説明

外装材の見切り構造

【課題】見切り縁に水切り機能をもたせると共に上下の外観幅を小さくして納まりを良好にし、さらに見切り縁と水切り部との色合わせを不要にして、施工の手間とコストを大幅に削減すること。
【解決手段】見切り縁3は、後側縦片5aと前方突出横片5bと係合部5cとが一体に構成された見切りベース部5と、前側縦片6aと後方突出横片6bと上記見切りベース部5の係合部5cに引っ掛け連結される被係合部6cとが一体に構成された見切りカバー部6とに分割されていると共に、上記前側縦片6aの下端側からその全幅に亘って外装材2の前方Kに向かって張り出し且つその張り出した先端部分が下方に垂下した水切り部7が一体に突設されている外装材2の見切り構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓下枠と対向する窓下の外装材の上端部に見切り縁が装着された外装材の見切り構造に関し、詳しくは見切り縁に水切り機能を持たせた構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より外装材の見切り構造として、見切り縁の下方に見切り縁とは別体の水切り板を取り付け、外壁を伝って流れ落ちる伝い水を水切り板によって水切りするようにした見切り構造が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その一例として、例えば図5に示すように、見切り縁3´の下方に前方Kに張り出すようにして水切り板30をリベット固定し、水切り板30の上部を見切り縁3´の下端と外装材2との間に差し込むことにより、窓下枠1Aから流れ落ちる雨水や結露水などの水滴を水切り板30によって水切りする構造が知られている。図中の50は防水シーリング材である。
【0004】
ところが、従来の水切り構造では、水切り板30は別途現場にて取り付けなければならないものであり、部品点数が増える上にリベット固定する必要があるため、現場での施工としても面倒なものであった。しかも、見切り縁3´と水切り板30とを上下に配列する構造であるためその外観幅が大きくなるという問題があり、さらに見切り縁3´と水切り板30の色柄が異なると外観上の違和感を与えるために色合わせが必要となり、施工の手間やコストが増大するという問題もあった。
【特許文献1】特開平9−60184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、見切り縁に水切り機能をもたせることができ、現場での施工性が向上すると共に、見切りカバー部全体の上下の外観幅を小さくして納まりを良好にでき、さらに見切り縁と水切り部との色合わせが不要となり、施工の手間とコストを大幅に削減できる外装材の見切り構造を提供することを課題とし、また、見切り縁の仕舞いを良好にできる外装材の見切り構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、窓下枠1Aと対向する窓下の外装材2の上端部2aに見切り縁3が取り付けられた外装材の見切り構造において、上記見切り縁3は、見切りベース部5と見切りカバー部6とに分割され、上記見切りベース部5は、外装材2の背後に配置される後側縦片5aと、後側縦片5aの上端部2aから前方Kに突出する前方突出横片5bと、前方突出横片5bの先端部に設けられて外装材2の上端部2aから離間して配置される係合部5cとが一体に構成され、上記見切りカバー部6は、外装材2の前面2bに配置される前側縦片6aと、前側縦片6aの上端部2aから後方Hに突出する後方突出横片6bと、後方突出横片6bの先端部に設けられて上記見切りベース部5の係合部5cに引っ掛け連結される被係合部6cとが一体に構成されていると共に、上記前側縦片6aの下端側からその全幅に亘って外装材2の前方Kに向かって張り出し且つその張り出した先端部分が下方に垂下した水切り部7が一体に突設されていることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、見切りカバー部6の前側縦片6aに前方Kに張り出す水切り部7を一体に突設したことによって、見切り縁3自体に水切り機能を持たせることができ、これにより従来のような見切り縁3と別体の水切り板を用いる場合と比較して、現場での施工を省略できると共に、見切りカバー部6の前側縦片6aと水切り部7との一体化によって見切りカバー部6全体の上下の外観幅を小さくできると共に、見切り縁3と水切り部7との色合わせも不要となる。
【0008】
また、上記見切りベース部5の後側縦片5aに、前方突出横片5bよりも上方に突出して先端が窓下枠1Aの下面に当接可能な突起部5dを突設させるのが好ましく、この場合、突起部5dによって見切り縁3の上面と窓下枠1Aの下面との間にシーリング隙間40を確保でき、シーリング隙間40を確保するために見切り縁3の取り付け高さを現場で計算する必要がなくなる。
【0009】
また、上記見切りカバー部6に、前端部8aが上記水切り部7と連なり後端部8bが外装材2の前面2bに当接又は隙間をあけて配置されると共に水切り部7から離れるに従って上り傾斜する下カバー部8を一体に設けるのが好ましく、この場合、水切り部7を張り出した構成でありながら下カバー部8によって見切り縁3の仕舞いを良好にできる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明では、見切りカバー部の前側縦片の下端側から前方に張り出すようにして水切り部を一体に突設したことにより、従来のような水切り板を別途取り付ける必要がなくなり、水切り板のリベット固定を省略できると共に部品数を削減でき、現場での施工性が向上するものであり、また、見切り縁自体に水切り機能を持たせることによって見切りカバー部の上下の外観幅を小さくできて納まりを良好にできるものであり、さらに見切り縁と水切り部との色合わせが不要となり、さらにサッシ窓枠と近似色に揃えることも容易になるという効果が得られる。
【0011】
請求項2記載の発明では、見切りベース部の後側縦片から突出した突起部によって見切り縁の上面と窓下枠の下面との間にシーリング隙間を確保できるので、シーリング隙間を確保するための計算を現場で行なう必要がなくなり、現場での施工の手間を一層削減できるものである。
【0012】
請求項3記載の発明では、下カバー部によって水切り部を張り出した見切り縁の仕舞いを良好にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
図1は、窓下枠1Aと対向する窓下の外装材2の上端部2aに本実施形態の見切り縁3を取り付けた状態を示している。
【0015】
図1において、建物躯体に設けた窓取り付け用の開口部の周縁部に沿って窓枠下地材13が固定されており、この窓枠下地材13に対してサッシ窓枠1が取り付けられている。サッシ窓枠1は、窓下枠1Aと、図示省略した窓上枠と、左右一対の窓側枠とが、正面視ロ字状に一体に組み立てられている。
【0016】
窓下の外装材2は、例えば金属系サイディングで構成されており、その上端部2aが嵌め込まれる見切り縁3は例えば薄肉鋼板で構成されている。また窓下枠1Aと見切り縁3の上面部との隙間には、バックアップ材10及び防水シーリング材11が充填されている。
【0017】
ここで本発明においては、見切り縁3は、外装材2の背後に配置される見切りベース部5と、外装材2の前面に配置される見切りカバー部6とに前後に2分割されている。
【0018】
上記見切りベース部5は、外装材2の背後に配置される後側縦片5aと、後側縦片5aの上端部2aから前方Kに突出する前方突出横片5bと、前方突出横片5bの先端部に設けられて外装材2の上端部2aから離間して配置される係合部5cとが一体に構成されている。
【0019】
上記見切りカバー部6は、外装材2の前面2bに配置される前側縦片6aと、前側縦片6aの上端部2aから後方Hに突出する後方突出横片6bと、後方突出横片6bの先端部に設けられて上記見切りベース部5の係合部5cに引っ掛け連結される被係合部6cとが一体に構成されている。
【0020】
本例では、見切りベース部5の係合部5cは、前方突出横片5bの先端部を後下方に向かってム字状に折り返して構成されている。一方、見切りカバー部6の被係合部6cは、図2(b)に示すように、後方突出横片6bの先端部を後方Hに向けてV字形に折り返した上下方向に弾性変形可能なV字形折り返し部6c1と、V字形折り返し部6c1の先端下部を更に折り返した引っ掛け部6c2とで構成されていると共に、上下方向に弾性変形自在とされ、引っ掛け部6c2が上記係合部5cに対して着脱自在に引っ掛け連結される構造となっている。
【0021】
また、前側縦片6aの下端側からは水切り部7が一体に突設されている。この水切り部7は、図1に示すように、前側縦片6aの全幅に亘って外装材2の前方Kに向かって張り出した張り出し部7aと、その張り出し部7aの先端部分から下方に垂下した垂下部7bと、垂下部7bの下端部の鋭角に尖った水切り部分7cとが一体形成されている。
【0022】
さらに本例では、上記見切りカバー部6の下端部には、前端部8aが上記水切り部7の垂下部7bと連なり、後端部8bが外装材2の前面2bに当接する下カバー部8が一体に設けられている。本例の下カバー部8は、水切り部7から離れるに従って上り傾斜しており、水切り部7の水切り機能を損なわないようにしている。本例の下カバー部8は、後端部8bを外装材2の前面2bに当接させる長尺形状で且つ先端が折り曲げ形状となっているが、必ずしもこの形状に限らず、例えば、外装材2の前面2bから隙間をあけて配置される短尺形状で且つ先端が自由端形状となっているものであってもよい、
次に、見切り縁3の施工手順を説明する。先ず、外装下地材である横胴縁4に対して、見切りベース部5の後側縦片5aを下端耳部16よりも上方位置で釘14aにて固着し、その後、外装材2の上端部2aを後側縦片5aを介して横胴縁4に釘14bにて固着する。その後、見切りカバー部6を手で持ち、図2(b)のように見切りベース部5の係合部5cの前方突出横片5bの上方に被係合部6cの後方突出横片6bを位置させ且つ係合部5cの下方に被係合部6cの引っ掛け部6c2を位置させた状態で、被係合部6cのV字形折り返し部6c1を斜め前下方から係合部5cに向けて差し込むと、V字形折り返し部6c1が拡開して引っ掛け部6c2が係合部5cの下面を滑りながら移動して係合部5cの下方から弾性係止により引っ掛け連結される。この引っ掛け部6c2の引っ掛け方向は、見切りカバー部6の抜き差し方向(前後方向)と直交する方向(上下方向)であるので、図1のように係合部5cに対して確実に抜け止めされた状態となる。その後、見切り縁3の上面部と窓下枠1Aとのシーリング隙間40に、バックアップ材10及び防水シーリング材11を充填して取り付け施工を完了する。
【0023】
しかして、窓下枠1Aからの雨水や結露水等の伝い水は見切りカバー部6の水切り部7によって水切りされて地面に流し落とすことができるので、雨水や水滴等が窓下の外装材2に垂れ流れないようにすることができ、これにより、外装材2の汚れを防止できる。つまり、見切り縁3は本来の化粧機能に加えて水切り機能も備えた構造となるので、従来の水切り板を用いることなく、外装材2の汚染防止効果が得られる。
【0024】
しかも、従来のような水切り板を別途取り付けたり、水切り板のリベット固定を省略できると共に部品数を削減できるので、現場での施工がきわめて容易となる。
【0025】
さらに、見切りカバー部6の前側縦片6aから水切り部7を一体に突設させたことで、従来のような見切り縁3と別体の水切り板を取り付けた場合と比較して、見切りカバー部6全体の上下の外観幅を小さくすることが容易となり、納まりが良好となる。しかも見切り縁3と水切り部7とを同じ色柄に統一できるので、従来のような色合わせも不要となり、さらにサッシ窓枠1と近似色に揃えることも容易となる。
【0026】
また本例では見切りカバー部6に、水切り部7と外装材2間の隙間を下方から覆う下カバー部8を設けたことによって、水切り部7を張り出した構成でありながら見切り縁3の仕舞いを下カバー部8によって良好にできる利点がある。
【0027】
さらに本例では、見切り縁3を見切りカバー部6と見切りベース部5とに前後2分割し、見切りカバー部6の上端部2aを見切りベース部5の上端部2aに引っ掛け連結するので、見切り縁3の組立をワンタッチで行なうことができる。しかも、見切りベース部5の係合部5cと見切りカバー部6の被係合部6cとは、簡易な引っ掛け連結方式であるので、取り外しもワンタッチでできる。つまり、見切りカバー部6を取り外す場合は、防水シーリング材11及びバックアップ材10を除去してから、見切りカバー部6を手で持って斜め前上方に引っ張ると、被係合部6cのV字形折り返し部6c1が拡開して引っ掛け部6c2が係合部5cの下方に抜け出すことにより、ワンタッチで取り外せるようになるので、見切り縁3のメンテナンスや交換も楽に行なえるようになる。
【0028】
図3は、本発明の他の実施形態であり、上記見切りベース部5の後側縦片5aに、前方突出横片5bよりも上方に突出して先端が窓下枠1Aの下面に当接可能な突起部5dを突設させた場合の一例を示している。他の構成は図1の実施形態と同様であり、対応する部分には同一符号を付しておく。ちなみに、前記図2のように見切り縁3の後側縦片5aを外装下地材4に取り付ける際に、見切り縁3の上面と窓下枠1Aの下面との間に所定のシーリング隙間40が確保されるように、現場で後側縦片5aの取り付け高さを計算しながら取り付け作業を行なう必要がある。これに対し本例では、突起部5dの先端を窓下枠1Aの下面に当接させるだけで、後側縦片5aの取り付け高さが決まり、シーリング隙間40を計算せずに容易に確保できるものであり、これにより、現場での見切り縁3の取り付け作業の手間を削減できる。また本例のリブ状の突起部5dは防水シーリング材11のバックアップ材10(図1)としても機能するので、バックアップ材10(図1)を省略できる利点もある。なお突起部5dの形状は、後側縦片5aの上端部の全幅に亘って突出する形状に限らず、例えば後側縦片5aの上端部の幅方向に間隔をあけて複数個所から突出する形状であってもよく、要は、窓下枠1Aの下面に当たってシーリング隙間40を確保できる形状であればよい。
【0029】
なお前記実施形態では、シーリング隙間40にペースト状の防水シーリング材11(図1)を充填する場合を例示したが、他例として図4に示すように、見切りカバー部の後方突出横片の上面に固形の水密パッキン11aを予め貼着しておくことも可能である。これにより、現場でのシーリング作業の手間を省けるようになる。また水密パッキン11aとしては、バックアップ材10(図1)を必要としない固形状のものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に用いる水切り機能を有する見切り縁を備えた外装材の見切り構造を示す側面断面図である。
【図2】(a)は同上の見切りベース部を横胴縁に取り付けた状態の説明図、(b)は同上の見切りベース部に対して見切りカバー部を前方から引っ掛け連結する場合の説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態の説明図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態の説明図である。
【図5】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1A 窓下枠
2 外装材
2a 外装材の上端部
2b 外装材の前面
3 見切り縁
5 見切りベース部
5a 後側縦片
5b 前方突出横片
5c 係合部
6 見切りカバー部
6a 前側縦片
6b 後方突出横片
6c 被係合部
7 水切り部
8 下カバー部
H 後方
K 前方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓下枠と対向する窓下の外装材の上端部に見切り縁が取り付けられた外装材の見切り構造において、上記見切り縁は、見切りベース部と見切りカバー部とに分割され、上記見切りベース部は、外装材の背後に配置される後側縦片と、後側縦片の上端部から前方に突出する前方突出横片と、前方突出横片の先端部に設けられて外装材の上端部から離間して配置される係合部とが一体に構成され、上記見切りカバー部は、外装材の前面に配置される前側縦片と、前側縦片の上端部から後方に突出する後方突出横片と、後方突出横片の先端部に設けられて上記見切りベース部の係合部に引っ掛け連結される被係合部とが一体に構成されていると共に、上記前側縦片の下端側からその全幅に亘って外装材の前方に向かって張り出し且つその張り出した先端部分が下方に垂下した水切り部が一体に突設されていることを特徴とする外装材の見切り構造。
【請求項2】
上記見切りベース部の後側縦片に、前方突出横片よりも上方に突出して先端が窓下枠の下面に当接可能な突起部を突設させてなることを特徴とする請求項1記載の外装材の見切り構造。
【請求項3】
上記見切りカバー部に、前端部が上記水切り部と連なり後端部が外装材の前面に当接又は隙間をあけて配置されると共に水切り部から離れるに従って上り傾斜する下カバー部を一体に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の外装材の見切り構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−209617(P2009−209617A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55244(P2008−55244)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】