説明

変速指示制御装置

【課題】エンジン1のフューエルカットを継続して実施する。
【解決手段】ECU9は、エンジン1のフューエルカットを実施しているか否かを判定する第1判定部93と、第1判定部93によってフューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数Neが、予め設定された回転数閾値Neth未満であるか否かを判定する第2判定部94と、第2判定部94によってエンジン回転数Neが回転数閾値Neth未満であると判定された場合に、変速指示表示部81にダウンシフトをする旨の変速指示を出力する指示制御部95と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動による変速操作が可能な変速機とエンジンとが搭載された車両において、当該車両の走行状態に応じて、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する変速指示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速性能を確保すると共に、燃費性能を向上するために、手動による変速操作が可能な変速機が搭載された車両において、当該車両の走行状態に応じて、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する車両が知られている。
【0003】
一方、EC(European Community:欧州共同体)においては、CO2の排出量を削減するために2012年からGSI(Gear Shift Indicator)の搭載を義務付けることが欧州委員会から提案されている(Results of the review of the Community Strategy to reduce CO2 emissions from passenger cars and light-commercial vehicles:2007年 2月 7日)。
【0004】
例えば、以下に述べる動作を行う変速指示装置が提案されている(特許文献1参照)。まず、車速センサ及びアクセル開度センサの出力信号に基づいて、燃費向上等を図るうえで望ましい走行をするための目標ギヤ位置を、変速線図を参照して求める。そして、求められた目標ギヤ位置と実際のギヤ位置とを比較して、変速操作が必要か否かを判定する。その結果、ギヤ位置をダウンシフト(又はアップシフト)する必要があると判定された場合には、ダウンシフトランプ(又は、アップシフトランプ)を点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−121701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の変速指示装置では、フューエルカットを実施している場合に、エンジン回転数が、フューエルカットを実施するエンジン回転数の下限回転数である復帰回転数未満となってから、ダウンシフトが行われる場合があり、この場合には、フューエルカットの実施による燃費向上効果が充分に活用されないことになる。
【0007】
すなわち、エンジン回転数が、前記復帰回転数より大きい状態で、ダウンシフトが行われる場合には、フューエルカットを継続して実施することができるため、フューエルカットの実施による燃費向上効果を向上することができるのである。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、フューエルカットを継続して実施することの可能な変速指示制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る変速指示制御装置は、以下のように構成されている。
【0010】
すなわち、本発明に係る変速指示制御装置は、手動による変速操作が可能な変速機とエンジンとが搭載された車両において、当該車両の走行状態に応じて、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する変速指示制御装置であって、フューエルカットを実施しているか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段によってフューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数が、予め設定された回転数閾値未満であるか否かを判定する第2判定手段と、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する指示制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、フューエルカットを実施しているか否かが判定され、フューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数が、予め設定された回転数閾値未満であるか否かが判定される。そして、エンジン回転数が前記回転数閾値未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、前記回転数閾値を適正な値に設定することによって、フューエルカットを継続して実施するべくダウンシフトをする旨の変速指示を出力することができる。
【0012】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記回転数閾値が、フューエルカットを終了するエンジン回転数の上限回転数である復帰回転数に、予め設定された正の回転数である余裕回転数を加算した和の値に設定されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、前記回転数閾値が、フューエルカットを実施するエンジン回転数の下限回転数である復帰回転数に、予め設定された正の回転数である余裕回転数を加算した和の値に設定されているため、前記余裕回転数を適正な値に設定することによって、前記回転数閾値を適正な値に設定することができる。
【0014】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記余裕回転数が、ギヤ比が大きい程、大きい値に設定されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、前記余裕回転数が、ギヤ比が大きい程、大きい値に設定されているため、前記回転数閾値を適正な値に設定することができる。
【0016】
すなわち、例えば、車両が一定の加速度で減速している場合には、ギヤ比が大きい程、単位時間(例えば、1秒)当たりのエンジン回転数の低下量は大きい。一方、エンジン回転数が前記回転数閾値まで低下した時点で、ダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、運転者は、エンジン回転数が前記回転数閾値と一致した時点から、復帰回転数に到達する時点までの間に、ダウンシフト操作をする必要がある。したがって、前記余裕回転数が、ギヤ比が大きい程、大きい値に設定されているため、運転者がダウンシフト操作をする期間を、ギヤ比に拘らず略一定とすることができる。その結果、前記回転数閾値を適正な値に設定することができると共に、操作性を向上することができる。
【0017】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、外部から視認可能に文字又は図形を表示する表示手段を備え、前記指示制御手段が、ダウンシフトをする旨の変速指示を、前記表示手段に表示することが好ましい。
【0018】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、ダウンシフトをする旨の変速指示が、外部から視認可能に文字又は図形を表示する表示手段に表示されるため、運転者は、表示された変速指示を視認することによって、運転者は容易に変速指示を認識することができる。
【0019】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記指示制御手段が、ダウンシフトをする旨の変速指示として、前記表示手段に下向きの矢印を点灯表示することが好ましい。
【0020】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、ダウンシフトをする旨の変速指示として、下向きの矢印が点灯表示されるため、運転者は更に容易に変速指示を認識することができる。
【0021】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記指示制御手段が、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以下であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示として、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形を、前記表示手段に表示することが好ましい。
【0022】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、エンジン回転数が前記回転数閾値以下であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示として、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形が表示されるため、利便性を向上することができる。
【0023】
すなわち、通常の変速線図(図5参照)等に基づくダウンシフトの変速指示と識別可能に、エンジン回転数が前記回転数閾値以下であると判定された場合には、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形が表示されるため、運転者は、燃費の向上を意図して変速指示に従ってダウンシフト操作を行うことができるのである。
【0024】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記指示制御手段が、エンジン回転数がフューエルカットを終了するエンジン回転数である復帰回転数以下であること、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定されたこと、車速が略ゼロであること、アクセルがON状態であること、及び、ギヤ位置がニュートラル、1速又はリバースであること、のうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、前記表示手段に表示しているダウンシフトをする旨の変速指示を消去することが好ましい。
【0025】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、エンジン回転数がフューエルカットを終了するエンジン回転数である復帰回転数以下であること、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定されたこと、車速が略ゼロであること、アクセルがON状態であること、及び、ギヤ位置がニュートラル、1速又はリバースであること、のうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、表示されているダウンシフトをする旨の変速指示が消去されるため、ダウンシフトをする旨の変速指示を適正なタイミングで消去することができる。
【0026】
すなわち、例えば、エンジン回転数がフューエルカットを終了するエンジン回転数である復帰回転数以下である場合には、フューエルカットが終了されるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。また、エンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定された場合には、ダウンシフト操作を行わなくてもフューエルカットを継続実施することができるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。更に、車速が略ゼロ(例えば、5km/Hr以下)である場合には、車両が停止状態(又は停止直前の状態)であるため、フューエルカットを継続実施する必要がないので、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。加えて、アクセルがON状態である場合には、フューエルカットが終了されるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。また、ギヤ位置がニュートラル又はリバースである場合には、フューエルカットが行われないため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。ギヤ位置が1速である場合には、そもそも、ダウンシフトをすることができない。
【0027】
また、本発明に係る変速指示制御装置は、前記指示制御手段が、前記第1判定手段によってフューエルカットを実施してないと判定された場合、又は、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値未満であると判定された場合に、車速とアクセル開度又はスロットル開度に基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力することが好ましい。
【0028】
かかる構成を備える変速指示制御装置によれば、フューエルカットを実施してないと判定された場合、又は、エンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定された場合に、車速とアクセル開度又はスロットル開度に基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を適正に出力することができる。
【0029】
すなわち、車速とアクセル開度又はスロットル開度に基づき、例えば、変速線図(図5参照)に従ってアップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、フューエルカットを実施してない場合に、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を適正に出力することができるのである。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る変速指示制御装置によれば、フューエルカットを実施していると判定され、且つ、エンジン回転数が予め設定された回転数閾値未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、前記回転数閾値を適正な値に設定することによって、フューエルカットを継続して実施するべくダウンシフトをする旨の変速指示を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る変速指示制御装置が搭載される車両のパワートレーン及びその制御系統の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示すコンビネーションメータの配設位置の一例を示す側面図である。
【図3】図1に示すコンビネーションメータの一例を示す正面図である。
【図4】図1に示すECUの一例を示す機能構成図である。
【図5】図4に示す変速線記憶部に記憶された変速線の一例を示す変速線図である。
【図6】図3に示す変速指示表示部の表示態様の一例を示す説明図である。
【図7】図4に示すECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】図1に示す変速指示制御装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る変速指示制御装置が搭載される車両のパワートレーン及びその制御系統の一例を示す構成図である。本実施形態に係る車両は、FR(フロントエンジン・リバースドライブ)型の車両であって、エンジン1、手動変速機(マニュアルトランスミッション)2、クラッチ3、シフト装置5、アクセルペダル6、クラッチペダル7、コンビネーションメータ8、及び、ECU(Electronic Control Unit)9等を備えている。また、本実施形態に係る変速指示制御装置100は、コンビネーションメータ8及びECU9等から構成されている。
【0034】
図1に示すように、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11は、クラッチ3に連結されている。また、クラッチ3が継合状態になると、エンジン1の駆動力(駆動トルク)が、クランクシャフト11、クラッチ3、入力軸21、手動変速機2、ドライブシャフト41、差動歯車装置42、及び、車軸43を介して、駆動輪44へ伝達される。
【0035】
また、クランクシャフト11の近傍には、クランクシャフト11の回転数をエンジン回転数Neとして検出するエンジン回転数センサ12が配設されている。エンジン回転数センサ12によって検出されたエンジン回転数Neは、ECU9へ出力される。
【0036】
シフト装置5には、シフトレバー51、及び、シフトポジションセンサ52が配設されている。シフトレバー51は、運転者M(図2参照)によって把持され、シフトポジションを変更する操作が行われるレバーである。シフトポジションセンサ52は、シフト位置を検出するセンサである。アクセルペダル6には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ61が配設されている。更に、クラッチペダル7には、クラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサ71が配設されている。シフトポジションセンサ52によって検出されたシフト位置、アクセル開度センサ61によって検出されたアクセル開度、及び、クラッチストロークセンサ71によって検出されたクラッチストロークは、ECU9へ出力される(図4参照)。
【0037】
−コンビネーションメータ8の構成−
次に、図2、図3を参照して、コンビネーションメータ8について説明する。図2は、図1に示すコンビネーションメータ8の配設位置の一例を示す側面図である。図2に示すように、車体を仮想線(2点鎖線)で表記している。また、コンビネーションメータ8は、車両の前方に、運転者Mが視認可能な位置に配置されている。また、シフトレバー51は、運転者Mの左側に配設され、運転者Mの左手によって把持されて、シフト位置を変更する操作(アップシフト操作、ダウンシフト操作等)が行われる。
【0038】
図3は、図1に示すコンビネーションメータ8の一例を示す正面図である。図3に示すように、コンビネーションメータ8は、変速指示表示部81、スピードメータ82、タコメータ83、水温ゲージ84、フューエルゲージ85、オドメータ86、トリップメータ87、及び、各種のウォーニングランプ等を備えている。
【0039】
変速指示表示部81は、スピードメータ82とタコメータ83との間に配設され、ECU9(ここでは、図4に示す指示制御部95)からの指示に基づいて、運転者Mに対してアップシフト及びダウンシフトをする旨の指示を表示するものである。また、変速指示表示部81は、エコランプ811、ダウンシフトランプ812、及び、アップシフトランプ813を備えている。ここで、変速指示表示部81は、特許請求の範囲に記載の表示手段に相当する。
【0040】
エコランプ811は、燃費の向上を目的として変速指示を出力する場合に点灯(又は、点滅)されるランプであって、例えば、緑色のLED(Light Emitting Diode)等からなる。また、エコランプ811は、ここでは、略楕円形のランプであって、フューエルカットを継続するために、ダウンシフトをする旨の変速指示を行う場合に点灯(又は、点滅)される。
【0041】
ダウンシフトランプ812は、ダウンシフトをする旨の指示を表示する場合に点灯(又は、点滅)されるランプであって、ここでは、例えば、赤色のLED等のバックライトを備え、下向きの矢印の外形をしたランプである。
【0042】
このようにして、ダウンシフトをする旨の変速指示として、下向きの矢印の外形をしたダウンシフトランプ812が点灯表示されるため、運転者は容易に変速指示を認識することができる。
【0043】
本実施形態では、ダウンシフトをする旨の変速指示として、下向きの矢印の外形をしたダウンシフトランプ812が点灯表示する場合について説明するが、ダウンシフトをする旨の変速指示として、その他の方法を用いる形態でもよい。例えば、その他の態様の表示を行う(例えば、下向きの三角▽のランプを点灯する等)形態でもよいし、音声等でメッセージ(例えば、「省エネのために、ダウンシフト操作をして下さい」等のメッセージ)を出力する形態でもよい。
【0044】
アップシフトランプ813は、アップシフトをする旨の指示を表示する場合に点灯(又は、点滅)されるランプであって、ここでは、上向きに矢印の外形をした赤色のLED等からなるランプである。
【0045】
本実施形態では、表示手段が、LED等からなる場合について説明するが、表示手段が、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる形態でもよい。この場合には、多様な表示が可能となり、運転者Mに対して、多くの情報を視認可能に表示することができる。
【0046】
−ECU9の構成−
次に、図4を参照してECU9の機能構成について説明する。図4は、図1に示す車両に搭載されるECU9の一例を示す機能構成図である。ECU9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップRAM等を備えている。
【0047】
ROMは、種々の制御プログラム等を記憶する。CPUは、ROMに記憶された種々の制御プログラムを読み出して各種処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0048】
また、ECU9には、エンジン回転数センサ12、車速センサ13、シフトポジションセンサ52、アクセル開度センサ61、及び、クラッチストロークセンサ71(図1参照)等が通信可能に接続されている。
【0049】
更に、ECU9には、制御対象として、変速指示表示部81(エコランプ811、ダウンシフトランプ812、アップシフトランプ813)等が通信可能に接続されている。そして、ECU9は、各種センサの出力に基づいて、インジェクタの燃料噴射制御、点火プラグの点火時期制御、スロットルモータの駆動制御等を含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0050】
ECU9は、ROMに記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、変速線記憶部91、変速指示部92、第1判定部93、第2判定部94、及び、指示制御部95として機能する。ここで、第1判定部93、第2判定部94、及び、指示制御部95は、本発明に係る変速指示制御装置の一部に相当する。
【0051】
変速線記憶部91は、変速指示部92が、車速及びアクセル開度(又はスロットル開度)に基づいて、適正なギヤ位置(目標ギヤ位置)を求める際に参照する変速線(図4参照)を記憶する記憶部である。
【0052】
ここで、図5を参照して、変速線記憶部91に記憶される変速線の一例について説明する。図5は、図4に示す変速線記憶部91に記憶された変速線の一例を示す変速線図である。図5に示す変速線は、変速指示部92が、車速V及びアクセル開度θに基づいて、適正なギヤ位置(以下、「目標ギヤ位置」ともいう)を求める際に参照されるものであって、ECU9のROM等に記憶されている。
【0053】
図5の横軸は、車速Vであって、縦軸は、アクセル開度θである。図5に示す変速線図では、アップシフト線(変速線)を実線で示し、ダウンシフト線(変速線)を破線で示している。また、アップシフト及びダウンシフトの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
【0054】
実線で示すアップシフト線を跨いで、左側の領域から右側の領域に状態が変化した場合には、変速指示部92によって、アップシフトをする旨の変速指示が出力される。一方、破線で示すダウンシフト線を跨いで、右側の領域から左側の領域に状態が変化した場合には、変速指示部92によって、ダウンシフトをする旨の変速指示が出力される。
【0055】
再び、図4に戻って、ECU9の機能構成について説明する。変速指示部92は、第1判定部93によってフューエルカットを実施してないと判定された場合、又は、第2判定部94によってエンジン回転数Neが回転数閾値Neth以上であると判定された場合に、車速Vとアクセル開度θ(又はスロットル開度φ)に基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する機能部である。ここで、変速指示部92は、特許請求の範囲に記載の指示制御手段の一部に相当する。
【0056】
具体的には、変速指示部92は、車速V及びアクセル開度θに基づいて、変速線記憶部91に記憶された変速線を参照して、目標ギヤ位置を求め、目標ギヤ位置が実際のギヤ位置と一致してない場合に、指示制御部95を介して、アップシフトをする旨の変速指示、又は、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する。
【0057】
例えば、手動変速機2のギヤ位置が「2速」で走行しているときに、車速Vが上昇して、図5に示す点Aから点Bに変化した場合には、変速線[2→3]を跨ぐ変化となるので、変速指示部92によって、変速線図から求められる目標ギヤ位置が「3速」となり、実際のギヤ位置「2速」とは異なる。このような場合には、変速指示部92が、アップシフトをする旨の変速指示を出力する(図6(a)参照)。
【0058】
また、例えば、手動変速機2のギヤ位置が「2速」で走行しているときに、車速Vが低下して、図5に示す点Cから点Dに変化した場合には、変速線[1←2]を跨ぐ変化となるので、変速線図から求められる目標ギヤ位置が「1速」となり、実際のギヤ位置「2速」とは異なる。このような場合には、変速指示部92が、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する(図6(b)参照)。
【0059】
このようにして、車速Vとアクセル開度θに基づき、変速線図(図5参照)に従ってアップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、フューエルカットを実施してない場合に、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を適正に出力することができる。
【0060】
本実施形態では、変速指示部92が、車速Vとアクセル開度θに基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する場合について説明するが、変速指示部92が、車速Vとスロットル開度φに基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する形態でもよい。
【0061】
第1判定部93は、エンジン1においてフューエルカットを実施しているか否かを判定する機能部である。ここで、第1判定部93は、特許請求の範囲の第1判定手段に相当する。なお、フューエルカットは、例えば、以下の全ての条件(条件A〜条件D)を満たす場合に実施される。
条件A:車速Vが予め設定された車速閾値(例えば、10km/Hr)以上である
条件B:ギヤ位置がニュートラル(N)ではなく、リバース(R)でもない
条件C:アクセルがOFF状態である
条件D:エンジン回転数Neが予め設定された閾値(例えば、700rpm)以上である
【0062】
第2判定部94は、第1判定部93によってフューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数Neが、予め設定された回転数閾値Neth未満(例えば、2000rpm)であるか否かを判定する機能部である。ここでは、第2判定部94が、特許請求の範囲に記載の第2判定手段に相当する。
【0063】
また、回転数閾値Nethは、フューエルカットを実施するエンジン回転数Neの下限回転数である復帰回転数Ne0に、予め設定された正の回転数である余裕回転数ΔNeを加算した和の値に設定されている。すなわち、次の(1)式によって、回転数閾値Nethが設定されている。
【0064】
Neth=Ne0+ΔNe (1)
例えば、復帰回転数Ne0が700rpmであって、余裕回転数ΔNeが1300rpmである場合には、回転数閾値Nethは、2000rpmとなる。ここでは、便宜上、余裕回転数ΔNeは、ギヤ比に関わらず常に一定である場合について説明する。
【0065】
このようにして、回転数閾値Nethが、フューエルカットを実施するエンジン回転数の下限回転数である復帰回転数Ne0に、予め設定された正の回転数である余裕回転数ΔNeを加算した和の値に設定されているため、余裕回転数ΔNeを適正な値に設定することによって、回転数閾値Nethを適正な値に設定することができる。例えば、図8を参照して後述するように、余裕回転数ΔNeをギヤ比Rnに反比例するように設定する場合には、操作性を向上することができる。
【0066】
指示制御部95は、第2判定部94によってエンジン回転数Neが回転数閾値Neth未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示(ここでは、便宜上、「エコダウンシフト指示」ともいう)を出力する機能部である。ここで、指示制御部95は、特許請求の範囲に記載の指示制御手段の一部に相当する。また、指示制御部95は、変速指示部92からの指示に基づいて、アップシフトをする旨の変速指示、及び、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する。
【0067】
具体的には、指示制御部95は、変速指示表示部81(エコランプ811、ダウンシフトランプ812、アップシフトランプ813)に、アップシフトをする旨の変速指示、及び、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する。
【0068】
また、指示制御部95は、以下の条件(条件E〜条件I)のうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、エコダウンシフト指示の表示を消去する。
条件E:エンジン回転数Neが復帰回転数Ne0(例えば、700rpm)以下である
条件F:エンジン回転数Neが回転数閾値Neth(例えば、2000rpm)以上である
条件G:車速Vが予め設定された車速閾値Vth(例えば、5km/Hr)以下である
条件H:アクセルがON状態である
条件I:ギヤ位置がニュートラル(N)、1速(1st)又は、リバース(R)である
【0069】
また、フューエルカットを実施していると判定され、且つ、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth未満であると判定された場合に、出力されるダウンシフトをする旨の変速指示であるエコダウンシフト指示として、指示制御部95は、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形を、変速指示表示部81に表示する。具体的には、指示制御部95は、エコダウンシフト指示として、ダウンシフトランプ812の点灯に加えて、エコランプ811を点灯する。すなわち、エコランプ811の点灯が、「燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形の表示」に該当する。
【0070】
このようにして、上記条件E〜条件Iのうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、エコダウンシフト指示が消去されるため、エコダウンシフト指示の表示を適正なタイミングで消去することができる。
【0071】
すなわち、例えば、エンジン回転数Neがフューエルカットを終了するエンジン回転数である復帰回転数Ne0以下である場合には、フューエルカットが終了されるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。また、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth以上であると判定された場合には、ダウンシフト操作を行わなくてもフューエルカットを継続実施することができるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。更に、車速Vが車速閾値Vth(例えば、5km/Hr)である場合には、車両が停止状態(又は停止直前の状態)であるため、フューエルカットを継続実施する必要がないので、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。加えて、アクセルがON状態である場合には、フューエルカットが終了されるため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。また、ギヤ位置がニュートラル(N)又は、リバース(R)である場合には、フューエルカットが行われないため、ダウンシフトをする旨の変速指示する必要性がない。ギヤ位置が1速である場合には、そもそも、ダウンシフトをすることができない。
【0072】
本実施形態においては、指示制御部95が、上記条件E〜条件Iのうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、エコダウンシフト指示の表示を消去する場合について説明するが、指示制御部95が、上記条件E〜条件Iに換えて(又は加えて)その他の条件を満たす場合にエコダウンシフト指示の表示を消去する形態でもよい。例えば、指示制御部95が、エコダウンシフト指示の表示が開始された時点から予め設定された期間(例えば、3秒間)が経過した時点で、エコダウンシフト指示の表示を消去する形態でもよい。
【0073】
−変速指示表示部81の表示態様−
図6は、図3に示す変速指示表示部81の表示態様の一例を示す説明図である。なお、ここでは、便宜上、ランプが点灯していることを、斜線を付して表している。図6(a)は、アップシフトをする旨の変速指示であって、アップシフトランプ813だけが点灯される態様である。
【0074】
図6(b)は、エコダウンシフト指示ではない、ダウンシフトをする旨の変速指示であって、ダウンシフトランプ812だけが点灯される態様である。図6(c)は、エコダウンシフト指示であって、エコランプ811及びダウンシフトランプ812が点灯される態様である。以下、図6(c)の態様を、「エコダウンシフト表示」ともいう。
【0075】
このようにして、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth以下であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示(エコダウンシフト指示)として、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形が表示される(ここでは、エコランプ811が点灯される)ため、利便性を向上することができる。
【0076】
すなわち、通常の変速線図(図5参照)等に基づくダウンシフトの変速指示と識別可能に、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth以下であると判定された場合には、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形が表示される(ここでは、エコランプ811が点灯される)ため、運転者は、燃費の向上を意図して変速指示に従ってダウンシフト操作を行うことができるのである。
【0077】
なお、本実施形態では、指示制御部95が、エコダウンシフト指示としてエコランプ811を点灯する場合について説明するが、指示制御部95が、エコダウンシフト指示として燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形を表示する形態であればよい。例えば、変速指示表示部81がLCDを備える場合には、LCDに燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字(例えば、「燃費向上」、「低燃費」、「省エネ」、「エコ」、「ECO」等)を表示する形態でもよいし、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す画像(例えば、アイコン、シンボルマーク等)又は、動画像を表示する形態でもよい。
【0078】
−ECU9の動作−
次に、図7を参照して、本発明に係るECU9の動作を説明する。図7は、図4に示すECU9の動作の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS101において、指示制御部95によって、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne0より大であるか否かの判定が行われる。ステップS101でYESの場合には、処理がステップS103へ進められる。ステップS101でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0079】
ステップS103において、指示制御部95によって、車速Vが車速閾値Vth以上であるか否かの判定が行われる。ステップS103でYESの場合には、処理がステップS105へ進められる。ステップS103でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0080】
ステップS105において、指示制御部95によって、アクセルがOFF状態であるか否かの判定が行われる。ステップS105でYESの場合には、処理がステップS107へ進められる。ステップS105でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0081】
ステップS107において、指示制御部95によって、ギヤ位置がニュートラル(N)、1速(1st)、リバース(R)以外であるか否かの判定が行われる。ステップS107でYESの場合には、処理がステップS109へ進められる。ステップS107でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0082】
ステップS109において、第1判定部93によって、フューエルカットを実施しているか否かの判定が行われる。ステップS109でYESの場合には、処理がステップS111へ進められる。ステップS109でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0083】
ステップS111において、第2判定部94によって、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth未満であるか否かの判定が行われる。ステップS111でYESの場合には、処理がステップS113へ進められる。ステップS111でNOの場合には、処理がステップS115へ進められる。
【0084】
ステップS113において、指示制御部95によって、エコダウンシフト表示が変速指示表示部81に表示されて、処理がステップS101へリターンされ、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。ステップS115において、指示制御部95によって、変速指示表示部81のエコダウンシフト表示が消去されて、処理がステップS101へリターンされ、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。
【0085】
このようにして、フューエルカットを実施しているか否かが判定され、フューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数Neが、予め設定された回転数閾値Neth未満であるか否かが判定される。そして、エンジン回転数Neが回転数閾値Neth未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示が出力されるため、回転数閾値Nethを適正な値に設定することによって、フューエルカットを継続して実施するべくダウンシフトをする旨の変速指示を出力することができる。
【0086】
−変速指示制御装置100の動作−
図8は、図1に示す変速指示制御装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。図8において、6つのグラフの横軸は全て時間tであって、縦軸は、上から順に、アクセル開度θ、車速V、ギヤ位置、エコダウンシフト表示、及び、エンジン回転数Neである。アクセル開度θは、ここでは、「0」であって、アクセルがOFF状態に維持されている。車速Vは、一定加速度で低下している。
【0087】
初期状態において、ギヤ位置は、「5速」であって、フューエルカットが実施されている。なお、車速Vが一定加速度で低下しているため、ギヤ位置が一定の場合には、エンジン回転数Neは、ギヤ位置に応じた傾きで低下することになる。ギヤ比が大きい程、単位時間(例えば、1秒)当たりのエンジン回転数Neの低下量ΔNdは大きい。ここで、1速から5速までのギヤ比をそれぞれRn(n=1〜5)と表すと、低下量ΔNdと、ギヤ比Rnとは、次の(2)式の関係が成立する。
ΔNd=A×Rn (2)
ここで、Aは、定数である。一方、車速Vが一定加速度で低下しているため、低下量ΔNdも一定である。回転数閾値Nethと復帰回転数Ne0との差は、余裕回転数ΔNeであるから、エンジン回転数が回転数閾値Nethに到達した時点から、復帰回転数Ne0に到達するまでの期間Tnは、次の(3)式で表される。
Tn=ΔNe/ΔNd (3)
(3)式に(2)式を代入すると次の(4)式が得られる。
Tn=ΔNe/(A×Rn) (4)
すなわち、期間Tnは、ギヤ比Rnに反比例する。ギヤ比Rnが小さい程、期間Tnが長くなるので、エコダウンシフト表示が表示されてから、運転者が、ダウンシフト操作をするまでの許容時間(期間Tn)が長くなる。
【0088】
本実施形態では、余裕回転数ΔNeがギヤ比Rnに関わらず一定である場合について説明するが、余裕回転数ΔNeがギヤ比Rnが大きい程、大きい値に設定されている形態でもよい。例えば、余裕回転数ΔNeとギヤ比Rnとが、次の(5)式を満たすとする。
ΔNe=B×Rn (5)
ここで、Bは、定数である。(5)式を(4)式に代入すると次の(6)式が得られる。
Tn=B/A (6)
したがって、この場合には、エンジン回転数が回転数閾値Nethに到達した時点から、復帰回転数Ne0に到達するまでの期間Tn、すなわち、エコダウンシフト表示が表示されてから、運転者がダウンシフト操作をするまでの許容時間が、ギヤ比Rnに関わらず一定となるため、操作性を向上することができる。
【0089】
次に、図8を参照して、変速指示制御装置100の動作の一例を説明する。まず、時点t51において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethに到達するため、エコダウンシフト表示が点灯される。そして、時点t52において、運転者によって、「5速」から「4速」にダウンシフト操作が行われる。その結果、エンジン回転数Neが増大し、時点t53において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethを越えるため、エコダウンシフト表示が消灯される。
【0090】
次に、時点t41において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethに到達するため、エコダウンシフト表示が点灯される。そして、時点t42において、運転者によって、「4速」から「3速」にダウンシフト操作が行われる。その結果、エンジン回転数Neが増大し、時点t43において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethを越えるため、エコダウンシフト表示が消灯される。
【0091】
次いで、時点t31において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethに到達するため、エコダウンシフト表示が点灯される。そして、時点t32において、運転者によって、「3速」から「2速」にダウンシフト操作が行われる。その結果、エンジン回転数Neが増大し、時点t33において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethを越えるため、エコダウンシフト表示が消灯される。
【0092】
更に、時点t21において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethに到達するため、エコダウンシフト表示が点灯される。そして、時点t22において、運転者によって、「2速」から「1速」にダウンシフト操作が行われる。その結果、エンジン回転数Neが増大し、時点t23において、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethを越えるため、エコダウンシフト表示が消灯される。
【0093】
このようにして、エンジン回転数Neが回転数閾値Nethに到達した時点でエコダウンシフト表示が点灯され、運転者によってダウンシフト操作が行われるため、「1速」にダウンシフト操作が行われた後、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne0に到達する時点t11まで、フューエルカットを継続して実施することができる。
【0094】
なお、例えば、ギヤ位置が「5速」の場合に、運転者によって、「5速」から「4速」にダウンシフト操作が行われない場合には、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne0に到達する時点T54でフューエルカットの実施が終了されることになる。同様に、ギヤ位置が「4速」の場合に、運転者によって、「4速」から「3速」にダウンシフト操作が行われない場合には、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne0に到達する時点T44でフューエルカットの実施が終了されることになる。
【0095】
−他の実施形態−
上記実施形態においては、ECU9が、変速線記憶部91、変速指示部92、第1判定部93、第2判定部94、及び、指示制御部95等の機能部を備える場合について説明したが、変速線記憶部91、変速指示部92、第1判定部93、第2判定部94、及び、指示制御部95のうち、少なくとも1つが、電子回路等のハードウェアで構成されている形態でもよい。
【0096】
なお、本実施形態では、車両が運転者のクラッチ操作によって変速するマニュアル車である場合について説明したが、車両が自動クラッチを備える形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、手動による変速操作が可能な変速機とエンジンとが搭載された車両において、当該車両の走行状態に応じて、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する変速指示制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 変速指示制御装置
1 エンジン
12 エンジン回転数センサ
13 車速センサ
2 手動変速機(マニュアルトランスミッション)
3 クラッチ
5 シフト装置
52 シフトポジションセンサ
6 アクセルペダル
61 アクセル開度センサ
7 クラッチペダル
71 クラッチストロークセンサ
8 コンビネーションメータ
81 変速指示表示部(変速指示制御装置の一部)
811 エコランプ
812 ダウンシフトランプ
813 アップシフトランプ
9 ECU(変速指示制御装置の一部)
91 変速線記憶部
92 変速指示部(指示制御手段の一部)
93 第1判定部(第1判定手段)
94 第2判定部(第2判定手段)
95 指示制御部(指示制御手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動による変速操作が可能な変速機とエンジンとが搭載された車両において、当該車両の走行状態に応じて、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力する変速指示制御装置であって、
フューエルカットを実施しているか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段によってフューエルカットを実施していると判定された場合に、エンジン回転数が、予め設定された回転数閾値未満であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値未満であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示を出力する指示制御手段と、を備えていることを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速指示制御装置において、
前記回転数閾値は、フューエルカットを実施するエンジン回転数の下限回転数である復帰回転数に、予め設定された正の回転数である余裕回転数を加算した和の値に設定されていることを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変速指示制御装置において、
前記余裕回転数は、ギヤ比が大きい程、大きい値に設定されていることを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の変速指示制御装置において、
外部から視認可能に文字又は図形を表示する表示手段を備え、
前記指示制御手段は、ダウンシフトをする旨の変速指示を、前記表示手段に表示することを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変速指示制御装置において、
前記指示制御手段は、ダウンシフトをする旨の変速指示として、前記表示手段に下向きの矢印を点灯表示することを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の変速指示制御装置において、
前記指示制御手段は、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以下であると判定された場合に、ダウンシフトをする旨の変速指示として、燃費の向上を目的とした変速指示であることを示す文字又は図形を、前記表示手段に表示することを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1つに記載の変速指示制御装置において、
前記指示制御手段は、エンジン回転数がフューエルカットを終了するエンジン回転数である復帰回転数以下であること、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定されたこと、車速が略ゼロであること、アクセルがON状態であること、及び、ギヤ位置がニュートラル、1速又はリバースであること、のうち、少なくとも1つの条件を満たす場合に、前記表示手段に表示しているダウンシフトをする旨の変速指示を消去することを特徴とする変速指示制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の変速指示制御装置において、
前記指示制御手段は、前記第1判定手段によってフューエルカットを実施してないと判定された場合、又は、前記第2判定手段によってエンジン回転数が前記回転数閾値以上であると判定された場合に、車速とアクセル開度又はスロットル開度に基づき、アップシフト又はダウンシフトをする旨の変速指示を出力することを特徴とする変速指示制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219892(P2012−219892A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85217(P2011−85217)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】