多孔膜マイクロ構造デバイス及びその製造方法
【目的】多孔膜を含むマイクロデバイスと関連して、例えば、膜マイクロ構造体内において実質的な漏洩なく触媒処理及び非触媒化学処理の如きを可能にする。
【構成】膜マイクロ構造デバイス(10)は、第1の凹部(32)を画定する第1のガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる板(12)と、第2の凹部(34)を画定する第2のガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる板(20)と、第1及び第2の板(12、20)の間に挟持される非金属多孔膜(30)とを含む。第1の板(12)、第2の板(20)及び多孔膜(30)が互いに組み合わせられて、多孔膜(30)が第1の凹部(32)及び第2の凹部(34)をカバーするように配置される。第1の凹部(32)は、第1の板及び多孔膜の間に第1のマイクロチャネルを画定する。第2の凹部(34)は、第2の板及び多孔膜の間で、第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【構成】膜マイクロ構造デバイス(10)は、第1の凹部(32)を画定する第1のガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる板(12)と、第2の凹部(34)を画定する第2のガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる板(20)と、第1及び第2の板(12、20)の間に挟持される非金属多孔膜(30)とを含む。第1の板(12)、第2の板(20)及び多孔膜(30)が互いに組み合わせられて、多孔膜(30)が第1の凹部(32)及び第2の凹部(34)をカバーするように配置される。第1の凹部(32)は、第1の板及び多孔膜の間に第1のマイクロチャネルを画定する。第2の凹部(34)は、第2の板及び多孔膜の間で、第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、マイクロ構造デバイスの分野に関し、特に多孔膜を組み込んだマイクロ構造デバイスに関する。本発明は広範囲なアプリケーションに適用され得るが、特にマイクロ流反応システム分野の抽出器、分離器、拡散器及び接触器に適している。
【背景技術】
【0003】
膜反応器と呼ばれる多孔膜を含む反応システムは、一般的に、多相複合供給体の分離、若しくは、単相体のフィルタリングの用途で使用される。一般的に、従来の膜反応器内の多孔膜は、ミクロからマクロまでのポロシティを呈し得て、幅広い材料から製造され得る。多孔材料は、それらの(平均)ポアサイズによって一般的に分類されている。マイクロ多孔材料は、一般的に10ナノメータ(nm)以下のポア直径を有する。メゾ多孔材料は、一般的に約2.0から50.0nmの範囲内のポアを有する。マクロ多孔材料は、一般的に約250nm程度の大きさのポアを含む。記号及び用語のIUPACマニュアルの付録2、第1章コロイド及び表面化学、ピュア・アプライド・ケミカル1972年第31巻第578頁を参照されたい。他の要因としては、平均ポア・サイズによって、特定のアプリケーションに必要とされる特定の多孔膜が触媒材料の支持構造体として供され得る。
【0004】
膜反応器に使用される多孔膜は、所与の反応器内の膜の役割若しくは機能に基づいて一般的に分類される。従来、膜反応器内の多孔膜は、3つの機能のうちの1つによって分類され得る。膜の機能は、従来の反応器での歩留の向上のために主として反応器から選択的に平衡非開放系反応生成物を取り除くことであって、若しくは、複雑な混合物内の1又はいくつかの成分を除去することである。この膜反応器は、一般的に「抽出器」として分類される。他のアプリケーションにおいて、膜の役割は、連続反応を生じるように反応物を添加することである。目標とする生成物がしばしば初期添加物の生成物であるとき、膜を通過する浸透力によって反応物の濃度の調整が選択性を改良し得る。従来の反応器と比較して、反応物の同量が導入されるが、それらの一部は触媒床に沿って膜によって分配される。故に、このような膜反応器は、一般的に「分配器」若しくは「拡散器」と呼ばれる。膜反応器の第3のタイプは、一般的に膜の独特な結合構造(例えば2つの媒体を分離している浸透壁)を利用する。膜が触媒の支持体でもあるとき、膜の両側から反応物を供給して(例えば、一方の面からガスを、他方の面から液体を供給するなど)、若しくは、反応壁を通過する反応混合を強制することが可能である。第1の場合において、従来の反応器における性能を制限する触媒及び反応物(例えば、ガス−液体−固体プロセスにおけるガスと親水性触媒を有する疎水性反応物など)の間の接触を良好にすることが可能である。第2の場合において、反応物及び生成物の活性ポア内の滞在時間は、動作パラメータ(膜を横切る圧力降下)によって制御されて、拡散によっては制御されない。これは、活性度若しくは選択性のより良い制御をなし得る。この2つの場合において、膜の役割は、反応物及び触媒の間の接触を良好にすることである。このような膜反応器は、一般に「接触器」として知られている。より詳細には、第1の接触モードは「界面接触器」として、第2のモードは、「フロー・スルー接触器」として参照される。
【0005】
従来技術で利用される典型的な膜反応器は、同心チューブ(インナーチューブ膜)から形成される。ある1つのチューブタイプ膜反応器は、充填床膜反応器(PBMR:packed bed membrane reactor)として公知である。このような膜反応器は、セラミック・チューブのコアボリュームに配置した管状の多孔性セラミック膜及び固定床触媒を結合している。膜反応器モジュールは、一般的に触媒を詰め込んだ複合膜チューブを含むステンレスシェルからなる。一般的に、膜チューブの端部にはエナメルが与えられるとともに、内側(保持液側、つまりチューブ側)コンパートメント及び外側(透過液側、シェル側)コンパートメントの間での締結を確実にするために、例えば黒鉛シールのような圧縮部品を与えられる。従来のチューブ・タイプ膜反応器において、液体がチューブの一端部で反応器に分配されるだけで、反応器の他端部は排出口として働く。当業者であれば直ちに認識されるように、このようなチューブ・タイプ反応器の工業化及び並列化は、複雑であって、実現困難である。更に、反応の制御は、反応器の外部、特に導入口の上流における複雑な液体の管理を必要とする。これらの欠点に加えて、チューブ・タイプ膜反応器の構造は、触媒材料の機械的な支持の弱点を有しており、簡単には封止されないのである。よってデバイスからの漏洩が一般的に生じて、効率に大きく悪影響を与えていた。
【0006】
マイクロ反応器技術の出現とともに、近年、膜反応器の大きさを減じて、上記したシーリング及び漏洩の欠点を最小にする試みがなされている。マイクロ反応器についての取り組みに関連して、多孔膜は、金属フレームを有する枠体の周囲に支持されて、マイクロ反応器内の多くの薄膜層のうちの1を形成する。多孔膜は典型的にはミクロ機械加工された金属層、例えばステンレス鋼又は銅であって、プラスチック及びセラミックのような材料は実験的な課題であった。このような多孔質層を形成するのに必要なマイクロ積層技術及びその他の技術は、一般に大量生産のためのコスト阻害となり、これらの技術によって製造される多孔膜が、化学処理のために限定的な用途にしか供され得ないのである。表向き利用できない従来技術ではあるが、必要とされることは、多孔膜を含むマイクロデバイス、及び、公知の膜マイクロ反応器と関連した欠点を克服するマイクロ構造デバイスの製造方法である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの特徴は、集積化マイクロ構造体に関する。かかるマイクロ構造体は、第1の凹部を画定する第1の複数の壁を有する第1の板と、第2の凹部を画定する第2の複数の壁を有する第2の板と、第1及び第2の板の間に配置されたガラス、セラミック若しくはガラスセラミックからなる多孔膜とを含む。第1の板、第2の板及び多孔膜は、互いに結合され、当該多孔膜が第1の複数の壁及び第2の複数の壁と協働して、第1のマイクロチャネル及び当該第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【0008】
他のマイクロ構造体は、第1の凹部を画定する第1のガラス、セラミック又はガラスセラミック板と、第2の凹部を画定する第2のガラス、セラミック又はガラスセラミック板と、第1及び第2の板の間に挟まれる非金属多孔膜とを含む。第1の板、第2の板及び多孔膜が互いに結合され、当該多孔膜が第1及び第2の凹部をカバーするように配置されて、第1の板及び多孔膜の間の第1のマイクロチャネル、及び、第2の板及び多孔膜の間にあり第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【0009】
追加の本発明の特徴は、マイクロ構造体を製造する方法に関する。1つの典型的な方法は、第1の凹部を画定する第1の壁の複数を有する第1の板の頂部にプリカーサ材料を配置するステップと、第2の凹部を画定する第2の壁の複数を有する第2の板を第1の板と組み合わせるステップとを含む。ここで、プリカーサ材料は、第1及び第2の板の間に配置されて、第1及び第2の凹部の少なくとも一部を覆っている。組み合わせられた第1及び第2の板は、プリカーサ材料を第1及び第2の板に結合したガラス、セラミック又はガラスセラミック多孔膜に変化させるのに十分な温度まで加熱される。
【0010】
ここに開示した膜マイクロ構造デバイス及びその製造方法は、他のマイクロ構造デバイス及び公知の製造法に勝る多くの利点がある。例えば、ここに開示した多孔膜マイクロ構造デバイスの一体的な構造は、従来技術では実現出来なかった多孔膜に十分な機械的支持を与える。加えて、このような構造により、膜マイクロ構造体内において実質的な漏洩なく触媒処理及び非触媒化学処理を可能にするのである。
【0011】
加えて、ここに開示した膜マイクロ構造デバイスは、抽出器、拡散器及び接触器に適用可能である。実施例としてこれに限定されるものではないが、この膜マイクロ構造体が使用されるのは、H2/炭化水素分離、メタン蒸気リホーミング、アルカン選択酸化、液相水素付加及び酸化、水素生成、ゼオライト吸収による汚染物除去、水からの揮発性有機化合物の分離、陽子化膜(マイクロ燃料セル)を使用したエネルギー生成である。
【0012】
なお更なる効果は、ここに開示した膜マイクロ構造デバイス内に画定されるマイクロチャネルのマイクロスケールの内部の大きさから得られる。一般的に、マイクロスケールのマイクロチャネル大きさは、体積に対する表面比を高めて、多孔膜による流体相互作用を最大化するのである。この場合、多孔膜は1以上の触媒を含浸若しくは支持する場所で、多孔膜を経た流体/触媒の接触が最大となる。この結果、生産性及び歩留まりの向上が達成されるのである。
【0013】
ここに開示したマイクロ構造体及び方法の追加の特徴及び効果は、後述される発明の詳細な説明に記載される。部分的には、当業者であれば該記載から直ちに理解されるであろうが、ここに記載される本発明の実施例を実行することによっても認識されるであろう。
【0014】
前述の一般的な記述及び以下の詳細な説明は、単に実施例であって、特許請求の範囲に記載される本発明の性質及び特性を理解するための概要若しくは枠組みを与えることを意図している。添付の図面は、開示したマイクロ構造体及び製造方法の更なる理解を与え、本発明の多様な実施例を例示するるために含まれており、明細書の記載と共に、開示したマイクロ構造体及び製造方法の原理及び動作の説明に供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここに開示の多孔膜マイクロ構造デバイスは、分離器、抽出器、拡散器及び接触反応器に使用され得る。製造時において従来のマイクロ積層プロセスを使用しないので、製造時のコストを低減できる。とりわけ、ここに開示した多孔膜マイクロ構造体の一体的な構造は、多孔膜の十分な機械的支持と、化学プロセシングの間の実質的な漏洩とを除去するのである。ここに開示の多孔膜マイクロ構造体の製造方法は、少ない費用且つ製造容易性を介して、結果として有利な歩留まりを提供するデバイスとなるのである。
【0016】
本発明は、広義に、膜マイクロ構造体及びその製造方法に関する。ここでの膜マイクロ構造体は、特に化学プロセシング装置に適しており、膜マイクロ構造体内の触媒反応を促進するように構成され得る。マイクロ構造体内の膜が有機体の場合、膜はマイクロ構造体のアプリケーションに応じた機能化が容易である。この種の膜マイクロ構造体は、単一の単位デバイスとして働く一方で、複数の膜マイクロ構造体が積層されて、特に、歩留りを向上させ、膜マイクロ構造体を通過する流量を増加させるので、処理可能な化学体積を増加させ得るのである。
【0017】
加えて、膜マイクロ構造体は、容易に集積化できる故に、例えば熱交換器や混合器のような他の機能を組み合わせることが可能である。膜マイクロ構造体は、膜マイクロ構造体の多彩なコンポーネントを保持する支持体構造を含み得る。例えば、多彩なフロー制御素子、混合器、熱制御器、検出ユニット、分離チャンバー、分析チャンバー、モニターリングチャンバー、他のタイプの反応チャンバー、及び、マイクロ流体化学プロセシング装置及びシステムに関連する全てのコンポーネント若しくは装置と集積化され得る。
【0018】
特定のコンポーネントは、熱交換器と膜との間の距離が約1センチ(cm)となるように、マイクロ構造体内の膜の両側に配置され得る。追加の実施例によると、混合器と膜との距離が約0から1cmであるように、混合器は膜マイクロ構造体と一体化され得る。他の実施例において、混合器と膜との間の距離は、約2ミリメータ(mm)である。他の実施例において、フロー制御器は、膜マイクロ構造体と一体化され得る。例えば、フロー制御器は、毎分約0.01から100ミリリットル(ml/min)の流量調節をし得る。例えば、1の機能化コンポネント(例えば加熱器、若しくは、混合器)と膜との間を流れる成分の典型的な時間は、1分未満である。他の実施例において、平均滞留時間は10(ms)未満であってもよい。
【0019】
添付の図面において示される本発明の実施例について詳細に説明する。可能な限り、同じ参照番号は、図面の全体に亘って同じ若しくは同様の部分を参照するために使用される。ここに開示の膜マイクロ構造体の実施例は、図1A−1Cに図示されて、参照番号10によって全体に亘って参照される。
【0020】
図1Aは、第1のアセンブリ化されていない膜マイクロ構造体10を示す。膜マイクロ構造体10は、少なくとも1つの凹部16を画定する複数の隔壁14を有する第1の板12を含み、これは好ましくは、ガラス、セラミック又はガラスセラミックから形成される。1つの実施例において、導入/排出口18は、第1の板12を通って延在し、少なくとも1つの凹部16と封止的に連通している。膜マイクロ構造体10は、少なくとも1つの凹部24を互いに画定する複数の第2の隔壁22を有する第2の板20を更に含む。第2の板20は、少なくとも1つの凹部24と連通する少なくとも1つの導入/排出口26を含む。プリカーサ材料層28は、第1の板12及び第2の板20の一方若しくは双方の上に配置され得る。プリカーサ材料層28は、1つ以上の凹部16及び24の少なくとも一部分をカバーして、少なくともその一部分において、隔壁14及び22の複数によって支持される。以下においてより詳細に記載されるように、1つの実施例において、プリカーサ材料層28は、硬化工程によって、ここに開示の多孔膜を形成するのである。
【0021】
図1Bは、図1Aに図示した板12及び20の組立後の第1の膜マイクロ構造体10を示している。図1Bは、凹部16及び18の複数を通る線に沿った膜マイクロ構造10の断面図を示している。1つの実施例において、膜マイクロ構造体10は、充分な加熱処理(以下に開示の製造方法に記載される。)によって、第1の板12、第2の板20及びその間に挟持された多孔膜30を含む一体的なデバイスとなる。詳細に後述するように、多孔膜30は、1つの実施例において、ガラス、セラミック又はガラスセラミック・フリットからなるプリカーサ材料層28の充分な加熱処理によって得られる。多孔膜30、隔壁14の複数及び第1の板12は、少なくとも1つのマイクロチャネル32を画定する。これとともに、多孔膜30、第2の隔壁の複数及び第2の板20は、少なくとも1つのマイクロチャネル34を画定する。マイクロチャネル32、34は、膜マイクロ構造体10内において処理される1つ以上の化学材料の流動経路を提供する。特に、多孔膜30の気孔率は、マイクロチャネル32、34の間の選択的流体連通を提供する。隔壁14及び22の複数及び凹部16及び24は図1Bに示すように完全に整列している。一方、隔壁14,22及び凹部16、24は、例えば、サイズ、幅及び/若しくは角度について互いにオフセットされている。
【0022】
図1Cは、導入/排出口18及び26を通って、マイクロチャネル32及びマイクロチャネル34の長手方向に見た図である。1つの実施例によれば、第1の板12、第2の板20及び多孔膜30は、流体−密接法で、互いに封止される。マイクロチャネル32及び34と膜マイクロ構造体10の外部との間の流体連通は、導入/排出口18及び26によって提供され得る。これは詳細に後述されるように、膜マイクロ構造体10の内外を通過する化学薬剤若しくは他の液体のための導入口若しくは排出口として機能するのである。一般的に、導入/排出口18及び26は、膜マイクロ構造体10の外部に薬品若しくは他の液体を運搬するための導管若しくはその他装置(図示せず)に接続し得る。他の実施例において、導入/排出口18及び26は、並行作業を容易にするために、他の膜マイクロ構造体10若しくは他のマイクロ構造体装置の導入/排出口18及び26に実質的に一列に整列し得る。ある実施例では、1つ以上の膜マイクロ構造体10が他のマイクロ構造体装置の上に若しくはこれと平行に積層されて、積層プレート・マイクロ構造体の配列を形成する。一般的には、このような配列はより高い流動体積を与えて、故に高い歩留まりを与えるのである。
【0023】
図1B及び1Cに明らかに示されているように、本実施例によれば、多孔膜30は、好ましくは膜マイクロ構造体10内に完全にカプセリングされ得る。図のように、第1の板12及び第2の板20は、膜マイクロ構造体10の周囲に沿って延在する板状インタフェース36で互いにシールされる。つまり、第1の板12及び第2の板20は、異なった材料から製造され得るが、板12及び20については、第1の板12及び第2の板20を接合する接合技術を用いることが可能なのである。
【0024】
図2Aは、第2の非アセンブリ化膜マイクロ構造体10’を表している。膜マイクロ構造体10’は、複数の隔壁14’を有する、好ましくはガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる第1の板12’を含み、これらは少なくとも1の凹部16’を画定する。導入/排出口18’は、好ましくは第1の板12’を通って延在し、少なくとも1つの凹部16’と連通する。膜マイクロ構造体10’は、少なくとも1つの凹部24’を画定する複数の隔壁22’を有する第2の板20’を含み得る。第2の板20’は、少なくとも1つの凹部24’と連通する少なくとも1つの導入/排出口26’を含み得る。プリカーサ材料層28’は、第1の板12’及び第2の板20’の一方若しくは両方の上に配置される。プリカーサ材料層28’は、1以上の凹部16’及び24’の少なくとも一部を覆い、少なくともその一部で複数の壁14’及び22’によって支持される。詳細に後述するように、プリカーサ材料層28’は、ここに開示の製造法による硬化ステップによって、やはりここに開示の多孔膜を形成するのである。
【0025】
図2Bは、図2Aに図示した板12’及び20’のアセンブリによる他の膜マイクロ構造体10’を図示する。図2Bは、凹部16’及び18’の複数を通過するラインに沿った膜マイクロ構造体10’の断面図を示している。以下に詳細に説明する1つの実施例の製造方法における膜マイクロ構造体10’の充分な加熱処理によって、単位デバイスが第1の板12’、第2の板20’及びこれらの間に挟まれた多孔膜30を含むのである。更に詳細に以下に記載するように、多孔膜30’は、プリカーサ材料層28’の充分な加熱処理によって形成され得る。これは1つの実施例において、ガラス、セラミックまたはガラスセラミック・フリットであってもよい。多孔膜30’、複数の壁14’及び第1の板12’は、少なくとも1つのマイクロチャネル32’を画定する。一方で、多孔膜30’、複数の第2の壁22’及び第2の板20’は、少なくとも1つのマイクロチャネル34’を画定する。マイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’は、膜マイクロ構造体10’内で処理される1以上の化学薬品のための流動経路を与える。特に、多孔膜30’の多孔性がマイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’の間の選択的流体連通を与える。
【0026】
図2Cは、導入/排出口18’及び26’を横切り、マイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’の長さ方向に沿った膜マイクロ構造体10’の断面図を表す。第2の実施例によると、第1の板12’、第2の板20’及び多孔膜30’は、流体−密接法で互いにシールされる。マイクロチャネル32’及び34’と、膜マイクロ構造体10’の外部との間の流体連通は、導入/排出口18’及び26’によって提供され得る。導入/排出口18’及び26’は、更に詳細に後述するように、膜マイクロ構造体10’の中若しくは外を通過する化学薬品若しくは他の流体のための導入口若しくは排出口として機能する。一般的に、導入/排出口18’及び26’は、膜マイクロ構造10’の内部及び/若しくは外部を、薬剤若しくは他の流体が運搬されることを容易にするための導管若しくは他の装置(図示せず)に接続し得る。他の実施例において、導入/排出口18’及び26’は、並列化を容易にするために、他の膜マイクロ構造体10’若しくは他のマイクロ構造装置の導入/排出口18’及び26’に実質的に並んで配置され得る。1つの実施例において、1以上の膜マイクロ構造体10’が他のマイクロ構造体デバイス上若しくはこれと平行に積層されて、積層された板マイクロ構造体の配列を形成する。一般的に、このような配列は、より高い流動体積を与えて、より大なる歩留りを与える。
【0027】
図2B及び2Cに示されるように、第2の実施例によれば、多孔膜30’は、膜マイクロ構造体10’の中心部全体に亘って延在し得る。図示したように、第1の板12’及び第2の板20’は、各多孔膜30’を結合して、単位の膜マイクロ構造体10’を形成する。故に、第1の板12’及び第2の板20’は異なる材料から製造されるが、多孔膜30’と第1の板12’及び第2の板20’との適切な結合を容易にするためには、板12’及び20’がプリカーサ材料層28’と互換性を持ち得るのである。
【0028】
上記実施例のいずれにおいても、多孔膜30は、それ自身でマイクロ多孔質材料であればよく、この場合には、多孔膜30は、膜支持体及び多孔膜として機能する。他の応用において、多孔膜30は、メゾ多孔体材料若しくはマクロ多孔体材料であってもよく、この場合、多孔膜30は好ましくは多孔膜支持体として機能する。メゾ多孔膜若しくはマクロ多孔膜30は、有機材料若しくは非有機材料を有し得る。更に詳細に以下で記載されるように、「有機若しくは無機材料を有するステップ」は、コーティングステップ及び/又は含浸プロセスを含む。コーティングにおいて、マイクロ多孔材料は、メゾ若しくはマクロ多孔材料上にコーティングされ得る。用途によって、適用される膜材料は、その性質において触媒的若しくは非触媒的であってもよい。
【0029】
例えば、非触媒性マイクロ多孔材料は、膜30により大なる分離機能を与えるためにメゾ若しくはマクロ多孔材料に与えられ得る。膜30上のコーティングは、その中に1以上のmoeitiesを導入して膜30の機能性を変化させる。例えば、膜30は、その湿潤特性を変化させるシラン化プロセスを経ることができる。
【0030】
膜30のシラン化は、膜30の親水化、疎水化を達成する。疎水性機能の付与の1つの方法は、以下の方法で達成し得る。ジメチルジクロロシラン約3gを12molの塩酸約15ml及びエタノール約85mlと混ぜ合わせる。膜の両側のチャネルがジメチルジクロロシラン/塩酸/エタノール溶液で満たされる。室温で約1時間放置後、チャネルに水を流して洗浄し、マイクロ構造体10を約80℃で2時間乾燥させる。
【0031】
膜30の有機機能化は、以下の方法によって達成し得る。膜30の両面のチャネルがフルオロ界面活性水溶液で満たされる。使用され得るフルオロ界面活性剤は、米国ミネソタ州セントポールの3M社製のFluorad(商標)である。室温で約1時間放置後、チャネルが流水で洗浄されて、マイクロ構造体10は約80℃で約2時間乾燥させられる。
【0032】
メゾ多孔体膜は、また、コーティング若しくはメゾ多孔体膜のポアを満たす材料を注入することで、「機能化させる」ことができて、実質的にマイクロ多孔膜となるのである。特定の商用的な使用に有益なマイクロ多孔膜材料を供するためには、(ミクロン若しくはサブミクロン範囲の)小なる実効厚さを有する機能複合材料が使用され得る。マイクロ多孔膜を形成するためのメゾ多孔膜の改質は、ゾル−ゲル及び化学蒸着(CVD)法、分子ふるいカーボンを形成するポリマーの炭化、及び/又は、ゼオライト及び他のモレキュラーシーブの多結晶膜成長によって達成され得る。これらの方法を使用して、0.1mol/(m2s)程度の流量が達成され得る。
【0033】
図3乃至6を参照して、膜マイクロ構造10、10’の動作の実施例について下に説明する。図1A乃至1Cに図示される膜マイクロ構造体10を参照すると、多孔膜30の後述する動作、すなわち機能は、図2A乃至2Cの膜マイクロ構造体10’と同様である。
【0034】
図3は、分離機能を達成する膜マイクロ構造体10を示している。一般的に、反応が生じた後、反応生成物(A+B)は、導入口38を通過してマイクロチャネル32に入る。1つの実施例において、反応生成物Bが多孔膜30を通ってマイクロチャネル34に浸透し、排出口40を経て膜ミクロ構造体10の外へ運ばれるように、多孔膜30が構成される。排出口42を出るまで、反応生成物Aはマイクロチャネル32を通過し続ける。その結果、Aの歩留りは従来のマイクロ反応器と比較して上昇する。そして/または、AがBから分離される。
【0035】
図4は、膜マイクロ構造体10の他の抽出器の実施例を表す。図4に図示した実施例によると、膜マイクロ構造体10内に形成される圧力差を経て、反応物A及びBは、導入口38を通ってマイクロチャネル32に導入される。A及びBは、反応生成物C及びDをもたらす膜マイクロ構造体10のマイクロチャネル32内で反応し若しくは反応を生じさせられる。この多孔膜30の特性は、反応生成物Dをマイクロチャネル34の中へ且つ排出ポート40の外に多孔膜30を介して通過させることを可能とする。一方、多孔膜30のこの特性により、反応生成物Cが多孔膜30を通過することを防止する。したがって、反応生成物Cは、マイクロチャネル32を通過し続け、排出口42を通過する。膜マイクロ構造体10のこの実施例によって与えられる反応及びこれに続く分離は、例えば、多孔膜30に触媒をコーティング若しくは注入することにより上昇させ得る。Dより多くの反応生成物Cを生じることが好ましい場合、Cの歩留りは反応の間の除去によって上昇させ得る。例えば、Cの歩留りは、管形反応器において実行されて、約30%から約70%まで上昇させ得る。
【0036】
図5は、分配器若しくは拡散器として機能する膜マイクロ構造体10を表す。図示したように、第1の反応剤Bは、導入口44を介してマイクロチャネル32に導入され、第2の反応剤Aは、導入口46を介してマイクロチャネル34に導入する。反応剤Bがマイクロチャネル32を横切ると、反応剤Aは、多孔膜30に広がり、反応剤Aがマイクロチャネル32に入って反応剤Bと反応する。特に、膜を介した浸透によって調整された反応剤の濃度が選択性を改善し、そして反応生成物Cは、排出口48を介してマイクロチャネル32の外へ出るのである。反応剤Aは、マイクロチャネル34を介してリサイクルされる。この種の反応の実施例は、水素ガスと分子の水素化反応であり得る。
【0037】
図6は、接触器として機能する膜マイクロ構造体10を図示している。マイクロ構造体10の接触器への適用において、多孔膜30は、触媒を含んでも、含まなくとも良い。多孔膜が触媒の支持体として供される実施例において、多孔膜30の両側から反応物(例えば、一方からガス、他方から液体)を供給したり、若しくは、反応混合物を反応隔壁を通して押し込むことが可能である。図示した実施例において、反応剤Aは、導入口50を介してマイクロチャネル34に導入される。一方、反応剤Bは、導入口52を介してマイクロチャネル32に導入される。マイクロチャネル32及びマイクロチャネル34の間に多孔膜30を配置すると、多孔膜30の上下両面がコーティングされ若しくは反応触媒を注入されていると、反応剤A及びBは、この触媒と相互作用を生じない。結果として、反応剤A及びBは、多孔膜30の内部で互いに反応して、反応生成物Cが排出口54から排出される。図6において記載される配列は、反応選択性を改善する物質移動限界を避けて、反応を最適化する。図5に記載の反応剤Aは、マイクロチャネル34を介してリサイクルされる。
【0038】
あるいは、図示しないが、図6に示した膜マイクロ構造体10は、第2の板20内に排出口を含むように構成され得る。このような実施例において、反応剤Aは、例えば、ニトロ化反応を容易にするためにマイクロチャネル34に導入され得る。反応剤Aは、多孔膜30を介して浸透して反応剤Bと化学反応する。一方、溶液の残りは、マイクロチャネル32に入ることを防止できて、第2の板20内の排出口を出るのである。
【0039】
膜マイクロ構造体10、10’を形成するための板12、12’は、異なるいくつかの方法で得られる。ある方法は、(完全にガスの気泡の閉じ込めを防止するために)真空下で、ガラス、ガラスセラミック、セラミック、金属、シリコンのような半導体若しくはこれの組み合わせから選択される材料からなる第1の基板上に、ガラス、ガラスセラミック、セラミック若しくはこれらの組み合わせのプリカーサとなる有機媒体及び材料の第1の混合物からなる所望のマイクロ構造形状を形成することを含む。この「真空アシストマイクロモールディング法」によれば、関連するプリカーサ材料は、第1の基板を構成する材料と熱膨張係数に関して互換性を有し得る。生成される形状に対して機械強度の少なくとも最小値を与える条件で真空成形は実行され得る。
【0040】
成形された混合物は、第1の基板及び成形された混合物を含むアセンブリに適当な熱処理を与えることによって予備焼結される(この予備焼結は、有機媒体を除去して及び構造体を圧密化する)。例えば、ガラス、セラミック又はガラスセラミック・フリットからなるプリカーサ材料層28、28’がモールド成形体の上面に与えられる。ここで、プリカーサ材料は、実質的に接触し得るプリカーサ材料の実質的に全てと、熱膨張係数に関して互換性を有する。プリカーサ材料は、製造される実施例により、板の表面全体、若しくは、板の中心部全体に与えられ得る。
【0041】
第2の板20、20’は、板12、12’について記載した上記方法に従って製造され得る。要求はされないが、プリカーサ材料層28、28’は、板20、20’の表面全体、若しくは、その中心部全体に与えられ得る。プリカーサ材料層が互いに対向するように、そして成形された形状の間に画定される凹部がプリカーサ材料層の対向する側面に実質的に整列して配置されるように、第1の板12、12’、第2の板20、20’は組み合わせられる。得られたアセンブリは、プリカーサ材料及び板を互いに結合するために熱(焼結)処理される。
【0042】
一般的に、真空成形は、特にプリカーサ材料に加えられる有機媒体の特性を考慮してさまざまな異なる方法で実行され得る。特に、混合物の有機媒体は、熱可塑性媒体、熱硬化性媒体、若しくは、光重合媒体によって構成され得る。
【0043】
加えて、この方法は以下の方法のうちの1以上において開始され得る。(例えば、真空エンクロージャ内の)成形操作におけるモールドの適用に先立って、第1の混合物が第1の基板上に配置されて、若しくは、モールドがまず第1の基板上に配置されて、真空引きされてからその内部に混合物が注入され得る。熱可塑性媒体が混合物に使用される場合、混合物を加熱してから適当なモールドで成形されて、冷却後、モールドから取り外され得る。媒体が熱硬化性媒体である場合、混合物は適当なモールドに室温(外界温度)において成形加工されて、(成形加工されたまま)加熱・冷却してモールドが取り外され得る。媒体が光重合媒体である場合、適当なモールドで混合物を室温において成形加工することが可能である。成形加工後、適当な照射線(例えば、紫外線、X線)に曝されて、モールドが取り除かれ得る。使用されるモールドは、適当なマスターモールドから所望の最終的な形状に準備されて成形される。
【0044】
真空成形は、プリカーサ媒体及び有機材料の混合物でレリーフに形成し得る。特徴的な方法において、基板上に支持されながら混合物を変形することによって形状が得られる。基板は、好ましくは一切エッチングを受けない。
【0045】
支持された構造体を予備焼結するので、この予備焼結は容易であって、且つ、構造体はその平面を維持出来るのである。予備焼結によって、アセンブリの前(構造体を閉じる前)に混合物から有機成分の大部分を除去する。構造体を損傷することなくガスを逃がさなければならず、複雑な三次元構造体から揮発性成分を除去することは困難とされる。ガラス、ガラス・セラミック、セラミック、金属若しくは半導体からなる基板の使用は、サブ構造体が壊れやすい自己支持形状のサブ構造体のような形成や取り扱いを必要とせずに容易に製造出来る点で有利である。構造体はたわんだり、ゆがんだりしない故に、離間したチャネル壁及び/又は複雑な壁形状を提供することが可能である。影響を最小限に抑え、多くの場合、実質的又は全く影響を受けないパーツの機械的挙動とともに、例えば基板上に導電体、電極又は光導電体のような追加のパーツを導入することが容易である。
【0046】
材料が成形混合物に与えられた後、予備焼結が一般的に実行される。添加材料は、プリカーサ材料に対して不活性であって、有機媒体を吸収する。不活性吸収材料の添加は、成形混合物がたわんだり、つぶれたりし得る範囲を最小にする。吸収材料は、一般的に、予備焼結のための加工された混合物の上へスプレーされるか若しくはふりかけられる。
【0047】
操作を繰り返さない場合にあっては、開示された方法は、第1及び第2の板を互いに組み合わせることで単位の膜マイクロ構造体を提供することが可能である。板の一方はボトムプレートとして働き、他方はトッププレートとして働く。操作を繰り返す場合にあっては、この方法は、1以上の共通板を有するn膜マイクロ構造体を含む積層膜マイクロ構造体を提供することが可能である。1又はnの膜マイクロ構造体は、接着剤を使用して若しくは膜形成プロセスの間(例えば、焼結の間)、他の1と固着され得る。複数の膜マイクロ構造体が積層されるか若しくは縦方向位置、垂直位置、水平位置、傾斜位置、若しくは、公知の他の配向に配置される。
【0048】
上記したステップに加えて、開示された方法は、追加のステップを含むことができる。流路は、穿孔によって与えられ得て、例えば、流体循環を許容し、流体の出入りを許容し、且つ、1の素子のチャネルから他の素子のチャネルへの流体の通過を許容するのである。穿孔作業は、互いに組み合わせられたパーツ、好適には予備焼結された混合物に行われる。加えて、1以上の追加のパーツが嵌入され得る。特に、挿入されたパーツは、含まれる基板のうちの1の上及び/又は含まれるプリカーサ混合物内、又は、第1及び第2の基板の少なくとも1と対応する第1又は第2の混合物との間に挿入された中間層内の上述したタイプ、例えば、いくつか例を挙げると、導電体、電極、光導電体などである。マイクロ構造デバイスの各素子を製造する間、少なくとも1つの中間層(例えば、シリコン(Si)の薄い層、ガラス、セラミック又はガラス・セラミックの層)を膜マイクロ構造体の一部を生成するために、基板及びプリカーサ混合物の間でスライドさせることが完全に可能である。例えば、電極は従来の転写、フォトリソグラフィ若しくは電鋳技術によって形成され得る。
【0049】
膜マイクロ構造体10を製造する1つの典型的な方法が図7に図示される。1つの実施例において、まずレリーフでマイクロ構造体が基板56(例えば、Siガラス)の上に作られる。マイクロ構造体は、例えば、ガラス・フリット及び熱可塑性媒体を含む混合物58をモールドして製造される。2つの異なる技術を概略的に示す。図7の右上角の(a)に図示した方法は、米国特許第5,853,446号に記載された方法と同様であって、特に、当該特許の実施例4に記載された方法により詳細に類似している。なお、当該特許の開示内容は、引用により本願明細書に包含されるものとする。この方法によると、混合物58は基板56上に配置される。混合物58を運ぶ基板56が熱平衡的に制御された支持体60上に配置される。好ましくはエラストマからなる適当なモールド62が前もって準備される。モールド62が支持体64上に配置され、ヒーター素子66に固定される。素子66、64及び62を含むアセンブリは、モールド62がエンクロージャ内の混合物58に与えられる前に、エンクロージャ68の内部を真空引きしてガスを除去される。混合物58のこの脱気によって、形成された混合物に実質的に若しくは完全にガスの気泡が閉じ込められることを防止する。
【0050】
図7の左上角の(b)図に示された方法は、前もって基板56の上に配置されて、モールド62に混合物58を注入する方法である。基板56及びモールド62を含むアセンブリは、ピストン74の動作で開口及び閉口に適したジャケット72の内部にあって、2つのホットプレート70の間に配置される。モールド62の内側が減圧機構76によって排気された後、混合物58がインジェクタ78で注入される。熱成形プロセスの最終工程では、熱成形されたアセンブリがボトムホットプレートに貫挿されているエジェクタ80を使用して取り外される。
【0051】
真空成形ステップが実行された後、混合物82は、基板56に固定される。これは熱成形された混合物58を含む。アセンブリが加熱処理されて、混合物82が予備焼結される。混合物は、参照番号84で参照されて、この混合物は主に熱処理ガラス・フリットを含む。
【0052】
同時に、第2の板が膜マイクロ構造体10のために用意される。第2の板は、第1の板と同タイプでありえる。固定されて予備焼結された混合物84を有する基板56を含む。
【0053】
1つの実施例によれば、好ましくはガラス、ガラスセラミック若しくはセラミック・フリットであるプリカーサ材料層28は、各板の熱形成混合物84に沿って堆積させられる。各板の混合物84は、好ましくは複数のマイクロチャネル隔壁14及び22を画定する。1つの実施例によれば、プリカーサ材料層28は、好ましくは隔壁14の表面全体に実質的に均一に広げられて、混合物84によって画定される凹部16の各々をカバーする。図に示すように、第1の板の外壁15は基板56から内壁よりも好ましくは更に伸長している。このように、図示された実施例において、プリカーサ材料層28は、実質的に外壁15の先端と平坦になるように、第1の板の外壁15の間に実質的に均一に展開する。
【0054】
第1の板のプリカーサ材料層28が第2の板の熱成形混合物84に対向するように、第1及び第2の板は、実質的に若しくは完全に整列配置される。第1及び第2の板は、壁が実質的に整列配置されて互いに係合するように配置される。得られるアセンブリは、その後、適切な条件で熱処理を受けて、膜マイクロ構造体10を生成する。配置されて密封された膜マイクロ構造体10は、熱処理によって形成された多孔膜30上のマイクロチャネル86の第1の複数と、多孔膜30下のマイクロチャネル88の第2の複数とを画定する。マイクロチャネル86及び88は、実質的に互いに整列されて、多孔膜30によって分離され得る。物理的に多孔膜30によって分離されて、多孔膜30は、マイクロチャネル86及び88の間の選択的流体連通を提供する。
【0055】
開示されたマイクロ流反応器の製造方法に関する更なる詳細は、米国特許第6,595,232号に記載されている。
【0056】
また、開示された膜マイクロ構造体10を製作するために用いるガラス板12,12’は、湿式エッチングプロセスによって製作され得る。
【0057】
ある実施例では、特に所与のアプリケーションにおいては、多孔膜30が触媒コーティング、若しくは、非触媒コーティングされ得る。この種のコーティングは、多孔膜30の上下両面上に多孔膜30によって支持され得る。一般的に、コーティングは、多孔膜30内に画定されるポアのサイズを減じる。コーティングは、多孔膜30のポアに及びその中に付着され得る無機触媒支持体を含み得て、これは膜マイクロ構造体10、10’のマイクロチャネル隔壁のマイクロチャネルを画定する少なくとも内壁面に堆積され得る。本明細書の記述の目的において、コーティング膜マイクロ構造体及びコーティング膜マイクロ反応器は、内表面(又は、マイクロチャネル壁)によって区切られた内部ボイド空間(例えばマイクロチャネル、キャビティ等)を画定する集積体として特徴付けられる。また、処理のためにマイクロ構造体若しくはマイクロ反応器に入る反応流が多孔膜30及びマイクロチャネル壁14、14’及び22、22’上に配置されたコーティング層内の触媒的活性種に接触する集積体としても特徴づけられる。コーティングマイクロ構造体及びコーティングマイクロ反応器は、自動車産業の触媒コンバータに使用されるモノリシック押出セラミックハニカム構造を含むことを意図しない。このような構造は、パラレル・チャネルを有する自立デバイスである。一般的に酸化物である触媒支持体は、好ましくは予め定められたポロシティを有するだろう。マイクロチャネル隔壁を含む、例えば、マイクロ構造体若しくはマイクロ反応器は、ガラス、ガラスセラミック・セラミック、セラミック組成物からなり得る。マイクロチャネル隔壁は、固体構造体、若しくは、例えば多孔膜のようなそれ自身が多孔構造体であり得る。
【0058】
1つの実施例の膜マイクロ構造体の場合、触媒支持体は、多孔性の非有機触媒支持層として、チャネル隔壁及び多孔膜30上にコーティングされ得る。この層は、(i)流路に対する垂直断面がマイクロチャネル断面の少なくともほぼ1%を占め、(ii)少なくとも5%、より好ましくは少なくとも30%の開口及び連通率を与え、(iii)約0.2×104ナノメータ(nm)以上の平均ポアサイズによって特徴づけられる。特定のマイクロ反応・マイクロチャネルでは、層厚さは、約10ミクロンから約200ミクロンの範囲内である。このコーティングマイクロ反応器に使用される特定の反応のための活性及び選択性を有している金属、金属酸化物若しくは他の触媒活性種が触媒支持体のポア構造上に若しくはその中に配置される。他のアプリケーションでは、触媒支持体及び触媒は、非有機物であってもよい。他のアプリケーションでは、コーティングが非触媒であってもよい。
【0059】
本発明は、上述の如く、コーティングされた膜マイクロ構造体を製造する方法を更に含む。1つの方法によると、スラリーがガラス、ガラスセラミック及び/又はセラミック材料からなるマイクロチャネル壁によって画定される1以上の内部ボイド若しくはマイクロチャネルを含む膜マイクロ構造体を通過する。スラリーが完全に多孔膜の上下両面のマイクロチャネルを満たすように、スラリーは膜マイクロ構造体の両側の導入口を介して圧力によってマイクロチャネル内へ導かれ得る。スラリーは触媒支持体及び触媒を含むことができる。この場合、コーティングが単一のステップでマイクロチャネル壁及び多孔膜に与えられ得る。他の1つの実施例では、スラリーは触媒支持体のみを含む。この種の実施例において、触媒は、更に詳細に後述するように、触媒含浸法を利用した第2のプロセス・ステップで触媒支持体上に若しくはこれを通して堆積させることができる。
【0060】
スラリーは、好ましくは酸化物触媒支持体のための永久無機接着剤のプリカーサを構成し若しくはこれを含む液体を含む。典型的には金属酸化物バインダからなる無機接着剤は、所望の内部ポア構造体の接着コーティングを形成するのに有効となるように選択される。バインダの組成は、触媒支持体の組成と同じであっても、異なっていてもよい。このプリカーサは、一般的に、液相スラリーに可溶若しくは高い分散能を有する金属の有機化合物若しくは無機化合物である。
【0061】
マイクロチャネルがスラリーで満たされた後、スラリー層が複数のマイクロチャネル壁、及び、好ましくは多孔膜の両面を覆うように、一部のスラリーがマイクロチャネルから取り除かれる。典型的に、スラリーは、例えば、強制的空気循環、真空吸引若しくはスラリーと一緒に流れる他の流体を使用してマイクロ反応器の排出口から流出することができる。膜マイクロ構造体及びその含まれたスラリー層が好ましくは乾燥せしめられて、少なくともコーティング層を成形するためにスラリーから液相を取り除くのに十分な温度まで加熱される。この層を硬化又は部分的に焼結させるための更なる加温は、液相の除去直後に好ましくは行われるが、追加の層の堆積後まで延期しても良い。つまり、コーティング層からの液相の除去について、マイクロチャネルをスラリーで満たすステップ、マイクロチャネルから少なくとも一部のスラリーを除去するステップ、及び、液相を除去するために乾燥及び加温するステップは、最初のコーティング層上に1以上のコーティング層を形成するために繰り返され得る。
【0062】
このプロセスは、第1のコーティング層の組み合わせ体を形成するまで繰り返されて、全ての追加のコーティング層が所与の触媒反応に適当な反応速度を与える厚さに達する。最後に、全ての下地未硬化層を硬化させるための加熱が実行される。
【0063】
触媒的活性種をコーティング層の少なくとも1、より好ましくは全てに与えるステップは、スラリー堆積の間、各コーティング層が堆積された後、若しくは、全てのコーティング層が堆積された後のいずれかで実行される。さらに、触媒含浸は、硬化前又は後に行われ得る。
【0064】
このプロセスは、コーティング若しくは層状コーティングの全厚さにわたって、触媒の完全な均一分布のオプションを提供し、若しくは、代わりに、各層が異なる触媒作用種を含むだけでなく、厚さ若しくは気孔率若しくは双方に関して、隣接した層と異なるようにすることができる。コーティングに特異性を与えるための触媒支持体の組成、ポア形態若しくは、他の性質を変化させるいくつかのステップが任意に続く。例えば、触媒若しくは他の添加剤がスラリー組成に含まれ得て、若しくは、スラリーに添加される粉体酸化物触媒支持体に堆積され得る。後の手順は、特に硬化後に触媒支持体層の厚さの全体に亘って、触媒の広い分布を確実にするのに効果的である。
【0065】
また、次の熱処理若しくは化学処理による層のポア構造を改質するために使用されるポア形成添加剤が任意のスラリー成分として有効である。乾燥ステップの前に堆積層のゲル化を促進する成分が堆積層の厚さを増加させ、得られるコーティングの気孔率を改質し、若しくは、堆積層の幾何学的形状を制御する手段としてスラリーに含まれ得る。
【0066】
コーティング層内に含浸させ得る特定の触媒的活性種の組成は重要でなく、例えば、コーティング層が利用される特定のアプリケーション若しくはプロセス環境の観点から、従来通り決定される。好適に使用され得る従来の触媒は、周期表でVIIIA属の貴金属触媒を少なくとも含み、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA属の遷移金属からなる。コーティング層に受け入れられる触媒支持体は、これに限定されるものではないが、アルミナ、特に、ガンマ・アルミナ、微細粒径のベーマイト、シリカ、アルミナ・シリカ、及び、これに限定されるものではないが、ゼオライト、チタニア及び/又はジルコニアのようなモレキュラーシーブを含む。
【0067】
コーティングマイクロ構造体の製造方法に関する更なる詳細は、同時に出願された出願番号EP03293327.7号に見出すことができる。
【0068】
コーティング膜マイクロ構造体10の製造方法について、図8乃至10を参照しつつ説明する。図8に示すように、例えば、これに限定されるものではないが、圧力下でスラリー92を運ぶためのシリンジのような源90が導入口38及び排出口40と協働し、導入口38及び排出口40を通じて、マイクロチャネル32及び34にスラリー92を運ぶ。1つの実施例において、マイクロチャネル32及び34が完全に満たされて、スラリー92が出口42を出るまで、スラリー92はマイクロチャネル32及び34に運ばれる。この点で、上記したように、スラリー92は触媒支持体を含むが、触媒については含んでも含まなくともよい。ここでは、スラリー92が触媒支持体及び触媒を含むと仮定する。
【0069】
スラリー92が、それぞれマイクロチャネル32及び34を画定するマイクロチャネル隔壁表面14及び22の全てをコーティングするように、マイクロチャネル32及び34がスラリー92で一旦満たされて、少なくとも、スラリー92の一部分は、排出されるか、若しくは、図9に示されるように、マイクロチャネル32及び34から除去される。ここに開示された方法の1実施例によれば、強制気流96の源94は、好ましくは吸気口38と協働して、マイクロチャネル32を通過して排出口42から出るように強制気流96を運ぶのである。強制気流96がマイクロチャネル32を通って進行するとき、スラリー92の大部分は、排出口42を通って、排出口42と協動する収集容器98に回収される。排出口40を経てマイクロチャネル34に減圧吸引器(図示せず)ることで、実質的にマイクロチャネル34には同じ結果をもたらす。図9に示すように、スラリー層100は、この工程によってマイクロチャネル隔壁14及び22の全て、及び、多孔膜30の表面に固着されるのである。
【0070】
スラリー層100は、該スラリー層から大部分の液相を除去するのに十分な時間だけ、好ましくは低フローレートの気流に曝されて乾燥せしめられる。図10に示すように、スラリー層100でコーティングされた膜マイクロ構造体10は、熱源102内に配置されて、スラリー層100を硬化させてマイクロチャネル隔壁14及び22、多孔膜30と結合するのに十分な温度に加熱される。一般的には、スラリー層100でコーティングされた膜マイクロ構造体10は、不活性ガス104の存在下で加熱され得る。加熱により、コーティング膜マイクロ構造体10は、コーティング層106の厚さ全体に亘って良好に分散された触媒支持体と触媒とを含む固体コーティング層を含むのである。1つの実施例において、コーティング層106は、内部隔壁表面、及び、膜マイクロ構造体10内のマイクロチャネルに対向している多孔膜の表面の全てをカバーしている。
【0071】
上記した工程が繰り返されて、追加のスラリー層100を先に形成したスラリー層100の上に与えて複数の固体コーティング層106を得る。加えて、コーティング層106は、二段階工程で与えられ得る(図示せず)。このような工程によれば、スラリー92は触媒を含まない。スラリーを含む触媒支持体は、上記したステップによって、運ばれて、除去されて、乾燥させられて加熱される。その後、所望の触媒を含む溶液がスラリーコーティングマイクロチャネル32及び34に運ばれて、スラリー層を含む触媒若しくは焼成後であればコーティングを含む触媒を含浸するために触媒と共に加熱される。
【0072】
ガラス多孔薄膜層(例えば200μmの実厚さ)を形成する1つの方法は、水性媒体及び水溶ポリマーを用いたブレーディング及び乾燥ステップを含む。例えば、加熱されたマグネチック板を使用して、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)約30gがビーカー内で約60℃の加熱脱イオン水(DI)約600gと混ぜ合わせられる。約pH8〜9のカ性ソーダ(NaOH)によってpH調整され得る。粒径約20μm以下のガラス粉末が混合物に添加されて、一晩放置される。超音波デバイスを全ての気泡を除去するために使用してもよい。この混合物が容器へ注入されて、少なくとも約24時間、振動・回転混合器にかけられる。平らなMYLAR(登録商標)シートの上へこの混合物をブレード掛けして膜を得ると、これは乾燥のために放置される。約24時間後、膜は注意してシートから剥ぎ取られ得る。はさみで膜は正確な大きさに切断されて、2枚の平坦なガラス・セラミック支持台の間に配置される。続いて、約590度まで加熱される。膜は、レリーフとしてガラス・マイクロ構造を有する2枚のガラス板の間に積層されて、最終的なアセンブリは、620度で焼成される。この特殊なプロセスによって、混合量、混合強さ、ポリマー濃度のパーセンテージ及び粒径が所望の有益な膜を達成するように大きく変化させることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】第1の典型的な膜マイクロ構造体の図である。
【図1B】図1Aの1B−1B線における断面図である。
【図1C】図1Aの1C−1C線における断面図である。
【図2A】第2の典型的な膜マイクロ構造体の図である。
【図2B】図2Aの2B−2B線における断面図である。
【図2C】図2Aの2C−2C線における断面図である。
【図3】分離器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図4】抽出器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図5】拡散器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図6】接触器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図7】図1A乃至1Cの膜マイクロ構造体の製造方法を示す図である。
【図8】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【図9】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【図10】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、マイクロ構造デバイスの分野に関し、特に多孔膜を組み込んだマイクロ構造デバイスに関する。本発明は広範囲なアプリケーションに適用され得るが、特にマイクロ流反応システム分野の抽出器、分離器、拡散器及び接触器に適している。
【背景技術】
【0003】
膜反応器と呼ばれる多孔膜を含む反応システムは、一般的に、多相複合供給体の分離、若しくは、単相体のフィルタリングの用途で使用される。一般的に、従来の膜反応器内の多孔膜は、ミクロからマクロまでのポロシティを呈し得て、幅広い材料から製造され得る。多孔材料は、それらの(平均)ポアサイズによって一般的に分類されている。マイクロ多孔材料は、一般的に10ナノメータ(nm)以下のポア直径を有する。メゾ多孔材料は、一般的に約2.0から50.0nmの範囲内のポアを有する。マクロ多孔材料は、一般的に約250nm程度の大きさのポアを含む。記号及び用語のIUPACマニュアルの付録2、第1章コロイド及び表面化学、ピュア・アプライド・ケミカル1972年第31巻第578頁を参照されたい。他の要因としては、平均ポア・サイズによって、特定のアプリケーションに必要とされる特定の多孔膜が触媒材料の支持構造体として供され得る。
【0004】
膜反応器に使用される多孔膜は、所与の反応器内の膜の役割若しくは機能に基づいて一般的に分類される。従来、膜反応器内の多孔膜は、3つの機能のうちの1つによって分類され得る。膜の機能は、従来の反応器での歩留の向上のために主として反応器から選択的に平衡非開放系反応生成物を取り除くことであって、若しくは、複雑な混合物内の1又はいくつかの成分を除去することである。この膜反応器は、一般的に「抽出器」として分類される。他のアプリケーションにおいて、膜の役割は、連続反応を生じるように反応物を添加することである。目標とする生成物がしばしば初期添加物の生成物であるとき、膜を通過する浸透力によって反応物の濃度の調整が選択性を改良し得る。従来の反応器と比較して、反応物の同量が導入されるが、それらの一部は触媒床に沿って膜によって分配される。故に、このような膜反応器は、一般的に「分配器」若しくは「拡散器」と呼ばれる。膜反応器の第3のタイプは、一般的に膜の独特な結合構造(例えば2つの媒体を分離している浸透壁)を利用する。膜が触媒の支持体でもあるとき、膜の両側から反応物を供給して(例えば、一方の面からガスを、他方の面から液体を供給するなど)、若しくは、反応壁を通過する反応混合を強制することが可能である。第1の場合において、従来の反応器における性能を制限する触媒及び反応物(例えば、ガス−液体−固体プロセスにおけるガスと親水性触媒を有する疎水性反応物など)の間の接触を良好にすることが可能である。第2の場合において、反応物及び生成物の活性ポア内の滞在時間は、動作パラメータ(膜を横切る圧力降下)によって制御されて、拡散によっては制御されない。これは、活性度若しくは選択性のより良い制御をなし得る。この2つの場合において、膜の役割は、反応物及び触媒の間の接触を良好にすることである。このような膜反応器は、一般に「接触器」として知られている。より詳細には、第1の接触モードは「界面接触器」として、第2のモードは、「フロー・スルー接触器」として参照される。
【0005】
従来技術で利用される典型的な膜反応器は、同心チューブ(インナーチューブ膜)から形成される。ある1つのチューブタイプ膜反応器は、充填床膜反応器(PBMR:packed bed membrane reactor)として公知である。このような膜反応器は、セラミック・チューブのコアボリュームに配置した管状の多孔性セラミック膜及び固定床触媒を結合している。膜反応器モジュールは、一般的に触媒を詰め込んだ複合膜チューブを含むステンレスシェルからなる。一般的に、膜チューブの端部にはエナメルが与えられるとともに、内側(保持液側、つまりチューブ側)コンパートメント及び外側(透過液側、シェル側)コンパートメントの間での締結を確実にするために、例えば黒鉛シールのような圧縮部品を与えられる。従来のチューブ・タイプ膜反応器において、液体がチューブの一端部で反応器に分配されるだけで、反応器の他端部は排出口として働く。当業者であれば直ちに認識されるように、このようなチューブ・タイプ反応器の工業化及び並列化は、複雑であって、実現困難である。更に、反応の制御は、反応器の外部、特に導入口の上流における複雑な液体の管理を必要とする。これらの欠点に加えて、チューブ・タイプ膜反応器の構造は、触媒材料の機械的な支持の弱点を有しており、簡単には封止されないのである。よってデバイスからの漏洩が一般的に生じて、効率に大きく悪影響を与えていた。
【0006】
マイクロ反応器技術の出現とともに、近年、膜反応器の大きさを減じて、上記したシーリング及び漏洩の欠点を最小にする試みがなされている。マイクロ反応器についての取り組みに関連して、多孔膜は、金属フレームを有する枠体の周囲に支持されて、マイクロ反応器内の多くの薄膜層のうちの1を形成する。多孔膜は典型的にはミクロ機械加工された金属層、例えばステンレス鋼又は銅であって、プラスチック及びセラミックのような材料は実験的な課題であった。このような多孔質層を形成するのに必要なマイクロ積層技術及びその他の技術は、一般に大量生産のためのコスト阻害となり、これらの技術によって製造される多孔膜が、化学処理のために限定的な用途にしか供され得ないのである。表向き利用できない従来技術ではあるが、必要とされることは、多孔膜を含むマイクロデバイス、及び、公知の膜マイクロ反応器と関連した欠点を克服するマイクロ構造デバイスの製造方法である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの特徴は、集積化マイクロ構造体に関する。かかるマイクロ構造体は、第1の凹部を画定する第1の複数の壁を有する第1の板と、第2の凹部を画定する第2の複数の壁を有する第2の板と、第1及び第2の板の間に配置されたガラス、セラミック若しくはガラスセラミックからなる多孔膜とを含む。第1の板、第2の板及び多孔膜は、互いに結合され、当該多孔膜が第1の複数の壁及び第2の複数の壁と協働して、第1のマイクロチャネル及び当該第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【0008】
他のマイクロ構造体は、第1の凹部を画定する第1のガラス、セラミック又はガラスセラミック板と、第2の凹部を画定する第2のガラス、セラミック又はガラスセラミック板と、第1及び第2の板の間に挟まれる非金属多孔膜とを含む。第1の板、第2の板及び多孔膜が互いに結合され、当該多孔膜が第1及び第2の凹部をカバーするように配置されて、第1の板及び多孔膜の間の第1のマイクロチャネル、及び、第2の板及び多孔膜の間にあり第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定する。
【0009】
追加の本発明の特徴は、マイクロ構造体を製造する方法に関する。1つの典型的な方法は、第1の凹部を画定する第1の壁の複数を有する第1の板の頂部にプリカーサ材料を配置するステップと、第2の凹部を画定する第2の壁の複数を有する第2の板を第1の板と組み合わせるステップとを含む。ここで、プリカーサ材料は、第1及び第2の板の間に配置されて、第1及び第2の凹部の少なくとも一部を覆っている。組み合わせられた第1及び第2の板は、プリカーサ材料を第1及び第2の板に結合したガラス、セラミック又はガラスセラミック多孔膜に変化させるのに十分な温度まで加熱される。
【0010】
ここに開示した膜マイクロ構造デバイス及びその製造方法は、他のマイクロ構造デバイス及び公知の製造法に勝る多くの利点がある。例えば、ここに開示した多孔膜マイクロ構造デバイスの一体的な構造は、従来技術では実現出来なかった多孔膜に十分な機械的支持を与える。加えて、このような構造により、膜マイクロ構造体内において実質的な漏洩なく触媒処理及び非触媒化学処理を可能にするのである。
【0011】
加えて、ここに開示した膜マイクロ構造デバイスは、抽出器、拡散器及び接触器に適用可能である。実施例としてこれに限定されるものではないが、この膜マイクロ構造体が使用されるのは、H2/炭化水素分離、メタン蒸気リホーミング、アルカン選択酸化、液相水素付加及び酸化、水素生成、ゼオライト吸収による汚染物除去、水からの揮発性有機化合物の分離、陽子化膜(マイクロ燃料セル)を使用したエネルギー生成である。
【0012】
なお更なる効果は、ここに開示した膜マイクロ構造デバイス内に画定されるマイクロチャネルのマイクロスケールの内部の大きさから得られる。一般的に、マイクロスケールのマイクロチャネル大きさは、体積に対する表面比を高めて、多孔膜による流体相互作用を最大化するのである。この場合、多孔膜は1以上の触媒を含浸若しくは支持する場所で、多孔膜を経た流体/触媒の接触が最大となる。この結果、生産性及び歩留まりの向上が達成されるのである。
【0013】
ここに開示したマイクロ構造体及び方法の追加の特徴及び効果は、後述される発明の詳細な説明に記載される。部分的には、当業者であれば該記載から直ちに理解されるであろうが、ここに記載される本発明の実施例を実行することによっても認識されるであろう。
【0014】
前述の一般的な記述及び以下の詳細な説明は、単に実施例であって、特許請求の範囲に記載される本発明の性質及び特性を理解するための概要若しくは枠組みを与えることを意図している。添付の図面は、開示したマイクロ構造体及び製造方法の更なる理解を与え、本発明の多様な実施例を例示するるために含まれており、明細書の記載と共に、開示したマイクロ構造体及び製造方法の原理及び動作の説明に供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここに開示の多孔膜マイクロ構造デバイスは、分離器、抽出器、拡散器及び接触反応器に使用され得る。製造時において従来のマイクロ積層プロセスを使用しないので、製造時のコストを低減できる。とりわけ、ここに開示した多孔膜マイクロ構造体の一体的な構造は、多孔膜の十分な機械的支持と、化学プロセシングの間の実質的な漏洩とを除去するのである。ここに開示の多孔膜マイクロ構造体の製造方法は、少ない費用且つ製造容易性を介して、結果として有利な歩留まりを提供するデバイスとなるのである。
【0016】
本発明は、広義に、膜マイクロ構造体及びその製造方法に関する。ここでの膜マイクロ構造体は、特に化学プロセシング装置に適しており、膜マイクロ構造体内の触媒反応を促進するように構成され得る。マイクロ構造体内の膜が有機体の場合、膜はマイクロ構造体のアプリケーションに応じた機能化が容易である。この種の膜マイクロ構造体は、単一の単位デバイスとして働く一方で、複数の膜マイクロ構造体が積層されて、特に、歩留りを向上させ、膜マイクロ構造体を通過する流量を増加させるので、処理可能な化学体積を増加させ得るのである。
【0017】
加えて、膜マイクロ構造体は、容易に集積化できる故に、例えば熱交換器や混合器のような他の機能を組み合わせることが可能である。膜マイクロ構造体は、膜マイクロ構造体の多彩なコンポーネントを保持する支持体構造を含み得る。例えば、多彩なフロー制御素子、混合器、熱制御器、検出ユニット、分離チャンバー、分析チャンバー、モニターリングチャンバー、他のタイプの反応チャンバー、及び、マイクロ流体化学プロセシング装置及びシステムに関連する全てのコンポーネント若しくは装置と集積化され得る。
【0018】
特定のコンポーネントは、熱交換器と膜との間の距離が約1センチ(cm)となるように、マイクロ構造体内の膜の両側に配置され得る。追加の実施例によると、混合器と膜との距離が約0から1cmであるように、混合器は膜マイクロ構造体と一体化され得る。他の実施例において、混合器と膜との間の距離は、約2ミリメータ(mm)である。他の実施例において、フロー制御器は、膜マイクロ構造体と一体化され得る。例えば、フロー制御器は、毎分約0.01から100ミリリットル(ml/min)の流量調節をし得る。例えば、1の機能化コンポネント(例えば加熱器、若しくは、混合器)と膜との間を流れる成分の典型的な時間は、1分未満である。他の実施例において、平均滞留時間は10(ms)未満であってもよい。
【0019】
添付の図面において示される本発明の実施例について詳細に説明する。可能な限り、同じ参照番号は、図面の全体に亘って同じ若しくは同様の部分を参照するために使用される。ここに開示の膜マイクロ構造体の実施例は、図1A−1Cに図示されて、参照番号10によって全体に亘って参照される。
【0020】
図1Aは、第1のアセンブリ化されていない膜マイクロ構造体10を示す。膜マイクロ構造体10は、少なくとも1つの凹部16を画定する複数の隔壁14を有する第1の板12を含み、これは好ましくは、ガラス、セラミック又はガラスセラミックから形成される。1つの実施例において、導入/排出口18は、第1の板12を通って延在し、少なくとも1つの凹部16と封止的に連通している。膜マイクロ構造体10は、少なくとも1つの凹部24を互いに画定する複数の第2の隔壁22を有する第2の板20を更に含む。第2の板20は、少なくとも1つの凹部24と連通する少なくとも1つの導入/排出口26を含む。プリカーサ材料層28は、第1の板12及び第2の板20の一方若しくは双方の上に配置され得る。プリカーサ材料層28は、1つ以上の凹部16及び24の少なくとも一部分をカバーして、少なくともその一部分において、隔壁14及び22の複数によって支持される。以下においてより詳細に記載されるように、1つの実施例において、プリカーサ材料層28は、硬化工程によって、ここに開示の多孔膜を形成するのである。
【0021】
図1Bは、図1Aに図示した板12及び20の組立後の第1の膜マイクロ構造体10を示している。図1Bは、凹部16及び18の複数を通る線に沿った膜マイクロ構造10の断面図を示している。1つの実施例において、膜マイクロ構造体10は、充分な加熱処理(以下に開示の製造方法に記載される。)によって、第1の板12、第2の板20及びその間に挟持された多孔膜30を含む一体的なデバイスとなる。詳細に後述するように、多孔膜30は、1つの実施例において、ガラス、セラミック又はガラスセラミック・フリットからなるプリカーサ材料層28の充分な加熱処理によって得られる。多孔膜30、隔壁14の複数及び第1の板12は、少なくとも1つのマイクロチャネル32を画定する。これとともに、多孔膜30、第2の隔壁の複数及び第2の板20は、少なくとも1つのマイクロチャネル34を画定する。マイクロチャネル32、34は、膜マイクロ構造体10内において処理される1つ以上の化学材料の流動経路を提供する。特に、多孔膜30の気孔率は、マイクロチャネル32、34の間の選択的流体連通を提供する。隔壁14及び22の複数及び凹部16及び24は図1Bに示すように完全に整列している。一方、隔壁14,22及び凹部16、24は、例えば、サイズ、幅及び/若しくは角度について互いにオフセットされている。
【0022】
図1Cは、導入/排出口18及び26を通って、マイクロチャネル32及びマイクロチャネル34の長手方向に見た図である。1つの実施例によれば、第1の板12、第2の板20及び多孔膜30は、流体−密接法で、互いに封止される。マイクロチャネル32及び34と膜マイクロ構造体10の外部との間の流体連通は、導入/排出口18及び26によって提供され得る。これは詳細に後述されるように、膜マイクロ構造体10の内外を通過する化学薬剤若しくは他の液体のための導入口若しくは排出口として機能するのである。一般的に、導入/排出口18及び26は、膜マイクロ構造体10の外部に薬品若しくは他の液体を運搬するための導管若しくはその他装置(図示せず)に接続し得る。他の実施例において、導入/排出口18及び26は、並行作業を容易にするために、他の膜マイクロ構造体10若しくは他のマイクロ構造体装置の導入/排出口18及び26に実質的に一列に整列し得る。ある実施例では、1つ以上の膜マイクロ構造体10が他のマイクロ構造体装置の上に若しくはこれと平行に積層されて、積層プレート・マイクロ構造体の配列を形成する。一般的には、このような配列はより高い流動体積を与えて、故に高い歩留まりを与えるのである。
【0023】
図1B及び1Cに明らかに示されているように、本実施例によれば、多孔膜30は、好ましくは膜マイクロ構造体10内に完全にカプセリングされ得る。図のように、第1の板12及び第2の板20は、膜マイクロ構造体10の周囲に沿って延在する板状インタフェース36で互いにシールされる。つまり、第1の板12及び第2の板20は、異なった材料から製造され得るが、板12及び20については、第1の板12及び第2の板20を接合する接合技術を用いることが可能なのである。
【0024】
図2Aは、第2の非アセンブリ化膜マイクロ構造体10’を表している。膜マイクロ構造体10’は、複数の隔壁14’を有する、好ましくはガラス、セラミック又はガラスセラミックからなる第1の板12’を含み、これらは少なくとも1の凹部16’を画定する。導入/排出口18’は、好ましくは第1の板12’を通って延在し、少なくとも1つの凹部16’と連通する。膜マイクロ構造体10’は、少なくとも1つの凹部24’を画定する複数の隔壁22’を有する第2の板20’を含み得る。第2の板20’は、少なくとも1つの凹部24’と連通する少なくとも1つの導入/排出口26’を含み得る。プリカーサ材料層28’は、第1の板12’及び第2の板20’の一方若しくは両方の上に配置される。プリカーサ材料層28’は、1以上の凹部16’及び24’の少なくとも一部を覆い、少なくともその一部で複数の壁14’及び22’によって支持される。詳細に後述するように、プリカーサ材料層28’は、ここに開示の製造法による硬化ステップによって、やはりここに開示の多孔膜を形成するのである。
【0025】
図2Bは、図2Aに図示した板12’及び20’のアセンブリによる他の膜マイクロ構造体10’を図示する。図2Bは、凹部16’及び18’の複数を通過するラインに沿った膜マイクロ構造体10’の断面図を示している。以下に詳細に説明する1つの実施例の製造方法における膜マイクロ構造体10’の充分な加熱処理によって、単位デバイスが第1の板12’、第2の板20’及びこれらの間に挟まれた多孔膜30を含むのである。更に詳細に以下に記載するように、多孔膜30’は、プリカーサ材料層28’の充分な加熱処理によって形成され得る。これは1つの実施例において、ガラス、セラミックまたはガラスセラミック・フリットであってもよい。多孔膜30’、複数の壁14’及び第1の板12’は、少なくとも1つのマイクロチャネル32’を画定する。一方で、多孔膜30’、複数の第2の壁22’及び第2の板20’は、少なくとも1つのマイクロチャネル34’を画定する。マイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’は、膜マイクロ構造体10’内で処理される1以上の化学薬品のための流動経路を与える。特に、多孔膜30’の多孔性がマイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’の間の選択的流体連通を与える。
【0026】
図2Cは、導入/排出口18’及び26’を横切り、マイクロチャネル32’及びマイクロチャネル34’の長さ方向に沿った膜マイクロ構造体10’の断面図を表す。第2の実施例によると、第1の板12’、第2の板20’及び多孔膜30’は、流体−密接法で互いにシールされる。マイクロチャネル32’及び34’と、膜マイクロ構造体10’の外部との間の流体連通は、導入/排出口18’及び26’によって提供され得る。導入/排出口18’及び26’は、更に詳細に後述するように、膜マイクロ構造体10’の中若しくは外を通過する化学薬品若しくは他の流体のための導入口若しくは排出口として機能する。一般的に、導入/排出口18’及び26’は、膜マイクロ構造10’の内部及び/若しくは外部を、薬剤若しくは他の流体が運搬されることを容易にするための導管若しくは他の装置(図示せず)に接続し得る。他の実施例において、導入/排出口18’及び26’は、並列化を容易にするために、他の膜マイクロ構造体10’若しくは他のマイクロ構造装置の導入/排出口18’及び26’に実質的に並んで配置され得る。1つの実施例において、1以上の膜マイクロ構造体10’が他のマイクロ構造体デバイス上若しくはこれと平行に積層されて、積層された板マイクロ構造体の配列を形成する。一般的に、このような配列は、より高い流動体積を与えて、より大なる歩留りを与える。
【0027】
図2B及び2Cに示されるように、第2の実施例によれば、多孔膜30’は、膜マイクロ構造体10’の中心部全体に亘って延在し得る。図示したように、第1の板12’及び第2の板20’は、各多孔膜30’を結合して、単位の膜マイクロ構造体10’を形成する。故に、第1の板12’及び第2の板20’は異なる材料から製造されるが、多孔膜30’と第1の板12’及び第2の板20’との適切な結合を容易にするためには、板12’及び20’がプリカーサ材料層28’と互換性を持ち得るのである。
【0028】
上記実施例のいずれにおいても、多孔膜30は、それ自身でマイクロ多孔質材料であればよく、この場合には、多孔膜30は、膜支持体及び多孔膜として機能する。他の応用において、多孔膜30は、メゾ多孔体材料若しくはマクロ多孔体材料であってもよく、この場合、多孔膜30は好ましくは多孔膜支持体として機能する。メゾ多孔膜若しくはマクロ多孔膜30は、有機材料若しくは非有機材料を有し得る。更に詳細に以下で記載されるように、「有機若しくは無機材料を有するステップ」は、コーティングステップ及び/又は含浸プロセスを含む。コーティングにおいて、マイクロ多孔材料は、メゾ若しくはマクロ多孔材料上にコーティングされ得る。用途によって、適用される膜材料は、その性質において触媒的若しくは非触媒的であってもよい。
【0029】
例えば、非触媒性マイクロ多孔材料は、膜30により大なる分離機能を与えるためにメゾ若しくはマクロ多孔材料に与えられ得る。膜30上のコーティングは、その中に1以上のmoeitiesを導入して膜30の機能性を変化させる。例えば、膜30は、その湿潤特性を変化させるシラン化プロセスを経ることができる。
【0030】
膜30のシラン化は、膜30の親水化、疎水化を達成する。疎水性機能の付与の1つの方法は、以下の方法で達成し得る。ジメチルジクロロシラン約3gを12molの塩酸約15ml及びエタノール約85mlと混ぜ合わせる。膜の両側のチャネルがジメチルジクロロシラン/塩酸/エタノール溶液で満たされる。室温で約1時間放置後、チャネルに水を流して洗浄し、マイクロ構造体10を約80℃で2時間乾燥させる。
【0031】
膜30の有機機能化は、以下の方法によって達成し得る。膜30の両面のチャネルがフルオロ界面活性水溶液で満たされる。使用され得るフルオロ界面活性剤は、米国ミネソタ州セントポールの3M社製のFluorad(商標)である。室温で約1時間放置後、チャネルが流水で洗浄されて、マイクロ構造体10は約80℃で約2時間乾燥させられる。
【0032】
メゾ多孔体膜は、また、コーティング若しくはメゾ多孔体膜のポアを満たす材料を注入することで、「機能化させる」ことができて、実質的にマイクロ多孔膜となるのである。特定の商用的な使用に有益なマイクロ多孔膜材料を供するためには、(ミクロン若しくはサブミクロン範囲の)小なる実効厚さを有する機能複合材料が使用され得る。マイクロ多孔膜を形成するためのメゾ多孔膜の改質は、ゾル−ゲル及び化学蒸着(CVD)法、分子ふるいカーボンを形成するポリマーの炭化、及び/又は、ゼオライト及び他のモレキュラーシーブの多結晶膜成長によって達成され得る。これらの方法を使用して、0.1mol/(m2s)程度の流量が達成され得る。
【0033】
図3乃至6を参照して、膜マイクロ構造10、10’の動作の実施例について下に説明する。図1A乃至1Cに図示される膜マイクロ構造体10を参照すると、多孔膜30の後述する動作、すなわち機能は、図2A乃至2Cの膜マイクロ構造体10’と同様である。
【0034】
図3は、分離機能を達成する膜マイクロ構造体10を示している。一般的に、反応が生じた後、反応生成物(A+B)は、導入口38を通過してマイクロチャネル32に入る。1つの実施例において、反応生成物Bが多孔膜30を通ってマイクロチャネル34に浸透し、排出口40を経て膜ミクロ構造体10の外へ運ばれるように、多孔膜30が構成される。排出口42を出るまで、反応生成物Aはマイクロチャネル32を通過し続ける。その結果、Aの歩留りは従来のマイクロ反応器と比較して上昇する。そして/または、AがBから分離される。
【0035】
図4は、膜マイクロ構造体10の他の抽出器の実施例を表す。図4に図示した実施例によると、膜マイクロ構造体10内に形成される圧力差を経て、反応物A及びBは、導入口38を通ってマイクロチャネル32に導入される。A及びBは、反応生成物C及びDをもたらす膜マイクロ構造体10のマイクロチャネル32内で反応し若しくは反応を生じさせられる。この多孔膜30の特性は、反応生成物Dをマイクロチャネル34の中へ且つ排出ポート40の外に多孔膜30を介して通過させることを可能とする。一方、多孔膜30のこの特性により、反応生成物Cが多孔膜30を通過することを防止する。したがって、反応生成物Cは、マイクロチャネル32を通過し続け、排出口42を通過する。膜マイクロ構造体10のこの実施例によって与えられる反応及びこれに続く分離は、例えば、多孔膜30に触媒をコーティング若しくは注入することにより上昇させ得る。Dより多くの反応生成物Cを生じることが好ましい場合、Cの歩留りは反応の間の除去によって上昇させ得る。例えば、Cの歩留りは、管形反応器において実行されて、約30%から約70%まで上昇させ得る。
【0036】
図5は、分配器若しくは拡散器として機能する膜マイクロ構造体10を表す。図示したように、第1の反応剤Bは、導入口44を介してマイクロチャネル32に導入され、第2の反応剤Aは、導入口46を介してマイクロチャネル34に導入する。反応剤Bがマイクロチャネル32を横切ると、反応剤Aは、多孔膜30に広がり、反応剤Aがマイクロチャネル32に入って反応剤Bと反応する。特に、膜を介した浸透によって調整された反応剤の濃度が選択性を改善し、そして反応生成物Cは、排出口48を介してマイクロチャネル32の外へ出るのである。反応剤Aは、マイクロチャネル34を介してリサイクルされる。この種の反応の実施例は、水素ガスと分子の水素化反応であり得る。
【0037】
図6は、接触器として機能する膜マイクロ構造体10を図示している。マイクロ構造体10の接触器への適用において、多孔膜30は、触媒を含んでも、含まなくとも良い。多孔膜が触媒の支持体として供される実施例において、多孔膜30の両側から反応物(例えば、一方からガス、他方から液体)を供給したり、若しくは、反応混合物を反応隔壁を通して押し込むことが可能である。図示した実施例において、反応剤Aは、導入口50を介してマイクロチャネル34に導入される。一方、反応剤Bは、導入口52を介してマイクロチャネル32に導入される。マイクロチャネル32及びマイクロチャネル34の間に多孔膜30を配置すると、多孔膜30の上下両面がコーティングされ若しくは反応触媒を注入されていると、反応剤A及びBは、この触媒と相互作用を生じない。結果として、反応剤A及びBは、多孔膜30の内部で互いに反応して、反応生成物Cが排出口54から排出される。図6において記載される配列は、反応選択性を改善する物質移動限界を避けて、反応を最適化する。図5に記載の反応剤Aは、マイクロチャネル34を介してリサイクルされる。
【0038】
あるいは、図示しないが、図6に示した膜マイクロ構造体10は、第2の板20内に排出口を含むように構成され得る。このような実施例において、反応剤Aは、例えば、ニトロ化反応を容易にするためにマイクロチャネル34に導入され得る。反応剤Aは、多孔膜30を介して浸透して反応剤Bと化学反応する。一方、溶液の残りは、マイクロチャネル32に入ることを防止できて、第2の板20内の排出口を出るのである。
【0039】
膜マイクロ構造体10、10’を形成するための板12、12’は、異なるいくつかの方法で得られる。ある方法は、(完全にガスの気泡の閉じ込めを防止するために)真空下で、ガラス、ガラスセラミック、セラミック、金属、シリコンのような半導体若しくはこれの組み合わせから選択される材料からなる第1の基板上に、ガラス、ガラスセラミック、セラミック若しくはこれらの組み合わせのプリカーサとなる有機媒体及び材料の第1の混合物からなる所望のマイクロ構造形状を形成することを含む。この「真空アシストマイクロモールディング法」によれば、関連するプリカーサ材料は、第1の基板を構成する材料と熱膨張係数に関して互換性を有し得る。生成される形状に対して機械強度の少なくとも最小値を与える条件で真空成形は実行され得る。
【0040】
成形された混合物は、第1の基板及び成形された混合物を含むアセンブリに適当な熱処理を与えることによって予備焼結される(この予備焼結は、有機媒体を除去して及び構造体を圧密化する)。例えば、ガラス、セラミック又はガラスセラミック・フリットからなるプリカーサ材料層28、28’がモールド成形体の上面に与えられる。ここで、プリカーサ材料は、実質的に接触し得るプリカーサ材料の実質的に全てと、熱膨張係数に関して互換性を有する。プリカーサ材料は、製造される実施例により、板の表面全体、若しくは、板の中心部全体に与えられ得る。
【0041】
第2の板20、20’は、板12、12’について記載した上記方法に従って製造され得る。要求はされないが、プリカーサ材料層28、28’は、板20、20’の表面全体、若しくは、その中心部全体に与えられ得る。プリカーサ材料層が互いに対向するように、そして成形された形状の間に画定される凹部がプリカーサ材料層の対向する側面に実質的に整列して配置されるように、第1の板12、12’、第2の板20、20’は組み合わせられる。得られたアセンブリは、プリカーサ材料及び板を互いに結合するために熱(焼結)処理される。
【0042】
一般的に、真空成形は、特にプリカーサ材料に加えられる有機媒体の特性を考慮してさまざまな異なる方法で実行され得る。特に、混合物の有機媒体は、熱可塑性媒体、熱硬化性媒体、若しくは、光重合媒体によって構成され得る。
【0043】
加えて、この方法は以下の方法のうちの1以上において開始され得る。(例えば、真空エンクロージャ内の)成形操作におけるモールドの適用に先立って、第1の混合物が第1の基板上に配置されて、若しくは、モールドがまず第1の基板上に配置されて、真空引きされてからその内部に混合物が注入され得る。熱可塑性媒体が混合物に使用される場合、混合物を加熱してから適当なモールドで成形されて、冷却後、モールドから取り外され得る。媒体が熱硬化性媒体である場合、混合物は適当なモールドに室温(外界温度)において成形加工されて、(成形加工されたまま)加熱・冷却してモールドが取り外され得る。媒体が光重合媒体である場合、適当なモールドで混合物を室温において成形加工することが可能である。成形加工後、適当な照射線(例えば、紫外線、X線)に曝されて、モールドが取り除かれ得る。使用されるモールドは、適当なマスターモールドから所望の最終的な形状に準備されて成形される。
【0044】
真空成形は、プリカーサ媒体及び有機材料の混合物でレリーフに形成し得る。特徴的な方法において、基板上に支持されながら混合物を変形することによって形状が得られる。基板は、好ましくは一切エッチングを受けない。
【0045】
支持された構造体を予備焼結するので、この予備焼結は容易であって、且つ、構造体はその平面を維持出来るのである。予備焼結によって、アセンブリの前(構造体を閉じる前)に混合物から有機成分の大部分を除去する。構造体を損傷することなくガスを逃がさなければならず、複雑な三次元構造体から揮発性成分を除去することは困難とされる。ガラス、ガラス・セラミック、セラミック、金属若しくは半導体からなる基板の使用は、サブ構造体が壊れやすい自己支持形状のサブ構造体のような形成や取り扱いを必要とせずに容易に製造出来る点で有利である。構造体はたわんだり、ゆがんだりしない故に、離間したチャネル壁及び/又は複雑な壁形状を提供することが可能である。影響を最小限に抑え、多くの場合、実質的又は全く影響を受けないパーツの機械的挙動とともに、例えば基板上に導電体、電極又は光導電体のような追加のパーツを導入することが容易である。
【0046】
材料が成形混合物に与えられた後、予備焼結が一般的に実行される。添加材料は、プリカーサ材料に対して不活性であって、有機媒体を吸収する。不活性吸収材料の添加は、成形混合物がたわんだり、つぶれたりし得る範囲を最小にする。吸収材料は、一般的に、予備焼結のための加工された混合物の上へスプレーされるか若しくはふりかけられる。
【0047】
操作を繰り返さない場合にあっては、開示された方法は、第1及び第2の板を互いに組み合わせることで単位の膜マイクロ構造体を提供することが可能である。板の一方はボトムプレートとして働き、他方はトッププレートとして働く。操作を繰り返す場合にあっては、この方法は、1以上の共通板を有するn膜マイクロ構造体を含む積層膜マイクロ構造体を提供することが可能である。1又はnの膜マイクロ構造体は、接着剤を使用して若しくは膜形成プロセスの間(例えば、焼結の間)、他の1と固着され得る。複数の膜マイクロ構造体が積層されるか若しくは縦方向位置、垂直位置、水平位置、傾斜位置、若しくは、公知の他の配向に配置される。
【0048】
上記したステップに加えて、開示された方法は、追加のステップを含むことができる。流路は、穿孔によって与えられ得て、例えば、流体循環を許容し、流体の出入りを許容し、且つ、1の素子のチャネルから他の素子のチャネルへの流体の通過を許容するのである。穿孔作業は、互いに組み合わせられたパーツ、好適には予備焼結された混合物に行われる。加えて、1以上の追加のパーツが嵌入され得る。特に、挿入されたパーツは、含まれる基板のうちの1の上及び/又は含まれるプリカーサ混合物内、又は、第1及び第2の基板の少なくとも1と対応する第1又は第2の混合物との間に挿入された中間層内の上述したタイプ、例えば、いくつか例を挙げると、導電体、電極、光導電体などである。マイクロ構造デバイスの各素子を製造する間、少なくとも1つの中間層(例えば、シリコン(Si)の薄い層、ガラス、セラミック又はガラス・セラミックの層)を膜マイクロ構造体の一部を生成するために、基板及びプリカーサ混合物の間でスライドさせることが完全に可能である。例えば、電極は従来の転写、フォトリソグラフィ若しくは電鋳技術によって形成され得る。
【0049】
膜マイクロ構造体10を製造する1つの典型的な方法が図7に図示される。1つの実施例において、まずレリーフでマイクロ構造体が基板56(例えば、Siガラス)の上に作られる。マイクロ構造体は、例えば、ガラス・フリット及び熱可塑性媒体を含む混合物58をモールドして製造される。2つの異なる技術を概略的に示す。図7の右上角の(a)に図示した方法は、米国特許第5,853,446号に記載された方法と同様であって、特に、当該特許の実施例4に記載された方法により詳細に類似している。なお、当該特許の開示内容は、引用により本願明細書に包含されるものとする。この方法によると、混合物58は基板56上に配置される。混合物58を運ぶ基板56が熱平衡的に制御された支持体60上に配置される。好ましくはエラストマからなる適当なモールド62が前もって準備される。モールド62が支持体64上に配置され、ヒーター素子66に固定される。素子66、64及び62を含むアセンブリは、モールド62がエンクロージャ内の混合物58に与えられる前に、エンクロージャ68の内部を真空引きしてガスを除去される。混合物58のこの脱気によって、形成された混合物に実質的に若しくは完全にガスの気泡が閉じ込められることを防止する。
【0050】
図7の左上角の(b)図に示された方法は、前もって基板56の上に配置されて、モールド62に混合物58を注入する方法である。基板56及びモールド62を含むアセンブリは、ピストン74の動作で開口及び閉口に適したジャケット72の内部にあって、2つのホットプレート70の間に配置される。モールド62の内側が減圧機構76によって排気された後、混合物58がインジェクタ78で注入される。熱成形プロセスの最終工程では、熱成形されたアセンブリがボトムホットプレートに貫挿されているエジェクタ80を使用して取り外される。
【0051】
真空成形ステップが実行された後、混合物82は、基板56に固定される。これは熱成形された混合物58を含む。アセンブリが加熱処理されて、混合物82が予備焼結される。混合物は、参照番号84で参照されて、この混合物は主に熱処理ガラス・フリットを含む。
【0052】
同時に、第2の板が膜マイクロ構造体10のために用意される。第2の板は、第1の板と同タイプでありえる。固定されて予備焼結された混合物84を有する基板56を含む。
【0053】
1つの実施例によれば、好ましくはガラス、ガラスセラミック若しくはセラミック・フリットであるプリカーサ材料層28は、各板の熱形成混合物84に沿って堆積させられる。各板の混合物84は、好ましくは複数のマイクロチャネル隔壁14及び22を画定する。1つの実施例によれば、プリカーサ材料層28は、好ましくは隔壁14の表面全体に実質的に均一に広げられて、混合物84によって画定される凹部16の各々をカバーする。図に示すように、第1の板の外壁15は基板56から内壁よりも好ましくは更に伸長している。このように、図示された実施例において、プリカーサ材料層28は、実質的に外壁15の先端と平坦になるように、第1の板の外壁15の間に実質的に均一に展開する。
【0054】
第1の板のプリカーサ材料層28が第2の板の熱成形混合物84に対向するように、第1及び第2の板は、実質的に若しくは完全に整列配置される。第1及び第2の板は、壁が実質的に整列配置されて互いに係合するように配置される。得られるアセンブリは、その後、適切な条件で熱処理を受けて、膜マイクロ構造体10を生成する。配置されて密封された膜マイクロ構造体10は、熱処理によって形成された多孔膜30上のマイクロチャネル86の第1の複数と、多孔膜30下のマイクロチャネル88の第2の複数とを画定する。マイクロチャネル86及び88は、実質的に互いに整列されて、多孔膜30によって分離され得る。物理的に多孔膜30によって分離されて、多孔膜30は、マイクロチャネル86及び88の間の選択的流体連通を提供する。
【0055】
開示されたマイクロ流反応器の製造方法に関する更なる詳細は、米国特許第6,595,232号に記載されている。
【0056】
また、開示された膜マイクロ構造体10を製作するために用いるガラス板12,12’は、湿式エッチングプロセスによって製作され得る。
【0057】
ある実施例では、特に所与のアプリケーションにおいては、多孔膜30が触媒コーティング、若しくは、非触媒コーティングされ得る。この種のコーティングは、多孔膜30の上下両面上に多孔膜30によって支持され得る。一般的に、コーティングは、多孔膜30内に画定されるポアのサイズを減じる。コーティングは、多孔膜30のポアに及びその中に付着され得る無機触媒支持体を含み得て、これは膜マイクロ構造体10、10’のマイクロチャネル隔壁のマイクロチャネルを画定する少なくとも内壁面に堆積され得る。本明細書の記述の目的において、コーティング膜マイクロ構造体及びコーティング膜マイクロ反応器は、内表面(又は、マイクロチャネル壁)によって区切られた内部ボイド空間(例えばマイクロチャネル、キャビティ等)を画定する集積体として特徴付けられる。また、処理のためにマイクロ構造体若しくはマイクロ反応器に入る反応流が多孔膜30及びマイクロチャネル壁14、14’及び22、22’上に配置されたコーティング層内の触媒的活性種に接触する集積体としても特徴づけられる。コーティングマイクロ構造体及びコーティングマイクロ反応器は、自動車産業の触媒コンバータに使用されるモノリシック押出セラミックハニカム構造を含むことを意図しない。このような構造は、パラレル・チャネルを有する自立デバイスである。一般的に酸化物である触媒支持体は、好ましくは予め定められたポロシティを有するだろう。マイクロチャネル隔壁を含む、例えば、マイクロ構造体若しくはマイクロ反応器は、ガラス、ガラスセラミック・セラミック、セラミック組成物からなり得る。マイクロチャネル隔壁は、固体構造体、若しくは、例えば多孔膜のようなそれ自身が多孔構造体であり得る。
【0058】
1つの実施例の膜マイクロ構造体の場合、触媒支持体は、多孔性の非有機触媒支持層として、チャネル隔壁及び多孔膜30上にコーティングされ得る。この層は、(i)流路に対する垂直断面がマイクロチャネル断面の少なくともほぼ1%を占め、(ii)少なくとも5%、より好ましくは少なくとも30%の開口及び連通率を与え、(iii)約0.2×104ナノメータ(nm)以上の平均ポアサイズによって特徴づけられる。特定のマイクロ反応・マイクロチャネルでは、層厚さは、約10ミクロンから約200ミクロンの範囲内である。このコーティングマイクロ反応器に使用される特定の反応のための活性及び選択性を有している金属、金属酸化物若しくは他の触媒活性種が触媒支持体のポア構造上に若しくはその中に配置される。他のアプリケーションでは、触媒支持体及び触媒は、非有機物であってもよい。他のアプリケーションでは、コーティングが非触媒であってもよい。
【0059】
本発明は、上述の如く、コーティングされた膜マイクロ構造体を製造する方法を更に含む。1つの方法によると、スラリーがガラス、ガラスセラミック及び/又はセラミック材料からなるマイクロチャネル壁によって画定される1以上の内部ボイド若しくはマイクロチャネルを含む膜マイクロ構造体を通過する。スラリーが完全に多孔膜の上下両面のマイクロチャネルを満たすように、スラリーは膜マイクロ構造体の両側の導入口を介して圧力によってマイクロチャネル内へ導かれ得る。スラリーは触媒支持体及び触媒を含むことができる。この場合、コーティングが単一のステップでマイクロチャネル壁及び多孔膜に与えられ得る。他の1つの実施例では、スラリーは触媒支持体のみを含む。この種の実施例において、触媒は、更に詳細に後述するように、触媒含浸法を利用した第2のプロセス・ステップで触媒支持体上に若しくはこれを通して堆積させることができる。
【0060】
スラリーは、好ましくは酸化物触媒支持体のための永久無機接着剤のプリカーサを構成し若しくはこれを含む液体を含む。典型的には金属酸化物バインダからなる無機接着剤は、所望の内部ポア構造体の接着コーティングを形成するのに有効となるように選択される。バインダの組成は、触媒支持体の組成と同じであっても、異なっていてもよい。このプリカーサは、一般的に、液相スラリーに可溶若しくは高い分散能を有する金属の有機化合物若しくは無機化合物である。
【0061】
マイクロチャネルがスラリーで満たされた後、スラリー層が複数のマイクロチャネル壁、及び、好ましくは多孔膜の両面を覆うように、一部のスラリーがマイクロチャネルから取り除かれる。典型的に、スラリーは、例えば、強制的空気循環、真空吸引若しくはスラリーと一緒に流れる他の流体を使用してマイクロ反応器の排出口から流出することができる。膜マイクロ構造体及びその含まれたスラリー層が好ましくは乾燥せしめられて、少なくともコーティング層を成形するためにスラリーから液相を取り除くのに十分な温度まで加熱される。この層を硬化又は部分的に焼結させるための更なる加温は、液相の除去直後に好ましくは行われるが、追加の層の堆積後まで延期しても良い。つまり、コーティング層からの液相の除去について、マイクロチャネルをスラリーで満たすステップ、マイクロチャネルから少なくとも一部のスラリーを除去するステップ、及び、液相を除去するために乾燥及び加温するステップは、最初のコーティング層上に1以上のコーティング層を形成するために繰り返され得る。
【0062】
このプロセスは、第1のコーティング層の組み合わせ体を形成するまで繰り返されて、全ての追加のコーティング層が所与の触媒反応に適当な反応速度を与える厚さに達する。最後に、全ての下地未硬化層を硬化させるための加熱が実行される。
【0063】
触媒的活性種をコーティング層の少なくとも1、より好ましくは全てに与えるステップは、スラリー堆積の間、各コーティング層が堆積された後、若しくは、全てのコーティング層が堆積された後のいずれかで実行される。さらに、触媒含浸は、硬化前又は後に行われ得る。
【0064】
このプロセスは、コーティング若しくは層状コーティングの全厚さにわたって、触媒の完全な均一分布のオプションを提供し、若しくは、代わりに、各層が異なる触媒作用種を含むだけでなく、厚さ若しくは気孔率若しくは双方に関して、隣接した層と異なるようにすることができる。コーティングに特異性を与えるための触媒支持体の組成、ポア形態若しくは、他の性質を変化させるいくつかのステップが任意に続く。例えば、触媒若しくは他の添加剤がスラリー組成に含まれ得て、若しくは、スラリーに添加される粉体酸化物触媒支持体に堆積され得る。後の手順は、特に硬化後に触媒支持体層の厚さの全体に亘って、触媒の広い分布を確実にするのに効果的である。
【0065】
また、次の熱処理若しくは化学処理による層のポア構造を改質するために使用されるポア形成添加剤が任意のスラリー成分として有効である。乾燥ステップの前に堆積層のゲル化を促進する成分が堆積層の厚さを増加させ、得られるコーティングの気孔率を改質し、若しくは、堆積層の幾何学的形状を制御する手段としてスラリーに含まれ得る。
【0066】
コーティング層内に含浸させ得る特定の触媒的活性種の組成は重要でなく、例えば、コーティング層が利用される特定のアプリケーション若しくはプロセス環境の観点から、従来通り決定される。好適に使用され得る従来の触媒は、周期表でVIIIA属の貴金属触媒を少なくとも含み、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA属の遷移金属からなる。コーティング層に受け入れられる触媒支持体は、これに限定されるものではないが、アルミナ、特に、ガンマ・アルミナ、微細粒径のベーマイト、シリカ、アルミナ・シリカ、及び、これに限定されるものではないが、ゼオライト、チタニア及び/又はジルコニアのようなモレキュラーシーブを含む。
【0067】
コーティングマイクロ構造体の製造方法に関する更なる詳細は、同時に出願された出願番号EP03293327.7号に見出すことができる。
【0068】
コーティング膜マイクロ構造体10の製造方法について、図8乃至10を参照しつつ説明する。図8に示すように、例えば、これに限定されるものではないが、圧力下でスラリー92を運ぶためのシリンジのような源90が導入口38及び排出口40と協働し、導入口38及び排出口40を通じて、マイクロチャネル32及び34にスラリー92を運ぶ。1つの実施例において、マイクロチャネル32及び34が完全に満たされて、スラリー92が出口42を出るまで、スラリー92はマイクロチャネル32及び34に運ばれる。この点で、上記したように、スラリー92は触媒支持体を含むが、触媒については含んでも含まなくともよい。ここでは、スラリー92が触媒支持体及び触媒を含むと仮定する。
【0069】
スラリー92が、それぞれマイクロチャネル32及び34を画定するマイクロチャネル隔壁表面14及び22の全てをコーティングするように、マイクロチャネル32及び34がスラリー92で一旦満たされて、少なくとも、スラリー92の一部分は、排出されるか、若しくは、図9に示されるように、マイクロチャネル32及び34から除去される。ここに開示された方法の1実施例によれば、強制気流96の源94は、好ましくは吸気口38と協働して、マイクロチャネル32を通過して排出口42から出るように強制気流96を運ぶのである。強制気流96がマイクロチャネル32を通って進行するとき、スラリー92の大部分は、排出口42を通って、排出口42と協動する収集容器98に回収される。排出口40を経てマイクロチャネル34に減圧吸引器(図示せず)ることで、実質的にマイクロチャネル34には同じ結果をもたらす。図9に示すように、スラリー層100は、この工程によってマイクロチャネル隔壁14及び22の全て、及び、多孔膜30の表面に固着されるのである。
【0070】
スラリー層100は、該スラリー層から大部分の液相を除去するのに十分な時間だけ、好ましくは低フローレートの気流に曝されて乾燥せしめられる。図10に示すように、スラリー層100でコーティングされた膜マイクロ構造体10は、熱源102内に配置されて、スラリー層100を硬化させてマイクロチャネル隔壁14及び22、多孔膜30と結合するのに十分な温度に加熱される。一般的には、スラリー層100でコーティングされた膜マイクロ構造体10は、不活性ガス104の存在下で加熱され得る。加熱により、コーティング膜マイクロ構造体10は、コーティング層106の厚さ全体に亘って良好に分散された触媒支持体と触媒とを含む固体コーティング層を含むのである。1つの実施例において、コーティング層106は、内部隔壁表面、及び、膜マイクロ構造体10内のマイクロチャネルに対向している多孔膜の表面の全てをカバーしている。
【0071】
上記した工程が繰り返されて、追加のスラリー層100を先に形成したスラリー層100の上に与えて複数の固体コーティング層106を得る。加えて、コーティング層106は、二段階工程で与えられ得る(図示せず)。このような工程によれば、スラリー92は触媒を含まない。スラリーを含む触媒支持体は、上記したステップによって、運ばれて、除去されて、乾燥させられて加熱される。その後、所望の触媒を含む溶液がスラリーコーティングマイクロチャネル32及び34に運ばれて、スラリー層を含む触媒若しくは焼成後であればコーティングを含む触媒を含浸するために触媒と共に加熱される。
【0072】
ガラス多孔薄膜層(例えば200μmの実厚さ)を形成する1つの方法は、水性媒体及び水溶ポリマーを用いたブレーディング及び乾燥ステップを含む。例えば、加熱されたマグネチック板を使用して、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)約30gがビーカー内で約60℃の加熱脱イオン水(DI)約600gと混ぜ合わせられる。約pH8〜9のカ性ソーダ(NaOH)によってpH調整され得る。粒径約20μm以下のガラス粉末が混合物に添加されて、一晩放置される。超音波デバイスを全ての気泡を除去するために使用してもよい。この混合物が容器へ注入されて、少なくとも約24時間、振動・回転混合器にかけられる。平らなMYLAR(登録商標)シートの上へこの混合物をブレード掛けして膜を得ると、これは乾燥のために放置される。約24時間後、膜は注意してシートから剥ぎ取られ得る。はさみで膜は正確な大きさに切断されて、2枚の平坦なガラス・セラミック支持台の間に配置される。続いて、約590度まで加熱される。膜は、レリーフとしてガラス・マイクロ構造を有する2枚のガラス板の間に積層されて、最終的なアセンブリは、620度で焼成される。この特殊なプロセスによって、混合量、混合強さ、ポリマー濃度のパーセンテージ及び粒径が所望の有益な膜を達成するように大きく変化させることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】第1の典型的な膜マイクロ構造体の図である。
【図1B】図1Aの1B−1B線における断面図である。
【図1C】図1Aの1C−1C線における断面図である。
【図2A】第2の典型的な膜マイクロ構造体の図である。
【図2B】図2Aの2B−2B線における断面図である。
【図2C】図2Aの2C−2C線における断面図である。
【図3】分離器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図4】抽出器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図5】拡散器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図6】接触器としての図1Cの膜マイクロ構造体を表す図である。
【図7】図1A乃至1Cの膜マイクロ構造体の製造方法を示す図である。
【図8】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【図9】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【図10】触媒を有する多孔膜のコーティング方法を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の凹部を画定する複数の第1の壁を含む第1の板と、第2の凹部を画定する複数の第2の壁を含む第2の板と、前記第1及び第2の板の間に配置されたガラス、セラミックまたはガラスセラミックの多孔膜とを含む集積化マイクロ構造体であって、
前記第1の板、第2の板及び多孔膜が焼結により互いに結合されて一体的な構造を形成し、前記多孔膜が前記第1及び第2の複数の壁と協働して、第1のマイクロチャネル及び前記第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定することを特徴とする集積化マイクロ構造体。
【請求項2】
前記第1の板は、ガラス、セラミック及びガラスセラミックのうちの少なくとも1から選択される材料からなることを特徴とする請求項1記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項3】
前記第2の板は、ガラス、セラミック及びガラスセラミックのうちの少なくとも1から選択される材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項4】
前記多孔膜は、メゾ多孔体の支持体構造又はマクロ多孔体の支持体構造を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項5】
前記多孔膜は、触媒材若しくは非触媒材がコーティングまたは含浸せしめられたマクロ多孔体の支持体構造若しくはメゾ多孔体の支持体構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項6】
前記触媒材若しくは非触媒材は、マイクロ多孔体であることを特徴とする請求項5記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項7】
前記第1の板及び第2の板が互いに板状インタフェースで結合されて、前記多孔膜が前記集積化マイクロ構造体内にカプセル封止されることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項8】
前記第1の板及び第2の板が互いに接触しないように、前記多孔膜が前記集積化マイクロ構造体の中央部を横切って延在することを特徴とする請求項1乃至7のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項9】
マイクロ混合器、熱交換器、分離器、フロー制御器、検知装置、分析チャンバー及びモニターリングチャンバの少なくとも1から選択される、前記多孔膜と流体連通するコンポーネントを更に含むことを特徴とする請求項1乃至8のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項1】
第1の凹部を画定する複数の第1の壁を含む第1の板と、第2の凹部を画定する複数の第2の壁を含む第2の板と、前記第1及び第2の板の間に配置されたガラス、セラミックまたはガラスセラミックの多孔膜とを含む集積化マイクロ構造体であって、
前記第1の板、第2の板及び多孔膜が焼結により互いに結合されて一体的な構造を形成し、前記多孔膜が前記第1及び第2の複数の壁と協働して、第1のマイクロチャネル及び前記第1のマイクロチャネルと流体連通する第2のマイクロチャネルを画定することを特徴とする集積化マイクロ構造体。
【請求項2】
前記第1の板は、ガラス、セラミック及びガラスセラミックのうちの少なくとも1から選択される材料からなることを特徴とする請求項1記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項3】
前記第2の板は、ガラス、セラミック及びガラスセラミックのうちの少なくとも1から選択される材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項4】
前記多孔膜は、メゾ多孔体の支持体構造又はマクロ多孔体の支持体構造を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項5】
前記多孔膜は、触媒材若しくは非触媒材がコーティングまたは含浸せしめられたマクロ多孔体の支持体構造若しくはメゾ多孔体の支持体構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項6】
前記触媒材若しくは非触媒材は、マイクロ多孔体であることを特徴とする請求項5記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項7】
前記第1の板及び第2の板が互いに板状インタフェースで結合されて、前記多孔膜が前記集積化マイクロ構造体内にカプセル封止されることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項8】
前記第1の板及び第2の板が互いに接触しないように、前記多孔膜が前記集積化マイクロ構造体の中央部を横切って延在することを特徴とする請求項1乃至7のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【請求項9】
マイクロ混合器、熱交換器、分離器、フロー制御器、検知装置、分析チャンバー及びモニターリングチャンバの少なくとも1から選択される、前記多孔膜と流体連通するコンポーネントを更に含むことを特徴とする請求項1乃至8のうちの1に記載の集積化マイクロ構造体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−83774(P2011−83774A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292720(P2010−292720)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−547288(P2006−547288)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−547288(P2006−547288)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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