説明

塩類の塩からい味をマスクする経口組成物

塩、例えば、重炭酸ナトリウム、亜鉛塩又はストロンチウム塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤であって、その際に塩により通常付与される塩からい味が、イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤の有効量の組合せ物により完全にか又は部分的にマスクされる。経口組成物又は歯磨き剤は好ましくはイオンチャネル競争剤としてクエン酸ナトリウム、初期甘味剤としてサッカリン及び遅延甘味剤としてグリチルリチン酸モノアンモニウムを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国出願番号10/302,092(2002年11月22日提出)及び米国出願番号10/418,571(2003年4月17日提出)の双方に関する優先権の保護を請求するものであり、これらの双方ともが全体として参考により本明細書に取り入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は塩からい味を口に通常与える経口組成物及び歯磨き剤に関する。より詳しくは本発明は、制限されるものではないが重炭酸ナトリウム、亜鉛塩又はストロンチウム塩を含む塩を含有する経口組成物及び歯磨き剤に関するものであり、その際にそのような製品の塩からい味はマスクされる。
【背景技術】
【0003】
清浄にするため、リフレッシュするため、保護するため及び/又は処理を提供するために個人の歯及び/又は歯肉に使用される、当工業界に公知の多くの経口組成物及び歯磨き剤が存在する。特に、重炭酸ナトリウム(すなわち重曹)を含有する経口組成物及び歯磨き剤は口腔衛生の業界に十分公知である。重炭酸ナトリウムは、歯を清浄にし、かつ磨くために使用される研磨剤として経口組成物及び歯磨き剤にしばしば添加される。
【0004】
例えば、米国特許第4,547,362号明細書("Winston他")は重炭酸ナトリウムを含有する歯磨き粉を開示する。Winston他に記載されているように、“重炭酸ナトリウム粒子を含有する歯磨き粉の処方において遭遇される主要な問題は、重炭酸ナトリウムの塩からい味である”。米国特許第4,547,362号明細書、3欄、15-17行。Winston他は、該明細書に開示されている歯磨き粉中でより粗いグレードの重炭酸ナトリウムを規定することにより、とりわけ約74〜210μmの範囲内のメディアン粒度を有する重炭酸ナトリウム粒子を規定することにより、この塩からい味の問題を取り扱うことを試みている。同明細書、3欄、15-32行;要約書参照。そのうえ、Winston他に開示されている歯磨き粉はまた、フレーバリング剤、例えばスペアミント又はペパーミントのオイル及び甘味剤、例えばラクトース、マルトース、ソルビトール、アスパルテーム及びサッカリンも含んでいてよい。Winston他によれば、フレーバリング剤及び甘味剤は重炭酸ナトリウムの塩からい味をマスクするのを助ける。同明細書、4欄、14-41行参照。
【0005】
米国特許第5,939,048号明細書("Alfano他")は、過敏性の歯を処置するために使用されることができる心地よい味のする経口組成物を開示する。Alfano他によれば、“ストロンチウム、カリウム又は他の塩類を含有する減感組成物は、意外なことではなく、強い塩からい後味を含め、...強い塩からい味を有しうるものであり、[これらは]減感組成物の減感養生法及び使用法に伴う消費者コンプライアンスを低下させうる”。米国特許第5,939,048号明細書、1欄、39-43行。とりわけ、Alfano他は、重炭酸ナトリウムが減感塩、例えばカリウム又はストロンチウム塩の塩からい味をマスクすると書かれている減感経口組成物を開示する。同文献、要約書;3欄、20-40行参照。Alfano他はさらに、経口組成物中の減感塩の塩からい味を有効にマスクするために、“重炭酸ナトリウムが減感塩に対して約1:1比(質量基準)から約6:1比までで存在すべきであるけれども、約6:1比〜約8:1比もまた有効でありうる”ことを開示する。米国特許第5,939,048号明細書、4欄、49-54行。Alfano他は、重炭酸ナトリウムが減感塩(例えば硝酸カリウム)の塩からい味をマスクすることによる製剤を開示するけれども、重炭酸ナトリウム自体の塩からい味をマスクするのに有効な手段を教示又は示唆しない。
【0006】
そのうえ、他の塩類、例えば亜鉛塩及びストロンチウム塩を含有する経口組成物及び歯磨き剤は口腔衛生の業界に十分公知であり、かつそれらもまた使用者に塩からい味を付与するという問題を有する。例えば米国特許第5,849,266号明細書 ("Friedman")は過敏性歯用の歯科用組成物を開示する。Friedmanに記載されているように、“臨床的には歯過敏性を減少させるのに最も有効であるけれども、過敏性の処置のためのストロンチウム塩の使用は、練り歯磨きの形で使用される場合でさえ、口の中の受け入れることができない塩からい味又は金属味にするストロンチウム塩の傾向のために患者に好まれない”。米国特許第5,849,266号明細書、1欄、53-58行。Friedmanは、“セルロース又は疎水性ポリマーからなる徐放性キャリヤー中に、薬剤学的に受け入れることができ、場合により可塑剤、例えばポリエチレングリコール及び/又は粘着性ポリマー、例えばガムマスチックを含有している付形剤中に”塩又は他の過敏性剤を埋め込むことにより、長期間に亘るより低い治療学的な水準の塩又は他の過敏性剤を提供することによりこの問題を扱うことを試みている。同文献、3欄、12-16行。
【0007】
故に、塩、例えば重炭酸ナトリウム、亜鉛塩又はストロンチウム塩を含有する経口組成物について、塩の塩からい味が有効にマスクされる必要が当工業界に存在する。
【0008】
発明の要約
本発明の対象は、塩により通常付与される塩からい味がマスクされている、塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤を提供することである。
【0009】
さらに本発明の対象は、マスキング剤それ自体が塩からい味を組成物に付与しない組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の対象は、塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤の塩からい味をマスクする方法を提供することである。
【0011】
以下の詳細な説明から明らかになる本発明のこれらの対象及び他の対象は、塩により通常付与される塩からい味がイオンチャネル競争剤(ion-channel competitor)、初期甘味剤(initial sweetener)及び遅延甘味剤(delayed sweetener)の有効量によりマスクされている、塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤を提供することにより達成される。
【0012】
イオンチャネル競争剤は、舌の塩センサの発射を減少させるか又は少なくするために味蕾チャネルで塩と競争する任意の物質である。好ましいイオンチャネル競争剤はクエン酸ナトリウムである。
【0013】
そのうえ、本発明は、高い塩の系の存在での持続性の甘味の必要性に適応させるために修正される甘味プロフィールを使用する。すなわち、初期甘味剤、例えばサッカリンの甘味プロフィールは最初に強烈であり、その後に顕著な低下を伴い、それに対して遅延甘味剤、例えばグリチルリチン酸モノアンモニウムの甘味プロフィールは最初にあまり強烈でないが、しかし時間が経つにつれて強度を盛り込む。故にこれらの2つの甘味剤の組合せは、塩−酸の相互作用にうまく応答する甘味プロフィールを提供する。
【0014】
意外なことに、塩、例えば重炭酸ナトリウム、亜鉛塩又はストロンチウム塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤中における、これら3つの成分:イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤の組合せが、塩が原因の通常の塩からい味を軽減又は除去するのに役立つことが見出された。故に生じる経口組成物又は歯磨き剤は、さもないと塩を含有する経口組成物又は歯磨き剤で期待されるよりも、あまり塩からい味がしない。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明に従って、塩を含有している経口組成物又は歯磨き剤、例えば練り歯磨きは、塩により典型的に付与される塩からい味が有効にマスクされるように、イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤の有効量で処理される。すなわち、3つの成分:イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤のこの組合せが、塩が原因の通常の塩からい味を軽減又は除去するのに役立ち、その際により心地よい味のする経口組成物又は歯磨き剤が生じる。
【0016】
任意の理論により結びつけられることは望んでいないけれども、これら3つの成分:イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤の組合せが、以下のように塩により通常付与される塩からい味をマスクするのに役立つと思われる。
【0017】
“味わう(tasting)”の経験の間に、幾つかの生理学的及び心理学的な事象が同時に起こる。解剖学的には、味細胞は、舌及び軟口蓋上に位置している味蕾と呼ばれる特殊な構造内部にある。味蕾の大部分は、舌の表面上の小突起である乳頭内部に位置しており、これらは舌にそのビロード毛状の外観を与える。味蕾は味細胞50〜100個のタマネギ形の構造であり、そのそれぞれが、味孔と呼ばれる味蕾の頂部での開口部を通して突き出ている微絨毛と呼ばれる指のような突起物を有する。食品からの化学物質("味物質(tastants)"と呼ばれる)は唾液中に溶解し、かつ味孔を介して味細胞と接触する。そこでそれらは味受容器と呼ばれる細胞の表面タンパク質と相互作用して、甘い及び苦い味を生じるか、又はそれらはイオンチャネルと呼ばれる孔様タンパク質と相互作用して、塩及びすっぱい味を生じる。
【0018】
生理学的及び生化学的に、イオンチャネル応答の性質は、表面タンパク質(味受容器)応答とは全く異なる。塩味は、イオンチャネル応答を介して起こり、かつ例えば、塩化ナトリウム(Na及びCl)への応答である。ナトリウムイオン(Na)は、ナトリウムイオンチャネル(アミロライド感受性ナトリウムチャネル)を介して受容器細胞に入る。ナトリウムイオンの流入は脱分極を引き起こし、カルシウムイオン(Ca+2)は電圧感受性カルシウムチャネルを介して入り、かつ伝達物質放出が起こり、かつ一次求心性神経中での増大された発射の結果となる。他方ではすっぱい味は酸への応答であり、かつ酸は過剰のプロトン(H)により特徴付けられる。プロトンはカリウム(K)チャネルをブロックし、これらは過分極したレベル(−85mVのK平衡電位の近く)で細胞膜電位を維持する原因となる。まさに前記したように、これらのチャネルのブロッキングは、細胞内部での脱分極、Ca+2流入、伝達物質放出及び一次求心性神経中での増大された発射を引き起こす。塩及びすっぱい味覚が味細胞に入るため及び影響を及ぼすために異なるチャネルを使用する一方で、それぞれの最終結果は極めて類似している。
【0019】
塩又はすっぱい味を誘発する化合物は、甘い味を誘発するものよりもあまり多様ではなく、かつそれらは典型的にはイオンである。概して言えば、刺激の1つのクラスは、最も高い頻度の発射を誘発することに最も有効である。受容器特異性は、全か無かの応答とは対照的に相対的であると考えられる。言い換えれば、刺激の間での差異は、ニューロンの発射と非発射との間の差異ほど多くなく、しかし実際にはニューロンの発射の量の差異である。このことは、何故すっぱい化合物が塩からい化合物の知覚を減少させることができるかを説明する。すなわち、双方ともCa+2機構を介しての味細胞の内部脱分極を引き起こすイオンチャネル機構に応答し、その際にニュートラルな発射をもたらす。脳の全体の味覚はそれで受容器の発射の量に依存している。塩受容器が連動する間に酸味の受容器を連動するようになることを引き起こすことにより、例えば脳への双方の味覚の正味の効果を減少させる。
【0020】
また、塩からい、すっぱい及び甘い味をコードするための別個の機構を有する、味応答を生じる刺激をエンコードするための共通の受容器−ニュートラルな機構がその代わりにあってもよいという理論もある。味は典型的には多様な物質の間での相互作用を必然的に伴う刺激の動的条件で起こるので、主要な味の質の間の多数の複雑な相互作用は味混合物の正確な生成物の予測を妨げる。単一の成分がそれぞれ異なる味を喚起する2つの化学溶液の組合せの結果は、複雑な精神生理学的な事象である:溶液は、互いに独立して機能しないが、しかし化学物質に依存して、組合せて促進効果又は抑制効果を示しうる。異なる味の混合物は、それらの2つの味への応答のみを誘発し、かつ存在しない味を生じない。例えば、苦い味と組み合わされた塩味は、塩味及び苦い味のみを生じ−−それは甘い及び/又はすっぱい味を生じない。味の質が相互に互いに抑制しうる証拠がある。弱酸性の味を有する強い塩味の場合に、塩味は減少されるようになる。すなわち、混合物内部でそれらの味の質を保持する間に、それらはそれらが純粋で混合されていない溶液中にある場合よりもあまり強烈ではないとして知覚される。しかしながら、味混合物の2つの味物質が非常に強い場合でさえ、それらは味のない混合物を製造するために、相互に互いに抑制することはできない。
【0021】
再び、任意の個々の理論により結びつけられることは望んでいないけれども、前記の考察がどうして本発明の3つのマスキングする成分(イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤)の組合せが有効に塩が原因の通常の塩からい味をマスクするかを説明すると思われる。すなわち、生理学的な見地から、塩味及びすっぱい味の知覚は、イオンチャネル輸送の同じ受容器機構を使用する。それらは味細胞に入るために異なるチャネルを使用するけれども、それらが味細胞の内部へひとたびニューロンを発射するために使用する機構は同一である。味蕾について“舌の地図”が存在し、その際に舌の各領域が特定の感覚のみを知覚するとはもはや思われておらず;その代わりに、味細胞が全ての感覚に異なる方法で応答すると思われている。脳は“味”の経験を、発射されたニューロン又は発射されないニューロンとしてではなく、ニューロンの発射の量として理解する。塩が十分な濃度で存在する場合には、ニューロンは全ての細胞の塩チャネルから敏速に発射する。しかしながら、塩に加えてすっぱいノートの導入は、全体に亘るニューロン応答を複雑にする、それというのも、それぞれの味(塩及び酸味)へのニュートラルな応答が互いに競争する応答を生じるからである。故に60%塩組成物(例えば重炭酸ナトリウム)の強い味は現在、酸又は酸性塩の存在であまり強烈にならない。
【0022】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤の塩は、塩からい味を経口組成物又は歯磨き剤に通常付与する任意の塩である。例えばこれらの塩は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:塩素、フッ素、リン酸及び炭酸の金属塩;亜鉛塩;ストロンチウム塩;第一スズ塩;及びそれらの組合せ物。そのような塩類の例は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:重炭酸ナトリウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、硫酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化カリウム、重炭酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化ストロンチウム及びフッ化第一スズ。そのうえ、技術における通常の技術を有する者により理解されるように、本発明の経口組成物又は歯磨き剤中に存在している塩又は塩類の量は経口組成物又は歯磨き剤において使用される個々の塩又は塩類に依存して変わり、かつ塩又は塩類のそのような量の全てが本発明の範囲内である。
【0023】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤において使用されるイオンチャネル競争剤は、塩センサの発射を減少させる又は少なくするために味蕾内部の適切なチャネルで塩と競争する任意の物質である。適しているイオンチャネル競争剤の例は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:クエン酸のナトリウム塩(クエン酸ナトリウム);クエン酸のカルシウム塩(クエン酸カルシウム);リン酸のナトリウム塩(リン酸ナトリウム);リン酸の一塩基性カルシウム塩;及びグリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル(mandeliec)酸、グリセリン(glycergic)酸、リンゴ酸、酒石酸及びメソ酒石酸を含むヒドロキシ酸の塩(その際にそのような塩はナトリウム及びカルシウム並びに酒石酸については二カリウム、二ナトリウム及び二アンモニウムを含む)。好ましくはイオンチャネル競争剤はクエン酸ナトリウムであるか又はクエン酸ナトリウムを含む。
【0024】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべきであるイオンチャネル競争剤の量は、初期甘味剤及び遅延甘味剤の有効量と組み合わされる場合に、塩が原因の通常の塩からい味をマスクするのに有効である任意の量である。例えば、イオンチャネル競争剤がクエン酸ナトリウムを含む場合に、経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべきであるクエン酸ナトリウムの量は好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約0.25%〜約2.0%及び最も好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約1.0%である。
【0025】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤はまた、塩の通常の塩からい味を軽減又は除去するのを助ける初期の強烈な甘味を提供する初期甘味剤を含む。初期甘味剤の例は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:サッカリン;スクラロース;ネオテーム;アリテーム;アスパルテーム;サイクラミン酸塩;タウマチン;ジヒドロカルコン;及びアセスルファムカリウム(アセスルファムK)化合物。好ましくは初期甘味剤はサッカリンであるか又はサッカリンを含む。初期甘味剤により迅速に付与される甘味の強度は、時間と共に迅速に低下する。
【0026】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべき初期甘味剤の量は、イオンチャネル競争剤及び遅延甘味剤の有効量と組み合わされる場合に、塩が原因の通常の塩からい味をマスクするのに有効である任意の量である。例えば、初期甘味剤がサッカリンを含む場合には、経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべきサッカリンの量は、好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約0.10%〜約0.80%及び最も好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約0.60%である。
【0027】
そのうえ、本発明の経口組成物又は歯磨き剤は、最初にあまり強烈でない甘味を提供し、時間が経つにつれて強度を盛り込み、甘味プロフィールを拡張し、かつ塩の通常の塩からい味を軽減又は除去するのを助ける遅延甘味剤を含む。好ましくは、遅延甘味剤はグリチルリチン酸モノアンモニウム(“MAG”)であるか又はグリチルリチン酸モノアンモニウムを含む。
【0028】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべき遅延甘味剤の量は、イオンチャネル競争剤及び初期甘味剤の有効量と組み合わされる場合に、塩が原因の通常の塩からい味をマスクするのに有効である任意の量である。例えば、遅延甘味剤がグリチルリチン酸モノアンモニウムを含む場合には、経口組成物又は歯磨き剤中に含まれるべきグリチルリチン酸モノアンモニウムの量は好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約0.05%〜約0.50%及び最も好ましくは経口組成物又は歯磨き剤の全質量の約0.30%である。
【0029】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤は当工業界に公知の任意の形であってよく、その際に次のものを含むが、これらに制限されるものではない:練り歯磨き、マウスウオッシュ、歯磨き粉、チューイングガム、歯科用クリーム又はゲル及び義歯接着剤組成物。好ましくは本発明の経口組成物又は歯磨き剤は練り歯磨きの形である。
【0030】
一般的に本発明の経口組成物又は歯磨き剤は、技術における通常の技術を有する者に十分公知である技法を利用して製造される。本来、本発明の経口組成物又は歯磨き剤は、そのような経口組成物及び歯磨き剤、例えば練り歯磨き及び歯科用クリーム及びゲルの製造に通常使用される多様な他の成分を含んでいてよい。
【0031】
本発明の経口組成物が練り歯磨き又は歯科用クリーム又はゲルの形である場合には、そのような形は典型的に、塩の塩からい味をマスクする活性成分のための液体のキャリヤー材料を含む。キャリヤー材料は水を典型的には経口組成物の約10%〜約90質量%の量で含んでいてよい。キャリヤー材料は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの混合物。そのうえ、経口組成物は、湿潤剤、例えばソルビトール、グリセリン及びポリアルコールを含んでいてよい。特に有利な液体成分は水とポリエチレングリコール又はグリセリン及びソルビトールとの混合物を含む。天然又は合成のガム、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等を含んでいるゲル化剤(増粘剤)も典型的には経口組成物の約0.5%〜約5質量%の範囲内で使用されることができる。練り歯磨き、歯科用クリーム又はゲル中で液体及び固体は、加圧容器又は押出しチューブから押し出すことができるクリーム状の又はゲル化した塊状物を形成するために調和される。
【0032】
本発明の練り歯磨き又は歯科用クリーム又はゲルはまた、アニオン性、非イオン性又は両性イオン性の洗剤であってよい表面活性剤(すなわち界面活性剤)を含有していてよく、その際に典型的には経口組成物の約0.05%〜約5質量%の量で存在する。適しているアニオン性及び非イオン性の界面活性剤は当工業界に十分公知である。例えば、適しているアニオン性界面活性剤は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:アニオン性の高発泡界面活性剤、例えば線状のC12〜18アルキル硫酸ナトリウム;分子中にグリコールエーテル基2〜6個を有するC12〜16線状アルキルポリグリコールエーテル硫酸塩のナトリウム塩;アルキル−(C12〜16)−ベンゼンスルホン酸塩;線状アルカン−(C12〜18)−スルホン酸塩;スルホコハク酸モノ−アルキル−(C12〜18)−エステル;硫酸化脂肪酸モノグリセリド;硫酸化脂肪酸アルカノールアミド;スルホ酢酸アルキル−(C12〜18)−エステル;及び全てがアシル成分中に炭素原子8〜18個を有する、アシルサルコシド、アシルタウリド及びアシルイソチオネート。そのうえ、適している非イオン性界面活性剤の例は次のものを含むが、これらに制限されるものではない:脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリドのエトキシラート、脂肪酸ソルビタンエステル及びエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックポリマー。特に好ましい界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム及びサクロシネートであり、かつ界面活性剤の組合せも使用されることができる。
【0033】
両性イオン性表面活性剤はベタイン及びスルホベタインを含む。典型的なアルキルジメチルベタインはデシルベタイン又は2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン等を含む。アミドベタインは類似してココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン等を含む。これらのスルホベタインは構造においてベタインに類似しているが、しかしカルボキシレート基の代わりにスルホネート基を有し、かつアルキルスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン及びアルキルアミノスルホベタインを含む。
【0034】
任意の常用の研磨材(abrasives)又はつや出し材(polishes)も本発明において使用されることができ、その際に白亜、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、微粒状合成樹脂、シリカ、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム三水和物、ヒドロキシアパタイト等又はそれらの組合せ物からなる群から選択されるものを含む。研磨材又はつや出し材は好ましくは、完全にか又は主に微粒状のキセロゲルシリカ、ヒドロゲルシリカ、沈降シリカ、酸化アルミニウム三水和物及び微粒状酸化アルミニウム又はそれらの組合せ物であってよい。J.H. Huber Corporation, Havre de Grace、Maryland、U.S.A.から商品名ZEOFREE(R)及びZEODENT(R)のもとで入手可能であるシリカが本発明において使用されることができる。
【0035】
本発明の練り歯磨き又はゲルにおいて使用されることができる防腐剤及び抗微生物剤は、p−ヒドロキシ安息香酸、メチル、エチル又はプロピルエステル、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ブロモクロロフェン、フェニルサリチル酸エステル、チモール等及びそれらの組合せ物からなる群から選択されるものを含む。適しているpH緩衝液は、第一級、第二級又は第三級のアルカリ金属リン酸塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム等又はそれらの組合せ物からなる群から選択されるものを含む。創傷治癒及び炎症抑制物質はアラントイン、尿素、アズレン、カミツレ活性物質及びアセチルサリチル酸誘導体等又はそれらの組合せ物からなる群から選択されるものを含む。
【0036】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤は増粘剤又は結合剤も含んでいてよい。例えば、増粘剤又は結合剤は微粒状ゲルシリカ及び非イオン性ヒドロコロイド、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルピロリドン、植物ガム、例えばトラガカント、寒天、カラゲナン、アラビアゴム、キサンガム、グアールガム、イナゴマメガム、カルボキシビニルポリマー、ヒュームドシリカ、シリカ粘土等及びそれらの組合せ物からなる群から選択されることができる。好ましい増粘剤はFMC Biopolymers, Philadelphia, Pennsylvania, U.S.A.から商品名GELCARIN(R)及びVISCARIN(R)のもとで入手可能であるカラゲナンである。他の増粘剤又は結合剤はNoveon, Inc. Cleveland, Ohio, U.S.A.から商標CARBOPOL(R)のもとで入手可能であるポリビニルピロリドン、Cabot Corporation, Boston, Massachusetts, U.S.A.から商標 CAB-O-SIL(R)のもとで入手可能であるヒュームドシリカ及びLaporte Industries, Ltd., London, U.K.から商標LAPOINTE(R)のもとで入手可能であるシリカ粘土である。増粘剤又は結合剤はキャリヤー、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-400)又はそれらの組合せ物と共に又はキャリヤーなしで使用されることができる;しかしながらキャリヤーが使用される場合には、増粘剤又は結合剤約5%まで、好ましくは約0.1%〜約1.0%が、増粘剤/キャリヤー組合せ物の全質量に対して、キャリヤー約95.0%〜約99.9%、好ましくは約99.0%〜約99.9%と組み合わされる。
【0037】
活性化合物は、経口組成物又は歯磨き剤の性質及び使用に依存して、本発明の経口組成物又は歯磨き剤中にも存在していてよい。一般的に経口組成物用の活性化合物は口の悪臭をマスクし、口の悪臭をもたらす化学物質を攻撃し、息の悪臭又は口臭を引き起こす口中の細菌を殺すか又は成長抑制し、歯石を攻撃し、歯及び口から汚れを除去し、及び/又は歯を白くする。例えば、経口組成物がマウスウオッシュ、マウスリンス、ガム、マウススプレー、ロセンジ等の形である本発明の実施態様において、活性成分は、口腔衛生活性物質(oral hygiene actives)、抗菌性物質、減感剤、抗プラーク剤及びそれらの組合せ物、例えば、二酸化塩素、フッ化物、アルコール、トリクロサン、臭化ドミフェン、セチルピリジニウム塩素、乳酸カルシウム、乳酸カルシウムの塩等及びそれらの組合せ物からなる群から選択されるようなものを含んでいてよい。さらに一例として、経口組成物が歯磨き剤、例えば練り歯磨き、ゲル等の形である場合の本発明の実施態様において、活性成分は口腔衛生活性物質、抗菌性物質、減感剤、抗プラーク剤及びそれらの組合せ物、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、トリクロサン、塩化セチルピリジウム、亜鉛塩、ピロリン酸塩、乳酸カルシウム、乳酸カルシウムの塩、1−ヒドロキシエタン−1,2−ジホスホン酸、1−ホスホノプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、アザシクロアルカン−2,2−ジホスホン酸、環式アミノホスホン酸等及びそれらの組合せ物からなる群から選択されるようなものを含んでいてよい。
【0038】
そのうえ、本発明の経口組成物又は歯磨き剤は、経口組成物又は歯磨き剤の全体に亘る味を増強するための糖アルコール及び/又はフレーバー剤も含んでいてよい。本発明において使用されることができる糖アルコールは、有効な甘味付け能力を有する当工業界に公知の任意のものである。一般的に糖アルコールはソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、水素化されたデンプン水解物及びこれらの混合物からなる群から選択され、その際にソルビトールは好ましい糖アルコールである。本発明において使用されることができるフレーバー剤又はフレーバー剤類は技術にたけた職人に公知であるもの、例えば天然及び人工のフレーバーを含む。これらのフレーバー剤は、合成フレーバーオイル及びフレーバリング芳香薬及び/又はオイル、含油樹脂及び植物、葉、花、フルーツ等から誘導される抽出物及びそれらの組合せ物から選択されることができる。代表的なフレーバーオイルは次のものを含む:シナモン油、ペパーミント油、クローブ油、ベイ油、ユーカリ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油及び苦扁桃油。また有用であるのは、人工、天然又は合成のフルーツフレーバー、例えばバニラ及びレモン、オレンジ、グレープ、ライム及びグレープフルーツを含めた柑橘油及びリンゴ、ナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコット等を含めたフルーツエッセンスである。これらのフレーバー剤のいずれも個々にか又は混合物で使用されることができる。通常使用されるフレーバーはミント、例えばペパーミント、メントール、人工バニラ、シナモン誘導体及び多様なフルーツフレーバーを含み、個々にか又は混合物のいずれかで使用される。フレーバー剤、例えばアルデヒド及びエステルも、酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビルアセテート、オイゲニルホルメート、p−メチルアニソール等を含め使用されることもできる。一般的に任意のフレーバリング又は食品添加物、例えばChemicals Used in Food Processing, pub 1274 by the National Academy of Sciences, 63-258頁に記載されているものが本発明においてフレーバー剤として使用されることができる。
【0039】
本発明の経口組成物又は歯磨き剤は、着色剤又は着色料、例えば色素、染料、顔料及び粒状物質を所望の色を生じさせるのに有効な量で含有していてもよい。本発明において有用な着色剤(着色料)は顔料、例えば、経口組成物の約2質量%まで及び好ましくは約1質量%未満の量で配合されることができる二酸化チタンを含む。着色料は、食品、医薬及び化粧品用途に適している天然の食用色素及び染料も含んでいてよい。当業者に理解されるように、例えば食品グレード及び/又は薬剤学的に受け入れることができる着色剤、染料又は着色料、FD&C着色料は、例えば主要なFD&C青色1号、FD&C青色2号、FD&C緑色3号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、FD&C赤色3号、FD&C赤色33号及びFD&C赤色40号及びレーキFD&C青色1号、FD&C青色2号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、FD&C赤色2号、FD&C赤色3号、FD&C赤色33号、FD&C赤色40号及びそれらの組合せ物を含む。
【実施例】
【0040】
本発明の特に好ましい実施態様は目下、以下の例に関連して記載されるが、これらは制限するためのものではなく説明するためのものである。
【0041】
次の例のいずれかにおいて使用されるフレーバー剤は次の成分を含んでいた:
【0042】
【表1】

【0043】
以下の例のいずれかにおいて使用されるグリチルリチン酸モノアンモニウムはMAGNASWEET(R) 120 (Mafco)であった。MAGNASWEET(R) 100、125、130、165及び365を本発明に従って使用することもできる。
【0044】
例1〜3:
例1〜3の練り歯磨きを、技術における通常の技術を有する者に十分公知である技法を用いて製造した。とりわけ例1〜3の練り歯磨きを次のように製造した。第一段階を、カルボキシメチルセルロース(CMC 7M8SXF)をポリエチレングリコール中に分散させることにより製造した。ついで第二段階を、水34.0g及びソルビトール101.5gを組み合わせ、ついでその中にクエン酸ナトリウム、サッカリン、フッ化ナトリウム及びグリチルリチン酸モノアンモニウムを溶解させ、かつ50℃に加熱することにより製造した。ついで第一段階を第二段階に添加し、かつ高せん断下に20分間混合した。ついでこの混合物をロス(Ross)ミキサーに移した。次に第三段階を、重炭酸ナトリウム及び二酸化チタンを組み合わせることにより製造した。ついでこの第三段階を、15分の期間に亘ってロスミキサーに添加する。この添加が完了した際に、真空を28″に上昇させ、かつ15分間混合する。ついでフレーバー剤の式量をミキサーに添加し、かつ28″真空で10分間混合する。次に第五段階を、ラウリル硫酸ナトリウムを水25g中に溶解させることにより製造した。ロスミキサーを停止させ、かつ真空を大気圧に減少させる。ついで第五段階をミキサーに添加し、かつ真空を28″に上昇させる。ついでロスミキサーを始動させ、かつ10分間混合する。この最終的な混合が完了した際に、ミキサーを停止させ、真空を開放し、かつバッチを将来の使用のために適切な貯蔵容器に移す。
【0045】
例1〜3に従って製造された練り歯磨きは次の成分を有する:
【0046】
【表2】

【0047】
例4〜5:
例4〜5の練り歯磨きを、技術における通常の技術を有する者に十分公知である技法を用いて製造した。詳細には例4の練り歯磨きを、上記の例1〜3において使用されたのと同じ手順に従って製造した。
【0048】
例5の練り歯磨きを次のように製造した。第一段階を、カルボキシメチルセルロース(CMC 12M 31 XP)及びカラゲナン(Gelcarin DG)をポリエチレングリコール中に分散させることにより製造した。ついで第二段階を、水50gをソルビトール205.25gと組み合わせ、ついでその中にサッカリン、フッ化ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びグリチルリチン酸モノアンモニウムを溶解させ、かつ60℃に加熱することにより製造した。ついで第一段階を第二段階に添加し、かつ高せん断下に20分間混合する。ついでこの混合物をロスミキサーへ移す。ついで第三段階を、重炭酸ナトリウム、二酸化チタン及びシリカ(Huber Zeofree 153)を組み合わせることにより形成させる。ついでこの第三段階を、大気圧で15分間に亘りロスミキサーに添加する。この添加が完了した際に、真空を28″に上昇させ、かつ混合をさらに15分間続ける。ついでフレーバー剤の式量をミキサーに添加し、かつ28″真空で10分間混合する。次に第五段階を、水25g中にラウリル硫酸ナトリウムを溶解させることにより製造する。ついでロスミキサーを停止させ、かつ真空を開放する。ついで第五段階をミキサーに添加し、真空を28″に増大させ、かつバッチを10分間混合する。これらの10分間の混合が完了した際に、ミキサーを停止させ、かつ真空を開放する。ついで完成した練り歯磨きを将来の使用のために適切な容器に移す。
【0049】
例4〜5に従って製造された練り歯磨きは次の成分を有する:
【0050】
【表3】

【0051】
上記の例4及び5に従って製造された練り歯磨きの味覚試験を、6人の構成員のパネルにより行った。
【0052】
例えば、図1及び2は、重曹30%を含む通常の練り歯磨きを例5による本発明の練り歯磨きと比較する6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示す。図1及び2において分かるように、重曹30%により通常付与される塩からい味は、例5による本発明の練り歯磨きにおいて、ブラッシングの間及びすすいだ後の双方で、大いに減少され、かつ殆ど完全に除去される。そのうえ図1は、例5による本発明の練り歯磨きが、重曹30%を含む通常の練り歯磨き中に存在しないクールな味を付与することを示す。
【0053】
図3及び4は、(1)重曹60%を含む通常の練り歯磨き;(2)例4による本発明の練り歯磨き;及び(3)ARM & HAMMER DENTAL CARE(R) Cool Mint Pasteとして現在市販されている練り歯磨きを比較する6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示す。図3及び4において分かるように、重曹60%により通常付与される塩からい味が、例4による本発明の練り歯磨きにおいて、ブラッシングの間及びすすいだ後の双方で、大いに減少され、かつ殆ど完全に除去される。さらに、例4による本発明の練り歯磨きはARM & HAMMER DENTAL CARE(R) Cool Mint Pasteよりもずっと塩からくない味がする。そのうえ図3は、例4による本発明の練り歯磨きが重曹60%を含んでいる通常の練り歯磨き中に存在せず、かつARM & HAMMER DENTAL CARE(R) Cool Mint Paste中に存在しているよりも高い程度でクールな味を付与することを示す。
【0054】
例6〜8:
例6〜8において、義歯接着剤組成物を、技術における通常の技術を有する者に十分公知である技法を用いて製造した。
【0055】
例6において、義歯接着剤組成物を、全体として参考により本明細書に取り入れられる米国特許第5,073,604号明細書の例VIIに従って製造した。故に、例6の義歯接着剤組成物は、亜鉛又はストロンチウム塩を含有する混合された部分塩を含んでいた。米国特許第5,073,604号明細書、10欄、6〜25行参照。
【0056】
例7において、例7の義歯接着剤組成物が一部の付加的な成分を含んでいたことを除いて、例6の義歯接着剤組成物を、再び米国特許第5,073,604号明細書の例VIIに従って製造した。これらの付加的な成分を、米国特許第5,073,604号明細書の例VIIに従って製造した義歯接着剤組成物に添加し、かつ組合せ物を均質になるまで混合した。詳細には、例7の義歯接着剤組成物はさらに次の成分を含んでいた:クエン酸ナトリウム(最終的な義歯接着剤組成物の1.0質量%)、サッカリン(最終的な義歯接着剤組成物の0.05質量%)及びグリチルリチン酸モノアンモニウム(最終的な義歯接着剤組成物の0.3質量%)。故に、例7の義歯接着剤組成物は亜鉛又はストロンチウム塩を含有する混合された部分塩を含んでいた一方で、それはまたクエン酸ナトリウム、サッカリン及びグリチルリチン酸モノアンモニウムの組合せを含んでいた。
【0057】
例8において、例8の義歯接着剤組成物が一部の付加的な成分を含んでいたことを除いて、例6の義歯接着剤組成物を、再び米国特許第5,073,604号明細書の例VIIに従って製造した。これらの付加的な成分を、米国特許第5,073,604号明細書の例VIIに従って製造した義歯接着剤組成物に添加し、かつ組合せ物を均質になるまで混合した。詳細には、例8の義歯接着剤組成物はさらに次の成分を含んでいた:クエン酸ナトリウム(最終的な義歯接着剤組成物の1.0質量%)、サッカリン(最終的な義歯接着剤組成物の0.05質量%)、グリチルリチン酸モノアンモニウム(最終的な義歯接着剤組成物の0.3質量%)及び前記のフレーバー剤(最終的な義歯接着剤組成物の0.1質量%)。故に、例8の義歯接着剤組成物は亜鉛又はストロンチウム塩を含有する混合された部分塩を含んでいた一方で、それはまたクエン酸ナトリウム、サッカリン及びグリチルリチン酸モノアンモニウム並びに前記のフレーバー剤の組合せ物を含んでいた。
【0058】
上記の例6〜8に従って製造した義歯接着剤組成物の味覚試験を、6人の構成員のパネルにより行った。詳細には、味覚試験は、例の1つの試料約0.4gを舌に施し、約30秒間待ち、ついで生じる味を評価することを含んでいた。
【0059】
図5は、前記の例6〜8の義歯接着剤組成物を比較する6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示す。図5において分かるように、義歯接着剤組成物中に存在している亜鉛又はストロンチウム塩により通常付与される塩からい味が、例7及び8による本発明の義歯接着剤組成物において、大いに減少され、かつ殆ど完全に除去される。そのうえ、図5は、例7及び8による本発明の義歯接着剤組成物が、例6の義歯接着剤組成物中に存在している金属味を大いに減少され、かつ殆ど完全に除去されることを示す。
【0060】
図1〜5に表される試験結果により証明されるように、その中に含まれている塩(例えば重炭酸ナトリウム、亜鉛塩、ストロンチウム塩)により通常付与される歯磨き剤の塩からい味は、クエン酸ナトリウム、サッカリン及びグリチルリチン酸モノアンモニウムの組合せ物によりマスクされる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】重曹30%を含んでいる通常の練り歯磨きを例5による本発明の練り歯磨きと比較する、6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示すグラフ。
【図2】重曹30%を含んでいる通常の練り歯磨きを例5による本発明の練り歯磨きと比較する、6人の個々のパネリストからの塩からい味のみについての味覚試験結果を示すグラフ。
【図3】(1)重曹60%を含んでいる通常の練り歯磨き;(2)例4による本発明の練り歯磨き;及び(3)ARM & HAMMER DENTAL CARE(R) Cool Mint Pasteとして現在市販されている練り歯磨きを比較する、6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示すグラフ。
【図4】(1)重曹60%を含んでいる通常の練り歯磨き;(2)例4による本発明の練り歯磨き;及び(3)ARM & HAMMER DENTAL CARE(R) Cool Mint Pasteとして現在市販されている練り歯磨きを比較する、6人の個々のパネリストからの塩からい味のみについての味覚試験結果を示すグラフ。
【図5】(1)亜鉛又はストロンチウム塩を含んでいる通常の義歯接着剤組成物(例6);(2)例7による本発明の義歯接着剤組成物;及び(3)例8による本発明の義歯接着剤組成物を比較する、6人の個々のパネリストからの味覚試験結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩、イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤を含む経口組成物において、イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤が、塩により通常付与される塩からい味を軽減する又は除去するのに有効である量で存在していることを特徴とする、塩、イオンチャネル競争剤、初期甘味剤及び遅延甘味剤を含む経口組成物。
【請求項2】
イオンチャネル競争剤が、クエン酸のナトリウム塩、リン酸のナトリウム塩、ヒドロキシ酸のナトリウム塩及びヒドロキシ酸のカルシウム塩からなる群から選択されている、請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
イオンチャネル競争剤がヒドロキシ酸の塩を含んでおり、その際にヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸及びメソ酒石酸からなる群から選択されている、請求項1記載の経口組成物。
【請求項4】
イオンチャネル競争剤がクエン酸ナトリウムを含んでいる、請求項1記載の経口組成物。
【請求項5】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約0.25%〜約2.0%の量で存在している、請求項4記載の経口組成物。
【請求項6】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約1.0%の量で存在している、請求項5記載の経口組成物。
【請求項7】
初期甘味剤が、サッカリン、スクラロース、ネオテーム、アリテーム、アスパルテーム、サイクラミン酸塩、タウマチン、ジヒドロカルコン及びアセスルファムカリウム化合物からなる群から選択されている、請求項1記載の経口組成物。
【請求項8】
初期甘味剤がサッカリンを含んでいる、請求項7記載の経口組成物。
【請求項9】
サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.10%〜約0.80%の量で存在している、請求項8記載の経口組成物。
【請求項10】
サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.60%の量で存在している、請求項9記載の経口組成物。
【請求項11】
遅延甘味剤がグリチルリチン酸モノアンモニウムを含んでいる、請求項1記載の経口組成物。
【請求項12】
グリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.05%〜約0.50%の量で存在している、請求項11記載の経口組成物。
【請求項13】
グリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.30%の量で存在している、請求項12記載の経口組成物。
【請求項14】
塩が、塩素の金属塩、フッ素の金属塩、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、亜鉛塩、ストロンチウム塩、第一スズ塩及びそれらの組合せ物からなる群から選択されている、請求項1記載の経口組成物。
【請求項15】
塩が亜鉛塩又はストロンチウム塩を含んでいる、請求項1記載の経口組成物。
【請求項16】
塩、クエン酸ナトリウムの有効量、サッカリンの有効量及びグリチルリチン酸モノアンモニウムの有効量を含む経口組成物において、クエン酸ナトリウム、サッカリン及びグリチルリチン酸モノアンモニウムの有効量が、塩により通常付与される塩からい味をマスクするのに有効であることを特徴とする、塩、クエン酸ナトリウムの有効量、サッカリンの有効量及びグリチルリチン酸モノアンモニウムの有効量を含む経口組成物。
【請求項17】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約0.25%〜約2.0%の量で存在しており、サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.10%〜約0.80%の量で存在しており、かつグリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.05%〜約0.50%の量で存在している、請求項16記載の経口組成物。
【請求項18】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約1.0%の量で存在しており、サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.60%の量で存在しており、かつグリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.30%の量で存在している、請求項17記載の経口組成物。
【請求項19】
塩が、塩素の金属塩、フッ素の金属塩、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、亜鉛塩、ストロンチウム塩、第一スズ塩及びそれらの組合せ物からなる群から選択されている、請求項16記載の経口組成物。
【請求項20】
塩が亜鉛塩又はストロンチウム塩を含んでいる、請求項16記載の経口組成物。
【請求項21】
経口組成物にイオンチャネル競争剤の有効量、初期甘味剤の有効量及び遅延甘味剤の有効量を添加する段階を含むことを特徴とする、経口組成物中の塩の塩からい味をマスクする方法。
【請求項22】
イオンチャネル競争剤がクエン酸ナトリウムを含み、初期甘味剤がサッカリンを含み、かつ遅延甘味剤がグリチルリチン酸モノアンモニウムを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約0.25%〜約2.0%の量で存在し、サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.10%〜約0.80%の量で存在し、かつグリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.05%〜約0.50%の量で存在する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
クエン酸ナトリウムが、経口組成物の全質量の約1.0%の量で存在し、サッカリンが、経口組成物の全質量の約0.60%の量で存在し、かつグリチルリチン酸モノアンモニウムが、経口組成物の全質量の約0.30%の量で存在する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
塩を、塩素の金属塩、フッ素の金属塩、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、亜鉛塩、ストロンチウム塩、第一スズ塩及びそれらの組合せ物からなる群から選択する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
塩が亜鉛塩又はストロンチウム塩を含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
塩が重炭酸ナトリウムを含んでいる、請求項1記載の経口組成物。
【請求項28】
塩が重炭酸ナトリウムを含んでいる、請求項16記載の経口組成物。
【請求項29】
塩が重炭酸ナトリウムを含む、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−514992(P2006−514992A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510364(P2005−510364)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/036723
【国際公開番号】WO2004/047663
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【Fターム(参考)】