説明

壁面と床面とのシール構造

【課題】 壁面と床面との防水性能をより向上させることができる壁面と床面とのシール構造を提供する。
【解決手段】 浴室等における壁面1の下端部と床面2とのシール構造であって、上記壁面1と床面2との室内側接合部をシリコン10でコーキングし、該コーキング部を内カバー体11で覆った後、該内カバー11を外カバー14で覆い、該外カバー14の上下部をシリコン22,23でコーキング処理するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等における壁面と床面とのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室における壁面と床面との取付構造において、排水機能を有する溝部内に壁面を立設する場合、壁面とガイドレールとの取付部分が浴室側に露呈していると、壁面とガイドレールとの間に水が浸入して、金属部材を腐食させる原因となっている問題と、その腐食部分に孔が開き、その孔から壁面内部に水が浸入して、ステンレスプレートが剥がれる等、壁面の損傷の原因につながるという問題を解決するため、本出願人は、先に特許文献1に示す技術を提案している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−32414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に示された技術は、浴室等における壁面の下端部と床面との取付構造であって、基片と、その両端側から立ち上がるガイド片と、からなる側面視略コ字状のガイドレールを、前記床面を形成する防水パンの端部に沿うように固定し、前記ガイド片同士の間に壁面の下部を嵌合するように取付け、ガイドレールを床面に固定した後、両ガイド片の間に壁面の下端を嵌合するだけで、床面に壁面を容易に取付けることができるとともに、壁面の下端面から両側面の下部にかけてガイドレールにより覆われるため、ガイドレールと壁面との間への水の浸入を確実に防止できる、という優れた技術である。
【0005】
この発明は、本出願人が先に提案した特許文献1に示す発明をさらに発展させ、同取付構造における防水性能をより向上させることができる壁面と床面とのシール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、請求項1に記載の発明では、浴室等における壁面の下端部と床面とのシール構造であって、上記壁面と床面との室内側接合部をコーキングし、該コーキング部を内カバー体で覆った後、該内カバーを外カバーで覆い、該外カバーの上下部をコーキング処理したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明を技術的前提とし、前記床面を形成する防水パンの端部に沿うように、基片と、その一側端側から立ち上がるガイド片と、からなる側面視略L字状のガイドレールを固定し、前記基片に壁面の下部を取付ることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明を技術的前提とし、前記外カバーの取り付けを、該外カバーの裏面側上下に配設された両面テープで行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1項の発明によれば、壁面の下端面から室内側接合部の下部をコーキングした後、該コーキング部を内カバー体で覆い、この後、該内カバーを外カバーで覆い、該外カバーの上下をコーキング処理するように構成したので、過度な清掃などで外カバーのコーキングが剥がれたとしても、内カバーの内側に配設されたコーキングが防水機能を保持するため、上記接合部における防水性能を経時保持することができる。特に、既設の壁面と床面との接合部における防水性能を大幅に向上させることができる。
【0010】
また、請求項2項の発明によれば、ガイドレールを床面に固定した後、壁面の下端を固定するだけで、床面に壁面を容易に取付けることができるとともに、ガイドレールと壁面との間への水の浸入を確実に防止できる。
【0011】
さらに、請求項3の発明によれば、外カバーの内カバーや壁面への取付けを両面テープで行なうことができるので、施工作業を大幅に簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に示す発明の実施例に基づき、この発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明のシール構造を適用した浴室を示しており、図中符号1は浴室の側面を構成する壁面であり、2は浴室の床面を形成する防水パンである。
【0014】
図2に示すように、壁面1は、ステンレス製の化粧板1aと亜鉛メッキ鋼板からなる外板1bとにより、発砲樹脂を挟み込んだサンドイッチ構造であり、その下端部分は、亜鉛メッキ鋼板からなる断面下向きの略コ字形に形成された閉塞部材1cにより、溝1dが形成されるように閉塞されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、防水パン2は、FRP等の合成樹脂材からなり、その壁面1側の周縁には、床面2aよりも低位置となる溝部2gが形成されており、この溝部2g内には、排水口(図示せず)に連通する排水溝2cが形成されている。
【0016】
また、溝部2g内における排水溝2cの外側の底部2bには、壁面1の取付け位置に沿って複数箇所のねじ孔2eが穿設されており、さらにその外縁には上向きの折り返し片2dが形成されている。
【0017】
溝2cの上方には、底部2bの深さと同寸の高さを有する断面略下向きのコ字形のカバー部材3が、溝2cの両側の底部2b上に載置されており、溝部2gが隠蔽されるようになっている。
【0018】
壁面1は、ガイドレール4を介して溝部2gにおける外側の底部2b上に取付けられている。このガイドレール4は、防水パン2における各端辺とほぼ同寸の長さを有する基片4aと、基片4aの外側の端部から上方に屈曲成形される保持片4cとからなり、断面略L字形に形成されている。上記基片4aの洗い場側端部は、壁面1の洗い場側の面部と面一となる長さに形成されている。
【0019】
このガイドレール4は、合成樹脂材により弾性変形可能に一体的に形成されており、また、上記保持片4cの上端部は、上方に向かって外向きに傾斜するように屈曲成形されている。
【0020】
基片4aにおけるねじ孔2eに対応する箇所には、上下に貫通するねじ孔4eが穿設されているとともに、下面には長手方向に延びる溝4dが設けられている。
【0021】
よって、ガイドレール4は、上部から固定ねじ8を、ねじ孔4e、2eを介して木材等からなる固定部材7に螺入することで、防水パン2に固定できる。
【0022】
この時、固定ねじ8の頭部と基片4aとの間に基片4aとほぼ同形のパッキン5が、さらに、基片4aと溝部2gとの間の、ねじ孔4eの周囲を取り巻くように、溝4dとほぼ同形でその深さよりも肉厚に形成されたパッキン6がそれぞれ取付けられており、ねじ孔4eからの水の浸入が防止されるようになっている。
【0023】
このようにして壁面1と防水パン2とをガイドレール4を介して取り付けた後、これらの部材1,2,4の接合部をシリコン10でコーキングし防水処理を施す。次に、該シリコン10の洗い場側を内カバー11で隠蔽する。この内カバー11は、合成樹脂材により弾性変形可能に断面略逆L字状に形成されており、その上端突部12は壁面1に接合して該上端突部12の下方にシリコン10が収納可能な空隙部が形成されるように構成されている。従って、上記シリコン10は、内カバー11の垂直片部に密着された状態で隠蔽され、シリコン10の防水性能が劣化しないようシールされる。
【0024】
このようにして内カバー11でシリコン10を隠蔽した後、該内カバー11を外カバー14で隠蔽する。
【0025】
この外カバー14は、合成樹脂材により垂直片部15と、この垂直片部15の上端部から壁面方向に延設された傾斜片部16と、この傾斜片部16から垂直方向に延設された段部17と、この段部17の上端部にT字状に延設された水平片部18と、該水平片部18の洗い場側端部から垂直方向に延設された堰片部19と、から構成されており、上記垂直片部15の裏面側(壁面側の面)には、外カバー14を前記内カバー11の垂直面に接着するための両面テープ20が貼着されており、また、段部17の裏面側(壁面側の面)には、外カバー14を前記壁面1に接着するための両面テープ21が貼着されている。
【0026】
尚、外カバー14の水平片部18と堰片部19とで形成される段部には、図2に示すように、シリコン22が充填されてシール処理が施される。
【0027】
次に、本実施例におけるシール構造の施工手順について説明する。まず、ガイドレール4の溝4dにパッキン6を取付けた後、溝部2gにおける排水溝2cの外側の底部2b上にガイドレール4を配置する。この時、ガイドレール4の保持片4cの下部が、折り返し片2dの下部に当接するように配置すれば良く、位置決めが容易に行える。
【0028】
次に、ガイドレール4の基片4a上にパッキン5を配置した後、その上から固定ねじ8を、ねじ孔4eとパッキン6とねじ孔2eに挿通して固定部材7に螺入することで、防水パン2にガイドレール4を不動に固定する。
【0029】
次に、壁面1の下端を、防水パン2の各端辺の溝部2gに固定されたガイドレール4上に立設する。
【0030】
このようにして、壁面1を防水パン2の周縁部に枠状に立設した後、その上部に天井パネルを適宜取付けることで浴室が形成される。
【0031】
次に、壁面1と防水パン2との接合部をシリコン10でコーキングするが、先ず、内カバー11と外カバー14を、上記接合部長さに対応させて切断する。この場合、両カバー11,14とも、コーナー側に所要長さのコーキングしろを空ける。
【0032】
次に、上記接合部に、壁面1の面から所要幅の目地幅でマスキングを施した後、内カバー11を壁面1にあてがい上端に沿ってマスキングする。次に、両カバー11,14ともマスキングをしておく。このとき、外カバー14は、下側に所要の目地幅を取っておく。
【0033】
次に、防水パン2とガイドレール4と壁面1の隙間に入るようにシリコン10をコーキングし、この後、内カバー11をシリコン10が内カバー11全体に回り込むように押し当てた後、壁面1のマスキングと内カバー11のマスキングを剥す。
【0034】
次に、内カバー11の手前側に、所要高さのスペーサ(図示せず)を置いた後、外カバー14の両面テープ20,21の剥離紙を剥し、該外カバー14の下端部をスペーサの上に置いて壁面1に押し付ける。
【0035】
次に、スペーサを取り外し、外カバー14を壁面1に強く押し付けた後、該外カバー14の上側に所要幅の目地幅でマスキングする。この後、外カバー14の上下をシリコン22,23でコーキングする。
【0036】
次に、全てのマスキングを剥して両カバー11,14の左右端部コーキングで仕上げることで、水の侵入を防止することができる。
【0037】
このようなシール構造にあっては、シリコン10,22,23により、浴室の使用に際して、防水パン2の溝部2g内を流れる水が、ガイドレール4と壁面1との間へ浸入するのを確実に防止できる。
【0038】
また、過度な清掃などで外カバー14のコーキング22又は23が剥がれたとしても、内カバー11の内側に配設されたシリコン10は剥がれる心配がないため、防水機能を経時保持させることができる。
【0039】
特に、既設の壁面と床面との接合部における防水性能を大幅に向上させることができる。
【0040】
また、本実施例に係るシール構造を既設の壁面と床面との接合部に適用する場合には、例えば、図3に示すように、タイル1Aが貼着された壁側モルタル1Bと、タイル2Aが貼着された床側モルタル2Bの接合部を、先ずシリコン10を所要の目地幅でコーキングし、次に上記手順と同様の手順で内カバー11及び外カバー14を取り付けてコーキング処理することで、該接合部の防水性能を大幅に向上させることができる。尚、本例において、図1と図2で示す部材と同様の部材については、図1と図2で用いた符号と同一の符号を付して、その詳細な説明をここでは省略する。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、外カバー14を両面テープで接着固定する場合を例にとり説明したが、他の公知の接着剤で接着する等、その他の手段で固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施例に係る壁面と床面とのシール構造の要部を示す分解斜視説明図である。
【図2】同シール構造の断面説明図である。
【図3】同シール構造を既設の浴室に適用した場合を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 壁面
2 防水パン
4 ガイドレール
10,22,23 シリコン
11 内カバー
14 外カバー
20,21 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室等における壁面の下端部と床面とのシール構造であって、上記壁面と床面との室内側接合部をコーキングし、該コーキング部を内カバー体で覆った後、該内カバーを外カバーで覆い、該外カバーの上下部をコーキング処理したことを特徴とする壁面と床面とのシール構造。
【請求項2】
前記床面を形成する防水パンの端部に沿うように、基片と、その一側端側から立ち上がるガイド片と、からなる側面視略L字状のガイドレールを固定し、前記基片に壁面の下部を取付ることを特徴とする請求項1に記載の壁面と床面とのシール構造。
【請求項3】
前記外カバーの取付けは、該外カバーの裏面側上下部に配設された両面テープで行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の壁面と床面とのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−85050(P2007−85050A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273678(P2005−273678)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】