説明

外壁構造体及びその施工方法

【課題】両外壁パネル間の隙間による見栄え悪化を回避するにあたり、建築現場での作業負担軽減を図るとともに、運搬時における破損の恐れを抑制し、さらには運搬効率の向上をも図ることができる外壁構造体及びその施工方法を提供する。
【解決手段】建物の外壁面11aを形成する2枚の外壁パネル11の端面同士を突き合わせて構成される出隅役物10であって、両外壁パネル11の突き合わせ端面11bの間に、両突き合わせ端面11bを連結する薄板材12を配置し、両外壁パネル11のなす角度θ2を変えるように両外壁パネル11を動かした場合に、薄板材12は、両突き合わせ端面11bを連結したまま前記角度θ2の変化に追従して変形可能である。これによれば、運搬時には、両外壁パネル11を連結したまま前記角度θ2が約180度となるように両外壁パネル11をフラットな状態にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルにより出隅又は入隅を構成する、外壁構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の出隅又は入隅を構成する外壁構造体100は、図6に示すように2枚の外壁パネル110の端面110a同士を突き合わせて構成されている。そして、両外壁パネル110の端面110a同士の隙間を無くして見栄えを良くするために、従来では両端面110aを接着剤120で接着することにより結合していた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、建築現場における接着作業の手間軽減及び接着養生時間カットを図るために、これらの接着作業及び養生を工場で行なうのが従来より一般的である。
【特許文献1】特開2000−310024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように両外壁パネル110を接着して工場から運搬する従来施工では、両外壁パネル110を図6に示すL型の状態で運搬しなければならなくなるため、運搬時に接着部分が破損する恐れがある。さらに、両外壁パネル110をL型の状態で運搬すると、接着せずに両外壁パネル110を重ねて運搬する場合に比べてかさばるため、運搬効率が悪い。
【0005】
本発明は、両外壁パネル間の隙間による見栄え悪化を回避するにあたり、建築現場での作業負担軽減を図るとともに、運搬時における破損の恐れを抑制し、さらには運搬効率の向上をも図ることができる外壁構造体及びその施工方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、第1の発明では、建物の外壁面を形成する少なくとも2枚の外壁パネルを備え、前記両外壁パネルの端面同士を突き合わせて、前記両外壁パネルにより出隅又は入隅を構成する外壁構造体であって、一方の前記外壁パネルの突き合わせ端面と他方の前記外壁パネルの突き合わせ端面との間に配置され、前記両突き合わせ端面を連結する連結部材を備え、前記両外壁パネルのなす角度を変えるように前記両外壁パネルを動かした場合に、前記連結部材は、前記両突き合わせ端面を連結したまま前記角度の変化に追従して変形可能であることを特徴とする。
【0008】
これによれば、連結部材により両突き合わせ端面が連結されるので、両外壁パネル間に生じる隙間を無くす、或いは見栄えが損なわれない程度(例えば1mm以下)に小さくできる。よって、両外壁パネル間の隙間による見栄え悪化を回避できる。
【0009】
そして、運搬時には、両突き合わせ端面を連結したまま両外壁パネルのなす角度が約180度となるように両外壁パネルをフラットな状態にできる。そのため、運搬時における外壁構造体の破損の恐れを抑制でき、さらには両外壁パネルをL型の状態で運搬する従来構造に比べてかさばることなく運搬でき、運搬効率を向上できる。
【0010】
さらに本発明によれば、現場施工時には連結部材を直角に変形させるだけで出隅又は入隅を構成する外壁構造体を形成できるので、建築現場での隙間を無くすための作業時間をカットでき、建築現場での作業負担軽減を図ることができる。
【0011】
また、第2の発明では、前記両外壁パネルが取り付けられる建物の下地材の面がなす角度をθ1と定義し、前記両突き合わせ端面同士を面接触させた場合における鋭角側の角度をθ2と定義し、θ2<θ1となるように前記両突き合わせ端面は形成されていることを特徴とする。これによれば、下地材の面がなす角度θ1が組付け寸法誤差等により所定角度よりも小さくなった場合であっても、θ2<θ1であるため、小さくなった下地材の角度に追従して連結部材を変形させて、所定角度θ1よりも小さい角度θ2となるように出隅又は入隅を形成できる。
【0012】
また、第3の発明では、前記両外壁パネルにより出隅を構成する外壁構造体であって、前記突き合わせ端面にはパネル側凹部が形成されており、前記連結部材には、前記パネル側凹部に沿って凹む連結側凹部が形成されており、前記連結側凹部には、加熱されて発泡する発泡防火材が充填されていることを特徴とする。これによれば、火災等により加熱された発泡防火材は発泡膨張するので、発泡膨張した発泡防火材により両突き合わせ端面の隙間を確実に埋めることができる。よって、火災発生時における外壁構造体の防火性能を向上できる。
【0013】
また、第4の発明では、前記連結側凹部のうち屋内側部分には前記発泡防火材が充填され、前記連結側凹部のうち屋外側部分には、前記発泡防火材が屋外側に膨張するように導く膨張誘導空間が形成されていることを特徴とする。これによれば、発泡防火材は、突き合わせ端面のうち屋内側部分から屋外側に向けて膨張するように方向制御されるので、発泡防火材を両突き合わせ端面内に向けて膨張させることを確実にできる。換言すれば、発泡防火材が突き合わせ端面のうち屋内側部分から突き合わせ端面とは反対側(屋内側)に膨張してしまうことを回避できる。
【0014】
また、第5の発明では、前記連結側凹部が前記発泡防火材を内部に保持する断面袋形状になるとともに、前記膨張誘導空間が前記断面袋形状の開口に連通するように、前記連結部材は形成されていることを特徴とする。これによれば、発泡防火材は連結側凹部の袋形状内部に保持されるとともに、袋形状内部の発泡防火材は袋形状の開口に向けて発泡膨張することとなるので、発泡膨張する向きを屋外側に制御することを確実にできる。
【0015】
また、第6の発明では、前記連結部材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅の稜線方向の全域に亘って延びる形状であり、前記発泡防火材は、前記両突き合わせ端面のうち前記稜線方向の全域に亘って充填されていることを特徴とする。これによれば、出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って発泡防火材が充填されることになるので、防火性能を向上できる。
【0016】
また、第7の発明では、前記連結部材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って延びる形状であることを特徴とする。これによれば、出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って連結部材が配置されることになるので、連結部材により両突き合わせ端面の隙間を確実に埋めることができる。よって、火災発生時における外壁構造体の防火性能を向上できる。
【0017】
また、第8の発明では、前記突き合わせ端面のうち屋外側の角部は面取りされており、前記連結部材は前記面取りされた部分よりも屋内側に配置されていることを特徴とする。これによれば、角部欠けの恐れを低減でき、また安全性を向上できる。
【0018】
また、第9の発明では、前記連結部材は、前記角度の変化に追従して塑性変形する金属製の板であることを特徴とする。これによれば、両突き合わせ端面を連結したまま両外壁パネルのなす角度の変化に追従して変形可能に連結部材を形成することを、容易に実現できる。
【0019】
次に、上述した外壁構造体を施工する施工方法の発明について説明する。
【0020】
すなわち、第10の発明では、工場で、一方の前記外壁パネルの突き合わせ端面と他方の前記外壁パネルの突き合わせ端面との間に連結部材を配置し、前記連結部材により前記両突き合わせ端面を連結する工場製作工程と、前記両突き合わせ端面を連結したまま、前記両外壁パネルのなす角度が約180度となる状態で前記両外壁パネルを運搬する運搬工程と、建築現場で、前記両突き合わせ端面を連結したまま前記連結部材を変形させて、前記両外壁パネルのなす角度を前記出隅又は入隅を構成する角度にする現場施工工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
これによれば、前述の発明と同様にして、連結部材により両突き合わせ端面が連結されるので、両外壁パネル間に生じる隙間を無くす、或いは見栄えが損なわれない程度(例えば1mm以下)に小さくできる。よって、両外壁パネル間の隙間による見栄え悪化を回避できる。
【0022】
そして、運搬工程では、両突き合わせ端面を連結したまま、両外壁パネルのなす角度が約180度となる状態で両外壁パネルを運搬するので、運搬時における外壁構造体の破損の恐れを抑制でき、さらには両外壁パネルをL型の状態で運搬する従来構造に比べてかさばることなく運搬でき、運搬効率を向上できる。
【0023】
さらに本発明によれば、現場施工工程では、両突き合わせ端面を連結したまま連結部材を変形させて、両外壁パネルのなす角度を出隅又は入隅を構成する角度にするだけで出隅又は入隅を構成する外壁構造体を形成できるので、建築現場での隙間を無くすための作業時間をカットでき、建築現場での作業負担軽減を図ることができる。
【0024】
また、第11の発明では、建物の外壁面を形成する少なくとも2枚の外壁パネルを備え、前記両外壁パネルの端面同士を突き合わせて、前記両外壁パネルにより出隅又は入隅を構成する外壁構造体であって、前記外壁パネルの突き合わせ端面には凹部が形成されており、前記凹部には、加熱されて発泡する発泡防火材が充填されていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、火災等により加熱された発泡防火材は発泡膨張するので、発泡膨張した発泡防火材により両突き合わせ端面の隙間を確実に埋めることができる。よって、火災発生時における外壁構造体の防火性能を向上できる。
【0026】
また、第12の発明では、前記凹部のうち屋内側部分には前記発泡防火材が充填され、前記凹部のうち屋外側部分には、前記発泡防火材が屋外側に膨張するように導く膨張誘導空間が形成されていることを特徴とする。これによれば、発泡防火材は、突き合わせ端面のうち屋内側部分から屋外側に向けて膨張するように方向制御されるので、発泡防火材を両突き合わせ端面内に向けて膨張させることを確実にできる。換言すれば、発泡防火材が突き合わせ端面のうち屋内側部分から突き合わせ端面とは反対側(屋内側)に膨張してしまうことを回避できる。
【0027】
また、第13の発明では、前記凹部が断面袋形状になるとともに前記膨張誘導空間が前記断面袋形状の開口に連通するように、前記連結部材は形成されていることを特徴とする。これによれば、発泡防火材は連結側凹部の袋形状内部に保持されるとともに、袋形状内部の発泡防火材は袋形状の開口に向けて発泡膨張することとなるので、発泡膨張する向きを屋外側に制御することを確実にできる。
【0028】
また、第14の発明では、前記発泡防火材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って充填されていることを特徴とする。これによれば、出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って発泡防火材が充填されることになるので、防火性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0030】
[第1の実施形態]
本実施形態は、本発明に係る外壁構造体を、建物の出隅を構成する出隅役物に適用した一実施形態であり、図1は本実施形態に係る外壁構造体としての出隅役物10単体を示す斜視図であり、上端部分は切断面を表している。なお、図1中に記載の上下方向を示す矢印は、出隅役物10を建物に取り付けた状態における上下方向を示す。また、図2は出隅役物10の断面図であり、図3は図2の分解図である。
【0031】
図1〜図3に示すように、出隅役物10は、建物の外壁面11aを形成する2枚の外壁パネル11を備え、これらの外壁パネル11の端面11b(図3参照)同士を突き合わせてL字型に構成されている。以下、前記端面11bを突き合わせ端面と呼ぶ。因みに、出隅役物10は、上下方向寸法が水平方向寸法よりも長い形状である。そして、出隅役物10の水平方向両端側には平板形状のサイディングパネル(図示せず)が継目地部材(図示せず)を介して連続して配置されており、これらのサイディングパネル及び出隅役物10により建物の外壁面が形成されている。
【0032】
外壁パネル11は、セメントに木片等を混入させてプレス成形により板状に形成した、周知の窯業系サイディングである。そして、このようにプレス成形された板状の母材の端面を斜めに切断することにより突き合わせ端面11bは形成されている。また、外壁パネル11の材質には、前述のサイディングパネルと同じ材質が用いられているため、出隅役物10は所謂同質役物として機能し、サイディングパネルと一体的な意匠となり、見栄えの向上を図っている。
【0033】
一方の外壁パネル11の突き合わせ端面11bと他方の外壁パネル11の突き合わせ端面11bとの間には、連結部材としての薄板材12が配置されている。薄板材12は1枚の金属製の薄板を折り曲げて形成されており、図2に示すように左右対称の形状である。そして図3に示すように、薄板材12のうち突き合わせ端面11bに対向する面12a(接着面)は、接着材により突き合わせ端面11bと接着されている。これにより、薄板材12は両外壁パネル11を連結する連結部材として機能する。
【0034】
また、薄板材12は、外壁パネル11のうち出隅の稜線方向(図1の上下方向)の全域に亘って延びる形状である。そのため、両突き合わせ端面11cの隙間が薄板材12により上下方向の全域に亘って埋められることとなるので、外壁構造体10の防火性能向上及び防水性能向上を図る機能も有している。
【0035】
図3に示すように、突き合わせ端面11bにはパネル側凹部11cが形成されており、薄板材12には、パネル側凹部11cに沿って凹む連結側凹部12bが形成されている。そして、連結側凹部12bには、加熱されて発泡する発泡防火材13が充填されている。また、連結側凹部12bは発泡防火材13を内部に保持する断面袋形状に形成されている。
【0036】
発泡防火材13には熱膨張性断熱材料として機能する材質が用いられており、例えば、熱可塑性樹脂及び/又はゴム成分、リン化合物、無機充填剤を含有する樹脂組成物が材質例として挙げられる。また、特開2000−297884号公報にて記載されている、熱分解型(炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、水素化合物、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物等)のものを使用して好適である。
【0037】
このように発泡防火材13には熱膨張性断熱材料が用いられているので、火災等により加熱されると発泡防火材13は発泡膨張し、発泡膨張した発泡防火材により両突き合わせ端面11cの隙間が埋められる。これにより、火災発生時における外壁構造体10の防火性能向上を図っている。
【0038】
次に、薄板材12の形状をより詳細に説明する。
【0039】
薄板材12の内側面のうち符号12cに示す屋外側(図2の左側)の部分は互いに面接触している。また、薄板材12の外側面のうち符号12dに示す屋内側(図2の右側)の部分は互いに面接触している。そして、これらの面接触部分12c,12dにより、薄板材12の内部には水平方向に閉じた空間12eが形成され、この空間12eに発泡防火材13が充填されている。
【0040】
また、薄板材12のうち屋内側の面接触部分12dを形成する延出部12fにより、空間12eは図2の上下方向に2つに仕切られており、2つの袋状の空間12gが形成されている。また、袋状空間12gの開口12hは延出部12fの先端により形成され、この開口12hは袋状空間12gのうち屋外側に位置することとなる。
【0041】
前述した空間12eのうち延出部12fにより仕切られていない部分を膨張誘導空間12iと呼ぶ。つまり、空間12eは、2つの袋状空間12gと膨張誘導空間12iとに区画されており、袋状空間12gの開口12hにより袋状空間12gと膨張誘導空間12iとは連通している。これにより、袋状空間12gに充填された発泡防火材13が発泡膨張すると、膨張誘導空間12iに向けて膨張する。つまり、発泡防火材13は、突き合わせ端面11bのうち屋内側部分から屋外側に向けて膨張するように方向制御されることとなる。
【0042】
次に、上記構成の出隅役物10を建物に取り付けるまでの施工手順を説明する。
【0043】
<工場製作工程>
先ず、建物の建築現場とは別の工場において、外壁パネル11の母材となるサイディングパネルの端面を斜めに切断して、突き合わせ端面11cを有する外壁パネル11を形成する。さらに、突き合わせ端面11cを切断してパネル側凹部11cを形成する。次に、形成された突き合わせ端面11cに薄板材12の接着面12aを接着材により接着し、養生する。これにより、両外壁パネル11は薄板材12により連結された状態となる。
【0044】
そして、このように連結された外壁パネル11は、図4に示すように両外壁パネル11のなす角度が約180度となるフラットな状態で工場に保管される。以下、このようなフラットな状態の両外壁パネル11及び薄板材12からなる構造体を、運搬構造体10Pと呼ぶ。運搬構造体10Pの状態では、薄板材12の面接触部分12c,12dは未だ接触していない状態である。但し、薄板材12は延出部12fを有しているため、袋状空間12gは既に形成された状態であり、袋状空間12g内に発泡防火材13を予め充填しておく。
【0045】
なお、外壁パネル11に薄板材12を接着する前に、突き合わせ端面11cのうち屋外側の角部を面取りして面取り部11dを形成しておく。そして、薄板材12を両突き合わせ端面11c内に配置するにあたり、薄板材12の頂部12jは面取り部11dよりも屋内側に位置させる。因みに、薄板材12の屋外側端面12kは、外壁パネル11のうち外壁面11aと反対側の面と同一面上に位置させる。
【0046】
<運搬工程>
次に、フラットな状態の運搬構造体10Pを、クレーンやフォークリフト等の荷役機械により運搬車両に積み込む。そして、運搬構造体10Pを運搬車両により建築現場まで運搬し、荷役機械により建築現場へ積み降ろす。
【0047】
<現場施工工程>
図2中の符号21は建物の下地材を示しており、この下地材21は図示しないスタッドの屋外側に固定された部材である。図に示す下地材21には板状の合板が採用されているが、水平方向に延びるフレームであってもよい。そして、2枚の下地材21は互いに付き合わされてアングル等の金物22により固定され、直角の下地壁面21aを形成している。
【0048】
そして、建築現場において、運搬構造体10Pの外壁パネル11を、直角の下地壁面21aと平行になるように折り曲げて、図2に示すL字状の出隅役物10を形成する。この時、薄板材12の頂部12jが折り曲げられて薄板材12は塑性変形することとなり、また、薄板材12の面接触部分12c,12dが互いに面接触し、薄板材12の内部に膨張誘導空間12iが形成されることとなる。
【0049】
ここで、図2に示すように、下地材21の面がなす角度をθ1と定義し、面接触部分12c,12dを互いに面接触させた状態における出隅役物10の鋭角側の角度をθ2と定義し、θ2<θ1となるように両突き合わせ端面11bは形成されている。例えば、下地材21の角度θ1を90度に設定した場合には、出隅役物10は90度より小さい角度(例えば85度)まで折り曲げて変形させることができる。これによれば、下地材21の角度θ1が組付け寸法誤差等により所定角度(90度)よりも小さい85度になった場合であっても、小さくなった下地材21の角度θ1に追従して薄板材12を変形させて、所定角度θ1よりも小さい角度θ2となるように出隅役物10を形成できる。
【0050】
したがって、面接触部分12c,12dが互いに面接触した図2の状態は、下地材21の角度θ1が所定角度(90度)よりも小さい85度になっており、その角度θ1に追従して薄板材12が変形し、出隅役物10の角度θ2も85度になっている状態を表している。
【0051】
次に、形成された出隅役物10を下地材21に取り付ける。この下地材21への取り付け構造の具体例としては、下地材21に固定された縦同縁又は補助桟23(図2参照)を介して釘24により下地材21に固定する例が挙げられる。また、下地材21に固定された留め付け金具25の上に出隅役物10を載せて係合させて、留め付け金具25により出隅役物10の自重を支持させるとともに、外壁面11aの垂直方向に出隅役物10の移動を規制することが挙げられる。
【0052】
以上により、本実施形態によれば、薄板材12により両突き合わせ端面11bが連結され、薄板材12は出隅の稜線方向の全域に亘って延びる形状であるため、両外壁パネル11間に生じる隙間を無くすことができる。よって、両外壁パネル11間の隙間による見栄え悪化を回避できる。
【0053】
そして、運搬時には、出隅役物10を、両突き合わせ端面11bを連結したままフラットな状態(運搬構造体10Pの状態)にできる。そのため、突き合わせ端面11cと薄板材12とは接着されているものの、フラットな状態であるため接着部にかかる負荷を軽減できる。よって、運搬時における出隅役物10の破損の恐れを抑制できる。また、出隅役物10をフラットな状態にして運搬するので、両外壁パネル11をL型の状態で運搬する従来構造に比べてかさばることなく運搬でき、運搬効率を向上できる。
【0054】
さらに本実施形態によれば、現場施工時には薄板材12を直角に変形させるだけで、フラットな状態の運搬構造体10Pから出隅を構成するL型の出隅役物10に変えることができるので、建築現場での隙間を無くすための作業時間をカットでき、建築現場での作業負担軽減を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、発泡防火材13が充填される連結側凹部12bのうち屋外側部分には、膨張誘導空間12iが形成されているので、発泡防火材13は屋外側に向けて膨張するように方向制御される。よって、発泡防火材13を両突き合わせ端面11b内に向けて膨張させることを確実にできる。換言すれば、発泡防火材13が屋外側端面12kから屋内側に膨張して両突き合わせ端面11bの外方に漏出してしまうことを回避できる。
【0056】
しかも、発泡防火材13は袋状空間12gに充填され、その袋状空間12gの開口12hは、屋外側に位置する膨張誘導空間12iと連通しているので、袋状空間12gの発泡防火材13は開口12hに向けて発泡膨張するように規制されることとなるので、発泡膨張する向きを屋外側に制御することを確実にできる。
【0057】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、外壁パネル11及び薄板材12にパネル側凹部11c及び連結側凹部12bをそれぞれ形成し、連結側凹部12bに発泡防火材13を充填させている。これに対し、本実施形態では、図5に示すように、発泡防火材13を廃止しており、それにともないパネル側凹部11c及び連結側凹部12bも廃止している。したがって、薄板材12のうち接着面12aと反対側の面の全体が互いに面接触している。
【0058】
[他の実施形態]
本発明は以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。そして、以下に説明する各実施形態の特徴的制御内容及び構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0059】
・上記各実施形態では、本発明に係る外壁構造体を出隅役物10に適用させているが、入隅役物に適用させてもよい。但し、入隅役物に適用させた場合には、パネル側凹部11c及び連結側凹部12bを形成して発泡防火材13を連結側凹部12b内に充填させることはできない。
【0060】
・上記各実施形態では、連結部材として金属製の薄板材12を採用し、薄板材12を塑性変形させて折り曲げることにより、両外壁パネル11のなす角度に追従して薄板材12を変形させているが、本発明の実施にあたり、連結部材として弾性変形する部材を採用し、両外壁パネル11のなす角度に追従して弾性変形させるように構成してもよい。また、蝶番のように回転軸を有し、両外壁パネル11のなす角度に追従して回動(変形)させるように構成してもよい。
【0061】
・上記第1の実施形態では、パネル側凹部11cを両外壁パネル11のそれぞれに形成しているが、両外壁パネル11のうち一方の外壁パネル11にのみパネル側凹部11cを形成し、連結側凹部12bも一方の側にのみ形成するようにしてもよい。これによれば、外壁パネル11の突き合わせ端面11cを切断してパネル側凹部11cを形成する手間を半減できる。
【0062】
・上記各実施形態では、出隅役物10を同質役物として形成しているが、サイディングパネルと異なる材質を出隅役物10に用いてもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、外壁パネル11に窯業系サイディングを用いているが、金属系サイディングや木質系サイディングを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態に係る出隅役物(外壁構造体)の単体状態を示す斜視図。
【図2】図1に示す出隅役物の断面図。
【図3】図2の分解図。
【図4】図1に示す出隅役物を運搬する時の状態(運搬構造体)を示す断面図。
【図5】第2の実施形態に係る出隅役物を示す断面図。
【図6】従来の出隅役物(外壁構造体)を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
10…出隅役物(外壁構造体)、11…外壁パネル、11a…外壁面、11b…突き合わせ端面、11c…パネル側凹部、12…薄板材(連結部材)、12b…連結側凹部、12g…袋状空間、12i…膨張誘導空間、13…発泡防火材、θ2…両外壁パネルのなす角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面を形成する少なくとも2枚の外壁パネルを備え、
前記両外壁パネルの端面同士を突き合わせて、前記両外壁パネルにより出隅又は入隅を構成する外壁構造体であって、
一方の前記外壁パネルの突き合わせ端面と他方の前記外壁パネルの突き合わせ端面との間に配置され、前記両突き合わせ端面を連結する連結部材を備え、
前記両外壁パネルのなす角度を変えるように前記両外壁パネルを動かした場合に、前記連結部材は、前記両突き合わせ端面を連結したまま前記角度の変化に追従して変形可能であることを特徴とする外壁構造体。
【請求項2】
前記両外壁パネルが取り付けられる建物の下地材の面がなす角度をθ1と定義し、前記両突き合わせ端面同士を面接触させた場合における鋭角側の角度をθ2と定義し、
θ2<θ1となるように前記両突き合わせ端面は形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁構造体。
【請求項3】
前記両外壁パネルにより出隅を構成する外壁構造体であって、
前記突き合わせ端面にはパネル側凹部が形成されており、
前記連結部材には、前記パネル側凹部に沿って凹む連結側凹部が形成されており、
前記連結側凹部には、加熱されて発泡する発泡防火材が充填されていることを特徴とする請求項2に記載の外壁構造体。
【請求項4】
前記連結側凹部のうち屋内側部分には前記発泡防火材が充填され、
前記連結側凹部のうち屋外側部分には、前記発泡防火材が屋外側に膨張するように導く膨張誘導空間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の外壁構造体。
【請求項5】
前記連結側凹部が前記発泡防火材を内部に保持する断面袋形状になるとともに、前記膨張誘導空間が前記断面袋形状の開口に連通するように、前記連結部材は形成されていることを特徴とする請求項4に記載の外壁構造体。
【請求項6】
前記連結部材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅の稜線方向の全域に亘って延びる形状であり、
前記発泡防火材は、前記両突き合わせ端面のうち前記稜線方向の全域に亘って充填されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の外壁構造体。
【請求項7】
前記連結部材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って延びる形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁構造体。
【請求項8】
前記突き合わせ端面のうち屋外側の角部は面取りされており、
前記連結部材は前記面取りされた部分よりも屋内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の外壁構造体。
【請求項9】
前記連結部材は、前記角度の変化に追従して塑性変形する金属製の板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の外壁構造体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の外壁構造体を施工する施工方法であって、
工場で、一方の前記外壁パネルの突き合わせ端面と他方の前記外壁パネルの突き合わせ端面との間に連結部材を配置し、前記連結部材により前記両突き合わせ端面を連結する工場製作工程と、
前記両突き合わせ端面を連結したまま、前記両外壁パネルのなす角度が約180度となる状態で前記両外壁パネルを運搬する運搬工程と、
建築現場で、前記両突き合わせ端面を連結したまま前記連結部材を変形させて、前記両外壁パネルのなす角度を前記出隅又は入隅を構成する角度にする現場施工工程と、
を含むことを特徴とする外壁構造体の施工方法。
【請求項11】
建物の外壁面を形成する少なくとも2枚の外壁パネルを備え、
前記両外壁パネルの端面同士を突き合わせて、前記両外壁パネルにより出隅又は入隅を構成する外壁構造体であって、
前記外壁パネルの突き合わせ端面には凹部が形成されており、
前記凹部には、加熱されて発泡する発泡防火材が充填されていることを特徴とする外壁構造体。
【請求項12】
前記凹部のうち屋内側部分には前記発泡防火材が充填され、
前記凹部のうち屋外側部分には、前記発泡防火材が屋外側に膨張するように導く膨張誘導空間が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の外壁構造体。
【請求項13】
前記凹部が断面袋形状になるとともに前記膨張誘導空間が前記断面袋形状の開口に連通するように、前記連結部材は形成されていることを特徴とする請求項12に記載の外壁構造体。
【請求項14】
前記発泡防火材は、前記両突き合わせ端面のうち前記出隅又は入隅の稜線方向の全域に亘って充填されていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の外壁構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285877(P2008−285877A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131349(P2007−131349)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】