説明

塩化ビニル樹脂系壁紙からの紙成分および塩化ビニル成分の分離回収方法ならびに再生塩化ビニル樹脂

【課題】 紙成分とPVC被覆層とを含む壁紙を、基材裏打ち紙とPVC被覆層のそれぞれ素材の品質を維持して高精度、高効率で分離回収し、しかも回収後のPVC成分の粉体特性を改善して、再生原料市場で扱い易い材料として再資源化する。
【解決手段】 A)壁紙の粉砕の大きさを規制する、目開きが1mm以上25mm以下のパンチングメタルまたはスクリーン5を設置した粉砕機4によりPVC壁紙を粉砕する粉砕工程と、B)壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を分離装置7により紙成分とPVC成分とに分離する分離工程と、C)分離工程で分離されたPVC成分を攪拌機にて攪拌する工程との3工程を含み、攪拌後のPVC成分の粉体の嵩比重が0.2〜1.0である、PVC壁紙から、再生された紙成分と再生されたPVC成分とを分離回収する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装などに用いられる塩化ビニル系樹脂壁紙から、紙成分と樹脂被覆層を分離回収する方法に関し、さらに詳しくは、粉体特性の改善された再生塩化ビニル樹脂を分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材としての裏打ち紙の表面に塩化ビニル系樹脂(以下、「PVC」と記す。)などの合成樹脂層をコーティング法またはカレンダー法などで被覆した壁紙は知られている。しかし、リフォームなど貼り替え時に発生する廃品、製造工程から発生する不具合品、デザインなどの変更品、長期在庫品の処分品など、発生する廃壁紙は、裏打ち基材の紙とPVCに代表される表層の合成樹脂被覆層との分離が非常に難しい。このため、これら廃壁紙は再資源化できず、大部分が埋立処理、焼却処理などで処理されている。しかし、埋立処理スペースが限られ、また、特にPVC壁紙の場合、焼却時に塩素ガスなどが発生することから焼却排ガス対策が必要であり、処理施設建設費の高騰、処理費用の高騰と環境問題が付随して、廃壁紙の処理は困難に遭遇している。この問題を解決するために、様々な壁紙の再利用方法、裏打ち基材の紙と合成樹脂被覆層との分離方法が検討、開発されてきた。
【0003】
例えば、壁紙の再利用方法として、裏打ち紙が付着したままのPVC壁紙を粉砕、若しくは加熱混練してペレット等に加工する方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、これらの方法では、再生材料の加工性、機械特性が劣り、使用用途が制限される問題があった。裏打ち基材とPVC被覆層の分離、回収方法として、水または温水を用いて壁紙の裏打ち紙を湿潤させてPVCから離散する方法(例えば、特許文献3参照。)、あるいは有機溶剤を用いて壁紙のPVC層を膨潤せしめて基材裏打ち紙からPVCを分離、回収する方法が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)。しかし、これらの裏打ち紙やPVC層を湿潤させて分離する方法は、被覆PVC層の回収、再生を主とするものであって、基材裏打ち紙の回収、再生はあまり考慮されていない。さらに、排水処理装置、溶剤除去装置、溶剤回収装置等大規模な処理装置が必要で処理効率が悪い。また、これらの方法では、PVCと基材裏打ち紙の分離が充分でなく、回収PVC中に裏打ち紙等の繊維質が混入して、良好な加工性、機械特性を有した再生PVCを得ることが出来ない。さらに、廃壁紙をジェット渦流中に投入して微粉砕後、分離する方法が開示されている(特許文献6参照。)。しかし、この方法では、微粉砕に高エネルギーを必要とするとともに、基材裏打ち紙の繊維を細かく切断しているため、回収した基材紙成分は再生紙として強度などの品質が劣り用途が非常に狭く制限される問題がある。また、廃壁紙を、衝撃粉砕機により粉砕し、吸引用ダクトから吸引することで、軽比重物である紙をPVCから分離する方法も開示されている(特許文献7参照。)。この方法によれば、衝撃粉砕機の排出側に重比重物であるPVCが残る一方、軽比重物である紙成分は吸引分離されるので、PVCと紙成分とを簡単に分別することができるが、さらに高い分離精度と再生材料の生産性の向上が望まれていた。
【特許文献1】特開平06−114838号公報
【特許文献2】特開平06−126745号公報
【特許文献3】特開昭52−078979号公報
【特許文献4】特開平09−059423号公報
【特許文献5】特開平05−017616号公報
【特許文献6】特開平05−247863号公報
【特許文献7】特開平11−197605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、廃壁紙などの壁紙からの紙成分とPVCなどの合成樹脂被覆層との分離回収における問題を解消し、紙成分とPVC被覆層とを含む壁紙を、基材裏打ち紙とPVC被覆層のそれぞれ素材の品質を維持して、高い精度で、効率良く分離、回収し、しかも回収後のPVC成分の粉体特性を改善して、再生原料市場で扱い易い材料として再資源化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塩化ビニル樹脂系壁紙(以下、「PVC壁紙」と記す。)から、再生された紙成分と再生された塩化ビニル樹脂成分(以下、「PVC成分」と記す。)とを分離回収する方法であって、
A)壁紙の粉砕の大きさを規制する、目開きが1mm以上25mm以下のパンチングメタルまたは格子の目開きが1mm以上25mm以下であるスクリーンを設置した粉砕機により、PVC壁紙を粉砕する粉砕工程と、
B)前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を分離装置により紙成分とPVC成分とに分離する分離工程と、
C)前記分離工程で分離されたPVC成分を攪拌機にて攪拌する工程と、
の3工程を含み、前記攪拌後のPVC成分の粉体の嵩比重が0.2〜1.0であることを特徴とする、PVC壁紙からの紙成分およびPVC成分の分離回収方法である(請求項1)
【0006】
本発明は、前記分離工程で用いる分離装置が、略縦円筒形胴部の上部に真空吸引口を設け下部を漏斗状に形成するとともに該漏斗状部に空気補給口を設けた分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を搬入し、該壁紙粉砕物中のPVC成分を前記円形板の周縁部から落下させる一方、紙成分は、空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて前記真空吸引口から吸引、排出するようにした風力分離装置であることを特徴とする前記分離回収方法である(請求項2)。
【0007】
本発明は、前記風力分離装置における分離塔の縦円筒形胴部の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5≦H/D≦3.0であることを特徴とする前記分離回収方法である(請求項3)。
【0008】
本発明は、前記PVC壁紙の粉砕に衝撃粉砕機を用いることを特徴とする前記分離回収方法である(請求項4)。
【0009】
本発明は、前記衝撃粉砕機が、スイングハンマークラッシャー型粉砕機であること特徴とする前記分離回収方法である(請求項5)。
【0010】
本発明は、前記粉砕工程および分離工程を2回以上繰り返す、または前記分離工程を2回以上繰り返すことを特徴とする前記分離回収方法である(請求項6)。
【0011】
本発明は、前記攪拌機として、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー及び万能ミキサーからなる群から選択される少なくとも1種の攪拌機を用いてなることを特徴とする前記分離回収方法である(請求項7)。
【0012】
さらに、本発明は、前記攪拌工程で撹拌中の樹脂温度を100〜200℃の範囲内としてなること特徴とする前記分離回収方法である(請求項8)。
【0013】
また、本発明に係る再生塩化ビニル樹脂は、上記のような本発明方法によりPVC壁紙から分離回収されたPVC成分からなるものである。
【発明の効果】
【0014】
発明によれば、PVC壁紙から、再生された紙と再生された樹脂を得ることができ、しかも紙成分から分離回収されたPVC成分を攪拌することで回収後のPVC成分の嵩比重が増大する。これにより、回収された再生PVCの粉体特性が改善され、PVC製床材、遮音シートなど、PVC製品に加工する時の作業性、取扱性を改善することができる。
【0015】
前記分離工程で用いる分離装置として、略縦円筒形胴部の上部に真空吸引口を設け下部を漏斗状に形成するとともに該漏斗状部に空気補給口を設けた分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を搬入し、該壁紙粉砕物中のPVC成分を前記円形板の周縁部から落下させる一方、紙成分は、空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて前記真空吸引口から吸引、排出するようにした風力分離装置を用いることで、壁紙粉砕物を紙成分とPVC成分とに分離精度よく分離して、効率よく、高純度で品質の高い再生紙および再生PVCを回収することができる。
【0016】
前記風力分離装置における分離塔の縦円筒形胴部の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5≦H/D≦3.0である場合には、壁紙粉砕物中の紙成分とPVC成分とを、さらに分離精度よく分離することができる。
【0017】
前記塩化ビニル樹脂系壁紙の粉砕に衝撃粉砕機を用いることで、衝撃粉砕機の回転ハンマーが壁紙に衝撃力を与え、壁紙を粉砕すると同時に基材裏打ち紙の紙繊維を解し柔らかい綿状に開繊した状態とし、PVC成分から剥離することができる。
【0018】
衝撃粉砕機が、スイングハンマークラッシャー型粉砕機であると、壁紙を大きい衝撃力や剪断力により粉砕することができることから、粉砕機に投入する壁紙は、粉砕機の投入口から投入可能な大きさであればよく、あらかじめ小さいサイズに切断するなどの手間がかからず、分離回収を生産性よく行うことができる。
【0019】
さらに、前記粉砕工程および分離工程を2回以上繰り返す、または前記分離工程を2回以上繰り返すことにより、紙成分とPVC成分とを、より分離精度よく、より高効率で、より高純度で品質の高い再生紙および再生塩化ビニル樹脂を回収することができる。
【0020】
前記攪拌機として、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー及び万能ミキサーからなる群から選択される少なくとも1種の攪拌機を用いることで、紙成分と分離された塩化ビニル成分の嵩比重を効率よく増大させ、粉体特性を良好に改善することができる。
【0021】
また、前記攪拌工程で撹拌中の樹脂温度を100〜200℃の範囲内とすることで、塩化ビニル成分の嵩比重をさらに効率よく増大させ、粉体特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかるPVC壁紙からの紙成分およびPVC成分の分離回収方法を、添付した図面に示す実施態様に基づき、さらに詳細に説明する。但し、これらは、本発明による壁紙からの紙成分および塩化ビニル成分の分離回収方法の概略を、単に例示および説明するためのものにすぎず、本発明は、これらによりなんら制限されるものではない。
【0023】
本発明方法の対象となる壁紙は、たとえば、建築物の内装に用いられるPVC壁紙であり、リフォームなど貼り替え時に発生する廃品、製造工程から発生する不具合品、デザイン等の変更品、長期在庫品の処分品など発生する廃壁紙などが主なものであるが、これらに限定されるものではない。これらのPVC壁紙は、基材が紙製の裏打ち紙にPVCを表層に被覆したものである。前記基材裏打ち紙は、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、燐酸グアニジンなどの難燃剤で処理したシート)、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機質剤およびガラス繊維を混抄した無機質紙などであってもよい。また、被覆層は、PVCからなり、さらに、耐スクラッチ性、耐薬品性そして耐汚染性などを向上させるため、フッ素樹脂コーティングを施したり、PMMA樹脂フィルムなどを積層して耐光性を向上させたものであってもよい。
【0024】
前記ようなPVC壁紙の素材である、裏打ち基材である紙成分と表面層のPVC成分とを分離回収して、再資源化する本発明の方法は、PVC壁紙を粉砕後(粉砕工程)、フルイ、横型風力分別機、サイクロン、乾式遠心分離機、乾式比重分離機などの分離装置により紙成分と樹脂成分とを分離したのち(分離工程)、紙成分から分離されたPVC成分を攪拌機により攪拌(攪拌工程)して、その嵩密度を増大させ、粉体特性を改善するというものである。さらに、前記分離装置に振動フルイ(シフター)、回転式シフター、往復シフターなどの一般に使用されるシフターを連結して、前記分離装置で分離回収後のPVC成分中に残存する紙成分をさらに分離することで、分離精度と処理量を高めることもできる。
【0025】
本発明方法の詳細について、図1〜図4に基づき説明する。図1は、本発明方法において壁紙が粉砕工程で粉砕された後の紙成分とPVC成分とからなる壁紙粉砕物1、該壁紙粉砕物(符号1)を、分離工程で分離したPVC成分(不定形PVC成分、符号2)および繊維状の紙成分(符号3)の概念図である。また、図2は、本発明にかかるPVC壁紙からの紙成分およびPVC成分の分離回収方法を実施するための装置構成を示す模式図である。
【0026】
図2に示す装置は、壁紙を粉砕機4で粉砕して、樹脂被覆層の粉砕物であるPVC成分2と基材裏打ち紙の粉砕物である紙成分3との混在物である壁紙粉砕物1を得る粉砕工程と、粉砕機4で粉砕した壁紙粉砕物(混在物)1を空気輸送管23を介してブロアー6により分離装置7に送り、樹脂被覆層の粉砕物であるPVC成分2を分離装置7の下方に設けたPVC受け槽8に受け、一方、基材裏打ち紙の粉砕物である紙成分3は、分離装置7の上部から排出する分離工程と、を備える。さらに、図2に示すように、分離装置7に、振動フルイ(シフター)、回転式シフター、往復シフターなどの一般に使用されるシフターを連結して、分離装置7で分離回収後のPVC成分2中に残存する紙成分3をさらに分離することで、分離精度と処理量を高めることもできる。
【0027】
粉砕工程に用いる粉砕機4は特に限定はされないが、壁紙の素材であるPVC成分と紙成分とを分離して回収し、再資源化する本発明の目的達成のためには、粉砕機4の選定が重要である。すなわち、PVC壁紙においては、基材裏打ち紙と、PVC被覆層が良く接着していて分離が非常に困難である。壁紙の基材裏打ち紙の紙成分と被覆層のPVC成分とを精度良く分離して回収するためには、壁紙に適度の衝撃力を与えて粉砕するとともに基材裏打ち紙の紙繊維を解し、PVC被覆層と剥離することが大切である。
【0028】
一般に使用されている剪断粉砕機の場合、鋭い刃先を備えた剪断粉砕機では、壁紙の粉砕時に基材裏打ち紙が解れることなくPVC被覆層と密着したまま切断され、基材裏打ち紙とPVC被覆層が密着したまま剥離不十分な状態で切断されてしまう。このため、後の分離工程において基材裏打ち紙とPVC被覆層を精度よく分離することが困難となる。また、カッター刃の刃先が鈍角の剪断粉砕機は、粉砕時に衝撃力を壁紙に与えるが、本発明に用いる粉砕機4としては、スイングハンマータイプなどの衝撃粉砕機を用いるのがより好ましい。衝撃粉砕機は、回転ハンマーが壁紙に衝撃力を与え、壁紙を粉砕すると同時に基材裏打ち紙の紙繊維を解し、柔らかい綿状に開繊した状態にすることができる。すなわち、壁紙に適度の衝撃力を与え、基材裏打ち紙の紙繊維が柔らかい綿状に開繊するとともにPVC被覆層と剥離する。開繊した柔らかい綿状の紙成分は、後述する風力分離装置内の上昇気流に乗って排出され、分離、回収することができる。一方、PVC被覆層は、衝撃粉砕機で粉砕されて裏打ち紙から剥離し、PVC成分2として、後述する風力分離装置内を降下して回収される。
【0029】
また、衝撃粉砕機などの粉砕機4を用いて粉砕した壁紙粉砕物1を、米、豆、茶、雑穀類などの食物類の分別に用いられる代表的分別装置である横型風力分別機を使用して分離する場合、横型風力分別機の材料供給部に近い排出口から比較的大きいサイズの粉砕物が、材料供給部に遠方の回収口からは比較的小さいサイズの粉砕物が回収される。しかし、このような横型風力分別機では、粉砕物の大きさ別に大まかな分離はできるものの、両排出口から回収されたものは、PVC成分2と紙繊維(紙成分3)とが混在し、分別精度が低い。すなわち、比較的大きいサイズの粉砕物は手前に分級されてPVC片と紙繊維が混在する。一方、比較的小さいサイズの粉砕物は遠方の回収口から紙成分中に小さなPVC粉砕片が取り込まれた状態で回収され、PVC粉砕片の混入が避けられない。
【0030】
また、本発明方法では、壁紙を粉砕する衝撃粉砕機などの粉砕機4には、壁紙粉砕物の大きさを規制する目開きが1mm〜25mmのパンチングメタルまたは格子の目開きが1mm〜25mmのスクリーン5を設置する。衝撃粉砕機4に目開きが25mm以下のパンチングメタルやスクリーン5を設けることで、壁紙粉砕物のサイズが小さく、壁紙基材裏打ち紙の紙繊維が充分に解れ、PVC被覆層との剥離が良く、分離工程において、PVC被覆層粉砕物(塩化ビニル成分2)に基材裏打ち紙の繊維(紙成分3)が付着したまま排出、回収されることを防止できる。このように回収されたPVC材料は、紙繊維の混入が少なく、流動性、加工性および品質特性に優れ、回収PVCの使用できる用途が大きく拡がる。また、目開きが1mm以上のスクリーンを設置した粉砕機を使用することで、基材裏打ち紙の紙繊維が必要以上に小さく切断されることがなく、回収された紙成分を使用した再生紙は、引張強度が大きいなど、品質特性が良く、回収再生紙の使用用途も拡がる。
【0031】
また、分離工程で用いる分離装置も特に限定はされず、フルイ、横型風力分別機、サイクロン、乾式遠心分離機、乾式比重分離機などの一般的な分離装置を使用することも可能であるが、略縦円筒形胴部の上部に真空吸引口を設け下部を漏斗状に形成するとともに該漏斗状部に空気補給口を設けた分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を搬入し、該壁紙粉砕物中のPVC成分を前記円形板の周縁部から落下させる一方、紙成分は、空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて前記真空吸引口から吸引、排出するようにした風力分離装置を用いることが好ましい。
【0032】
壁紙を上記の衝撃粉砕機などの粉砕機4を用いて粉砕した壁紙粉砕物1を、一般に使用される公知の多段式の円形振動フルイ(シフター)、回転式シフター、往復シフターなどを用いて分離した場合、フルイの目開き(網目)を順次小さく調整して、フルイをパスしたPVC被覆層は、基材紙成分の混入が防止され、PVC成分が回収できる。しかし、フルイ上には、基材紙成分を主体にした粉砕物が残り、解れた紙繊維の中に多量のPVC被覆層粉砕物を取り込みPVC成分が混入するおそれがある。また、シフターを単独で用いた場合、壁紙粉砕物1から、基材裏打ち紙の紙成分3とPVC被覆層のPVC成分2との両成分を高い精度で分離、回収することが困難である。
【0033】
本発明方法における分離工程で使用する分離装置としては、例えば、図4に示す風力分離装置7を用いることが好ましい。この図4に示す風力分離装置7は、略縦円筒形の胴部18aの上部18bを円錐形キャップ状に形成し、その中心部から上方に向かって、ブロアー15によって排気する排出口19を設け、胴部18aの下部18cは漏斗状に形成し、その中心部から下方に向かって空気補給口20を設けた分離塔18を備えている。また、分離筒18の内部下方には、略円形の板21を、その周囲に、分離筒18の内壁との間に通気間隙22が存するように、円形板支持具24により略水平に支持し、円形板21の上面中心部に、粉砕工程の粉砕機4にて粉砕された壁紙粉砕物1をブロアー6により空気輸送して分離塔18内に搬入する空気輸送管23を設けてある。
【0034】
この風力分離装置7においては、ブロアー15によって排出口19を経て分離塔18から排出する風量は、空気輸送管23から円形板21の上面の中心部に搬入された壁紙粉砕物1が、分離塔18内を流動し、相対的に重成分であるPVC被覆層の粉砕物(PVC成分2)は円形板21の周囲に設けた通気間隙22から降下して分離塔下部18cに設けた空気補給口20から排出する。一方、相対的に軽成分である基材の綿状に解れた紙成分の繊維(紙成分3)は、ブロアー15により排気される分離塔18内部を上昇する空気流に乗せて分離塔上部18bの排出口19から排出するよう、ブロアー6により空気輸送管23を経て分離塔18内に送られる風量と同等量または空気輸送管23から分離塔18内に送られる風量より排気口19からの排出量のほうを若干多く調整する。
【0035】
分離塔18は、縦円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5≦H/D≦3であること好ましい。分離塔18の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5以上とすることで、分離塔18内での壁紙粉砕物1の流動が大きくPVC成分2と紙成分3が良く分離され、回収PVC中への紙成分の混入が少なく、回収紙成分中へのPVCの混入も少ない。また、分離塔18の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)を3以下とすることで、軽成分である基材の綿状に解れた紙成分粉砕物3の排出量が多く、紙成分が分離塔内に滞留してマット状あるいは玉状などに集合した紙成分の塊が生じ分離塔下部空気補給口20からPVC成分と混在して排出され分離精度の低下を招くといったことがなく、また、紙成分粉砕物3を分離塔上部排出口19から排出させるために大容量の送風量を発生する大型ブロアー設備を設置する必要もなく、装置がコンパクトとなり経済的である。
【0036】
また、円形板21を水平に支持する支持具24は、ネジ軸24aなどにより円形板21を上下動可能に支持して、円形板21の外周縁と分離塔18の内壁面との間の通気間隙22の幅を調整可能であることが好ましい。
【0037】
風力分離装置7により紙成分3と分離されたPVC成分2は、分離塔下部18cに設けた空気補給口18から、その下方に設置されたPVC受け槽8に収容される。一方、ブロアー15により排出口19から排出された紙成分は、ブロアー15に接続された空気輸送管25からサイクロン分級器16を経て紙成分回収受け槽17内に回収される。
【0038】
なお、前記PVC受け槽8に収容されたPVC成分2は、さらに風力分離装置7に振動フルイ(シフター)、回転式シフター、往復シフターなどの一般に使用されるシフターを連結して、紙成分3との分離精度と処理量を高めることができる。たとえば、図2に示す装置では、PVC成分受け槽8からブロアー9により空気輸送管26およびサイクロン分級器10を経て振動シフター11へ送られ、フルイ(金網)12により残存する紙成分3がさらに分離されて振動シフター11下方に設置されたPVC成分回収受け槽13に回収される。一方、振動フィルター11のフルイ11上に残ったPVC成分と紙成分との混合物は、混合物受け槽14に回収される。
【0039】
本発明方法においては、前記のような衝撃粉砕機などの粉砕機4を用いた粉砕工程により壁紙を粉砕した壁紙粉砕物1を、分離工程において、風力分離装置7などの分離装置により、PVC成分2と紙成分3との分離精度よく分離回収することができるが、前記風力分離装置7のような分離装置、さらには、図3に示すように、壁紙を衝撃粉砕機などの粉砕機4により粉砕(1次粉砕)した壁紙粉砕物(1次粉砕物)を、第1の風力分離装置7(1次分離)により、基材裏打ち紙の紙成分3とPVC樹脂被覆層のPVC成分2に分離してPVC成分受け槽8に回収したPVC成分2を、再度、衝撃粉砕機などの第2の粉砕機4Bに投入して粉砕(2次粉砕)し、この2次粉砕物を、さらに第2の風力分離装置7B(2次分離)に搬入して、基材裏打ち紙の紙成分3とPVC被覆層のPVC成分2の分離精度をさらに改善することもできる。また、図示しないが、壁紙を衝撃粉砕機などの粉砕機4により粉砕した壁紙粉砕物1を風力分離装置7などの第1の分離装置(1次分離)により紙成分3とPVC成分2に分離してPVC成分受け槽8に回収したPVC成分2を、再度粉砕せずに、風力分離装置7からなる第2の分離装置(2次分離)に供給して、紙成分3とPVC成分2の分離精度を改善することも出来る。このように粉砕工程と分離工程を直列にあるいは、並列に複数工程繋げることで、壁紙を基材裏打ち紙の紙成分3とPVC被覆層のPVC成分2とに高精度に、かつ多量に分離処理を可能にすることができる。
【0040】
上記のようにして、PVC壁紙から分離回収されたPVC成分は、例えば、フレコンに入れ、放置して置くと、塊になり、非常に取り出しにくく、輸送、計量が困難となる。そこで、上記のようにして粉砕工程および分離工程を経てPVC壁紙から分離回収されたPVC成分2の粉体を、攪拌機により撹拌して、その嵩比重を0.2〜1.0の範囲内に調整することで粉体特性が改善され、取扱が容易になる。
【0041】
前記PVC成分2を攪拌して粉体特性を改善するための攪拌機としては特に限定されるものではないが、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー又は万能ミキサーが入手し易く好ましく、これらのうちでも、攪拌時にPVC成分が剪断発熱するヘンシェルミキサー、スーパーミキサーまたは万能ミキサーがより好ましい。これらヘンシェルミキサー、スーパーミキサーまたは万能ミキサーによりPVC成分2を攪拌してその粉体特性を改善する際には、これら攪拌機内にPVC成分を投入後、投入された内部の樹脂温度が100〜200℃になるまで撹拌して、嵩比重が0.2〜1.0の範囲になるようにすることが好ましい。この際、樹脂温度を早く上げるために、ジャケットを蒸気などで加熱することもできる。加熱後は、ジャケットに冷水を入れるか、または間欠に低速で撹拌して樹脂を冷却するのが好ましい。リボンミキサーの場合には、発熱が少なく、ジャケットを加熱して内部の樹脂温度が100〜200℃になり、かつ嵩比重が0.2〜1.0の範囲になるように調整することがより好ましい。
【0042】
前記攪拌後のPVC粉体の嵩比重が0.2であると、粉体特性が良く、嵩比重が1.0以下であると撹拌時間がかからず生産性が良い。このPVC粉体の嵩比重は、より好ましくは0.4以上である。
【0043】
上記のようにして本発明方法により粉体特性が改良された回収PVC成分は、軟質PVC製品の再生原料として、各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0044】
(壁紙からのPVC成分と紙成分との分離)
(分離1)
長期在庫品の壁紙(PVCの比重1.5)から、図2、図4に示した装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。目開きが5mmのスクリーン5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)4に供給して壁紙を粉砕し、分離装置7の分離塔18(図4に示す)の縦円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が1.2であり、紙成分が分離塔上部から排出されるよう、ブロアー6の風量よりブロアー15の風量を若干高めに調整した風力分離装置7に廃壁紙粉砕物を供給した。軽成分である紙成分はサイクロン分級器16を介して紙成分回収槽17に回収した。重成分であるPVC成分は、分離塔下部18cの空気補給口20から排出してPVC成分受け槽8に回収し、PVC成分に紛れて移動した紙成分を目開きが5mmのフルイ12を装着した振動シフター11にて分別し、PVC成分回収槽13に回収した。振動シフター11で除去した紙成分は解れた紙繊維に取り込まれたPVC粉砕片を含むPVC成分と紙成分の混合物で混合物受け槽14に回収した。
【0045】
回収した各成分の重量比率は、PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分(回収樹脂1)71.4%、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分が16.1%、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物は12.5%であった。
【0046】
PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分(回収樹脂1)をTHFに溶解後、目開き200メッシュの金網でろ過してPVC成分中に含まれる紙成分を回収した。回収した紙成分に塩酸処理を施し、壁紙成分中に含まれる添加剤である炭酸カルシウム分を除去した後、乾燥して秤量し、回収PVC成分中に含まれる紙成分量を算出したところ3.5重量%であった。一方、サイクロン分級器16を経て紙成分回収受け槽17に回収した紙成分中に含まれるPVC樹脂の量は、上記と同様の分析を行い紙成分から計算してPVC成分を算出したところ、1.5重量%であった。
【0047】
(分離2)
粉砕機4として、目開きが3mmのスクリーン5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)を用い、振動シフター11に装着したフルイ12を目開き3mmとした以外は分離1と同様にして、分離1に用いたと同じ種類の壁紙から、図2、図4に示す装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。
【0048】
回収した各成分の重量比率は、PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分(回収樹脂2)が73.4%、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分は18.2%、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物は8.4%であった。
【0049】
(分離3)
粉砕機4として、目開きが10mmのスクリーン5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)を用い、振動シフター11に装着したフルイ12を目開き10mmとした以外は分離1と同様にして、分離1に用いたと同じ種類の壁紙から、図2、図4に示す装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。
【0050】
回収した各成分の重量比率は、PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分(回収樹脂3)が65.0%、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分は14.4%、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物は20.6%であった。
【0051】
(分離4)
分離1に用いたと同じ種類の壁紙から図3、図4に示す装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。目開きが8mmのスクリーン5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)4に供給して壁紙を粉砕し、分離装置7の分離塔18(図4)の縦円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が1.2であり、紙成分が分離塔上部18bから排出されるようブロアー6の風量よりブロアー15の風量を若干高めに調整した風力分離装置7に廃壁紙粉砕物を供給した。紙成分はサイクロン16を介して紙成分回収受け槽17に回収した。重成分であるPVC成分はPVC成分受槽8に受けた。PVC受け槽8に回収したPVC成分を、目開きが3mmのスクリーン5Bを装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)4Bに投入して再度粉砕して分離装置7Bの分離塔18の円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が1.2であり、紙成分が分離塔上部から排出されるようブロアー6Bの風量よりブロアー15Bの風量を若干高めに調整した風力分離装置7Bに供給した。紙成分は回収受け槽17Bに回収し、PVC成分は、受槽8B、ブロアー9B、サイクロン10B、目開きが5mmのフルイを装着した振動シフター11を経由してPVC成分回収受け槽13に回収した。
【0052】
紙成分回収受け槽17に回収の紙成分合計量は13.7重量%、紙成分回収受け槽17Bに回収の紙成分合計量は5.9重量%、PVC回収受け槽13に回収したPVC成分の回収量(回収樹脂4)は77.2重量%、混合物受け槽14に回収した振動シフター11で分別後の紙成分とPVC成分との混合物は3.2重量%であった。
【0053】
(回収樹脂1)と同様にして回収PVC樹脂(回収樹脂4)に含まれた紙成分と回収紙成分中のPVC樹脂含量を測定したところ、回収PVC樹脂に含まれた紙成分は1.8重量%、紙成分回収受け槽17に回収した回収紙成分中のPVC樹脂含量は1.8重量%、紙成分回収受け槽17Bに回収した回収紙成分中のPVC樹脂含量は1重量%以下であった。
【0054】
(回収樹脂4)は、(回収樹脂1)に較べて壁紙の時間当たり処理量が50%多い条件であったが、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物の量は12.5重量%から3.2重量%へと大幅に減少し、PVC成分、紙成分の何れも分離精度が向上した。
【0055】
(分離5)
分離1に用いたと同じ種類の壁紙から図2、図4に示す装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。目開きが30mmのスクリーン5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)4に供給して壁紙を粉砕し、分離装置7の分離塔18の縦円筒形胴部18aの(図4)の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が1.2であり、紙成分が分離塔上部から排出されるようブロアー6の風量よりブロアー15の風量を若干高めに調整した風力分離装置7に壁紙粉砕物を供給し、(分離1)と同様に分離した。振動シフター11のフルイ12として目開き30mmのものを装着した。
【0056】
回収した各成分の重量比率は、PVC成分回収槽13に回収したPVC成分(回収樹脂5)43.8重量%、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分が5.2重量%、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物は51.0重量%であった。
【0057】
分離5では、基材裏打ち紙の紙繊維の解れが不十分でPVC樹脂との剥離が悪く、紙成分の回収量は非常に少なく、PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分中には多くの紙繊維が混入し、混合物受け槽14のPVC成分と紙成分の混合物を多く排出し、分離精度が非常に悪い結果であった。
【0058】
(分離6)
分離1に用いたと同じ種類の壁紙から、図2、図4に示す装置および工程により、PVC成分と紙成分とを分離回収した。壁紙を図2により目開きが5mmのストレーナー5を装着した衝撃粉砕機(尾上製作所製)4に供給して廃壁紙を粉砕し、分離装置7の分離塔18(図4)の縦円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が4.0である風力分離装置を用いて、紙成分が分離塔上部から排出されるようブロアー6の風量よりブロアー15の風量を若干高めに調整した風力分離装置7に壁紙粉砕物を供給し実施例1と同様にした。振動シフター11のフルイ12は目開き5mmを装着した。
【0059】
回収した各成分の重量比率は、PVC成分回収受け槽13に回収したPVC成分(回収樹脂6)58.4重量%、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分が12.7重量%、混合物受け槽14に回収したPVC成分と紙成分の混合物は28.9重量%であった。
【0060】
分離6では、紙成分回収受け槽17に回収した紙成分は精度の高いものであったが、分離塔下部の空気補給口20から、PVC成分と一緒に紙成分の固まりが多く排出した。振動シフター11でPVC成分と紙成分に分別回収したが、混合物受け槽14に回収の紙成分はPVC成分を多く取り込んだマット状の固まりが多い紙成分であった。
【0061】
以上の分離1〜6の回収結果を表1に、また分離1、4、5および6で回収されたPVC成分および紙成分の分析結果を表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1および表2から明らかなように、本発明方法によれば、PVC壁紙から、粉砕工程および分離工程により紙成分とPVC成分とを分離精度よく、かつ高い生産性で分離回収することができ、特に、分離工程で用いる前記風力分離装置における分離塔18の縦円筒形胴部18aの高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5≦H/D≦3.0である場合には、高精度で分離可能であることが分かる。
【0065】
(実施例1〜7および比較例1〜3)
100Lのスーパーミキサーに、回収樹脂を20Kg投入して、樹脂温度を確認しながら、高速撹拌(800〜900rpm)し、所定の樹脂温度となったところでサンプリングし、JIS K−6721に準じて嵩比重及び粉体のフロー性を測定した。攪拌およびサンプリング時の樹脂温度ならびに測定結果を表3に示した。
【0066】
【表3】

注1:樹脂温度が150℃に達したのち、低速にして90℃まで冷却した。
注2:ふわふわで均一に粉状にならなかった。
注3:JIS K−6721の漏斗から粉体が流れていく相対速度。
◎:非常に流れやすい。
○:流れる。
×:引っ掛かってうまく流れない。
【0067】
表3から明らかなように、本発明方法によれば、PVC壁紙から、粉体特性が改善された再生PVCを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明方法により、基材裏打ち紙の表面にPVCを被覆した壁紙から回収された紙成分およびPVC成分は、それぞれ再生原料として再生材料への再資源化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】壁紙に含まれる不定形PVC成分(図中の符号2)、繊維状の紙成分(図中の符号3)およびそれらの混在した壁紙粉砕物(図中の符号1)を示す概念図である。
【図2】本発明の分離回収方法に用いる分離回収装置の1実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の分離回収方法に用いる分離回収装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の分離回収方法に用いる風力分離装置の実施形態の概略を示す縦断面である。
【符号の説明】
【0070】
1. 壁紙粉砕物
2. PVC成分
3. 紙成分
4、4B. 衝撃粉砕機
5、5B. スクリーン
6、6B. ブロアー
7、7B. 分離装置
8、8B. PVC成分受け槽
9、9B. ブロアー
10、10B.サイクロン分級器
11. 振動シフター
12. フルイ(金網)
13. PVC成分回収受け槽
14. 紙成分とPVC成分の混合物受け槽
15、15B.ブロアー
16、16B.サイクロン分級器
17、17B.紙成分回収受け槽
18、18B.分離塔
18a. 分離塔の縦円筒形胴部
18b. 分離塔上部
18c. 分離塔下部
19、19B.減圧排出口
20、20B.空気補給口
21、21B.円形板
22. 間隙
23、23B.空気輸送管
24. 円形板支持具
24a. 円形板支持ネジ軸
25、25B.空気輸送管
26、26B.空気輸送管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂系壁紙から、再生された紙成分と再生された塩化ビニル樹脂成分とを分離回収する方法であって、
A)壁紙の粉砕の大きさを規制する、目開きが1mm以上25mm以下のパンチングメタルまたは格子の目開きが1mm以上25mm以下であるスクリーンを設置した粉砕機により、塩化ビニル樹脂系壁紙を粉砕する粉砕工程と、
B)前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を分離装置により紙成分と塩化ビニル樹脂成分とに分離する分離工程と、
C)前記分離工程で分離された塩化ビニル樹脂成分を攪拌機にて攪拌する工程と、
の3工程を含み、前記攪拌後の塩化ビニル樹脂成分の粉体の嵩比重が0.2〜1.0であることを特徴とする、塩化ビニル樹脂系壁紙からの紙成分および塩化ビニル樹脂成分の分離回収方法。
【請求項2】
前記分離工程で用いる分離装置が、略縦円筒形胴部の上部に真空吸引口を設け下部を漏斗状に形成するとともに該漏斗状部に空気補給口を設けた分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記壁紙粉砕工程で粉砕された壁紙粉砕物を搬入し、該壁紙粉砕物中の塩化ビニル樹脂成分を前記円形板の周縁部から落下させる一方、紙成分は、空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて前記真空吸引口から吸引、排出するようにした風力分離装置であることを特徴とする請求項1に記載の分離回収方法。
【請求項3】
前記風力分離装置における分離塔の縦円筒形胴部の高さ(H)と横方向の直径(D)との比(H/D)が0.5≦H/D≦3.0であることを特徴とする請求項2記載の分離回収方法。
【請求項4】
前記塩化ビニル樹脂系壁紙の粉砕に衝撃粉砕機を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離回収方法。
【請求項5】
前記衝撃粉砕機が、スイングハンマークラッシャー型粉砕機であること特徴とする請求項4に記載の分離回収方法。
【請求項6】
前記粉砕工程および分離工程を2回以上繰り返す、または前記分離工程を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離回収方法。
【請求項7】
前記攪拌機として、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー及び万能ミキサーからなる群から選択される少なくとも1種の攪拌機を用いてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分離回収方法。
【請求項8】
前記攪拌工程で撹拌中の樹脂温度を100〜200℃の範囲内としてなること特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の分離回収方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の分離回収方法により塩化ビニル樹脂系壁紙から分離回収された塩化ビニル樹脂成分からなることを特徴とする再生塩化ビニル樹脂。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−272241(P2006−272241A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98127(P2005−98127)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】