説明

塗料供給設備及びその運転方法

【課題】 合理的かつ完成度の高い運転形態を採ることで全体として一層優れた塗料供給設備を提供する。
【解決手段】 塗料種別の塗料供給ポンプPの夫々を吐出流量Lの調整が可能な可変速ポンプにするとともに、それら塗料供給ポンプPにより塗料往路4から塗料還路5にわたって塗料Tを循環させる塗料種別の塗料循環運転を塗装ガン装備部2の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換える制御手段24を設け、正規運転では背圧調整調整手段R,22,23による塗料往路圧力調整の目標圧力psを設定正規圧力値psaにするとともに塗料供給ポンプPをその吐出流量Lが設定正規流量値Laとなる状態に変速制御し、かつ、セーブ運転では背圧調整手段R,22,23による塗料往路圧力調整の目標圧力psを設定セーブ圧力値psbにするとともに塗料供給ポンプPをその吐出流量Lが設定正規流量値Laよりも小さい設定セーブ流量値Lbとなる状態に変速制御する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装ガンにより被塗物を塗装する複数の塗装ガン装備部に対して塗料を供給する塗料供給設備、及び、その運転方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、塗料供給ポンプと、その塗料供給ポンプの吐出側に接続した塗料往路と、塗料供給ポンプの吸入側に接続した塗料還路及び塗料補給路との夫々を複数の塗料種毎(代表的には塗料色毎)に設けて、それら塗料種別の塗料往路及び塗料還路を複数の塗装ガン装備部にわたらせて延設するとともに、塗料種別に塗料還路に接続する塗料往路の下流側端部の夫々にその塗料往路内の塗料圧力を目標圧力に調整する塗料種別の背圧調整手段を装備し、塗装ガン装備部の夫々において、塗装ガンに供給する塗料を取り出す塗料取出部を構成するのに、塗料種別に塗料往路と塗料還路とを短絡的に接続する塗料種別の塗料バイパス路、及び、それら塗料種別の塗料バイパス路から各別に分岐した塗料種別の塗料取出路を設け、これら塗料種別の塗料取出路を選択的に開閉する塗料選択取出用の弁装置を設ける塗料供給設備、及び、その運転方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の塗料供給設備は、塗料種毎に塗料供給ポンプにより塗料往路から塗料還路にわたって塗料を循環させる塗料種別の塗料循環運転を行うことに対し、塗装ガン装備部の夫々において、塗料選択取出用の弁装置により塗料種別の塗料取出路を選択的に開閉して所要塗料種の塗料を該当塗料種の塗料往路から塗料バイパス路及び塗料取出路を通じ取り出すことで、塗料種の異なる塗装を随時に行えるようにしたものである。
【0004】
また、塗装ガン装備部の夫々において、複数の塗料種のうち塗料取出路が閉じられた塗料取り出し停止状態にある塗料種については塗料往路から塗料バイパス路に分流される塗料の全量を、一方、塗料取出路が開かれた塗料取り出し状態にある塗料種については塗料往路から塗料バイパス路に分流された塗料のうちの余剰分を、塗料種別に塗料バイパス路から塗料還路へ短絡的に戻すことで、各塗料種について塗料往路と各塗装ガン装備部の塗料バイパス路と塗料還路とにわたる塗料循環状態を保ち、これにより、それらの各塗料路において塗料溶剤中の顔料等の塗料成分が沈降するいわゆる塗料沈降の発生を防止するようにしたものである。
【0005】
そして従来、この種の塗料供給設備では、例えば特許文献1に見られるように塗料供給ポンプ(特許文献1で言う循環ポンプ2、いわゆる1次側塗料循環系の循環ポンプ)を吐出流量が一定の固定速ポンプにし、塗料取り出しの有無や塗装運転の休止などの各塗装ガン装備部の運転状況の変化にかかわらず、全ての塗料種について塗料供給ポンプを定格固定速状態で常時運転して、各塗料の循環状態を各塗装ガン装備部での塗料取り出しが可能な高圧力・高流速状態に常時保つようにしていた。
【0006】
これに対し、本出願人は、塗料種別の各塗料供給ポンプをインバータ制御等による出力調整が可能なポンプにして、これら塗料供給ポンプの出力を各塗装ガン装備部の運転状況等に応じて調整することで、塗料沈降を防止しながらも上記の従来設備に比べ塗料供給ポンプの消費動力を節減して省エネを効果的に達成し得る塗料供給設備を先に提案した。(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平2−63576号公報
【特許文献2】特開2007−175631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の状況に対して、本発明の主たる課題は、先の提案設備に比べより合理的かつ完成度の高い運転形態を採ることで全体として一層優れた塗料供給設備及びその運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は塗料供給設備に係り、その特徴は、
塗料供給ポンプと、その塗料供給ポンプの吐出側に接続した塗料往路と、前記塗料供給ポンプの吸入側に接続した塗料還路及び塗料補給路との夫々を複数の塗料種毎に設けて、それら塗料種別の塗料往路及び塗料還路を複数の塗装ガン装備部にわたらせて延設するとともに、塗料種別に前記塗料還路に接続する前記塗料往路の下流側端部の夫々にその塗料往路内の塗料圧力を目標圧力に調整する塗料種別の背圧調整手段を装備し、
前記塗装ガン装備部の夫々において、塗装ガンに供給する塗料を取り出す塗料取出部を構成するのに、塗料種別に前記塗料往路と前記塗料還路とを短絡的に接続する塗料種別の塗料バイパス路、及び、それら塗料種別の塗料バイパス路から各別に分岐した塗料種別の塗料取出路を設け、これら塗料種別の塗料取出路を選択的に開閉する塗料選択取出用の弁装置を設けてある塗料供給設備であって、
塗料種別の前記塗料供給ポンプの夫々を吐出流量の調整が可能な可変速ポンプにするとともに、
それら塗料供給ポンプにより前記塗料往路から前記塗料還路にわたって塗料を循環させる塗料種別の塗料循環運転を前記塗装ガン装備部の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換える制御手段を設け、
この制御手段を、正規運転では前記目標圧力として設定正規圧力値を前記背圧調整手段に指定するとともに前記塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値となる状態に変速制御し、かつ、セーブ運転では前記目標圧力として設定セーブ圧力値を前記背圧調整手段に指定するとともに前記塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値よりも小さい設定セーブ流量値となる状態に変速制御する構成にしてある点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、正規運転では、背圧調整手段により塗料往路内の塗料圧力を正規運転用の目標圧力として指定される設定正規圧力値に調整する状態で、可変速の塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値となるように変速制御するから、それら設定正規圧力値及び設定正規流量値として夫々、適当な圧力値及び流量値を設定しておけば、各塗料種について、その塗料循環運転を正規運転にすることにより、各塗装ガン装備部においてその塗料種の塗料を該当塗料種の塗料往路から塗料バイパス路及び塗料取出路を通じ適当かつ安定的な圧力・流量状態で良好に取り出すことができる。
【0011】
また、セーブ運転では、背圧調整手段により塗料往路内の塗料圧力をセーブ運転用の目標圧力として指定される設定セーブ圧力値に調整する状態で、可変速の塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値よりも小さい設定セーブ流量値となるように変速制御するから、その設定セーブ圧力値として適当な圧力値を設定するとともに、その設定セーブ流量値として正規運転用の上記設定正規流量値によりも小さく、かつ、塗料沈降を防止し得る適当な流量値を設定しておけば、各塗料種について、その塗料循環運転をセーブ運転にすることで、塗料沈降を十分に防止しながらも正規運転時に比べ塗料供給ポンプの消費動力を効果的に低減することができる。
【0012】
したがって、これら塗料供給ポンプにより塗料往路から塗料還路にわたって塗料を循環させる塗料種別の塗料循環運転を塗装ガン装備部の運転状況に応じて制御手段により正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換える上記構成によれば、各塗装ガン装備部において所要塗料種の塗料を適当かつ安定的な圧力・流量状態で良好に取り出すことができるとともに、塗料沈降も十分に防止しながら省エネも効果的に達成でき、全体として一層優れた塗料供給設備にすることができる。
【0013】
なお、第1特徴構成の実施において正規運転用の設定正規圧力値及び設定正規流量値、並びに、セーブ運転用の設定セーブ圧力値及び設定セーブ流量値の夫々は、必ずしも一定の値である必要はなく、それら各値を適当に変化させるようにしてもよい。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記塗装ガン装備部の運転スケジュールに基づいて、その運転スケジュール上で全ての塗装ガン装備部が所定時間にわたり運転休止となる全体休止期間のとき、塗料種別の塗料循環運転の全てをセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある点にある。
【0015】
つまり、この構成によれば、休日や夜間あるいは単位作業期間どうしの間の直間や休憩時間など、予め設定された運転スケジュール上で全ての塗装ガン装備部が所定時間にわたり運転休止となる全体休止期間には、塗料種別の塗料循環運転の全てを前記セーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にするから、これら全体休止期間のときにも全ての塗料種について固定速の塗料供給ポンプを運転して塗料の循環状態を塗料の取り出しが可能な高圧力・高流速状態に常時維持するようにしていた先述の従来設備などに比べ、大幅な省エネ効果を得ることができる。
【0016】
また、全体休止期間のとき塗料種別の塗料循環運転の全てを上記セーブ用交互運転とする場合には、一時的な正規運転の繰り返しにより塗料沈降を一層効果的かつ確実に防止することができ、しかも、その分、設定インターバル時間のセーブ運転における設定セーブ流量値を更に小さくしてさらに高い省エネ効果を期待することもできる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、塗料種別の塗料循環運転のうち、いずれかの塗装ガン装備部において塗料取り出し状態にある塗料種の塗料循環運転を正規運転にし、かつ、いずれの塗装ガン装備部においても塗料取り出し状態にない塗料種の塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある点にある。
【0018】
つまり、この構成によれば、塗装ガン装備部で塗装を行う塗装作業期間(換言すれば前記の全体休止期間を除く期間)においても、全ての塗装ガン装備部において塗料取り出しが行われていない塗料種については、その塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にするから、塗装作業期間の全期間にわたり全ての塗料種の塗料循環運転を正規運転にして、いずれかの塗装ガン装備部でのいずれかの塗料種の塗料取り出しに備えるのに比べ、塗料種別の塗料供給ポンプ全体としての消費動力を一層効果的に低減することができて、一層高い省エネ効果を得ることができる。
【0019】
なお、この構成の実施においては、いずれかの塗装ガン装備部での塗料取り出しの開始時点よりもある程度早い時点で、その取り出し塗料種についての塗料循環運転を正規運転に切り換えるようにして、その運転切り換えで生じる塗料流量や塗料圧力の過渡的な変動現象が塗装ガン装備部での塗料取り出しに影響を及ぼすことを防止するようにするのが望ましい。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
塗装作業域へ順次搬入する被塗物をその塗装作業域内の前記塗装ガン装備部において前記塗料取出部からの選択取り出し塗料により順次に塗装するとともに、塗装済の被塗物を塗装作業域から順次に搬出するのに対して、
前記制御手段は、被塗物夫々の前記搬出入の検出情報及び被塗物夫々の使用塗料種の情報を外部から取得し、それらの取得情報に基づいて、塗料種別の塗料循環運転のうち、塗装作業域内にある被塗物の使用塗料種についての塗料循環運転を正規運転にし、かつ、その他の塗料種の塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある点にある。
【0021】
つまり、この構成によれば、前記第3特徴構成と同様、塗装ガン装備部で塗装を行う塗装作業期間(換言すれば前記の全体休止期間を除く期間)においても、塗装ガン装備部での塗装のために塗装作業域内にある被塗物の使用塗料種以外の塗料種については、その塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にするから、塗装作業期間の全期間にわたり全ての塗料種の塗料循環運転を正規運転にして、いずれかの塗装ガン装備部でのいずれかの塗料種の塗料取り出しに備えるのに比べ、塗料種別の塗料供給ポンプ全体としての消費動力を一層効果的に低減することができて、一層高い省エネ効果を得ることができる。
【0022】
また、被塗物夫々の搬出入の検出情報に基づき運転の切り換えを行うから、運転切り換えのタイミングを計るための制御システムを簡素なものにし得るとともに、塗装作業域内における塗装ガン装備部での塗料取り出しの開始や停止に対し時間的な余裕のある状態で運転の切り換えを行わせることができて、運転切り換えの安定性や確実性も高めることができる。
【0023】
そしてまた、塗装作業域内における塗装ガン装備部での塗料取り出しの開始時点よりも早い時点で、その取り出し塗料種についての塗料循環運転を正規運転に切り換えることができるから、その運転切り換えで生じる塗料流量や塗料圧力の過渡的な変動現象が塗装ガン装備部での塗料取り出しに影響を及ぼすことも効果的に防止することができる。
【0024】
なお、本発明の第2,第3又は第4特徴構成の実施において、セーブ用交互運転を採用する場合、そのセーブ用交互運転においてセーブ運転どうし間で一時的に実施する正規運転(言わばセーブ用正規運転)は、セーブ用交互運転の運転期間以外の期間で実施する本来の正規運転と必ずしも設定正規圧力値及び設定正規流量値が等しい運転に限られるものではなく、セーブ用交互運転においてセーブ運転どうし間で一時的に実施する正規運転での設定正規圧力値や設定正規流量値を、セーブ用交互運転の運転期間以外の期間で実施する本来の正規運転での設定正規圧力値や設定正規流量値と異なるものにしてもよい。
【0025】
本発明の第5特徴構成は、前記第3又は第4特徴構成の塗料供給設備の運転方法に係り、その特徴は、
順次搬送される被塗物を前記塗装ガン装備部において前記塗料取出部からの選択取り出し塗料により順次に塗装することにおいて、順次搬送する被塗物の列を形成するのに、
全部の前記塗装ガン装備部又は一部の複数の前記塗装ガン装備部が同時に使用塗料種の同じ被塗物を塗装する状態が生じるように被塗物を配列する点にある。
【0026】
つまり、前記第3又は第4特徴構成の塗料供給設備において、順次搬送される被塗物を塗装ガン装備部で塗料取出部からの選択取り出し塗料により順次に塗装する形態を採る場合、上記の如く全部の塗装ガン装備部又は一部の複数の塗装ガン装備部が同時に使用塗料種の同じ被塗物を塗装する状態が生じるように被塗物の搬送列を形成すれば、それら塗装ガン装備部で使用塗料種の同じ被塗物を同時に塗装する際には、全ての塗装ガン装備部で互いに使用塗料種の異なる被塗物を同時に塗装する場合に比べ、塗料循環運転を正規運転にする塗料種の数を少なくすることができて、その分、塗料循環運転をセーブ運転又は前記セーブ用交互運転にしておける塗料種の数を増やすことができ、これにより、塗料種別の塗料供給ポンプ全体としての消費動力を一層効果的に低減することができて、一層高い省エネ効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明の第3又は第4特徴構成に係る塗料供給設備及び本発明の第5特徴構成に係る塗料供給設備の運転方法において、塗装ガン装備部の夫々で被塗物を順次に塗装する方式は、被塗物の個々を複数の塗装ガン装備部で順次に塗装する分担塗装方式、あるいは、被塗物の個々を各一の塗装ガン装備部だけで塗装する個別塗装方式のいずれにしてもよい。
【0028】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
順次搬送される被塗物の個々を複数の塗装ガン装備部で順次に塗装する分担塗装方式を採ることにおいて、それら複数の塗装ガン装備部が同時に使用塗料種の同じ被塗物を塗装する状態が連続して複数回生じるように被塗物の搬送列を形成する点にある。
【0029】
つまり、この構成によれば、全ての塗装ガン装備部で互いに使用塗料種の異なる被塗物を同時に塗装する場合に比べ塗料循環運転を正規運転にする塗料種の数を少なくした状態の前記の如き塗装を、被塗物送りを挟んで複数回にわたり連続させることができ、これにより、例えば、複数の塗装ガン装備部で使用塗料種の同じ被塗物を同時に塗装する一回の塗装だけで、被塗物送りを挟んだ次回の塗装では直ぐに、それら複数の塗装ガン装備部のうちの一つが他の塗装ガン装備部とは異なる塗料種の被塗物を塗装する状態になってしまう場合などに比べ、塗料種別の塗料供給ポンプ全体としての消費動力をさらに効果的に低減することができて、さらに高い省エネ効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1,図2は、コンベアにより順次搬送される被塗物W(本例では自動車ボディー)の塗装を行う塗装ブース1の塗料供給設備を示し、本例では2つの塗装ブース1を並設し、塗装作業域である各塗装ブース1の内部には、塗装ガン装備部2であるロボット塗装部2Aや手吹き塗装部2Bを被塗物搬送経路Kの横一側及び横他側の夫々で被塗物搬送方向に並設してある。
【0031】
これらの塗装ブース1では、被塗物Wの各部を複数の塗装ガン装備部2で分担して順次に塗装する方式や、所謂ウエットオンウエット方式などの重ね塗り塗装における各層の塗装を複数の塗装ガン装備部2で分担して順次に行う方式などの分担塗装方式により、順次搬送される被塗物Wを各塗装ガン装備部2において塗装ガン3により順次に塗装する。
【0032】
各塗装ブース1について、被塗物搬送経路Kの横一側方における塗装ブース1の外側部には、所謂一次側塗料循環系を形成する塗料往路4及び塗料還路5夫々の横一側路部分4A,5Aを、それらの上流側端を被塗物搬送方向の一端側(本例では搬送方向の下手側)に位置させた状態で、かつ、被塗物搬送経路Kの横一側に位置する塗装ガン装備部2の並設例に沿わせて被塗物搬送方向の他端側(本例では搬送方向の上手側)へ延設し、これに続いて、塗装ブース1の被塗物搬送方向における他端側では、それら横一側路部分4A,5Aの下流側端から続く塗料往路4及び塗料還路5夫々の渡り路部分4B,5Bを塗装ブース1に対し跨らせた状態(換言すれば、被塗物搬送経路Kに対し跨がらせた状態)で被塗物搬送経路Kの横他側の方へ渡らせてある。
【0033】
そして、これに続き、被塗物搬送経路Kの横他側方における塗装ブース1の外側部には、上記渡り路部分4B,5Bの下流側端から続く塗料往路4及び塗料還路5夫々の横他側路部分4C,5Cを、被塗物搬送経路Kの横他側に位置する塗装ガン装備部2の並設例に沿わせて被塗物搬送方向の一端側へ延設してある。
【0034】
つまり、各塗装ブース1について、塗料往路4及び塗料還路5の夫々を、上記の横一側路部分4A,5Aと渡り路部分4B,5Bと横他側路部分4C,5CとからなるUターン配管構造にしてある。
【0035】
2つの塗装ブース1夫々の塗料往路4は、それらの上流側端(即ち、横一側路部分4Aの上流側端)を共通の塗料供給ポンプPの吐出側に接続された主塗料往路6に対して並列状態で接続し、同じく、2つの塗装ブース1夫々の塗料還路5は、それらの下流側端(即ち、横他側路部分5Cの下流側端)を共通の塗料供給ポンプPの吸入側に接続された主塗料還路7に対して並列状態で接続してある。
【0036】
また、各塗装ブース1において、塗料往路4の下流側端(即ち、横他側路部分4Cの下流側端)は、塗料還路5の下流側端部(即ち、横他側路部分5Cの下流側端部)に接続してあり、より詳細には、塗料還路5において最も下流側に位置する後述塗料バイパス路12の接続部よりも下流側で塗料還路5に接続してある。
【0037】
そして、各塗装ブース1において、塗料往路4の下流側端部(横他側路部分4Cの下流側端部)には、塗料往路4の管内塗料圧力を目標圧力に調整する背圧レギュレータRを装備してあり、より詳細には、塗料往路4において最も下流側に位置する後述塗料バイパス管路12の接続部よりも下流側で塗料往路4にエアオペレーション型の背圧レギュレータRを装備してある。
【0038】
9Aは塗料供給ポンプPとともに塗装ブース1の外部に設置した塗料タンク、9Bは主塗料還路7を通じて戻った塗料T及び塗料タンク9Aからの補給塗料Tを攪拌処理する攪拌機内蔵の攪拌タンクであり、この攪拌タンク9Bからの塗料送出路10Aを塗料供給ポンプPの吸入側に接続してある。
【0039】
また、攪拌タンク9Bには、その内部から塗料Tを取り出して、その取り出し塗料Tを再び攪拌タンク9Bに戻す塗料取入用の循環路10Bを設け、この塗料取入用循環路10Bに対して主塗料還路7を接続するとともに塗料タンク9Aからの塗料補給路10Cを接続してある。
【0040】
略言すれば、主塗料還路7と塗料タンク9Aからの塗料補給路10Cとを攪拌タンク9Bを介して塗料供給ポンプPの吸入側に接続してある。
【0041】
RRは各塗装ブース1からの塗料還路5夫々の下流側端部に装備した還路背圧レギュレータ、PPは塗料取入用循環路10Bの循環ポンプ、fr,fsは夫々、循環塗料T中の異物を分離除去するフィルタ装置である。
【0042】
なお、図1,図2では1つの塗料循環系Sのみを示してあるが、この塗装ブース1では各塗装ガン装置部2での塗装において被塗物Wごとの塗色変更を可能にするため、上記塗料循環系Sを互いに色の異なる20色〜30色程度のn色の塗料Ta〜Tn(本例では水を溶剤とするn色の水性塗料)について同一の配管形態で各別に設けてあり、図中で示す塗料循環系Sは、これら各色塗料Ta〜Tnごとに設けた塗料色別(塗料種別)の塗料循環系Sa〜Sn夫々を代表するものである。
【0043】
すなわち、塗料往路4及び塗料還路5は各色塗料Ta〜Tnごとに設けた塗料往路4a〜4n及び塗料還路5a〜5nを代表し、主塗料往路6及び主塗料還路7は各色塗料Ta〜Tnごとに設けた主塗料往路6a〜6n及び主塗料還路7a〜7nを代表し、塗料供給ポンプP、塗料タンク9A、攪拌タンク9Bの夫々も同様に各色塗料Ta〜Tnごとに設けた塗料供給ポンプ、塗料タンク、攪拌タンクを代表するものである。
【0044】
各塗装ブース1において、塗装ガン装備部2の夫々には塗装ガン3に供給する塗料T(Ta〜Tn)を上記塗料色別の塗料循環系S(Sa〜Sn)から選択的に取り出す塗料取出部11を設けてあり、この塗料取出部11は、各塗装ガン装備部2の夫々において、図3,図4に示す如く各色塗料T(Ta〜Tn)ごとに最寄の塗料往路4(4a〜4n)と最寄の塗料還路5(5a〜5n)とを短絡的に接続する塗料色別の塗料バイパス路12(12a〜12n)、及び、これら塗料色別の塗料バイパス路12(12a〜12n)から各別に分岐した塗料色別の塗料取出路13(13a〜13n)を設け、これら塗料色別の塗料取出路13(13a〜13n)を塗料選択取出用弁装置としての色替バルブユニット14における塗料色別の塗料取出弁15(15a〜15n)に対し各別に接続した構成にしてある。
【0045】
そして、各塗装ブース1のブース壁1aに固定した色替バルブユニット14には、上記塗料色別の塗料取出弁15(15a〜15n)を介して各塗料取出路13(13a〜13n)を並列に接続したマニホールド管14aを設けてあり、塗料取出部11の端末構造としては、このマニホールド管14aから延出させた各色共通の端末取出路16をブース壁1aに貫通させて各塗装ブース1の内部に臨ませた構造にしてある。
【0046】
つまり、各塗装ガン装備部2において所要塗料色の塗料取出弁15(15a〜15n)を選択的に開弁することで、塗料供給ポンプP(Pa〜Pn)により塗料色別の塗料往路4(4a〜4n)を通じて塗料色別の塗料バイパス路12(12a〜12n)に供給される各色塗料T(Ta〜Tn)のうち所要色の塗料のみを、その所要色の塗料取出路13(13a〜13n)を通じ色替バルブユニット14のマニホールド管14aに導入して端末取出路16へ送出するようにしてある。
【0047】
そして、各塗装ガン装備部2において塗料色別の塗料往路4(4a〜4n)から塗料色別の塗料バイパス路12(12a〜12n)に供給される各色塗料T(Ta〜Tn)のうち端末取出路16へ取り出す塗料以外の塗料の全量、及び、端末取出路16へ取り出す塗料についてはその余剰分を、各塗料バイパス路12(12a〜12n)を通じ塗料色別の塗料還路5(5a〜5n)に対し短絡的に戻し、これにより、各色塗料T(Ta〜Tn)について塗料往路4(4a〜4n)と各塗装ガン装備部2の塗料バイパス路12(12a〜12n)と塗料還路5(5a〜5n)とにわたる塗料循環を保つようにしてある。
【0048】
すなわち、このように各塗料色の塗料循環系S(Sa〜Sn)において塗料T(Ta〜Tn)の循環状態を保つことで、各塗料循環系S(Sa〜Sn)を形成する配管内において塗料溶剤(本例では水)中の顔料等の塗料成分が沈降する所謂塗料沈降の発生を防止する。
【0049】
各塗装ブース1について、塗装ガン装備部2のうち塗装ロボット17により塗装を行うロボット塗装部2Aについては、ブース壁1aの内側に配設したドッキングステーション18に色替バルブユニット14からの端末取出路16を接続してあり、塗装ロボット17のアーム先端に配備した塗装ガン3(3A)には、一回の塗装で使用する塗料Tを充填する塗料充填タンク19を装備してある。
【0050】
すなわち、ロボット塗装部2Aでは、一回の塗装を終えるごとに塗装ロボット17の動作により塗装ガン3Aをドッキングステーション18へ移動させて、塗装ガン側のドッキングポート20aとドッキングステーション側のドッキングポート20bとを接合することで、次の塗装に用いる所要色の塗料T(Ta〜Tn)を端末取出路16から塗装ガン3Aの塗料充填タンク19に充填し、その塗料充填の完了後、再び塗装ロボット17の動作により両ドッキングポート20a,20bを切り離して塗装ガン3Aを塗装作業側に移動させた状態で、塗料充填タンク19内の塗料T(Ta〜Tn)を用いて次回の塗装を行う方式を採っている。
【0051】
一方、塗装ガン装備部2のうち作業者が手吹き用塗装ガン3(3B)を用いて塗装を行う手吹き塗装部2Bについては、塗料供給ホース21を通じて手吹き用塗装ガン3(3B)を端末取出路16に接続してあり、各回の塗装において、この塗料供給ホース21を通じ所要色の塗料T(Ta〜Tn)を手吹き用塗装ガン3Bに供給する。
【0052】
配管構成については図1,図2に示す如く、塗料色別の塗料循環系S(Sa〜Sn)の夫々について、各塗装ブース1の塗料往路4(4a〜4n)を、その全長にわたって同一管径の管路にし、一方、各塗装ブース1の塗料還路5(5a〜5n)はその下流側ほど管径が段階的に大きくなる筍状の管路(即ち、各塗料バイパス路12からの塗料合流により塗料流量が増大するほど大きな管径となる筍状の管路)にしてある。
【0053】
つまり、この配管構成において管路全長にわたり同一の管径とする塗料往路4の管径dを塗料流量に応じて選定することにより、塗料往路4における塗料流速を比較的小さなものに抑えて、その塗料往路4の管内圧力分布が管路全長にわたり極力均平になるようにし、これにより、塗料色別の塗料循環系S(Sa〜Sn)の夫々について、各塗装ブース1の塗料往路4を各塗装ガン装備部2の塗料バイパス路12に対する塗料Tの分配ヘッダとして機能させる形態で塗料循環させるようにする。
【0054】
一方、下流側ほど管径を段階的に大きくする塗料還路5については、塗料還路5における管路方向各部の管径を各部の塗料流量に応じて選定することにより、塗料色別の塗料循環系S(Sa〜Sn)の夫々について、各塗装ブース1の塗料還路5における管路方向各部の塗料流速を概ね均等な比較的大きな流速に保った状態で塗料循環させるようにする。
【0055】
そして、これらのことで各塗装ブース1において塗装ガン装備部2夫々の塗料バイパス路入口側の圧力条件を均等化するとともに、塗装ガン装備部2夫々の塗料バイパス路出口側の流速条件も均等化し、これにより、各塗装ブース1について塗装ガン装備部2の夫々に対する塗料分配機能、即ち、塗装ガン装備部2夫々の塗料バイパス路12及びそれから分岐の塗料取出路13に対して十分な塗料を適切に供給する機能を高く確保する。
【0056】
また、塗料還路5を下流側ほど管径が段階的に大きくなる管路にして、塗料還路5の管路方向各部における塗料流速を概ね均等な比較的大きな流速に保った状態で塗料循環させることにより、前述の塗料沈降を設備全体として一層確実に防止する。
【0057】
なお、この種の塗料供給設備において本来的に要求される上記塗料分配機能については、各塗装ブース1毎に塗料往路4及び塗料還路5の夫々を前述のUターン配管構造とすることにおいて、前記の如く塗料往路4の下流側端(横他側路部分4Cの下流側端)を塗料還路5において最も下流側に位置する塗料バイパス路12の接続部よりも下流側で塗料還路5(横他側路部分5C)に接続する循環路構造とすることにより、各塗装ブース1について塗料還路5の長尺化を回避しながら塗料循環系を所謂リバースリターン方式のものにし、これにより、前述の如く塗装ガン装備部2の夫々について塗料バイパス路入口側の圧力条件と塗料バイパス路出口側の流速条件とをともに均等化することと相俟って、各塗装ガン装備部2の塗料バイパス路12及びそれから分岐の塗料取出路13に対して十分な塗料を適切に供給する本来の塗料分配機能をさらに高く確保する。
【0058】
設備の運転制御については、塗料色別の各塗料供給ポンプPを吐出流量の調整が可能な可変速ポンプにし、一方、塗料色別の各塗料往路4には、背圧レギュレータRの上流側近傍で塗料往路4の管内塗料圧力p(即ち、背圧レギュレータRから見た背圧)を検出する圧力センサ22、及び、その圧力センサ22の検出情報に基づき塗料往路4の管内塗料圧力pを目標圧力psに調整するように背圧レギュレータRを圧縮空気により調整操作するレギュレータ制御器23を設けてある。
【0059】
すなわち、これら背圧レギュレータR、圧力センサ22及びレギュレータ制御器23は、各塗料往路4内の塗料圧力pを目標圧力psに調整する塗料色別の背圧制御手段を構成する。
【0060】
そして、塗装ブース1外の適当箇所には、塗料色別の各レギュレータ制御器23に対して上記目標圧力psを指定するとともに、可変速ポンプとした塗料色別の各塗料供給ポンプPをインバータ制御により変速制御する統括制御器24を設けてある。
【0061】
また、各塗装ブース1には、ブース1に順次搬入する被塗物Wをブース1内の塗装ガン装備部2で順次に塗装して塗装済の被塗物Wをブース1から順次に搬出することに対し、それら被塗物W夫々のブース1内への搬入を検出するとともに搬入被塗物W夫々の車種や使用塗料色等の情報を読み取る入口側監視装置25A、及び、塗装済の被塗物W夫々のブース1外への搬出を検出する出口側監視装置25Bを設けてある。
【0062】
統括制御器24は、塗装ガン装備部2の予め設定された運転スケジュール、及び、各監視装置25A,25Bからの取得情報に基づき、各レギュレータ制御器23に対する目標圧力psの指定と各塗料供給ポンプPの変速制御とにより、塗料色別の各塗料循環運転を各塗装ガン装備部2の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換えるものであり、正規運転では、該当塗料色の塗料循環運転につき、目標圧力psとして設定正規圧力値psa(例えば7bar)をレギュレータ制御器23に対して指定するとともに、塗料供給ポンプPの吐出流量Lが設定正規流量値Laとなる状態に塗料供給ポンプPをフィードフォワード方式やフィードバック方式で変速制御するものにしてある。
【0063】
また、セーブ運転では、該当塗料色の塗料循環運転につき、目標圧力psとして正規運転用の設定正規圧力値psaよりも小さい設定セーブ圧力値psb(例えば1bar)をレギュレータ制御器23に対して指定するとともに、塗料供給ポンプPの吐出流量Lが正規運転用の設定正規流量値Laよりも小さい設定セーブ流量値Lb(例えばLa/3程度の流量値)となる状態に塗料供給ポンプPをフィードフォワード方式やフィードバック方式で変速制御するものにしてある。
【0064】
そして、統括制御器24は、塗装ガン装備部2の運転状況に応じた正規運転とセーブ運転との切り換えとして、各塗装ガン装備部2で塗装を行う塗装作業期間では、監視装置25A,25Bからの取得情報に基づき、塗料色別の塗料循環運転のうち各塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色についての塗料循環運転を正規運転にし、かつ、その他の塗料色の塗料循環運転を設定インターバル時間t1(例えば1時間)のセーブ運転とその設定インターバル時間t1よりも短時間t2(例えば1分間)の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にするものにしてある。
【0065】
また、休日や夜間あるいは単位作業期間どうしの間の直間や休憩時間など運転スケジュール上で全ての塗装ガン装備部2が所定時間にわたり運転休止となる全体休止期間では、塗料色別の塗料循環運転の全てを設定インターバル時間t1のセーブ運転とその設定インターバル時間t1よりも短時間t2の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にするものにしてある。
【0066】
つまり、図5は20色〜30色程度の塗料色別の塗料循環運転を行う場合について上記の如き運転切り換えを行った場合の塗装作業期間における塗料供給ポンプPの正規運転台数の推移を模式的に示すが、この図5に示されるように上記の如き運転切り換えを行った場合、塗装作業期間における塗料供給ポンプPの時間平均の正規運転台数を3.5台程度にすることができ、塗装作業期間において20色〜30色の全ての塗料色のポンプ、すなわち20台〜30台の塗料供給ポンプの塗料循環運転を正規運転状態に維持していた従前の運転方式に比べ、設備全体としてのポンプ消費動力を大幅に低減することができる。
【0067】
また、図6は上記セーブ用交互運転の運転状態を示すが、塗装作業期間において塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色以外の塗料色について塗料循環運転をセーブ用交互運転にすることに加え、上記の如く運転スケジュールに基づき全体休止期間において全ての塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転にすることにより、全体休止期間においても20色〜30色の全ての塗料色の塗料循環運転を正規運転状態に維持にしていた従前の運転方式に比べ、設備全体としてのポンプ消費動力を一層大幅に低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、セーブ用交互運転において実施する一時的な正規運転(言わばセーブ用正規運転)の設定正規圧力値及び設定正規流量値を、本来の正規運転(即ち、各塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色について実施する正規運転)の設定正規圧力値psa及び設定正規流量値Laよりもある程度小さい値で、かつ、セーブ運転用の設定セーブ圧力値psb及び設定セーブ流量値Lbよりも大きい値にしてある。
【0069】
さらに、本実施形態では、各塗装ブース1において順次搬送される被塗物Wの個々を複数の塗装ガン装備部2で順次に塗装する分担塗装方式を採ることにおいて、各塗装ブース1に対しコンベア等の搬送装置により順次搬送する被塗物Wの搬送列を形成するのに、使用塗料色の同じ被塗物Wを各塗装ブース1の収容被塗物数よりも多い数(例えば10台)だけ連続させて配列した被塗物組を塗料色毎に形成して、これら塗料色毎の被塗物組を順に配列することで各塗装ブース1に対する被塗物Wの搬送列を形成するようにし、これにより、各塗装ブース1における複数の塗装ガン装備部2の全てが同時に使用塗料色の同じ被塗物Wを塗装する状態が各塗料色について連続して複数回生じるようにする。
【0070】
つまり、図7はこのように搬送列を形成した場合の塗装作業期間における塗料供給ポンプPの正規運転台数の推移を模式的に示すが、この図7に示されるように上記の如く搬送列を形成した場合、塗装作業期間における塗料供給ポンプPの時間平均の正規運転台数をさらに1.7台程度まで低減することができ、設備全体としてのポンプ消費動力をさらに低減することができる。
【0071】
以上、本実施形態において、統括制御器24は塗料供給ポンプPにより塗料往路4から塗料還路5にわたって塗料Tを循環させる塗料色別(塗料種別)の塗料循環運転を塗装ガン装備部2の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換える制御手段を構成する。
【0072】
〔別の実施形態〕
次の本発明の別実施形態を列記する。
【0073】
前述の実施形態では、塗料往路4及び塗料還路5を横一側路部分4A、5Aと渡り路部分4B,5Bと横他側路部分4C,5CからなるUターン配管構造にする例を示したが、塗料往路4及び塗料還路5の夫々は単に直線的に延びる配管構造や蛇行状に延びる配管構造あるいは不規則に屈曲する配管構造など、どのような延設形態の配管構造にしてもよい。
【0074】
また前述の実施形態では、塗料往路4を全長にわたって同一管径の管路にし、塗料還路5を下流側ほど管径が漸次的に大きくなる筍状の管路にする例を示したが、これに限らず、塗料往路4及び塗料還路5の夫々を全長にわたって同一管径の管路にしたり、あるいは、塗料往路4を下流側ほど管径が漸次的に小さくなる筍状の管路にするとともに塗料還路5を下流側ほど管径が漸次的に大きくなる筍状の管路にするなど、塗料往路4及び塗料還路5夫々の管路構造もどのようなものであってもよい。
【0075】
さらにまた、前述の実施形態では、塗料往路4の下流側端を塗料還路5の下流側端部に接続する例を示したが、塗料往路4の下流側端を塗料還路5の上流側端部に接続する循環構造などを採用してもよい。
【0076】
複数の塗装ガン装備部2の夫々で被塗物Wを順次に塗装するのに、前述の実施形態では、順次搬送される被塗物の個々を塗装ブース1内の複数の塗装ガン装備部2で順次に塗装する分担塗装方式を示したが、これに代え、順次搬送される被塗物Wの個々を各一の塗装ガン装備部2だけで塗装する個別塗装方式にしてもよい。
【0077】
また、各塗装ガン装備部2に被塗物Wを順次搬送するのに、前述の実施形態の如く被塗物搬送経路Kに沿って直列的に塗装ガン装備部2を並設する形態に代え、各塗装ガン装備部2に対して並列的に被塗物Wを順次搬送する形態にしてもよい。
【0078】
塗装ガン装備部2の運転状況に応じて塗料色別(塗料種別)の塗料循環運転の夫々を正規運転とセーブ運転とに切り換えるのに、前述の実施形態では、塗装ガン装備部2の運転スケジュールと各監視装置25A,25Bからの取得情報とに基づき切り換えを行う例を示したが、これに代え、塗装ガン装備部2の運転スケジュールのみに基づいて正規運転とセーブ運転との切り換えを行うようにしたり、各監視装置25A,25Bから取得情報のみに基づいて正規運転とセーブ運転との切り換えを行うようにしてもよい。
【0079】
また、前述の実施形態の如く塗装ブース1に設けた入口側の監視装置25A及び出口側の監視装置25Bからの取得情報に基づき正規運転とセーブ運転との切り換えを行うのに代え、塗装ガン装備部2の各々に設けた監視装置からの取得情報やその他の設備管理手段からの取得情報に基づき正規運転とセーブ運転との切り換えを行うようにしてもよい。
【0080】
前述の実施形態では、塗装作業期間の運転切り換えとして、塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色についての塗料循環運転を正規運転にし、その他の塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転にする例を示したが、これに代え、塗料色別の塗料循環運転のうち、いずれかの塗装ガン装備部2において塗料取り出し状態にある塗料色の塗料循環運転を正規運転にし、かつ、いずれの塗装ガン装備部2においても塗料取り出し状態にない塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転にするようにしてもよい。
【0081】
また、前述の実施形態では、塗装作業期間において塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色以外の塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転にし、また、全休止期間において全ての塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転にしたが、これに代え、塗装作業期間において塗装ブース1内にある被塗物Wの使用塗料色以外の塗料色の塗料循環運転や、全休止期間における全ての塗料色の塗料循環運転、あるいはまた、いずれの塗装ガン装備部2においても塗料取り出し状態にない塗料色の塗料循環運転をセーブ用交互運転に代え継続してセーブ運転にするようにしてもよい。
【0082】
セーブ運転において背圧調整手段R,22,23による背圧調整の目標圧力psとする設定セーブ圧力値psbは必ずしも正規運転用の設定正規圧力値psaより小さい値にする必要はなく、場合によってはセーブ運転用の設定セーブ圧力値psbを正規運転用の設定正規圧力値psaと等しくし、セーブ運転では塗料供給ポンプPの吐出流量Lのみを正規運転時より小さくするようにしてもよい。
【0083】
状況に応じた塗料循環運転の切り換えとしては、塗料種別の塗料循環運転を正規運転とセーブ運転とにのみ切り換えるのに代え、正規運転やセーブ運転とは内容が異なる別モードの運転を設定して、塗料種別の塗料循環運転を状況に応じて正規運転とセーブ運転とを含む3以上の複数種の運転に選択的に切り換えるようにしてもよい。
【0084】
塗料種別の塗料循環運転として前述の実施形態では塗料色別の塗料循環運転を行う例を示したが、塗料種別の塗料循環運転は例えば塗料溶剤種別の塗料循環運転や塗料組成種別の塗料循環運転など塗料色別以外のものであってもよい。
【0085】
前述の実施形態では、エアーオペレーション型の背圧レギュレータRを塗料往路4の下流側端部に装備する例を示したが、塗料往路4内の塗料圧力pを目標圧力psに調整する背圧調整手段としては、その目標圧力psの変更が可能なものであれば、エアーオペレーション型の背圧レギュレータを用いるものに限らず、種々の型式・方式のものを採用できる。
【0086】
塗装ガン装備部2は前述の実施形態で示したロボット塗装部2Aや手吹き塗装部2Bに限られるものではなく、塗装ガンを往復動作させながら塗装を行うレシプロ式塗装機などであってもよい。また、被塗物Wは自動車ボディーに限られるものではなく、バンパーなどの自動車部品や電化製品のケーシングなどであってもよい。
【0087】
本発明による塗料供給設備は、塗装ブースへの適用に限らず、複数の塗装ガン装備部を有する塗装設備であれば、どのような塗装設備にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】塗料供給設備の平面視全体構成図
【図2】塗装ブース周りの設備構成図
【図3】塗料取出部の拡大側面図
【図4】塗料取出部の拡大平面図
【図5】塗装作業期間におけるポンプ運転台数の推移を模式的に示すグラフ
【図6】セーブ用交互運転の運転状態を示すグラフ
【図7】塗装作業期間におけるポンプ運転台数の推移を模式的に示す別グラフ
【符号の説明】
【0089】
P 塗料供給ポンプ
4 塗料往路
5 塗料還路
10C 塗料補給路
2 塗装ガン装備部
p 塗料圧力
ps 目標圧力
R,22,23 背圧調整手段
3 塗装ガン
T 塗料
11 塗料取出部
12 塗料バイパス路
13 塗料取出路
14 塗料選択取出用の弁装置
L 吐出流量
24 制御手段
psa 設定正規圧力値
La 設定正規流量値
psb 設定セーブ圧力値
Lb 設定セーブ流量値
W 被塗物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料供給ポンプと、その塗料供給ポンプの吐出側に接続した塗料往路と、前記塗料供給ポンプの吸入側に接続した塗料還路及び塗料補給路との夫々を複数の塗料種毎に設けて、それら塗料種別の塗料往路及び塗料還路を複数の塗装ガン装備部にわたらせて延設するとともに、塗料種別に前記塗料還路に接続する前記塗料往路の下流側端部の夫々にその塗料往路内の塗料圧力を目標圧力に調整する塗料種別の背圧調整手段を装備し、
前記塗装ガン装備部の夫々において、塗装ガンに供給する塗料を取り出す塗料取出部を構成するのに、塗料種別に前記塗料往路と前記塗料還路とを短絡的に接続する塗料種別の塗料バイパス路、及び、それら塗料種別の塗料バイパス路から各別に分岐した塗料種別の塗料取出路を設け、これら塗料種別の塗料取出路を選択的に開閉する塗料選択取出用の弁装置を設けてある塗料供給設備であって、
塗料種別の前記塗料供給ポンプの夫々を吐出流量の調整が可能な可変速ポンプにするとともに、
それら塗料供給ポンプにより前記塗料往路から前記塗料還路にわたって塗料を循環させる塗料種別の塗料循環運転を前記塗装ガン装備部の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とに自動的に切り換える制御手段を設け、
この制御手段を、正規運転では前記目標圧力として設定正規圧力値を前記背圧調整手段に指定するとともに前記塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値となる状態に変速制御し、かつ、セーブ運転では前記目標圧力として設定セーブ圧力値を前記背圧調整手段に指定するとともに前記塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値よりも小さい設定セーブ流量値となる状態に変速制御する構成にしてある塗料供給設備。
【請求項2】
前記制御手段は、前記塗装ガン装備部の運転スケジュールに基づいて、その運転スケジュール上で全ての塗装ガン装備部が所定時間にわたり運転休止となる全体休止期間のとき、塗料種別の塗料循環運転の全てをセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある請求項1記載の塗料供給設備。
【請求項3】
前記制御手段は、塗料種別の塗料循環運転のうち、いずれかの塗装ガン装備部において塗料取り出し状態にある塗料種の塗料循環運転を正規運転にし、かつ、いずれの塗装ガン装備部においても塗料取り出し状態にない塗料種の塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある請求項1又は2記載の塗料供給設備。
【請求項4】
塗装作業域へ順次搬入する被塗物をその塗装作業域内の前記塗装ガン装備部において前記塗料取出部からの選択取り出し塗料により順次に塗装するとともに、塗装済の被塗物を塗装作業域から順次に搬出するのに対して、
前記制御手段は、被塗物夫々の前記搬出入の検出情報及び被塗物夫々の使用塗料種の情報を外部から取得し、それらの取得情報に基づいて、塗料種別の塗料循環運転のうち、塗装作業域内にある被塗物の使用塗料種についての塗料循環運転を正規運転にし、かつ、その他の塗料種の塗料循環運転をセーブ運転、又は、設定インターバル時間のセーブ運転とその設定インターバル時間よりも短時間の一時的な正規運転とを交互に繰り返すセーブ用交互運転にする構成にしてある請求項1又は2記載の塗料供給設備。
【請求項5】
請求項3又は4記載の塗料供給設備の運転方法であって、順次搬送される被塗物を前記塗装ガン装備部において前記塗料取出部からの選択取り出し塗料により順次に塗装することにおいて、順次搬送する被塗物の列を形成するのに、
全部の前記塗装ガン装備部又は一部の複数の前記塗装ガン装備部が同時に使用塗料種の同じ被塗物を塗装する状態が生じるように被塗物を配列する塗料供給設備の運転方法。
【請求項6】
順次搬送される被塗物の個々を複数の塗装ガン装備部で順次に塗装する分担塗装方式を採ることにおいて、それら複数の塗装ガン装備部が同時に使用塗料種の同じ被塗物を塗装する状態が連続して複数回生じるように被塗物の搬送列を形成する請求項5記載の塗料供給設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−154042(P2009−154042A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331849(P2007−331849)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】