説明

変形性薄物展開装置

【課題】本発明の課題は、人手で布地等の把持作業が行われる場合、その把持作業を従来よりも簡素化することができ、自動制御で布地等の把持作業が行われる場合、布地等を把持するまでの工程を比較的少なくすることができる展開装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る展開装置1,2は、展開機構2Aおよび制御装置4を備える。展開機構は、複数のハンド部21および第2接近離間機構22を含む。ハンド部は、一対のフィンガ部21Aおよび第1接近離間機構21Bを有する。第1接近離間機構は、一対のフィンガ部の対抗方向を含む面(以下「第1面」という)に沿って一対のフィンガ部を接近/離間させる。第2接近離間機構は、第1面と直交する方向に沿って同一直線上でハンド部を接近/離間させる。制御装置は、ハンド部を第1距離まで接近させた後、フィンガ部が第11距離まで接近された状態でハンド部を第1距離よりも長い距離離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地や、フィルム、紙等の変形性薄物の自動展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アパレル業界や、クリーニング業界、リネンサプライ業界、福祉業界、医療業界等から、布地のハンドリング、例えば、布地の搬送や、布地の積み重ね、布地の折り畳み等を全て自動で行うことが可能なロボットの開発を待ち望む声が聞かれる。
【0003】
ところで、このような布地の全自動ハンドリングを実現させるためには、布地の自動展開技術を確立する必要がある。そして、この布地の自動展開技術については現在までに様々な提案がなされている。
【0004】
例えば、過去に「布地の角部を把持する2つのクランプと、布地の中心が規定位置にくるようにクランプを左右方向に移動させることが可能であるクランプ移動機構と、布地の展開状態を検出するセンサとを有する布地の展開装置(以下「第1従来装置」という)」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この第1従来装置では、互いに接近して配置される2つのクランプに布地を人手で挟ませた後、2つのクランプが左右にスライド移動されることにより布地が展開される。なお、このとき、クランプ移動機構は、布地の中心が規定位置と一致するようにクランプを移動させている。そして、この第1従来装置にはクランプよりも若干低い位置にクランプの移動方向を含む面を挟むようにして発光素子と受光素子とが配置されており、発光素子から発せられる光(以下「センサ光」という)が展開中の布地によって遮られ受光素子がセンサ光を検出できなくなると、布地の展開が完了する。また、別の態様では、展開中の布地がセンサスイッチを切り換えた瞬間にクランプの残りの移動距離が算出され、スイッチ切換時からクランプがその移動距離を移動したときに布地の展開が完了する。
【0005】
また、過去に「布地の一角を把持する第1クランプと、布地の他部を把持する第2クランプと、第2クランプに布地を把持させたまま第2クランプを布地の他の角部まで移動させるクランプ移動機構とを備える布地展開装置(以下「第2従来装置」という)」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、過去に「布地の角部を取り出すローラ機構と、角部取り出し装置によって取り出された角部を把持する第1角部把持機構と、第1角部把持機構によって把持された角部の隣の角部を把持する第2角部把持機構と、第1角部把持機構と第2角部把持機構とを左右方向に移動させる角部把持機構移動機構を備える布地の展開装置(以下「第3従来装置」という)」が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−89473号公報
【特許文献2】特開2002−321869号公報
【特許文献3】特開平7−231999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、第1従来装置では、布地の展開動作前に、人が、一つの角部を一方のクランプに把持させた後、先の角部と対角関係にない隣の角部をもう一方のクランプに把持させる作業を行う必要がある。つまり、第1従来装置には、展開すべき布地が多い場合、人が比較的煩雑な作業を行わなければならないという問題がある。
【0008】
また、第2従来装置や第3従来装置では、布地把持機構の自動制御により布地把持機構に布地の角部を把持させている。しかし、これらの従来装置には、機構自体がかなり複雑であり布地把持機構が布地を把持するまでの工程が多いという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、人手で布地や、フィルム、紙、シート等の変形性薄物の把持作業が行われる場合、その把持作業を従来よりも簡素化することができ、自動制御で変形性薄物の把持作業が行われる場合、変形性薄物を把持するまでの工程を比較的少なくすることができる変形性薄物展開装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る変形性薄物展開装置は、変形性薄物展開機構および制御装置を備える。なお、ここにいう「変形性薄物」とは、例えば、布地や、フィルム、紙、シートなどである。また、本発明において、この変形性薄物の形状は特に限定されないが、矩形であれば変形性薄物展開装置の制御が行いやすくなる。また、本発明において、この変形性薄物の縁には厚肉部分(例えば、折り返し部分など)が形成されている必要がある。この肉厚部分がない場合には、展開動作中に変形性薄物がかなりの確率で落下してしまうからである。変形性薄物展開機構は、少なくとも2つのハンド部および第2接近離間機構を含む。ハンド部は、一対のフィンガ部および第1接近離間機構を有する。一対のフィンガ部は、基板、第1突起部および第2突起部をそれぞれ有する。第1突起部は、基板の基端部から基板の板厚方向第1側に延びている。第2突起部は、基板の先端部から基板の板厚方向第1側に延びている。また、この第2突起部は、第1突起部と対抗する側の角部が面取りされている。なお、第2突起部の面取り面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。そして、この一対のフィンガ部は、第1突起部同士および第2突起部同士が互いに対抗するように配置される。第1接近離間機構は、一対のフィンガ部の対抗方向を含む面(以下「第1面」という)に沿って一対のフィンガ部を相対移動させて一対のフィンガ部を接近および離間させることが可能である。なお、フィンガ部は、第1面に沿ってスライド移動するように構成されてもよいし、支点を中心として蟹爪のように開閉動するように構成されてもよい。また、ここにいう「相対移動」とは、少なくとも片方のフィンガ部を第1面に沿って移動させることにより一方のフィンガ部と他方のフィンガ部との相対的な位置関係を変化させることである。第2接近離間機構は、第1面と直交する方向(以下「第1方向」という)に沿って同一直線上でハンド部を相対移動させてハンド部を接近および離間させることが可能である。なお、ここにいう「相対移動」とは、少なくとも1つのハンド部を第1方向に沿って移動させることにより1つ以上のハンド部と他のハンド部との相対的な位置関係を変化させることである。なお、第1接近離間機構および第2接近離間機構としては、具体的には、ボールネジ機構、エアシリンダ機構、モータシリンダ機構、電動スライダ機構、ベルトスライダ機構、リニアスライダ機構およびラックピニオン機構などの機構が挙げられる。なお、これらの機構は、主に、駆動源、送り部材およびガイド部材から構成されている。なお、ボールネジ機構は、モータを駆動源とし、ボールネジ又は台形ネジを送り部材とし、LMガイド材等をガイド部材とするスライド移動機構であって、モータの回転をボールネジ又は台形ネジに伝達して移動対象物をLMガイド等のガイド部材に沿ってスライド移動させる機構である。また、エアシリンダ機構は、エアコンプレッサを駆動源とし、ピストンロッドを送り部材兼ガイド部材とするスライド移動機構であって、ピストンロッドの直動を利用してピストンロッドに取り付けられた移動対象物をスライド移動させる機構である。また、モータシリンダ機構は、モータを駆動源とし、ピストンロッドを送り部材兼ガイド部材とするスライド移動機構であって、モータの回転をボールネジに伝達してピストンロッドに取り付けられた移動対象物をスライドさせる機構である。また、電動スライダ機構は、モータを駆動源とし、ボールネジ等を送り部材とし、LMガイド材等をガイド部材とするスライド移動機構であって、モータの回転をボールネジに伝達して移動対象物をLMガイド材等のガイド部材に沿ってスライド移動させる機構である。また、ベルトスライダ機構は、モータを駆動源とし、ベルト又はワイヤを送り部材とし、LMガイド材等をガイド部材とするスライド移動機構であって、モータの回転をベルト又はワイヤに伝達して移動対象物をLMガイド材等のガイド部材に沿ってスライド移動させる機構である。また、リニアスライダ機構は、磁石を駆動源とし、送り部材を同じく磁石とし、LMガイド材等をガイド部材とするスライド移動機構であって、リニアモータの原理を利用して移動対象物をスライド移動させる機構である。また、ラックピニオン機構は、モータを駆動源とし、ラックおよびピニオンを送り部材とし、LMガイド材等をガイド部材とするスライド移動機構であって、モータの回転によりピニオンを回転させ、ラックに取り付けられた移動対象物をLMガイド材等のガイド部材に沿ってスライド移動させる機構である。制御装置は、第1制御および第2制御を行う。第1制御では、制御装置が、ハンド部を第1距離まで接近させるように第2接近離間機構を制御する。第2制御では、制御装置が、第1制御後にフィンガ部が第11距離まで接近された状態でハンド部を第1距離よりも長い距離(以下「第2距離」という)離間させるように第2接近離間機構を制御する。なお、第11距離は「変形性薄物を把持することができる程度の距離であって、変形性薄物に過度の応力が加わらない程度の距離」とするのが好ましい。
【0011】
先ず、この変形性薄物展開装置において人手で変形性薄物の把持作業が行われる場合について説明する。
【0012】
かかる場合、人は、先ず、複数のハンド部が隣接された状態(第1制御により実現される)で、複数のハンド部の全てのフィンガ部を離間させる。次いで、人は、変形性薄物の任意の縁部をフィンガ部の間に挿入する。そして、人は、フィンガ部を接近させ、全てのハンド部に変形性薄物の縁部を把持させる。なお、フィンガ部の離間および接近については制御ボタンにより実行させてもよいし、光学センサ等によりフィンガ部に変形性薄物が近づくと自動的にフィンガ部が離間しフィンガ部内部に変形性薄物が挿入されると自動的にフィンガ部が接近し変形性薄物が把持されるようにしてもかまわない。そして、この把持作業が完了して、展開動作が開始されると、変形性薄物展開装置は、ハンド部を第2距離まで離間させて変形性薄物を展開する。
【0013】
つまり、本発明に係る変形性薄物展開装置では、人は、探しやすい縁部を一度に複数のハンド部に把持させることができる。このため、人は、探しにくい角部を探し出し、その角部を一つずつクランプ(本願でいうハンド部)に把持させるのに比べて、簡単に把持作業を完了することができる。
【0014】
次に、この変形性薄物展開装置において自動制御で変形性薄物の把持作業が行われる場合について説明する。
【0015】
かかる場合、第1制御前に、変形性薄物展開装置の動作を以下のように制御して変形性薄物展開装置に変形性薄物を把持させる。
【0016】
先ず、ハンド部を第21距離離間させ、下側のフィンガ部の下面が変形性薄物の縁部に接触する位置(以下「第1位置」という)まで変形性薄物展開機構を移動させる。次いで、ハンド部を第21距離よりも短い距離(以下「第22距離」という)まで接近させる。なお、このとき、下側のフィンガ部の下面と変形性薄物の上面との摩擦が十分に高い条件であれば、又は、下側のフィンガ部が変形性薄物を下方向に押しつけた状態であれば、変形性薄物は、ハンド部同士の接近により、山形(側面視において)に変形させられる。なお、この場合、変形性薄物は、残留変形性(一旦変形させられるとその形状を維持する性質)を有する必要がある。つまり、変形性薄物の山形部分の下には、山形の空間(以下「山形空間」という)が生じる。続いて、第1位置よりも上後方の位置(以下「第2位置」という)に変形性薄物展開機構を移動させ、ハンド部を第22距離よりも短い距離(以下「第23距離」という)まで接近させる。つまり、このとき、変形性薄物展開機構は、ハンド部同士が接近した状態で変形性薄物の山形部分の手前上方位置に位置することになる。なお、このとき、変形性薄物は、その性質により変形形状を保ち続けている。また、このときの第23距離、つまりハンド部の接近距離は、山形空間に下側のフィンガ部を挿入できるような距離でなければならない。また、第2位置は「変形性薄物展開機構がそのまま前進したときに下側のフィンガ部が山形空間に挿入されるような高さ位置」であることが好ましい。その後、この変形性薄物展開装置は、フィンガ部を第31距離離間した状態で変形性薄物展開機構を第2位置よりも前方の位置(以下「第3位置」という)に移動させる。なお、第31距離は、変形性薄物の山形部分が入る距離でなければならない。また、第3位置は、「一対のフィンガ部が変形性薄物の山形部分を挟み込む状態となる位置」でなければならない。そして、フィンガ部を第11距離まで接近させる。つまり、このとき、ハンド部が変形性薄物を把持することになる。
【0017】
つまり、自動制御によりこの変形性薄物展開装置に変形性薄物を把持させる場合、変形性薄物展開装置は、変形性薄物の縁部を残留変形させて把持可能部分を形成し、その把持可能部分を把持することになる。このため、変形性薄物展開装置は、比較的少ない工程数で変形性薄物を把持することができる。
【0018】
また、この変形性薄物展開装置では、フィンガ部の前後に突起部が設けられている。つまり、この変形性薄物展開装置では、フィンガ部の前後の突起部の間に変形性薄物の縁の厚肉部分がくるように変形性薄物をフィンガ部に把持させれば、変形性薄物が展開動作中に落下することを防ぐことができる。また、このフィンガ部では、第2突起部の内側の角部、つまり変形性薄物の縁の厚肉部分と接触する部分が面取りされている。このため、この変形性薄物展開装置では、展開動作中に、フィンガ部が変形性薄物の縁の厚肉部分に引っ掛かることを防ぐことができる。したがって、この変形性薄物展開装置では、変形性薄物にダメージを与えることなく、滑らかな展開動作を実現することができる。
【0019】
第2発明に係る変形性薄物展開装置は、第1発明に係る変形性薄物展開装置であって、第2突起部は、基板の先端部から基板の板厚方向第1側に第1突起部よりも低い高さまで延びている。つまり、一対のフィンガ部において第1突起部同士が接触したとき、第2突起部の間には一定の隙間が生じることになる。
【0020】
このため、この変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物に対して把持力を弱めることができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物に対して過度な応力を加えずに済む。よって、この変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物をいたずらに傷めることがない。
【0021】
第3発明に係る変形性薄物展開装置は、第1発明又は第2発明に係る変形性薄物展開装置であって、フィンガ部には、対抗面に圧力センサが取り付けられている。そして、制御装置は、圧力センサの出力値に基づいてフィンガ部同士の接近距離を制御する。
【0022】
このため、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物の厚みによらず、変形性薄物の把持力を一定にすることができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物に余分な応力を加えずに済む。よって、この変形性薄物展開装置は、いたずらに変形性薄物を傷めることがない。
【0023】
第4発明に係る変形性薄物展開装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る変形性薄物展開装置であって、変形性薄物展開機構移動機構をさらに備える。変形性薄物展開機構移動機構は、変形性薄物展開機構を少なくとも上下方向および前後方向に移動させることが可能である。そして、制御装置は、第3制御および第4制御をさらに行う。第3制御では、制御装置が、第2制御後又は第2制御中に、変形性薄物展開機構を第1方向が水平面に平行となる状態としたまま変形性薄物展開機構を下前方又は下後方に向かって移動させるように変形性薄物展開機構移動機構を制御する。第4制御では、制御装置が、第3制御後に、フィンガ部を第11距離よりも長い距離(以下「第12距離」という)離間させるように第1接近離間機構を制御する。なお、第12距離は「ハンド部がもはや変形性薄物を把持することができなくなる距離」でなければならない。
【0024】
このため、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物をつまみ滑り展開させた後に、変形性薄物を静置することができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物のハンドリングの全自動化に大きく貢献する。
【0025】
第5発明に係る変形性薄物展開装置は、第4発明に係る変形性薄物展開装置であって、変形性薄物展開機構移動機構は、変形性薄物展開機構を上下方向、前後方向および左右方向に移動させることが可能である。
【0026】
このため、この変形性薄物展開装置では、変形性薄物の置き場所の自由度を高めることができる。
【0027】
第6発明に係る変形性薄物展開装置は、第4発明に係る変形性薄物展開装置であって、変形性薄物展開機構旋回機構をさらに備える。変形性薄物展開機構旋回機構は、変形性薄物展開機構を旋回させることが可能である。
【0028】
このため、この変形性薄物展開装置では、変形性薄物の置き場所の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
第1発明に係る変形性薄物展開装置は、人手で布地や、フィルム、紙、シート等の変形性薄物の把持作業が行われる場合、その把持作業を従来よりも簡素化することができ、自動制御で変形性薄物の把持作業が行われる場合、変形性薄物を把持するまでの工程を比較的少なくすることができる。また、この変形性薄物展開装置では、フィンガ部の前後に突起部が設けられている。つまり、この変形性薄物展開装置では、フィンガ部の前後の突起部の間に変形性薄物の縁の厚肉部分がくるように変形性薄物をフィンガ部に把持させれば、変形性薄物が展開動作中に落下することを防ぐことができる。また、このフィンガ部では、第2突起部の内側の角部、つまり変形性薄物の縁の厚肉部分と接触する部分が面取りされている。このため、この変形性薄物展開装置では、展開動作中に、フィンガ部が変形性薄物の縁の厚肉部分に引っ掛かることを防ぐことができる。したがって、この変形性薄物展開装置では、変形性薄物にダメージを与えることなく、滑らかな展開動作を実現することができる。
【0030】
第2発明に係る変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物に対して把持力を弱めることができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物に対して過度な応力を加えずに済む。よって、この変形性薄物展開装置は、一定範囲の厚みを有する変形性薄物をいたずらに傷めることがない。
【0031】
第3発明に係る変形性薄物展開装置は、変形性薄物の厚みによらず、変形性薄物の把持力を一定にすることができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物に余分な応力を加えずに済む。よって、この変形性薄物展開装置は、いたずらに変形性薄物を傷めることがない。
【0032】
第4発明に係る変形性薄物展開装置は、変形性薄物をつまみ滑り展開させた後に、変形性薄物を静置することができる。したがって、この変形性薄物展開装置は、変形性薄物のハンドリングの全自動化に大きく貢献する。
【0033】
第5発明に係る変形性薄物展開装置では、変形性薄物の置き場所の自由度を高めることができる。
【0034】
第6発明に係る変形性薄物展開装置では、変形性薄物の置き場所の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1は、図1に示されるように、第1載置台5Aに置かれる布地を把持した後にその把持した布地を展開して第2載置台5Bに静置する装置であって、主に、布地処理ロボット2、デジタル式ステレオカメラ3およびコンピュータ4から構成される。なお、本実施の形態において、デジタル式ステレオカメラ3はUSBケーブル(図示せず)を介してコンピュータ4に接続され、布地処理ロボット2もRS−232Cケーブル(図示せず)を介してコンピュータ4に接続される。
【0036】
以下、布地処理ロボット2、デジタル式ステレオカメラ3およびコンピュータ4についてそれぞれ詳述していく。
【0037】
<布地処理ロボット>
布地処理ロボット2は、図1〜4に示されるように、主に、ロボットハンド2Aおよびロボットアーム2Bから構成される。なお、ロボットハンド2Aは、図1および図2に示されるように、ロボットアーム2Bの先端側部分に回動自在に取り付けられている。以下、ロボットハンド2Aおよびロボットアーム2Bについてそれぞれ詳述していく。
【0038】
(1)ロボットハンド
ロボットハンド2Aは、図5〜8に示されるように、主に、ハンド機構21および第1スライド機構22から構成される。
【0039】
ハンド機構21は、図5〜8に示されるように、主に、一対のフィンガ部21Aおよび第2スライド機構21Bから構成される。
【0040】
フィンガ部21Aは、図5〜12に示されるように、上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとに区別される。
【0041】
上側フィンガ部21aは、図9〜12に示されるように、主に、ベース部211、先端突起部212および基端突起部213から形成されている。ベース部211は、略直方体状(あるいは厚板状)を呈するブロック体部分である。先端突起部212は、図9〜12に示されるように、ベース部211の長手方向先端側部分からベース部211の厚み方向片側に向かって延びている。なお、この先端突起部212は、図9〜12から明らかなように、突起方向の端面が平面となっている。また、この先端突起部212は、図11から明らかなように、基端突起部213に対抗する面が半円筒曲面となっている。基端突起部213は、ベース部211の長手方向基端側部分から先端突起部212の突起方向と同一方向に向かって延びている。なお、この基端突起部213は、図9〜12から明らかなように、突起方向の端面が平面となっている。
【0042】
下側フィンガ部21bは、図9〜12に示されるように、主に、ベース部211、先端突起部212、基端突起部213および締結部214から形成されている。ベース部211は、略直方体状を呈するブロック体部分である。なお、このベース部211の底面(布地CLと接触する面)には、ゴムシートが貼り付けられている。先端突起部212は、図9〜12に示されるように、ベース部211の長手方向先端側部分からベース部211の厚み方向片側に向かって延びている。なお、この先端突起部212は、図9〜12から明らかなように、突起方向の端面が平面となっている。また、この先端突起部212は、図11から明らかなように、基端突起部213に対抗する面が半円筒曲面となっている。基端突起部213は、ベース部211の長手方向基端側部分から先端突起部212の突起方向と同一方向に向かって延びている。なお、この基端突起部213は、図9〜12から明らかなように、突起方向の端面が平面となっている。締結部214は、ベース部211の基端面から長手方向に沿って延びる略直方体状(あるいは厚板状)のブロック体部分である。
【0043】
そして、この上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとは、図5〜12に示されるように、基端突起部213の突起方向の端面同士および先端突起部212の突起方向の端面同士が互いに対抗するように配置される。なお、上側フィンガ部21aおよび下側フィンガ部21bでは、基端突起部213の高さ(突起方向の長さ)が先端突起部212の高さ(突起方向の長さ)よりも0.2mm高くなるように設計されている。したがって、上側フィンガ部21aの基端突起部213の突起方向の端面と、下側フィンガ部21bの基端突起部213の突起方向の端面とが面接触したとき、上側フィンガ部21aの先端突起部212の突起方向の端面と、下側フィンガ部21bの先端突起部212の突起方向の端面との間には、0.4mmの隙間が生じることになる。また、上側フィンガ部21aはスライド移動が可能となるように第2スライド機構21Bのスライダ21e(後述)に締結されるが、下側フィンガ部21bはハンド機構21の下側に締結部214を介して固定的に締結される。つまり、上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとは、コンピュータ4によって第2スライド機構21Bが制御されることにより、離間したり接近(接触を含む)したりすることが可能となる。
【0044】
第2スライド機構21Bは、図5に示されるように、主に、ボールネジ21c、小型電動機21d、スライダ21e、カップリング21fおよびLMガイド材(図示せず)から構成されている。そして、この第2スライド機構21Bでは、小型電動機21dが回転し出すと、その回転動力がボールネジ21cに伝達され、その結果、ボールネジ21cが自身の軸を中心として回転する。すると、そのボールネジ21cの回転動力によってスライダ21eがLMガイド材に沿って直線的にスライド移動し、その結果、スライダ21eに連結される上側フィンガ部21aがスライド移動する。なお、小型電動機21dが逆転駆動される場合、そのスライダ21eの進行方向は、小型電動機21dが正転駆動される場合のスライダ21eの進行方向とは逆になる。また、この小型電動機21dは、コンピュータ4にRS−232Cケーブルを介して接続されており、コンピュータ4から送信される制御信号によって正転したり逆転したり停止したりする。
【0045】
第1スライド機構22は、図5〜8に示されるように、一方のハンド機構21を左右方向にスライド移動させる第11スライド機構22Aと、もう一方のハンド機構21を同じく左右方向にスライド移動させる第12スライド機構22Bとを備えている。なお、この第11スライド機構22Aと第12スライド機構22Bとは、機械的には完全に独立されている。そして、第11スライド機構22Aおよび第12スライド機構22Bは、それぞれ、図5〜8に示されるように、主に、ボールネジ(図示せず)、小型電動機22d、スライダ(図示せず)およびLMガイド材(図示せず)から構成されている。そして、この第1スライド機構22では、小型電動機22dが回転し出すと、その回転動力がボールネジに伝達され、その結果、ボールネジが自身の軸を中心として回転する。すると、そのボールネジの回転動力によってスライダがLMガイド材に沿って直線的にスライド移動し、その結果、スライダに連結されるハンド機構21がスライド移動する。なお、小型電動機22dが逆転駆動される場合、そのスライダの進行方向は、小型電動機22dが正転駆動される場合のスライダの進行方向とは逆になる。つまり、2つのハンド機構21は、コンピュータ4によって第1スライド機構22が制御されることにより、離間したり接近(接触を含む)したりすることが可能となる。また、この小型電動機22dは、コンピュータ4にRS−232Cケーブルを介して接続されており、コンピュータ4から送信される制御信号によって正転したり逆転したり停止したりする。
【0046】
(2)ロボットアーム
ロボットアーム2Bは、図1〜4に示されるように、主に、台座25a、回転テーブル25b、第1連結部25c、第1アーム部25d、第2連結部25eおよび第2アーム部25fから構成されている。
【0047】
台座25aには、天板上に回転テーブル25bが配置されている。そして、この台座25aには、回転テーブル25bを回転させる回転機構(図示せず)が収容されている。
【0048】
第1連結部25cは、回転テーブル25bに固定的に締結されている。そして、この第1連結部25cには、第1アーム部25dが連結されている。
【0049】
第1アーム部25dは、略柱状の部材であって、基端側部分が第1連結部25cに連結され、先端側部分が第2連結部25eに連結されている。そして、この第1アーム部25dは、第1連結部25cとの連結点を中心として、回転テーブル25bの回転方向を含む面に直交する面(以下「第1面」という)内を回転することができる。
【0050】
第2連結部25eは、第1アーム部25dと第2アーム部25fと連結する。そして、この第2連結部25eは、第1アーム部25dとの連結点を中心として、第1面内を回転することができる。
【0051】
第2アーム部25fは、略柱状の部材であって、基端側部分が第2連結部25eに連結されており、先端側部分がロボットハンド2Aに連結されている。そして、この第2アーム部25fは、自身の軸を中心として回転することができる。また、この第2アーム部25fの先端側部分は、上述したように、ロボットハンド2Aが連結点を中心として第1面内を回転することができるようにロボットハンド2Aに連結されている。
【0052】
なお、このようなロボットアーム2Bは、市販されており、当業者であれば容易に入手することができる。
【0053】
<デジタル式ステレオカメラ>
デジタル式ステレオカメラ3は、2つの撮像部を有しており、それぞれの撮像部においてカメラ付属のモジュールにより歪曲補正前および歪曲補正後のデジタル化濃淡画像、カラー画像、エッジ画像を生成することができる。そして、このデジタル式ステレオカメラ3は、画像が生成される度、USBケーブルを介してこれらの画像をコンピュータ4に送信する。
【0054】
なお、本実施の形態において、このデジタル式ステレオカメラ3の焦点は第1載置台5Aの天板に合わせられている。そして、このデジタル式ステレオカメラ3は、第1載置台5Aの天板が全て撮影範囲に含まれるように固定的に設置されている。
【0055】
なお、このようなデジタル式ステレオカメラ3としては、例えば、digiclops社製のBumbee2等を利用することができる。
【0056】
<コンピュータ>
コンピュータ4は、図1に示されるように、主に、本体、ディスプレイ、キーボードおよびマウスから構成されている。
【0057】
本体は、マザーボードや、CPU、メインメモリ、ハードディスク、USBインターフェイスボードやRS−232Cインターフェイスボード等を備えている。そして、ハードディスクには距離決定ソフトウェアや、カメラキャリブレーションソフトウェア、布地処理ロボット制御ソフトウェア等のソフトウェアがインストールされており、これらのソフトウェアはCPUやメインメモリ等によって実行される。なお、布地処理ロボット制御ソフトウェアには、布地位置検出ルーチンや、布地処理ロボット動作制御ルーチンが含まれている。
【0058】
そして、このコンピュータ4は、デジタル式ステレオカメラ3が2つの撮像部において同時に画像が生成されると、距離決定ソフトウェアにより、デジタル式ステレオカメラ3からそれらの画像のデータを収集する。次に、このコンピュータ4では、距離決定ソフトウェアにより、両画像の画素の対応関係がデータ化される。続いて、このコンピュータ4では、ステレオカメラ機能と画素対応関係データとに基づいて画像中の二次元画像座標点までの距離が求められる。その後、カメラモジュールにおいて、両画像中から最も似通った対象物を、画素間を横に移動しながら対応付けしていく。そして、全ての画素について検索が完了すると、画像中の対象物までの距離が求められる。
【0059】
なお、このような手法は当業者に公知の手法であるため、これ以上詳細な説明は行わない。
【0060】
また、このコンピュータ4では、カメラキャリブレーションソフトウェアにより、カメラ座標がロボット座標に変換される。なお、本実施の形態において、カメラキャリブレーションとは、カメラの内部変数(焦点距離など)と外部変数(カメラ姿勢など)とを求めるプロセスを意味する。
【0061】
なお、本実施の形態において、このカメラキャリブレーションは、次のように行われる。
【0062】
先ず、あらかじめロボット座標の分かっている位置にマーカーを移動させる。次に、デジタル式ステレオカメラ3によりそのマーカーの周辺を撮影する。続いて、マーカー周辺の画像中から推定円手法によりマーカーを抽出する。なお、推定円手法については以下に詳述する。
【0063】
推定円手法では、先ず、画像に対しHSV(色相、彩度、明度の三つの成分からなる色空間)表色系を用いて、あらかじめ指定したマーカー(白色)に似た色とその他の色とで二値化する。なお、本実施の形態では、マーカーに似た色を白色とし、その他の色を黒色とした。次に、二値化画像より、二次元画像座標C(u,v)のとき任意の画素に対して半径rの円が描かれる。続いて、この円の内側に含まれる全ての画素の画素値pがスキャンされて画素値pが白色のときは+1が加算され、黒色のときは−0.5が加算されていく(下式(2)参照)。なお、円内側に含まれる画素の総数をMとすると、その結果値Fは下式(2)で表される。そして、結果値Fが最大になるときの円中心座標が求められ、その円中心座標が画像中のマーカー位置、つまり、規定のロボット座標とされる。
【0064】
【数1】

【0065】
【数2】

【0066】
そして、ロボット座標xとカメラ座標wとの組(x,w)がN回測定され、両座標間の座標変換が行われる。座標変換は、線形変換Aと並進ベクトルtの組み合わせで表現される。具体的には、線形変換Aと並進ベクトルtとが求められ、線形変換Aと並進ベクトルtとが下式(3)に代入されて推定のロボット座標x’が求められる。
【0067】
【数3】

【0068】
なお、本実施の形態では、変形変換Aと並進ベクトルtとの組合せを求めるために、評価値D(下式(4)参照)を最小化する手法を利用している。
【0069】
【数4】

【0070】
そして、実際のロボット座標xと上式(3)で得られた推定のロボット座標x’との絶対誤差値diffが下式(5)から求められ、diffが閾値を超えたときのxとx’との組が除かれた後、再び上式(4)を用いて線形変換Aと並進ベクトルtとの組合せが求められる。
【0071】
【数5】

【0072】
なお、このような手法は当業者に公知の手法であるため、これ以上詳細な説明は行わない。
【0073】
また、このコンピュータ4では、布地処理ロボット制御ソフトウェアにより、布地CLの把持箇所が決定され、布地処理ロボット2の布地CLの把持処理から布地CLの静置処理までの一連の動作を実現する制御信号が生成され、その制御信号が逐次、布地処理ロボット2に送信される。なお、布地CLの把持箇所の決定については以下に詳述する。
【0074】
本実施の形態では、「第1載置台5Aに接している布地CLの縁部の中でも、できる限りロボットハンド2Aに近く、且つ、一定の長さ以上の長さを有する直線となっている部分」が把持箇所と規定されている。そして、先ず、布地CLの縁部が第1載置台5Aに接しているか否かを判断するためには、布地CLの第1載置台5Aからの高さデータが必要となる。この高さデータは、あらかじめ第1載置台5Aの三次元位置を求めておけば容易に計算することができる。このため、本実施の形態では、第1載置台5Aにマーカーシートが設置され、マーカーシートの3次元座標から第1載置台5Aの三次元位置が求められる。
【0075】
具体的には、マーカーシートが設置された第1載置台5Aの画像と、マーカーシートが設置されていない第1載置台5Aの画像とから背景差分処理が行われ、その結果、二値化画像が導出される。次に、視差画像と二値画像とからマーカーシート領域の視差画像が導出され、その視差画像からカメラ座標およびロボット座標が求められる。その後、第1載置台5A上の各点の三次元座標(ロボット座標)が収集され、その点群に最も合致する平面の方程式が求められる。そして、この平面の方程式があらかじめ布地位置検出ルーチンに組み込まれる。
【0076】
そして、布地位置検出ルーチンでは、布地CLの輪郭抽出処理、直線部分抽出処理および把持箇所決定処理が実行される。以下、それぞれの処理の内容に詳述する。なお、布地CLの輪郭抽出処理については図13〜図20を用いて説明する。また、把持箇所決定処理については図21を用いて説明する。
【0077】
輪郭抽出処理では、あらかじめ用意されている第1載置台5Aの画像のみの画像と、第1載置台5Aの上に置かれた布地CLの画像(図13参照)とから差分処理が行われ、その結果、二値化画像が導出される。なお、本実施の形態では、布地CLが白色となり、第1載置台5Aを含む背景部分が黒色となるように設定されている。なお、図14〜図19において、説明の便宜上、白色画素は網掛ハッチング又は斜線ハッチングが施されており、黒色画素はハッチングが施されていない。次に、その二値化画像において端の画素(背景部分に相当する画素)から順に、画素が白色であるか黒色であるかが判定されていく(図14参照)。そして、黒色であると判定された画素の次の画素が白色であると判定された場合、その白色の画素が第1輪郭画素(図15において斜線ハッチングが施されている画素)とされる(図15参照)。続いて、その第1輪郭画素に隣接する画素が左回りに走査されながら、それらの画素が白色であるのか黒色であるのかが判定されていく(図16参照)。そして、上記と同様に、黒色であると判定された画素の次の画素が白色であると判定された場合、その白色の画素が第2輪郭画素とされる(図17参照)。その後、第2輪郭画素の検出と同じ要領で、第n輪郭画素が検出され、再び第1輪郭画素が検出されるまでこの検出が繰り返される(図18および図19参照)。この結果、閉曲線、つまり布地CLの輪郭画像(図20参照)が形成される。
【0078】
直線部分抽出処理では、布地CLの輪郭画像を構成する画素それぞれについてk−曲率が算出される。なお、k−曲率とは曲線上のある点における曲線の緩急の程度を表す量であって、この値が大きいほどその曲線の曲がり度合いが急であることを示し、この値が0に近づくほど曲線の曲がり度合いが緩い、つまり、直線性がよいことを示すことになる。そして、本実施の形態では、k−曲率が所定の閾値以下となっている画素群が直線部分として決定される。なお、曲線がy=f(x)の関数として表される場合、そのk−曲率kは下式(6)で表される。なお、本実施の形態では、k−曲率は、k−曲率を求めようとする点(x0,y0)の左右にそれぞれk個の点を取り、点(x-k,y-k)から点(x0,y0)へのベクトルと、点(x0,y0)から点(xk,yk)へのベクトルがつくる角度θとして算出されている。
【0079】
【数6】

【0080】
把持箇所決定処理では、先ず、直線部分抽出処理で抽出された直線部分のうち第1載置台5Aからの高さが所定の閾値以下である直線部分が選択される。なお、この直線部分選択処理は、ロボット布地CLが第1載置台5Aに接触している部分でロボットハンド2Aの把持動作が行われることを実現させるために行われている。また、直線部分の第1載置台5Aからの高さは、上記平面の方程式と直線部分の座標とから簡単に求められる。次に、直線部分選択処理で選択された直線部分のうちロボット座標系のy軸との角度が近似しているもの(つまり、角度の差異が所定の閾値内にあるもの)を接続する処理が行われる(図21参照)。なお、この接続処理は、直線部分抽出処理のとき、実際には直線的に見える部分が一つの直線部分として抽出されず分断されて2つ以上の直線部分として抽出されることがあり、これを積極的に補正するために行われている。続いて、接続処理された直線部分の長さがロボット座標から算出され、その長さが閾値以上ものが選択される。なお、この長さ規定選択処理は、ロボットハンド2Aが把持する直線部分はできるだけ長いものが望ましいという発想に起因して行われる。最後に、長さ規定選択処理で選択された直線部分のうちロボット座標系y軸との角度が最も小さい直線部分が選択される。なお、この角度規定選択処理は、ロボットハンド2Aがy軸方向に延びた形状を呈しており、この角度が小さいほど把持動作が行われやすいという事情に起因して行われる。
【0081】
そして、角度規定選択処理で選択された直線部分の情報はメインメモリに書き込まれ、その直線部分の端点の情報がロボット座標として規定される。なお、把持箇所決定処理において直線部分が全く検出されない場合には、ディスプレイに警告メッセージが表示される。また、長さ規定選択処理で所定の閾値以上の長さの直線部分が全く検出されなかった場合、最大長さを有する直線部分が選択され、以下に示す布地落下動作が行われる。
【0082】
<布地処理装置の動作制御>
上述したように、角度規定選択処理において直線部分が選定されると、コンピュータ4は、制御信号を順次送信して布地処理ロボット2に布地処理動作を行わせる。また、長さ規定選択処理で所定の閾値以上の長さの直線部分が全く検出されなかった場合、最大長さを有する直線部分が選択された後、コンピュータ4は、制御信号を順次送信して布地処理ロボット2に布地落下動作を行わせる。以下、布地処理動作と布地落下動作とについてそれぞれ詳述する。なお、以下の布地処理動作や布地落下動作についてはその動作態様が理解できれば当業者は過度の負担なくその動作を実現することができるので、コンピュータ4においてどのような制御信号が生成されるのかについては詳述しない。
【0083】
(1)布地処理動作
布地処理動作では、先ず、ロボットハンド2Aが初期位置に位置するようにロボットアーム2Bが動作させられる(図22参照)。なお、このとき、ロボットハンド2Aでは、ハンド機構21同士が所定距離離間するようにハンド機構21が動作させられると共に、上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとの間に所定の隙間(布地CLの縁部を挿入することができる隙間)が生じるように上側フィンガ部21aが動作させられる。
【0084】
次に、角度規定選択処理で選定された直線部分の規定の点(例えば、片側の端点から6cm離れた点と、その点からさらに6cm離れた点など)に下側フィンガ部21bの底面が接触するようにハンド機構21とロボットアーム2Bとが動作させられる(図23参照)。
【0085】
次いで、ハンド機構21が規定の距離まで縮まるようにハンド機構21が接近させられる(図24参照)。なお、このとき、布地CLの把持箇所間の部分は、山形に変形させられる。
【0086】
続いて、ロボットハンド2Aが先の位置より上後方に位置するようにロボットアーム2Bが動作させられる(図25参照)。なお、このとき、上面視においてフィンガ部21Aの先端が布地CLの縁よりも後方になければならない。このようにロボットアーム2Bを動作させるには、あらかじめフィンガ部21Aの長手方向長さを計測しておき、制御パラメータとしてコンピュータ4のハードディスクに格納しておけばよい。また、このとき、ハンド機構21は、互いがさらに接近するように動作させられる。なお、この動作は、2つの下側フィンガ部21bを布地の山形部分の下空間に挿入させるために行われる。
【0087】
続いて、ロボットハンド2Aが先の位置より下方に位置するようにロボットアーム2Bが動作させられた後、ロボットハンド2Aが先の位置より前方に位置するようにロボットアーム2Bが動作させられる(図26参照)。なお、このときのロボットハンド2Aの上下方向における位置(つまり高さ位置)は、布地CLを山形に変形させる直前のハンド機構21同士の距離や、布地CLを山形に変形させた後のハンド機構21同士の距離、又は、布地CLを山形に変形させるときのハンド機構21の接近距離などによってあらかじめ規定しておくことができる。これらの距離は布地CLの山形部分の高さに強く依存するためである。
【0088】
続いて、上側フィンガ部21aの基端突起部213と下側フィンガ部21bの基端突起部213が面接触するまで上側フィンガ部21aが下側フィンガ部21bに接近させられる。この結果、フィンガ部21Aが布地CLを把持する(図26参照)。なお、このとき、先端突起部212間には0.4mmの隙間が生じており、0.4mm〜0.06mm厚みの布地CLであれば、フィンガ部21Aは、布地CLを傷めることなく布地CLを把持することができる。
【0089】
続いて、ロボットハンド2Aを第2載置台5Bの上方の位置に移動させるようにロボットアーム2Bを動作させる(図27参照)。
【0090】
続いて、ハンド機構21が所定距離離間するようにハンド機構21が動作させられ、布地CLが展開される(図27〜29参照)。なお、このときのハンド機構21の離間距離は、布地CLの大きさによってあらかじめ規定されている。
【0091】
ところで、布地CLの縁に折り返し等の厚みの厚い部分が存在しない場合、布地展開動作中に布地CLがフィンガ部21Aから抜け落ちて第2載置台5Bに落下するおそれがある。このため、この動作は、折り返し等の厚みの厚い縁部分が存在する布地CLに好適に実行されることになる。
【0092】
そして、ロボットハンド2Aが前進しながら第2載置台5Bに接近するようにロボットアーム2Bが動作され、布地CLが第2載置台5Bに展開された状態で静置される(図30〜図33参照)。ロボットハンド2Aが規定の位置に達したところで上側フィンガ部21aが上昇させられ、フィンガ部21Aから布地CLが放される。
【0093】
(2)布地落下動作
布地落下動作では、フィンガ部21Aにより布地CLが把持される動作まで布地処理動作と同じ動作が行われる。そして、布地CLがフィンガ部21Aに把持されると、ロボットハンド2Aを上方に引き上げるようにロボットアーム2Bが動作された後、上側フィンガ部21aが上昇させられ、フィンガ部21Aから布地CLが放される。つまり、布地CLが上から第1載置台5Aに向かって落とされる。そして、この後、再度、布地位置検出ルーチンが実行される。
【0094】
<布地処理装置の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、基本的には布地処理ロボット2の5つの一連の動作により、布地CLの縁部が山形に変形させられ、その山形部分が一対のフィンガ部21Aにより把持される。このため、布地処理装置1は、展開処理前、比較的少ない工程数で布地CLを把持することができる。
【0095】
(2)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、布地処理装置1は、布地CLをロボットハンド2Aによって展開する前に、その布地CLをロボットハンド2Aによって自動的に把持する。したがって、この布地処理装置1は、布地CLのハンドリングの全自動化に大きく貢献する。
【0096】
(3)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、布地処理装置1は、布地CLをロボットハンド2Aによって展開した後、その布地CLを静置する動作を行う。したがって、この布地処理装置1は、布地CLのハンドリングの全自動化に大きく貢献する。
【0097】
(4)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、フィンガ部21Aにおいて先端突起部212の基端突起部213に対抗する面が半円筒曲面となっている。このため、布地CLの縁部に折り返し等、厚みの厚い部分がある場合であっても、布地処理装置1は、滑らかにつまみ滑り展開を行うことができる。
【0098】
(5)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、上側フィンガ部21aおよび下側フィンガ部21bにおいて基端突起部213の高さ(突起方向の長さ)が先端突起部212の高さ(突起方向の長さ)よりも0.2mm高くなるように設計されている。このため、上側フィンガ部21aの基端突起部213の突起方向の端面と、下側フィンガ部21bの基端突起部213の突起方向の端面とが面接触したとき、上側フィンガ部21aの先端突起部212の突起方向の端面と、下側フィンガ部21bの先端突起部212の突起方向の端面との間には、0.4mmの隙間が生じることになる。このため、この布地処理装置1は、一定範囲の厚みを有する布地CLに対して把持力を弱めることができる。したがって、この布地処理装置1は、一定範囲の厚みを有する布地CLに対して過度な応力を加えずに済む。よって、この布地処理装置1は、一定範囲の厚みを有する布地CLをいたずらに傷めることがない。
【0099】
(6)
本発明の実施の形態に係る布地処理装置1では、下側フィンガ部21bのベース部211の底面(布地CLと接触する面)には、ゴムシートが貼り付けられている。このため、この布地処理装置1は、押付力を高めることなく布地CLを山形に変形させることができる。
【0100】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではデジタル式ステレオカメラ3が採用されたが、デジタル式単眼カメラが採用されてもかまわない。なお、かかる場合、カメラからの距離はあらかじめ人手で計測しておく等の手間がかかることになる。
【0101】
(B)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では制御装置としてコンピュータ4が採用されたが、制御装置としてマイクロコンピュータが採用されてもかまわない。
【0102】
(C)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではデジタル式ステレオカメラ3を利用して布地CLの把持箇所を特定したが、デジタル式ステレオカメラ3を除去して、あらかじめ布地の設置位置およびその設置状態を規定しておいてもかまわない。なお、かかる場合、設置位置が明確となるようにマーカーを付し、設置位置の近傍に設置状態を記した指示注意書などを貼り付けておくのが好ましい。
【0103】
(D)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では布地CLを処理対象としたが、フィルムや、紙、その他シート状のものを処理対象としてもかまわない。
【0104】
(E)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では第1スライド機構22および第2スライド機構21Bとしてボールネジ機構が採用されたが、第1スライド機構22および第2スライド機構21Bとしてエアシリンダ機構、モータシリンダ機構、電動スライダ機構、ベルトスライダ機構、リニアスライダ機構およびラックピニオン機構などの機構が採用されてもかまわない。
【0105】
(F)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では図1に示されるようなロボットアーム2Bが採用されたが、レール式で前後、左右、上下に動作するロボットアーム等が採用されてもかまわない。
【0106】
(G)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では下側フィンガ部21bが固定され、上側フィンガ部21aがスライド移動可能になっていたが、上側フィンガ部21aおよび下側フィンガ部21bが共にスライド移動可能とされる構成にされてもかまわない。
【0107】
(H)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では上側フィンガ部21aの先端突起部212の突起方向の端面と、下側フィンガ部21bの先端突起部212の突起方向の端面の隙間が0.4mmとされたが、この隙間は特に限定されず、処理対象である布地CLの厚みによって適宜変更してもよい。また、かかる場合、フィンガ部21Aを取り外し可能にし、布地CLの厚みによって、フィンガ部21Aを適宜選択して取り付けるようにしてもかまわない。
【0108】
(I)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではデジタル式ステレオカメラ3がUSBケーブルを介してコンピュータ4に接続されたが、デジタル式ステレオカメラ3は、他の通信ケーブルによりコンピュータ4により接続されてもよいし、コンピュータ4に無線接続されてもよい。
【0109】
(J)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では布地処理ロボット2がRS−232Cケーブルを介してコンピュータ4に接続されたが、布地処理ロボット2は、他の通信ケーブルによりコンピュータ4に接続されてもよいし、コンピュータ4に無線接続されてもよい。
【0110】
(K)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では推定円手法によるマーカー抽出によりカメラキャリブレーションが行われたが、カメラキャリブレーション方法として、他の公知の方法(例えば、特開平11−37721号公報や、特開2005−186193号公報、特開2006−145419号公報、特開平10−221066号公報)が利用されてもよい。
【0111】
(L)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では布地把持位置決定ルーチンにより閾値以上の長さを有する直線部分を把持箇所と決定していたが、布地CLの角部を把持箇所として決定してもよい。なお、かかる場合、日本ロボット学会誌Vol.15 No.2,pp.275−283,1997に記載される技術を利用すれば実現可能である。
【0112】
(M)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、フィンガ部21Aの先端突起部212に圧力センサを取り付けて、布地CLを規定圧力で把持するようにしてもよい。このようにすれば、布地CLの厚みによらず、布地CLに対するフィンガ部21Aの把持力を一定に保つことができ、布地CLに余分な応力を加えずに済む。
【0113】
(N)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では布地静置時動作時、ロボットハンド2Aがロボットアーム2Bにより前進させられながら下方に移動されたが、図34に示されるように、ロボットハンド2Aがロボットアーム2Bにより一度前進させられた後に後退させられながら下方に移動されてもよい。
【0114】
(O)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではロボットハンド2Aが初期位置に位置したとき、上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとの間に所定の隙間が生じるように上側フィンガ部21aが動作させられた。しかし、初期位置において上側フィンガ部21aが下側フィンガ部21bに接触していてもかまわない。なお、かかる場合、布地CLの把持動作前に上側フィンガ部21aが上昇させられて上側フィンガ部21aと下側フィンガ21bとの間に所定の隙間(布地CLの縁部を挿入することができる隙間)が生じるように上側フィンガ部21aが動作させられる必要がある。
【0115】
(P)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではハンド機構21の距離が規定の距離まで縮まるようにハンド機構21が接近させられて布地CLが山形に変形させられた後に、ロボットハンド2Aが先の位置より上後方に位置するようにロボットアーム2Bが動作させられたが、ハンド機構21の距離が規定の距離まで縮まるようにハンド機構21が接近させられて布地CLが山形に変形させられた後に、ハンド機構21を少しだけ離間させて布地CLの山形形状を安定化させるようにしてもよい。
【0116】
(Q)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではハンド機構21が所定距離離間するようにハンド機構21が動作させられて布地CLが展開される際のハンド機構21の離間距離は布地CLの大きさによってあらかじめ規定されていたが、例えば、上側フィンガ部21aの外側面に発光素子を取り付け、下側フィンガ部21bの外側面に受光素子を取り付けて、受光素子が発光素子からの光を受光したとき(つまり、発光素子が布地CLから露出したとき)にハンド機構21のスライド移動を停止させるようにしてもよい。なお、もちろん、上側フィンガ部21aの外側面に受光素子が取り付けられ、下側フィンガ部21bの外側面に受光素子が取り付けられてもよい。このようにすれば、布地処理装置1は、任意の大きさの布地CLに対応することができるようになる。
【0117】
(R)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、デジタル式ステレオカメラ3を連射モードに設定し、二値化画像において白色画素が検出された時点から布地位置検出ルーチンが実行されるようにしてもよい。なお、かかる場合、輪郭抽出処理の二値化画像導出処理は省略することができる。また、かかる場合、白色画素検出後は、布地処理動作または布地落下動作が完了するまで、デジタル式ステレオカメラ3による第1載置台5Aの撮影を停止しておくのが好ましい。また、かかる場合、布地処理動作または布地落下動作が完了した後に、デジタル式ステレオカメラ3による第1載置台5Aの撮影が再開されるように設定しておけばよい。
【0118】
(S)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では第1スライド機構22が水平に保たれたままで布地CLの展開処理が行われたが、図35に示されるように第1スライド機構22が鉛直方向に向けられた状態で布地CLの展開処理が行われてもよい。このようにすれば、布地CLの縁部に折り返し等、厚みの厚い部分がなくても問題なく布地CLの展開を行うことができる。なお、かかる場合、下側にくるハンド機構21を下方にスライド移動させた後、ロボットハンド2Aの方向を反転させ、新たに下側にくるハンド機構21を下方にスライド異動させる。また、布地CLの把持処理前にハンド機構21を片側に寄せ、フィンガ部21Aに布地CLの角部を把持させてもよい。なお、かかる場合、変形例(L)に示される技術を導入する必要がある。また、かかる場合、第1スライド機構22が鉛直方向に向けられるとき、フィンガ部21Aが上にくるようにロボットハンド2Aが回転させられる必要がある。
【0119】
なお、第1スライド機構22が水平面に交差する状態であっても同様の効果を奏する。なお、かかる場合、フィンガ部21Aの先端が斜め上方を向く状態となるようにロボットハンド2Aを回転させる必要がある。
【0120】
(T)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、第1スライド機構22が縦方向に回転するようにロボットハンド2Aを回転させる回転機構をロボットアーム2Bに組み込んでもかまわない。このようにすれば、布地処理装置1は、布地CLが水平方向に対して傾いて置かれていても布地CLを把持することができる。
【0121】
(U)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではフィンガ部21Aにおいて先端突起部212の基端突起部213に対抗する面が半円筒曲面となっていたが、この面は、楕円曲面となっていてもよいし、屈折面となっていてもよい。
【0122】
(V)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではフィンガ部21Aは、上側フィンガ部21aがスライド移動するように構成されたが、フィンガ部は、上側フィンガ部21aおよび下側フィンガ部21bの少なくとも一方が基端部分を支点として回動するように構成されてもかまわない。
【0123】
(W)
先の実施の形態に係る布地処理装置1では2つのハンド機構21が共にスライド可能であったが、一方のハンド機構を固定し、もう一方のハンド機構をスライド可能に構成してもかまわない。
【0124】
(X)
先の実施の形態に係る布地処理装置1ではロボットハンド2Aにより自動的に布地CLの把持処理が行われたが、布地CLの把持は手動で行われてもよい。かかる場合、人は、先ず、ロボットハンド2Aを2つのハンド機構21が隣接された状態にし、2つのハンド機構21の上側フィンガ部21aを上昇させて、上側フィンガ部21aと下側フィンガ部21bとの間に隙間をつくる。次いで、人が、布地CLの縁部をフィンガ部21Aの隙間に挿入する。そして、人は、上側フィンガ部21aを下降させて、ハンド機構21に布地CLの縁部を把持させる。なお、上側フィンガ部21Aの上昇および下降については制御ボタンにより実行させてもよいし、光学センサ等によりフィンガ部21Aに布地CLが近づくと自動的に上側フィンガ部21Aが上昇し、フィンガ部21A内部に布地CLが挿入されると自動的に上側フィンガ部21Aが下降して布地CLが把持されるようにしてもかまわない。そして、この把持作業が完了して、展開動作が開始されると、布地処理装置1は、ハンド機構21を離間させて布地CLを展開する。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明に係る変形性薄物展開装置は、人手で布地や、フィルム、紙、シート等の変形性薄物の把持作業が行われる場合、その把持作業を従来よりも簡素化することができ、自動制御で変形性薄物の把持作業が行われる場合、変形性薄物を把持するまでの工程を比較的少なくすることができ、また、変形性薄物の縁の厚肉部分がある場合であっても布地等の展開動作中にフィンガ部が変形性薄物の縁の厚肉部分に引っ掛かることを防ぐことができるという特徴を有し、アパレル業界や、クリーニング業界、リネンサプライ業界、福祉業界、医療業界等向けの布地処理装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態に係る布地処理装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの上面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの背面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの外観斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの底面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るフィンガ部の外観斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るフィンガ部の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る下側フィンガ部の上面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る下側フィンガ部の正面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る布地処理装置の処理対象となる布地の画像である。
【図14】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第1の図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第2の図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第3の図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第4の図である。
【図18】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第5の図である。
【図19】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理を説明する第6の図である。
【図20】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける輪郭抽出処理の結果として得られる布地の輪郭画像である。
【図21】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける把持箇所決定処理を説明する図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第1の図である。
【図23】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第2の図である。
【図24】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第3の図である。
【図25】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第4の図である。
【図26】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第5の図である。
【図27】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第6の図である。
【図28】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第7の図である。
【図29】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第8の図である。
【図30】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第9の図である。
【図31】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第10の図である。
【図32】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第11の図である。
【図33】本発明の実施の形態に係る布地処理ロボットの動作を示す第12の図である。
【図34】変形例(N)に係る布地処理ロボットの動作を示す図である。
【図35】変形例(S)に係る布地処理ロボットの動作を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1 布地処理装置(変形性薄物展開装置)
2 布地処理ロボット(変形性薄物展開装置)
2A ロボットハンド(変形性薄物展開機構)
2B ロボットアーム(変形性薄物展開機構移動機構,変形性薄物展開機構旋回機構)
4 コンピュータ(制御装置)
21 ハンド機構(ハンド部)
21A フィンガ部
21B 第2スライド機構(第1接近離間機構)
22 第1スライド機構(第2接近離間機構)
211 ベース部(基板)
212 先端突起部(第2突起部)
213 基端突起部(第1突起部)
CL 布地(変形性薄物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の基端部から前記基板の板厚方向第1側に延びる第1突起部と、前記基板の先端部から前記基板の前記板厚方向前記第1側に延びており前記第1突起部と対抗する側の角部が面取りされている第2突起部とをそれぞれ有し前記第1突起部同士および前記第2突起部同士が互いに対抗するように配置される一対のフィンガ部と、前記一対のフィンガ部の対抗方向を含む面(以下「第1面」という)に沿って前記一対のフィンガ部を相対移動させて前記一対のフィンガ部を接近および離間させることが可能である第1接近離間機構とを有する少なくとも2つのハンド部と、前記第1面と直交する方向(以下「第1方向」という)に沿って同一直線上で前記ハンド部を相対移動させて前記ハンド部を接近および離間させることが可能である第2接近離間機構とを含む変形性薄物展開機構と、
前記ハンド部を第1距離まで接近させるように前記第2接近離間機構を制御する第1制御と、前記第1制御後に前記フィンガ部が第11距離まで接近された状態で前記ハンド部を前記第1距離よりも長い距離離間させるように前記第2接近離間機構を制御する第2制御とを行う制御装置と
を備える変形性薄物展開装置。
【請求項2】
前記第2突起部は、前記基板の先端部から前記基板の前記板厚方向前記第1側に前記第1突起部よりも低い高さまで延びている
請求項1に記載の変形性薄物展開装置。
【請求項3】
前記フィンガ部には、対抗面に圧力センサが取り付けられ、
前記制御装置は、前記圧力センサの出力値に基づいて前記フィンガ部同士の接近距離を制御する
請求項1又は2に記載の変形性薄物展開装置。
【請求項4】
前記変形性薄物展開機構を少なくとも上下方向および前後方向に移動させることが可能である変形性薄物展開機構移動機構をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2制御後又は前記第2制御中に前記変形性薄物展開機構を前記第1方向が水平面に平行となる状態としたまま前記変形性薄物展開機構を下前方又は下後方に向かって移動させるように前記変形性薄物展開機構移動機構を制御する第3制御と、前記第3制御後に前記フィンガ部を前記第11距離よりも長い距離離間させるように前記第1接近離間機構を制御する第4制御とをさらに行う
請求項1から3のいずれかに記載の変形性薄物展開装置。
【請求項5】
前記変形性薄物展開機構移動機構は、前記変形性薄物展開機構を上下方向、前後方向および左右方向に移動させることが可能である
請求項4に記載の変形性薄物展開装置。
【請求項6】
前記変形性薄物展開機構を旋回させることが可能である変形性薄物展開機構旋回機構をさらに備える
請求項4に記載の変形性薄物展開装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2010−561(P2010−561A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160694(P2008−160694)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1) 第8回(社)計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 講演会 SI2007講演概要集 発行所:社団法人 計測自動制御学会 発行日:2007年12月20日 (2) 電子情報通信学会 情報・システムソサイエティ誌 2008年総合大会特別号 発行所:(社)電子情報通信学会 情報・システムソサイエティ 発行日:2008年3月18日 (3) http://www.ritsumei.ac.jp/se/〜hirai/research/clothUnfold−j.html http://www.mint.se.ritsumei.ac.jp/presents/07/SI2007shibata.pdf http://www.mint.se.ritsumei.ac.jp/presents/07/SI2007ohta.pdf 掲載日:平成19年12月26日 (4) No.08−4 ロボティクス・メカトロニクス講演会2008 講演概要集 発行所:社団法人 日本機械学会 発行日:平成20年6月5日
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】