説明

多層フィルムのエンボス処理方法

この発明は多層フィルムのエンボス処理方法に関する。エンボス処理装置を用いた多層フィルムのエンボス処理方法において、この装置は、少なくとも一つの樹脂材料を供給するための材料供給装置と、それぞれに供給された材料をフィルムとして送出するT型プレートと、T型プレートから送出されたフィルムの表面をエンボス処理するための冷却および搬送のための冷却ローラーと、T型プレートから所定の間隔をおいて位置し、冷却ローラーから搬送されるフィルムをエンボス処理するエンボス処理ローラーと、エンボス処理されたフィルムを移送する移送ローラーとを備えており、製造されるフィルムの一方の面が高度な印刷性と透明性を備えるように、冷却ローラーは滑らかな外表面を有するように形成されており、移送ローラーは冷却ローラーからフィルムを搬送し、T型プレートから所定の間隔をおいて、エンボス処理ローラーが冷却ローラーから搬送されるフィルムに当接する側とは反対に位置しており、冷却ローラーとフイルムの間には、空気または不純物の混入を阻止するためT型プレートから送出されるフィルムが冷却ローラーと接触する位置に、長尺方向に真空吸引チャンバーが形成されており、これにより原料供給装置から供給された異なる熱変形温度を有する樹脂材料はT型プレートを通過し、3層構造のフィルムとなる。この3層構造のフィルムは、冷却ローラーに接するベースフィルム層と、エンボス処理ローラーと接触することによりエンボス模様の形成されるエンボス処理フィルム層および、ベースフィルム層とエンボス処理フィルム層との間を接着するための接着フィルム層を含む。そして冷却ローラーから搬送されたフィルムに当接するエンボス処理ローラーを用いて、フイルムのエンボス処理フィルム層上にだけエンボス模様が形成される。その後フィルムは冷却ローラーにより冷却され、次いで移送ローラーを通過して冷却ローラーから分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、多層フィルムをエンボス処理するための装置に関する。
この発明は柔軟で高い透明性を有し、その一方で耐久性と可撓性を有する真空包装用多層フィルムを生産するための凹凸面を有するエンボス処理ローラーを用いるエンボス装置について記述している。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンボス処理された多層フィルムは、フィルムのエンボス模様のクッション作用によって被包装物を保護するのに役立つと共に、包装内容物を真空状態に保つことによって真空包装の便を図るために開発された。このフィルムはまた、その他の異なる目的にも使用されている。
【0003】
このようなフィルムの製造方法は二つのタイプに分類される:可撓性を有する合成樹脂に空気を吹き込むことにより、溶融状態の可撓性を有する合成樹脂をインフレーションするブロー成形法と、複数の成形ローラーを用いるキャスティング成形法である。特に後者のキャスティング成形法には、現在代表的に用いられている二つの方法がある:第一の方法は次のプロセスからなるもので、まず滑らかな表面を有するフィルムを用意してこれを加熱し、次いで外表面に複数のエンボス用の凹凸模様を有するエンボス処理ローラーの間に加熱されたフィルムを通過させ、それによりエンボス表面を有するフィルムを得るものである。
【0004】
第二の方法は、上記の方法で用意された滑らかな表面を有するフィルムを一般的なプレーンローラーの間に挿通し、次にT型プレート(T−ダイ)から押し出した樹脂材料を、フィルムに載置された樹脂材料を加圧しながらフィルムの上面または下面に供給し、これにより、フィルムに樹脂材料を付着させて樹脂材料のエンボス形成を達成するプロセスからなる。
【0005】
しかしながら上記の方法は、既に用意され成形されたフィルムを二次的に加熱する事により、合成樹脂が結晶化および硬化し、その結果フィルムの耐久性と可撓性が低下するため不利である。そのようなフィルムが折曲げられたり、あるいは皺付けされるとノイズが発生し、フィルムの折曲げ部分に亀裂やピンホールが発生することもあり、またフィルムの接着性も不純物や空気の混入のため低下する。
【0006】
上記の問題を解決するため以下の特許文献に例示されているような様々な方法が提案されている。
【特許文献1】特開平10−100234(日本)
【特許文献2】韓国公開特許2003−0022226号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1はエンボス処理装置を用いたエンボス樹脂シートを製造する方法を開示している。その構成は、樹脂材料を供給するダイと、このダイから押し出しされた樹脂を冷却する冷却ドラムと、圧縮によりダイから押し出された樹脂をエンボス処理するエンボス処理ロールと、エンボス処理された樹脂を移送し送出するガイドロールおよび、ダイから押し出しされた樹脂を冷却ドラムの表面に密着させるための静電気付加電極とを備えている。
【0008】
この方法においては、冷却ドラム上にダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂シートが静電気付加電極を用いて冷却ドラムの表面に密着し、次いで冷却ドラム表面上の溶融熱可塑性樹脂シートはエンボス処理ロールを用いて押圧され、樹脂シート表面にエンボス模様が形成される。
【0009】
さらに特許文献2は、エンボス装置を用いてエンボス処理された多層フィルムを製造する方法を開示している。その構成は、少なくとも一つの合成樹脂材料を供給する原料供給装置と、それぞれ供給された材料を少なくとも1層からなるフイルムにして送出するT型プレート(T−ダイ)と、T型プレート(T−ダイ)から送出されたフィルムの表面をエンボス処理するためのエンボス処理ローラーおよび、エンボス処理されたフィルムを冷却し移送する移送ローラーとからなる。T型プレート(T−ダイ)から送出されたフィルムは、吸引孔を有するエンボス処理ローラーの間を挿通させ、吸引力をその内孔に作用させる。これによりフィルムがエンボス処理ローラーの吸引孔に吸引され、フィルム上にこれらの吸引孔に対応する形状を有する複数の突起が形成される。
【0010】
しかしながら、この方法には不利な点がある。それは、エンボス処理ローラーを用いてフィルム上に突起を形成する際に、エンボス処理ローラーの吸引孔の形状に応じた形状の複数の突起から構成されるエンボス模様は、吸引力または操作条件によって不明瞭に形成されたり、或いは不均一に形成される事があるからである。
これに加えて、吸引の際にフィルムが部分的に穿孔されたピンホールが形成されたり、さらに酷い場合にはフィルムが部分的に裂けて、真空包装に用いるには不適当な低品質になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って本発明は関連する技術において発生する上記の問題を克服するためになされたものである。本発明の一つの目的は、エンボス模様の形成における付加的な加熱を省略し、フィルムの結晶化によるキュアリングを最大限阻止し、且つエンボス模様形成における不均一性、部分的な亀裂、湿り、およびピンホールの等の問題を回避する多層フィルムのエンボス処理方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、所定の形状を有するエンボス模様を均一に形成する多層フィルムのエンボス処理方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、フィルムの片面を平滑に形成して印刷性と透明性を向上させ、不良率を低下せしめこれによって最終製品の品質を向上する多層フィルムのエンボス処理方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は多層フィルムのエンボス処理装置を用いる多層フィルムのエンボス処理方法を提供するものであって、少なくとも一つの樹脂材料を供給する原料供給装置と、それぞれに供給された原料を、少なくとも一つの層を有するフィルムとして送出するT型プレート(T−ダイ)と、T型プレートから送出されたフィルムを冷却し、搬送する冷却ローラーと、フィルムの表面をエンボス処理するためのエンボス処理ローラーおよびエンボス処理されたフィルムを移送する移送ローラーから構成される。
【0014】
本発明においては、T型プレート(T−ダイ)から送出される加熱された流動材料は冷却ローラーと接触する側では急速に冷却されるが、エンボス処理ローラーに接触する別の側では比較的ゆっくりと冷却される。このため冷却ローラーに接触しているフィルム側は、冷却ローラーの滑らかな外表面によって滑らかに形成され、一方このフィルムのエンボス処理ローラーと接触している別の側は、エンボス処理ローラーの加圧によって容易にエンボスされる。
【0015】
T型プレート(T−ダイ)で樹脂材料を高温加熱し、加熱された樹脂材料をそこから送出するためには、押出機のバレルとスクリューが電熱ヒーターを用いて200−300℃に加熱され、スクリューは回転して樹脂材料をT型プレート(T−ダイ)に押し出す。
【0016】
また、複数の突起がエンボス処理ローラーの外表面に形成されている。このためT型プレートから送出されたフィルムが冷却されると、エンボス処理ローラーの圧縮力で加圧され、フィルム上にエンボス模様が形成される。このようにして、付加的加熱を必要としないので繰返し加熱による樹脂材料の結晶化と硬化が生じる可能性が極めて少なくなる。従って本発明の方法は生産性を向上しエンボス処理コストを低減すると共に、高品質の製品が得られるため有利である。
【0017】
本発明の多層フィルムは2層もしくはそれ以上の層に形成される。フィルムが3層構造となるように形成するのが好ましい。
多層フィルムの3層構造は、冷却速度が速く空気ガス不透過性の樹脂から形成されるベースフィルム層と、冷却速度が遅く、抗張力と引き裂き強度が高く、エンボス処理が可能な樹脂から形成されるエンボス処理フィルム層および、ベースフィルム層とエンボス処理フィルム層との間の接着のための接着性樹脂から形成される接着フィルム層とを含む。
【0018】
ベースフィルム層は、結晶性が高く、抗張力を有し、ガス不透過性の樹脂材料であればいずれのものから形成しても良く、好適にはポリアミド系樹脂、さらに好ましくはナイロンが例示される。
エンボス処理フィルム層は、結晶性が低い樹脂材料であればいずれのものから形成しても良く、好適にはLDPE(低密度ポリエチレン)またはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、さらに好ましくはPE(ポリエチレン)が例示される。
接着フィルム層は、接着性樹脂であればいずれのものでも良く、好適には無水マレイン酸系樹脂である。
【0019】
本発明においては、冷却ローラーの外表面は滑らかに形成され、このためフィルムの片方の面はフィルムの印刷性と透明性を増すため滑らかになっている。さらに、ピンホール或いは部分的な亀裂のような欠陥の発生率を低下させると共に、最終製品の品質を向上することができる。
フィルム上に形成されたエンボス模様はエンボス処理ローラーの外表面に形成された突起の形状によって様々な形状となり、望むのであれば、さらに文字のようなロゴを含んでいてもよい。
これに加えて、エンボスされたフィルムは、当技術分野に熟達した者であれば種々の実施例に従って容易に製造することができようが、製造にあたっては、突起を有する円筒状のエンボス処理ローラーを使用することに限定されない。
【0020】
以降に添付図面を参照して本発明の実施例による好ましい観点を詳細に記述する。
図1は本発明の実施例による多層フィルムのエンボス処理装置を示す斜視図で、図2は本発明の実施例による使用時における上記装置を示す図である。図3も本発明の実施例によるエンボス処理プロセスを示す図で、図4は本発明で用いられるエンボス処理ローラーを示す図である。
【0021】
本発明の多層フィルムのエンボス処理装置は、少なくとも一つの樹脂材料を供給するための原料供給装置10と、それぞれに供給された材料を少なくとも1層を有するフィルムとして送出するためのT型プレート20と、T型プレート20から送出されたフィルム60を冷却し、搬送する冷却ローラー30と、フィルム60の表面をエンボス処理するためのエンボス処理ローラー40および、エンボス処理されたフィルム60を移送する移送ローラー50を含む。
【0022】
本発明の多層フィルム60を構成する層の数によって、様々な種類の樹脂材料が用意される。2つ以上の層を有する多層フィルム60が形成される。
多層構造を有するフィルム60は、冷却速度が速く、酸素ガス不透過性の樹脂から形成されるベースフィルム62と、冷却速度が低く、抗張力と引き裂き強度が高く、エンボス処理が可能な樹脂から形成されるエンボス処理フィルム層66および、ベースフィルム層62とエンボス処理フィルム層66の間を接着するための接着性樹脂から形成される接着フィルム層64とを含む。
【0023】
ベースフィルム層62は、結晶性が高く、抗張力を有し、ガス不透過性の樹脂材料であればいずれのものから形成しても良く、好適にはポリアミド系樹脂、さらに好ましくはナイロンが例示される。
エンボス処理フィルム層66は、結晶性が低い樹脂材料であればいずれのものから形成しても良く、好適にはLDPE(低密度ポリエチレン)またはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、さらに好ましくはPE(ポリエチレン)が例示される。
接着フィルム層64は、接着性樹脂であればいずれのものでも良く、好適には無水マレイン酸系樹脂である。
【0024】
更に、T型プレート20はその下部に樹脂材料をフィルムとして送出するために長尺方向に延びる排出口22を備え、それにより樹脂材料は一般的な共押し出しプロセスによりフィルムとして送出される。
このT型プレート20の排出口22は冷却ローラー30に隣接していなければならない。
【0025】
冷却ローラー30の外表面は、フィルム60の片面の印刷性と透明性を増すように、滑らかに形成されている。T型プレート(T−ダイ)20から送出される加熱された樹脂材料のうち、冷却ローラー30と接触する側は急速に冷却されるが、エンボス処理ローラー40に接触する別の側は比較的ゆっくりと冷却される。このため冷却ローラー30に接しているフィルム側であるベースフィルム層62は、滑らかな表面を持つよう成形されるが、他方エンボス処理ローラー40と接する他方のフィルム側であるエンボス処理フィルム層66は非結晶化状態にあって依然として可撓性を有し、エンボス処理ローラー40の加圧により容易にエンボスされる。
【0026】
エンボス処理ローラー40の外表面にはフィルム60上に形成されるべきエンボス模様68に対応して突起42が形成されている。エンボス処理ローラー40は、フィルム60のエンボス処理フィル層66は未だ硬化されていないが、T型プレート20から送出されたベースフィルム層62が冷却され且つ硬化されている位置で、冷却ローラー30に当接するようになっている。
【0027】
従って、T型プレート20から送出されたフィルム60は冷却ローラー30とエンボス処理ローラー40の間を通過する間に、エンボス処理ローラー40の外表面に形成された突起42がフィルム60のエンボス処理フィルム層66を圧縮するよう作用して、フィルム60のエンボス処理フィルム層66だけにエンボスすることとなる。
【0028】
フィルム60上に形成されたエンボス模様68はエンボス処理ローラー40の外表面に形成された突起42の形状に応じて様々な形状となる。図4に示されるように、突起42は文字のようなロゴを含むものであってもよく、それにより必要とあれば文字および/またはロゴがフィルム60上にさらに形成される。
【0029】
エンボス処理ローラー40の加圧によってフィルム60がエンボスされる際に、温度によって決定されるフィルム60の流動性と圧縮力の均衡がうまくとれていない場合には、エンボス模様68が不完全に形成されたり、またフィルム60のベースフィルム層62に形成されるかもしれない。このため、エンボス処理プロセスは注意深く行うことが好ましい。
【0030】
この時点で、フィルム60の流動性はT型プレート20で加熱されるフィルム60の温度に応じて決定される。エンボス処理ローラー40の圧縮力を0〜50kg/cmの範囲に制御することによって、フィルム60のベースフィルム層62上に形成されるエンボス模様68のサイズを制御することができる。
【0031】
移送ローラー50は、エンボス処理ローラー40が冷却ローラー30から搬送されたフィルムに当接する位置と反対側で、T型プレート20から所定の間隔を置いて位置している。この移送ローラー50はフィルムが冷却ローラー30に接している状態で回転し、フィルムが移送ローラー50とエンボス処理ローラー40との間で冷却ローラー30の外表面に密接するようにする。
【0032】
空気または不純物が冷却ローラー30とフィルム60の間に入って欠陥を生じるのを阻止するため、T型プレート20の排出口22から送出されたフィルム60が冷却ローラー30に接する位置に、真空吸引チャンバー70が長尺方向に設定される。
この吸引チャンバー70によってフィルム60は冷却ローラー30に密接することができる。
【0033】
適切な冷却と、繰り返し動作のために熱くなっている冷却ローラー30の温度制御とによってフィルム60の冷却を容易にするため、T型プレート20は移送ローラー50から所定の間隔で離れていて、冷却ローラー30は部分的に外気に曝されている。
移送ローラー50は単に冷却ローラー30からのフィルム60の送出を案内するだけではなく、エンボス処理ローラー40と移送ローラー50の間の間隔を変更することにより、冷却ローラー30によって冷却されるフィルム60の長さも制御するように機能している。
【0034】
このため、エンボス処理ローラー40と移送ローラー50の間で冷却ローラー30と密接するフィルム60の冷却角度範囲を、冷却ローラー30の中心軸に対して180°よりも大きくすることが好ましい。
冷却ローラー30と、エンボス模様68を形成するために用いられるエンボス処理ローラー40は、それらの位置が逆であってもフィルム60上にエンボス模様68を形成するよう作用することができる。
【0035】
本発明の実施例によれば多層フィルム上にエンボス模様68を形成するプロセスは次の通りである:
フイルム送出ステップS10において、ベースフィルム層62と、エンボス模様68が形成されるエンボス処理フィルム層66および、ベースフィルム層62とエンボス処理フィルム層66の間を接着するための接着フィルム層64とで構成される多層フィルムが、結晶性の異なる複数の樹脂材料が溶融加熱されるT型プレート20の排出口22から送出される;
供給ステップS20では送出されたフイルム60は冷却ローラー30に接着し、エンボス模様形成ステップS30では、その外表面に複数の突起42を有するエンボス処理ローラー40を用いて、フィルム60のエンボス処理フィルム層66の上にだけエンボス模様68が形成される;
冷却ステップS40では、エンボス模様68を有するフィルム60が、冷却ローラー30の外表面に密着した状態で冷却ローラー30に沿って運ばれる;そして、
分離ステップS50では、エンボス模様68を有するフィルム60は、移送ローラー50により冷却ローラー30から分離される。
上記ステップは順番に進行する。
【0036】
ベースフィルム層62は、結晶性が高く、抗張力および空気ガス不透過性のポリアミド系樹脂で形成される。
エンボス処理フィルム層66は、結晶性の低いLDPE(低密度ポリエチレン)またはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、PE(ポリエチレン)から選択されたいずれかで形成される。
接着フィルム層64は、接着性を有する無水マレイン酸系樹脂で形成される。
供給ステップS20において、フィルム60は強制的に冷却ローラー30の回転力によって冷却ローラー30に供給される。この時、フィルム60を隙間のできないように冷却ローラー30に密接させるのが好ましい。
【0037】
エンボス模様形成ステップS30において、エンボス模様68は、T型プレート20から送出されたフィルム60のエンボス処理フィルム層66を、冷却される前にエンボス処理ローラー40と接触させることにより形成され、一方冷却ローラー30に接触しているフィルム60のベースフィルム層62は冷却される。
エンボス模様形成ステップS30において、さらにフィルム60上に様々な文字および/またはロゴを含むエンボス模様68を形成するためには、様々な文字および/またはロゴを有する突起42を備えたエンボス処理ローラー40を用いてエンボス模様68が形成される。
【0038】
エンボス模様形成ステップS30において、エンボス模様68がエンボス処理ローラー40の加圧によって形成される際に、温度によって決定されるフィルム60の流動性と圧縮力の均衡がうまくとれていないような場合には、エンボス模様68が不完全に形成されたり、またフィルム60のベースフィルム層62に形成されるかもしれない。このため、エンボス処理プロセスは注意深く行うことが好ましい。
エンボス模様68の形成を決定する冷却ローラー30の温度を適切に制御するためには、外部空気を用いる空冷プロセスが好適に用いられる。それは、エネルギーや装置をさらに必要としないためである。ある場合には、冷却効率をさらに増すために付加的な冷却装置が設けられる。
【0039】
したがって、上記のプロセスで製造されたエンボスされた多層フィルムは、エンボス模様68のクッション作用によって包装された対象物を保護する一方で、包装内容物を真空状態に維持するために様々な食品の真空包装に用いるのに適している。さらに上記のフィルムは、機械部品、長期間保存される製品、半導体を保護するための製品、抗張力を有する製品等のような真空包装を必要とする全ての物品を包装するために用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上述のように本発明は、多層フィルムのエンボス処理方法を提供する。
熱せられ高粘度を有する多層フィルムが滑らかな外表面を備えた冷却ローラーに密接した状態で冷却されると、フィルムの一つの面だけがエンボス処理ローラーの圧縮力によってエンボスされ、フィルムの他の面は滑らか、且つ透明に形成される。これにより、エンボス模様を有するフィルムの滑らかな面は様々なロゴや文字を容易に印刷することができる。さらに、このフィルムを真空包装に用いると、包装された物体を容易にチェックすることができ、フィルムの不良率が減少し、かくして高い品質の最終製品を得ることができる。
本発明はその必須の特徴の精神を逸脱することなしに、いくつかの形で具現することができるので、従ってこの態様は例示であって、これに限定するものではない。本発明の範囲は先行する明細書の記述よりは寧ろ、添付された請求項によって定義されるものであるから、本請求項の領域と境界内に含まれるあらゆる変更またはそれらと同等なるものは本特許請求の範囲に包含されるべく意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本願の上記ならびに他の目的、特徴およびその他の利点は添付図面と組み合わせして以下の詳細な記載から更に明瞭に理解されよう。
【図1】図1は本発明の実施例による多層フィルムのエンボス処理装置を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施例による使用時におけるエンボス処理装置を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例による多層フィルムのエンボス処理プロセスを示す外観図である。
【図4】図4は本発明の実施例によるエンボス処理ローラーを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの樹脂材料を供給する原料供給装置と、それぞれ供給された原料をフィルムとして送出するT型プレートと、T型プレートから送出されたフィルムを冷却し、搬送する冷却ローラーと、T型プレートから所定の間隔を置いて位置する冷却ローラーから搬送されたフィルム表面をエンボス処理するためのエンボス処理ローラーおよび、エンボス処理されたフィルムを移送する移送ローラーを備えた多層フィルムのエンボス処理装置を用いて多層フィルムをエンボス処理する方法であって:
結晶性を異にする複数の樹脂材料をT型プレートの排出口に供給して加熱溶融し、ベースフィルム層と、その上にエンボス模様の形成されるエンボス処理フィルム層および、ベースフィルム層とエンボス処理フィルム層の間を接着する接着フィルム層とを有する多層フィルムとして冷却ローラー上に送出するステップと;
送出されたフィルムを冷却ローラー上に供給するステップと;
その外表面上に複数の突起を有するエンボス処理ローラーを用いてフィルムのエンボス処理フィルム層の上にのみ、エンボス模様を形成するステップと;
エンボス模様の形成されたフィルムを冷却すると共に、該フィルムを冷却ローラーの外表面に密接した状態で、冷却ローラーに沿いフィルムを搬送するステップ;および、
エンボス模様の形成されているフィルムを、移送ローラーにより冷却ローラーから分離するステップとを備えていることを特徴とする多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項2】
ベースフィルム層が結晶性、抗張力およびガス不透過性の高いポリアミド系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項3】
エンボス処理フィルム層が、そのいずれもが結晶性の低いLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)およびPE(ポリエチレン)の中から選択されたいずれかの樹脂から形成されることを特徴とする請求項1記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項4】
接着フィルム層が、接着性を有する無水マレイン酸系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項5】
T型プレートから排出される多層フィルムのエンボス処理フィルム層をエンボス処理ローラーと接触させ、多層フィルムのエンボス処理フィルム層が冷却される前に、エンボス模様を形成するとともに、多層フィルムのベースフィルム層は冷却ローラーに接触させて冷却することを特徴とする請求項1記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項6】
エンボス模様の形成が、様々な文字および/またはロゴを示す形状の突起を面上に有するエンボス処理ローラーを用いて行われ、フイルム上に形成されたエンボス模様が、さらに様々な文字および/またはロゴを含むことを特徴とする請求項1または5記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項7】
T型プレートから供給されたフィルムが冷却ローラーに接触する位置に、真空吸引チャンバーを設けて、冷却ローラーとフィルムの間に空気または不純物の入るのを阻止することを特徴とする請求項1記載の多層フィルムのエンボス処理方法。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかに記載の方法により製造された真空包装用の多層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−525340(P2007−525340A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500672(P2007−500672)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000011
【国際公開番号】WO2005/082602
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504328004)株式会社エンターライン・ジャパン (1)
【Fターム(参考)】