密閉されるようになっている。ゲートバルブG7は、第三チャンバCB3の基板搬出口EX3と、第四チャンバCB4の基板搬入口EN4とで共通して用いられているようになっている。
【0067】
収容室RM4には、基板搬送機構TR4、冷却部CLが設けられている。基板搬送機構TR4は、収容室RM4内で基板Sを搬送する部分である。基板搬送機構TR4は、複数のローラー部材54を有している。ローラー部材54は、基板搬入口EN4から基板搬出口EX4にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材54は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送機構TR4としては、上記の基板搬送機構TRLと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
収容室RM4には、不活性ガス回収管94aが接続されている。不活性ガス回収管94aは、接続部94を介してポンプ33に接続されている。また、収容室RM4には、不活性ガス供給管99aが接続されている。不活性ガス供給管99aは、接続部99を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。
【0068】
冷却部CLは、第二チャンバCB2や第三チャンバCB3基板Sで加熱された基板Sを冷却する部分である。冷却部CLは、内部に例えば冷媒が流通可能に構成された冷却プレートなどの冷却機構を有している。当該冷却部CLを用いることにより、収容室RM4では基板Sのクーリングが行われるようになっている。
【0069】
制御装置CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、制御装置CONTは、ロードロックチャンバCBL、前処理チャンバCBP、接続チャンバCBN、第一チャンバCB1、第二チャンバCB2、第三チャンバCB3及び第四チャンバCB4のそれぞれの動作を制御する。
【0070】
具体的な動作としては、例えばゲートバルブG1〜G8の開閉動作、基板搬送機構TRL、TRP、TRN、TR1〜TR4による基板搬送動作、塗布部CTによる塗布動作、加熱部HT2、HT3による加熱動作、排気部EHN、EH2による排気動作、不活性ガス供給部GSN、GS2によるガス供給動作、冷却部CLによる冷却動作などが挙げられる。
【0071】
制御装置CONTが基板搬送機構TRL、TRP、TRN、TR1〜TR4のうち隣接する収容室の基板搬送機構を連動して作動させることにより、各基板搬送機構TRL、TRP、TRN、TR1〜TR4は、隣接する収容室の間で基板Sを搬送することができるようになっている。なお、隣接する収容室の間で基板Sを搬送する不図示の搬送機構が別途設けられた構成であっても構わない。
なお、ポンプ31と不活性ガス供給機構33との間には、不活性ガス再生機構32が設けられている。不活性ガス再生機構32は、収容室RML、RMP、RM1、RM3及びRM4からポンプ31によって回収された気体のうち不活性ガスから不純物等を除去して不活性ガス供給機構33に送る。不活性ガス供給機構33からは、再生された不活性ガスが収容室RML、RMP、RM1、RM3及びRM4へ供給される。
【0072】
次に、図3〜図6を参照して、上記構成の塗布装置CTRによる動作を説明する。図3〜図6は、塗布装置CTRのうち前処理チャンバCBP、接続チャンバCBN及び第一チャンバCB1の構成を示す図である。
制御装置CONTは、基板Sを搬入させる前に、収容室RMPの液槽60内にアンモニア水61を収容させた状態とすると共に、洗浄部RSの洗浄液供給源62に洗浄液を貯留させた状態としておく。このように、制御装置CONTは、基板Sに前処理を行う状態を整えておく。
【0073】
また、制御装置CONTは、基板Sを搬入させる前に、スリットノズルNZの保持部に液状体を保持させる。制御装置CONTは、スリットノズルNZ内の温調機構を用いて、保持部に保持された液状体の温度を調整させる。このように、制御装置CONTは、基板Sに液状体を吐出させる状態を整えておく。
制御装置CONTは、収容室RML、RMP、RMN、RM1〜RM4を密閉状態とし、不活性ガス供給部GSN、GS2や排気部EHN、EH2、不活性ガス供給機構33及びポンプ31などを用いて収容室RML、RMP、RMN、RM1〜RM4を不活性ガスの雰囲気としておく。
【0074】
塗布装置CTRの状態が整った状態で、外部から塗布装置CTRに基板Sが搬送されてきた場合、制御装置CONTは、ゲートバルブG2を閉塞させた状態でゲートバルブG1を開き、当該基板搬入口ENLから基板Sを収容室RMLに搬入させる。収容室RMLに基板Sが搬入された後、制御装置CONTは、ロードロックチャンバCBLのゲートバルブG1を閉塞させる。ゲートバルブG1を閉塞させることにより、収容室RMLが密閉状態となる。
【0075】
制御装置CONTは、不活性ガスの供給量及び排気量の調整を行わせつつ、ゲートバルブG2を開放する。当該ゲートバルブG2を開いた後、制御装置CONTは、ロードロックチャンバCBLから前処理チャンバCBPへと基板Sを搬送させる。
【0076】
制御装置CONTは、基板Sを前処理チャンバCBPの収容室RMPに搬入させた後、ゲートバルブG2を閉塞させる。ゲートバルブG2を閉塞させた後、図3に示すように、制御装置CONTは、基板Sを表面処理装置60の−Z側の位置まで搬送させる。基板Sが表面処理装置60の−Z側の位置に到達した後、制御装置CONTは、表面処理装置60を用いて基板S上の裏面電極の表面の酸化膜を除去する処理を行う。
【0077】
この場合の態様として、例えば基板Sに対して超音波を照射する処理、基板Sに対してアルカリ性溶液、例えばアンモニア水のスプレーを供給する処理、基板Sに対してアンモニア水と不活性ガスの混合ミストを供給する処理が挙げられる。制御装置CONTは、これらの処理のうち、少なくとも1つを行わせる。
このような処理を行うことにより、基板S上の裏面電極上の+Z側の表面に酸化膜が形成されている場合、アンモニア水との反応によって酸化膜が分解され、基板S上の裏面電極の表面から酸化膜が除去される。このように、基板Sに対して液状体を塗布する前に、基板S上の裏面電極の表面の酸化膜を除去する処理が前処理として行われる。なお、上記前処理で用いられたアンモニア水を回収し、濃度(pH)調整を行った後、不純物を除去して再利用する態様であっても構わない。
制御装置CONTは、表面処理装置60に対して酸化膜除去処理を行わせた後、基板Sを洗浄する処理を行わせる。この場合、制御装置CONTは、リンス液供給機構によって基板S上にリンス液を供給し、アンモニア水を洗い流す。その後、制御装置CONTは、エアナイフ機構を用いて基板S上のリンス液を除去する。
【0078】
基板S上のリンス液を除去した後、基板Sを加熱して乾燥させる。具体的には、制御装置CONTは、表面処理装置60の加熱機構を用いて、基板Sに供給されて残ったアンモニア水あるいは基板S上に残ったリンス液などの液体を加熱する。この場合、例えば表面処理装置60が基板Sの搬送経路の+Z側に赤外線ヒータなどを有する構成であれば、基板Sを搬送させつつ赤外線ヒータの−Z側を通過する基板Sを加熱することができる。
基板Sを乾燥させた後、ゲートバルブG3を開放して基板Sを前処理チャンバCBPの収容室RMPから接続チャンバCBNの収容室RMNへと搬送させる。両室ともに不活性ガスの雰囲気となるように調整されているため、酸化膜を除去した基板S上の裏面電極の表面の酸化が抑制されることになる。
【0079】
なお、制御装置CONTは、基板S上の裏面電極の表面の酸化膜を除去した後、リンス液による基板Sの洗浄を行わせずにエアナイフを形成させ、当該エナアイフから不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)を放出してアンモニア水を除去させても構わない。また、制御装置CONTは、基板S上の裏面電極の表面の酸化膜を除去した後、リンス液による洗浄、エアナイフによる液体の除去を行わせずに、上記の乾燥処理を行わせても構わない。
【0080】
図4に示すように、基板Sが収容室RMNに配置された後、制御装置CONTは、ゲートバルブG3を閉塞させて収容室RMNを密閉状態とする。収容室RMNを密閉状態とした後、基板Sを待機させつつ、収容室RMNの雰囲気を調整して不活性ガス雰囲気とする。
【0081】
制御装置CONTは、収容室RMNの雰囲気を調整して不活性ガス雰囲気とした後、ゲートバルブG4を開放させる。ゲートバルブG4を開放させた後、制御装置CONTは、基板Sを接続チャンバCBNの収容室RMNから第一チャンバCB1の収容室RM1へと搬送させる。収容室RMN及び収容室RM1は、両室ともに不活性ガスの雰囲気となるように調整されているため、基板Sの表面の酸化が抑制されることになる。
【0082】
このように、前処理チャンバCBPの収容室RMPから第一チャンバCB1の収容室RM1までの間が不活性ガスの雰囲気となっているため、前処理後、塗布処理までの間における基板Sの表面の酸化が抑制されることになる。このため、基板S上の裏面電極の表面に酸化膜が極めて少ない状態で当該基板Sの表面に対して塗布処理が行われることになる。
【0083】
塗布処理を行う場合、制御装置CONTは、基板搬送機構TR1のローラー部材51を回転させ、基板Sを+X方向に移動させる。基板Sの+X側の端辺がZ方向視でスリットノズルNZに重なる位置に到達したら、図5に示すように、制御装置CONTはスリットノズルNZから液状体Qを吐出しつつ、基板SをX方向に移動させることにより、基板Sの表面全体に液状体Qを塗布させる。
【0084】
前処理によって基板S上の裏面電極の表面に形成された酸化膜が除去され、その後ほとんど酸化膜が形成されていないため、基板Sの所定領域上に当該液状体の塗布膜がほぼ均一の膜厚で形成されることになる。塗布膜の形成後、図6に示すように、制御装置CONTは、スリットノズルNZからの液状体の吐出動作を停止させる。
【0085】
吐出動作を停止後、制御装置CONTは、塗布膜が形成された基板Sを第二チャンバCB2の収容室RM2に収容させる。具体的には、制御装置CONTは、ゲートバルブG5を開いた状態とし、基板搬出口EX1及び基板搬入口EN2を介して当該基板Sを収容室RM2へと搬入させる。
【0086】
制御装置CONTは、基板Sを収容室RM2に搬入した後、ゲートバルブG5及びG6を閉塞させ、収容室RM2を密閉させる。その後、制御装置CONTは、基板Sが加熱部HT2の−Z側に位置するように移動させ、その後排気部EH2を作動させることにより収容室RM2を減圧させる。収容室RM2を減圧させた後、制御装置CONTは、加熱部HT2を作動させて基板S上の塗布膜を加熱(減圧乾燥)させる。
【0087】
減圧下で液状体を加熱することにより、塗布膜Lは短時間で効率的に乾燥する。このときの加熱温度としては、洗浄後の乾燥処理と同様、300℃以下となるようにする。この場合においても、加熱温度を300℃以下とすることにより、基板Sの構成材料が樹脂材料であっても、基板Sに変形させること無く加熱処理が行われることとなる。
【0088】
制御装置CONTは、例えばローラー部材52の回転動作を停止させ、基板Sの移動を停止させた状態で加熱部HT2を作動させるようにする。例えばローラー部材52の回転動作速度を調整し、基板Sの移動速度を遅くした状態で加熱部H2を作動させるようにする。また、例えば基板S上の塗布膜が乾燥するまでの時間や加熱温度などを予め記憶させておくようにし、制御装置CONTが当該記憶させた値を用いて加熱時間及び加熱温度などを調整することで塗布膜Lの加熱動作を行わせる。
【0089】
減圧乾燥動作の後、制御装置CONTは、基板Sを第三チャンバCB3の収容室RM3に収容させる。具体的には、制御装置CONTは、ゲートバルブG6を開いた状態とし、基板搬出口EX2及び基板搬入口EN3を介して当該基板Sを収容室RM3へと搬入させる。
【0090】
制御装置CONTは、基板Sを収容室RM3に搬入した後、当該基板SがZ方向において二つの加熱部HT3に挟まれるように移動させる。基板Sを移動後、制御装置CONTは、加熱部HT3を作動させて基板S及び当該基板S上の塗布膜を加熱(ベーク)させる。当該加熱動作を行わせることにより、塗布膜の状態を安定させることができる。
【0091】
加熱動作の後、制御装置CONTは、基板Sを第四チャンバCB4の収容室RM4に収容させる。具体的には、制御装置CONTは、ゲートバルブG7を開いた状態とし、基板搬出口EX3及び基板搬入口EN4を介して当該基板Sを収容室RM4へと搬入させる。
【0092】
制御装置CONTは、基板Sを収容室RM4に搬入した後、当該基板SがZ方向において冷却部CL上に配置されるように移動させる。基板Sを移動後、制御装置CONTは、冷却部CLを作動させて基板S及び当該基板S上の塗布膜を冷却(クーリング)させる。
当該冷却動作を行わせた後、制御装置CONTは、ゲートバルブG8を開放させ、基板搬出口EX4を介して基板Sを搬出させる。このようにして、塗布装置CTRを用いた処理が完了する。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、塗布部CTによって液状体Qが塗布される収容室RM1と前処理部PREによって前処理が行われる収容室RMPとを接続する収容室RMNを有し、当該収容室RMNの雰囲気が不活性ガスの雰囲気となるように調整可能に設けられた接続部CNEを備える構成であるため、収容室RMPから収容室RM1までの空間を不活性ガスの雰囲気とすることができる。これにより、基板Sに対する前処理後、塗布までの間に基板Sの表面の状態の変化を抑えることが可能となる。
【0094】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図7は、本実施形態に係る塗布装置CTR2の構成を示す図である。
図7に示すように、本実施形態に記載の塗布装置CTR2は、基板処理部PRCを直列に繰り返し設ける構成となっている。
塗布装置CTR2は、基板搬入部LDR、前処理部PRE、接続部CNE及び基板処理部PRC1〜PRC3を有することとなる。各基板処理部PRC1〜PRC3の構成は、上記基板処理部PRCの構成と同一である。また、基板処理部PRC3の第四チャンバ装置CB4は、冷却部とアンローディング装置とを兼ねた構成となっている。
この場合、基板Sを一方向(X方向)に搬送することで、基板Sに複数層の塗布膜を形成することができる。なお、この場合、基板処理部PRC1〜PRC3のそれぞれの第一チャンバ装置CB1において、異なる種類の液状体を塗布することができる構成としても構わない。
以上のように、本実施形態によれば、基板処理部PRCが直列に繰り返し設けられているため、基板Sに対して塗布膜を積層する工程を連続して行うことができる。これにより、基板Sに対して効率的に塗布膜を形成することができる。
【0095】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図8は、本実施形態に係る塗布装置CTR3の構成を示す図である。
なお、図8においては、上記実施形態と同様、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、図中左右方向をX方向と表記し、平面視でX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0096】
本実施形態の塗布装置CTR3は、基板搬入部LDR、前処理部PRE及び基板処理部PRCを有しており、基板処理部PRCの第一チャンバCB1、第二チャンバCB2、第三チャンバCB3及び第四チャンバCB4がインターフェース部IFを中心として分岐されるように接続された構成となっている。したがって、本実施形態では、インターフェース部IFが前処理部PREと第一チャンバCB1とを接続する接続部を兼ねている。
【0097】
インターフェース部IFは、共用チャンバCBIを有している。共用チャンバCBIは、収容室RMI、接続口JNL、JN1〜JN3を有している。接続口JNL、JN1〜JN4は、インターフェース部IFと各チャンバとの間を接続する。各接続口JNL、JN1〜JN3は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。これら接続口JN1〜JN4を介して、基板Sがチャンバ間を移動可能となっている。
【0098】
接続口JNLは、共用チャンバCBIの収容室RMIと前処理チャンバCBPの収容室RMPとを接続する。接続口JN1は、上記収容室RMIと第一チャンバCB1の収容室RM1とを接続する。接続口JN2は、上記収容室RMIと第二チャンバCB2の収容室RM2とを接続する。接続口JN3は、上記収容室RMIと第三チャンバCB3の収容室RM3とを接続する。
【0099】
収容室RMIには、アーム部ARMを有するロボット装置RBTが設けられている。アーム部ARMは、ロボット装置RBTの基部FNDに接続されている。基部FNDは、不図示の駆動機構により、Z方向に移動可能(昇降可能)に設けられている。アーム部ARMは、XY平面上の一方向に伸縮可能に形成されている。アーム部ARMは、基部FNDと接続部を中心として、θZ方向に回転可能に設けられている。
【0100】
前処理チャンバCBPの収容室RMP、第一チャンバCB1の収容室RM1及び第二チャンバCB2の収容室RM2には、それぞれ基板Sを保持する基板保持部HLDが設けられている。本実施形態においては、収容室RMP、収容室RM1及び収容室RM2では、基板Sが基板保持部HLDによって保持された状態で当該基板Sに対して処理が行われる構成となっている。また、前処理チャンバCBPの収容室RMPには、上記第一実施形態と同一構成の表面処理装置60が設けられている。
【0101】
第一チャンバCB1の収容室RM1には、塗布部CT及びメンテナンス部MNが設けられている。塗布部CTは、ノズルNZ及びガイド機構Gを有している。ノズルNZは、ガイド機構Gに沿って移動可能に設けられている。ガイド機構Gは、基板保持部HLDに保持された基板Sの表面(例えば、+Z側の面)上を跨いで延在している。したがって、ノズルNZは、基板Sの表面全体を走査するように移動可能となっている。
【0102】
メンテナンス部MNは、ノズルNZの先端を管理するノズル管理部NTCを有している。ノズル管理部NTCは、例えば基板保持部HLDの側方に配置されている。上記のガイド機構Gは基板保持部HLDから当該ノズル管理部NTCに跨って延在されており、ノズルNZをノズル管理部NTCにアクセスさせることが可能な構成となっている。
【0103】
第三チャンバCB3の収容室RM3及び第四チャンバCB4の収容室RM4には、上記実施形態と同様の基板搬送機構TRが設けられている。収容室RM3には複数の搬送ローラー53が一方向に設けられており、収容室RM4には複数の搬送ローラー54が一方向に設けられている。第三チャンバCB3及び第四チャンバCB4においては、基板Sは収容室RM3及び収容室RM4において一方向に搬送される構成となっている。
【0104】
第二チャンバCB2の収容室RM2には、加熱部HT2、不活性ガス供給部GS及び排気部EH2が設けられている。第二チャンバCB2では、減圧下において乾燥を行うことができる構成となっている。第三チャンバCB3の収容室RM3には、加熱部HT3が設けられている。収容室RM3には、加熱部HT3が複数箇所、例えば2箇所に設けられている。収容室RM3における加熱動作は、収容室RM2における加熱動作に比べて、より高い温度で基板Sを加熱することができる構成となっている。第四チャンバCB4の収容室RM4には、冷却部CLが設けられている。当該冷却部CLを用いることにより、収容室RM4では基板Sのクーリングが行われるようになっている。
収容室RML、RMP、RM1、RM3及びRM4には、それぞれ不活性ガス回収管90a、91a、92a、93a及び94aが接続されている。不活性ガス回収管90a、91a、92a、93a及び94aは、接続部90、91、92、93及び94を介してポンプ31に接続されている。また、収容室RML、RMP、RM1、RM3及びRM4には、不活性ガス供給管95a、96a、97a、98a及び99aが接続されている。不活性ガス供給管95a、96a、97a、98a及び99aaは、接続部95、96、97、98及び99を介して不活性ガス供給機構33に接続されている。
【0105】
次に、上記構成の塗布装置CTR3の動作を説明する。
制御装置CONTは、収容室RML、RMP、RMI、RM1〜RM4を密閉状態とし、不活性ガス供給部GSN、GS2や排気部EHI、EH2、不活性ガス供給機構33及びポンプ31などを用いて収容室RML、RMP、RMI、RM1〜RM4を不活性ガスの雰囲気としておく。
この状態で、基板Sが基板搬入部LDRであるロードロックチャンバCBLの基板搬入口ENTから収容室RMLに搬入される。基板Sが収容室RMLに収容された後、制御装置CONTは、ロードロックチャンバCBLと前処理チャンバCBPとの間のゲートバルブGBが開放させる。
【0106】
ゲートバルブGBの開放の後、制御装置CONTは、基板Sを前処理チャンバCBPの収容室RMPに搬入させ、当該基板Sを基板保持部HLD上に載置させる。基板Sが基板保持部HLDに載置された後、制御装置CONTは、表面処理装置60を用いて基板Sに対して前処理を行わせる。当該前処理としては、例えば上記第一実施形態と同様の処理を行わせる。
前処理を行わせた後、制御装置CONTは、インターフェース部IFに設けられたロボット装置RBTのアーム部ARMを収容室RMPにアクセスさせる。制御装置CONTは、収容室RMLにアクセスさせた当該アーム部ARMを用いて基板保持部HLDに保持された基板Sを持ち上げ、接続口JNLを介してインターフェース部IFに搬送する。
【0107】
次に、制御装置CONTは、共用チャンバCBIと第一チャンバCB1との間のゲートバルブGBを開放させ、基板Sを保持している状態のアーム部ARMを第一チャンバCB1の収容室RM1にアクセスさせる。制御装置CONTは、第一チャンバCB1の基板保持部HLD上に基板Sを載置させ、一旦アーム部ARMを共用チャンバCBIに引き戻させる。
【0108】
アーム部ARMを引き戻させた後、制御装置CONTは、第一チャンバCB1のゲートバルブGBを閉塞させ、収容室RM1内で塗布動作を行わせる。当該塗布動作は、例えば基板Sを基板保持部HLD上に載置させた状態で、ノズルNZを移動させつつ当該ノズルNZから液状体を基板Sの表面(例えば、+Z側の面)に吐出することで、基板Sの表面全体に液状体の塗布膜を形成する。
【0109】
ノズルNZは、例えばガイド機構Gに沿って基板Sの表面上を移動しつつ基板Sの表面に対して液状体を吐出する。これにより、基板Sの表面には均一に液状体の塗布膜を形成されることになる。制御装置CONTは、ノズル管理装置MNを例えば定期的あるいは不定期に用いることにより、ノズルNZの先端(−Z側の端部)を管理させるようにする。
【0110】
このように、前処理チャンバCBPの収容室RMPから第一チャンバCB1の収容室RM1までの間が不活性ガスの雰囲気となっているため、前処理後、塗布処理までの間における基板Sの表面の酸化が抑制されることになる。このため、基板S上の裏面電極の表面に酸化膜が極めて少ない状態で当該基板Sの表面に対して塗布処理が行われることになる。
【0111】
塗布動作の後、制御装置CONTは、第一チャンバCB1のゲートバルブGBを開放させ、アーム部ARMによって収容室RM1の基板保持部HLD上の基板Sを共用チャンバCBIへ搬出させる。基板Sの搬出後、制御装置CONTは、共用チャンバCBIと第二チャンバCB2との間のゲートバルブGBを開放させ、アーム部ARMを用いて基板Sを第二チャンバCB2の収容室RM2に搬入させる。
【0112】
制御装置CONTは、収容室RM2の基板保持部HLDによって基板Sが保持されるようにアーム部ARMを移動させる。制御装置CONTは、基板Sが保持された後、アーム部ARMを共用チャンバCBIへ引き戻させ、第二チャンバCB2のゲートバルブGBを閉塞させる。制御装置CONTは、収容室RM2を密閉させた後、排気部EH2を用いて収容室RM2を減圧させると共に、不活性ガス供給部GS2を用いて収容室RM2を不活性ガス雰囲気にさせる。収容室RM2を不活性ガス雰囲気としつつ減圧させた状態で、制御装置CONTは、加熱部HT2を用いて基板Sの表面に形成された液状体の塗布膜を乾燥させる。
【0113】
乾燥動作後、制御装置CONTは、アーム部ARMを作動させ、基板Sを収容室RM2から搬出させると共に、当該基板Sを第三チャンバCB3の収容室RM3へ搬入させる。基板Sが収容室RM3に搬入された後、制御装置CONTは、搬送機構TRを作動させることで基板Sを2つの加熱部HT3の間の処理位置へと搬送する。当該処理位置に基板Sが到達した後、制御装置CONTは、加熱部HT3を作動させ、基板Sを焼成させる。焼成動作の後、制御装置CONTは、搬送機構TRを作動させ、基板Sを第四チャンバCB4の収容室RM4へ搬入させる。
【0114】
制御装置CONTは、基板Sが収容室RM4に搬入された後、冷却部CLを作動させることにより、当該基板Sを冷却させる。冷却動作の後、制御装置CONTは、第四チャンバCB4の+X側に配置された基板搬出口EXTから基板Sを塗布装置CTR3の外部に搬出させる。
【0115】
以上のように、本実施形態によれば、共用チャンバCBIにロードロックチャンバCBL、第一チャンバCB1、第二チャンバCB2及び第三チャンバCB3が接続されており、ロボット装置RBTによって基板Sがインターフェース部IFを介して各チャンバの収容室に搬送される構成としたので、効率的な処理が可能となる。
【0116】
なお、この場合、加熱(ベーク)動作を行う第三チャンバCB3から冷却処理を行う第四チャンバCB4を直列に接続されることにより、ベークされた基板Sを共用チャンバCBIに搬入させずに塗布装置CTR3から搬出させることができる。これにより、共用チャンバCBIの温度が高くなってしまうのを防ぐことができる。
【0117】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0118】
上記実施形態においては、塗布装置CTRの動作において、収容室RMP、収容室RMN及び収容室RM1の3室の雰囲気を纏めて調整させる場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、当該調整動作において、制御装置CONTは、少なくとも収容室RMNが不活性ガス雰囲気となるように不活性ガス供給部GSN及び排気部EHNを調整すれば良い。したがって、上記ゲートバルブG3及びゲートバルブG4を閉じた状態として、収容室RMNの雰囲気のみを調整させるようにしても構わない。
【0119】
また、制御装置CONTは、ゲートバルブG3及びゲートバルブG4のうち一方を開いた状態とし、他方を閉じた状態として不活性ガス供給部GSN及び排気部EHNを調整させても構わない。
【0120】
また、上記収容室RMP、収容室RMN及び収容室RM1の雰囲気の調整動作において、接続チャンバCBNに設けられた不活性ガス供給部GSN及び排気部EHNを用いることとしたが、これに限られることは無い。例えば、第二チャンバCB2の不活性ガス供給部GS2及び排気部EH2を用いて上記収容室RMP、収容室RMN及び収容室RM1の雰囲気の調整動作を行わせても構わない。
【0121】
また、上記実施形態では、基板Sに液状体Qを塗布する塗布処理の前処理として、基板S上の裏面電極の表面に形成された酸化膜を除去する処理を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、他の処理であっても構わない。また、上記実施形態では、酸化膜除去処理の後に基板Sを洗浄する処理を行う場合を例に挙げて説明したが、当該洗浄処理を単独で行うようにしても構わない。
【0122】
また、上記実施形態では、酸化膜除去処理として、基板Sに超音波やアンモニア水を噴射して供給する処理を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図9に示すように、表面処理装置60がパドル方式でアンモニア水62を基板S上に供給する構成であっても構わない。また、この場合、パドル61に超音波を掛ける構成としても構わない。
【0123】
また、例えば図10に示すように、基板Sをアンモニア水62に浸漬させる処理であって構わない。この場合、例えばアンモニア水62を槽内に入れておき、基板搬送機構TRPのローラー部材49が槽内に配置された構成とすることができる。これにより、基板Sの搬送経路にアンモニア水62が配置されるため、基板Sを搬送させる動作を行うだけで基板Sの表面の処理を行うことができる。
【0124】
これらの構成のほか、例えばアンモニア水62の基板Sに対して不活性原子(例えば、アルゴン原子など)を用いてスパッタリングを行う処理であっても構わない。この場合であっても、基板S上の裏面電極の表面に形成された酸化膜を除去することができる。また、この場合では液体を用いないため、乾燥工程を省くことができるという利点もある。
【符号の説明】
【0125】
CTR…塗布装置 CONT…制御装置 S…基板 PRE…前処理部 CBP…前処理チャンバ CNE…接続部 CBN…接続チャンバ PCS…基板処理部 CB1…第一チャンバ CT…塗布部 NZ…スリットノズル RMP、RMN、RM1…収容室 TRP、TRN、TR1…基板搬送機構 61…アンモニア水 RS…洗浄部 Q…液状体 L…塗布膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、
前記液状体が塗布される前の前記基板に対して前処理を行う前処理部と、
前記塗布部によって前記液状体が塗布される塗布空間と前記前処理部によって前記前処理が行われる前処理空間とを接続する接続空間を有し、前記接続空間の雰囲気が不活性ガスの雰囲気となるように調整可能に設けられた接続部と
を備える塗布装置。
【請求項2】
前記接続空間に前記不活性ガスを供給する第一供給部
を更に備える請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記前処理空間に前記不活性ガスを供給する第二供給部
を更に備える請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布空間に前記不活性ガスを供給する第三供給部
を更に備える請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間のうち少なくとも1つの空間を囲うチャンバ部
を更に備える請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記チャンバ部は、前記接続空間を囲うロードロックチャンバを有する
請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間のうち少なくとも1つの空間を吸引する吸引部
を更に備える請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布空間、前記前処理空間及び前記接続空間の間で前記基板を搬送する搬送部
を更に備える請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記基板は、表面に金属が形成されている
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記液状体は、ヒドラジンを含む
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記基板上には、裏面電極が設けられており、
前記前処理は、前記裏面電極から酸化膜を除去する酸化膜除去処理である
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記酸化膜除去処理は、前記基板に対するアルカリ性溶液による処理、及び、前記基板に対して不活性原子を用いてスパッタリングを行う処理、のうち少なくとも一方を含む
請求項11に記載の塗布装置。
【請求項13】
前記基板に対するアルカリ性溶液による処理は、アンモニア水による処理又はアンモニア蒸気による処理のうち少なくとも一方を含む
請求項12に記載の塗布装置。
【請求項14】
前記前処理は、前記基板を洗浄する洗浄処理である
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−170846(P2012−170846A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33369(P2011−33369)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】