多孔質構造化熱伝達物品
複数の金属体前駆体、複数の金属体前駆体の間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素、及び間隙要素に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。金属体前駆体は、第1の金属を含む内側部分と、第1の金属及び第2の金属を含む合金を含む外側部分と、を含む。間隙要素は、外側部分の合金を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、多孔質構造化熱伝達物品に関する。より具体的には、本発明は、成形された多孔質金属物品、並びにそれを製造する及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱放散構成要素のための1つの冷却システムは、蒸発又は沸騰する流体を含む。生成した蒸気は次に外部の手段を使用して凝縮されボイラーに戻される。ボイラーにおける流体の熱伝達を改善するために、多孔質構造化熱伝達物品が使用される。
【0003】
例えば、火炎又はプラズマ溶射によるコーティングを含む様々な多孔質熱伝達物品が利用可能である。これらのコーティングは一般的に金属性であり、種々のプロセスで金属基材に適用される。これらのプロセスでは、間隙率を制御すること及び三次元基材に均一にコーティングすることが困難である可能性がある。他の既知のコーティングは、有機結合剤により接合された伝導性の粒子を含む。これらのコーティングは一般に、バルク熱伝導度が悪く、そのため三次元表面を有する基材上では困難である正確な厚さの制御を必要とする。
【0004】
受動2相又は沸騰熱サイホンが、マイクロプロセッサなどの熱に敏感な構成要素の冷却に使用するために設計されている。熱サイホンは自然対流に基づいて液体を循環させる受動熱伝達デバイスである。これらは従来の熱交換器における液体ポンプのコストと複雑さを回避することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
集積回路及び他の熱放散電子装置がより強力及び小型になるにつれて、これらの熱放散構成要素からの熱伝達速度は増加される必要がある。熱サイホンは、これらの構成要素を冷却するコスト効率のよい方法を提供することができる。したがって、熱サイホン及び他の熱交換器を安価にかつより効率よくすることのできる、高い熱伝達率を有する多孔質構造化熱伝達物品の開発の必要性が引き続き存在している。更に、製造プロセスにおいて容易に適用できる安価な多孔質熱伝達物品も引き続き必要とされている。
【0006】
多孔質構造化熱伝達物品が提供される。より詳しくは、多孔質金属物品、並びにそれを製造する及び使用する方法が提供される。物品は、冷凍システム及び電子冷却システムのような冷却装置のための蒸発器として使用され得る。多孔質構造化熱伝達物品は、単相又は2相熱伝達システムの両方において使用され得る。幾つかの実施形態では、物品は、例えばマイクロプロセッサのような集積回路を冷却するのに使用される熱サイホン内のボイラープレートとして使用され得る。他の実施形態においては、物品は、浸漬冷却される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの装置に取り付けることができる。
【0007】
1つの態様においては、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。
【0008】
他の態様においては、構造化熱伝達物品の形成方法であって、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(ここで金属体前駆体は、融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、複数の金属粒子をコーティングに適用すること、並びにこの組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、第1の金属及び複数の金属体前駆体を互いに固着する第2の金属を含む合金を形成すること(ここで、固着は多孔質マトリックスを形成し、複数の金属粒子はマトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、方法が提供される。
【0009】
本明細書で使用するすべての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用される幾つかの用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0010】
本明細書で使用する用語を以下に定義する。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確にそれ以外を示していない限り、複数に言及する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「又は」は、文脈が明確にそれ以外を示していない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられ、
「アスペクト比」は、三次元体の最長寸法(すなわち「全長」)と全長寸法に直交する最長寸法(すなわち「全幅」)との比を指し、
用語「有効間隙率」は、マトリックス中の流体の流れ又は透過性に寄与する成形体中の相互に連結された間隙体積又は空隙を指す。有効間隙率は、マトリックスの中に存在することがある孤立した孔は除外する。本開示の構造化熱伝達物品の有効間隙率は、無孔の基材、又は構造化熱伝達物品の一部分を形成する可能性のある他の無孔層を除いて測定され、
「精密成形された熱伝達複合体」は、成形形状を形成するために使用されるモールドキャビティのほぼ逆である成形形状を有する熱伝達複合体を指し、
「構造化熱伝達物品」は、複数の三次元形状の熱伝達複合体を含む熱伝達物品を指し、
「実質的に球形状」とは、アスペクト比が1〜1.5であり、ほぼ球形状の三次元体を指し、
「実質的に垂直」とは、水平面から90度に近い方向を指し、
「単位密度」とは、特定の体積当たりの指定単位の量を指す。例えば、本開示に記載される多孔質マトリックスが100の金属体前駆体を含みかつ1立方センチメートルの体積を占有する場合、金属体前駆体の単位密度は、1立方センチメートル当たり100金属体前駆体である。
【0011】
上記の要約は、本発明のすべての実施の開示された各実施形態を記述することを意図したものではない。図面の簡単な説明及び後に続く詳細な説明は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】提供される熱伝達物品の実施形態の作製に使用できるコーティングされた基材の透視図。
【図1b】提供される熱伝達物品の実施形態の作製に使用できるコーティングされた基材の透視図。
【図2a】提供される構造化熱伝達物品を製造するのに使用される2つの代表的な金属体前駆体の側面図。
【図2b】図2aに示す2つの代表的な金属体前駆体の横断面図。
【図2c】提供される方法を用いて2つの金属体前駆体を互いに付着させるために間隙要素が形成された後の、図2aに示す2つの代表的な金属体前駆体の側面図。
【図3】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の一部分の代表的な透視図。
【図4】代表的な構造化熱伝達物品の一実施形態の一部分の代表的な断面の側面図。
【図5】コーティングされたダイヤモンドを含む代表的な前駆体複合体の断面図。
【図6a】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の異なる倍率での写真描写。
【図6b】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の異なる倍率での写真描写。
【図7】提供される物品の実施形態の作製に役立つ基材の作製のための代表的な装置の概略図。
【図8】代表的な実施形態の熱抵抗の実験結果を示すグラフ。 これらの図は理想化されており、縮尺に合っておらず、本開示の構造化熱伝達物品を単に例証することを目的としており、限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を構成しいくつかの特定の実施形態が例として示される添付の一連の図面を参照する。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0014】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表わす数字はすべて、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用には、その範囲内に含まれるすべての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)及びその範囲内のあらゆる範囲が包含される。
【0015】
冷凍システム及び電子冷却システムなどの冷却装置のための蒸発器として使用することができる構造化熱伝達物品が記述されている。熱伝達物品は、単相又は2相熱伝達システムの両方において使用され得る。幾つかの実施形態では、これらは、例えばマイクロプロセッサのような集積回路を冷却するために使用される熱サイホン中の沸騰プレートとして使用できる。他の実施形態では、これらは2相浸漬により冷却される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの熱発生デバイスに取り付けられる。構造化熱伝達物品は、2相熱伝達では、ほぼ垂直(実質的に垂直)の向きに配向された場合には実質的に水平の向きでの使用より一般的に効率が低い。熱を発生する構成要素を含むデスクトップコンピュータの回路基板が非水平の向き(すなわち実質的に垂直)に組み込まれ、また熱サイホンなどの冷却装置がその向きに構成要素に取り付けられることがますます普及しつつある。更に、冷却効率を向上させるために、沸騰プレート又は構造化熱伝達物品の表面積を、プレートの表面にフィン又は突起を加えることにより増大させることが普及している。これは、このようなプレート又は物品の製造コストに費用を加える可能性がある。向きに関係なく熱の伝達効率がよく、低コストで製造できる、構造化熱伝達物品が要求されている。
【0016】
1つの態様においては、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。「埋め込まれた」ということは、合金の少なくとも一部と金属粒子との間に物理的な固着が存在することを意味する。この固着は、溶接、ろう付け、はんだ又は当業者に周知の他のいかなるタイプの金属結合であってもよい。この固着は、金属粒子を適所に保持し、これらを提供される物品の接合部分にする。有用であり得る金属体前駆体は、一般的に少なくとも1マイクロメートル(μm)の平均直径を有する。幾つかの実施形態では、金属体前駆体は、少なくとも5μmの平均直径を有する。更に他の実施形態では、金属体前駆体は、少なくとも10μmの平均直径を有することができる。提供される物品の製造に有用な金属体前駆体は、100μm以下の平均直径を有することができる。幾つかの実施形態では、金属体前駆体は、50μm以下の平均直径を有する。更に他の実施形態では、金属体前駆体は、30μm以下の平均直径を有する。提供される金属体前駆体は、1〜2の範囲のアスペクト比を有することができる。他の実施形態では、金属体前駆体は楕円形状であることができ、また1.5を超えるアスペクト比を有することができる。更なる実施形態では、金属体前駆体は多面体(例えば、立方八面体(cubo-octohedral))、又は、例えば、フレーク、小片、粒子、プレート、円筒及び針状体を含む他のランダム形状の成形体であることができる。金属体前駆体が球形でない場合、成形体の「直径」は、各成形体の最小軸の寸法を指し、「平均直径」は、集団内での個々の成形体直径(すなわち、各成形体の最小軸の寸法)の平均を指す。
【0017】
金属体前駆体は、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と、を含むことができる。第1の金属と第2の金属は異なる。幾つかの実施形態では、外側部分が均一な厚さを有するように、外側部分が内側部分に均一に適用される。他の実施形態では、外側部分のコーティングの厚さは変化し得る。幾つかの好ましい実施形態では、外側部分は内側部分の外表面の大部分を被覆する。幾つかの実施形態では、外側部分は内側部分の外表面の90%を超えて被覆する。なお更なる実施形態では、外側部分は内側部分の外表面を完全に被覆する。提供される多孔質構造化熱伝達物品は典型的には、三次元の多孔質マトリックスにおいて互いに接合する多数の金属体前駆体から形成されることができる。金属体前駆体の各々は、1、2、3、4、5つ以上の他の金属体前駆体と接合して、三次元の多孔質マトリックスを形成することができる。
【0018】
外側部分を形成するために使用される材料の量は、相対重量又は厚さで表現され得る。例えば、幾つかの実施形態では、外側部分は約10重量パーセント(wt%)の金属体前駆体を含む。外側部分は典型的には、約0.05重量%〜約30重量%の金属体前駆体を含む。他の実施形態では、外側部分は約0.001μm〜約0.5μmの範囲の平均厚さを有する。幾つかの実施形態では、外側部分は約0.01μm〜約0.05μmの範囲の平均厚さを有する。銅内側部分及び銀外側部分を有する代表的な有用な金属体前駆体は、Ferro Corp.(Plainfield,New Jersey)から「銀コーティング銅粉末#107(SILVER COATED COPPER POWDER #107)」として入手可能である。他の有用な金属体前駆体には、例えばマグネシウムでコーティングされたアルミニウム粒子が挙げられる。金属体前駆体は、当業者に周知の任意の方法によって作ることができ、例えば、物理蒸着(例えば、米国特許出願公開第2005/0095189号(Breyら)を参照)、プラズマ蒸着、化学メッキ、電解メッキ又は浸漬メッキが挙げられる。
【0019】
複数の間隙要素は、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐことができる。間隙要素は外側部分の合金を含むことができる。間隙要素は、金属体前駆体の内側部分及び外側部分の金属が成形体を共に固着する合金を形成するように、金属体前駆体を高温にさらすことにより形成される。このプロセスは、等温再凝固として既知である。幾つかの実施形態では、合金を形成する個々の金属よりも低い融点を有する共晶が形成され得る。等温再凝固プロセス中の拡散が様々な金属の境界面の組成に連続的変化を生じさせ得るため、共晶の形成は一時的であることがある。幾つかの実施形態では、等温再凝固プロセスは、例えば、Cranston,Rhode IslandのHayesから入手できるVCTモデル真空炉のような減圧又は真空炉中で起こる。
【0020】
熱伝達多孔質金属コーティング並びにそれを製造する及び使用する方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0102070号(Tumaら)に開示されている。内側合金及び外側合金を形成するために加熱される前に、これらのコーティングは、提供される物品及び方法にとっての前駆体として有用な実施形態であり得る。提供される物品及び方法の実施形態に使用することのできる構造化熱伝達物品は、例えば、米国特許第7,360,581号(Tumaら)に開示されている。
【0021】
提供される多孔質構造化熱伝達物品は、外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む。これらの粒子は銅又は他の金属を含むことができ、かつ種々の寸法及び形状を有することができる。幾つかの実施形態では、粒子は、二三を挙げれば、金属発泡体、フレーク若しくは繊維又は金属繊維の束若しくは編み物から作ることができる。粒子は、物品の表面に約0.002g/cm2〜約0.10g/cm2、約0.02g/cm2〜約0.08g/cm2、又は更には約0.02g/cm2〜約0.06g/cm2の使用量で存在することができる。粒子は、約0.5mm〜約40mmの長さ、約1mm〜約20mmの長さ又は更には約1mm〜約10mmの長さの平均寸法を有することができる。粒子は、約10μm〜約200μmの直径、約15μm〜約100μmの直径、約50μm〜約100μmの直径、又は約25μm〜約150μmの直径の平均寸法を有することができる。粒子は、ほぼ球形、ほぼ回転楕円形、又は規則的若しくは不規則な固体多面体の一般形状であることができる。粒子は他のランダム形状体の形もとることができ、例えば、繊維、フレーク、小片、プレート、円筒及び針状形状体が挙げられる。粒子は、約1、約2、約5、約10、約20、約50、約100、約200、約300又は更にはより大きいアスペクト比を有することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、本開示の多孔質構造化熱伝達物品は、1立方センチメートル当たり約106〜1011個の金属体前駆体の範囲の金属体密度を有する。幾つかの実施形態では、本開示の多孔質構造化熱伝達物品は、1立方センチメートル当たり約107〜109個の金属体前駆体の範囲の金属体密度を有する。本開示の構造化熱伝達物品の有効間隙率は、典型的には10〜60パーセントの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、構造化熱伝達物品の有効間隙率は少なくとも20パーセントであり得る。更に追加の実施形態では、構造化熱伝達物品の有効間隙率は少なくとも30パーセントであり得る。
【0023】
他の態様においては、ダイヤモンド並びにアルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の複合体、複数の金属体前駆体の間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、封入されたダイヤモンドの熱伝導度は、構造化熱伝達物品の性能を強化すると考えられている。幾つかの実施形態では、間隙要素により共に保持された金属体前駆体とダイヤモンドとの混合物を有する構造化熱伝達物品を形成するために、ダイヤモンド(コーティングされた又はコーティングされていない)は、複数の金属体前駆体(内部ダイヤモンド有り又は無し)と組み合わされることができる。例えば、多結晶ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンドコンパクト(PDC)、純粋なダイヤモンド及びこれらの組み合わせを含む他の材料もまた封入されることができるか又は金属体前駆体と組み合わされることができる。ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは、例えば、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びそれらの合金を含む任意の既知のカーバイド形成物を含むことができる。中間コーティングは、ダイヤモンドに、例えば、物理蒸着、化学蒸着、溶融塩蒸着(例えば、EP 0 786 506 A1(Karasら)を参照)、溶融塩中の電解及び機械的メッキを含む、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して適用され得る。幾つかの実施形態では、ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは多層からなる。
【0024】
図を見ると、図1a及び1bは、熱伝達コーティングを有し、提供される物品の実施形態に有用であり得る基材の透視図である。図1aに示されるように、熱伝達コーティングは、三次元表面を有する基材10に適用することができる。三次元表面は、フィン20又はボイラーの表面積を増大させる他の特徴などの突起の配列を含むことができる。図1bは、提供される物品の実施形態の作製に使用することができる基材40の透視図である。図1bに示すように、基材40は、成形された複数の熱伝達複合体90を含む。この熱伝達複合体は複数の金属体前駆体を含む。これらの基材は、提供される多孔質構造化熱伝達物品の実施形態の作製に使えるように、加熱又は等温再凝固されていない。
【0025】
図2a〜2cは、提供される多孔質構造化熱伝達物品の形成に有用な基材が形成され得る順序を示す。この図は、2つの代表的な金属体前駆体が接合される様子を示す、簡略化された描写である。提供される多孔質構造化熱伝達物品の実施形態の作製に有用な基材は、典型的には、三次元多孔質マトリックス内で互いに接合する多数の金属体前駆体から形成される。
【0026】
図2aは、提供される多孔質構造化熱伝達物品の製造に有用であり得る基材の製作に使用される2つの代表的な金属体前駆体の側面図である。図2aに示されるような実施形態においては、金属体前駆体200及び200’はほぼ同じ寸法であり得る。他の実施形態では、金属体前駆体は大きさが異なり得る。図2aに示されるように、金属体前駆体は実質的に球形であり得る。
【0027】
図2bは、図2aに示される2つの代表的な金属体前駆体200及び200’の断面図である。図2bに示されるように、各金属体前駆体は、内側部分250及び250’と外側部分240及び240’と、を含む。幾つかの実施形態では、内側部分250及び250’は、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される金属を含む。幾つかの実施形態では、外側部分240及び240’は、銅、銀、マグネシウム及びこれらの合金から選択される金属を含む。更なる実施形態では、内側部分は、融解温度Tmp1を有する金属を有し、外側部分は、融解温度Tmp2を有する金属を有し、Tmp1又はTmp2未満の温度まで加熱すると、内側部分及び外側部分の金属を含む合金が形成される。幾つかの実施形態では、金属体前駆体の内側部分及び外側部分の金属は、それらの熱伝導度及び/又はそれらの合金形成特性に基づいて選択される。
【0028】
図2cは、共に接合されて構造体260を形成する、図2a及び2bに示される2つの代表的な金属体前駆体200及び200’の側面図である。図2cに示されるように、間隙要素270は、2つの成形体を互いに付着させるために、本開示の方法を使用して形成される。
【0029】
図3は、等温再固化後の熱伝達複合体(基材を除いた)の一部の透視図である。図3に示されるように、熱伝達複合体360の一部は、間隙要素370により互いに接続されて三次元の多孔質マトリックスを形成する複数の金属体300を含む。
【0030】
図4は、提供される物品の実施に使用することができる基材の実施形態の一部である460の代表的な断面の側面図である。図4に示されるように、基材の一実施形態の460の部分は、精密に成形された複数の熱伝達複合体490及び495を含み、それぞれはピラミッド型の形状を有し、任意の基板480に貼り付けられている。複合体490の横断面図は、複合体490の背後に位置する複合体495の下部の視界を部分的に遮っている。しかしながら、複合体490及び495は類似の形状及び寸法を有することが理解されるべきである。複合体は、等温再固化後に間隙要素470により相互に連結した複数の金属体前駆体400を含むことができる。等温再固化前に金属粒子を複合体に加えて、提供される物品を作製することができる。
【0031】
上述したように、部分460は、提供される物品の製造に使用できる基材の代表的な実施形態を描写しており、これは、精密に成形された熱伝達複合体490及び495を有する。他の実施形態では、熱伝達複合体は精密に成形されず、単に三次元成形されている。三次元形状は、形状及び/若しくは寸法についてランダムであることもでき、又は形状及び/若しくは寸法について均一であることもできる。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体は、結合剤中に含まれる金属体前駆体の異なる大きさの「液滴」を金型を使用せずに表面上に滴下することにより形成されたランダムな形状及び大きさを含む。表面は、構造化熱伝達物品に一体化した部分(すなわち基材)になることもできるし、又は構造化熱伝達物品は形成後に表面から外されることもできる。
【0032】
図5は、内側部分にコーティングされたダイヤモンドを含む代表的な金属体前駆体の横断面図である。図5に示されるように、金属体前駆体の内側部分はダイヤモンド552、中間コーティング554及び第1金属550を含む。外側部分540は第2金属を含む。ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは、例えば、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びこれらの合金を含む任意の既知のカーバイド形成物を含むことができる。中間コーティングは、ダイヤモンドに、例えば、物理蒸着、化学蒸着、溶融塩蒸着(例えば、EP 0 786 506 A1(Karasら)を参照のこと)、溶融塩中の電解及び機械的メッキを含む、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して適用され得る。幾つかの実施形態では、ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは多層からなる。
【0033】
図6a及び6bは、提供される装置の実施形態の異なる倍率での顕微鏡写真である。図6aは、微細な銅粒子が埋め込まれた多孔質熱伝達複合体を有するプレート形態の、多孔質構造化熱伝達物品を示す。図6bはこの物品の拡大図であり、物品の外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた金属銅粒子をより鮮明に示している。これらの粒子は、約2mmの長さで、直径が75μmであり、約26のアスペクト比を有する。
【0034】
また、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(金属体前駆体は、融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、複数の金属粒子をコーティングに適用すること、並びにこの組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、第1の金属及び複数の金属体前駆体を互いに固着する第2の金属を含む合金を形成すること(ここで固着は多孔質マトリックスを形成し、複数の金属粒子はマトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、構造化熱伝達物品の形成方法が提供される。
【0035】
図7は、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングの調製を含む構造化熱伝達物品形成のための代表的な装置の概略図である。図7に示されるように、金属体前駆体及び結合剤を含むスラリー700は、圧力又は重力によって供給トラフ702から生産ツール704の上に流動し、その中のキャビティ(図示されず)を充填する。スラリー700がキャビティを完全に充填しない場合には、結果として生じる構造化熱伝達物品は、熱伝達複合体の表面上及び/又は熱伝達複合体の内側部分の中に空洞又は小さな欠陥を有することになる。スラリーを生産ツールに導入する他の方法には、ダイコーティング及び真空滴下ダイコーティングが挙げられる。スラリーの粘度は、幾つかの理由により厳密に制御されることが好ましい。例えば、粘度が高過ぎる場合には、スラリーを生産ツールに適用することが困難になる。
【0036】
生産ツール704は、ベルト、シート、コーティングロール、コーティングロール上に実装されたスリーブ又はダイであり得る。幾つかの好ましい実施形態では、生産ツール704はコーティングロールである。典型的には、コーティングロールは、25〜45センチメートルの直径を有し、金属のような剛体材料から構築される。生産ツール704は、一旦コーティング機上に実装されると、電力駆動のモーターにより動かすことができる。
【0037】
生産ツール704は、その表面上に少なくとも1つの指定形状の所定の配列を有し、これは熱伝達複合体の所定の配列及び指定形状の逆である。このプロセスのための生産ツールは、金属から調製されることができるが、プラスチック製ツールも使用することができる。生産ツールは金属から作ることができ、また彫刻、ホビング、所望の構成に機械加工された複数の金属部品群の組立て、若しくは他の機械的手段、又は電鋳法により作ることができる。これらの技術は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.8,John Wiley&Sons,Inc.(1968),p.651〜665及び米国特許第3,689,346号(Rowland)に更に記述されている。場合によっては、プラスチック製生産ツールは、オリジナルツールから複製され得る。金属製ツールと比較したプラスチック製ツールの利点はコストである。ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂は、金属製ツール上で、その融解温度でエンボス加工することができ、次に急冷して、金属製ツールの熱可塑性レプリカを得ることができる。このプラスチック製レプリカは、次いで生産ツールとして使用され得る。
【0038】
基材706は、巻き戻しステーション708から出発し、次にアイドラーロール710及びニップロール712を通り過ぎて適切な張りを得る。また、ニップロール712は裏材706をスラリー700に押し付け、これによりスラリーが裏材706を濡らして中間物品を形成する。スラリーは、エネルギー源714を使用して、中間物品が生産ツール704を離れる前に乾燥される。乾燥後、熱伝達複合体の指定形状は、構造化熱伝達物品が生産ツール704から離れた後には実質的に変化しない。したがって、構造化熱伝達物品は、生産ツール704の逆レプリカである。構造化熱伝達物品716は生産ツール604から離れ、金属粒子で処理され、等温再凝固炉718を通過する。
【0039】
提供される多孔質構造化熱伝達物品は、以下の方法によっても作ることができる。第1に、金属体前駆体及び結合剤の混合物を含むスラリーを、表側及び裏側を有する裏材に導入することができる。スラリーが裏材の表側を湿らして、中間物品を形成することができる。第2に、この中間物品を生産ツールに導入することができる。第3に、スラリーは、中間物品が生産ツールの外面から離れる前に、少なくとも部分的に乾燥される。第4に、金属粒子がこの中間物品に適用される。最後に、中間物品を、等温再凝固が起こる温度に加熱して、構造化熱伝達物品が形成される。この工程は、連続方式で行われることができ、それによって構造化熱伝達物品を調製するための効率のよい方法が提供される。第2の方法ではスラリーが初めに生産ツールではなく裏材に適用されることを除いて、第2の方法は第1の方法に類似している。
【0040】
幾つかの好ましい実施形態では、提供される多孔質構造化熱伝達物品の作製に有用な構造は、予め定められた模様の形態に配置された複数の熱伝達複合体を含む。複合体の少なくとも幾つかは、精密に成形された研磨複合体であってもよい。幾つかの実施形態では、複合体は実質的に同じ高さを有する。有用な構造は典型的には表面積1平方センチメートル当たり少なくとも約1,200の複合体を含む。有用な構造は、典型的には、約20〜約1000μmの範囲の平均厚さを有する。幾つかの実施形態では、有用な構造は、典型的には、約50〜約500μmの範囲の平均厚さを有する。
【0041】
熱伝達複合体は、例えば、立方体、円筒形、プリズム形、矩形、角錐形、切頭角錐形、円錐形、切頭円錐形、十字形、平らな上面を有する柱状、半球形及びこれらの組み合わせを含む多様な形状を有することができる。熱伝達複合体は異なることができ、また大きさが異なることもできる。熱伝達複合体は、典型的には、約20〜約1,000μmの範囲の平均高さを有する。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体は、約50〜約500μmの範囲の平均高さを有する。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体を形成するために多様な形状及び/又は寸法が使用される。
【0042】
金属粒子を、望ましい密度及び配向を達成するために、必要に応じて、手動又は機械的に以前に適用した複合体の上及び間に加えられ得る。例えば、粒子は望ましい量を達成するために評量され、次いで、以前に適用した複合体の上に手でランダムに適用され得る。別の方法としては、粒子は以前に適用した複合体に機械的手段により規定の位置に挿入され得る。提供される構造化熱伝達物品は、例えば、熱サイホンなどの受動冷却システムなどの冷却システムに使用され得る。構造化熱伝達物品は、熱発生装置又は熱発生装置と熱伝達する熱放散装置に直接適用され得る。提供される構造化熱伝達物品は、少なくとも10W/cm2の熱束において、1平方センチメートル当たり、摂氏1度当たり少なくとも3ワット(W/cm2/℃)の熱伝達率を有することができる。幾つかの実施形態において、提供される構造化熱伝達物品は、少なくとも10W/cm2の熱束において、少なくとも6W/cm2/℃の熱伝達率を有する。透明で無色で優れた毒物学的特性を有し、かつ環境に優しいハイドロフルオロエーテルなどの流体が、熱伝達を促進するために使用され得る。3M Company,St.Paul,MN.から入手できるHFE−7000、HFE−7100、HFE−7200及びHFE−711PAなどのNOVEC Engineered Fluidsは、提供される構造化熱伝達物品を有するシステムで有用であり得る流体である。より一般的であるが環境への優しさがより低い流体、例えば、HFC−134a又はHFC−245faなどのハイドロフルオロカーボン冷媒などもまた使用できる。HFO−1234yfなどのハイドロフルオロオレフィン冷媒もまた使用できる。また、プロパン又はブタンなどの炭化水素冷媒が熱伝達流体として有用であり得ることも考えられる。
【0043】
本開示の構造化熱伝達物品の利点及び他の実施形態は、以下の実施例により更に説明されるが、これらの実施例の中に列挙された特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示の構造化熱伝達物品を過度に制限すると解釈されるべきではない。例えば、金属体前駆体を形成するために使用される金属は異なり得る。すべての部及びパーセンテージは、特に記載されていない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0044】
材料
金属体前駆体は、米国特許出願公開第2005/0095189 A1号に記載されている方法を使用して銀でスパッタコーティングされた、サブ325メッシュ銅粒子を含む。得られた粒子は0.4〜0.9重量%のAgを含有していた。これらの銅粒子源は、American Chemet Corporation,Deerfield,Il.の銅粉末Chem Copp1700FPMであった。
【0045】
構造化熱伝達物品が調製され、沸騰実験が以下に記載された方法を使用して行われた。
【0046】
熱伝達物品の調製
(比較例)
熱伝達物品用の基材が直径5.0cmの機械加工された0.3cmの厚さの銅のディスクから作られた。これらディスクの片面は、2mmの深さまで機械加工されディスクの中心線で終結する、1mmの熱電対の溝を含んでいた。またこの表面は平らにラップ仕上げされ、研磨されていた。金属体前駆体は13重量%の拡散ポンプ油(Dow Chemical,Midland Michigan,USAにより製造されたDow 704)と混合された。従来の手によるスクリーン印刷技術及びポリマーメッシュスクリーン(SwitzerlandのThalにあるSefar社製の45−180W IM E11F 0.5 30d STD)を使用して、このスラリーが銅ディスクの裸の面の中心の直径25mmに適用された。得られたコーティングは、金属体前駆体を1平方センチメートル当たり0.052g含んでいた。
【0047】
(実施例1)
金属体前駆体を含む熱伝達コーティングが上に述べたように調製された。直径が75μmで長さが2mmの銅の微細粒子が、一片の銅ウール(Palmer Engineered Products,Springfield OH製の#706)を切断して調製された。これらの銅繊維が、約0.025g/cm2の密度に、金属体前駆体を含む熱伝達コーティングの円形領域の上に手で適用された。
【0048】
比較例と実施例1の両方を真空炉に入れた。圧力が0.001mm水銀未満に下げられ、一方、炉の温度が約14℃/分の速さで300℃まで上げられ、300℃で15分間保持されて、油を除去した。次に炉は850℃まで、約14℃/分の速さで加熱され、この温度で1時間保持され、次に、真空が破られる前に室温近くまで放冷され、部品が取り出された。
【0049】
プール沸騰
装置は、多くの構造化熱伝達物品の迅速な試験を可能にするように構築された。装置は、ベースの直径が40mm、高さが10mmで、直径が25mmに減少しているシルクハット状の銅の台座を備えていた。全体の高さは20mmであった。直径が25mmの表面は平らにラップ仕上げされ、研磨されていた。雲母ヒーター(Minco HM6807R3.9L12T1)が直径40mmの表面にボルトで留められた。
【0050】
装置は更に、前述の銅台座ヒーターアセンブリを、磨いた表面を上向きにして絶縁表面の上に保持するアセンブリーフレームを備えていた。このフレームはまたステンレススチール鞘の熱電対を研磨した表面に平行にこれから約2mm上に保持し、この熱電対は中心線で終わっていた。熱伝達物品が、ダイヤモンド系の熱境界面グリース(3Mが開発したTIM AHS−1055M)を境界面に使用して研磨表面の上にセットされた。熱伝達物品の熱電対溝に挿入された熱電対が先端において良好な熱接触を確実にするように、軸方向に応力が掛かるように適用された。これがシンク温度Tsinkを提供した。カムロック機構により、銅ディスクに取り付けた内径25mmのパッキングを付けたガラス管にこのアセンブリが押さえつけられ、良好な熱接触を確立するのに必要な圧力が加えられた。ガラス管は上端が大気に解放されている空冷の凝縮器に連結された。
【0051】
上述の装置に類似の装置が、垂直面に配向された構造化熱伝達物品の試験に使用された。この装置では、アクリル製のハウジングを前に述べたガラス管の代わりに使用した。これにより、沸騰表面に隣接したおよそ15cm3の円筒形のチャンバが作られ、これから通路が空冷凝縮器まで放射状に上方に伸びていた。
【0052】
次に、約15mLの3M Novec Engineered Fluid HFE−7000(3M Company,St.Paul,MNから入手できる)が前述のアセンブリの上部から加えられて、熱伝達物品の上に溜まりを作った。ガラス管の中の、液体の上部で凝縮器の下部に挿入された熱電対が、流体の飽和温度Tsatの測定に利用された。
【0053】
自動データ収集システムが、DC電圧、V、をヒーターに適用した。最初、電圧はおよそQ=80Wの電力を達成するように設定された。次に、Tsinkが、限界又はドライアウト熱束になったことを示す予め設定された限界を超えるまで、電力は10W刻みで増加された。次の増加に進む前に、ヒーター電圧V及び電流Iが記録された。次にこれらはヒーターへの熱束Q”を試験ディスクのコーティングされた表面積、πD2/4、に基づき計算するために使用された。
【0054】
【数1】
【0055】
熱伝達率、H、は次に以下のように計算される。
【0056】
【数2】
【0057】
作業流体として3M NOVEC HFE−7000を使用して、比較例と実施例1について、熱束に対する熱伝達率が測定され、図8に示され、上に記述されている。
【0058】
比較例の表面は、水平の平面(図8のCE水平)に配向された場合、約37W/cm2の熱束を支えることができた。垂直の平面(図8のCE垂直)に配向された場合、この同じ表面はたった30W/cm2しか支えることができなかった。実施例1の表面は、水平の平面(図8の実施例1水平)に配向された場合、約47W/cm2の熱束を支えることができた。垂直の平面(図8の実施例1垂直)に配向された場合、この同じ表面は42W/cm2を支えることができた。
【0059】
構造化熱伝達物品の構造及び機能の詳細と共に、上記説明及び実施例の中で説明された本開示の構造化熱伝達物品の特徴及び利点は多数あるが、その開示は説明のためのものに過ぎないことが理解されるべきである。本開示の原理の範囲において、特に金属体前駆体の形状と大きさ及び使用方法に関して、添付の特許請求の範囲を表現する用語の意味並びにそれらの構造及び方法の等価物が示す限りにおいて、詳細に変更を行うことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、多孔質構造化熱伝達物品に関する。より具体的には、本発明は、成形された多孔質金属物品、並びにそれを製造する及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱放散構成要素のための1つの冷却システムは、蒸発又は沸騰する流体を含む。生成した蒸気は次に外部の手段を使用して凝縮されボイラーに戻される。ボイラーにおける流体の熱伝達を改善するために、多孔質構造化熱伝達物品が使用される。
【0003】
例えば、火炎又はプラズマ溶射によるコーティングを含む様々な多孔質熱伝達物品が利用可能である。これらのコーティングは一般的に金属性であり、種々のプロセスで金属基材に適用される。これらのプロセスでは、間隙率を制御すること及び三次元基材に均一にコーティングすることが困難である可能性がある。他の既知のコーティングは、有機結合剤により接合された伝導性の粒子を含む。これらのコーティングは一般に、バルク熱伝導度が悪く、そのため三次元表面を有する基材上では困難である正確な厚さの制御を必要とする。
【0004】
受動2相又は沸騰熱サイホンが、マイクロプロセッサなどの熱に敏感な構成要素の冷却に使用するために設計されている。熱サイホンは自然対流に基づいて液体を循環させる受動熱伝達デバイスである。これらは従来の熱交換器における液体ポンプのコストと複雑さを回避することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
集積回路及び他の熱放散電子装置がより強力及び小型になるにつれて、これらの熱放散構成要素からの熱伝達速度は増加される必要がある。熱サイホンは、これらの構成要素を冷却するコスト効率のよい方法を提供することができる。したがって、熱サイホン及び他の熱交換器を安価にかつより効率よくすることのできる、高い熱伝達率を有する多孔質構造化熱伝達物品の開発の必要性が引き続き存在している。更に、製造プロセスにおいて容易に適用できる安価な多孔質熱伝達物品も引き続き必要とされている。
【0006】
多孔質構造化熱伝達物品が提供される。より詳しくは、多孔質金属物品、並びにそれを製造する及び使用する方法が提供される。物品は、冷凍システム及び電子冷却システムのような冷却装置のための蒸発器として使用され得る。多孔質構造化熱伝達物品は、単相又は2相熱伝達システムの両方において使用され得る。幾つかの実施形態では、物品は、例えばマイクロプロセッサのような集積回路を冷却するのに使用される熱サイホン内のボイラープレートとして使用され得る。他の実施形態においては、物品は、浸漬冷却される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの装置に取り付けることができる。
【0007】
1つの態様においては、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。
【0008】
他の態様においては、構造化熱伝達物品の形成方法であって、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(ここで金属体前駆体は、融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、複数の金属粒子をコーティングに適用すること、並びにこの組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、第1の金属及び複数の金属体前駆体を互いに固着する第2の金属を含む合金を形成すること(ここで、固着は多孔質マトリックスを形成し、複数の金属粒子はマトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、方法が提供される。
【0009】
本明細書で使用するすべての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用される幾つかの用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0010】
本明細書で使用する用語を以下に定義する。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確にそれ以外を示していない限り、複数に言及する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「又は」は、文脈が明確にそれ以外を示していない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられ、
「アスペクト比」は、三次元体の最長寸法(すなわち「全長」)と全長寸法に直交する最長寸法(すなわち「全幅」)との比を指し、
用語「有効間隙率」は、マトリックス中の流体の流れ又は透過性に寄与する成形体中の相互に連結された間隙体積又は空隙を指す。有効間隙率は、マトリックスの中に存在することがある孤立した孔は除外する。本開示の構造化熱伝達物品の有効間隙率は、無孔の基材、又は構造化熱伝達物品の一部分を形成する可能性のある他の無孔層を除いて測定され、
「精密成形された熱伝達複合体」は、成形形状を形成するために使用されるモールドキャビティのほぼ逆である成形形状を有する熱伝達複合体を指し、
「構造化熱伝達物品」は、複数の三次元形状の熱伝達複合体を含む熱伝達物品を指し、
「実質的に球形状」とは、アスペクト比が1〜1.5であり、ほぼ球形状の三次元体を指し、
「実質的に垂直」とは、水平面から90度に近い方向を指し、
「単位密度」とは、特定の体積当たりの指定単位の量を指す。例えば、本開示に記載される多孔質マトリックスが100の金属体前駆体を含みかつ1立方センチメートルの体積を占有する場合、金属体前駆体の単位密度は、1立方センチメートル当たり100金属体前駆体である。
【0011】
上記の要約は、本発明のすべての実施の開示された各実施形態を記述することを意図したものではない。図面の簡単な説明及び後に続く詳細な説明は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】提供される熱伝達物品の実施形態の作製に使用できるコーティングされた基材の透視図。
【図1b】提供される熱伝達物品の実施形態の作製に使用できるコーティングされた基材の透視図。
【図2a】提供される構造化熱伝達物品を製造するのに使用される2つの代表的な金属体前駆体の側面図。
【図2b】図2aに示す2つの代表的な金属体前駆体の横断面図。
【図2c】提供される方法を用いて2つの金属体前駆体を互いに付着させるために間隙要素が形成された後の、図2aに示す2つの代表的な金属体前駆体の側面図。
【図3】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の一部分の代表的な透視図。
【図4】代表的な構造化熱伝達物品の一実施形態の一部分の代表的な断面の側面図。
【図5】コーティングされたダイヤモンドを含む代表的な前駆体複合体の断面図。
【図6a】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の異なる倍率での写真描写。
【図6b】提供される多孔質構造化熱伝達物品の一実施形態の異なる倍率での写真描写。
【図7】提供される物品の実施形態の作製に役立つ基材の作製のための代表的な装置の概略図。
【図8】代表的な実施形態の熱抵抗の実験結果を示すグラフ。 これらの図は理想化されており、縮尺に合っておらず、本開示の構造化熱伝達物品を単に例証することを目的としており、限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を構成しいくつかの特定の実施形態が例として示される添付の一連の図面を参照する。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0014】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表わす数字はすべて、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用には、その範囲内に含まれるすべての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)及びその範囲内のあらゆる範囲が包含される。
【0015】
冷凍システム及び電子冷却システムなどの冷却装置のための蒸発器として使用することができる構造化熱伝達物品が記述されている。熱伝達物品は、単相又は2相熱伝達システムの両方において使用され得る。幾つかの実施形態では、これらは、例えばマイクロプロセッサのような集積回路を冷却するために使用される熱サイホン中の沸騰プレートとして使用できる。他の実施形態では、これらは2相浸漬により冷却される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの熱発生デバイスに取り付けられる。構造化熱伝達物品は、2相熱伝達では、ほぼ垂直(実質的に垂直)の向きに配向された場合には実質的に水平の向きでの使用より一般的に効率が低い。熱を発生する構成要素を含むデスクトップコンピュータの回路基板が非水平の向き(すなわち実質的に垂直)に組み込まれ、また熱サイホンなどの冷却装置がその向きに構成要素に取り付けられることがますます普及しつつある。更に、冷却効率を向上させるために、沸騰プレート又は構造化熱伝達物品の表面積を、プレートの表面にフィン又は突起を加えることにより増大させることが普及している。これは、このようなプレート又は物品の製造コストに費用を加える可能性がある。向きに関係なく熱の伝達効率がよく、低コストで製造できる、構造化熱伝達物品が要求されている。
【0016】
1つの態様においては、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。「埋め込まれた」ということは、合金の少なくとも一部と金属粒子との間に物理的な固着が存在することを意味する。この固着は、溶接、ろう付け、はんだ又は当業者に周知の他のいかなるタイプの金属結合であってもよい。この固着は、金属粒子を適所に保持し、これらを提供される物品の接合部分にする。有用であり得る金属体前駆体は、一般的に少なくとも1マイクロメートル(μm)の平均直径を有する。幾つかの実施形態では、金属体前駆体は、少なくとも5μmの平均直径を有する。更に他の実施形態では、金属体前駆体は、少なくとも10μmの平均直径を有することができる。提供される物品の製造に有用な金属体前駆体は、100μm以下の平均直径を有することができる。幾つかの実施形態では、金属体前駆体は、50μm以下の平均直径を有する。更に他の実施形態では、金属体前駆体は、30μm以下の平均直径を有する。提供される金属体前駆体は、1〜2の範囲のアスペクト比を有することができる。他の実施形態では、金属体前駆体は楕円形状であることができ、また1.5を超えるアスペクト比を有することができる。更なる実施形態では、金属体前駆体は多面体(例えば、立方八面体(cubo-octohedral))、又は、例えば、フレーク、小片、粒子、プレート、円筒及び針状体を含む他のランダム形状の成形体であることができる。金属体前駆体が球形でない場合、成形体の「直径」は、各成形体の最小軸の寸法を指し、「平均直径」は、集団内での個々の成形体直径(すなわち、各成形体の最小軸の寸法)の平均を指す。
【0017】
金属体前駆体は、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と、を含むことができる。第1の金属と第2の金属は異なる。幾つかの実施形態では、外側部分が均一な厚さを有するように、外側部分が内側部分に均一に適用される。他の実施形態では、外側部分のコーティングの厚さは変化し得る。幾つかの好ましい実施形態では、外側部分は内側部分の外表面の大部分を被覆する。幾つかの実施形態では、外側部分は内側部分の外表面の90%を超えて被覆する。なお更なる実施形態では、外側部分は内側部分の外表面を完全に被覆する。提供される多孔質構造化熱伝達物品は典型的には、三次元の多孔質マトリックスにおいて互いに接合する多数の金属体前駆体から形成されることができる。金属体前駆体の各々は、1、2、3、4、5つ以上の他の金属体前駆体と接合して、三次元の多孔質マトリックスを形成することができる。
【0018】
外側部分を形成するために使用される材料の量は、相対重量又は厚さで表現され得る。例えば、幾つかの実施形態では、外側部分は約10重量パーセント(wt%)の金属体前駆体を含む。外側部分は典型的には、約0.05重量%〜約30重量%の金属体前駆体を含む。他の実施形態では、外側部分は約0.001μm〜約0.5μmの範囲の平均厚さを有する。幾つかの実施形態では、外側部分は約0.01μm〜約0.05μmの範囲の平均厚さを有する。銅内側部分及び銀外側部分を有する代表的な有用な金属体前駆体は、Ferro Corp.(Plainfield,New Jersey)から「銀コーティング銅粉末#107(SILVER COATED COPPER POWDER #107)」として入手可能である。他の有用な金属体前駆体には、例えばマグネシウムでコーティングされたアルミニウム粒子が挙げられる。金属体前駆体は、当業者に周知の任意の方法によって作ることができ、例えば、物理蒸着(例えば、米国特許出願公開第2005/0095189号(Breyら)を参照)、プラズマ蒸着、化学メッキ、電解メッキ又は浸漬メッキが挙げられる。
【0019】
複数の間隙要素は、複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐことができる。間隙要素は外側部分の合金を含むことができる。間隙要素は、金属体前駆体の内側部分及び外側部分の金属が成形体を共に固着する合金を形成するように、金属体前駆体を高温にさらすことにより形成される。このプロセスは、等温再凝固として既知である。幾つかの実施形態では、合金を形成する個々の金属よりも低い融点を有する共晶が形成され得る。等温再凝固プロセス中の拡散が様々な金属の境界面の組成に連続的変化を生じさせ得るため、共晶の形成は一時的であることがある。幾つかの実施形態では、等温再凝固プロセスは、例えば、Cranston,Rhode IslandのHayesから入手できるVCTモデル真空炉のような減圧又は真空炉中で起こる。
【0020】
熱伝達多孔質金属コーティング並びにそれを製造する及び使用する方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0102070号(Tumaら)に開示されている。内側合金及び外側合金を形成するために加熱される前に、これらのコーティングは、提供される物品及び方法にとっての前駆体として有用な実施形態であり得る。提供される物品及び方法の実施形態に使用することのできる構造化熱伝達物品は、例えば、米国特許第7,360,581号(Tumaら)に開示されている。
【0021】
提供される多孔質構造化熱伝達物品は、外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む。これらの粒子は銅又は他の金属を含むことができ、かつ種々の寸法及び形状を有することができる。幾つかの実施形態では、粒子は、二三を挙げれば、金属発泡体、フレーク若しくは繊維又は金属繊維の束若しくは編み物から作ることができる。粒子は、物品の表面に約0.002g/cm2〜約0.10g/cm2、約0.02g/cm2〜約0.08g/cm2、又は更には約0.02g/cm2〜約0.06g/cm2の使用量で存在することができる。粒子は、約0.5mm〜約40mmの長さ、約1mm〜約20mmの長さ又は更には約1mm〜約10mmの長さの平均寸法を有することができる。粒子は、約10μm〜約200μmの直径、約15μm〜約100μmの直径、約50μm〜約100μmの直径、又は約25μm〜約150μmの直径の平均寸法を有することができる。粒子は、ほぼ球形、ほぼ回転楕円形、又は規則的若しくは不規則な固体多面体の一般形状であることができる。粒子は他のランダム形状体の形もとることができ、例えば、繊維、フレーク、小片、プレート、円筒及び針状形状体が挙げられる。粒子は、約1、約2、約5、約10、約20、約50、約100、約200、約300又は更にはより大きいアスペクト比を有することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、本開示の多孔質構造化熱伝達物品は、1立方センチメートル当たり約106〜1011個の金属体前駆体の範囲の金属体密度を有する。幾つかの実施形態では、本開示の多孔質構造化熱伝達物品は、1立方センチメートル当たり約107〜109個の金属体前駆体の範囲の金属体密度を有する。本開示の構造化熱伝達物品の有効間隙率は、典型的には10〜60パーセントの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、構造化熱伝達物品の有効間隙率は少なくとも20パーセントであり得る。更に追加の実施形態では、構造化熱伝達物品の有効間隙率は少なくとも30パーセントであり得る。
【0023】
他の態様においては、ダイヤモンド並びにアルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の複合体、複数の金属体前駆体の間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子を含む、多孔質構造化熱伝達物品が提供される。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、封入されたダイヤモンドの熱伝導度は、構造化熱伝達物品の性能を強化すると考えられている。幾つかの実施形態では、間隙要素により共に保持された金属体前駆体とダイヤモンドとの混合物を有する構造化熱伝達物品を形成するために、ダイヤモンド(コーティングされた又はコーティングされていない)は、複数の金属体前駆体(内部ダイヤモンド有り又は無し)と組み合わされることができる。例えば、多結晶ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンドコンパクト(PDC)、純粋なダイヤモンド及びこれらの組み合わせを含む他の材料もまた封入されることができるか又は金属体前駆体と組み合わされることができる。ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは、例えば、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びそれらの合金を含む任意の既知のカーバイド形成物を含むことができる。中間コーティングは、ダイヤモンドに、例えば、物理蒸着、化学蒸着、溶融塩蒸着(例えば、EP 0 786 506 A1(Karasら)を参照)、溶融塩中の電解及び機械的メッキを含む、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して適用され得る。幾つかの実施形態では、ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは多層からなる。
【0024】
図を見ると、図1a及び1bは、熱伝達コーティングを有し、提供される物品の実施形態に有用であり得る基材の透視図である。図1aに示されるように、熱伝達コーティングは、三次元表面を有する基材10に適用することができる。三次元表面は、フィン20又はボイラーの表面積を増大させる他の特徴などの突起の配列を含むことができる。図1bは、提供される物品の実施形態の作製に使用することができる基材40の透視図である。図1bに示すように、基材40は、成形された複数の熱伝達複合体90を含む。この熱伝達複合体は複数の金属体前駆体を含む。これらの基材は、提供される多孔質構造化熱伝達物品の実施形態の作製に使えるように、加熱又は等温再凝固されていない。
【0025】
図2a〜2cは、提供される多孔質構造化熱伝達物品の形成に有用な基材が形成され得る順序を示す。この図は、2つの代表的な金属体前駆体が接合される様子を示す、簡略化された描写である。提供される多孔質構造化熱伝達物品の実施形態の作製に有用な基材は、典型的には、三次元多孔質マトリックス内で互いに接合する多数の金属体前駆体から形成される。
【0026】
図2aは、提供される多孔質構造化熱伝達物品の製造に有用であり得る基材の製作に使用される2つの代表的な金属体前駆体の側面図である。図2aに示されるような実施形態においては、金属体前駆体200及び200’はほぼ同じ寸法であり得る。他の実施形態では、金属体前駆体は大きさが異なり得る。図2aに示されるように、金属体前駆体は実質的に球形であり得る。
【0027】
図2bは、図2aに示される2つの代表的な金属体前駆体200及び200’の断面図である。図2bに示されるように、各金属体前駆体は、内側部分250及び250’と外側部分240及び240’と、を含む。幾つかの実施形態では、内側部分250及び250’は、アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される金属を含む。幾つかの実施形態では、外側部分240及び240’は、銅、銀、マグネシウム及びこれらの合金から選択される金属を含む。更なる実施形態では、内側部分は、融解温度Tmp1を有する金属を有し、外側部分は、融解温度Tmp2を有する金属を有し、Tmp1又はTmp2未満の温度まで加熱すると、内側部分及び外側部分の金属を含む合金が形成される。幾つかの実施形態では、金属体前駆体の内側部分及び外側部分の金属は、それらの熱伝導度及び/又はそれらの合金形成特性に基づいて選択される。
【0028】
図2cは、共に接合されて構造体260を形成する、図2a及び2bに示される2つの代表的な金属体前駆体200及び200’の側面図である。図2cに示されるように、間隙要素270は、2つの成形体を互いに付着させるために、本開示の方法を使用して形成される。
【0029】
図3は、等温再固化後の熱伝達複合体(基材を除いた)の一部の透視図である。図3に示されるように、熱伝達複合体360の一部は、間隙要素370により互いに接続されて三次元の多孔質マトリックスを形成する複数の金属体300を含む。
【0030】
図4は、提供される物品の実施に使用することができる基材の実施形態の一部である460の代表的な断面の側面図である。図4に示されるように、基材の一実施形態の460の部分は、精密に成形された複数の熱伝達複合体490及び495を含み、それぞれはピラミッド型の形状を有し、任意の基板480に貼り付けられている。複合体490の横断面図は、複合体490の背後に位置する複合体495の下部の視界を部分的に遮っている。しかしながら、複合体490及び495は類似の形状及び寸法を有することが理解されるべきである。複合体は、等温再固化後に間隙要素470により相互に連結した複数の金属体前駆体400を含むことができる。等温再固化前に金属粒子を複合体に加えて、提供される物品を作製することができる。
【0031】
上述したように、部分460は、提供される物品の製造に使用できる基材の代表的な実施形態を描写しており、これは、精密に成形された熱伝達複合体490及び495を有する。他の実施形態では、熱伝達複合体は精密に成形されず、単に三次元成形されている。三次元形状は、形状及び/若しくは寸法についてランダムであることもでき、又は形状及び/若しくは寸法について均一であることもできる。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体は、結合剤中に含まれる金属体前駆体の異なる大きさの「液滴」を金型を使用せずに表面上に滴下することにより形成されたランダムな形状及び大きさを含む。表面は、構造化熱伝達物品に一体化した部分(すなわち基材)になることもできるし、又は構造化熱伝達物品は形成後に表面から外されることもできる。
【0032】
図5は、内側部分にコーティングされたダイヤモンドを含む代表的な金属体前駆体の横断面図である。図5に示されるように、金属体前駆体の内側部分はダイヤモンド552、中間コーティング554及び第1金属550を含む。外側部分540は第2金属を含む。ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは、例えば、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びこれらの合金を含む任意の既知のカーバイド形成物を含むことができる。中間コーティングは、ダイヤモンドに、例えば、物理蒸着、化学蒸着、溶融塩蒸着(例えば、EP 0 786 506 A1(Karasら)を参照のこと)、溶融塩中の電解及び機械的メッキを含む、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して適用され得る。幾つかの実施形態では、ダイヤモンドをコーティングする中間コーティングは多層からなる。
【0033】
図6a及び6bは、提供される装置の実施形態の異なる倍率での顕微鏡写真である。図6aは、微細な銅粒子が埋め込まれた多孔質熱伝達複合体を有するプレート形態の、多孔質構造化熱伝達物品を示す。図6bはこの物品の拡大図であり、物品の外側部分の合金に少なくとも部分的に埋め込まれた金属銅粒子をより鮮明に示している。これらの粒子は、約2mmの長さで、直径が75μmであり、約26のアスペクト比を有する。
【0034】
また、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(金属体前駆体は、融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、複数の金属粒子をコーティングに適用すること、並びにこの組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、第1の金属及び複数の金属体前駆体を互いに固着する第2の金属を含む合金を形成すること(ここで固着は多孔質マトリックスを形成し、複数の金属粒子はマトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、構造化熱伝達物品の形成方法が提供される。
【0035】
図7は、結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングの調製を含む構造化熱伝達物品形成のための代表的な装置の概略図である。図7に示されるように、金属体前駆体及び結合剤を含むスラリー700は、圧力又は重力によって供給トラフ702から生産ツール704の上に流動し、その中のキャビティ(図示されず)を充填する。スラリー700がキャビティを完全に充填しない場合には、結果として生じる構造化熱伝達物品は、熱伝達複合体の表面上及び/又は熱伝達複合体の内側部分の中に空洞又は小さな欠陥を有することになる。スラリーを生産ツールに導入する他の方法には、ダイコーティング及び真空滴下ダイコーティングが挙げられる。スラリーの粘度は、幾つかの理由により厳密に制御されることが好ましい。例えば、粘度が高過ぎる場合には、スラリーを生産ツールに適用することが困難になる。
【0036】
生産ツール704は、ベルト、シート、コーティングロール、コーティングロール上に実装されたスリーブ又はダイであり得る。幾つかの好ましい実施形態では、生産ツール704はコーティングロールである。典型的には、コーティングロールは、25〜45センチメートルの直径を有し、金属のような剛体材料から構築される。生産ツール704は、一旦コーティング機上に実装されると、電力駆動のモーターにより動かすことができる。
【0037】
生産ツール704は、その表面上に少なくとも1つの指定形状の所定の配列を有し、これは熱伝達複合体の所定の配列及び指定形状の逆である。このプロセスのための生産ツールは、金属から調製されることができるが、プラスチック製ツールも使用することができる。生産ツールは金属から作ることができ、また彫刻、ホビング、所望の構成に機械加工された複数の金属部品群の組立て、若しくは他の機械的手段、又は電鋳法により作ることができる。これらの技術は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.8,John Wiley&Sons,Inc.(1968),p.651〜665及び米国特許第3,689,346号(Rowland)に更に記述されている。場合によっては、プラスチック製生産ツールは、オリジナルツールから複製され得る。金属製ツールと比較したプラスチック製ツールの利点はコストである。ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂は、金属製ツール上で、その融解温度でエンボス加工することができ、次に急冷して、金属製ツールの熱可塑性レプリカを得ることができる。このプラスチック製レプリカは、次いで生産ツールとして使用され得る。
【0038】
基材706は、巻き戻しステーション708から出発し、次にアイドラーロール710及びニップロール712を通り過ぎて適切な張りを得る。また、ニップロール712は裏材706をスラリー700に押し付け、これによりスラリーが裏材706を濡らして中間物品を形成する。スラリーは、エネルギー源714を使用して、中間物品が生産ツール704を離れる前に乾燥される。乾燥後、熱伝達複合体の指定形状は、構造化熱伝達物品が生産ツール704から離れた後には実質的に変化しない。したがって、構造化熱伝達物品は、生産ツール704の逆レプリカである。構造化熱伝達物品716は生産ツール604から離れ、金属粒子で処理され、等温再凝固炉718を通過する。
【0039】
提供される多孔質構造化熱伝達物品は、以下の方法によっても作ることができる。第1に、金属体前駆体及び結合剤の混合物を含むスラリーを、表側及び裏側を有する裏材に導入することができる。スラリーが裏材の表側を湿らして、中間物品を形成することができる。第2に、この中間物品を生産ツールに導入することができる。第3に、スラリーは、中間物品が生産ツールの外面から離れる前に、少なくとも部分的に乾燥される。第4に、金属粒子がこの中間物品に適用される。最後に、中間物品を、等温再凝固が起こる温度に加熱して、構造化熱伝達物品が形成される。この工程は、連続方式で行われることができ、それによって構造化熱伝達物品を調製するための効率のよい方法が提供される。第2の方法ではスラリーが初めに生産ツールではなく裏材に適用されることを除いて、第2の方法は第1の方法に類似している。
【0040】
幾つかの好ましい実施形態では、提供される多孔質構造化熱伝達物品の作製に有用な構造は、予め定められた模様の形態に配置された複数の熱伝達複合体を含む。複合体の少なくとも幾つかは、精密に成形された研磨複合体であってもよい。幾つかの実施形態では、複合体は実質的に同じ高さを有する。有用な構造は典型的には表面積1平方センチメートル当たり少なくとも約1,200の複合体を含む。有用な構造は、典型的には、約20〜約1000μmの範囲の平均厚さを有する。幾つかの実施形態では、有用な構造は、典型的には、約50〜約500μmの範囲の平均厚さを有する。
【0041】
熱伝達複合体は、例えば、立方体、円筒形、プリズム形、矩形、角錐形、切頭角錐形、円錐形、切頭円錐形、十字形、平らな上面を有する柱状、半球形及びこれらの組み合わせを含む多様な形状を有することができる。熱伝達複合体は異なることができ、また大きさが異なることもできる。熱伝達複合体は、典型的には、約20〜約1,000μmの範囲の平均高さを有する。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体は、約50〜約500μmの範囲の平均高さを有する。幾つかの実施形態では、熱伝達複合体を形成するために多様な形状及び/又は寸法が使用される。
【0042】
金属粒子を、望ましい密度及び配向を達成するために、必要に応じて、手動又は機械的に以前に適用した複合体の上及び間に加えられ得る。例えば、粒子は望ましい量を達成するために評量され、次いで、以前に適用した複合体の上に手でランダムに適用され得る。別の方法としては、粒子は以前に適用した複合体に機械的手段により規定の位置に挿入され得る。提供される構造化熱伝達物品は、例えば、熱サイホンなどの受動冷却システムなどの冷却システムに使用され得る。構造化熱伝達物品は、熱発生装置又は熱発生装置と熱伝達する熱放散装置に直接適用され得る。提供される構造化熱伝達物品は、少なくとも10W/cm2の熱束において、1平方センチメートル当たり、摂氏1度当たり少なくとも3ワット(W/cm2/℃)の熱伝達率を有することができる。幾つかの実施形態において、提供される構造化熱伝達物品は、少なくとも10W/cm2の熱束において、少なくとも6W/cm2/℃の熱伝達率を有する。透明で無色で優れた毒物学的特性を有し、かつ環境に優しいハイドロフルオロエーテルなどの流体が、熱伝達を促進するために使用され得る。3M Company,St.Paul,MN.から入手できるHFE−7000、HFE−7100、HFE−7200及びHFE−711PAなどのNOVEC Engineered Fluidsは、提供される構造化熱伝達物品を有するシステムで有用であり得る流体である。より一般的であるが環境への優しさがより低い流体、例えば、HFC−134a又はHFC−245faなどのハイドロフルオロカーボン冷媒などもまた使用できる。HFO−1234yfなどのハイドロフルオロオレフィン冷媒もまた使用できる。また、プロパン又はブタンなどの炭化水素冷媒が熱伝達流体として有用であり得ることも考えられる。
【0043】
本開示の構造化熱伝達物品の利点及び他の実施形態は、以下の実施例により更に説明されるが、これらの実施例の中に列挙された特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示の構造化熱伝達物品を過度に制限すると解釈されるべきではない。例えば、金属体前駆体を形成するために使用される金属は異なり得る。すべての部及びパーセンテージは、特に記載されていない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0044】
材料
金属体前駆体は、米国特許出願公開第2005/0095189 A1号に記載されている方法を使用して銀でスパッタコーティングされた、サブ325メッシュ銅粒子を含む。得られた粒子は0.4〜0.9重量%のAgを含有していた。これらの銅粒子源は、American Chemet Corporation,Deerfield,Il.の銅粉末Chem Copp1700FPMであった。
【0045】
構造化熱伝達物品が調製され、沸騰実験が以下に記載された方法を使用して行われた。
【0046】
熱伝達物品の調製
(比較例)
熱伝達物品用の基材が直径5.0cmの機械加工された0.3cmの厚さの銅のディスクから作られた。これらディスクの片面は、2mmの深さまで機械加工されディスクの中心線で終結する、1mmの熱電対の溝を含んでいた。またこの表面は平らにラップ仕上げされ、研磨されていた。金属体前駆体は13重量%の拡散ポンプ油(Dow Chemical,Midland Michigan,USAにより製造されたDow 704)と混合された。従来の手によるスクリーン印刷技術及びポリマーメッシュスクリーン(SwitzerlandのThalにあるSefar社製の45−180W IM E11F 0.5 30d STD)を使用して、このスラリーが銅ディスクの裸の面の中心の直径25mmに適用された。得られたコーティングは、金属体前駆体を1平方センチメートル当たり0.052g含んでいた。
【0047】
(実施例1)
金属体前駆体を含む熱伝達コーティングが上に述べたように調製された。直径が75μmで長さが2mmの銅の微細粒子が、一片の銅ウール(Palmer Engineered Products,Springfield OH製の#706)を切断して調製された。これらの銅繊維が、約0.025g/cm2の密度に、金属体前駆体を含む熱伝達コーティングの円形領域の上に手で適用された。
【0048】
比較例と実施例1の両方を真空炉に入れた。圧力が0.001mm水銀未満に下げられ、一方、炉の温度が約14℃/分の速さで300℃まで上げられ、300℃で15分間保持されて、油を除去した。次に炉は850℃まで、約14℃/分の速さで加熱され、この温度で1時間保持され、次に、真空が破られる前に室温近くまで放冷され、部品が取り出された。
【0049】
プール沸騰
装置は、多くの構造化熱伝達物品の迅速な試験を可能にするように構築された。装置は、ベースの直径が40mm、高さが10mmで、直径が25mmに減少しているシルクハット状の銅の台座を備えていた。全体の高さは20mmであった。直径が25mmの表面は平らにラップ仕上げされ、研磨されていた。雲母ヒーター(Minco HM6807R3.9L12T1)が直径40mmの表面にボルトで留められた。
【0050】
装置は更に、前述の銅台座ヒーターアセンブリを、磨いた表面を上向きにして絶縁表面の上に保持するアセンブリーフレームを備えていた。このフレームはまたステンレススチール鞘の熱電対を研磨した表面に平行にこれから約2mm上に保持し、この熱電対は中心線で終わっていた。熱伝達物品が、ダイヤモンド系の熱境界面グリース(3Mが開発したTIM AHS−1055M)を境界面に使用して研磨表面の上にセットされた。熱伝達物品の熱電対溝に挿入された熱電対が先端において良好な熱接触を確実にするように、軸方向に応力が掛かるように適用された。これがシンク温度Tsinkを提供した。カムロック機構により、銅ディスクに取り付けた内径25mmのパッキングを付けたガラス管にこのアセンブリが押さえつけられ、良好な熱接触を確立するのに必要な圧力が加えられた。ガラス管は上端が大気に解放されている空冷の凝縮器に連結された。
【0051】
上述の装置に類似の装置が、垂直面に配向された構造化熱伝達物品の試験に使用された。この装置では、アクリル製のハウジングを前に述べたガラス管の代わりに使用した。これにより、沸騰表面に隣接したおよそ15cm3の円筒形のチャンバが作られ、これから通路が空冷凝縮器まで放射状に上方に伸びていた。
【0052】
次に、約15mLの3M Novec Engineered Fluid HFE−7000(3M Company,St.Paul,MNから入手できる)が前述のアセンブリの上部から加えられて、熱伝達物品の上に溜まりを作った。ガラス管の中の、液体の上部で凝縮器の下部に挿入された熱電対が、流体の飽和温度Tsatの測定に利用された。
【0053】
自動データ収集システムが、DC電圧、V、をヒーターに適用した。最初、電圧はおよそQ=80Wの電力を達成するように設定された。次に、Tsinkが、限界又はドライアウト熱束になったことを示す予め設定された限界を超えるまで、電力は10W刻みで増加された。次の増加に進む前に、ヒーター電圧V及び電流Iが記録された。次にこれらはヒーターへの熱束Q”を試験ディスクのコーティングされた表面積、πD2/4、に基づき計算するために使用された。
【0054】
【数1】
【0055】
熱伝達率、H、は次に以下のように計算される。
【0056】
【数2】
【0057】
作業流体として3M NOVEC HFE−7000を使用して、比較例と実施例1について、熱束に対する熱伝達率が測定され、図8に示され、上に記述されている。
【0058】
比較例の表面は、水平の平面(図8のCE水平)に配向された場合、約37W/cm2の熱束を支えることができた。垂直の平面(図8のCE垂直)に配向された場合、この同じ表面はたった30W/cm2しか支えることができなかった。実施例1の表面は、水平の平面(図8の実施例1水平)に配向された場合、約47W/cm2の熱束を支えることができた。垂直の平面(図8の実施例1垂直)に配向された場合、この同じ表面は42W/cm2を支えることができた。
【0059】
構造化熱伝達物品の構造及び機能の詳細と共に、上記説明及び実施例の中で説明された本開示の構造化熱伝達物品の特徴及び利点は多数あるが、その開示は説明のためのものに過ぎないことが理解されるべきである。本開示の原理の範囲において、特に金属体前駆体の形状と大きさ及び使用方法に関して、添付の特許請求の範囲を表現する用語の意味並びにそれらの構造及び方法の等価物が示す限りにおいて、詳細に変更を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造化熱伝達物品であって、
アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、前記第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、
前記複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに
前記外側部分の前記合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子
を含む、物品。
【請求項2】
前記第1の金属が銅又はアルミニウムを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記間隙要素が、銀及び銅の合金又はアルミニウム及びマグネシウムの合金を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記内側部分がダイヤモンドを更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ダイヤモンドが、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びこれらの合金からなる群から選択されるカーバイド形成物を含む中間コーティングを含み、前記第1の金属が前記中間コーティングに付けられる、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記金属体前駆体が、5〜50マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記粒子が銅を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記粒子が、前記物品の表面に約0.02〜0.06g/cm2の使用量で存在する、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記粒子が、約1mm〜約10mmの長さ及び約25μm〜約100μmの直径の平均寸法を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記粒子が、20を超えるアスペクト比を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
請求項1に記載の構造化熱伝達物品を含む、冷却システム。
【請求項12】
熱サイホンを含む、請求項11に記載の冷却システム。
【請求項13】
請求項1に記載の前記構造化熱伝達物品を含む冷却システムを含む、電子デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、マイクロプロセッサ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ又はこれらの組み合わせである、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記構造化熱伝達物品が、水平面にほぼ垂直の配向を有する、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項16】
構造化熱伝達物品の形成方法であって、
結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(ここで前記金属体前駆体は、
融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、
融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、
複数の金属粒子を前記コーティングに適用すること、並びに
前記組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、前記第1の金属及び前記複数の金属体前駆体を互いに固着する前記第2の金属を含む合金を形成すること(ここで、前記固着は多孔質マトリックスを形成し、前記複数の金属粒子は前記マトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、方法。
【請求項1】
多孔質構造化熱伝達物品であって、
アルミニウム、銅、銀及びこれらの合金から選択される第1の金属を含む内側部分と、前記第1の金属並びに銅、銀、シリコン及びマグネシウムから選択される第2の金属を含む合金を含む外側部分と(ここで第1の金属及び第2の金属は異なっている)、を含む複数の金属体前駆体、
前記複数の金属体前駆体の少なくとも2つの間に配置されこれらを互いに繋ぐ複数の間隙要素(ここで間隙要素は外側部分の合金を含む)、並びに
前記外側部分の前記合金に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の金属粒子
を含む、物品。
【請求項2】
前記第1の金属が銅又はアルミニウムを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記間隙要素が、銀及び銅の合金又はアルミニウム及びマグネシウムの合金を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記内側部分がダイヤモンドを更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ダイヤモンドが、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、シリコン、タンタル、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びこれらの合金からなる群から選択されるカーバイド形成物を含む中間コーティングを含み、前記第1の金属が前記中間コーティングに付けられる、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記金属体前駆体が、5〜50マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記粒子が銅を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記粒子が、前記物品の表面に約0.02〜0.06g/cm2の使用量で存在する、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記粒子が、約1mm〜約10mmの長さ及び約25μm〜約100μmの直径の平均寸法を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記粒子が、20を超えるアスペクト比を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
請求項1に記載の構造化熱伝達物品を含む、冷却システム。
【請求項12】
熱サイホンを含む、請求項11に記載の冷却システム。
【請求項13】
請求項1に記載の前記構造化熱伝達物品を含む冷却システムを含む、電子デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、マイクロプロセッサ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ又はこれらの組み合わせである、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記構造化熱伝達物品が、水平面にほぼ垂直の配向を有する、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項16】
構造化熱伝達物品の形成方法であって、
結合剤及び複数の金属体前駆体を含む熱伝達コーティングを用意すること(ここで前記金属体前駆体は、
融解温度Tmp1を有する第1の金属を含む内側部分と、
融解温度Tmp2を有する第2の金属を含む外側部分と、を含む)、
複数の金属粒子を前記コーティングに適用すること、並びに
前記組成物をTmp1及びTmp2未満の温度に加熱して、前記第1の金属及び前記複数の金属体前駆体を互いに固着する前記第2の金属を含む合金を形成すること(ここで、前記固着は多孔質マトリックスを形成し、前記複数の金属粒子は前記マトリックスの少なくとも一部に少なくとも部分的に埋め込まれている)を含む、方法。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−519013(P2011−519013A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506324(P2011−506324)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038166
【国際公開番号】WO2009/131786
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038166
【国際公開番号】WO2009/131786
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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