説明

多孔質膜及びその製造方法

【課題】厚み方向に均一な空孔率を有する多孔質膜を製造する方法及びその多孔質膜を提供する。
【解決手段】(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒とを含むドープを成膜し、加湿して凝固させて、前記(b)親水性高分子及び前記(c)溶媒を除去し、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂で構成された多孔質膜を製造する方法であって、前記(b)親水性高分子と(c)溶媒とを、前者/後者(重量比)=1.5/1〜2.7/1の割合で用いるとともに、前記ドープに対し、1〜1000g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿し、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂を凝固させて多孔質膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み方向において均一な空孔率を有する多孔質膜とその製造方法、並びに前記多孔質膜と基材との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルスルホン系樹脂は、耐熱性、機械的強度、耐薬品性に優れるため、多孔質膜を構成する樹脂として注目され、前記多孔質膜を製造する方法も検討されている。
【0003】
特許3150717号(特許文献1)には、ポリスルホン系樹脂とポリビニルピロリドンと溶剤とを混和した製膜原液より、ポリスルホン系樹脂選択透過性膜を製造する方法において、ポリビニルピロリドンの分子量が300,000以上であるポリスルホン系樹脂選択透過性血液透析および/または血液濾過膜の製造方法が開示されている。この文献に記載の方法では、高分子量のポリビニルピロリドンを添加することにより、少量の添加であっても前記樹脂に親水性を付与することができる。しかし、高分子量のポリビニルピロリドンは、溶剤に対する溶解度が低く、さらに、加熱により不溶性となりやすいため、均一な製膜原液を得るのが困難であり、得られる膜は非対称膜になる場合が多い。また、高分子量のポリビニルピロリドンでは、多孔質膜を形成した後に除去し難く、膜内部に残留する問題があった。
【0004】
多孔質膜を製造する他の方法として、例えば、特開昭55−102416号公報(特許文献2)には、高分子物質(ポリスルホン樹脂)を良溶媒(A)に溶解した溶液を、膜状又は管状に流延し、少くともその一方の側を該良溶媒(A)よりも貧なる溶解性を有する溶媒(B)の蒸気に接触せしめた後、該良溶媒(A)及び溶媒(B)と相溶性を有し、且つ高分子物質を凝固せしめる凝固液(C)中に浸漬することを特徴とする分離膜の製造方法が開示されている。
【0005】
特公平6−76510号公報(特許文献3)には、最小孔径層を膜内部のみに有すると共に、膜の表面から裏面に向かって連続的に変化した非対称孔径分布を有するポリスルホン微孔性膜が開示されている。前記ポリスルホン微孔性膜は、支持体上に流延された製膜原液に、例えば、絶対湿度2gHO/kgAir以上の空気を0.2m/sec以上の風速で流延面に当てることにより溶媒蒸気の蒸発量と雰囲気からの非溶媒蒸気吸収量を調整して製造することができる。
【0006】
また、特公平5−85576号公報(特許文献4)には、ポリマーに潤滑剤と非溶媒(ポリマーの貧溶媒)を加えて溶媒(ポリマーの良溶媒)に溶解してなる製膜原液を、溶液状態で流延用支持体上に流延し、流延された液膜に溶媒の蒸発と空気中水分の吸収を調温湿風の吹付又は赤外線輻射と調温湿風の吹付によって行いコアセルベーションを起こさせた後、該液膜を凝固浴に浸漬させ相分離及び凝固を行わしめ微孔性膜を形成し、しかる後前記流延用支持体上より微孔性膜を剥離することを特徴とする微孔性膜の製造方法が開示されている。この方法では、製膜原液を凝固させるまでの間に、溶媒の蒸発と、雰囲気から吸収する非溶媒の量を制御して、膜の表面と裏面との非表面積が8m/g以上である膜が形成されている。
【0007】
しかし、特許文献2乃至4で得られる多孔質膜は、膜の表面に緻密な層が形成され、厚み方向で空孔率が変化する非対称膜(不均質膜)である。従来の製造方法では空孔率を調整するのが難しく、通常、大部分が非対称膜(不均質膜)である。非対称膜は、表面に緻密層が形成され、内部及び裏面には多孔性の支持層が形成されている。このような非対称膜では、緻密層において塩類などを排除できるため、分離などの用途(例えば、分離膜、濾過膜、透析膜など、特に脱塩用の分離膜など)には適しているものの、各種充填物を充填(又は含浸)させる用途には不向きである。
【0008】
なお、特公平5−76331号公報(特許文献5)には、疎水性重合体(例えば、ポリエーテルスルホンなど)を極性非プロトン性溶媒に溶解し、さらにポリエチレングリコール400を加え、撹拌して均一にした混合物をキャストし、室温で約50〜80%相対湿度の空気にさらした後、水に浸漬して疎水性重合体を完全に凝固させ濾過膜を製造する方法が記載されている。この方法では、疎水性重合体の割合が混合物の約10〜13%であり、極性非プロトン性溶媒の割合が約17〜20%であり、ポリエチレングリコールの割合が65〜70%であってもよいことが記載されている。しかし、この文献の方法では、極性非プロトン性溶媒の使用量に対してポリエチレングリコールを過剰に使用しているため、疎水性重合体の溶解性が低下し、均一な製膜原液(又はドープ)を得るのが難しい。さらに、この文献の方法では、膜に付与される水分量が少なく、前記疎水性重合体を完全に凝固させるのに時間がかかり、工業的生産性に劣る。
【特許文献1】特許3150717号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭55−102416号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特公平6−76510号公報(特許請求の範囲、第3頁左欄20〜26行)
【特許文献4】特公平5−85576号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特公平5−76331号公報(第6頁左欄31行〜右欄9行、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、厚み方向において均一な空孔率を有する多孔質膜を製造する方法及びその多孔質膜を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、厚み方向において均質な多孔質膜を、工業的に効率よく簡便に製造する方法及びその多孔質膜を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、厚み方向において均一でかつ高い空孔率を有し、充填物を含浸させるのに好適な多孔質膜を製造する方法及びその多孔質膜を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、基材(例えば、ポリエーテルスルホン系樹脂で構成される基材など)との密着性(又は接着性)に優れる多孔質膜、及び前記多孔質膜と基材との積層体を製造する方法並びにその積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、(b)親水性高分子と(c)溶媒とを特定の割合で使用し、かつ成膜されたドープ(又は製膜原液)を特定の条件下で加湿すると、厚み方向にわたって均一な空孔率を有する多孔質膜(均質膜)を効率よく簡便に製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の方法は、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒とを含むドープを成膜し、加湿して凝固させて、前記(b)親水性高分子及び前記(c)溶媒を除去し、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂で構成された多孔質膜を製造する方法であって、前記(b)親水性高分子と(c)溶媒とを、前者/後者(重量比)=1.5/1〜2.7/1の割合で用いるとともに、前記ドープに対し、1〜1000g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿して前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂を凝固させて多孔質膜を製造する。
【0015】
前記方法において、前記(b)親水性高分子と(c)溶媒とを、前者/後者(重量比)=1.6/1〜2.5/1程度の割合で用いるとともに、前記ドープに対し、5〜300g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿してもよい。また、前記方法において、加湿時間は0.1〜10秒程度であってもよい。さらに、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の含有量は、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒との総量に対して、5〜20重量%程度であってもよい。さらには、前記(b)親水性高分子の数平均分子量は、100〜2,000程度であってもよい。
【0016】
前記方法において、前記ドープを基材に流延して成膜し、多孔質膜を基材から分離してもよい。また、前記ドープを基材に塗布して成膜し、前記基材に積層した多孔質膜を製造してもよい。前記基材はポリエーテルスルホン系樹脂で構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明には、前記製造方法により得られる多孔質膜も含まれる。前記多孔質膜の空孔率は40〜90%程度であってもよい。前記多孔質膜は、さらに、多孔質膜の空孔内に充填物を含んでいてもよい。
【0018】
さらに、本発明には、基材と、この基材に積層された前記多孔質膜とで構成された積層体も含まれる。前記積層体において、前記多孔質膜の厚みが1〜200μm程度であり、前記基材がポリエーテルスルホン系樹脂で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、(b)親水性高分子と(c)溶媒とを特定の割合で使用し、かつ成膜されたドープ(又は製膜原液)を特定の条件下で加湿すると、厚み方向に均一な空孔率を有する多孔質膜(均質膜)を製造することができる。前記多孔質膜は、特定のドープを、特定の条件下で加湿すればよいため、工業的に効率よく簡便に製造することができる。このように製造された多孔質膜は、厚み方向において均質で、かつ高空孔率であるため、充填物を含浸する支持体などとして有用である。さらに、前記多孔質膜は、基材(特に、ポリエーテルスルホン系樹脂で構成される基材など)との密着性(又は接着性)にも優れるため、前記基材との積層体を安定な形態で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0021】
[多孔質膜の製造方法]
本発明の多孔質膜は、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂が微粒子状に凝集して形成された多孔質膜であり、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒とを含むドープ(又は製膜原液)を成膜し、加湿して凝固させて製造することができる。
【0022】
((a)ポリエーテルスルホン系樹脂)
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂は、下記式(1)
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、R及びRは同一又は異なって、炭化水素基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、複素環基を示し、m及びnは同一又は異なって0〜4の整数である。)
で表されるユニットを有するポリマーである。前記ユニットには、フェニレン基が置換されていない、即ちm及びnが0である非置換型ユニットの他、フェニレン基が1又は複数の置換基で置換された置換型ユニットが含まれる。(a)ポリエーテルスルホン系樹脂は、非置換型ユニット又は置換型ユニットの単独重合体、非置換型ユニットと置換型ユニットとの共重合体、複数種の置換型ユニットの共重合体などであってもよい。
【0025】
前記置換基R及びRとしては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基などのC1−10アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)など]、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−10アルコキシ基など)、ハロアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシカルボニル基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2−5アシル基など)、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)が挙げられる。好ましい置換基R及びRは、アルキル基、アルコキシカルボニル基などであり、さらに好ましい置換基は、メチル基などのC1−4アルキル基(特にメチル基)である。
【0026】
前記置換基R及びRの置換数m及びnは、同一又は異なって0〜4、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1であり、通常、m及びnは0である。なお、前記置換基R及びRの置換位置は、特に制限されない。
【0027】
前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の数平均分子量は、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000、さらに好ましくは5,000〜30,000程度であってもよい。
【0028】
前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の粘度は、20重量%N−メチル−2−ピロリドン溶液において、B型粘度計を用いて、6rpm及び23℃の条件下で測定したとき、例えば、100〜10000cps(0.1〜10Pa・s)、好ましくは300〜9000cps(0.3〜9Pa・s)、さらに好ましくは500〜8000cps(0.5〜8Pa・s)程度であってもよい。前記粘度が100cps(0.1Pa・s)を下回ると、得られるドープが容易に流動し、形成される多孔質膜の厚みが薄くなる。一方、前記粘度が10000cps(10Pa・s)を上回ると、均一なドープを得るのが困難となる。
【0029】
((b)親水性高分子)
(b)親水性高分子(又は水溶性高分子、親水性オリゴマー)は、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と非混和性であり、(c)溶媒と混和性であり、かつ成膜環境(例えば、製膜原液を流延又は塗布する工程)の温度において液状(又は溶融状)である限り、特に制限されない。このような(b)親水性高分子には、親水性基又はユニット(カルボキシル基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、ヒドロキシル基、アミド基、塩基性窒素原子含有基又はその塩、エーテル基、オキシアルキレンユニットなど)を有する重合体(親水性基又はユニットを有する単量体の単独又は共重合体、親水性基又はユニットを有する単量体と共重合性単量体との共重合体)、多糖類(例えば、セルロース誘導体、アルギン酸類など)などが含まれる。なお、前記共重合性単量体には、例えば、オレフィン系単量体(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンなどのα−C2−6オレフィンなど)、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなど]、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニルなど)、不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸など)、ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などが含まれる。
【0030】
(b)親水性高分子は、例えば、カルボキシル基又はその塩を有する重合体[例えば、ポリ(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基(又はその塩)を有する(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体又はその塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)、(メタ)アクリル酸−ビニルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などのカルボキシル基(又はその塩)を有する(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体又はその塩など];スルホン酸基又はその塩を有する重合体[例えば、エチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体の単独又は共重合体、スルホン酸基を有する単量体と共重合性単量体との共重合体又はその塩など];ヒドロキシル基を有する重合体[例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの単量体の単独又は共重合体、ヒドロキシル基を有する単量体と共重合性単量体との共重合体、ビニルアルコール系重合体など];アミド基を有する重合体[例えば、(メタ)アクリルアミドなどの単量体の単独又は共重合体、アミド基を有する単量体と共重合性単量体との共重合体など];塩基性窒素原子含有基を有する重合体[例えば、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドンなどの単量体の単独又は共重合体、塩基性窒素原子を有する単量体と共重合性単量体との共重合体又はその塩(例えば、塩酸などの無機酸、酢酸などの有機酸など)];エーテル基を有する重合体[例えば、ビニルアルキルエーテル(例えば、ビニルメチルエーテルなど)などのビニルエーテル系単量体の単独又は共重合体、ビニルエーテル系単量体と共重合性単量体(無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸など)との共重合体など];オキシアルキレンユニットを有する重合体[例えば、オキシエチレンユニットなどのオキシアルキレンユニットを有する単量体の単独又は共重合体、オキシアルキレンユニットを有する単量体と共重合性単量体との共重合体など];多糖類{例えば、セルロースエーテル[例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロースなど);ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシC2−6アルキルセルロースなど);カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1−6アルキルセルロースなど)など]などのセルロース誘導体;アルギン酸類[アルギン酸(D−マンヌロン酸とL−グルロン酸とを構成ユニットとして含む直鎖状ヘテロポリマー)又はその塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などの無機塩など)など]など}であってもよい。これらの(b)親水性高分子のうち、溶出性の点から、ビニルアルコール系重合体、ビニルピロリドン系重合体、ビニルエーテル系重合体、オキシアルキレンユニットを有する重合体(ポリアルキレングリコール系重合体)が好適に使用される。
【0031】
ビニルアルコール系重合体には、ビニルエステル系重合体(単独又は共重合体)のケン化物、例えば、ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール)、部分アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール−エチレンスルホン酸共重合体、ビニルアルコール−マレイン酸共重合体などが含まれる。これらのビニルアルコール系重合体のうち、通常、ポリビニルアルコールが使用される場合が多い。
【0032】
ビニルピロリドン系重合体には、例えば、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、ビニルピロリドンと共重合性単量体との共重合体(例えば、酢酸ビニル及び/又はビニルカプロラクタムなどとの共重合体など)などが含まれる。これらのビニルピロリドン系重合体のうち、通常、ポリビニルピロリドンが使用される場合が多い。
【0033】
ビニルエーテル系重合体には、例えば、ビニルアルキルエーテルの単独重合体(ポリビニルアルキルエーテル)又は共重合体、ビニルアルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(例えば、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸などとの共重合体など)などが含まれる。これらのビニルエーテル系重合体のうち、通常、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルアルキルエーテルが使用される場合が多い。
【0034】
ポリアルキレングリコール系重合体には、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、エチレンオキサイドの単独重合体(ポリエチレンオキシド又はポリエチレングリコール)、エチレンオキサイドとC3−4アルキレンオキサイドとの共重合体(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体など)などが含まれる。これらのポリアルキレングリコール系重合体のうち、通常、ポリエチレングリコールが使用される場合が多い。
【0035】
(b)親水性高分子が共重合体であるとき、結合形態は特に制限されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合であってもよい。(b)親水性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
前記(b)親水性高分子の数平均分子量は、100〜100,000(好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは2,000〜30,000)程度から選択できる。比較的低温であっても液状(又は溶融状)化できる点、粘度上昇が抑制でき、(c)溶媒に対する溶解性に優れ、製膜後に後述する凝固溶剤で除去しやすい点などから、(b)親水性高分子の数平均分子量は比較的小さいことが好ましく、オリゴマー領域の分子量であってもよい。例えば、前記(b)親水性高分子の数平均分子量は、100〜2,000、好ましくは120〜1,000、さらに好ましくは130〜800、特に140〜600(例えば、150〜500)程度であってもよい。
【0037】
((c)溶媒)
(c)溶媒は、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂及び(b)親水性高分子を、ともに溶解可能である限り特に制限されないが、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂及び(b)親水性高分子を良好に溶解させる点から、通常、非プロトン性極性溶媒{例えば、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、トリオキサンなどの環状エーテル類;アセトンなどのケトン類;γ−ブチロラクトン(GBL)など環状分子内エステル(ラクトン)類;窒素含有溶媒[例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン含有溶媒、ヘキサメチルホスファミドなど];硫黄含有溶媒[例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなど]}である場合が多い。(c)溶媒は単独で又は二種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。
【0038】
好ましい溶媒は、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、窒素含有溶媒[例えば、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ピロリドン含有溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドンなど)]などである。
【0039】
(各成分の割合)
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の含有量は、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒との総量に対して、5〜20重量%、好ましくは7〜18重量%、さらに好ましくは9〜16重量%、特に10〜15重量%程度であってもよい。前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の含有量が少なすぎると、多孔質化せず、一方、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の含有量が多すぎると、ドープがゲル化し、不均一になる場合がある。
【0040】
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂は、(b)親水性高分子100重量部に対し、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0041】
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂は、(c)溶媒100重量部に対し、10〜80重量部、好ましくは15〜75重量部、さらに好ましくは20〜70重量部程度であってもよい。前記(c)溶媒に対する(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の割合が少なすぎると、機械的強度に劣るとともに、空孔を形成し難い。一方、前記割合が多すぎると、前記樹脂がゲル化するおそれがある。
【0042】
また、(b)親水性高分子と(c)溶媒との割合は、前者/後者(重量比)=1.5/1〜2.7/1、好ましくは1.6/1〜2.7/1(例えば、1.6/1〜2.5/1)、さらに好ましくは1.7/1〜2.7/1(例えば、1.7/1〜2.6/1)、特に、1.8/1〜2.6/1(例えば、1.9/1〜2.5/1)程度である。前記(c)溶媒に対する(b)親水性高分子の割合が少なすぎると、十分な空孔率(特に、膜表面の空孔率)が得られず、非対称膜となる傾向がある。一方、前記(c)溶媒に対する(b)親水性高分子の割合が多すぎると、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂が十分に溶解せずに流れ出たり、多量の(b)親水性高分子により、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂が圧縮されるため、得られる膜は機械的強度に劣るとともに、膜厚が小さくなる場合がある。
【0043】
なお、(b)親水性高分子と(c)溶媒との割合が1.7/1〜2.7/1、好ましくは1.75/1〜2.65/1、さらに好ましくは1.8/1〜2.6/1、特に1.9/1〜2.5/1程度であるドープを用いて後述する積層体を形成すると、基材との接着性(又は密着性)に優れる多孔質膜を製造するのに有用である。このような多孔質膜では、基材と積層体を形成しても、水中で多孔質膜(又は基材)が剥離することなく、安定な形態を長期にわたって維持できる。
【0044】
なお、前記ドープは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、特に制限されず、慣用の添加剤、例えば、安定剤(熱安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、ブロッキング防止剤、防曇剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料など)、カップリング剤、難燃剤、滑剤、離型剤、芳香剤、可塑剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、粘度調節剤、分散剤などであってもよい。添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、多孔質膜を形成する樹脂((a)ポリエーテルスルホン系樹脂)中に含有されていてもよく、多孔質膜の空孔(又は細孔)内に含有されていてもよい。
【0045】
また、多孔質膜は、充填物を含んでいてもよい。この充填物は、多孔質膜を形成する樹脂に混合又は分散される充填剤で構成してもよく、多孔質膜の空孔(又は細孔)内に含浸(又は保持)され、前記多孔質膜に保持される充填物(例えば、後述する充填物など)で構成してもよい。なお、前記充填剤は、例えば、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維、パルプなどの繊維状充填剤などであってもよい。
【0046】
さらに、前記ドープは、後述する前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の凝固を促進するため、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の貧溶媒であり、かつ前記(b)親水性高分子及び(c)溶媒の良溶媒である液体成分(又は凝固促進剤)などを含んでいてもよい。広汎な利用性、製膜後の除去性の観点から、前記液体成分としては、例えば、水、水溶性有機溶媒[例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、ヘキサノールなどのC1−7アルカノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(又は1,4−ブタンジオール)などのC2−6アルカンジオール類など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ類など)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート類)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)など]などが好ましい。液体成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの液体成分のうち、生産コストの点から、特に、水が好ましい。
【0047】
(ドープ)
ドープ(又は製膜原液)は、少なくとも3成分(前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂、(b)親水性高分子及び(c)溶媒)を混合、溶解させて調製してもよいが、各成分を短時間で完全に溶解させるため、前記3成分を段階的(又は個別)に混合、溶解させて調製するのが好ましい。すなわち、前記ドープは、前記(c)溶媒に、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂及び(b)親水性高分子のいずれか一方の成分を溶解させた後、他方の成分をさらに溶解させて調製してもよい。なお、各成分を(c)溶媒に溶解させる場合、全量を一気に(又は一回で)溶解させてもよく、回分して(又は複数回に分けて)溶解させてもよい。具体的には、例えば、前記(c)溶媒に、添加量の半量の(b)親水性高分子を混合溶解させた後、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の全量を一気に(又は回分して)溶解させ、さらに残りの(b)親水性高分子を混合溶解させてもよい。
【0048】
前記ドープの粘度は、B型粘度計を用いて測定でき、例えば、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂、(b)親水性高分子及び(c)溶媒が、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂/(b)親水性高分子/(c)溶媒(重量比)=13/63/24であるドープの粘度は、6rpm及び23℃の条件下で測定したとき、例えば、100〜10000cps(0.1〜10Pa・s)、好ましくは500〜9000cps(0.5〜9Pa・s)、さらに好ましくは1000〜8000cps(1〜8Pa・s)程度であってもよい。前記粘度が100cps(0.1Pa・s)を下回ると、前記ドープが容易に流動し、形成される多孔質膜の厚みが薄くなる。一方、前記粘度が10000cps(10Pa・s)を上回ると、均一なドープを得るのが困難となる。
【0049】
前記ドープを成膜し、加湿して凝固させると、多孔質膜を製造することができる。従来の方法では、次の方法で製造されている。まず、均一に調製されたドープ(疎水性樹脂と親水性高分子と溶媒とで構成されるドープ)を、種々の形態(例えば、中空糸膜状、フィルム状など)に成膜する。成膜されたドープでは、溶媒の蒸発が進むにつれ、前記疎水性樹脂と前記親水性高分子とが相分離(コアセルべーション)し、前記疎水性樹脂がゲル化(又は凝固、浸出)し、前記疎水性樹脂が微粒子状に凝集して凝集体を形成する。前記凝集体に形成される空孔部(又は細孔部)には、前記親水性高分子が保持されている。次いで、前記凝集体を、前記疎水性樹脂の貧溶媒であり、かつ前記親水性高分子及び溶媒の良溶媒である溶媒[凝固溶剤(例えば、水など)]と接触させ、前記疎水性樹脂を完全に凝固させるとともに、前記親水性高分子及び溶媒を洗浄、除去し、乾燥すると、前記疎水性樹脂で構成された多孔質膜を得ることができる。しかし、膜表面では、膜の内部に比べて溶媒の蒸発がより早く進行し、前記疎水性樹脂のゲル化(又は凝固)も早く起こるため、膜内部に形成される多孔質な層より緻密な層(緻密層)が形成され、空孔率が厚み方向に変化する非対称膜が形成される。
【0050】
そこで、本発明では、後述する通り、前記製造方法において、(1)前記(c)溶媒に対する(b)親水性高分子の割合を特定の割合にし、かつ(2)ドープを成膜した後に特定の条件で加湿することにより空孔率が高く、かつ前記空孔率が厚み方向に均一な多孔質膜が得られる。
【0051】
本発明の製造方法の第1の特色は、(1)前記(c)溶媒に対する(b)親水性高分子の割合が特定の割合のドープを用い、空孔率が高い多孔質膜を得ることにある。すなわち、(b)親水性高分子の含有量が高いと、前記凝集体に形成される空孔を大きく確保でき、(c)溶媒が蒸発しても空孔が縮小するのを抑制でき、空孔率を高く維持することができる。このような作用は、膜表面と膜内部とでほぼ同等に働くため、厚み方向に空孔率が均一である多孔質膜を形成するのに有用である。
【0052】
本発明の製造方法の第2の特色は、(2)ドープを成膜した後に、後述する特定の条件で加湿し、厚み方向の空孔率の均一性を高め、かつ多孔質膜の生産性をも高めることにある。すなわち、前記の通り、膜表面では、膜内部に比べて、(c)溶媒の蒸発に伴う空孔の縮小が早く進行し、緻密層を形成する傾向にある。しかし、成膜されたドープを加湿すると、雰囲気中の水蒸気が主に膜表面の(b)親水性高分子に吸着し、膜表面の空孔の縮小が抑制されるため、緻密層が形成されず、厚み方向に空孔率が均一な多孔質膜を得ることができる。また、前記水蒸気の作用により、疎水性樹脂の相分離及び凝固を促進することもでき、膜の生産性を高めることができる。なお、相分離の終点は、相分離が進むと透明(又は淡黄色透明)のドープが白濁(又は白色に変化)することを利用して判断してもよい。
【0053】
前記第2の特色において、単位時間あたりに多量の水蒸気を供給し、加湿することが好ましい。前記ドープに対し、単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気は、1〜1000g/m・秒、好ましくは3〜500g/m・秒、さらに好ましくは5〜300g/m・秒、特に10〜100g/m・秒(例えば、10〜50g/m・秒)程度であってもよい。また、前記ドープに対し、単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気は、1〜500g/m・秒、好ましくは2〜200g/m・秒、さらに好ましくは3〜100g/m・秒、特に5〜80g/m・秒(例えば、10〜70g/m・秒)程度であってもよい。前記単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気の量(又は割合)は、以下の方法で算出することができる。
【0054】
(1)前記ドープを流延(又は塗布)して成膜し、即時に膜の重量(W1(g))を測定する
(2)前記膜を、所定の温度及び湿度に調整されたチャンバーに入れ、一定時間(T(秒))加湿した後、前記膜をチャンバーから取り出し、膜の重量(W2(g))を測定する
(3)測定した重量、加湿時間及び膜の面積S(m)から、下記式(1)を利用して単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気の量(W(g/m・秒))を算出する
W(g/m・秒)=(W2−W1)/(S・T) (1)
なお、単位時間あたりに多量の水蒸気を供給するには、比較的高湿度で加湿することが有効である。具体的には、80〜100%、好ましくは82〜99.5%、さらに好ましくは85〜99%、特に86〜98.5%(例えば、87〜98%)程度の相対湿度(雰囲気下の相対湿度)で加湿してもよい。
【0055】
前記の通り、本発明では、単位時間あたりに多量の水蒸気を供給し、瞬時に(a)ポリエーテルスルホン系樹脂を凝固させることができるため、加湿時間が、0.1〜300秒、好ましくは1〜180秒、さらに好ましくは3〜60秒、特に5〜30秒程度であってもよい。また、加湿時間は、例えば、1〜10秒(例えば、1〜7秒)程度の非常に短時間であっても効率よく均質な多孔質膜を得ることができ、工業的に有利である。前記加湿時間は、所望の空孔率、雰囲気下条件に応じて適宜選択してもよい。また、加湿温度は、10〜90℃、好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは30〜70℃程度であってもよく、例えば、20〜60℃程度であってもよい。成膜されたドープは、水が付与される限り、どのような環境下で加湿されてもよく、例えば、開放的な空間(又は開放系)で加湿されてもよいが、効率の面から、例えば、加湿槽などの閉鎖的な空間(又は閉鎖系)で加湿されるのが好ましい。
【0056】
加湿されたドープにおいて、前記疎水性樹脂(前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂)を完全に凝固させるため、前記ドープを前記凝固溶剤と少なくとも接触させればよい。前記ドープと前記凝固溶剤とを接触させる方法は特に制限されず、前記ドープに対して前記凝固溶剤を噴射する方法であってもよいが、効率よく凝固させるため、前記ドープを前記凝固溶剤に浸漬する方法が好ましい。浸漬時間は、特に制限されず、例えば、1秒〜10分、好ましくは10秒〜7分、さらに好ましくは30秒〜5分、特に50秒〜3分程度であってもよい。浸漬させる凝固溶剤の温度は、例えば、5〜80℃、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは15〜30℃程度であってもよい。
【0057】
前記凝固溶剤としては、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の貧溶媒であり、かつ前記(b)親水性高分子及び(c)溶媒の良溶媒である溶媒が好適に使用され、例えば、前記例示の凝固促進剤が使用できる。凝固溶剤は単独で又は二種以上組み合わせて混合溶剤としてもよい。凝固溶剤は、前記ドープを浸漬させる温度において液体である限り、特に制限されないが、生産コストの点から、通常、水を用いる場合が多い。
【0058】
なお、本発明では、前記の通り、相分離及び疎水性樹脂の凝固作用を促進させているため、中空糸膜のように、内壁面及び外壁面の一方の面から他方の面へ凝固させる多孔質膜であっても、前記凝固促進作用により、均質膜を形成することができる。
【0059】
本発明において、ドープを成膜する方法は特に制限されず、例えば、ドープを基材に流延して成膜し、成膜されたドープを前記方法により多孔質化して多孔質膜を形成した後、前記多孔質膜を基材から剥離(又は分離)させて多孔質膜(又は多孔質膜単体)を形成してもよい。また、例えば、ドープを基材に塗布して成膜し、成膜されたドープを多孔質化し、形成された多孔質膜を基材から剥離(又は分離)させることなく、基材とこの基材に積層された多孔質膜とで構成される積層体を形成してもよい。なお、前記多孔質膜は、基材(又は層)の少なくとも一方の面(片面又は両面)に積層されていてもよい。
【0060】
前記基材は、耐熱性、機械的強度、電気特性などの観点から、用途に応じて適宜選択でき、例えば、無機系基材[例えば、金属類(例えば、チタン、アルミニウム、銅、銀、鉄、ニッケル、チタン、スズ、ジルコニウムなどの金属又はこれらの合金、ステンレス鋼など);セラミックス類(例えば、前記金属類の酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物など);炭素繊維などの炭素類など]で構成されていてもよい。また、前記基材は、有機系基材[例えば、樹脂類(例えば、後述する樹脂類など)]で構成されていてもよい。これらの基材は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明の製造方法では、速やかに相分離が起こるため、種々の表面張力を有する基材に対応できるため、広汎な種類の基材を使用することができる。
【0061】
また、基材の形態は特に制限されず、例えば、シート状、フィルム状、板状(直方体、立方体など)、曲面状、球状などであってもよい。なお、前記基材は、孔部(又は貫通孔)を有していてもよく、例えば、メッシュクロス、金網などのメッシュ状(又は網状);パンチングフィルム、パンチングメタルなどのパンチング状(又は水玉状);エキスパンドメタルなどのエキスパンド状(又は菱形状);エッチング状;織布、不織布などのグリッド状(又は格子状)などであってもよい。このような孔部(又は貫通孔)を有している基材は、例えば、ろ過膜などの分離膜の用途に用い、分離能を高めてもよい。
【0062】
前記多孔質膜との接着性(又は密着性)、機械的強度などの点から、基材の形態は、シート状(又はフィルム状)が好ましく、特に、孔部を有していない非多孔質のシート状(又はフィルム状)が好ましい。なお、前記基材は、単層で形成されていてもよく、同一の又は異なる基材が積層された複数の層で形成されていてもよい。なお、前記複数の層で形成される基材は、単層の基材を、接着剤を用いて積層して形成してもよい。また、前記複数の層で形成される基材には、単層の基材にコーティング処理、蒸着処理、スパッタリング処理などが施された基材も含まれる。
【0063】
前記多孔質膜を製造する好ましい方法には、以下の方法が含まれる。例えば、前記ドープを、前記ドープ(又は多孔質膜)と剥離可能な基材(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、金属類などで構成されている基材など)に流延して成膜し、前記方法によりドープを多孔質化した後、基材から多孔質膜を分離(又は剥離)させて、多孔質膜を製造してもよい。
【0064】
一方、前記ドープを、前記ドープ(又は多孔質膜)との接着性(又は密着性)の高い基材に塗布して成膜し、前記方法によりドープを多孔質化して多孔質膜を形成し、基材から多孔質膜を分離(又は剥離)させることなく、基材とこの基材に積層された多孔質膜とで構成される積層体を製造してもよい。前記基材は、前記多孔質膜との接着性(又は密着性)、層間強度の点から、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリールスルホン系樹脂などのポリスルホン系樹脂で構成されているのが好ましい。特に、前記基材は、ポリエーテルスルホン系樹脂で構成されているのが好ましい。
【0065】
より具体的には、前記ドープを基材(例えば、ポリエーテルスルホン系樹脂で構成されているシート状の基材)の少なくとも一方の面に塗布して成膜し、得られる積層物を、前記加湿条件下で加湿して凝固させ、(b)親水性高分子及び(c)溶媒を除去し、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂で構成される多孔質膜と前記基材との積層体を製造してもよい。なお、前記積層体は、慣用の方法、例えば、接着剤を用いて基材と多孔質膜とを積層する方法などを利用して製造してもよいが、簡便性の点から、前記の通り、塗布法(又はコーティング法)を利用して製造するのが好ましい。
【0066】
[多孔質膜]
前記方法で形成された多孔質膜は、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂が微粒子状に凝集して形成された凝集体(微粒子の凝集体と称する場合がある)であり、このような膜構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察できる。図1は(c)溶媒の蒸発に伴う相分離の過程における多孔質層の粒子構造を示す概略断面模式図である。前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂は、図1で示されるように、微粒子状にランダムに凝集していてもよい。
【0067】
前記凝集体において、粒子状に観察される部位の平均粒子径は均一(又はほぼ均一)であるのが好ましく、特に厚み方向にわたって前記平均粒子径が均一(又はほぼ均一)であるのが好ましい。なお、平均粒子径とは、図2で示されるように、前記多孔質膜(又は測定する領域、又は層)の表面の電子顕微鏡写真に基づいて、樹脂微粒子を真円と仮定したとき(樹脂粒子1の仮想円)、任意に選択された複数の樹脂微粒子の平均面積から算出される直径(又は平均直径)を意味する。前記平均粒子径及び前記平均粒子径の厚み方向の均一性の程度は、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して測定できる。例えば、図3に示すように、多孔質膜を、断面において厚み方向に、表面付近(又は表面層5)、裏面付近(又は裏面層7)、中央部(又は中間層6)の領域(又は層)に三分(又はほぼ三等分)し、表面3において粒子状に観察される部位の平均粒子径(dA)、表面層5において粒子状に観察される部位の平均粒子径(dB)、中間層6において粒子状に観察される部位の平均粒子径(dC)、裏面層7において粒子状に観察される部位の平均粒子径(dD)及び裏面4において粒子状に観察される部位の平均粒子径(dE)を計測する。前記平均粒子径は、例えば、0.01〜1μm、好ましくは0.05〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μm程度であってもよい。前記平均粒子径が小さすぎると、粒子が密に詰まりやすく、空孔率が低下する。一方、前記平均粒子径が大きすぎると、粒子同士の凝集力が小さく、膜の機械的強度が低下する。また、計測したdA〜dEの最大値と最小値の割合は、例えば、前者/後者=1/1〜5/1、好ましくは1.02/1〜3/1、さらに好ましくは1.03/1〜2/1(特に、1.05/1〜1.5/1)程度である。すなわち、前記凝集体において、粒子状に観察される部位の平均粒子径は、厚み方向においても同程度の平均粒子径を有している。
【0068】
一方、前記凝集体に形成された空孔部の平均孔径も均一(又はほぼ均一)であるのが好ましく、特に、厚み方向に均一(又はほぼ均一)であるのが好ましい。なお、平均孔径とは、図2で示されるように、前記多孔質膜(又は測定する領域、又は層)の表面の電子顕微鏡写真に基づいて、空孔を真円と仮定したとき(空孔の仮想円2)、任意に選択された複数の空孔の平均面積から算出される直径(又は平均直径)を意味する。前記平均孔径及び前記平均孔径の厚み方向における均一性の程度も、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して測定できる。例えば、前記平均粒子径の測定と同様に、表面3において観察される空孔の平均孔径(φA)、表面層5において観察される空孔の平均孔径(φB)、中間層6において観察される空孔の平均孔径(φC)、裏面層7において観察される空孔の平均孔径(φD)及び裏面4において観察される空孔の平均孔径(φE)を計測する。前記平均孔径は、例えば、0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.3〜5μm程度であってもよい。また、計測したφA〜φEの最大値と最小値の割合は、例えば、前者/後者=1/1〜10/1、好ましくは1.03/1〜5/1、さらに好ましくは1.05/1〜3/1(特に1.1/1〜2/1)程度である。すなわち、空孔の平均孔径は、厚み方向においても同程度の平均孔径を有している。
【0069】
前記平均孔径と前記平均粒子径との割合は、前者/後者=1/1〜20/1、好ましくは1.1/1〜15/1、さらに好ましくは1.5/1〜10/1程度であってもよい。前記割合が1/1より小さいと、得られる膜は空孔率が小さく緻密であり、後述する充填物を含侵する用途に不向きである。一方、前記割合が20/1より大きいと、得られる膜は機械的強度に劣る。また、前記多孔質膜の空孔率は、40〜90%、好ましくは50〜85%、さらに好ましくは60〜80%(例えば、65〜80%)程度であってもよい。なお、前記空孔率は、下記式(2)
空孔率(%)=100−100×W/(D・V) (2)
(式中、Vは多孔質膜の体積、Wは多孔質膜の重量、Dは多孔質膜(又は(a)ポリエーテルスルホン系樹脂)の密度を示し、D(g/cm)=1.37である)を利用して算出できる。また、厚み方向における前記空孔率の標準偏差は、0.1〜10%、好ましくは0.15〜8%、さらに好ましくは0.2〜7%、特に0.25〜6%(例えば、0.3〜5%)程度であってもよい。さらに、前記3つの領域(表面層5、中間層6及び裏面層7)についてそれぞれ空孔率を測定したとき、前記空孔率の最大値と最小値との割合が、前者/後者=1/1〜5/1、好ましくは1.01/1〜3/1、さらに好ましくは1.03/1〜1.5/1(特に1.05/1〜1.2/1)程度であってもよい。
【0070】
本発明の多孔質膜は、空孔率が高く、かつ空孔率が厚み方向にわたって均一(又はほぼ均一)であるため、各種流体の透過性(透気性、透水性など)に優れる。例えば、JIS P 8117に準じたガーレー透気度は、0.2〜30秒/100ml、好ましくは0.5〜25秒/100ml、さらに好ましくは1〜20秒/100ml程度である。ガーレー透気度が、前記範囲より大きいと、実用的な透過性が不十分であるとともに、充填物を十分に含浸又は保持させることができない。一方、ガーレー透気度が、前記範囲より小さいと、機械的強度に劣る。また、純水透過速度は、10000〜160000L/(m・h・MPa)、好ましくは20000〜150000L/(m・h・MPa)、さらに好ましくは30000〜130000L/(m・h・MPa)程度である。
【0071】
前記多孔質膜の膜厚は、1〜300μm程度から選択でき、好ましくは5〜250μm、さらに好ましくは10〜200μm程度であってもよい。なお、前記多孔質膜を基材との積層体として用いる場合には、膜厚は、基材との接着性(又は密着性)の観点から、特に1〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm程度であってもよい。膜厚が1μm未満では、充填物の充填性(又は保持性、収容性、収容能)、機械的強度に劣るとともに、膜厚の均一性及び前記基材との接着性に劣る。一方、膜厚が200μmを超えると、空孔率を調整するのが難しく、均質性が低下するおそれがある。なお、200μm以上の膜厚が必要である場合、膜厚が200μm以下の前記多孔質膜を複数枚積層してもよい。
【0072】
本発明の多孔質膜は、空孔率が高く、かつ前記空孔率が厚み方向に均一(又はほぼ均一)であるため、前記空孔(又は細孔)内に充填物を含む機能膜(又は複合膜)として用いるのに有用である。前記充填物は、種々の充填物が使用でき、固体(又は固形物)、液体(又は液状、溶融状)、気体のいずれであってもよい。前記充填物として固体(又は固形物)を用いる場合、使用できる形状は特に制限されず、その形状は、例えば、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。なお、前記充填物として固体(又は固形物)を用いる場合には、易充填性の点から前記充填物を溶剤に溶解又は分散させた状態、溶融させた状態で含ませてもよい。また、前記充填物は、電解質(又はイオン性物質)であってもよく、非電解質(又は非イオン性物質)であってもよい。例えば、前記充填物として、イオン交換基(例えば、スルホン酸基由来の−SOなど)を有する単量体又は重合体などの電解質を用いると、多孔質膜(又は機能膜)にイオン交換能を付与することができる。充填物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、複数の充填物を組み合わせて使用する場合には、使用する充填物の性質及び/又は形状、多孔質膜の空孔率などを調整することにより、選択的に充填物を含ませることができる。
【0073】
本発明の多孔質膜は、空孔率が高いため、粘性又は固形状の樹脂類を含むことができ、前記樹脂類は、膜内部に安定に保持(又は固定)される。樹脂類は、慣用の樹脂類、例えば、熱可塑性樹脂{例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、熱可塑性アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂[例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレフタレート;PET、ポリブチレンテレフタレート;PBT、ポリエチレンナフタレート;PENなど)などのアルキレンアリレート単位を主成分とする共重合ポリエステル、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂など]、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、部分又は完全芳香族ポリアミドなど)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリフェニルスルホン系樹脂などのポリアリールスルホン系樹脂など)、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂など}、熱(又は光)硬化性樹脂[例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、熱(又は光)硬化性アクリル系樹脂(例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン樹脂、ポリイミド系樹脂(例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂など)、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂など]、セルロース系樹脂などであってもよい。これらの樹脂は、単独で又は二種以上のブレンド物であってもよく、さらに前記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体など)、前記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合体などであってもよい。樹脂類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの樹脂類のうち、前記熱(又は光)硬化性樹脂が好ましく、中でもエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱(又は光)硬化性アクリル系樹脂(例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン樹脂などが好適に使用される。
【0074】
前記充填物を多孔質膜に含ませる方法は、例えば、(1)前記充填物を前記多孔質膜の表面に塗布(又は添加)して含浸する方法、(2)前記充填物(前記充填物を含む溶液又は溶融物)に前記多孔質膜を浸漬する方法、(3)フィルム状に成形した前記充填物を前記多孔質膜に転写する方法などが挙げられる。前記方法(1)において、充填物を塗布するための塗布部材は、慣用の塗布機(例えば、ダイヘッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーターなど)が使用できる。また、前記方法(3)において、転写効率の点から、熱又は圧力などを作用させてもよい。さらに、フィルム状の充填物を転写するための転写部材として、通常使用されるロール、プレス板などを用いてもよい。前記充填物を多孔質膜に含浸する方法は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0075】
これらの方法のうち、充填物を効率よく使用でき、安定して保持され、かつ経済性に優れる点から、前記方法(1)を利用して前記樹脂類で構成された充填物を含ませるのが好ましい。前記樹脂類を前記多孔質膜の表面に塗布(又は添加)して含ませる(又は充填する)方法は、例えば、前記樹脂類を溶剤に溶解し、溶液状態で塗布(又は添加)して充填する方法、前記樹脂類を水に分散させ、エマルション状態で塗布(又は添加)して充填する方法、前記樹脂類を溶融させ、溶融(又は軟化)状態で塗布(又は添加)して充填する方法などであってもよい。
【0076】
なお、前記充填物として前記熱(又は光)硬化性樹脂を用い、溶剤の非存在下で前記樹脂(無硬化型樹脂)を含ませた後、熱(又は光)で硬化させると、溶剤による多孔質膜の溶解、過熱による多孔質膜の溶融などを抑制することができる。また、操作性の点から、前記充填物として重合性モノマーを用い、多孔質膜の内部で重合させてもよい。
【0077】
前記充填物は、本発明の特性を損なわない限り、多孔質膜の一部の空孔内に含まれていてもよく、多孔質膜から溢出していてもよいが、特性を十分に発揮でき、かつ経済性に優れる点から前記充填物は、多孔質膜(又はその空孔内)に充満して充填されていることが好ましい。なお、多孔質膜から溢出している過剰の充填物は、汎用の部材(例えば、スクイズロールなど)を用いて掻き落としてもよい。
【0078】
本発明の多孔質膜は、厚み方向に均一な空孔率を有する均質膜であるため、種々の充填物を含むための支持体として有用である。例えば、前記多孔質膜を支持体とし、充填物として樹脂を含ませると、前記多孔質膜及び/又は樹脂の機械的特性(例えば、引張弾性率、引張強度、引張伸度など)を向上させることができる。具体的には、前記多孔質膜に前記樹脂を充填すると、前記樹脂が単独である場合に比べ、機械的特性を、例えば、5倍以上(例えば、6〜100倍程度)、好ましくは7倍以上(例えば、8〜50倍程度)、さらに好ましくは10倍以上(12〜30倍程度)に向上させることができる。具体的には、本発明の多孔質膜(厚み40〜45μm程度)に、シリコーン樹脂を充填して得られる機能膜の引張弾性率は、15〜50MPa、好ましくは18〜45MPa、さらに好ましくは20〜40MPa程度であってもよい。なお、前記シリコーン樹脂単独の引張弾性率は、0.5〜5MPa程度である。
【0079】
また、本発明の多孔質膜に、充填物として電解質の重合性モノマーを充填し重合させ、電解質膜を形成してもよい。具体的には、電解質膜は、前記多孔質膜に電解質の重合性モノマーを充填又は含浸し、膜内部で重合させることにより形成することができる。前記電解質の重合性モノマーとしては、例えば、特開2002−83612号公報に記載のモノマーが使用でき、例えば、イオン交換基(例えば、スルホン酸基由来の−SOなど)を有するモノマー(例えば、スルホン系樹脂の単量体など)などが好適に使用される。このような電解質膜は、燃料電池などの部材として有用である。
【0080】
なお、必要に応じて、溶出剤(又は溶解溶剤、溶出溶媒)を用いて多孔質膜(又は多孔質層)を溶解して均一化することにより、その空孔を消失させてもよい。前記溶解溶剤は、適宜選択でき、多孔質膜を溶解可能である限り、特に制限されないが、通常、前記多孔質膜の良溶媒を含む場合が多い。このような溶出剤(又は前記多孔質膜の良溶媒)は、例えば、前記(c)溶媒として例示の溶媒の他、シクロプロパノール、シクロへキサノールなどのシクロC3−10アルカノール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル(鎖状エステル)類;炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、フェノール類など)などであってもよい。前記溶出剤は、操作性に優れ、かつムラ(表面ムラ)の発生を抑制するため、低揮発性の溶媒(例えば、沸点が150℃以上の溶媒、例えば、硫黄含有溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類)、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン(GBL)などのエステル類、炭化水素類など)を用いることが好ましい。溶出剤は単独で又は二種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。
【0081】
また、前記溶出剤は、前記多孔質膜を溶解可能である限り、さらに、前記多孔質膜の貧溶媒(例えば、前記例示の凝固促進剤など)を含む混合溶媒であってもよい。前記貧溶媒は、低揮発性の溶媒(例えば、エチレングリコールなどのC2−6アルカンジオール類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類、カルビトール類など)であってもよい。しかし、前記溶出剤の急激な(又は突発の)揮発を防止するため、前記貧溶媒は、高揮発性の溶媒(例えば、沸点が100℃以下の溶媒、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール類など)であることが好ましい。前記溶出剤(又は良溶媒)と前記貧溶媒との組合せとして、例えば、ジメチルスルホキシド(良溶媒)とイソプロパノール(貧溶媒)との組合せ、γ−ブチロラクトン(良溶媒)と水(貧溶媒)との組合せなどが挙げられる。前記溶出剤(又は前記多孔質膜の良溶媒)と前記貧溶媒との割合は、前者/後者(重量比)=20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40程度であってもよい。
【0082】
なお、溶出剤(又は溶解溶剤)は、前記の通り、前記多孔質膜の良溶媒、前記多孔質膜の良溶媒と前記多孔質膜の貧溶媒との混合溶媒などに限られず、例えば、前記例示の多孔質膜の貧溶媒を複数組み合わせた混合溶媒であっても、前記多孔質膜を溶解可能である限り、使用できる。
【0083】
また、本発明の多孔質膜は、厚み方向に空孔率が均一な均質膜であるため、特に、印刷用途に有用である。なお、本明細書において、「印刷」とは、印刷版面にインクをつけて紙などに転写し、複製を作る意味に限られず、種々の機能を有するインクを転写し、多孔質膜を高機能化することも含む意味で用いる。
【0084】
従来、耐熱性、機械的特性に優れる点から、被印刷体として、種々の樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂など)で構成されるフィルムなどが使用されている。しかし、フィルムを被印刷体として用いると、印刷インクがフィルム表面で拡散されるため、印刷描写再現性(又はパターン精度)の良好な印刷が困難となる。印刷インクの溶剤の吸収性を高め、印刷描写再現性(又はパターン精度)を向上するため、多孔性の被印刷体(多孔質膜)を用いる試みがなされているが、従来の多孔質膜は、膜表面に緻密層を有する非対称膜であり、インク又はその溶剤の吸収性が十分でない。しかし、本発明の多孔質膜は、耐熱性、機械的特性に優れるポリエーテルスルホン系樹脂で構成され、かつ厚み方向に均一な空孔率を有する均質膜であるため、膜に印刷インク(又はペースト)が接触(又は付着)すると、インク又はその溶剤が即時に膜に吸収(又は含浸)されるため、膜表面にインクが固定(又は保持)される。従って、本発明の多孔質膜では、膜表面でインクが拡散することなく優れたパターン精度を示すことができる。前記パターン精度の指標として、例えば、版印刷において、版の画線部(又は親インク性(親油性)部、インク付着部など)の幅L1と、前記画線部に対応して印刷された線幅L2との割合(L2/L1)は、0.8〜1.2、好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.9〜1.1程度である。なお、前記画線部の幅L1は、例えば、5〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは15〜100μm程度であってもよい。本発明の多孔質膜は、種々の印刷方法、例えば、インクジェット印刷、凹版印刷(グラビア印刷など)、凸版印刷、平版印刷(オフセット印刷)、孔版印刷(スクリーン印刷など)などに使用でき、特に、スクリーンメッシュ(又はメタルマスク)によりペーストを押出す印刷、スクリーン印刷などの孔版印刷に好適に使用される。
【0085】
印刷インク(又はペースト)は、特に制限されず、例えば、機能性成分とバインダー樹脂と溶剤とを含むインク(又はペースト)などが用いられる。前記機能性成分は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、染料又は顔料[油溶性染料、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料、無機顔料、有機顔料、蛍光顔料又は染料、蓄光顔料など]などの着色剤であってもよい。また、前記機能性成分は、例えば、無機成分{例えば、金属成分(例えば、前記例示の金属類など);セラミックス成分(例えば、前記例示のセラミックス類など);ガラス;炭素成分;無機エレクトロルミネッセンス(EL)材料[母体材料(例えば、ZnS、CdSなどの周期表第IIB−VIB族化合物半導体、CaS、SrSなどの周期表第IIA−VIB族化合物半導体など)と発光中心とで構成されるEL材料(例えば、SrS:Ce/ZnS:Mnなどの白色発光材料、ZnS、Mn/CdSSeなどの赤色発光材料、ZnS:TbOF、ZnS:Tbなどの緑色発光材料、SrS:Ceなどの青緑色発光材料、(SrS:Ce/ZnS)n、CaCa:Ce、SrGa:Ceなどの青色発光材料など)]など}、有機成分{例えば、樹脂類(導電性高分子など)、有機半導体材料(ペンタセン類、チオフェン類など)など}であってもよい。機能性成分は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。前記機能性成分の形態は、印刷性(又はパターン精度)を阻害しない限り特に制限されず、例えば、粉粒状、鱗片状(又はフレーク状、繊維状)であってもよい。また、前記機能性成分は中空状であってもよい。
【0086】
前記バインダー樹脂は、汎用の樹脂、例えば、前記例示の樹脂類などであってもよい。バインダー樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0087】
前記溶剤は、使用する機能性成分、バインダー樹脂などの種類に応じて適宜選択でき、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、カルボン酸類(又はその無水物)、エステル類、窒素含有溶媒(例えば、アミド類、ニトリル類、アミン類など)、硫黄含有溶媒、炭化水素類(ハロゲン化炭化水素類、フェノール類も含む)などであってもよい。なお、溶剤は、例えば、特開2004−319281号公報、特開2004−111057号公報、特開2006−059669号公報、特開2004−143325号公報などに記載の溶剤も使用できる。溶剤は、単独で又は二種以上組み合わせた混合溶剤であってもよい。前記機能性成分及びバインダー樹脂の合計と前記溶剤との割合(重量比)は、前者/後者=1/99〜80/20程度であってもよく、好ましくは5/95〜70/30、さらに好ましくは10/90〜65/35程度であってもよい。
【0088】
前記印刷インク(又はペースト)に含まれる溶剤を主として多孔質膜に吸収(又は含浸)させるため、前記印刷インク(又はペースト)の性状を調整してもよい。例えば、前記印刷インク(又はペースト)の粘度は、粘度計(東機産業(株)製、「VISCOMETER model BM」)を用いて、10rpm及び23℃の条件下で測定したとき、例えば、0.05〜1Pa・s、好ましくは0.1〜0.9Pa・s、さらに好ましくは0.15〜0.8Pa・s程度であってもよい。前記印刷インク(又はペースト)の粘度は、機能性成分、バインダー樹脂の種類及び/又は濃度、溶剤の種類などに応じて調整できる。また、前記印刷インク又はペースト[又は前記溶剤(特に、全溶剤のうち含有割合が最も大きい溶剤)]は、パターン精度の観点から、前記多孔質膜の表面に1μLの液滴を滴下したとき、接触角(滴下から300μ秒後の接触角)が、60°以下(例えば、0〜60°程度)、好ましくは50°以下(例えば、1〜50°程度)、さらに好ましくは40°以下(例えば、2〜40°程度)を充足することが好ましい。さらに、滴下から300μ秒後の前記液滴の大きさ(液滴半径)は、例えば、1600μm以下(例えば、10〜1550μm程度)、好ましくは1500μm以下(例えば、20〜1450μm程度)、さらに好ましくは1400μm以下(例えば、30〜1300μm程度)であってもよい。
【0089】
このような印刷インク(又はペースト)を用いると、各種電子材料(例えば、配線、インダクタ、発光体、抵抗体、コンデンサ、半導体など)を容易に効率よく製造することができ、有用である。例えば、前記印刷インク(又はペースト)として、導電インク(又は導体ペースト)を用いて印刷(版式印刷)すると、導電配線(又は回路)が形成された印刷配線基板などとして使用できる。導電インク(又は導体ペースト)は、慣用の導電インク(又は導体ペースト)が使用でき、具体的には、導電インクには、金インク、銀インク、銀ナノメタルインク、銅インク、カーボンインク、銀−カーボンインクなどが含まれる。また、導体ペーストには、金導体ペースト、銀導体ペースト、銅導体ペースト、パラジウム導体ペースト、白金導体ペースト、ニッケル導体ペースト、パラジウム−銀導体ペースト、白金−銀導体ペーストなどが含まれる。導電インク(又は導体ペースト)は単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0090】
前記導電配線は、例えば、(1)配線パターン状に凹凸に形成した版に導電インクを塗布し、次いで多孔質膜の表面に転写させて形成してもよく、(2)多孔質膜の表面に導体ペーストをスクリーン印刷により描写して形成してもよい。前記方法(1)及び(2)において、必要に応じ、形成された導電配線を、慣用の方法を利用(又は応用)してメッキしてもよい。
【0091】
さらに、前記導電配線は、メッキ触媒を多孔質膜の表面に印刷し、メッキをして形成してもよい。前記導電配線は、例えば、(3)配線パターン状に凹凸を形成した版にメッキ触媒を塗布し、次いで多孔質膜の表面に転写させ、メッキをして形成してもよく、(4)多孔質膜の表面にメッキ触媒をスクリーン印刷により配線パターン状に描写し、次いでメッキをして形成してもよい。前記メッキ触媒は、例えば、前記メッキ触媒と適当なビヒクル(又は粒子)と必要に応じて添加剤とを含むインキを調製し、慣用の方法で多孔質膜表面に印刷(又は塗布)されてもよい。次いで前記メッキ触媒が印刷(又は塗布)された多孔質膜をメッキしてもよい。
【0092】
代表的なメッキ触媒は、無電解メッキ処理の触媒として作用する金属類の塩(金属塩類)などである。具体的には、前記金属類としては、例えば、周期表第8族元素(例えば、鉄など)、周期表第10族元素(例えば、ニッケル、パラジウム、白金など)、周期表第11族元素(例えば、金、銀、銅など)などが挙げられる。一方、前記塩としては、有機塩(例えば、クエン酸塩、酒石酸塩などのオキシカルボン酸塩など)、無機塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩などの水素酸塩など)などが挙げられる。前記金属塩類は、前記金属類と前記塩とを適宜組み合わせることができる。前記金属塩類は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0093】
また、メッキする代表的な方法としては、前記メッキ触媒を還元処理して金属とした後、無電解メッキ処理、必要に応じてさらに電気メッキ処理をする方法などが含まれる。前記メッキ触媒の還元処理に用いる還元剤は、慣用の還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン又はその塩、ホルマリンなどが例示できる。これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記還元処理は、0.5〜10重量%の前記還元剤の水溶液を用い、例えば、20〜50℃(好ましくは25〜45℃)程度の条件下で行ってもよい。なお、前記無電解メッキ処理は、慣用の方法、例えば、銅、ニッケル、コバルトなどの無電解メッキ液などを用いる方法で行うことができる。また、前記電気メッキ処理も、慣用の方法、例えば、硫酸銅メッキ液などを用いる方法で行うことができる。
【0094】
なお、前記の通り、本発明の多孔質膜(特に、基材との積層体)を被印刷体として用いると、優れた印刷描写再現性(又はパターン精度)を発揮できるが、多孔質膜(又は多孔質層)が脆く、印刷インクが剥離する場合がある。このような場合、前記のように、前記多孔質膜(又は多孔質層)の良溶媒であり、かつ前記印刷インクに対し不溶性である溶媒を用い、多孔質膜(又は多孔質層)を溶解させて、多孔質膜の空孔を消失させると、印刷インクと基材とが強固に密着(又は接着)した印刷物を作製することができる。さらには、基材の透明性が向上し、パターンが鮮明に印刷(又は転写)された印刷物を作製することができる。
【0095】
なお、前記印刷物を保護するため、前記印刷物の片面又は両面(特に、印刷面)にフィルム(保護層又はカバーレイ)を積層してもよい。前記印刷物にフィルムを積層する方法は、特に制限されず、慣用の方法、例えば、接着剤(又は粘着剤)が塗布されたフィルムを前記印刷物に加熱及び/又は加圧条件下で積層する(又は貼り合わせる)方法、前記印刷物に接着剤(又は粘着剤)を塗布した後、フィルムを積層する(又は貼り合わせる)方法などであってもよい。前記フィルムの種類は特に制限されないが、通常、熱可塑性樹脂(例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの慣用の熱可塑性樹脂など)で構成される場合が多い。また、接着剤(又は粘着剤)も特に制限されず、例えば、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤などの熱硬化性樹脂で構成される接着剤、ポリアミド系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤などの熱可塑性樹脂で構成される接着剤などを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の多孔質膜は、種々の用途、例えば、ろ過膜(例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜など)、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜などの分離膜として利用できる。特に、本発明の多孔質膜は、前記の通り、印刷用基材などとして有用である。例えば、導電インク(又は導体ペースト)を用いて印刷された被印刷体(又は多孔質膜)は、各種電子材料(例えば、配線、インダクタ、発光体、抵抗体、コンデンサ、半導体など)などとして有用である。また、本発明の多孔質膜は、各種試験紙(例えば、イムノクロマトアッセイ用試験紙、pH試験紙、イオン濃度試験紙、湿度試験紙、乾燥度試験紙、漂白剤(又は消毒剤)濃度試験紙など)などとしても有用である。さらに、本発明の多孔質膜に、充填物として電解質の重合性モノマーを充填し重合させると、電解質膜を形成することができ、このような電解質膜は燃料電池などとして有用である。
【0097】
なお、本発明の多孔質膜は、樹脂(特に、ポリエーテルスルホン系樹脂)で構成される基材との密着性(又は接着性)に優れるため、前記用途において、基材との積層体の形態であっても有効である。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例及び参考例において、各物性の評価方法は以下の通りである。
【0099】
(ドープに対する水蒸気の供給量)
単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気の量(又は割合)は、以下の方法で算出した。
【0100】
(1)ドープを流延(又は塗布)して成膜し、即時に膜の重量(W1(g))を測定した
(2)前記膜を、所定の温度及び湿度に調整されたチャンバーに入れ、一定時間(T(秒))加湿した後、前記膜をチャンバーから取り出し、膜の重量(W2(g))を測定した
(3)測定した重量、加湿時間及び膜の面積S(m)から、下記式(3)を利用して単位時間・単位面積あたりに供給する水蒸気の量(W(g/m・秒))を算出した。
【0101】
W(g/m・秒)=(W2−W1)/(S・T) (3)
なお、実施例、比較例及び参考例では、ドープに対する水蒸気の供給量は、T=5秒で測定した。
【0102】
(平均粒子径)
測定する多孔質膜(又はその領域、又は層)の表面の電子顕微鏡写真において、任意に10個以上の樹脂微粒子を選択して前記粒子の面積をそれぞれ測定し、平均面積Saveを算出した。次いで、前記粒子を真円と仮定し、得られた平均面積Saveから下記式(4)を利用して平均粒子径を求めた。πは円周率である。
【0103】
平均粒子径=2×(Save/π)1/2 (4)
(平均孔径)
測定する多孔質膜(又はその領域、又は層)の表面の電子顕微鏡写真において、任意に30個以上の空孔を選択して前記空孔の面積をそれぞれ測定し、平均面積Saveを算出した。次いで、前記空孔を真円と仮定し、得られた平均面積Saveから下記式(5)を利用して平均孔径を求めた。πは円周率である。
【0104】
平均孔径=2×(Save/π)1/2 (5)
(空孔率)
多孔質膜の空孔率は、下記式(6)を利用して算出した。なお、式中、Vは多孔質膜の体積、Wは多孔質膜の重量、Dは多孔質膜(又は(a)ポリエーテルスルホン系樹脂)の密度を示し、D(g/cm)=1.37である。
【0105】
空孔率(%)=100−100×W/(D・V) (6)
(ガーレー透気度)
テスター産業(株)製の「PA−301 ガーレー式デンソメーターB型」を用い、JIS P8117に準じて測定した。
【0106】
(純水透過速度)
純水透過速度は、平膜用濾過器(Amicon社製、「STIRRED ULTRAFILTRATION CELLS MODELS 8200」、透過面積:28.7cm)を用い、温度25℃、圧力0.5kg/cmで測定した。なお、透過側には、濾紙をスペーサーの代わりに配置し、透過側の抵抗を排除し、測定した。
【0107】
(引張弾性率、引張強度及び引張伸度)
JIS K 7127に準じて、万能引張試験機(オリエンテック製、「テンシロンRTA500」)を用いて測定した。
【0108】
[実施例1]
ポリエーテルスルホン系樹脂として、20重量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の粘度が、6rpm及び23℃の条件下において、2300cps(2.3Pa・s)であるポリエーテルスルホン系樹脂(BASFジャパン製、「E6020」)を、親水性高分子として、ポリエチレングリコール200(キシダ化学(株)製、「ポリエチレングリコール200」)を、溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを使用した。ポリエーテルスルホン系樹脂35重量部をN−メチル−2−ピロリドン65重量部に溶解した。得られたポリエーテルスルホン系樹脂溶液に、ポリエチレングリコール200を170重量部添加し、攪拌してドープを調製した。得られたドープ(6rpm及び23℃の条件下において、粘度2100cps)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに流延した後、相対湿度90%RH、温度30℃で5秒加湿し、30g/m・秒の割合で水蒸気を供給し、凝固槽(水)に1分間つけ、乾燥して多孔質膜(厚み34μm)を得た。得られた膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。得られた膜の表面写真(図4)、裏面(PETフィルム面)写真(図5)、膜の断面写真(図6)、表面層の拡大断面写真(図7)、中間層の拡大断面写真(図8)、裏面層の拡大断面写真(図9)を示す。前記写真を用いて、粒子状に観察される部位の粒子径、空孔の孔径を測定した。結果を表1に示す。測定した平均粒子径dA〜dEの平均値は0.21μm、平均孔径φA〜φEの平均値は0.53μmであり、空孔率は、77%であった。また、得られた多孔質膜のガーレー透気度は、7秒/100ml、純水透過速度は111600L/m・h・MPa、引張弾性率は140MPa、引張伸度は10%であった。
【0109】
[実施例2]
ポリエチレングリコール200の使用量を、170重量部に代えて、150重量部を用いる以外は実施例1と同様に多孔質膜(厚み46μm)を得た。得られた膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。得られた写真を用いて、粒子状に観察される部位の粒子径、空孔の孔径を測定した。結果を表1に示す。測定した平均粒子径dA〜dEの平均値は0.21μm、平均孔径φA〜φEの平均値は0.54μmであり、空孔率は、72%であった。また得られた多孔質膜のガーレー透気度は、7秒/100ml、78800L/m・h・MPa、引張弾性率は150MPa、引張伸度は8%であった。
【0110】
[比較例1]
ポリエチレングリコール200を170重量部使用する代わりにポリビニルピロリドンを200重量部使用する以外は実施例1と同様に多孔質膜の製造を試みたが、ドープが均一に溶解できず、固化した。
【0111】
[比較例2]
ポリエチレングリコール200の使用量を、170重量部に代えて、80重量部を用いる点、加湿時間を5秒に代えて10秒にする点、25g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿する点以外は実施例1と同様に多孔質膜(厚み25μm)を得た。得られた膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、膜の裏面は、樹脂微粒子の凝集体が形成されず、非対称膜であった。得られた写真を用いて、粒子状に観察される部位の粒子径、空孔の孔径を測定した。結果を表1に示す。得られた膜の空孔率は57%、ガーレー透気度は、53秒/100ml、純水透過速度は13300L/m・h・MPa、引張弾性率は210MPa、引張伸度は8%であった。
【0112】
[比較例3]
ポリエーテルスルホン系樹脂の代わりに、ポリスルホン系樹脂[ソルベイアドバンスドポリマーズ社製、「ユーデル1700P」(20重量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の粘度は200cps(0.2Pa・s))]を使用し、ポリエチレングリコール200を200重量部用いる以外は、実施例1と同様に多孔質膜の製造を試みたが、ポリスルホン系樹脂が析出し、均一なドープが得られず、ゲル化した。
【0113】
[比較例4]
ポリエーテルスルホン系樹脂として、20重量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の粘度が、6rpm及び23℃の条件下において、2300cps(2.3Pa・s)であるポリエーテルスルホン系樹脂(BASFジャパン製、「E6020」)を、親水性高分子として、ポリエチレングリコール200(キシダ化学(株)製、「ポリエチレングリコール200」)を、溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを使用した。ポリエーテルスルホン系樹脂11重量部をN−メチル−2−ピロリドン23.9重量部に溶解した。得られたポリエーテルスルホン系樹脂溶液に、ポリエチレングリコール200を65.1重量部添加し、攪拌してドープを調製した。得られたドープ(6rpm及び23℃の条件下において、粘度2000cps(2Pa・s)))をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに流延した後、相対湿度75%RH、温度30℃で5秒加湿し、0.7g/m・秒の割合で水蒸気を供給し、凝固槽(水)に1分間つけ、乾燥して多孔質膜(厚み26μm)を得た。得られた膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、膜の裏面は、樹脂微粒子の凝集体が形成されず、非対称膜であった。得られた膜の表面写真(図10)、裏面(PETフィルム面)写真(図11)を示す。得られた写真を用いて、粒子状に観察される部位の粒子径、空孔の孔径を測定した。結果を表1に示す。得られた膜の空孔率は62%、ガーレー透気度は、22秒/100ml、純水透過速度は12200L/m・h・MPa、引張弾性率は170MPa、引張伸度は9%であった。
【0114】
【表1】

【0115】
表1から明らかなように、(b)ポリエチレングリコールと(c)N−メチル−2−ピロリドンとを、特定の割合で用いるとともに、特定の加湿条件下で加湿した実施例では、厚み方向に均質な多孔質膜が得られた。一方、比較例では、膜の表面と裏面では、空孔率が大きく異なり、裏面には緻密層が形成されていた。
【0116】
[実施例3、参考例1及び比較例5]
表2に示す割合で、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレングリコール200及びN−メチル−2−ピロリドンを配合したドープをポリエーテルスルホンフィルム(PES)(住友ベークライト(株)製、「スミライト(登録商標)FS1300」、厚み50μm)に塗布し、相対湿度90%RH、温度30℃で5秒加湿し、30g/m・秒の割合で水蒸気を供給し、凝固槽(水)に1分間つけ、乾燥して積層体(総厚み85μm)を得た。得られた積層体について、多孔質層の剥離の有無を観察し、密着性を評価した。結果を表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
表2から明らかなように、(b)ポリエチレングリコールと(c)N−メチル−2−ピロリドンとを特定の割合で用いると、得られる積層体において、多孔質膜と基材との密着性が良好であった。
【0119】
[実施例4]
実施例1で得られた多孔質膜(厚み44μm)に未硬化のシリコーン樹脂[東レ・ダウコーニング社製、2液硬化型シリコーン樹脂(主溶剤:CY−52−205、硬化剤:CY−52−205−CAT、主溶剤/硬化剤(重量比)=10/1)、引張弾性率1.82MPa、引張強度5MPa、引張伸度151%]をアプリケーター(テスター産業(株)製)で塗布して充填し、150℃で30分加熱し、前記シリコーン樹脂を硬化させた。前記シリコーン樹脂を充填した多孔質膜(機能膜)の引張弾性率、引張強度、引張伸度を測定した。結果を表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
表3から明らかなように、シリコーン樹脂を充填した多孔質膜(機能膜)の引張弾性率は、28.7MPaであり、前記シリコーン樹脂単独である場合に比べて、引張弾性率は約16倍向上した。
【0122】
[実施例5]
実施例3で得られた多孔質膜に、画線部の幅(L1)が100μmである版及び印刷インク(大研化学工業(株)製、導電塗料「CA−2503」(主溶剤:ブチルカルビトールアセテート)を用いて、スクリーン印刷を行った。印刷後、100℃で30分間インクを乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて線幅(長さ1000μmにおける平均幅)(L2)を算出した。前記幅(L2)は96μmであり、L2/L1=0.96であった。得られた印刷物の印刷面の写真(100倍)を図12に示す。図12より明らかなように、パターン精度に優れた印刷が得られた。
【0123】
[比較例6]
実施例1で得られた多孔質膜の代わりに、ポリエーテルスルホンフィルム(住友ベークライト(株)製、「スミライト(登録商標)FS1300」、厚み50μm)を用いる以外は実施例5と同様にスクリーン印刷を行った。線幅(L2)は174μmであり、L2/L1=1.74であった。得られた印刷物の印刷面の写真(100倍)を図13に示す。図13より明らかなように、比較例6ではパターン精度に劣っていた。
【0124】
[実施例6]
γ−ブチロラクトンとイソプロパノールとの混合溶媒(γ−ブチロラクトン/イソプロパノール(重量比)=50/50)を、不織布に、前記不織布1mあたり16gの割合で、浸み込ませ、前記不織布を実施例5で得られた印刷物に積層し、前記混合溶媒を前記印刷物に転写した後、溶媒を除去し、80℃で5分間乾燥させ、さらに150℃で5分間乾燥させた。乾燥により、多孔質層が透明になり、多孔質層の空孔の消失が確認された。多孔質層の空孔が消失された前記印刷物に、セロハンテープを貼り、剥がすセロハンテープ剥離試験を行ったところ、印刷インクがセロハンテープに付着せず、印刷インクは剥離しなかった。
【0125】
[参考例2]
実施例5で得られた印刷物に対し、多孔質層の空孔を消失させることなくセロハンテープ剥離試験を行ったところ、印刷インク、多孔質層がセロハンテープに付着した。
【0126】
[比較例7]
比較例6で得られた印刷物に対し、多孔質層の空孔を消失させることなくセロハンテープ剥離試験を行ったところ、印刷インク、多孔質層がセロハンテープに付着し、印刷インク及び多孔質層の破壊が確認された。
【0127】
[実施例7]
実施例3で得られた積層体(ポリエーテルスルホン系樹脂の多孔質膜とポリエーテルスルホン(PES)フィルムとの積層体)の多孔質膜面に、エポキシ系樹脂接着剤層とポリイミド系樹脂フィルム層とで構成されるカバーレイ[ニッカン工業(株)製、ニカフレックス CISV1225]の接着剤層を、160℃、2MPaの条件下で60分間かけて積層した。得られた積層物を目視により観察したところ、積層(又は接着)ムラは見られず、接着剤が多孔質層と溶けて透明になった。また、JIS−C−6471「180度はく離による密着性評価」に準じ、前記積層物を幅1cmの短冊状に切り出し、カバーレイと基材フィルム(ポリエーテルスルホンフィルム)とを引きはがし、密着(又は引張)強度を測定したところ、770gf/cmであった。
【0128】
[参考例3]
ポリエーテルスルホン系樹脂の多孔質膜とポリエーテルスルホンフィルム(PES)との積層体の代わりに、ポリアミドイミド系樹脂(東洋紡績製、「バイロマックスHR11NN」)の多孔質膜とポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン製、「カプトン200H」)との積層体を用いる以外は実施例7と同様にカバーレイを積層した。得られた積層物を目視により観察したところ、積層(又は接着)ムラは見られず、接着剤が多孔質層と溶けて透明になった。また、密着(又は引張)強度は、740gf/cmであった。
【0129】
[参考例4]
ポリエーテルスルホン系樹脂の多孔質膜とポリエーテルスルホンフィルム(PES)との積層体の代わりに、ポリエーテルイミド系樹脂(日本GEプラスチックス(株)製、「ULTEM1000」)の多孔質膜とポリエーテルイミド(PEI)フィルム(三菱樹脂製、「スペリオUT」)との積層体を用いる以外は実施例7と同様にカバーレイを積層した。得られた積層物を目視により観察したところ、積層(又は接着)ムラは見られず、接着剤が多孔質層と溶けて透明になった。また、密着(又は引張)強度は、750gf/cmであった。
【0130】
[参考例5]
γ−ブチロラクトンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(γ−ブチロラクトン/メチルエチルケトン(重量比)=50/50)を、不織布に、前記不織布1mあたり16gの割合で、浸み込ませ、前記不織布を参考例4の積層体に積層し、前記混合溶媒を前記印刷物に転写し、多孔質層の空孔を消失させ、80℃で10分間乾燥させ、さらに150℃で10分間乾燥させた。次いで、実施例7と同様にカバーレイを積層した。得られた積層物を目視により観察したところ、積層(又は接着)ムラは見られなかった。また、密着(又は引張)強度は、590gf/cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は本発明の多孔質層の粒子構造を示す概略断面模式図である。
【図2】図2は本発明の多孔質層の空孔構造を示す概略断面模式図である。
【図3】図3は本発明の多孔質膜の粒子径(dA〜dE)及び孔径(φA〜φE)の測定部位を示す概略模式図である。
【図4】図4は実施例1で得られた多孔質膜の表面を示す写真である。図中のスケールバーは1.2μmを示す。
【図5】図5は実施例1で得られた多孔質膜の裏面を示す写真である。図中のスケールバーは1.2μmを示す。
【図6】図6は実施例1で得られた多孔質膜の断面写真である。図中のスケールバーは10μmを示す。
【図7】図7は実施例1で得られた多孔質膜の表面層の拡大断面写真である。図中のスケールバーは1.2μmを示す。
【図8】図8は実施例1で得られた多孔質膜の中間層の拡大断面写真である。図中のスケールバーは1.2μmを示す。
【図9】図9は実施例1で得られた多孔質膜の裏面層の拡大断面写真である。図中のスケールバーは1.2μmを示す。
【図10】図10は比較例4で得られた多孔質膜の表面を示す写真である。図中のスケールバーは1μmを示す。
【図11】図11は比較例4で得られた多孔質膜の裏面を示す写真である。図中のスケールバーは1μmを示す。
【図12】図12は実施例5で得られた印刷物の印刷面の写真である。図中のスケールバーは1mmを示す。
【図13】図13は比較例6で得られた印刷物の印刷面の写真である。図中のスケールバーは1mmを示す。
【符号の説明】
【0132】
1…樹脂粒子
2…空孔の仮想円
3…表面
4…裏面
5…表面層
6…中間層
7…裏面層
8…多孔質膜
9…被印刷部(又は被画線部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒とを含むドープを成膜し、加湿して凝固させて、前記(b)親水性高分子及び前記(c)溶媒を除去し、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂で構成された多孔質膜を製造する方法であって、前記(b)親水性高分子と(c)溶媒とを、前者/後者(重量比)=1.5/1〜2.7/1の割合で用いるとともに、前記ドープに対し、1〜1000g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿し、前記(a)ポリエーテルスルホン系樹脂を凝固させて多孔質膜を製造する方法。
【請求項2】
(b)親水性高分子と(c)溶媒とを、前者/後者(重量比)=1.6/1〜2.5/1の割合で用いるとともに、前記ドープに対し、5〜300g/m・秒の割合で水蒸気を供給して加湿する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
加湿時間が0.1〜10秒である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
(a)ポリエーテルスルホン系樹脂の含有量が、(a)ポリエーテルスルホン系樹脂と(b)親水性高分子と(c)溶媒との総量に対して、5〜20重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
(b)親水性高分子の数平均分子量が100〜2,000である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ドープを基材に流延して成膜し、多孔質膜を基材から分離する請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
ドープを基材に塗布して成膜し、前記基材に積層した多孔質膜を製造する請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
基材がポリエーテルスルホン系樹脂で構成されている請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で得られた多孔質膜。
【請求項10】
空孔率が、40〜90%である請求項9記載の多孔質膜。
【請求項11】
さらに、多孔質膜の空孔内に充填物を含む請求項9又は10記載の多孔質膜。
【請求項12】
基材と、この基材に積層された請求項9〜11のいずれかに記載の多孔質膜とで構成された積層体。
【請求項13】
多孔質膜の厚みが1〜200μmであり、基材がポリエーテルスルホン系樹脂で構成されている請求項12記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−142799(P2009−142799A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325644(P2007−325644)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】