説明

変色性積層体

【課題】 温度変化により可逆的に変色すると共に、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物による通常の使用状態では消色又は変色しない色彩記憶性を有し、前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物は色彩変換手段を適用することにより消色させることができる特異な変色機能を有する変色性積層体を提供する。
【解決手段】ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含む光変色層と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体の均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を含む熱変色層を積層してなる変色性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色性積層体に関する。詳細には、温度変化により可逆熱変色性組成物が有色から無色に可逆的に変色する機能と、紫外線又は紫外線を含む太陽光の照射により発色状態を呈するフォトクロミック化合物が、通常状態では消色又は変色し難く、特定の色彩変換手段を介して有色から無色に変色させることができる機能を複合させた変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度変化により可逆的に変色する組成物として、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体の均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を含む層を設けた積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、温度変化により大きなヒステリシス特性を示して変色する色彩記憶性を備えた可逆熱変色性組成物を含む層を設けた積層体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−10266号公報
【特許文献2】特公平6−59746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記可逆熱変色性組成物、或いは、色彩記憶性を備えた可逆熱変色性組成物を含む層を設けた積層体は、示温分野、印刷分野、偽造防止分野等、多様な分野に適用されている。
しかしながら、前記可逆熱変色性組成物は所望の色彩を発現させて保持させるために、熱又は冷熱手段による温度コントロールを要し、変色した状態を保持でき難いため、色彩記憶性を必要とする積層体への適用には不向きであった。
また、色彩記憶性を備えた可逆熱変色性組成物は、変色に要した熱又は冷熱の適用を取り去った後にあっても、変色した状態のいずれかを互変的且つ可逆的に保持するため、色彩記憶性を必要とする積層体への適用に向いているものの、不可抗力で熱又は冷熱が加わって変色する虞があり、安定した変色機能の記憶保持性を必ずしも満足させていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記安定した変色機能の記憶保持性を有する積層体について検討した結果、可逆熱変色性組成物と共に、光メモリー(色彩記憶性光変色性)に必要とされる熱不可逆性をもつジアリールエテン系フォトクロミック化合物が発色状態を維持する色彩記憶性、熱的安定性、感度、繰り返し耐久性等に顕著に優れており、光と熱により変色する積層体として好適であり、前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物と可逆熱変色性組成物からなる変色性積層体が効果的であることを見出した。
本発明は、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含む光変色層と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体の均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を含む熱変色層を積層してなる変色性積層体を要件とする。
更には、支持体上に、前記熱変色層と光熱変色層を順次積層してなること、前記支持体が不透明であること、前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含んでなること、前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を内包したマイクロカプセル顔料、又は、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含有する樹脂粒体を含んでなること、前記可逆熱変色性組成物及びジアリールエテン系フォトクロミック化合物を内包したマイクロカプセル顔料を含んでなること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線に関して40℃乃至70℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色すること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T)が40℃以上であり、且つ、最低保持温度(T)が20℃以下である、常温域で色彩記憶性を有すること等を要件とする。
【0006】
本発明の変色性積層体は、紫外線又は紫外線を含む太陽光の照射によりジアリールエテン系フォトクロミック化合物が発色状態となり、通常のフォトクロミック化合物のように太陽光の当たらない場所で変色する不具合を生じることなく、通常の使用状態では発色状態を維持できる。しかも、必要に応じて熱又は冷熱の適用により可逆熱変色性組成物のみ変色させることができ、更に紫外線吸収剤又は紫外線を遮蔽する光遮蔽性顔料を含む色彩変換手段を適用することにより、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を消色させて、無色或いは異なる色調に変色させることのできる特異な変色機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、温度変化により可逆的に変色すると共に、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物による通常の使用状態では消色又は変色しない色彩記憶性を有し、前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物は色彩変換手段を適用することにより消色させることができる特異な変色機能を有するため、マジック性や玩具性の用途はもとより、偽造防止、学習、情報伝達等、多様な分野に適用性を備えた変色性積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を以下に例示するが、本発明に用いられるジアリールエテン系フォトクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
ジアリールエテン系フォトクロミック化合物の基本骨格としては一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【化1】

前記一般式(1)の環Aは、フッ化(フルオロ化)又はペルフルオロ化されていてもよい炭化水素環又は複素環を示す。
【0010】
前記一般式(1)で示される化合物を、一般式(2)又は(3)で具体的に例示する。
【化2】

前記一般式(2)で示される化合物は、5個の炭素原子を含むフッ化又はペルフルオロ化されていてもよい環を有する。
【化3】

前記一般式(3)で示される化合物は、4個の炭素原子を含む無水環を形成してなり、Xは酸素原子又はNR基(ここで、Rは炭素数2乃至16のアルキル及び/又はヒドロキシアルキル基である)を示す。
【0011】
更に、別のジアリールエテン系フォトクロミック化合物の基本骨格としては一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【化4】

前記一般式(4)で示される化合物のA1基及びA2基は、二重結合に対して常にシス形にあり、互いに独立した置換或いは非置換のアルキル基、脂肪酸エステル基、ニトリル基を示す。
【0012】
前記一般式(4)で示される化合物を、一般式(5)及び(6)で具体的に例示する。
【化5】

【化6】

前記一般式(6)で示される化合物のR1及びR2はそれぞれメチル基又はエチル基を示す。
【0013】
前記した一般式(1)乃至(6)で示される化合物中のB基とC基は、同一或いは異なっていてもよく、次の構造式で示される基を例示できる。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

〔式中、YとZは、同一或いは異なっていてもよく、酸素原子又は硫黄原子或いは硫黄、窒素またはセレニウムの酸化形を示し、DとEは、同一或いは異なっていてもよく、炭素原子又は窒素原子を示し、R3乃至R17は、同一或いは異なっていてもよく、水素、直鎖又は分枝状の炭素数1乃至16のアルキル又はアルコキシ基、ハロゲン、直鎖又は分枝状の炭素数1乃至4のフルオロ又はペルフルオロ基、カルボン酸基、炭素数1乃至16のアルキルカルボン酸基、炭素数1乃至16のモノ又はジアルキルアミノ基、ニトリル基、フェニル基、ナフタレン基、複素環(ピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、インドール、ピロール、セレノフェン、チアゾール、ベンゾチオフェン等)を示す。但し、DとEが窒素原子の場合、R5とR6は存在しない。二重結合とB、C基の間には、結合に対してオルト位に、例えばCH、CN又はCOのような水素以外の基が常に存在しなければならならず、R3又はR4は水素以外でなければならず、同様にR7又はR8は水素以外でなければならない。R13乃至R17については、隣接する基と環を結んだナフタレン骨格であってもよい。〕
【0014】
前記B基及びC基について更に具体的には、
【化12】

【化13】

【化14】

等が挙げられる。
【0015】
前記一般式(2)又は(3)で示される化合物を更に詳しく説明すると、
マレイン酸無水物系化合物としては、
3,4−ビス(1,2−ジメチル−3−インドリル)フラン−2,5−ジオン、
3,4−ジ(2−メチル−3−ベンゾチオフェン)フラン−2,5−ジオン等があげられる。
シクロペンテン系化合物としては、
1−(1,2−ジメチルインドリル)−2−(2−シアノ−3,5−ジメチル−4−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(3−シアノ−2,5−ジメチル−4−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(1,2,−ジメチル−3−インドリル)−2−(2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(4−メトキシフェニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(2−(4−シアノフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(2−(2−キノリル)−1−エテニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(2−(4−ピリジル)−1−エテニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(2−(1−ナフチル)−1−エテニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−4−オクチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(2−(4−t−ブチルフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(2−(2−ベンゾチアジル)−1−エテニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(4−(4−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(4−(4−メトキシフェニル)−1,3−ブタジチエニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(6−(4−(4−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(6−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(2−(4−シアノフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(2−(4−シアノフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(4−(4−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(6−(2−(4−メトキシフェニル)−1−エテニル)−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(2,4−ジメチル−(5−(4−(4−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル))−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(2−シアノ−3−メトキシ−5−メチルチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン
1,2−ビス(2−メチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2−フェニル−5−メチル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(3−メチルベンゾチオフェン−2−イル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(3−メチル−2−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2−メチル−6−ニトロ−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−2−チエニル)−2−(2−メチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(5−(4−メチルフェニル)−2−メチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−2−(2−メチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(4−メトキシフェニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−5−(4−メチルフェニル)−3−チエニル)−2−(2,4−ジメチル−5−(4−メチルフェニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−5−(4−メトキシフェニル)−3−チエニル)−2−(2,4−ジメチル−5−(4−メトキシフェニル)−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−2−チエニル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチルベンゾチオフェン−2−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−5−メチル−ベンゾチオフェン−3−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−5−フェニル−ベンゾチオフェン−3−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−5−メチル−ベンゾチオフェン−2−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−5−フェニル−ベンゾチオフェン−2−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−6−メチル−ベンゾチオフェン−2−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(3−メチル−6−フェニル−ベンゾチオフェン−2−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−6−メチル−ベンゾチオフェン−3−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、
1−(2−メチル−6−フェニル−ベンゾチオフェン−3−イル)−2−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾイル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン等が挙げられる。
【0016】
前記一般式(5)又は(6)で示される化合物を更に詳しく説明すると、
マレイン酸系化合物としては、2,3−ジ(2−メチルベンゾチエニル)−マレイン酸ジメチル等が挙げられる。
ジシアノエチレン系化合物としては、1,2−ビス(2,3,5−トリメチル−4−チエニル)−1,2−ジシアノエチレン、1,2−ビス(2−メチル−3−ベンゾチエニル)−1,2−ジシアノエチレン等が挙げられる。
【0017】
前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物は、そのままの染料形態、前記化合物を含有する樹脂粒体、或いは前記化合物をマイクロカプセル中に内包させたマイクロカプセル形態の顔料として実用に供することができる。
尚、前記マイクロカプセル形態の顔料は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中界面重合法、スプレ−ドライング法等の適宜の方法により得ることができ、粒子径0.5〜30μm、好ましくは0.5〜10μm程度のものが、分散性、持久性、加工性の面で有効である。
【0018】
前記(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物としては特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載の加熱消色型の可逆熱変色性組成物が利用できる。
前記可逆熱変色性組成物は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、完全消色温度以上の温度域で消色状態、完全発色温度以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する(図1参照)。
【0019】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩を記憶保持できる加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
なお、色彩を記憶保持できる可逆熱変色性組成物として、特開2005−1369号公報に記載されているエステル化合物を用いたものが色濃度−温度曲線に関して広いヒステリシス幅(ΔH=40〜70℃)を示して変色するため、好適である。
前記変色前後の両状態のうち常温域で特定の一方の状態のみ存在させるためには、ヒステリシス幅が40〜70℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃であり、完全消色温度(t)が40℃以上、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、且つ、発色開始温度(t)が20℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下である。
【0020】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる(図3参照)。
【0021】
前記可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200、より好ましくは5〜100の範囲である(前記割合はいずれも重量部である)。
【0022】
前記三成分から少なくともなる均質相溶混合物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を形成することが好ましく、カプセル膜壁で保護することによって酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性を向上させることができる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径0.5〜50μm、好ましくは0.5〜30μmより好ましくは0.5〜10μmの範囲が実用性を満たす。
また、カプセルを微小粒子化することにより、ΔH値は必須3成分の組成物の均質相溶体のΔHと比較し、更にΔHを拡大することができる。
前記マイクロカプセルは、内包物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲が有効であり、壁膜の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、内包物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
【0023】
本発明のジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含む光変色層と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体の均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を含む熱変色層を積層した変色性積層体について説明する。
前記光変色層と熱変色層の一方又は両方が成形体である場合は支持体がなくてもよいが、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含むインキや塗料、可逆熱変色性組成物を含むインキや塗料等の液状物を用いる場合は支持体を必要とする。
支持体は、紙、合成紙、金属、陶磁器、石材、木材、ガラス、樹脂、布帛等の材質から選ばれ、その形状は特に限定されるものではない。
なお、不透明性支持体を用いる場合、支持体上に光変色層と熱変色層を積層する。
透明性支持体を用いる場合、支持体の表面に光変色層と熱変色層を積層する構成の他、支持体の表面に光変色層、裏面に熱変色層を積層する構成、支持体裏面に光変色層と熱変色層を積層して、支持体側から視認する構成であってもよい。
積層構成において、光変色層と熱変色層は積層する順序が限定されるものではなく、例えば、支持体上に光変色層と熱変色層を順次積層する構成の他、支持体上に熱変色層と光熱変色層を順次積層する構成であってもよい。
前述の光変色層と熱変色層の一方又は両方が成形体である場合について説明する。
成形体は可逆熱変色性組成物を、熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂中にブレンドして形成した成形体、或いは、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂中にブレンドして形成した成形体であって、可逆熱変色性組成物を含む成形体表面に、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含むインキや塗料を用いて光変色層を設けて積層体を形成したり、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含む成形体表面に可逆熱変色性組成物を含むインキや塗料を用いて熱変色層を設けて積層体を形成したり、双方が成形体の場合は接合により積層体が形成される。
【0024】
前記積層体の最上層にはトップコート層を設けて耐久性や耐水性を向上させたり、各層の間や最上層に一般の染顔料を含む非変色層(非変色像)を設けたり、各層中に一般の染顔料を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0025】
変色性積層体からなる製品として具体的には、人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具、乗物、動物、植物、建築物、食品等を模した玩具、Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、ふろしき等の布製身の回り品、絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、額縁、造花等の屋内装飾品、布団、枕、マットレス等の寝具、指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ等のアクセサリー、筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、粘着テープ等の文房具類、口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等の台所用品、カレンダー、ラベル、カード、記録材、偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、手袋、ネクタイ、帽子、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、歯ブラシ、コースター、時計、眼鏡、照明器具、冷暖房器具、楽器、カイロ、蓄冷剤、写真立て、財布等の袋物、傘、家具、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、教習具を例示できる。
【0026】
前記変色性積層体のジアリールエテン系フォトクロミック化合物を消色又は変色させる色彩変換手段は、紫外線吸収剤及び/又は紫外線を遮蔽する光遮蔽性顔料を含み、太陽光の紫外線をカットして、可視光の照射により前記発色状態にあるフォトクロミック化合物を消色状態に変位させて維持させるための手段であり、従来より汎用の紫外線吸収剤、光遮蔽性顔料を適用でき、熱可塑性プラスチックや熱硬化性プラスチック等の透明性基材に一体的にブレンドして成形したシート、その他任意形象の成形体を例示できる。
更には、透明性基材表面に紫外線吸収剤及び/又は紫外線を遮蔽する光遮蔽性顔料がバインダー樹脂に溶解又は分散状態に固着された印刷乃至塗布層を設けたシート、その他任意形象の印刷乃至塗布物を例示できる。
なお、前記シートの下層に粘着層を設けたり、透明性シートの下層に紫外線吸収剤及び/又は紫外線を遮蔽する光遮蔽性顔料を含む粘着層を設けたものであってもよい。
更に、色彩変換手段として紫外線吸収剤及び/又は光遮蔽性顔料を配合したペースト状乃至ジェル等の流動体形態のものであってもよい。
【0027】
透明性プラスチックに一体的に紫外線吸収剤を配合する場合、プラスチックの重量に対して、0.001重量%以上、好ましくは、0.01重量%以上の紫外線吸収剤を配合することによって、効果的な紫外線のカット効果の役目を果たす。
又、バインダー樹脂を含む流動体に紫外線吸収剤を溶解又は分散させた流動体を用いる場合、バインダー樹脂に対して、0.05重量%以上、好ましくは、0.1重量%以上の紫外線吸収剤を配合することによって、効果的な紫外線のカット効果の役目を果たす。
一方、光遮蔽性顔料を配合する場合、前記プラスチック或いはバインダー樹脂に対して、0.1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%の割合に配合することにより、所期の紫外線カット効果を効果的に果たす。
【0028】
前記紫外線吸収剤としては、
2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、
2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、
2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、
ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)−メタン2−〔2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−t−アミルフェニル〕−ベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシ−ベンゾフェノン〔商品名:シーソーブ103、シプロ化成(株)製〕、
2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、
2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、
2−〔2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−t−アミルフェニル〕−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤。
【0029】
サリチル酸フェニル、
サリチル酸パラ−t−ブチルフェニル、
サリチル酸パラオクチルフェニル、
2−4−ジ−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、
1−ヒドロキシベンゾエート、
1−ヒドロキシ−3−t−ブチル−ベンゾエート、
1−ヒドロキシ−3−t−オクチルベンゾエート、
レゾルシノールモノベンゾエート等のサリチル酸系紫外線吸収剤。
【0030】
エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3−フェニルシンナート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤。
【0031】
2−〔5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル〕−ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン−PS、チバガイギー社製〕、
2−〔5−メチル−2−ヒドロキシフェニル〕−ベンゾトリアゾール、
2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2Hベンゾトリアゾール、
2−〔3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル〕−ベンゾトリアゾール、
2−〔3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、
2−〔3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、
2−〔3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル〕−ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン328、チバガイギー社製〕、
メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール分子量300〔商品名:チヌビン1130、チバガイギー社製〕、
2−〔3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、
メチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール分子量300、
2−〔3−t−ブチル−5−プロピルオクチレート−2−ヒドロキシフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、
2−〔2−ヒドロキシフェニル−3,5−ジ−(1,1′−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、
2−〔2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、
2−〔3−t−ブチル−5−オクチルオキシカルボニルエチル−2−ヒドロキシフェニル〕−ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン384、チバガイギー社製〕、
2−〔2−ヒドロキシ−5−テトラオクチルフェニル〕−ベンゾトリアゾール、
2−〔2−ヒドロキシ−4−オクトオキシ−フェニル〕−ベンゾトリアゾール、
2−〔2′−ヒドロキシ−3′−(3″4″5″6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル〕−ベンゾトリアゾール、
2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。
【0032】
エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N′−(4−イソドデシルフェニル)、
2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリル−オキシカルボニル)−エチル−7−オキサ−3,20−ジアゾジスピロ(5,1,11,2)ヘンエイコ酸−21−オン等の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0033】
光遮蔽性顔料としては、粒子径が5〜400μmの金属光沢顔料、或いは、粒子径が1μm以下の透明二酸化チタン、透明酸化鉄、透明酸化セリウム、透明酸化亜鉛等を例示でき、一種又は二種以上を適用できる。
前記金属光沢顔料としては、天然雲母、合成雲母、ガラス、アルミナから選ばれる芯物質の表面を金属酸化物で被覆したものを例示でき、可視光線の選択的干渉作用により生じる虹彩効果、透過効果と、光変色層の可視光線の反射効果の相乗作用により、金属光沢調の色彩変化を視覚させることができる。
【0034】
前記変色性積層体は、前記色彩変換手段によって消色又は変色させることができるが、その後、色彩変換手段を除去して紫外線照射具による紫外線照射、或いは紫外線を含む太陽光の照射により発色させて、元の状態に復帰させ、その状態を記憶保持させて視覚させることができる。
【実施例】
【0035】
以下に変色性積層体の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は、重量部を示す。
【0036】
実施例1
変色性積層体の作製
無色から青色に可逆的に色変化するジアリールエテン系フォトクロミック化合物A(1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン)を公知の界面重合法によりエポキシ樹脂膜で内包されたマイクロカプセル顔料(平均粒子径5.0μm)20部を、アクリル樹脂/キシレン溶液30部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部、イソシアネート系硬化剤10部からなるビヒクル中に攪拌混合して光変色性油性スプレー塗料を得た。
これとは別に、(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール6部、(ハ)成分としてセチルアルコール25部、ラウリン酸ステアレート25部からなる可逆熱変色性組成物(35℃以下でピンク色、35℃以上で無色)を混合した後、公知の界面重合法によりエポキシ樹脂膜で内包されたマイクロカプセル顔料(平均粒子径5.0μm)20部を、アクリル樹脂/キシレン溶液30部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部、イソシアネート系硬化剤10部からなるビヒクル中に攪拌混合して熱変色性油性スプレー塗料を得た。
前記熱変色性油性スプレー塗料を用いて、支持体としてABS樹脂を射出成形した車型の白色ミニチュアのボディー表面に熱変色層を設けた後、光変色性油性スプレー塗料を用いて、前記熱変色層上に光変色層を設けて変色性玩具(変色性積層体)を得た。
【0037】
色彩変換手段の作製
紫外線吸収能を有する無色透明のポリエチレン樹脂からなるケース(色彩変換手段)を作製した。
【0038】
前記変色性積層体は常温(25℃)では紫色を呈しており、暗所でも消色することはなかった。前記積層体を35℃以上に加熱すると熱変色層が消色して光変色層による青色の積層体になる。
前記紫色の積層体をケースに入れて太陽光を照射すると、太陽光に含まれる紫外光はケースにより遮断され、それ以外の光(可視光)が照射されるため、光変色層は無色になり、熱変色層によるピンク色の積層体になる。
この状態は、室内、暗所のいずれの場所で放置しても変色することなく、その状態を維持していた。
その後、ケースから取り出して太陽光を照射すると太陽光に含まれる紫外光によって光変色層が青色になるため、再び紫色に変化し、この状態は屋外、室内、暗所のいずれの場所でも変色することなく、その状態を維持した。
また、ケースに入れた状態で35℃以上に加熱すると熱変色層が消色して白色の積層体になる。
【符号の説明】
【0039】
加熱消色型の可逆熱変色性組成物の完全発色温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物の発色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物の消色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物の消色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物の発色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物の完全発色温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含む光変色層と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体の均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を含む熱変色層を積層してなる変色性積層体。
【請求項2】
支持体上に、前記熱変色層と光熱変色層を順次積層してなる請求項1記載の変色性積層体。
【請求項3】
前記支持体が不透明である請求項2記載の変色性積層体。
【請求項4】
前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含んでなる請求項1乃至3のいずれかに記載の変色性積層体。
【請求項5】
前記ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を内包したマイクロカプセル顔料、又は、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を含有する樹脂粒体を含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の変色性積層体。
【請求項6】
前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線に関して40℃乃至70℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色する請求項1乃至5のいずれかに記載の変色性積層体。
【請求項7】
前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T)が40℃以上であり、且つ、最低保持温度(T)が20℃以下である、常温域で色彩記憶性を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の変色性積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126280(P2011−126280A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3783(P2011−3783)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2005−252613(P2005−252613)の分割
【原出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】