説明

外壁材および該外壁材を用いた建物

【課題】 施工性が良く、コストが低いと共に、強度の大きい外壁材と、この外壁材を使用した耐久性に優れた住宅等の建物を提供する。
【解決手段】 外壁材10は、セラミック板11と、セラミック板の裏面に位置する厚さが0.1〜1mmの金属板12と、金属板の裏面にさらに位置する厚さが9〜15mmの石膏ボード13とを積層して一体化して構成される。石膏ボード13の裏面側に、さらに裏面金属板14を位置させ、裏面金属板14と金属板12とにより石膏ボード13を巻回すると好ましい。この外壁材10は、その一辺方向の長さWが800mm以上であることが好ましい。セラミック板の厚さは3〜10mm程度が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材および該外壁材を用いた建物に係り、特に、表面にセラミック板を用いており耐久性に優れ、軽量で施工が容易な長尺の外壁材と、この外壁材を用いた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の外壁材として、特許文献1に記載の陶磁器板の製造方法で製造された陶磁器板は、成形機から抜出された、断面が曲線を有する筒状の生地を開いて板状生地とし、該板状生地を成形機からの抜出し方向と同一方向に圧延したのち乾燥し、抜出し方向が搬送方向となるようにローラーハースキルンで焼成されている。
【0003】
また、他の外壁材として、例えば、特許文献2に記載の大中形タイルPC板先付複合パネルは、陶磁器質タイル板に添わせて、PC板(プレキャストコンクリート板)を打設し一体として成形し、タイル板とPC板の中間の所定の面積に、高弾性板状応力吸収材を、挿入接着し、所定の面積以外の面積には、周辺部の他、断面が円又は楕円ないしはそれらの近似形状である柱状の、タイル板とPC板の直接接着部を不連続に配設している。
【0004】
さらに、石膏ボードと金属薄板とを組み合わせた、特許文献3に記載の複合板は、石膏ボード等の片面に接着剤を含有せしめたシート層を設け、該シート層面にエンボス加工による凹凸模様を有する金属薄板を積層すると共に、該凹凸模様をシート層、および石膏ボードにくい込ませて一体化している。
【0005】
【特許文献1】特公平1−60403号公報
【特許文献2】特開平3−261510号公報
【特許文献3】特公昭61−58623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記構造の外壁材を、例えば住宅の外壁として使用する場合、構造体は強度、コストの点から外壁全体の厚さが30mm以下であることが好ましいが、前記の外壁材は全体の厚さが30mmを超えるものが多く、重量が大きいため施工性が悪い。大型のセラミック板を外壁に使用するためには、外壁材の施工性や、防火性を備えると共に強度を確保するために他のベースとなる素材と複合させることが好ましいが、前記の外壁板は強度的に弱い問題がある。
【0007】
強度を向上させるためにコンクリート板と複合することは、外壁材の厚さの制約で好ましくない。また、金属板と複合することは、金属板材を所定の剛性が得られるまで厚くすると、温度変化による線膨張率差でセラミック板が割れるという問題が発生する。さらに、ケイカル板などと複合すると、吸水による寸法変化率差が大きいためセラミック板が割れたり、大きく反ったりする問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、重量が小さいため施工性が良く、コストが低く、強度が大きく、割れや欠けが生じにくいとともに、断熱性にも優れた外壁材を提供することにある。また、前記の外壁材を使用し、耐久性に優れていると共に、外観の見栄えを向上できる住宅等の建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、施工性が良く、コストが低く、強度が大きく耐久性に優れた外壁材につき鋭意研究を重ねた結果、以下の特徴を有する本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の請求項1に記載の発明による外壁材は、セラミック板と、該セラミック板の裏面に位置する厚さが0.1〜1mmの金属板と、該金属板の裏面にさらに位置する厚さが9〜15mmの石膏ボードとを積層して一体化したことを特徴とする。接着剤を用いて一体化することが好ましい。セラミック板の厚さは、特に限定されないが3〜10mm程度が好ましい。
【0010】
前記のごとく構成された本発明の外壁材は、積層して一体化した全体の厚さが30mm以下となり重量を小さく形成でき施工が容易となる。また、金属板材が所定の強度を有しているため、施工時に湾曲することが少なく施工性が向上する。さらに、住宅等の建物の外壁材として使用したとき、目地が少なくなってシンプルな外観にできる。そして、防火性能に優れており、大きな温度変化が加わっても反り等の変形が少なく、亀裂等の割れが発生することを防止でき、耐久性を向上できる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明による外壁材は、前記石膏ボードの裏面側に、さらに裏面金属板を位置させ、該裏面金属板と石膏ボードの表面側の金属板により石膏ボードの外周を巻回させたことを特徴としている。この場合、金属板の厚さは、2枚を合わせて1〜2mmとなることが好ましい。このように構成された外壁材は、石膏ボードの外周を鋼板等の金属板で覆っているため、比較的薄い金属板でも強度を向上できて好ましい。また、石膏ボードの外周を覆っているため、衝撃で割れやすい石膏ボードの短所を補うことができ、施工が容易となる。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の発明による外壁材は、その一辺方向の長さが800mm以上であることを特徴としている。特に、外壁材は、その一辺方向の長さが800mm以上で1m以下であることが好ましく、他辺方向の長さは800〜3000mm程度が好ましい。この構成によれば、一辺方向の長さが大きく、縦目地の数を少なくできるため施工しやすくなると共に、漏水のおそれが少なくなって住宅等の建物の耐久性を向上させることができると共に、外観をシンプルにすることができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項4に記載の発明による外壁材は、前記セラミック板が1200℃以上で焼成されていることを特徴としている。セラミック板をこのような高温で焼成することにより、吸水性を大幅に小さくすることができる。この外壁材を住宅等の建物に使用することにより、吸水による接着強度の低下が防止でき、凍結も防止できて建物の耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項5に記載の発明による外壁材は、前記セラミック板の表面の釉薬で被覆されていない部分が前記表面全体の20%以上であることを特徴としている。20%以上で90%以下が最適である。釉薬で被覆されていなくても、外壁材を高温で焼成することにより表面からの吸水を防止できる。外壁材の表面が釉薬で被覆されていないと、光沢が無くなり質感が向上するため、この外壁材を施工した建物を重厚に仕上げることができる。特に、20%以上の無光沢の部分を表面に形成することで建物等の重厚感を増すことができる。
【0015】
本発明の請求項6に記載の発明による建物は、前記した請求項1〜5のいずれかに記載の外壁材を構造体の外周に固定したことを特徴としている。このように構成された建物は、外壁材の固定施工が容易に行え、耐久性が向上する。また、タイル等の外壁と比較して外観を意匠的にシンプルに仕上げることができる。
【0016】
本発明の請求項7に記載の発明による建物は、前記した請求項1〜5のいずれかに記載の外壁材と、複数個のタイルを配列した外壁材を構造体の外周に固定したことを特徴としている。特に、タイルは300mm×300mm以下のもの、特に、100mm×100mm程度あるいは100mm×200mm程度のものが好ましい。このように構成された建物は、耐久性を向上できると共に、単調な外観を払拭して変化のある外観とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載された外壁材は、基準となるモジュール内に目地が存在しない外壁面を形成することができる。この外壁材は重量の大きいセラミック板の厚さを薄く設定しているため、外壁材全体の重量を少なくでき施工が容易となる。また、外壁材の変形を防止する金属板の厚さを設定することで、外壁材の湾曲を少なくすると共に重量増加を少なくできる。
【0018】
本発明の請求項2に記載された外壁材は、石膏ボードを表面側の金属板と裏面金属板で巻回しているため、石膏ボードの割れや欠けを防止でき施工が容易となり、施工後の見栄えを向上させることができる。また、0.2mm程度の金属板で石膏ボードを巻回すると、比較的小さい重量で所定の強度を得ることができるため、外壁材の湾曲が防止されるため施工が容易となる。
【0019】
本発明の請求項3に記載された外壁材は、長尺状で短辺方向の長さが800mm以上であるため、建物の外壁材として施工したとき、目地部を少なくすることができ外観をシンプルに仕上げることができると共に目地部の処理が少なくなり施工が容易となる。そして、漏水等のおそれを少なくできるので耐久性を向上でき、補修等も容易に行うことができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載された外壁材は、表面のセラミック板が高温で焼成され、吸水率が低くなっているため、積層して一体化する接着剤の強度低下を防止することができる。また、この外壁材は水分を含みにくいため、凍結や、凍結による亀裂の発生を防止することができ、建物の耐久性を向上できる。
【0021】
本発明の請求項5に記載された外壁材は、表面に位置するセラミック板の表面の釉薬で被覆されていない部分が表面全体の20%以上であり、表面の光沢を無くした部分を形成しているため、外壁材の表面に重厚感を与えることができ、この外壁材を施工した建物の重厚感を向上できる。
【0022】
本発明の請求項6に記載された建物は、前記したいずれかに記載の外壁材を建物の構造体に固定しており、目地部分を少なくすることができるため外観をシンプルにでき、漏水のおそれが少なく、耐久性を向上させることができる。
【0023】
本発明の請求項7に記載された建物は、前記したいずれかに記載の外壁材と、複数個のタイルを配列した外壁材を固定しているため、タイル模様とシンプルなセラミック板とで外観を構成でき、タイルの細かい目地模様を排除して外観意匠を向上させることができる。特に、外壁の周囲やコーナー部分、窓周りにタイル模様を配すると外観のアクセントとなって好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る外壁材と、この外壁材を使用した建物の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る外壁材の一部を省略した斜視図、図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は外壁材の他の実施形態の水平方向の断面図、図2(c)は外壁材のさらに他の実施形態の水平方向の断面図、図3は、外壁材の他の実施形態の一部を省略した斜視図である。
【0025】
図1,2において、外壁材10は表面側のセラミック板11と、セラミック板の裏面に位置する金属板として鋼板12と、この金属板の裏面に位置する石膏ボード13とを積層して一体化して構成される。本実施形態では、石膏ボード13の裏面にさらに裏面金属板として裏面鋼板14が位置した4層構造となっており、鋼板12と裏面鋼板14とにより石膏ボード13の外周を巻回している。そして、外壁材10は表面側のセラミック板11と裏面側の石膏ボード13の外周の鋼板12とを、接着層15により固定して一体化して形成している。なお、裏面鋼板は必ずしも必要でなく、セラミック板11と、鋼板12と、石膏ボード13とを積層して一体化した3層構造のものでもよい。
【0026】
外壁材10は少なくとも一辺(短辺)の長さWが800mm以上、好ましくは800mm以上1m以下に設定され、この外壁材を固定する建物のモジュールに設定されている。外壁材10の他辺(長辺)の長さLは2.5〜3m程度に設定されており、例えばこの外壁材を固定する建物の階高に相当して設定されている。外壁材10の表面側のセラミック板11は厚さが3〜10mm程度に設定されており、1200℃以上の温度で焼成されている。このようにセラミック板11の厚さを3〜10mm程度に制限することで、外壁材10の全体の重量を減らすことができる。セラミック板11の厚さは、重量との関係で4〜5mm程度が最適である。
【0027】
セラミック板11の焼成温度を前記のように高温に設定することにより、セラミック板は吸水率が小さくなり、他の板材と固定するときに使用する接着剤の劣化がなく凍害の危険性も無くなる。セラミック板11の表面には、図示していないが種々の模様が施されており、外壁材に重厚感を与える凹凸のあるエンボス模様が好ましい。タイル模様や木目模様等適宜の模様を形成するようにしてもよい。このセラミック板11の表面は釉薬で被覆されており、1200℃以上で焼成されているため、表面側にガラス質の皮膜が形成されて光沢を有している。
【0028】
石膏ボード13は厚さが9〜15mm程度に設定されている。石膏ボード13は表裏面に紙が貼着されたものを使用している。石膏ボード13の外周面は、表面側の鋼板12と、裏面側の鋼板14で覆われている。すなわち石膏ボード13の表面側の鋼板12と、裏面側の鋼板14との端部を折り曲げて接合し、石膏ボードの4面を鋼板で覆っている。鋼板としてはステンレス鋼板や亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板等が好ましい。鋼板12,14は外壁材10に所定の剛性を持たせるため、0.1〜1mm程度の厚さに設定されている。0.1mm以下の場合、外壁材の剛性が不足して施工時に湾曲して施工性が悪くなる。1mmを超えると、重量が増して施工性が悪くなると共に、温度変化による影響が大きくなる。すなわち、温度変化が大きいときに、表面のセラミック板11と裏面の石膏ボード13を巻回している鋼板12とが剥離しやすくなる。
【0029】
鋼板12の石膏ボード13への固定は、例えば表面側の鋼板12の外周部を裏面側に折り曲げ、裏面側の鋼板14の外周部を表面側へ折り曲げ、折り曲げられた外周部同士を重ねて、例えばスポット溶接で固定する。接着剤を用いて固定してもよい。また、2枚の鋼板12,14の外周部を折り曲げず、石膏ボード13の表面と裏面に平板のまま接着して固定してもよい。さらに、1枚の厚めの鋼板をセラミック板11と石膏ボード13との間に積層したものでもよい。このように2枚の鋼板を使用するときは、2枚の合計の厚さが2mmを超えないことが重量増を防ぐ意味で好ましい。石膏ボード13と鋼板12,14との接着剤としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系等、適宜のものを使用できる。
【0030】
セラミック板11と鋼板12との固定は、シリコーン系、変性シリコーン系、ウレタン系等の接着剤、およびこれらの接着剤と複合された弾性を有する接着剤が好適に使用できる。接着剤の塗布は、対向するセラミック板11と鋼板12との全面が好ましいが、全面でなく外周部と中間部とを塗布、あるいは所定の間隔で線状に塗布する等、塗布面積を減らしてもよい。弾性を有する接着剤を用いることで、セラミック板11と鋼板12が温度変化で伸縮しても剥離等の不具合が生じにくい。
【0031】
また、セラミック板11と鋼板12,14で巻回した石膏ボード13との固定は、図2bに示すように、短辺方向にずらして固定してもよい。このように固定した外壁材10Aでは、建物等の外壁面に固定するとき、段差部分が交互に重なるように固定されるため、目地の深さを半分程度にすることができ、バックアップ材を省略することが可能となる。さらに、図2cに示す外壁材10Bは、セラミック板11の裏面に厚さが0.1〜1mmの鋼板16を位置させ、この鋼板の裏面にさらに石膏ボード17を位置させており、接着層18,19により一体化している。この外壁材10Bは、セラミック板11と1枚の鋼板16および石膏ボード17を積層して一体化することにより強度を持たせており、鋼板16は1枚であるため、前記の実施形態の鋼板12,14のように鋼板が2枚の場合より厚いものが好ましい。
【0032】
本実施形態の外壁材は、前記のような標準的な外壁材10,10A,10Bの他に、図3に示されるような、入隅用や出隅用の外壁材10Cが形成される。入隅用や出隅用の外壁材10Cは、建物の躯体(構造体)を構成する柱材や梁材の入隅部分や出隅部分に使用される形態であり、表面側のセラミック板11は前記のセラミック板と同等であり、短辺方向の長さが800mm以上で、1200℃以上で焼成されている。
【0033】
セラミック板11の裏面側にはセラミック板の幅より小さい幅の鋼板12A,14Aと、これらの鋼板に巻回された石膏ボード13Aとを備えている。鋼板及び石膏ボードの長辺方向の寸法はセラミック板11と同じに設定されているが、短辺方向の長さは小さく設定されている。すなわち、外壁材の短辺方向の寸法が例えば900mmのとき、鋼板と石膏ボードの幅は、例えば500〜600mm程度に設定され、セラミック板11が単層の部分が形成されている。鋼板12A,14Aは、詳細には図示していないが前記の実施形態と同様に、端部を互いに重なるように折り曲げて接着あるいは溶接で固定し、石膏ボード13Aの周囲を巻回する形状が好ましいが、平板のまま重ねて接着剤で一体化してもよい。
【0034】
この単層の部分には、外壁材10Cを建物の構造体に施工するときに、図4に示す別体の内壁材20を外壁材10Cの内面側に位置させて積層状態とする。この内壁材20は、建物の入隅部分や出隅部分に合わせて断面がL型の石膏ボード21が使用される。L型の水平方向長さW1は、外壁材10Cの単層部分の幅W1とほぼ等しく設定されている。この内壁材20も、セラミック板11の裏面側に位置する石膏ボード13Aと同様に、石膏ボード21の外周を鋼板22等の金属板で巻回したものが使用される。すなわち、鋼板22は断面がL型の石膏ボード21に合わせて0.2mm程度の鋼板22を折り曲げて形成し、端部を溶接や接着剤で固定して構成される。なお、L型に折り曲げた2mm程度の厚さの鋼板を使用し、この鋼板の直角部分にL型の石膏ボードを接着して鋼板と石膏ボードを積層した内壁材としてもよい。
【0035】
前記の如く構成された本実施形態の外壁材10,10Cを建物に固定する施工動作について図5を参照して説明する。図5は本実施形態の外壁材を住宅の壁面として固定した住宅の水平方向の断面図である。図5において、住宅等の建物1は構造体として柱材2、梁材3を組み合わせて躯体を構成している。建物1の外壁として、本実施形態の外壁材10,10Cを固定する。これらの外壁材は、全体の厚さが30mm以内に設定されており、構造体が木造の建物の場合は例えば釘やビス等により固定される。
【0036】
建物の躯体の入隅部分や出隅部分には、図3に示す別の形態の外壁材10Cを固定する。この外壁材を躯体に固定するときは、予めコーナー部分にL字形の鋼板22で石膏ボード21を巻いた図4の内壁材20を釘等で固定する。そして、固定されたL字形の内壁材20の表面に、外壁材10Cを固定する。このとき、内壁材20の直角の角部に防水シート25を直角に折り曲げて挟むようにすることが好ましい。このあと、外壁材10Cに隣接させて外壁材10,10…を順次固定し、最後に固定する空間の幅より外壁材10の幅(短辺方向の長さ)が小さい場合には、外壁材10を縦方向に空間に合わせて切断して固定する。出隅部分は前記のようにL型の鋼板22を巻いた内壁材20を基準として外壁材10Cを固定するが、入隅部分は、図示していないが内壁材20をコーナーに合わせて表裏を反対に位置させ、凹んだ直角部分に防水シートを折り曲げて位置させ、防水シートを覆うように外壁材10C,10Cを固定して、このあと外壁材10,10…を順次固定する。
【0037】
このようにして、入隅部分や出隅部分と共に、建物躯体の全表面に外壁材10,10Cを固定したあと、目地部分とコーナー部分の施工を行う。目地部分やコーナー部分には図示していないが、バックアップ材を挟んでコーキング剤により封止するか、あるいは弾性体からなるパッキング材を隙間に圧入して防水施工を行う。また、断面形状がH形のジョイント金具を並んで固定された外壁材の中間に設置し、あるいは断面形状がL形のジョイント金具をコーナー部分に使用し、コーキング剤を注入して雨水等の浸入を防ぐようにしてもよい。
【0038】
この例では、外壁材10,10Cは長辺方向を鉛直方向に配列して建物躯体に固定される。外壁材10,10Cは短辺方向の長さ(水平方向の幅)が少なくとも800mm以上(基準モジュール)に設定されているため目地部分を少なくすることができ、施工性が向上すると共に、防水性も向上する。また、外壁材10,10Cの短辺の長さが大きいため、パネルとして形成された外壁材の中間(モジュール内)に目地が存在しないため、見栄えが向上する。さらに、この外壁材10,10Cは比較的重量の大きいセラミック板11の厚さを制限することにより、外壁材の重量を制限できるため施工性が向上する。
【0039】
つぎに、前記した外壁材の施工動作の他の例として、入隅部分や出隅部分にも、図1に示す外壁材10を固定する動作について図6を参照して説明する。建物の躯体1は柱材2および梁材3で形成され、躯体の表面に外壁材10が固定される。この動作説明では、建物の躯体の入隅部分や出隅部分にも、全て同じ形態の外壁材10を使用する。躯体の柱材が位置するコーナー部分に対応して、防水シート25を折り曲げて位置させ、一方の面に外壁材10を釘やビスを用いて固定すると共に、直交する他方の面にも外壁材10を固定する。このようにして外壁材を順次固定し、幅の狭い空間には縦方向に切断して短辺方向の長さの小さい外壁材を用いて、躯体の全表面に外壁材10を固定する。このあと、前記と同様に、目地部分の防水処理を行う。
【0040】
このようにして建物の外壁に外壁材10,10…を固定した建物は、前記の外壁材10,10Cを固定した建物と同様の、数々の効果を奏するものである他に、1種類の外壁材10のみで施工することができるため、さらに施工が容易となる。また、複数種類の外壁材を調達する手間が省けて好ましく、材料取りが容易に行える。
【0041】
つぎに、本実施形態の外壁材を用いた建物の実施形態について説明する。本発明の外壁材10等のみを固定した建物は図示していないが、外壁材10等の短辺方向の長さが大きく、建物のモジュールに合わせることができるため、外壁の目地を少なくすることができる。このため、目地部分の防水処理施工を含めて施工が極めて容易となる。また、外壁材10等はセラミック板11の厚さを制限し、鋼板を厚くしているため、強度が大きく湾曲しにくいため搬送を含めて施工が容易となる。そして、表面にセラミック板11が位置しているため耐久性に優れている。
【0042】
図7に示す建物は、前記の外壁材10,10A,10B,10Cと、タイル30等の他の外壁材とを用いて建物の外壁を構成した例である。例えば、図7aに示す建物は、建物の1階部分にタイル30を使用し、2階部分に本実施形態の外壁材10等を固定している。また、逆に1階部分に本実施形態の外壁材を使用し、2階部分にタイル等を使用することもできる。このように構成された建物は、1,2階部分が同じ外壁材を用いた単調な外観、あるいは1,2階部分ともタイルという複雑な外観を払拭して変化のある外観とすることができる。また、本実施形態の外壁板とタイルとは共に耐久性に優れているため、メンテナンスコストを削減することができる。外壁面の一部を構成するタイルは300mm角以下のものが好ましい。
【0043】
さらに、タイル等の他の外壁材を外壁面の一部に使用し、他の主要部には本実施形態の外壁材10を使用して外壁面を仕上げることができる。例えば、図7bに示す建物は、窓枠の周囲に1列にタイル31を配列したり、玄関等の開口部の周囲にタイル31を配列したり、あるいは外壁のコーナー部分にタイル31を配列してアクセントを付けている。このように本実施形態の外壁材10とタイル等の他の外壁材とで外壁面を仕上げることにより、住宅等の建物の外観に変化を付けて単調となることを払拭することができる。外壁面の一部を構成するタイルは300mm角以下のものが好ましい。特に、100mm×100mm程度あるいは100mm×200mm程度の比較的大形のものが、施工が容易で防水性に優れており好ましい。
【0044】
また、外壁材の他の実施形態は、図示していないが表面の釉薬で被覆されていない部分が外壁材の表面全体の20%以上となっている。好ましくは、20%以上で90%未満である。この実施形態の外壁材は、釉薬で被覆されていない部分にはガラス質の表面層が形成されないため、光沢の無い状態となっている。このため、釉薬で被覆されて光沢を有する部分と、光沢が無く渋い表面の部分とが外壁材の表面に形成され、趣のある表面状態を形成している。このような光沢の無い外壁板を建物の外壁材として用いると落ち着いた雰囲気の建物を実現できる。90%を超えるとアクセントの効果がなくなり、単調な外観となって好ましくない。
【0045】
この実施形態においては、セラミック板の表面に釉薬で被覆されていない部分があるが、セラミック板が1200℃以上の高温で焼成されており、吸水率が小さい状態となっているため、セラミック板と鋼板あるいは石膏ボードとの接着強度が低下することなく、剥離することがない。また、セラミック板が吸水しにくいため、凍結を防止できる。すなわち、セラミック板の表面に釉薬が施されていなくても、外壁材の変形や剥離、凍結を防止できるため、釉薬で被覆されていない無光沢の部分を有する外壁材とすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、建物躯体として、木造の躯体の例を示したが、鉄骨造やコンクリート造の躯体でもよいことは勿論である。躯体が鉄骨造の場合には、外壁材の固定はタッピングビス等が好適であり、コンクリート造の場合はコンクリート釘等が好適である。
【0047】
鋼板としては、表面処理の無い鋼板でも使用できる。すなわち、鋼板の表面をセラミック板が目地なしで被覆できるので、内部に位置する鋼板は風雨に晒されることが防止されるため使用可能である。また、前記の施工動作において、コーナー部分に挟み込む防水シートの代わりに、ステンレス鋼板等の板材を直角に折り曲げた防水コーナー材を挟み込んでから外壁材を固定してもよい。さらに、このコーナー防水材をブチルゴム製の粘着テープを用いて角の柱材に固定してから外壁材を固定してもよい。
【0048】
本発明の外壁材を用いて建物等の外壁を施工するとき、タイル等の他の外壁材は石膏ボード等の下地材の上にモルタル等で固定してもよい。また、本発明の外壁材の釉薬を被覆していない部分にタイルを固定して外観意匠に変化を付けてもよい。さらに、本発明の外壁材は縦貼りに限らず、横貼りに施工してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の活用例として、この外壁材を用いて倉庫等の構造物の外壁にも固定することができ、この外壁材を中古の住宅の外壁面に取り付けることによってリフォームの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る外壁材の一部を省略した斜視図。
【図2】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は他の実施形態の水平方向の断面図、(c)はさらに他の実施形態の水平方向の断面図。
【図3】外壁材の他の実施形態の一部を省略した斜視図。
【図4】図3に示す外壁材を建物躯体に固定するとき使用する下地材の斜視図。
【図5】図1、図3に示す外壁材を建物の外壁に固定した状態の水平方向の断面図。
【図6】図1に示す外壁材だけを建物の外壁に固定した状態の水平方向の断面図。
【図7】(a)は本発明の外壁材を建物の2階に固定し、1階にはタイルを固定した建物の立面図、(b)は1,2階に本発明の外壁材を固定し、窓周りとコーナー部分等にタイルを固定した建物の立面図。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B:建物、2:柱材(構造体)、3:梁材(構造体)、10,10A,10B,10C:外壁材、11:セラミック板、12,12A,16:鋼板(金属板)、13,13A,17:石膏ボード、14,14A:裏面鋼板(裏面金属板)、15,18,19:接着層、20:内壁材(下地材)、25:防水シート、30,31:タイル(他の外壁材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板と、該セラミック板の裏面に位置する厚さが0.1〜1mmの金属板と、該金属板の裏面にさらに位置する厚さが9〜15mmの石膏ボードとを積層して一体化したことを特徴とする外壁材。
【請求項2】
前記石膏ボードの裏面側に、さらに裏面金属板を位置させ、該裏面金属板と前記金属板により前記石膏ボードの外周を巻回させたことを特徴とする請求項1に記載の外壁材。
【請求項3】
前記外壁材は、その一辺方向の長さが800mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁材。
【請求項4】
前記セラミック板は、1200℃以上で焼成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外壁材。
【請求項5】
前記セラミック板は、その表面の釉薬で被覆されていない部分が前記表面全体の20%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外壁材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の外壁材を構造体の外周に固定したことを特徴とする建物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の外壁材と、複数個のタイルを配列した外壁材を構造体の外周に固定したことを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−291560(P2006−291560A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113400(P2005−113400)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】