説明

多孔質構造材料の製造方法

【課題】インプリントプロセスにより形成される凹凸パターンを利用し、その凹凸パターンを、アルミニウムやシリコン等の基材材料に電気化学プロセスにより細孔形成を行う際の細孔発生開始位置の制御を行うためのマスクとして使用することで規則的なホールアレー構造を効率良く確実に形成できるようにした手法を提供する。
【解決手段】基材上に設けられたマスクにインプリントプロセスにより凹凸パターンを形成し、形成された凹凸パターンの凹部に対応した基材位置に、電気化学的な手法により細孔形成を行うことを特徴とする、細孔配列が制御された多孔質構造材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造材料の製造方法に関し、とくに、細孔形成開始位置の制御にマスクを用いる多孔質構造材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの細孔が規則配列したホールアレー構造材料は、様々な分野への応用が期待できる機能性材料である。規則性ホールアレー構造の作製には、リソグラフィー技術とドライエッチングを用いた微細加工技術をはじめ様々な手法が検討されてきている。リソグラフィー技術に基づけば任意の細孔配列パターンの形成が可能であるが、これをマスクとして基材加工を行う際に用いられるドライエッチングでは、プロセスの特性上、アスペクト比の高い細孔を形成することが難しく、高アスペクト比のホールアレー構造の形成が困難であるといった問題点がある。
【0003】
一方、陽極酸化や電解エッチングといった電気化学的な手法に基づけば、シリコンやアルミニウム等の電極表面に高アスペクト比の細孔形成が可能であるといった特徴を有する。通常、これらの手法で形成される細孔は、ランダムな配列となるが、あらかじめ基材表面に細孔発生の開始点として機能する窪みパターンの形成を行うことにより、細孔配列を制御した高アスペクト比のホールアレー構造も形成可能であることが明らかとなっている(例えば、特許文献1)。しかしながら、これまでに報告されている細孔発生位置の制御法は、シリコンカーバイドやニッケルなど硬度の高いモールドを用いて基材の表面に直接テクスチャリングを行う手法であり、モールドを基材に押し付ける際に高い圧力が必要となるという問題点があった。そのため、直接テクスチャリング法によるパターン形成では大面積化に限界があるという問題点があった。サイズの小さいモールドを用いて位置をずらしながら基材上に複数回テクスチャリングを行うことで、パターンエリアの拡大を行うことも可能であるが、このような手法では、パターン間につなぎ目が形成されるため、シームレスな規則細孔配列を有するホールアレー構造を得ることはできない。
【0004】
基材表面に微細なパターン形成を行うことが可能なナノインプリント法は、用いるモールドの凹凸構造を一括して転写できることに加え、大面積化も可能であるという特徴を有することから、例えば基材表面にナノスケールのマスクを高スループットに形成するための手法として有望である。これまでにも、各種リソグラフィー技術の代用としてナノインプリント法を使用した基材加工が検討されてきている。しかしながら、その多くはナノインプリント法によりマスク形成を行った後、従来の微細加工プロセスと同様にドライエッチングにより基材加工を行うものであり、細孔形成に電気化学プロセスを適用した例は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−045170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、ナノインプリントプロセスにより形成される凹凸パターンを利用し、その凹凸パターンを、アルミニウムやシリコン等の基材材料に電気化学プロセスにより細孔形成を行う際の細孔発生開始位置の制御を行うためのマスクとして使用することで基材に規則的なホールアレー構造を効率良く確実に形成できるようにした手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、インプリントプロセスによるパターン形成と、それをマスクとした電気化学プロセスによる細孔形成を行うための手法について鋭意検討を行った結果なされたものである。すなわち、本発明は、基材上に設けられたマスクにインプリントプロセスにより凹凸パターンを形成し、形成された凹凸パターンの凹部に対応した基材位置に、電気化学的な手法により細孔形成を行うことを特徴とする、細孔配列が制御された多孔質構造材料の製造方法を提供する。
【0008】
マスク材としては、ポリマー材料や無機材料など、インプリントプロセスにより微細な凹凸パターンが形成可能な材料であれば、どのような材料でも用いることが可能である。このマスクに形成された微細凹凸パターンの凹部に対応した位置における電気化学的な手法による基材の加工により、所望の位置にて精度良く細孔の形成を開始することが可能となり、基材に規則的なホールアレー構造を効率良く確実に形成できるようになる。
【0009】
用いる凹凸パターンは、ラインアンドスペース構造をはじめ様々な凹凸パターンを適用することができるが、細孔発生位置を精密に制御するためにはホールアレー構造の凹凸パターンを形成することが望ましい。基材上のマスクに形成されたパターンは、電気化学プロセスにより基材に対して細孔形成を行った後に、後処理として例えばイオンミリングやエキシマランプ、有機溶剤により取り除くことができる。また、インプリントプロセスにより形成された微細凹凸パターンをマスクとしてドライエッチングまたは化学エッチングを行い、あらかじめ基材に窪みパターンを形成した場合には、電気化学プロセスにより細孔形成を行う前に、マスク材を除去することもできる。
【0010】
電気化学的な基材加工法には、陽極酸化法や、電解エッチング法を用いることができる。陽極酸化法では、アルミニウムやチタン、タンタル、ニオブ、マグネシウム等の金属を陽極として、酸またはアルカリ電解液中で電気分解を行うと電極表面に酸化物からなる多孔質皮膜を得ることができる。また、電解エッチング法は、アルミニウムやシリコン等の材料を電気分解を行いながら溶解させる手法であり、該電解エッチング法では、電極表面に多孔質構造を形成することができる。
【0011】
また、インプリントプロセスにより基材表面に設けたマスクに凹凸パターンを形成する際には、マスクに熱可塑性材料を用いた熱インプリントプロセスを用いることもできるが、マスクに光硬化性樹脂を用いた光インプリントプロセスを適用することで、高効率にパターン形成を行うことが可能となる。本発明では、多孔質構造を形成する基材表面に凹凸マスクパターンを形成するが、これらの基材の多くは不透明であるため、光インプリントを行う際には、モールド側より光照射を行う必要がある。このため、用いるモールドは、光透過可能なモールドである必要がある。光透過可能なモールドには、光インプリント用モールドとして広く使用されている石英モールドをはじめ様々なものが適用可能であるが、樹脂製のモールドを用いることも可能である。このように樹脂材料により形成されたモールドで光インプリントを行う場合には、モールドと光硬化性樹脂層の親和性が高いために、モールドの離型が問題となる。この場合には、モールド表面を離型剤で修飾する手法が有効となるが、現在、ナノインプリント用離型剤として使用されている「オプツール」(ダイキン工業社製)をはじめとする離型剤は、通常、基材表面の水酸基とシランカップリング反応により固定化されるために、水酸基を多く有していない樹脂表面には化学的な固定化を行うことが困難となる。このような場合には、モールド表面に離型剤が物理吸着により付着することになり、インプリント処理の際に十分な離型効果を得ることができない。そこで、用いる樹脂製モールドの表面に、金属薄膜や金属酸化物薄膜の形成を行えば、モールドの最表面をそれらの材料で置き換えることが可能となり、離型剤を化学的に固定化することが可能となる。金属や金属酸化物薄膜の形成には、スパッタ法や蒸着法、ゾルゲル法などを用いることができる。形成する薄膜層の厚みは5nm以上であれば、離型剤による表面修飾を行う際に優位な効果を得ることができる。
【0012】
また、インプリント用モールドは、電子ビームリソグラフィーやフォトリソグラフィーなど、各種リソグラフィー技術により作製することも可能であるが、陽極酸化ポーラスアルミナを出発材料として作製する手法を用いることもできる。陽極酸化ポーラスアルミナは、適切な条件下で陽極酸化を行うと、細孔が自己組織化的に規則配列することが知られており、このような手法で作製された陽極酸化ポーラスアルミナを出発構造として用いれば、シームレスな大面積のモールドを得ることが可能である。陽極酸化ポーラスアルミナを用いたモールドの作製には、鋳型法のほかにインプリント法を用いることも可能である。鋳型法では、作製した転写物を得るために鋳型を溶解除去する必要があるが、インプリント法によれば、ひとつの陽極酸化アルミナモールドから複数の転写構造体を得ることができるために、生産性の観点で優れている。
【0013】
本発明では、ナノインプリントプロセスにより基材上に設けられたマスクに凹凸パターンの形成を行い、凹部に対応した基材部分で電気化学的に細孔形成を行うことを特徴としている。通常、インプリントプロセスで形成された凹凸パターンは、凹部においてもそのマスク基材上に残膜層と呼ばれる薄いマスク層が残るため、細孔形成対象の基材を露出させるためにはドライエッチング等の手法が用いられる。本発明においても、ナノインプリントプロセスにより凹凸パターンの形成を行った後、ドライエッチングやエキシマランプ処理、UVオゾン処理等の手法により、マスク残膜層を除去し。凹部に対応する部分の基材を露出させたのちに電気化学的手法により基材に細孔形成を行うことができる。これに加え、残膜層が20nm以下と十分に薄い場合には残膜除去操作を行わなくても、パターン凹部に対応させて細孔形成を行うことも可能である。マスクに形成する凹凸パターンの凹部を適切な深さに形成するためには、凹凸パターンを形成する際のモールド押し付け圧力が10kg/cm2以上であることが好ましい。とくに上記のような残膜層を十分に薄くしたい場合には、ある値以上のモールド押し付け圧力とすることが望ましい。さらに、インプリントを行う基材に例えばアルミニウムのような塑性変形可能な材料を用いた場合には、モールドをモールド突部がマスクを貫通し該モールド突部の先端部が基材に窪みを形成するまで押し付け、該窪みを細孔発生の開始点として電気化学プロセスにより細孔形成を行うようにすることができる。例えば、モールドを押し付けながら光インプリントを行うことで、モールド突部が基材にささり、貫通したホールアレー型のマスクパターンを得ることができる。このような場合には、マスクが貫通しているだけでなく,基材表面にも窪みパターンの形成を行うことができるため、細孔発生位置をより高度に制御することが可能となる。
【0014】
また、インプリントにより形成されるホールアレーパターンのホール開口径が大きいと、ひとつの凹部に対して複数の細孔が形成されることがある。したがって、電気化学プロセスにより形成される細孔の位置制御を精密に行うためには、ホール径を小さくすることが望ましい。このときのホールのサイズは、周期に対して50%以下のサイズであることが望ましい。ナノインプリントにより、開口径の小さいホールを形成するためには細いピラーが表面に配列したモールドを用いる必要があるが、ピラー径が細くなると各ピラーの直立構造の保持が難しくなり、アスペクト比の高いホールアレーが形成困難になるといった問題点がある。また、インプリントの際の圧力でピラーが撓んでしまい、配列が乱れる等の問題も生じる。このような問題点を解決するためには、テーパー形状のピラーアレーを用いることが望ましい。テーパー形状のピラー構造は、ピラーのサイズが底部は太く先端部では細くなっていることから、強度を保持したまま、開口径の小さいホールを形成するためのモールドとして有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、まず基材上に設けられたマスクにインプリントプロセスにより所定の凹凸パターンを形成し、形成された凹凸パターンの凹部に対応した基材位置に、電気化学的な手法により細孔形成を行うようにしたので、細孔配列がインプリントモールドの形態に沿った形態に確実に精度良く制御された多孔質構造材料を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法の基本形態の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法の一実施形態を例示した模式図である。
【図3】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法の別の実施形態を例示した模式図である。
【図4】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図5】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図6】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図7】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図8】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図9】本発明に係る多孔質構造材料の製造方法のさらに別の実施形態を例示した模式図である。
【図10】実施例2で得られた陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料の断面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図11】実施例3で得られた陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料の表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図12】実施例5で得られたポーラスシリコンからなる多孔質構造材料の表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明に係る多孔質構造材料の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、インプリントプロセスにより凹凸パターンを形成し電気化学プロセスにより細孔形成を行う、本発明に係る多孔質構造材料の製造方法の一例を模式的に示している。図1において、基材1上に設けられたマスク2には、ピラーアレー構造を有するモールド3を用いたインプリントプロセスにより、ホールアレー構造を有する凹凸パターン4が形成される。形成されたこの凹凸パターン4の凹部5に対応した基材1の位置に、電気化学プロセスによる細孔形成が行われ、基材表面から基材厚さ方向に延びる細孔6が所定の配列形態に制御された多孔質構造材料7が作製される。
【0018】
図2に示すプロセスでは、基材1上に設けられたマスク2に対し、モールド3を用いたインプリントプロセスにより凹凸パターン4が形成され、凹凸パターン4の凹部5に対応した基材1部分に対し陽極酸化を行うことにより、基材1の表面側に形成される細孔8が所定の配列形態に制御された多孔質酸化皮膜9が形成され、その後に基材1に形成された多孔質酸化皮膜9からマスク2が除去されて、細孔配列が制御された多孔質構造材料10が作製される。
【0019】
図3に示すプロセスでは、基材1上に設けられたマスク2に対し、モールド3を用いたインプリントプロセスにより凹凸パターン4が形成され、凹凸パターン4の凹部5に対応した基材1部分に対し電解エッチングを行うことにより、所定の配列形態に制御された細孔11が形成され、その後に基材1からマスク2が除去されて、細孔配列が制御された多孔質構造材料12が作製される。
【0020】
図4に示すプロセスでは、基材1上に光硬化性材料からなる層21が設けられ、光硬化性材料層21に透明モールド22が押し付けられるとともに、所定の波長を有する光23が照射されて光インプリントプロセスが実行され、光硬化性材料層21が硬化された後に透明モールド22を除去することにより、基材1上に所定形状の凹凸パターン24が形成されたマスク25が形成され、この凹凸パターン24の凹部26に対応した基材1部分に対し電解化学プロセスにより、所定の配列形態に制御された細孔27が形成され、その後に基材1からマスク25が除去されて、細孔配列が制御された多孔質構造材料28が作製される。
【0021】
図5に示すプロセスでは、陽極酸化ポーラスアルミナ31の凹凸パターン32の構造をモールド形成材33に転写させることによりモールド34が作製され、作製したモールド34を用いたインプリントプロセスにより基材1上に所定形状の凹凸パターン35が形成されたマスク36が形成され、この凹凸パターン35の凹部37に対応した基材1部分に対し電解化学プロセスにより、所定の配列形態に制御された細孔38が形成され、その後に基材1からマスク36が除去されて、細孔配列が制御された多孔質構造材料39が作製される。
【0022】
図6に示すプロセスでは、透明樹脂モールド41のピラーアレー42に対し金属または金属酸化物薄膜43がコートされ、この透明樹脂モールド41を用いて、図4に示したのと同様に、基材1上に設けられた光硬化性材料層44に透明樹脂モールド41が押し付けられるとともに、所定の波長を有する光45が照射されて光インプリントプロセスが実行され、光硬化性材料層44が硬化された後に透明樹脂モールド41を除去することにより、基材1上に所定形状の凹凸パターン46が形成されたマスク47が形成され、この凹凸パターン46の凹部48に対応した基材1部分に対し電解化学プロセスにより、所定の配列形態に制御された細孔27が形成される。その後に基材1からマスク47を除去すれば、細孔配列が制御された多孔質構造材料が得られる。
【0023】
図7に示すプロセスでは、テーパー状ピラー51を有するテーパー状ピラーアレーモールド52を用いて、基材1上に所定形状の凹凸パターン53が形成されたマスク54が形成され、この凹凸パターン53の凹部55に対応した基材1部分に対し電解化学プロセスにより、所定の配列形態に制御された開口径の小さい細孔56が形成される。その後に基材1からマスク54を除去すれば、開口径の小さい細孔56の配列形態が制御された多孔質構造材料が得られる。
【0024】
図8に示すプロセスでは、モールド61を用いて、基材1上に所定形状の凹凸パターン62が形成されたマスク63が形成され、この段階で、凹凸パターン62の凹部64に対応した基材1部分に対しドライエッチングまたは化学エッチングを行うことにより、基材1に所定パターンで窪み65が形成され、この所定パターンの窪み65を開始点として電気化学プロセスにより細孔66が形成され、細孔66の配列形態が制御された多孔質構造材料67が得られる。
【0025】
図9に示すプロセスでは、図8に示したプロセスに比べ、モールド61を用いて基材1上に所定形状の凹凸パターン62を形成するに際し、基材1上のマスク形成層71に対し、モールド61が、モールド61の突部72がマスク形成層71を貫通し該突部72の先端部が基材1を塑性変形させて基材1の表面に窪み73を形成するまで押し付けられる。モールド61を取り除くと、貫通孔を有するマスク74とその貫通孔に対応した基材1部分に窪み73が形成され、マスク74を除去した後この所定パターンの窪み73を開始点として電気化学プロセスにより細孔75が形成され、細孔75の配列形態が制御された多孔質構造材料76が得られる。
【実施例】
【0026】
実施例1〔細孔周期500nmの理想配列陽極酸化ポーラスアルミナの作製〕
細孔周期500nm、孔深さ1.3 μmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Al板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを100kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Al板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。この後、Arイオンミリングにより試料の垂直方向から30分間エッチングを行い、残膜層の除去、並びにAl板表面への窪みパターンの形成を行った。イオンミリングを行った試料表面のポリマーマスクは、エキシマランプを1時間照射することにより除去した。マスク除去後のAl板を、0.1Mリン酸水溶液、浴温0℃、化成電圧200Vにおいて5分間陽極酸化することにより細孔が規則的に配列した陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料を得た。
【0027】
実施例2〔細孔周期500nmの理想配列陽極酸化ポーラスアルミナの作製〕
細孔周期500nm、孔深さ1.3μmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Al板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを100kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Al板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。マスクを形成したアルミニウム板を、0.1Mリン酸水溶液、浴温0℃、化成電圧200Vにおいて5分間陽極酸化することにより細孔が規則的に配列した陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料を得た。得られた陽極酸化ポーラスアルミナの断面を電子顕微鏡で観察した結果を図10に示す。
【0028】
実施例3〔細孔周期200nmの理想配列陽極酸化ポーラスアルミナの作製〕
細孔周期200nm、孔深さ700 nmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Al板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを30kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Al板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。この後、Arイオンミリングにより試料の垂直方向から10分間エッチングを行い、残膜層の除去、並びにAl板表面への窪みパターンの形成を行った。その後、Al板を、0.05Mシュウ酸水溶液、浴温17℃、化成電圧80Vにおいて5分間陽極酸化することにより細孔が200nm周期で規則的に配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。最後に、エキシマランプを試料表面に1時間照射することで、ポリマーマスクの除去を行った。得られた陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料の表面を電子顕微鏡で観察した結果を図11に示す。
【0029】
実施例4〔細孔周期200nmの理想配列陽極酸化ポーラスアルミナの作製〕
細孔周期200nm、孔深さ700 nmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Al板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを30kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Al板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。マスクを形成したAl板を、0.05Mシュウ酸水溶液、浴温17℃、化成電圧80Vにおいて5分間陽極酸化することにより細孔が200nm周期で規則的に配列した陽極酸化ポーラスアルミナからなる多孔質構造材料を得た。
【0030】
実施例5〔細孔周期200nmのポーラスシリコンの作製〕
細孔周期200nm、孔深さ700 nmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Si板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを30kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Si板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。この後、Arイオンミリングにより試料の垂直方向から10分間エッチングを行い、残膜層の除去、並びにAl板表面への窪みパターンの形成を行った。その後、Si板を、3wt%フッ酸水溶液、浴温0℃、対極に白金板を用い、5mA/cm2の定電流条件下で20分間電解エッチングを行った。最後に、試料表面にエキシマランプを1時間照射することによりポリマーマスクの除去を行った。得られたポーラスシリコンからなる多孔質構造材料の表面の電子顕微鏡による観察結果を図12に示す。
【0031】
実施例6〔細孔周期200nmのポーラスシリコンの作製〕
細孔周期200nm、孔深さ700 nmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナをインプリント用モールドとして、光硬化性樹脂に構造転写を行い、テーパー状ポリマーピラーアレーを形成した。このポリマーピラーアレーの表面にNiを10nmスパッタし、0.1wt%オプツール溶液(ダイキン工業社製)に浸漬することで樹脂製透明モールドを得た。Si板を基材として、樹脂製透明モールドを用いた光インプリントプロセスによりポリマーホールアレーの形成を行った。光インプリントには、光硬化性樹脂(PAK-02、東洋合成工業社製)を用いて、樹脂製透明モールドを30kg/cm2の圧力条件下で押し付けながら光照射を行う手法を用いた。これにより、Si板表面にポリマーホールアレーマスクを形成した。この後、 Si板を、3wt%フッ酸水溶液、浴温0℃、対極に白金板を用い、5mA/cm2の定電流条件下で20分間電解エッチングを行った。最後に、試料表面にエキシマランプを1時間照射することによりポリマーマスクの除去を行いポーラスシリコンからなる多孔質構造材料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る多孔質構造材料の製造方法は、微細細孔が規則配列したホールアレー構造材料を効率よく製造することが求められるあらゆる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 基材
2、25、36、47、54、63、74 マスク
3、34、61 モールド
4、24、35、46、53、62 凹凸パターン
5、26、37、48、55、64 凹部
6、8、11、27、38、49、56、66、75 細孔
7、10、12、28、39、67、76 多孔質構造材料
9 多孔質酸化皮膜
21 光硬化性材料層
22 透明モールド
23、45 光
31 陽極酸化ポーラスアルミナ
32 陽極酸化ポーラスアルミナの凹凸パターン
33 モールド形成材
41 透明樹脂モールド
42 ピラーアレー
43 金属または金属酸化物薄膜
44 光硬化性材料層
51 テーパー状ピラー
52 テーパー状ピラーアレーモールド
65、73 窪み
71 マスク形成層
72 モールドの突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられたマスクにインプリントプロセスにより凹凸パターンを形成し、形成された凹凸パターンの凹部に対応した基材位置に、電気化学的な手法により細孔形成を行うことを特徴とする、細孔配列が制御された多孔質構造材料の製造方法。
【請求項2】
インプリント法により形成されるマスクパターンがホールアレー構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項3】
電気化学的な細孔形成法として陽極酸化法を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項4】
電気化学的な細孔形成法として電解エッチング法を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項5】
基材表面に光硬化性樹脂からなるマスクを設け、該マスクに、光透過可能なモールドを用いた光インプリントプロセスにより凹凸パターンを形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項6】
光透過可能なモールドの材質が樹脂であることを特徴とする、請求項5に記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項7】
モールドの表面に金属酸化物または金属をコートし離型剤による表面化学修飾を可能にした光透過可能な樹脂製モールドを用いることを特徴とする、請求項6に記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項8】
インプリント用モールドの作製に陽極酸化ポーラスアルミナを用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項9】
インプリントプロセスにより形成される凹凸パターンの凹部底部の残膜層を除去する操作なしで、直接細孔形成を行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項10】
インプリントプロセスで形成される残膜層の厚さが20nm以下であることを特徴とする、請求項9に記載の多孔質構造の製造方法。
【請求項11】
インプリントプロセスにより凹凸パターンを形成する際のモールド押し付け圧力が10kg/cm2以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質構造の製造方法。
【請求項12】
インプリントプロセスによりマスクに凹凸パターンを形成し、ドライエッチング、エキシマランプ処理、UVオゾン処理の少なくともいずれかの処理により凹凸パターンの凹部底部の残膜層を除去し、凹部に対応する部分の基材を露出させた後細孔を形成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項13】
インプリントプロセスによりマスクに凹凸パターンを形成し、ドライエッチングにより凹凸パターンの凹部に対応した基材位置に窪みを形成し、該窪みを細孔発生の開始点として電気化学プロセスにより細孔形成を行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項14】
インプリントプロセスによりマスクに凹凸パターンを形成するに際し、モールドをモールド突部がマスクを貫通し該モールド突部の先端部が基材に窪みを形成するまで押し付け、該窪みを細孔発生の開始点として電気化学プロセスにより細孔形成を行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。
【請求項15】
インプリントプロセスに、テーパー形状のピラーアレー構造を有したモールドを用いることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の多孔質構造材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−162870(P2011−162870A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30111(P2010−30111)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】