説明

変性油および多相エマルション

一態様によれば、本発明は、高内部相(HIPE)を有する水中油型(O/W)エマルションを調製するための水に溶解したパーフルオロポリエーテルホスフェート(PFPEホスフェート)の使用に関するものである。内部相(O)は、通常少なくとも74体積%のエマルションを備え、またPFPEホスフェートでの処理後に高フッ素含有量の化合物のいくつかの典型的な特性、特に疎油性および同性嫌悪性を限定された親水性と組合せて獲得する一つ以上のオイルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性油および多相エマルションに関する。本発明は、高内部相を有する水中油型(O/W)エマルションに関するものであり、主に化粧品分野および医薬製剤用に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来型エマルションと、様々なタイプの非従来型エマルション、特に多相エマルション、過流動性および超流動性エマルション、ならびに高内部相エマルション(HIPE)とを区別するのが便利である。
【0003】
従来型エマルション
よく知られるように、エマルションはある液体(分散相または内部相)の別の液体への分散系であり、ここで最初の液体が非混和性(連続相)である。
【0004】
かかる分散系は、通常加熱された二つの相を撹拌、処理しながらエネルギーを系に供給することによって得られる。
【0005】
互いに極めて異なった装置をこの目的に使用することができ、その中にはロータ/ステータミキサ、様々な形状および装備(ミキサ、撹拌器、カウンター撹拌器、スクレーパ、および親油相を加熱するためのヒューズを有する)のターボ乳化機、高動圧力ホモジナイザー等がある。
【0006】
エマルションの生産および安定化では、通常乳化剤、大抵界面活性剤が使用され、その機能は2つの液相間の界面張力を低下させることにある。
【0007】
一般に、一方の相が水溶性成分を溶解する水で構成され、他方の相は油性である。水中油型(O/W)エマルションと呼ばれる水中の油の分散系、または頻度は低いものの油中水型(W/O)エマルションと呼ばれる油相中の水溶液の分散系を得ることができる。いずれにせよ、一般に内部相は連続相よりも少ないが、従来のエマルション分野でなお実現されているように、内部相が外部相よりも多く、幾何学的制約が顕在化する許容限界の74体積%に迫る内部相を含むエマルションを得ることも可能である。
【0008】
二相間の関係に関わらず、従来のエマルションは、内部相の合体傾向により層化による二相分離まで熱力学的に不安定である。この現象は、合体が通常製品の市場寿命よりずっと長い期間経過後に発生するので、エマルションの商業的利用を妨げるものではない。
【0009】
合体に加えて、エマルションの変質を決定する別のメカニズムがある。この第二のメカニズムは、内部相と外部相間の密度関係に依存する。
【0010】
密度差は、内部相の蓄積をi)内部相が外部相よりも軽い場合上方部分(クリーミング)に、またはii)内部相が重い場合下方部分(沈降)に生起する。
【0011】
いずれにせよ、この現象は可逆であり、一般に使用者が使用前に軽く振ると、初期状態を再構築するに十分となる。更に、ストークスの法則によれば、このような不安定さがエマルションの粘度を増加させ、分散粒子の寸法を減少させることによって回避することができる。
【0012】
非従来型エマルション
[多相エマルション]
多相エマルション(ダブルエマルションとも呼ばれる)は、O/WまたはW/Oタイプの単純なエマルションを油または水であり得る連続液相内に分散させることによって構成される。前者の場合、O/W/Oエマルションが生成される。
【0013】
後者の場合、より一般的で、エマルションをW/O/Wエマルションの形態で水に分散する。
【0014】
実際に、W/O/Wエマルションは、O/Wエマルションの優れた知覚特性(低油性)とW/Oエマルションの優れた保湿能力および持続性との組合せである。加えて、二つの個々の水相が、親和性の低いまたは異なるpHで安定性を有する活性成分の製剤を可能にする。しかしながら、多相エマルションは調製上の制約から一般的使用に至っていない。多相エマルションは通常二つの工程で調製される。第1工程では、極めて安定な1次エマルション(一般にW/Oタイプ)が電解質(ナトリウムまたはマグネシウム塩)の水相への添加と、油に対する特定の乳化剤の使用により得られる。
【0015】
第2工程では、1次エマルションを水にエマルション全体に対して40〜60%の割合でより弱い機械的作用、好ましくは親水性の高分子乳化剤を用いて分散させる。
【0016】
乳化剤の選択と共に、前記割合は油性相の極性、内部水相のイオン力、二つの水相の粘度に依存し、システムを改善するための臨界パラメータであるが、系の安定性が依然として低く、上記エマルションの商業的成功を妨げる主な障害となっている。
【0017】
[過流動性および超流動性エマルション]
文字通り、500〜2000mPa/sの粘度を有するエマルションが通常「流動性」として分類され、一方100mPa/s付近の粘度を有するエマルションが「過流動性」として定義される。
【0018】
それほど一般的ではないが、「超流動性エマルション」という用語は、粘度が10mPa/s未満、一般に粘度範囲が2〜4mPa/sである流動性の高いエマルションを指す。流動性によって、これらエマルションはクリーミング(油が水より低い密度を有する場合)または沈降(より重い油)を生じる傾向が強い。
【0019】
[HIPEエマルション]
74体積%を超える内部相を有するエマルションは、「高内部相エマルション」(HIPE)と呼ばれる。従来のエマルションと同様に、HIPEエマルションもO/WまたはW/Oタイプであり、熱力学的観点から不安定である。これらエマルションは、大幅に減少した体積の連続相を有する球形状を維持することができないため、変形ミセル構造を提示する。
【0020】
最も一般的なO/WタイプのHIPEエマルションでは、外部(水)相が通常1.0g/ml付近ノ密度を有し、一方内部(油)相が0.85(炭化水素)〜1.05(ソーラーフィルタ)g/mlの間で変動し得る密度を有する。つまり、O/WタイプのHIPEエマルションは、一般に油性相の体積含有率が重量含有率よりも数ユニット大きく、一方例外的に逆のことがより低い発生率で起こる。
【0021】
90%以上に達し得る高い含有率の内部相では、これらエマルションが極めて粘稠で、主として無極性タイプ(シリコーンオイルおよび炭化水素が最も一般的である)の限られた選択肢の油で調製することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
現時点では、流動性エマルションを得るように水で希釈することによるか、またはより複雑な組成の水相中に分散させることにより活性物質の安定性、親和性、生体利用効率のような問題を克服し、最終製品または製剤中間体として使用することができる化粧品および製薬分野での用途に適したエマルションおよび変性油を得ることが必要とされている。
【0023】
そこで、本発明の主な目的の1つは、疎油性(撥油性)および同性嫌悪性(homophobicity)(自己反発傾向)を均衡のとれた(限定された)親水性/疎水性(水に対する親和性/撥水性)と組合せて示す変性油として使用すべき高内部相を有する水中油型(O/W)エマルションを提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、化粧品分野での用途を見出し、且つ実現に高い製造コストを要しない水中油型HIPEエマルションおよび変性油を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的に鑑みて、本発明の第1の態様では、連続水相と、該連続相中に分散した74体積%超の油性内部相とを含む水中油型(O/W)のHIPEエマルションを提供するもので、該エマルションは、疎油性且つ同性嫌悪性であり、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEGホスフェートのINCI名を有する次式:
[化1]
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2(1−2)であり、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0(0.5−3.0)であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされるパーフルオロポリエーテルホスフェート(PFPE)を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の疎油性および同性嫌悪性を有する水中油型(O/W)エマルションまたは変性油の他の特性は、添付の特許請求の範囲の請求項3〜8に記載してある。
【0027】
驚くべきことに、油または油混合物が、水溶液に溶解したPFPEホスフェートでの処理により、HIPEエマルションへの変換と共に、フッ素含有量が高い化合物の典型的な特性、特に疎油性および同性嫌悪性を獲得し、加えてPFPEホスフェートで別個に処理した油(または油混合物)の非混和性と、優れた知覚特性に変わる非固着性も獲得する点に着目した。
【0028】
本発明の別の態様によれば、請求項9、10に記載したような水中油型HIPEエマルションの使用を提供する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、高内部相(HIPE)、特に74体積%超の油性内部相を有する水中油型O/Wエマルションの製造方法を提供するもので、次式:
[化2]
(HO)OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされるPFPEホスフェートの水溶液に油を分散させるステップを備える。
【0030】
本発明の別の態様によれば、次式:
[化3]
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされ、水溶液に溶解し、必要に応じて極性溶媒を含有するPFPEホスフェートの、内部相が少なくとも74体積%で、フッ素含有量が高い化合物の典型的な特性、特に疎油性および同性嫌悪性を示す水中油型HIPEエマルションを製造するための使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一実施形態によれば、本発明の範囲内で使用するパーフルオロポリエーテルホスフェートは、O=P(OH)3の構造を有するオルトホスフェート(或いはまた、無水ホスフェートまたはオキシ三塩化リンも使用可能)と、α‐φパーフルオロポリエーテル二価アルコールエトキシレート、すなわち1つ/2つのエトキシル化ユニットで構成された架橋によってZタイプのPFPE鎖と結合した末端位置に2つのヒドロキシル基と、構造:HO-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-OH(式中のR1、n、p、qは先に述べたとおりである)を有する線状重合体構造の化合物との反応によって得られる化合物である。
【0032】
一実施形態によれば、ランダム分布の主要な反復基(CF2CF2O)および(CF2O)として線状で、対称的(Zタイプ)なPFPE(R1)の鎖は、酸素の存在下でのテトラフルオロエチレンの光重合によって得られる。一般に、構造的観点から、これは単一モノマーに由来するが、酸素を含みUV放射によって活性化されるラジカル機構によって部分的に劣化する共重合体鎖である。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態によれば、PFPE(R1)の鎖の約1500に等しいMWを有する。
【0034】
オルトホスフェートの−OH基は、アルコールのヒドロキシル基で縮合してホスフェートエステルを形成することができる。オルトホスフェートは3つの−OH基を有するので、これが1つ、2つまたは3つのアルコール分子でエステル化されてモノエステル、ジエステルまたはトリエステルを形成することができる。この反応は、典型的にはより少量のジエステルとトリエステルの不在と共にモノエステルがかなり優勢になるように、二価アルコールに対してオルトホスフェート欠乏条件下で実施される。したがって、ホスフェートエステル類が生成される。また、エステル化反応は、パーフルオロポリエーテルアルコールの末端位置に2つのヒドロキシル基が存在するので、二官能性誘導体またはジホスフェート(主に少量のジホスフェートのジエステルを有するジホスフェートモノエステル)をもたらす。簡略化のため、これらエステル類をPFPEホスフェートと呼び、字ホスフェートモノエステルのみを以下に示す。
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-Rf-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
【0035】
分子量1500のPFPE(R1)の鎖には、ホスフェート基、オキシエチレン基およびジエステルの平均値に対する寄与により分子量2500のPFPEホスフェートが対応する(PFPEの2つの鎖が同じホスフェート基に結合される)。このPFPEホスフェートは、Solvay Solexis社からFomblin HC/P2-1000(INCI名:ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEGホスフェート)として市販されている。
【0036】
通常、Fomblin(登録商標)HC/P2-1000は、淡黄色から褐色の粘性流体であり、水および油に完全に不溶であるが極性溶媒に可溶な酸型のホスフェートエステルとして市販されている。
【0037】
本発明の範囲内では、得られたHIPEエマルションの連続相は、場合により極性溶媒を含有する水相であり、この場合PFPEホスフェートを溶解することが可能で、分散相または内部相が油または随意的に1つ以上の活性物質を含有する油混合物である。
【0038】
典型的には、本発明の方法では、PFPEホスフェートの水溶液が極性溶媒の使用または使用せずに得られる。
【0039】
構造に関し溶解度が分子量およびPFPE鎖のタイプよりも2つの極めて極性的な末端に影響されるPFPEホスフェートを水に溶解させるモードは、通常pHで強酸性から中性まで識別し、極性溶媒の可能性がある存在により数パーセント単位の濃度を有する水相を生成する。
【0040】
一実施形態によれば、PFPEホスフェートを塩基での部分または完全中和のために水に溶解させることができる。一般に、アルカリを使用し、典型的には水中の水酸化ナトリウムまたは有機塩基を用いる。中和剤をPFPEホスフェートの水分散液に、好ましくは例えば60〜90℃の温度範囲で加熱下および撹拌下で徐々に添加する。pHが4〜12、好ましくは5〜7で透明溶液が得られ、PFPEホスフェートの5〜20%の濃度を、必要に応じて単純な加水により希釈してより適切な濃度、0.1%または更に低い濃度に達するようにする。
【0041】
別の実施形態によれば、極性溶媒中で例えば40〜50%までの溶液を調製し、これら溶液の主成分がPFPEホスフェートの濃度で典型的には5〜20%の範囲になるよう水を徐々に添加して希釈し、更により適切な濃度、0.1%または更に低い濃度に達するように水の希釈を可能にすることによりPFPEホスフェートの水溶液を中和剤の使用なしに得ることが可能である。
【0042】
典型的には、中和剤を添加する可能性があるため、これら溶液のpHを約1.5から7までの範囲で変えることができる。一実施形態によれば、ここで使用する溶媒は、例えばエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチラールから選択した揮発性溶媒;またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、1,2‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール;またはグリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルとすることができる。エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールおよび1,2‐ペンタンジオールを使用することが好ましい。水の大きな普及を有する親アルコール性または親グリコール性環境の条件下では、あらゆるタイプの油が不溶である。
【0043】
更なる実施形態によれば、水中の可溶化が高い圧力で得られる。例えば、高圧ホモジナイザー(Niro-Soavi社のPanda(登録商標)モデル)を利用すると、中和または溶媒の使用なしにPFPEホスフェートの水中の限られた可溶化を得ることが可能である。これら条件下では、油は不溶のままである。
【0044】
本発明の一態様によれば、HIPEエマルションが直接得られる。
【0045】
この更なる態様によれば、油をPFPEホスフェートの水溶液に添加し、流体エマルションが得られるまで相を撹拌下加熱するのが好ましい。この流体エマルションに油を更に添加し、顕微鏡下で視認可能なミセル構造を有する粘性エマルションが得られるまで、撹拌下適切に維持する。このようにして得た粘性エマルションは、濾紙試験で撥油性を示すHIPEエマルションである。
【0046】
一実施形態によれば、HIPEエマルションを直接得る方法は、まず油、例えば化粧用油を全体量の1/10〜1/3の量だけpH範囲が1〜14、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜7でPFPEホスフェートの水溶液に添加し、2つの相を強力な機械的撹拌(例えば5000回転/分のSilverson L5M)しながらプレート上で70〜80℃(いくらかの成分の熱的不安定さまたは揮発性に起因する禁忌がない場合)で数分間予熱するステップを含む。
【0047】
好ましくは水相100部に対し油10〜50部、より好ましくは水相100部に対し油20〜30部を含有する流体エマルションが得られる。更に、油をこの流体エマルションに添加し、水相1部に対し油3部の比率(必要に応じてこれより大きい比率)が得られるまでホモジナイザーの撹拌を保持し、温度を75〜80℃に維持する。
【0048】
撹拌を通常3〜20分、例えば約10分間維持する。軽く撹拌を維持しながら室温で冷却すると、顕微鏡(100倍)下でミセル構造を示し、濾紙試験で撥油性を示す粘性エマルションが得られる。生成したエマルションにおいて、PFPEホスフェートは、油100部に対し通常0.1〜100部、好ましくは0.5〜5部、より好ましくは1〜2部の割合にある。この油は、水相(必要に応じて溶媒を含む)1部に対し通常3〜15部、好ましくは3〜10部、より好ましくは3〜5部の割合にある。
【0049】
本発明の別の態様によれば、HIPEエマルションが超流動性エマルションの遠心分離により得られる。
【0050】
この態様による方法は、水に分散可能な10mPa/s未満の粘度を有する超流動性エマルションが形成されるまで油をPFPEホスフェートの水溶液中に油を分散させるステップを含む。
【0051】
次に、生成した超流動性エマルションを、例えば水溶液と異なる粘性エマルションを得る遠心分離によるか、または水の蒸発分離(例えば回転蒸発器を用いて)により濃縮する。
【0052】
こうして得た粘性エマルションを水に容易に(再)分散させて流体エマルションを得ることができ、これから再び遠心分離によって従来技術のエマルションにない特徴である可逆的な挙動を示す粘性エマルションを得ることができる。こうして得たエマルションは光学顕微鏡下で規則正しいミセル構造を示し、濾紙試験で撥油性であることが証明された。
【0053】
一実施形態によれば、超流動性エマルションを介してHIPEエマルションを得る方法は、例えば80℃に予熱した油をpHが通常1〜14、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜7で通常70〜80℃まで予熱したPFPEホスフェート(中性または酸性)の水溶液に例えば10〜20分間にわたり5000回転/分で強力に撹拌(Silverson L5M)しながら添加するステップを含む。これを軽く撹拌しながら室温で冷却すると、水に容易に分散でき且つミルク様の外観を呈する極めて流動性のエマルションが形成される。
【0054】
こうして得たエマルションにおいて、PFPEホスフェートは、油100部に対し通常0.1〜100部、好ましくは1〜10部、より好ましくは2〜5部の割合である。油は、水相(必要に応じて少量の溶媒を含む)100部に対し通常0.1〜200部、好ましくは水相100部に対し1〜100部、より好ましくは水相100部に対し20〜50部の割合である。
【0055】
エマルションの濃縮を遠心分離により得ることができ、底部または頂部における層化でほぼ透明な残りの水溶液から明確に区別された粘性エマルション(半固体)と同様の外観を呈する外見上均質な白色の塊を分離する。分離された水の量を計量することにより、粘性エマルションの含水量(一般に10〜25%の範囲)を評価することができる。遠心分離の代案として、濃縮を他の手段、例えば回転蒸発器で行うことができる。
【0056】
本発明の一態様によるPFPEホスフェートでの処理により、皮膚軟化油または皮膚軟化油の混合物が疎油性および同性嫌悪性を得るだけでなく、例えば特に刺激の強い脂溶性物質に対する皮膚保湿および保護製品、シェービング用製品(潤滑作用)、抗太陽製品(耐水性の向上)、整髪用製品(脱色、防汚/防スモッグ効果、堆積のないコンディショニング作用)、メークアップ製品(拡散性および持続性の向上)の形成に有利な潤滑性および知覚特性も改善されることが分かるだろう。
【0057】
また、吸収等で潜在的に毒性がある化学UVフィルタや、アレルゲンの存在による危険性がある芳香剤のような他の油の場合、本発明のエマルションおよび変性油の疎油性が皮膚浸透を低減または回避し、皮膚に対するより均質な分布(UVフィルタ)または遅延若しくは延長放出(芳香剤)の可能性によりこれら成分の機能を改善することが観察された。更に、疎油性が同性嫌悪性と相まって、PFPEホスフェートで別々に処理された油または油混合物の非混和性をもたらす。その上、PFPEホスフェートが油に高フッ素含有量の物質に典型的な非固着性を付与し、それによって最終製品の知覚特性を改善する。最後に、本発明のエマルションおよび変性油は、乳化剤を用いることなく水への分散を可能にするに十分な親水性を有する。
【0058】
一実施形態によれば、皮膚軟化剤ベースのHIPEエマルションを、その潤滑性および保護性から最終製品として使用することもできる。
【0059】
別の実施形態によれば、このエマルションは、乳化に必要なものより高いPFPEホスフェートの濃度(1〜5%)の場合、酸性および中性のpHを有する剥離剤としても作用することができる。
【0060】
他の実施形態によれば、本発明のHIPEエマルションは、活性成分、例えば薬理活性物質を担持するのに適している。油/エマルションの疎油性は、UVフィルタのような活性物質、すなわち毒性によっては吸収すると潜在的にリスクがある成分、および芳香剤、すなわちアレルゲンの潜在的な存在によりリスクがある成分の皮膚吸収を回避するのに有利である。安全性の利点(被毒リスクのある成分が減少することまたは放出されないこと)に加えて、これらの2つの類型の活性物質では、それぞれの性能に以下のような影響を与えることができる可能性がある:
・UVフィルタ(日焼け止め)の場合、皮膚(または毛髪)へのより均一な塗布;
・芳香剤の場合、揮発特性を改変することにより持続時間が長くなる利点が得られる。
【0061】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、製剤上の観点から以下の利点をもたらす:
・油またはエマルションまたはゲルの形態の製剤に対する成分または構成成分の添加が温和な条件下(室温で最小限の撹拌)で行われ、いずれの場合も正確且つ均一な分散が保証される;
・同じ水相中で分離、分散させた油相を有する新しいタイプの多重エマルション(O1+O2+O3)...)/Wが得られるように手順を変更することにより多相系が得られる;
・皮膚吸収が有利な活性剤をPFPEホスフェートで処理されない油相に単純に組み込むことで活性剤による「送達」効果を、前述のようなリスクのある作用物質に対する「非送達」効果と組合せて得られる;
・単純な水希釈により流体エマルション(組織の含浸およびスプレーシステムに適した)が調製される。
【0062】
本発明の範囲では、「油」という用語は水に不溶な液体を意味する。
【0063】
本発明の方法の範囲では、任意の油または様々な油の混合物ならびに固体の油溶液および分散体を使用することができる。
【0064】
特に、化粧用の皮膚軟化剤および他の油だけでなく芳香剤を含有する油も使用することができる。
【0065】
一実施形態によれば、本発明の範囲で以下のものから選択した一つ以上の油を使用する:
・炭化水素類(鉱油、パラフィンおよびイソパラフィン、低分子量ポリオレフィン、スクアラン、線状および環状テルペン);
・長鎖アルコール類(エチルヘキシルドデカノール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、セテアリルアルコール);
・脂肪酸エーテル類(ジカプリリルエーテル);
・プロピレングリコールを有する脂肪酸エーテル類(PPG‐11ステアリルエーテル、PPG‐11ステアリルエーテル);
・合成アルコールとのモノカルボン脂肪酸のエステル類(パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル);
・合成モノカルボン酸の脂肪族アルコールとのエステル類(C12−15アルキルベンゾエート、イソノナン酸セチル/ステアリル);
・脂肪族アルコールとモノカルボン脂肪酸とのエステル類(ステアリン酸トリデシル、リシノレイン酸ステアリル);
・合成アルコールと合成モノカルボン酸とのエステル類(オクタン酸エチルヘキシル);
・合成アルコールと合成ジカルボン酸とのエステル類(アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル);
・脂肪族アルコールと合成カルボン酸とのエステル類(アジピン酸ミリスチル);
・プロポキシ化グリコールとモノカルボン酸とのエステル類(ジヘプタン酸PEG‐4);
・多価アルコールと脂肪酸とのエステル(トリカプリル酸/カプリン酸グリセロール、テトラカプリル酸/カプリン酸ペンタエリスリトール、テトラオレイン酸ペンタエリスリトール、スクロースアルキルエステル);
・脂肪族アルコールとヒドロキシ酸とのエステル類(サリチル酸トリデシル、酒石酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリC12-13アルキル);
・脂肪族アルコールとポリカルボン酸とのエステル類(トリメチル化トリデシル);
・植物油(アボカド油、マカダミア油、ヒマシ油、ゴマ油、アーモンド油、小麦胚芽油、ホホバ油、ヒマワリ種子油);
・水添植物油;
・植物油の不けん化分画;
・植物性脂(カカオ脂、シア脂);
・動物油(液状ラノリン);
・ワックス(液体、半固体および低融点固体)
【0066】
他の実施形態によれば、本発明の一態様によるHIPEエマルションを製造するために以下から選択した油ベース製品を使用することができる:
・メトキシケイヒ酸オクチル(DSM社(オランダ)のParsol MCX)やオクトクリレン(BASF社(ドイツ)のUvinul A539)のような液状の化学UVフィルタ、またはブチルメトキシジベンゾイルメタン(DSM社のParsol 1789)のような液状フィルタ若しくは皮膚軟化油に可溶な固体の形態の化学UVフィルタ;
・そのまま若しくは溶液中または皮膚軟化油中のような精油および芳香剤(合成または天然およびそれらの組合せ)。
【0067】
[撥油性]
本発明の方法で得たエマルションは、HIPEエマルションであり、油の形態の試料または油含有試料の撥油性の迅速な評価に適したごく単純な試験で撥油性を示す。
【0068】
約0.5mlの上記生成物を濾紙(Albet SA社(スペイン バルセロナ))の10×10cmの表面上に均一な層が得られるように添加剤なしで600mg/100cmの重量で塗布する。20分後、水の蒸発および場合によっては揮発性溶媒の蒸発が完了したら、少量の鉱油を処理領域上に塗布する。別の未処理領域または別の試料で処理した領域を比較用に使用する。次に、形状や透明度、とりわけ吸収時間を観察する。言うまでもなく、この試験は指標的な価値しかないが、この試験によれば未処理領域で確認されるほぼ即時吸収と比較して吸収時間が30分を超える油または試料を「撥油性」(疎油性)と定義することが可能となる。「変性油」はエマルションの構成成分であるため、この試験によれば変性油の現状維持能力を評価することも可能となる。
【0069】
[含水量]
HIPEエマルションの含水量が独立系研究所(Farcos社(ミラン))による実験によって測定され、該測定を一定の重量に達するまでストーブ内の乾燥前後に実施した。
【0070】
[装置および機器]
以下の実験装置および機器を使用した:
・Silverson Machines社(イギリス)の標準的なヘッド、ステータ、分子篩およびインラインヘッドを有するホモジナイザーSilverson L5M;
・Niro Soavi SpA社(イタリア)の高圧ホモジナイザーPanda 2k;
・加熱板を有する磁気撹拌器;
・Heraeus Sepatech社(ドイツ)の温熱調節機能付き遠心分離機Biofuge 17RS;
・Buchi Labortechnik AG社(スイス)の温度槽(Buchi Waterbath B-480)および水冷凝縮器を有する回転蒸発器Rotavapor R-114;
・Leica Microsystems Heidelberg GmbH社(ドイツ)の顕微鏡DM 2000と、Leica DFC 290デジタルカメラおよびLeica LASソフトウェア、ならびにPentium(登録商標)-43およびLCD TFTプロセッサ、ならびに19インチモニタ;
・Metrohm AG社(スイス)のガラス電極および温度制御プローブを有するpHメータMetrohom;
・Brookfieid Engineering, Laboratories社(アメリカ合衆国)の粘度計Brookfield DV-Iおよびスピンドルセット;
・温度計
【0071】
本発明は、本願と同一出願人によるイタリア特許出願第MI2008A1339号の優先権を主張する。このイタリア特許出願の内容全体を参照により本明細書に援用し、本明細書に組み込むものとする。
【0072】
以下の実施例は本発明の単なる例示として与えるものであり、添付の特許請求の範囲による保護範囲を限定するものではない。
【0073】
実施例1:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(鉱油/中性PFPEホスフェート)
水に不溶なリン酸エステルとして市販されているPFPEホスフェート(Solvay Solexis SpA社(ミラン)製のFomblin HC/P2-1000)の水溶液を独立して調製した。この可溶化は、pHショックを回避するように水酸化ナトリウムの水溶液を80℃に加熱した酸性PFPEホスフェートの水分散液に磁気撹拌下で漸次添加することにより、非常に注意深く行うべきである。
・水溶液
水酸化ナトリウム 0.76部
脱イオン水 8.00部
・水分散液
PFPEホスフェート(Fomblin HC/P2 1000) 20.00部
脱イオン水 71.24部
合計 100.00部(PFPEホスフェート20重量部を含む)
【0074】
PFPEホスフェート(20%)の完全透明溶液が5〜7のpH範囲で得られ、水で最も適切な濃度まで希釈することができる。
【0075】
乳化は、80℃に加熱した鉱油(ACEF SpA社(イタリア)のBFR070 Paraffinum Liquidum FU)を80℃に加熱した中性PFPEホスフェートの希釈水溶液に添加するエマルションプロセスのステップ(a)と、Silverson L5M(5000回転/分)を用いて10分間撹拌するエマルションプロセスのステップ(b)とからなり、その後軽い撹拌下室温まで冷却した。
(質量%)
a)鉱油(BFR070 Paraffinum Liquidum FU) 30.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0076】
水に容易に分散可能なホワイトミルク様の外観を呈する超流動性エマルション(粘度<10mPAS/s)が得られた。遠心分離(5000回転/分、25℃の条件で20分間)により油の分離なしに層化が生じ、上部層は「粘性の」白色エマルションのような外観を呈し、下部層の水性部はpH=7.3で僅かに半透明となった。この粘性エマルションは、単純な手動撹拌によって水に分散可能であり、他の遠心分離処理に安定で、濾紙試験で「撥油性」を示し、光学顕微鏡下ではミセルタイプの微細な均質構造を示す。
【0077】
乳化中は、遠心分離によって得た粘性エマルションの含水量を近似的方法であるが計算することができるように、蒸発した水分の必要な補償を行う。遠心分離によって分離された水の重量から、粘性エマルション中の水および油の質量割合を計算することができ、それぞれ20.6質量%および79.4質量%と等しいことが分かった。
【0078】
これらの値は、独立系研究所の分析測定値から得られた値(一定質量まで105℃での乾燥による損失)に従うもので、報告によると、含水量は24.7%と等しく、残りの部分は油(およびPFPEホスフェート)75.2質量%で構成され、74%の臨界レベルよりも高い割合である77.9体積%(鉱油密度0.86g/ml)に対応し、したがってHIPEエマルションフィールドの範囲内にある。
【0079】
実施例2:HIPE直接エマルション(鉱油/中性PFPEホスフェート)
水で希釈すべき中性PFPEホスフェートの水溶液(20%)を調製するために実施例1の場合と同様に行って、以下の割合を有する鉱油のHIPEエマルションを直接生成した:
(質量%)
a)鉱油(BFR070 Paraffinum Liquidum FU) 75.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 20.0
合計 100.0
【0080】
鉱油(a)およびPFPEホスフェートの水溶液(b)をプレート上で80℃に加熱した。5000回転/分の10分間の撹拌(Silverson L5M)下で、鉱油の一部分(約1/10)を水溶液に添加した。流動性が高く水中に分散可能な白色エマルションが形成された。油の残り部分をゆっくりと添加し、このミルクを撹拌しながら80℃で維持した。粘度の顕著な増加が見ら、更に10分間撹拌を続けた。その後、エマルションを軽い撹拌下で冷却して、水に分散可能な粘性(半固体)エマルションを形成した。このエマルションは最初の遠心分離で最小限の水分離を示したが、後続の遠心分離では水分離は観察されなかった。このエマルションは、濾紙試験で撥油性であることが確認され、光学顕微鏡下では実施例1と非常によく似た構造を示し、遠心分離(5000回転/分、25℃の条件で20分間)によって水または油の分離は示さなかった。
【0081】
乳化中、水相と油相の質量割合をほぼ一定、すなわちそれぞれ25%および75%に維持するように蒸発した水分を補償した。分析結果(一定の質量まで90℃での乾燥による損失)は21.8%の含水量を付与し、これから油相が78.2%と等しいことになる。これらの値を用いて鉱油の密度(0.86g/ml)を考慮に入れると、それぞれ19.3%および80.7%の体積割合が得られた。
【0082】
実施例3:HIPE直接エマルション(鉱油/中性PFPEホスフェート/グリセロール):実施例2との比較
三菱化学フーズ株式会社の論文で報告されているように水の一部をグリセロールに置き換えて実施例2を繰り返した。
(質量%)
a)鉱油(BFR070 Paraffinum Liquidum FU) 75.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
c)植物グリセロールFU-Ph Eur. 10.0
脱イオン水 10.0
合計 100.0
【0083】
遠心分離作用により相の層化でむらのない油分離を示す半透明の「エマルション」が得られた。
【0084】
実施例4:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(鉱油/酸性PFPEホスフェート)
20分の磁気撹拌下Fomblin(登録商標)HC/P2-1000をエタノール(98%)に直接溶解し酸性PFPEホスフェート(20質量%)の濃縮アルコール性溶液を独立して調製した。生成した溶液は、やや乳白色であったが、少量の温水(アルコール中のPFPEホスフェート100部に対し約5部)を漸次添加した後完全に透明となった。この濃縮アルコール性溶液(20%)を1%まで水で希釈した。pHの測定結果は2.7であった。
【0085】
超流動性エマルションが、中性PFPEホスフェートを酸性PFPEホスフェートに置き換えた点を除けば実施例1の場合と同様に得られた。
(質量%)
a)鉱油(BFR070 Paraffinum Liquidum FU) 30.0
b)中性PFPEホスフェート(エタノール中20%) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0086】
水に容易に分散可能なpH=3.2の超流動性エマルションが得られ、これから遠心分離(5000回転/分、25℃の条件で20分間)により粘性エマルションを分離した。この粘性エマルションは、実施例1のエマルションと同様の特性(水中分散性、撥油性、光学顕微鏡下の観察値)を有した。
【0087】
実施例5:HIPE直接エマルション(鉱油/酸性PFPEホスフェート)
中性PFPEホスフェートを酸性PFPEホスフェートに置き換えた点を除けば実施例2の場合と同様の処理を行った。
(質量%)
a)鉱油(BFR070 Paraffinum Liquidum FU) 75.0
b)酸性PFPEホスフェート(エタノール中20%) 5.0
脱イオン水 20.0
合計 100.0
【0088】
実施例2のエマルションと同様の特性(水中分散性、撥油性および光学顕微鏡下の観察値)を有する粘性エマルションが得られた。
【0089】
実施例6:超流動性エマルション(パルミチン酸エチルヘキシル/中性PFPEホスフェート)およびHIPEへの遠心分離
実施した処理は実施例1の場合と同様であるが、ここでは以下のとおり鉱油をパルミチン酸エチルヘキシル(Cognis社(ドイツ)のCegesoft C 24)に置き換えた:
(質量%)
a)パルミチン酸エチルヘキシル(Cegesoft C24) 30.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0090】
水に分散可能な超流動性エマルションが得られ、これから遠心分離により実施例1と同様の特性(水中分散性、撥油性、ミセル構造)を有する粘性エマルションが得られた。この粘性エマルションを20%の非乳化のパルミチン酸エチルヘキシルと混合し、赤色(LCW/Sensient社(フランス/アメリカ合衆国)のD&C N°17KT007)で染色し、手動で撹拌した。2日間の静置期間後、遠心分離を行って2つの層を形成し、上部層(非乳化)のみが着色された。
【0091】
実施例7:HIPE直接エマルション(パルミチン酸エチルヘキシル/中性PFPEホスフェート)
実施した処理は実施例2の場合と同様であるが、パルミチン酸エチルヘキシル(Cognis社(ドイツ)のCegesoft C24)のHIPEエマルションを中性PFPEホスフェートを用いて以下の割合で直接調製した:
(質量%)
a)パルミチン酸エチルヘキシル(Cegesoft C24) 75.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱塩水 20.0
合計 100.0
【0092】
油の2工程添加後、高粘性のエマルションを得、軽い撹拌下室温まで冷却した。この粘性エマルションは、特性(水中分散性、撥油性および光学顕微鏡下の観察値)に関する限り実施例2および実施例5のものと同様であった。
【0093】
実施例8:皮膚軟化剤の直接HIPEエマルション
実施した処理は実施例2の場合と同様であるが、皮膚軟化剤:イソステアリン酸イソステアリル(Gattefosse S.A.社(フランス)のイソステアリルイソステアレート)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Cognis社(ドイツ)のMyritol 318)、ブチルココエート(Gattefosse S.A.社(フランス)のCocoate BG)の直接HIPEエマルションを調製し、これらの皮膚軟化剤の混合物にPFPEホスフェートの水溶液を添加した:
(質量%)
a)イソステアホスフェートイソステアリル 22.5
ブチルココエート 22.5
トリ(カプリル/カプホスフェート)グリセリル 30.0
b)PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 20.0
合計 100.0
【0094】
遠心分離により油の分離を示さない白色の粘性エマルションが得られる一方、やや乳白色の水の極めて少量の沈降分離が確認された。水性部を分離し、粘性エマルションの遠心分離を更なる分離なしに繰り返した。
【0095】
実施例9:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(揮発性シリコーン/中性PFPEホスフェート)
実施した処理は実施例1の場合と同様であるが、ここでは鉱油を揮発性シリコーン、すなわち化学名シクロペンタシロキサン(GE Silicones社(ドイツ/アメリカ合衆国)のBaysilone SF)に置き換え、60℃のPFPEホスフェートの水溶液をほぼ同じ温度に加熱した揮発性シリコーンに添加した:
(質量%)
a)揮発性シリコーン(Baysilone SF 1202) 30.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0096】
pH7.6の水相と、粘性エマルションとを水に容易に分散可能な超流動性エマルションから遠心分離により分離した。この粘性エマルションは、更なる遠心分離処理後に安定していたが、数日間棚置きした後は未処理シリコーンとまったく同様の液状の透明層を形成した。
【0097】
実施例10:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル/中性PFPEホスフェート)
実施した処理は実施例1の場合と同様であるが、ここでは鉱油をメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(DSM社(オランダ)のParsol MCX)に置き換えた:
(質量%)
a)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(Parsol MCX) 30.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱塩水 65.0
合計 100.0
【0098】
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを添加すると溶液が直ちに混濁し、それによってエマルションが形成された。5000回転/分の撹拌を10分間継続し、次いでこの溶液を軽い撹拌下冷却した。これにより水に容易に分散可能な超流動性エマルションが得られた。遠心分離(25℃、5000回転/分の条件で20分間)により、水に分散可能な白色の粘性エマルションが分離されたが、この粘性エマルションは磁気撹拌なしで同じメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに分散させることはできなかった。この粘性エマルションは、濾紙試験では鉱油および同じメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの吸収抵抗により撥油性を示し、光学顕微鏡下ではミセル均質構造を示した。
【0099】
実施例11:従来のエマルション(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル/セチルリン酸カリウム):実施例10との比較
実施例10の繰り返しとなるが、ここではPFPEホスフェートを水に100%分散する粉末としてのセチルリン酸カリウム(DSM社(オランダ)のAmphisol K)に置き換え、以下のパーセント比で作用させた:
(質量%)
a)メトキシケイヒ酸オクチル(Parsol MCX) 30.0
b)セチルホスフェートカリウム(Amphisol K) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0100】
冷却したときにゼラチン化する流動性エマルションが得られた。この調合液は単純な手動撹拌でメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに分散し、Silverson L5Mでの撹拌下水中で破壊された。濾紙試験では、これは鉱油およびメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの吸収抵抗を示さなかった。
【0101】
実施例12:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル/酸性PFPEホスフェート)
実施した処理は実施例3の場合と同様であるが、ここでは鉱油をメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに置き換え、酸性PFPEホスフェートによる乳化を以下のパーセント比で実施した:
(質量%)
a)メトキシケイヒ酸オクチル(Parsol MCX) 30.0
b)酸性PFPEホスフェート(20%エタノール中) 5.0
脱イオン水 65.0
合計 100.0
【0102】
実施例1および実施例10のエマルションと同様の特性を有する粘性エマルションが超流動性エマルションの遠心分離により得られた。
【0103】
実施例13:遠心分離による2つのHIPEの分離を伴う2つの超流動性エマルションの組合せ
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(A)およびパルミチン酸エチルヘキシル(B)の2種類の油(異なる染料の添加により着色)の中性PFPEホスフェートによる乳化を、実施例1の手順に従って以下のパーセント比で個別に行つた:
A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシルのエマルション:
(質量%)
a)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(Parsol MCX) 49.98
染料(D&C Red N°17K7007, CLW) 0.02
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 10.00
水 40.0
合計 100.0
B)パルミチン酸エチルヘキシルのエマルション
(質量%)
a)パルミチン酸エチルヘキシル(Cegesoft C24) 49.98
染料(D&C Vert N°11, CLW) 0.02
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 10.00
脱イオン水 40.0
合計 100.0
【0104】
この2つの超流動性エマルションは、桃色(A)および薄青色(B)であった。これらの2つのエマルションを等部ずつ手動撹拌によって混合すると、ベージュ色の流動性エマルションが得られた。遠心分離(25℃、5000回転/分の条件で20分間)を行って、薄青色の上部層が桃色の層で分離され、底部が水相となる層化が得られた。
【0105】
実施例14:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(液体フィルタ/中性PFPEホスフェートに溶解した固体フィルタ)
実施例1の繰り返しとなるが、ここでは鉱油を液体フィルタ(DSM社(オランダ)のParsol MCX)に溶解した固体ソーラーフィルタ(DSM社(オランダ)のParsol 1789)によって構成した油性溶液に置き換えた。割合は以下のとおりである:
a)INCI名(商品名) (質量%)
ブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789) 9.0
メトキシケイヒ酸エチル(Parsol MCX) 21.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 10.0
脱イオン水 60.0
合計 100.0
【0106】
数日間静置したままでも層化を示さない超流動性エマルションが得られた。したがって、これを遠心分離(25℃、5000回転/分の条件で20分間)にかけると、白色の粘性エマルションから分離されることで半透明の外観を呈する上部水相の沈殿が確認された。このエマルションを水に分散(手動および磁気撹拌により)させるとミルクが得られ、このミルクを遠心分離によって層化させると白色の粘性エマルションが形成されたが、外見上の変質は見られなかった。濾紙試験では粘性エマルションと水溶液は共に「撥油性」を示した。再び水中の分散とその後の遠心分離を繰り返すと、粘性の「撥油性」エマルションが得られ、水溶液は「非撥油性」であることが判明した。
【0107】
実施例15:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(UVフィルタ/中性PFPEホスフェートの混合物)
実施例1の繰り返しとなるが、ここでは鉱油を固体フィルタの液体フィルタ溶液に置き換え、以下のパーセント比で作用させた:
a)INCI名(商品名) (質量%)
ブチルメトキシジベンゾイルメタン(DSM社のParsol 1789) 6.0
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(DSM社(オランダ)のParsol MCX) 16.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(BASF社のUvinul APlus) 6.0
エチルヘキシルトリアゾン(BASF社のUvinul T150) 8.0
オクトクリレン(Uvinul N539 T) 2.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 10.0
脱イオン水 52.0
合計 100.0
【0108】
黄色に僅かに染色された超流動性エマルションが得られ、遠心分離(25℃、5000回転/分の条件で20分間)後に油の分離なしに黄色の粘性エマルションが得られた。このエマルションは「撥油性」であることが確認され、光学顕微鏡下では微細な規則正しいミセル構造が示された。
【0109】
実施例16:HIPE直接エマルション(ソーラーフィルタ/中性PFPEホスフェートの混合物)
HIPEエマルションをUVフィルタの混合物(固体フィルタの液体フィルタ溶液)および中性PFPEホスフェートでの直接手順(実施例2)で調製した:
a)INCI名(商品名) (質量%)
ブチルメトキシジベンゾイルメタン(DSM社のParsol 1789) 12.0
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(DSM社(オランダ)のParsol MCX) 30.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(BASF社のUvinul APlus) 12.0
エチルヘキシルトリアゾン(BASF社のUvinul T150) 12.0
オクトクリレン(Uvinul N539 T) 9.0
b)中性PFPEホスフェート(水中20%) 5.0
脱イオン水 20.0
合計 100.0
【0110】
遠心分離により上部層として少量の水の分離を示す黄色の粘性エマルションが得られた。この水性部分を分離し、遠心分離を更なる水の分離なしに繰り返した。実施例15のHIPEエマルションのものと同様の特性(外観、顕微鏡下の観察値および撥油性)を有する粘性エマルションが得られた。
【0111】
実施例17:多相HIPEエマルション
実施例8(皮膚軟化剤)および実施例16(UVフィルタ)による直接プロセスで得た2種類のHIPEを等部ずつ手動撹拌によって混合した。遠心分離後、これら2つの粘性エマルションの層化を示したが、油分離なしで上部層が白色のエマルション、下部層が黄色のエマルションで構成された。これら2種類の粘性エマルションを再混合し、手動撹拌によって均質化し、その後第2の遠心分離を実施したが、系は層化したままでありエマルションの分解は視認できなかった。
【0112】
これら2種類のHIPEをエマルションの各部に対し水3部を添加することにより個別に希釈し、分散物を手動撹拌によって均質化して流動性エマルションが得られた。これら2種類の流動性エマルションを混合し、遠心分離を行い、白色のエマルション(上部層)、乳白色の水相(中間層)および黄色のエマルション(下部層)で構成される3つの層の形成が観察された。
【0113】
実施例18:遠心分離によりHIPEを得るための超流動性エマルション(芳香剤/中性PFPEホスフェート)
実施例1の繰り返しとなるが、ここでは鉱油を芳香剤(GRC Parfum社(ミラン)のCode 748/M)に置き換えた。2つの相を予熱せずに処理を実施した結果、芳香剤の非乳化兆候のない超流動性エマルションが得られた。遠心分離(25℃、5000回転/分の条件で60分間)後、粘性エマルションの上部層で層化が得られた。
【0114】
実施例19:HIPEエマルションの希釈による組織用の希釈エマルション
実施例18のHIPEエマルション(芳香剤)0.5部および実施例6のHIPEエマルション(皮膚軟化剤)4.5部を、キサンタンガム0.1部を手動撹拌によって事前に分散させた後20分間の磁気撹拌にかけた水溶液85部に分散させた。組織含浸に適した100〜300cpsの粘度の流動性エマルションが得られた。
【0115】
実施例20:HIPEエマルションを用いたシェービングクリーム
鉱油ベースのHIPEエマルション(構成成分b、実施例2の組成)を30℃で手動撹拌しながら基剤(構成成分a)に添加することにより、シェービングクリームを調製した。
【0116】
【表1】

最終製品の特性:
・外観:白色のエマルション
・粘度:100000cps(Brookfield LVT)、pH:6.2
【0117】
実施例21:2つのHIPEエマルションを含むロールオンデオドラント
HIPEエマルション(実施例2および実施例18)で構成される2つの構成成分を30℃で手動撹拌しながら基剤に添加してロールオンデオドラントを調製した。
【0118】
【表2】

最終製品の特性:
・外観:白色のエマルション
・粘度:80000〜100000cps(Brookfield LVT)
・pH:6.1
【0119】
実施例22:UVフィルタを有するHIPEエマルションを含むハイプロテクションサンクリーム
UVフィルタを有するHIPEエマルション(実施例16)で構成したアクリル乳化剤ベースのエマルションの構成成分でハイプロテクションサンクリームを調製した。
【0120】
【表3】

最終製品の特性:
・外観:白色のエマルション
・粘度:80000〜100000cps(Brookfield LVT)
・pH=6.5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続水相と、該連続相中に分散した74体積%超の油性内部相とを含むHIPE水中油型(O/W)エマルションにおいて、前記エマルションが同性嫌悪性および疎液性であり、次式:
[化1]
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2であり、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされるパーフルオロポリエーテルホスフェート(PFPE)を含むことを特徴とするHIPE水中油型エマルション。
【請求項2】
前記パーフルオロポリエーテルホスフェートがポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEGホスフェート(INCI名)であることを特徴とする請求項1に記載のHIPE水中油型エマルション。
【請求項3】
74体積%超の油性内部相を有し、疎液性且つ同性嫌悪性であり、次式:
[化2]
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2であり、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされるパーフルオロポリエーテルホスフェート(PFPE)の水溶液で油相を乳化させ、
更に水相を分離することによって得られるHIPE水中油型エマルション。
【請求項4】
前記パーフルオロポリエーテルホスフェートがポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEGホスフェートであることを特徴とする請求項3に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルション。
【請求項5】
前記乳化が、油相を撹拌下で前記PFPEホスフェートの水溶液中に流動性エマルションが形成されるまで分散させるステップと、
撥油性の粘性エマルションが形成されるまで油を撹拌下で添加することにより前記流動性エマルションを濃縮するステップとを備えることを特徴とする請求項3または4に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルション。
【請求項6】
前記乳化が油相を撹拌下で前記PFPEホスフェートの水溶液中に超流動性希釈エマルションが形成されるまで拡散させるステップと、
撥油性の粘性エマルションが形成されるまで水相を分離することにより前記超流動性希釈エマルションを濃縮するステップとを備えることを特徴とする請求項3または4に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルション。
【請求項7】
前記油相が油と、その中に分散した一つ以上の活性物質とを含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルション。
【請求項8】
前記活性物質をソーラーフィルタ、芳香剤、薬理活性物質およびその混合物から選択することを特徴とする請求項7に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルション。
【請求項9】
一つ以上の活性物質が哺乳動物の身体の外部または内部の生理学的障壁を通過するのを低減または防止するための前記活性物質の担体としての請求項1〜8のいずれか一項に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルションの使用。
【請求項10】
皮膚または毛髪用化粧品としての請求項1〜8のいずれか一項に記載の疎液性且つ同性嫌悪性のHIPE水中油型エマルションの使用。
【請求項11】
74体積%超の油性内部相を有するHIPE水中油型(O/W)エマルションを製造するに当たり、
次式:
[化3]
(HO)2OP-O-(CH2CH2O)n-CH2-R1-CH2-(OCH2CH2)n-O-P-O(OH)2
(式中のnは1〜2であり、R1は式:-(CF2-CF2O)p-(CF2O)q-のパーフルオロポリエーテル鎖で、pおよびqはそれぞれ0.5〜3.0であり、R1の平均分子量が500〜4000、好ましくは1000〜2000、より好ましくは1400〜1600である)で表わされるパーフルオロポリエーテルホスフェート(PFPE)の水溶液に油を分散させるステップを備え、
前記パーフルオロポリエーテルホスフェートが好ましくはポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEGホスフェートであるHIPE水中油型(O/W)エマルションの製造方法。
【請求項12】
前記PFPEホスフェートの水溶液中に流動性エマルションが形成されるまで油相を撹拌下で分散させるステップと、撥油性の粘性エマルションが形成されるまで前記流動性エマルションに油を撹拌下で添加することを含む濃縮ステップとを備えることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分散ステップが、好ましくは水相100部に対し油10〜50部を含有する流動性エマルションが得られるまでpH範囲が3〜8であるPFPEホスフェートの加熱溶液に加熱した油を撹拌下で添加することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記濃縮ステップが、水相1部に対し油3部の比率に達するまで分散ステップで得た前記流動性エマルションに予熱した油を撹拌下で添加するステップと、
前記撹拌を撥油性の粘性エマルションが得られるまで維持するステップとを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記PFPEホスフェートの水溶液中に油相を撹拌下で超流動性希釈エマルションが形成されるまで分散させるステップと、
撥油性の粘性エマルションが形成されるまで前記水相の分離、好ましくは遠心分離または回転蒸発によって前記超流動性希釈エマルションを濃縮するステップとを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記分散ステップが、pH範囲が3〜8であるPFPEホスフェートの予熱水溶液に予熱した油を撹拌下で添加するステップと、
室温まで冷却し、超流動性希釈エマルションが形成されるまで前記撹拌を維持するステップとを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528614(P2011−528614A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519112(P2011−519112)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058821
【国際公開番号】WO2010/009989
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501023340)ジュリアーニ ソシエタ ペル アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】GIULIANI S.P.A.
【住所又は居所原語表記】VIA PALAGI 2 − MILAN, ITALY
【Fターム(参考)】