説明

外壁パネルおよびその製作方法

【課題】 目地を含む接合部の止水性が良好であり、かつ施工工数を削減し、施工を容易にすることができる外壁パネルおよびその製作方法を提供する。
【解決手段】 本発明の外壁パネルPは、外装材3とパネルフレーム1との間に内部止水部材5が配設されてなるものである。その製作は、型枠K内にコンクリート11を打設し、打設されたコンクリート11に内部止水部材5およびアンカー2aを有するパネルフレーム1を所定量降下させ、アンカー2aをコンクリート11に埋設するとともに、内部止水部材5をコンクリート11に接触させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルおよびその製作方法に関する。さらに詳しくは、目地部における止水性が向上されてなる外壁パネルおよびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート板等からなる外装材と断熱材等とを、パネルフレームに取り付けてパネル化したいわゆる外壁パネルを用いた建物の外壁構造においては、目地部の止水は、一般的には、下記のような3通り施工方法によりなされている。
【0003】
第1の方法は、図7に示すように、目地101に比較的固めの止水材102を設置した後、設置された止水材102に両側から高い圧力をかけた状態で外装材103、104を固定することにより止水するものである。
【0004】
第2の方法は、図8に示すように、両側の外装材111、112を固定した後、例えばシリコーンゴム等の弾性材からなる止水フィン付ガスケット113を、外装材111、112の端面間に圧入することにより目地を止水するものである。
【0005】
第3の方法は、図9に示すように、両側の外装材121、122を固定した後、例えば膨張性のある発泡ゴム等の弾性材からなるガスケット123を、外装材121、122の端面間に圧入することにより目地を止水するものである。
【0006】
しかしながら、前記第1の方法においては、止水材102に両側から高い圧力を掛けながら外装材103、104を固定する必要があり、作業に熟練を要するとともに、外装材103、104の端面が平滑でない場合には、良好な止水性が得られないといった問題がある。
【0007】
また、第2の方法においても、外装材111、112の端面との摩擦力に抗してガスケット113を圧入する必要があり、作業が煩雑であるとともに、外装材111、112の端面が平滑でない場合には、良好な止水性が得られないといった問題がある。
【0008】
また、第3の方法においても、外装材121、122の端面との摩擦力に抗してガスケット123を圧入する必要があり、作業が煩雑であるとともに、外装材121、122の端面が平滑でない場合には、良好な止水性が得られないといった問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、目地を含む接合部の止水性が良好であり、かつ施工工数を削減し、施工を容易にすることができる外壁パネルおよびその製作方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の外壁パネルは、外装材をパネルフレームに保持してなる外壁パネルであって、前記外装材と前記パネルフレームとの間に内部止水部材が配設されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の外壁パネルにおいては、内部止水部材が独立気泡を有する発泡体とされ、外装材に面する面が前記独立気泡を切断して形成された多数の穴を有してなるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の外壁パネルにおいては、内部止水部材のパネルフレームに面する面に粘着層が形成されてなるのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の外壁パネルにおいては、外装材の端面に目地止水部材が配設されてなるのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の外壁パネルにおいては、パネルフレームに柱部止水部材が配設されてなるのが好ましい。
【0015】
本発明の外壁パネルの製作方法は、外装材をパネルフレームに保持してなる外壁パネルの製作方法であって、型枠内にコンクリートを打設する手順と、 打設されたコンクリートの上方所定位置にアンカーを有する保持具および内部止水部材が装着されたパネルフレームをセットする手順と、前記パネルフレームを所定量降下させ、アンカーをコンクリートに埋設するとともに、内部止水部材をコンクリートに接触させる手順と、所定の養生の後、脱型する手順とを含んでいることを特徴とする。
【0016】
本発明の外壁パネルの製作方法においては、パネルフレームを所定量降下させた後、該パネルフレームに水平振動を与えるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の外壁パネルの製作方法においては、型枠内に目地止水部材が装着される受け部材を配設する手順が付加されているのが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の外壁パネルの製作方法においては、パネルフレームに柱部止水部材が装着されているのが好ましい。
【0019】
しかして、本発明の外壁パネルは、外壁構造に備えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の外壁パネルは、前記の如く構成されているので、外壁パネルを据付けるだけで、目地を含む接合部における止水がなし得るという優れた効果が得られる。
【0021】
また、外壁パネルを据付けるだけで、目地を含む接合部における止水がなし得るので、止水のための特段の施工が不要となり、施工が簡素化されて施工期間が短縮されるという優れた効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係る外壁パネルを用いた外壁構造の接合部を水平断面図で示す。
【0024】
接合部Jは、図1および図2に示すように、図中左側外壁パネル(以下、単に左側外壁パネルという)PLと図中右側外壁パネル(以下、単に右側外壁パネルという)PRとを鉄骨Cを挟んで接合してなるものとされる。
【0025】
ここで、左側外壁パネルPLと右側外壁パネルPRとは、同一構成とされているので、以下、左側外壁パネルPLについてのみ説明し、右側外壁パネルPRの説明は省略する。
【0026】
左側外壁パネルPLは、パネルフレーム1と、パネルフレーム1に保持具2を介して装着された外装材3と、外装材3の右側端面に設けられた目地止水部材4と、パネルフレーム1と外装材3との間の止水をなす内部止水部材5と、外装材3の背後でパネルフレーム1に嵌め込まれた屋内側表面に防湿シートが貼付された断熱材6とを備えてなるものとされる。
【0027】
パネルフレーム1は、アングル材をフレーム状に形成した公知構造のものとされる。
【0028】
保持具2は、外装材3に埋設されたアンカー2aをパネルフレーム1に設けられた保持部材2bにボルト・ナット留めにて保持する公知構造のものとされる。
【0029】
外装材3は、例えばGRC板などのコンクリート板3aの表面にタイル3bを貼り付けしてなるものとされる。
【0030】
目地止水部材4は例えばシリコーンゴムからなり、図2に示すように、基部4aと、基部4aから一体的に溝状に形成された止水部4bとを有するものとされる。目地止水部材4は、止水部4bを構成している止水フィン4cが、右側外壁パネルPRの外装材3の左側端面に当接することにより目地7の止水をなすものとされる。
【0031】
また、目地止水部材4の外装材3への装着は、例えば外装材3の右側端部に受け部材4dを埋め込んでおき、その受け部材4dに目地止水部材4の基部4aを嵌め込むことによりなされる(図2参照)。
【0032】
内部止水部材5は、気泡構造が止水性の高い独立気泡(単独気泡)とされた合成樹脂(例えばウレタンまたはエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM))の発泡体からなる断面方形の長棒状部材であり、特に圧力が掛けられることなく止水するものとされる。
【0033】
また、図3に示すように、内部止水部材5は、1面に設けられた粘着層5aを有しており、この粘着層5aにより、平滑面であるパネルフレーム1の1辺の外側面1aに、その内側に沿って接着されるものとされる。一方、内部止水部材5のパネルフレーム1と接着される面と反対の面、つまり外装材3側の面5bは、コンクリート板3aとの接着性をよくして止水性の向上を図るため、図3に示すように、独立気泡をカットしてなる無数の微細な穴5cが形成された面とされる。
【0034】
断熱材6は、外装材3背面と所定の隙間を空けてパネルフレーム1に取り付けられる。
【0035】
以下、図4〜図6を参照しながら、外壁パネル準備体Mの製作について説明する。ここで、外壁パネル準備体Mとは、パネルフレーム1に外装材3が装着された状態のものをいう。
【0036】
手順1:所定位置に受け部材が配設された型枠K内にコンクリート導入管Qからのコンクリート11を打設する(図4参照)。
【0037】
手順2:保持具2および内部止水部材5が装着されたパネルフレーム1を打設されたコンクリート11の上方所定位置にセットする(図5参照)。
【0038】
手順3:パネルフレーム1を所定量降下させ、保持具2のアンカーをコンクリートに所定量埋め込むとともに、内部止水部材5の穴5cが形成された面5bをコンクリートに接触させる(図6参照)。この手順は、コンクリート打設後、すみやかになされるのが好ましい。
【0039】
手順4:内部止水部材5とコンクリートとの界面を密着させ、部分的な不陸が生じないようにするため、パネルフレーム1が所定量降下した時点でパネルフレーム1に若干水平振動を与える。
【0040】
手順5:所定の養生の後、脱型する。これにより、外壁パネル準備体Mが完成する。
【0041】
得られた外壁パネル準備体Mにおける内部止水部材5と外装材3との接合部における止水性能を確認するため、内部止水部材5と外装材3との界面に向けて、150mmAq程度の水圧の散水を約3分間行ったが、反対側への漏水は一切認められなかった。
【0042】
しかして、かかる構成とされた外壁パネルPを用いた外壁構造の接合部Jの止水は、目地止水部材4により目地における一次止水がなされ、内部止水部材5およびパネルフレーム1と鉄骨Cとの間に配設された柱部止水部材8により二次止水がなされる。なお、柱部止水部材8としては、たとえば疎水性ウレタン発泡体からなるものが用いられる。
【0043】
このように、本実施形態の外壁パネルPを用いた外壁構造の接合部Jの止水は、目地止水部材4により一次止水がなされ、内部止水部材5および柱部止水部材により二次止水がなされるので、外壁構造の接合部Jにおける止水性能が向上する。しかも、目地止水部材4および内部止水部材5は、外壁パネルPの製作時に外壁パネルPに装着されるので、施工現場における作業を不要とでき、品質の均質化、施工の簡素化および施工期間の短縮が図られる。この場合、柱部止水部材8も外壁パネルPの製作時にパネルフレーム1に装着しておくことにより、施工のより一層の簡素化および施工期間の短縮が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、パネル化工法による外壁構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る外壁パネルを用いた外壁構造の接合部の水平断面図である。
【図2】同要部拡大図である。
【図3】内部止水部材の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る外壁パネルの製作手順の説明図であって、型枠内にコンクリートを打設している様子を示す。
【図5】同説明図であって、打設されたコンクリートの上方所定位置にパネルフレームをセットした様子を示す。
【図6】同説明図であって、パネルフレームを所定量降下させて内部止水部材をコンクリートと接触ささせた様子を示す。
【図7】従来の目地の止水構造の一例を示す水平断面図である。
【図8】従来の目地の止水構造の他の例を示す水平断面図である。
【図9】従来の目地の止水構造のさらに他の例を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 パネルフレーム
2 保持具
3 外装材
4 目地止水部材
5 内部止水部材
6 断熱材
7 目地
8 柱部止水部材
11 コンクリート
J 接合部
P 外壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材をパネルフレームに保持してなる外壁パネルであって、
前記外装材と前記パネルフレームとの間に内部止水部材が配設されてなることを特徴とする外壁パネル。
【請求項2】
内部止水部材が独立気泡を有する発泡体とされ、外装材に面する面が前記独立気泡を切断して形成された多数の穴を有してなることを特徴とする請求項1記載の外壁パネル。
【請求項3】
内部止水部材のパネルフレームに面する面に粘着層が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の外壁パネル。
【請求項4】
外装材の端面に目地止水部材が配設されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁パネル。
【請求項5】
パネルフレームに柱部止水部材が配設されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁パネル。
【請求項6】
外装材をパネルフレームに保持してなる外壁パネルの製作方法であって、
型枠内にコンクリートを打設する手順と、
打設されたコンクリートの上方所定位置にアンカーを有する保持具および内部止水部材が装着されたパネルフレームをセットする手順と、
前記パネルフレームを所定量降下させ、アンカーをコンクリートに埋設するとともに、内部止水部材をコンクリートに接触させる手順と、
所定の養生の後、脱型する手順
とを含んでいることを特徴とする外壁パネルの製作方法。
【請求項7】
パネルフレームを所定量降下させた後、該パネルフレームに水平振動を与えることを特徴とする請求項6記載の外壁パネルの製作方法。
【請求項8】
型枠内に目地止水部材が装着される受け部材を配設する手順が付加されていることを特徴とする請求項6記載の外壁パネルの製作方法。
【請求項9】
パネルフレームに柱部止水部材が装着されていることを特徴とする請求項6記載の外壁パネルの製作方法。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の外壁パネルを備えてなることを特徴とする外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−39959(P2007−39959A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224858(P2005−224858)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】