説明

多層フレキシブル基板および電子機器

【課題】信号配線層で行われる高速の信号伝送に対応可能なシールド特性を有する多層フレキシブル基板、および、この多層フレキシブル基板を用いた動作信頼性の高い電子機器を得ること。
【解決手段】グランド層4と、絶縁層5と、信号配線8が形成された信号配線層4とが順次積層された多層フレキシブル基板1であって、前記多層フレキシブル基板1は、側方に突出した突出部1aを備え、前記突出部1aの少なくとも一方の表面に、前記グランド層4と電気的に導通した接地部4aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板や各種デバイスに接続されて信号伝送を行う多層フレキシブル基板と、この多層フレキシブル基板を備えた電子機器に関し、特に、伝送される信号の高いシールド効果が得られる多層フレキシブル基板とそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板どうし、または、回路基板と各種ディスクドライブ、表示パネル、メモリデバイスなどの各種デバイスとを接続するために、フレキシブル基板(FPC)が用いられている。フレキシブル基板は、ポリイミドなどの絶縁性樹脂の基材に、パターン化された銅箔などにより形成された導体層が積層されたものであり、近年は、フレキシブル基板を介して伝送される信号の種類の増大や、フレキシブル基板が使用される機器の小型化などに対応するため、間に絶縁層を介して積層された、複数の導体層を有する多層フレキシブル基板が多用されている。
【0003】
このような多層フレキシブル基板において、導体層の一つを信号伝送の配線層として用いるのではなく、面状に同電位となるようなパターンを形成してこの層を接地電位としたグランド層とすることで、フレキシブル基板で伝送される伝送信号に対するノイズの影響を防止するシールド効果を得ることが行われている。
【0004】
図7に、従来の多層フレキシブル基板の例を示す。
【0005】
図7に示した、従来の多層フレキシブル基板である記録再生信号伝送ケーブル500は、樹脂製のベース部材501上に導電体のパターンであるシールド部材502を形成し、絶縁部材からなる絶縁層503を介して信号配線504が形成されている。そして、シールド部材502を接地することによって導体層による鏡像効果を発揮させて、往復路信号線である信号配線504のインダクタンスを低減し、データ転送速度の高速化と高周波信号成分の確実な伝送を図るというものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−251813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載の技術のように、多層フレキシブル基板に導体層を設け、これを接地してグランド層とすることで、多層フレキシブル基板の信号配線層に配置された信号配線のシールド層としての効果を奏することができる。
【0008】
しかし、多層フレキシブル基板の信号配線層に形成された信号配線で伝送される信号に対する十分なシールド効果を得るためには、グランド層の電位が確実に接地電位(0V)に接地されていることが重要となる。すなわち、本質的に変形可能な多層フレキシブル基板において、多層フレキシブル基板に変形などが生じても、グランド層の電位が常に接地電位(0V)に保たれていて変動しないようにする必要がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するものであり、信号配線層で行われる高速の信号伝送に対応可能なシールド特性を有する多層フレキシブル基板、および、この多層フレキシブル基板を用いた動作信頼性の高い電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の多層フレキシブル基板は、グランド層と、絶縁層と、信号配線が形成された信号配線層とが順次積層された多層フレキシブル基板であって、前記多層フレキシブル基板は、側方に突出した突出部を備え、前記突出部の少なくとも一方の表面に、前記グランド層と電気的に導通した接地部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電子機器は、少なくとも一部が導電性を有する筐体と、前記筐体内に収容された回路基板と、前記回路基板のコネクタ部に接続された本発明にかかる多層フレキシブル基板とを備え、前記多層フレキシブル基板の前記突出部に形成された前記接地部が、前記筐体の導電性を有する部分に電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層フレキシブル基板は、形状の変化が生じた場合であっても、突出部に形成された接地部を用いてグランド層を確実に接地電位と接続することができる。このため、グランド層の電位を安定させることができ、信号配線層で伝送される信号に対して確実なシールド効果を得ることができる。
【0013】
また、本発明の電子機器は、多層フレキシブル基板の突出部に形成された接地部を筐体の導電性部分と接続することができるので、グランド層を確実に接地電位とすることができ、多層フレキシブル基板で電送される信号に対して確実なシールド効果が発揮され、動作信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる多層フレキシブル基板の構成を示す部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの筐体内に配置された、多層フレキシブル基板の状態を示す拡大平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる多層フレキシブル基板のグランド層に形成された接地部の構成を示す要部拡大平面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる多層フレキシブル基板が、ノートパソコンの筐体内表面に固着されている状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる多層フレキシブル基板の変形例の構成を示す部分断面図である。
【図7】従来の多層フレキシブル基板の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多層フレキシブル基板は、グランド層と、絶縁層と、信号配線が形成された信号配線層とが順次積層された多層フレキシブル基板であって、前記多層フレキシブル基板は、側方に突出した突出部を備え、前記突出部の少なくとも一方の表面に、前記グランド層と電気的に導通した接地部が形成されている。
【0016】
このようにすることで、多層フレキシブル基板の側方に突出した突出部に形成された、グランド層と電気的に接続された接地部を用いて、グランド層を接地電位に確実に接続することができる。このため、多層フレキシブル基板が変形した場合でもグランド層の電位を安定して接地電位に保つことができ、信号配線層で伝送される信号に対して確実なシールド効果を得ることができる。
【0017】
上記本発明にかかる多層フレキシブル基板では、前記接地部が、前記突出部部分で突出した前記グランド層により形成されていることが好ましい。このようにすることで、接地部を筐体の内表面などの接地電位と接続することで、確実にグランド層を接地電位に保つことができる。
【0018】
また、前記突出部の突出した前記グランド層とは反対側の表面が、前記信号配線層を構成する導電性材料で構成された接地部となっていることが好ましい。このようにすることで、突出部の両側の表面に容易に接地部を形成することができる。
【0019】
さらに、前記信号配線の配線方向における異なる位置に複数の突出部が形成され、前記複数の突出部の内の隣り合う少なくとも一対の突出部の突出方向が反対の方向であることが好ましい。このようにすることで、グランド層の突出部が多層フレキシブル基板の両側に突出するため、グランド層と筐体の内表面などの接地電位部分との電気的接続を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の電子機器は、少なくとも一部が導電性を有する筐体と、前記筐体内に収容された回路基板と、前記回路基板のコネクタ部に接続された本発明にかかる多層フレキシブル基板とを備え、前記多層フレキシブル基板の前記突出部に形成された前記接地部が、前記筐体の導電性を有する部分に電気的に接続されている。
【0021】
このような構成とすることで、多層フレキシブル基板のグランド層が突出部に形成された接地部によって筐体の導電性部分と接続される。このため、グランド層を確実に接地電位とすることができるため、多層フレキシブル基板が変形などした場合でも、伝送される信号に対する確実なシールド効果を得ることができ、動作信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【0022】
また、前記多層フレキシブル基板が、前記筐体内に、前記グランド層よりも前記信号配線層が前記筐体の内表面側に位置するようにして配置されることが好ましい。このように配置することで、信号配線を、グランド層と筐体の導電性部分とで挟み込むようになるので、信号配線を伝送される信号に、外部からのノイズが影響を与えることを効果的に防止することができる。
【0023】
さらに、前記突出部の前記信号配線層側の表面が絶縁材料で覆われていて、前記突出部の前記信号配線層側とは異なる側の表面に形成された前記接地部と前記筐体の前記導電性を有する部分とが導電性テープで電気的に接続され、前記導電性テープが、前記多層フレキシブル基板を前記筐体の内表面に固着していることが好ましい。このようにすることで、導電性テープを介して、突出部に形成された接地部と筐体の導電性を有する内表面との間を電気的に接続するルートが確実に形成され、例えばモバイル機器などのように動作中にその姿勢が変化する電子機器においても、伝送される信号へのノイズの影響が少ない信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【0024】
以下、本発明にかかる多層フレキシブル基板が用いられている電子機器として、本体部内部の回路基板の接続に多層フレキシブル基板が用いられているノートパソコンを例示して説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態であるノートパソコンの外観を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように本実施形態のノートパソコン100は、表示パネル21が収容された表示部20と本体部10とから構成されていて、表示部20はヒンジ機構13によって本体部10に回動可能に取り付けられているため、ノートパソコン100を使用しない時には、表示部20が本体部10の蓋部となるようになっている。
【0027】
表示部20に用いられる表示パルネル21としては、液晶パネルや有機または無機のELパネル等各種の平板型ディスプレイを用いることができる。また、表示パネル21が見えるように表示部20を開いた状態で、表示部20のその上側端部となる部分には、無線LAN通信を行うための図示しないアンテナモジュールが内蔵されている。
【0028】
本体部10の表面には、ノートパソコンとしての通常の構成として、キーボード11やタッチパッド21、図示しない各種スイッチ類やディスクドライブ装置の蓋部などが設けられている。また、本体部10の内部には、CPUやメモリ、電源回路部品などが搭載された各種の回路基板や、充電式電池、各種ドライブ装置などが収納されている。これら、表示部20および本体部10の構成は、従来周知のノートパソコンの構成をそのまま適用できるものであることから、その詳細の説明は省略する。
【0029】
図2は、本実施形態のノートパソコン100において、本体部10の内部で回路基板を接続する多層フレキシブル基板1の構成を示すための拡大部分断面図である。
【0030】
図2に示すように、多層フレキシブル基板1は、表面が保護層であるカバーレイフィルム2で覆われたポリイミドなどの絶縁樹脂フィルム製の基材3に、銅などの金属箔で形成されたグランド層4、ポリイミドなどの絶縁樹脂製の絶縁層5、銅などの金属箔で形成された信号配線層6、ポリイミドなどの絶縁樹脂製の表面保護層7が順次積層形成されている。各層の厚さは一般的に10〜50μm程度であり、基材3、グランド層4、信号配線層6の厚さが他の層よりも比較的厚く形成される。また、各層の間には、各層を接着するための厚さ25μm以下程度の図示しない接着剤層が介在している。
【0031】
信号配線層6は、銅などの金属箔が、エッチングなどの周知の方法でパターン化されて信号配線8が形成されたものである。
【0032】
多層フレキシブル基板1の側方、すなわち、信号配線8の延在方向とは略直交する外側方向には、突出部1aが形成されている。本実施形態の多層フレキシブル基板1の突出部1aは、グランド層4、絶縁層5、信号配線層6、表面保護層7にそれぞれ同じ形状で形成されたグランド層4の突出パターン4a、絶縁層5の突出パターン5a、信号配線層6の突出パターン6a、表面保護層7の突出パターン7aによって構成されている。また、カバーレイフィルム2および基材3には、突出パターンが形成されていないことから、突出部1aの信号配線層6側とは異なる側の表面は、グランド層4の突出パターン4aが露出されていて、接地部を形成している。
【0033】
図3は、本実施形態のノートパソコン100の、本体部10内部の構造を示す平面図である。
【0034】
図3は、本体部10を構成する上側の筐体を、筐体上に配置されているキーボード11やタッチパッド12などとともに取り除いた状態を示している。図3に示すように、本体部10の下側の筐体の内部には、第1の回路基板21と第2の回路基板22とが配設されていて、第1の回路基板21の接続端子21aと第2の回路基板22の接続端子22aとが、多層フレキシブル基板1で接続されている。
【0035】
本実施形態のノートパソコン100の多層フレキシブル基板1は、突出部1aが形成された部分で導電性テープ23によって、本体部10の下側筐体の内表面10aに固着されている。多層フレキシブル基板1には、2つの突出部1aが互いに逆の方向に向かって突出している。また、突出部1aにおいて接地部として形成されたグランド層4の突出パターン4aが表面側、すなわち、図3において見える側に向くように配置されている。
【0036】
このようにすることで、導電性テープ23によって、多層フレキシブル基板1をその長さ方向に対する両側方の2箇所で筐体の内表面10aに固着することができるため、多層フレキシブル基板1の物理的な固着と、突出部1aの接地部を介する電気的接続をより強固なものとすることができる。なお、突出部1aを筐体の内表面10aに固着する場合に導電性テープ23が多層フレキシブル基板1を覆う部分の面積は、導電性テープ23による信号配線8との干渉を避けるため、図3に示すように、フレキシブル基板1の信号配線8を覆うことなく、できるだけ突出部1aだけに導電性テープ23を貼付することが好ましい。図3では、多層フレキシブル基板1とその突出部7を明示するために、導電性テープ23を点線で表している。
【0037】
本実施形態の多層フレキシブル基板1におけるグランド層4は、図4にその構成を示すように、銅箔をエッチングすることで形成した斜めの格子状パターン9となっている。このようにグランド層4を格子状とすることで、グランド層を面状の銅箔層とする場合と比較して多層フレキシブル基板1の剛性を低減させることができ、多層フレキシブル基板1を所望の位置で湾曲、折り曲げ等することが容易となる。また、グランド層4として使用される銅箔材料が少なくなるため重量の軽減を図ることができる。
【0038】
図4に示すように、グランド層4に形成された接地部である突出パターン4aは、グランド層4の斜め方向の格子状パターン9と一体化されて形成されている。突出パターン4aは、グランド層4を格子状にエッチングする際のマスクに突出パターン4aをパターン形状として含ませることで、グランド層4のパターンを形成するのと同時に形成することができる。
【0039】
突出パターン4aの大きさは、多層フレキシブル基板1の大きさ、および、接地部である突出パターン4aの接地電位となっている筐体内表面の導電性部分との接続方法に応じて、適宜定めることが好ましい。本実施形態のノートパソコン100では、導電性テープ23を用いて突出部1aの接地部としての突出パターン4aと本体部10の金属製の下側筐体の内表面10aとを電気的に接続するため、突出パターン4aの大きさは、縦横ともに約7mmの略正方形状としている。
【0040】
なお、本実施形態の多層フレキシブル基板1で、グランド層4を斜めの格子状パターン9としているのは、多層フレキシブル基板1における信号配線9の配線方向に対して垂直および水平方向の格子状とするよりも、多層フレキシブル基板1の曲げに対して強く、グランド層4のパターンが切断されるおそれが少ないからである。ただし、グランド層4を格子状パターンとすること、また、斜めの格子状パターンとすることは、本実施形態の多層フレキシブル基板1にとって必須の要件ではない。グランド層4は、多層フレキシブル基板1内の一つの導電体層として、層全体をグランド電位に保つことができる密度で金属部材が配置されており、かつ、多層フレキシブル基板1として求められる曲げ等の形状変化における柔軟性と、必要な強度を得ることができれば、そのパターン形状に制約はない。
【0041】
図5は、ノートパソコン100の本体部10内部における多層フレキシブル基板1の配置状態と、多層フレキシブル基板1の突出部1aの表面に形成された接地部であるグランド層4の突出パターン4aと本体部10下側筐体の内表面10aとの電気的な接続状態を示す要部拡大断面図である。
【0042】
図5に示すように、多層フレキシブル基板1は、グランド層4よりも信号配線層6が本体部10下側筐体の内表面10a側に位置するように、すなわち、図5において、信号配線層6よりもグランド層4が上側に来るようにして配置される。このようにすることで、信号配線層6の信号配線8が、本体部10下側筐体の内表面10aとグランド層4とに挟まれるようになり、信号配線8で生じる不要輻射等に対する高いシールド効果を得ることができる。
【0043】
導電性テープ23は、例えば、金属またはカーボンなどの導電性微細粉が混入され片面に接着剤層を有するテープであり、接着テープとして物理的に部材同士を固着する機能と同時に、部材間の電気的接続を得ることができるものである。本実施の形態における導電性テープとしては、特に制約はなく、市販の各種テープをそのまま使用することができる。
【0044】
図5に示すように、本実施形態のノートパソコン100においては、フレキシブル基板1の突出部1a部分に導電性テープ23が貼り付けられることで、突出部1aを本体部10の下側の筐体の内表面1aに固定するとともに、突出部1aの表面に露出された接地部であるグランド層4の突出パターン4aと、筐体の内表面10aとを電気的に接続する。
【0045】
このように、突出部1aの接地部を導電性テープ23で筐体の内表面10aに固着することで、例えば、信号配線層6における信号配線8を回路基板21,22と接続する端子部21a、22bのように、多層フレキシブル基板1の導体パターンである信号配線8を単に接続端子で挟むことにより接続する場合と比較して、多層フレキシブル基板1のグランド層4を、金属性筐体の内表面10aと大きな面積でかつ確実に接続することができる。
【0046】
なお、突出部1aは表面にグランド層4に接続する突出パターン4aを備えていれば、表面保護層7aや信号配線層6a等は必須ではない。しかしながら、導電性テープ23によりグランド層4の突出パターン4aを本体部筐体の内表面10aに電気的接続する際には、突出部1aが内表面10aに対してできるだけ平面性を保つことで、より確実な導通を採ることができ、またフレキシブル基板1を内表面10aにより強固に固着することができることから、本実施形態では、筐体の内表面10a側に位置することとなる、突出部1aの表面保護層7からグランド層4までの層構成を、多層フレキシブル基板1と同様としている。
【0047】
また、本実施形態のノートパソコン100では、信号配線8を備えた多層フレキシブル基板1の突出部1aを、導電性テープ23で筐体の内表面10aに接続しているため、動作時にその姿勢が変化したり、持ち運び時に機器本体に振動や衝撃が加わったりしやすいノートパソコン100においても、多層フレキシブル基板1自体を筐体内で固定すると同時に、多層フレキシブル基板1のグランド層4を確実に接地電位に保ち続けることができる。このため、高速での信号伝送が行われる信号配線8に対して、グランド層4による高いシールド効果を安定して発揮させることができ、安定した動作を行う信頼性の高いノートパソコン100を得ることができる。
【0048】
さらに、多層フレキシブル基板1の一つの導電体層であるグランド層4をシールド層として活用できるため、多層フレキシブル基板1の基材表面に導電性の塗膜を形成する場合などと比較して、低コストでシールド層を得ることができ、また、多層フレキシブル基板1の柔軟性を損なうおそれもない。
【0049】
なお、図5に示すように、導電性テープ23は、多層フレキシブル基板1の突出部1aを覆うものの、多層フレキシブル基板1の信号配線8が形成されている部分は覆わないように、その端部が多層フレキシブル基板1の側方の周辺部分をわずかに覆うように配置されている。これは、接地電位となる導電性テープ23が、部分的に信号配線層6の信号配線8を覆った場合には、導電性テープ23で覆われた部分と覆われていない部分とで基準電位の差異が生じて、信号配線8で伝送される信号の特性が劣化してしまう可能性があるためである。したがって、導電性テープ23が多層フレキシブル基板1の突出部1a以外の本体部分を覆う大きさは、伝送される信号に影響が出ない範囲で、かつ、物理的に多層フレキシブル基板1を固着できるように適宜定めることとなる。
【0050】
次に、図6を用いて、本実施形態のノートパソコン100に用いられる多層フレキシブル基板の変形例を説明する。
【0051】
図6に示す、変形例の多層フレキシブル基板31は、側方に突出した突出部31aが、グランド層34の突出パターン34aと、絶縁層35の突出パターン35aと、信号配線層36の突出パターン36aとで形成されていて、表面保護層36には、カバーレイフィルム32および基材33と同様に突出パターンが形成されていない。
【0052】
また、変形例の多層フレキシブル基板31では、信号配線層36の突出パターン36aもグランド層34に電気的に接続されているため、グランド層34の突出パターン34aと信号配線層36の突出パターン36aとが、ともに接地部を構成している。
【0053】
このようにすることで、突出部31aを固定ネジ42で筐体の内表面10aに固着する場合には、グランド層34の突出パターン34aが金属製のネジ42を介して接地電位に接続されるだけではなく、突出部31aの裏側に位置する信号配線層36の突出パターン36aを筐体に構成されたネジ受け部41に直接接触させることができる。このため、突出部31aに形成された接続部である、グランド層34の突出パターン34aと信号配線層36の突出パターン36aとを用いて、より確実にグランド層34を接地電位と接続することができる。
【0054】
ただし、多層フレキシブル基板31をネジ止めする場合には、多層フレキシブル基板31の突出部31aと本体部の内表面に形成されるネジ受け部41との位置あわせを、予めしっかりと行う必要がある。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のノートパソコン100では、回路基板21,22間の信号伝送を行う多層フレキシブル基板1、31,のグランド層4、34を、多層フレキシブル基板1、31に形成された突出部1a、31aの接地部4a、34a、36aを介して、金属製の本体部10の下側筐体の内表面10aに接続している。このため、使用時や持ち運び時に外部からの振動や衝撃が加わることが多いノートパソコン100においても、高速の信号伝送に対する高いシールド効果を得ることができ、ノートパソコン100の動作信頼性を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態ではネジ42により突出部31aを筐体に構成したネジ受け部41に螺結することでグランド層34の突出パターン34aと信号配線層36の突出パターン36aとを電気的に接続する構成で説明したが、突出パターン34aと突出パターン36aとを電気的に接続する手法としては、例えば、内壁を導電性物質でメッキした貫通孔等を絶縁層35の突出パターン35aに形成することも考えられる。この構成では、例えば図5を参照して説明したように、導電性テープ23を用いてフレキシブル基板のグランド層4と本体部10筐体の内表面10aとを接続する構成以外に、一般的に導電性テープ23よりも安価な電気的に絶縁性のテープを用いて突出部31aを固着することで、互いに対向し合う信号配線層36の突出パターン36aと本体部10筐体の内表面10aとを接続することができ、絶縁層35の突出パターン35aに形成した導電性物質でメッキした貫通孔を介して、筐体の内表面10aとグランド層4との電気的接続を取ることができる。
【0057】
なお、上記本実施形態の多層フレキシブル基板においては、図3に示したように、突出部の数は2つに限られるものではなく、多層フレキシブル基板の長さや形状に応じて1つ、または3つ以上の突出部を形成することができる。また、複数形成された突出部の突出方向としても、図3に示したように、隣り合う突出部の突出方向が反対方向となるようなものに限られない。突出部の突出方向は、多層フレキシブル基板が配置される本体部の内部における空間の有無によって制限される、突出部の固着位置に応じて適宜設計すればよい。
【0058】
さらに本実施形態では、多層フレキシブル基板として一直線状のものを例示して説明したが、多層フレキシブル基板としては信号配線の配線方向が折れ曲がっていたり、湾曲していたり、さまざまな形状を採用することができる。特に、多層フレキシブル基板における信号配線の配線方向が折れ曲がっていたり、湾曲していたりする場合などでは、図2および図3に示したように、突出部が信号配線の配線方向に対して垂直な方向に突出するもの以外にも、多層フレキシブル基板を固着できて電気的導通を取る上でも望ましく、信号配線で伝送される信号に干渉しない方向に突出部を突出させることが好ましい。
【0059】
さらに本実施形態では、多層フレキシブル基板を用いて、2つの回路基板同士を接続する電子機器の例を示したが、多層フレキシブル基板が接続するものは回路基板同士に限られない。回路基板と、ディスクドライブやメモリ装置、表示パネルなどの各種の電子部材との接続に用いることができる。
【0060】
また、上記本実施形態では、本体部として金属筐体が用いられたものを例示して説明したが、多層フレキシブル基板が収容される筐体自体が金属である必要はなく、樹脂などの非導電性材料で本体部の筐体を形成し、筐体の内表面に導電性のコーティング膜などを形成して、このコーティング膜を接地電位とすることができる。
【0061】
さらに、上記実施形態では、多層フレキシブル基板として、グランド層の他に信号配線層を1層のみ有するものを例示して説明したが、近年多用されつつある2以上の信号配線層を有する多層フレキシブル基板に突出部を形成してグランド層を接地することもできる。
【0062】
また、電子機器としてノートパソコンを例示して説明したが、これはあくまで例示に過ぎない。電子機器としては、PDAや携帯用DVDプレーヤー、電子辞書、ゲーム機、携帯電話などの各種ポータブル機器、さらに、コンピュータディスプレイやTV受像器などの据え置き型の種々の電子機器を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかる多層フレキシブル基板は、信号配線で伝送される信号に対する高いシールド効果を奏することができ、回路基板同士や回路基板と各種の電子デバイスとの間の接続に有用である。また、本発明の多層フレキシブル基板を用いた電子機器は、内部で伝送される信号に対するノイズの影響が少ない信頼性の高い機器として、ポータブル機器や据え置き型の機器など各種用途の電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 多層フレキシブル基板
1a 突出部
4 グランド層
4a 突出パターン(接地部)
5 絶縁層
6 信号配線層
8 信号配線
10 本体部
10a (本体部筐体の)内表面
23 導電性テープ
100 ノートパソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド層と、絶縁層と、信号配線が形成された信号配線層とが順次積層された多層フレキシブル基板であって、
前記多層フレキシブル基板は、側方に突出した突出部を備え、前記突出部の少なくとも一方の表面に、前記グランド層と電気的に導通した接地部が形成されていることを特徴とする多層フレキシブル基板。
【請求項2】
前記接地部が、前記突出部部分で突出した前記グランド層により形成されている請求項1に記載の多層フレキシブル基板。
【請求項3】
前記突出部の突出した前記グランド層とは反対側の表面が、前記信号配線層を構成する導電性材料で構成された接地部となっている請求項2に記載の多層フレキシブル基板。
【請求項4】
前記信号配線の配線方向における異なる位置に複数の突出部が形成され、前記複数の突出部の内の隣り合う少なくとも一対の突出部の突出方向が反対の方向である請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層フレキシブル基板。
【請求項5】
少なくとも一部が導電性を有する筐体と、
前記筐体内に収容された回路基板と、前記回路基板のコネクタ部に接続された請求項1〜4のいずれか1項に記載された多層フレキシブル基板とを備え、
前記多層フレキシブル基板の前記突出部に形成された前記接地部が、前記筐体の導電性を有する部分に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
前記多層フレキシブル基板が、前記筐体内に、前記グランド層よりも前記信号配線層が前記筐体の内表面側に位置するようにして配置される請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記突出部の前記信号配線層側の表面が絶縁材料で覆われていて、前記突出部の前記信号配線層側とは異なる側の表面に形成された前記接地部と前記筐体の前記導電性を有する部分とが導電性テープで電気的に接続され、前記導電性テープが、前記多層フレキシブル基板を前記筐体の内表面に固着している請求項6に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84800(P2012−84800A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231664(P2010−231664)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】