説明

多層構造形成方法、配線基板および電子機器の製造方法

【課題】液滴吐出装置を用いて、構造的に安定な多層構造を形成すること。
【解決手段】多層構造形成方法は、第1絶縁材料層と、第2絶縁材料層と、液滴吐出装置によって形成された導電性材料層と、を一度に加熱して、第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に位置する導電層と、前記第1絶縁層と前記導電層とを覆う第2絶縁層と、を形成するステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴吐出装置を利用した多層構造形成方法に関し、特に配線基板の製造および電子機器の製造などに好適な多層構造形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷法によるアディティブプロセス(Additive Process)を用いて配線基板または回路基板を製造する方法が注目されている。薄膜の塗布プロセスとフォトリソグラフィープロセスとを繰り返して、配線基板または回路基板を製造する方法に比べて、アディティブプロセスのコストは低いからである。
【0003】
このようなアディティブプロセスに利用される技術の一つとして、インクジェット法による導電性パターンの形成技術が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−6578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット法で複数の樹脂層を積層する場合には、下地層と下地層を覆う層との間の界面に、応力が残ることがある。このため、外部からの衝撃や熱などが加わった際に、界面に亀裂が生じることがある。
【0005】
また、ビアホールを備えた絶縁層をインクジェット法で設ける場合には、ビアホールを縁取る第1の絶縁パターンとその第1の絶縁パターンを囲む第2の絶縁パターンとを、別々に形成することが多い。具体的には、ビアホールの形状が縁取られるように、第1の絶縁パターンを形成し、そしてその後に、第1の絶縁パターンを囲むように第2の絶縁パターンを形成する。そうすればビアホールの外形がより明瞭になるとともに、広範囲に亘る絶縁層を形成できるからである。ところが、このような方法では、絶縁パターンを硬化する際の硬化収縮に伴って、これら別々に形成される絶縁パターン同士の界面に、応力が残ることがある。このため、外部からの衝撃または熱などが加わった際に、界面に亀裂が生じることがある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、インクジェット法を用いて、構造的に安定な多層構造を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多層構造形成方法は、基板上に第1光硬化性材料を含んだ第1絶縁材料層を形成するステップ(A)と、前記第1絶縁材料層に、第1波長の光を照射して、前記第1絶縁材料層を半硬化させるステップ(B)と、前記半硬化した第1絶縁材料層へ液滴吐出装置のノズルから導電性材料の液滴を吐出して、前記半硬化した第1絶縁材料層上に導電性材料層を形成するステップ(C)と、前記半硬化した第1絶縁材料層と前記導電材料層とを覆うように、第2光硬化性材料を含んだ第2絶縁材料層を形成するステップ(D)と、前記第1絶縁材料層と、前記導電性材料層と、前記第2絶縁材料層とを一度に加熱して、第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に位置する導電層と、前記第1絶縁層と前記導電層とを覆う第2絶縁層と、を形成するステップ(E)と、を含んでいる。
【0008】
上記構成によれば、第1絶縁材料層と第2絶縁材料層とが同時に加熱される。このため、第1絶縁材料層と第2絶縁材料層とが同時に硬化するので、得られる第1絶縁層と第2絶縁層との間に応力が残らない。
【0009】
好ましくは、上記多層構造形成方法が、前記ステップ(D)とステップ(E)との間で前記第2絶縁材料層に第2波長の光を照射して、前記第2絶縁材料層を半硬化させるステップ(F)をさらに含んでいる。
【0010】
上記構成によって得られる効果の一つは、第2絶縁材料層の熱硬化を開始するまでに時間がかかっても、第2絶縁材料層の形状が崩れにくいことである。光の照射によって、第2絶縁材料層における光硬化性材料が重合するため、第2絶縁材料層の流動性を低下させることができるからである。
【0011】
本発明は種々の形態で実現することが可能である。例えば、配線基板の製造方法や、電子機器の製造方法として、本発明を実現することができる。
本発明の多層構造形成方法は、基板上に第1光硬化性材料を含んだ第1絶縁材料層を形成するステップ(A)と、前記第1絶縁材料層に第1波長の光を照射して、前記第1絶縁材料層を半硬化させるステップ(B)と、前記半硬化した第1絶縁材料層を覆うように、第2光硬化性材料を含んだ第2絶縁材料層を形成するステップ(C)と、前記第1絶縁材料層と、前記第2絶縁材料層とを一度に加熱して、第1絶縁層と、前記第1絶縁層を覆う第2絶縁層と、を形成するステップ(D)と、を含んでいる。
【0012】
上記構成によれば、第1絶縁材料層と第2絶縁材料層とが同時に加熱される。このため、第1絶縁材料層と第2絶縁材料層とが同時に硬化するので、得られる第1絶縁層と第2絶縁層との間に応力が残らない。
【0013】
本発明の多層構造形成方法では、液滴吐出装置が用いられる。この多層構造形成方法は、第1光硬化性材料を含む第1絶縁材料の液滴を吐出して、配線パターン上でビアホールを縁取る第1絶縁材料パターンを形成するステップ(A)と、前記第1絶縁材料パターンに第1波長の光を照射して、前記第1絶縁材料パターンを半硬化するステップ(B)と、第2光硬化性材料を含む第2絶縁材料の液滴を吐出して、半硬化された前記第1絶縁材料パターンに接する第2絶縁材料パターンを形成するステップ(C)と、半硬化された前記第1絶縁材料パターンと前記第2絶縁材料パターンとを、一度に加熱して硬化するステップ(D)と、を含んでいる。
【0014】
上記構成によって得られる効果の一つは、第1絶縁材料パターンと第2絶縁材料パターンとが加熱されて硬化された後で、これらパターンの間の境界に応力が残らないことである。
【0015】
好ましくは、上記多層構造形成方法が、前記ステップ(C)とステップ(D)との間で前記第2絶縁材料パターンに第2波長の光を照射して、前記第2絶縁材料パターンを半硬化するステップ(E)をさらに含んでいる。
【0016】
上記構成によって得られる効果の一つは、第2絶縁材料パターンの熱硬化を開始するまでに時間がかかっても、第2絶縁材料パターンの形状が崩れにくいことである。光の照射によって、第2絶縁材料パターンにおける光硬化性材料が重合するため、第2絶縁材料層の流動性を低下させることができるからである。
【0017】
本発明のある態様では、前記配線パターンは基板上に形成された金(Au)の配線パターンである。
上記構成によって得られる効果の一つは、液滴吐出装置を用いて、金(Au)の配線パターン上にビアホールを設けることができることである。
【0018】
本発明のある態様では、上記多層構造形成方法は、導電性材料の液滴を吐出して、物体表面上に前記導電性材料のパターンを形成するステップ(F)と、前記導電性材料のパターンを活性化して、前記配線パターンを形成するステップ(G)と、をさらに含んでいる。
【0019】
上記構成によって得られる効果の一つは、液滴吐出装置を用いて、配線パターンを形成できることである。
本発明の他の態様によれば、前記ステップ(F)は銀(Ag)を含む液滴を吐出するステップである。そして、前記配線パターンは銀の配線パターンである。
【0020】
上記構成によって得られる効果の一つは、液滴吐出装置を用いた配線パターンの形成が容易になることである。
なお、本発明は種々の態様で実現することができる。具体的には、配線基板の製造方法または電子機器の製造方法として実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施形態1)
(A.液滴吐出装置の全体構成)
図1に示す液滴吐出装置1は、本実施形態の多層構造形成方法において用いられる装置である。ただし、本実施形態の多層構造形成方法では、液滴吐出装置1に加えて、液滴吐出装置2,3も用いられる。さらに、後述の実施形態2,3の多層構造形成方法では、液滴吐出装置1に加えて、液滴吐出装置2,3,4,5,6も用いられる。
【0022】
実施形態1〜3を通じて、これら6つの液滴吐出装置1〜6は、絶縁材料7A(図1)、導電性材料8A、絶縁材料9A、絶縁材料11A、導電性材料15A、絶縁材料17Aをそれぞれ吐出するために用いられる。なお、後述するように、これら絶縁材料7A、導電性材料8A、絶縁材料9A、絶縁材料11A、導電性材料15A、絶縁材料17Aは、いずれも「液状の材料」の一種である。
【0023】
液滴吐出装置2〜6のそれぞれの構造および機能は、液滴吐出装置1の構造および機能と基本的に同じである。このため、液滴吐出装置1の構造および機能についての以下の説明が、液滴吐出装置2〜6のそれぞれにも適用される。
【0024】
図1に戻って、液滴吐出装置1は、基本的にはインクジェット装置である。具体的には、液滴吐出装置1は、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、光照射装置140と、支持部104aと、を備えている。
【0025】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図2)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状の材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状の材料111が供給される。
【0026】
ステージ106は基板10Aを固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いて基板10Aの位置を固定する機能も有する。ここで、基板10Aはポリイミドからなるフレキシブル基板であり、その形状はテープ状である。そして、基板10Aの両端は、図示しない一対のリールに固定されている。
【0027】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定
の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0028】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0029】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータまたはサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。なお、本明細書では、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108を、「ロボット」または「走査部」とも表記する。
【0030】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、基板10Aはステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、基板10Aに対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図2)は、基板10Aに対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0031】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。なお、吐出データとは、基板10A上に、液状の材料111を所定パターンで付与するためのデータである。本実施形態では、吐出データはビットマップデータの形態を有している。
【0032】
上記構成を有する液滴吐出装置1は、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118(図2)を基板10Aに対して相対移動させるとともに、被吐出部に向けてノズル118から液状の材料111を吐出する。なお、液滴吐出装置1によるヘッド114の相対移動と、ヘッド114からの液状の材料111の吐出と、をまとめて「塗布走査」または「吐出走査」と表記することもある。
【0033】
本明細書では、液状の材料111の液滴が着弾する部分を「被吐出部」とも表記する。
そして、着弾した液滴が濡れ広がる部分を「被塗布部」とも表記する。「被吐出部」および「被塗布部」のどちらも、液状の材料が所望の接触角を呈するように、下地の物体に表面改質処理が施されることによって形成された部分でもある。ただし、表面改質処理を行わなくても下地の物体の表面が、液状の材料に対して所望の撥液性または親液性を呈する(つまり着弾した液状の材料が下地の物体の表面上で望ましい接触角を呈する)場合には、下地の物体の表面そのものが「被吐出部」または「被塗布部」であってもよい。なお、本明細書では、「被吐出部」を「ターゲット」または「受容部」とも表記する。
【0034】
さて、図1に戻って、光照射装置140は、基板10Aに付与された液状の材料111に紫外光を照射する装置である。光照射装置140の紫外光の照射のON・OFFも制御部112によって制御される。
【0035】
なお、インクジェット法で層、膜、またはパターンを形成するとは、液滴吐出装置1のような装置を用いて、所定の物体上に、層、膜、またはパターンを形成することである。
(B.ヘッド)
図2(a)および(b)に示すように、液滴吐出装置1におけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、液たまり129と、複数の隔壁122と、複数の振動子124と、複数のノズル118のそれぞれの開口を規定するノズルプレート128と、供給口130と、孔131と、を備えている。液たまり129は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の材料111が常に充填される。
【0036】
また、複数の隔壁122は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の材料111が供給される。なお、本実施形態では、ノズル118の直径は、約27μmある。
【0037】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A、124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状の材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0038】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0039】
(C.制御部)
次に、制御部112の構成を説明する。図3に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、光源駆動部205と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と、記憶装置202と、光源駆動部205と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とは、図示しないバスによって相互に通信可能に接続されている。
【0040】
光源駆動部205は、光照射装置140と通信可能に接続されている。さらに、走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0041】
入力バッファメモリ200は、液滴吐出装置1の外部に位置する外部情報処理装置(不
図示)から、液状の材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図3では、記憶装置202はRAMである。
【0042】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第1位置制御装置104および第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から、液状の材料111の液滴Dが吐出される。
【0043】
また、処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、光照射装置140をON状態およびOFF状態のどちらかの状態にする。具体的には、光源駆動部205が光照射装置140の状態を設定できるように、処理部204は、ON状態またはOFF状態を示すそれぞれの信号を光源駆動部205へ供給する。
【0044】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、バスを含んだコンピュータである。したがって、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0045】
(D.液状の材料)
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴Dとして吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。ここで、液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上である場合には、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111で汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下である場合は、ノズル118における目詰まり頻度が小さく、このため円滑な液滴Dの吐出を実現できる。
【0046】
後述する導電性材料8A、15A(図4(d)、図9(d))は、上述の液状の材料111の一種である。本実施形態の導電性材料8A、15Aは、平均粒径が10nm程度の銀粒子と、分散媒と、を含む。そして導電性材料8A、15Aにおいて、銀粒子は分散媒中に安定して分散されている。なお、銀粒子はコーティング剤で被覆されていてもよい。ここで、コーティング剤は、銀原子に配位可能な化合物である。
【0047】
分散媒(または溶媒)としては、銀粒子などの導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、導電性微粒子の分散性と分散
液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0048】
なお、平均粒径が1nm程度から数100nmまでの粒子は、「ナノ粒子」とも表記される。この表記によれば、導電性材料8A、15Aは銀のナノ粒子を含んでいる。
さらに、後述する絶縁材料7A、9A、11A、17A(図1,図4(a),図5(a),図9(a))も、それぞれ液状の材料111である。そして、絶縁材料7A、9A、11A、17Aは、いずれもアクリル系の感光性樹脂を含んでいる。そして、本実施形態では、アクリル系の感光性樹脂が、本発明の「第1光硬化性材料」および「第2光硬化性材料」に対応する。このように、本実施形態では「第1光硬化性材料」および「第2光硬化性材料」は、互いに同じである。
【0049】
一般的には、本発明の「光硬化性材料」は、溶剤と、溶剤に溶解した樹脂と、を含有してよい。ここで、この場合の「光硬化性材料」は、それ自体が感光して重合度を上げる樹脂を含有してもよいし、あるいは、樹脂と、その樹脂の硬化を開始させる光重合開始剤と、を含有していてもよい。
【0050】
もちろん、このような形態に代えて、本発明の「光硬化性材料」は、光重合して不溶の絶縁樹脂を生じるモノマーと、そのモノマーの光重合を開始させる光重合開始剤と、を含有してもよい。ただしこの場合の「光硬化性材料」は、モノマー自体が光官能基を有していれば、光重合開始剤を含有しなくてもよい。
【0051】
以下では、本実施形態の多層構造形成方法を利用した配線基板の製造方法を説明する。
(E.製造方法)
まず、基板10Aの1つの表面SをUV洗浄する。UV洗浄によって、表面Sが洗浄されるだけでなく、後述する液状の絶縁材料7Aに対して表面Sが適切な親液性を呈するようになる。このため、本実施形態では、UV洗浄後の表面Sが、上述の被吐出部および被塗布部になる。
【0052】
次に、図4(a)に示すように、液滴吐出装置1を用いて、表面Sの全面に絶縁材料層7Bを形成する。具体的には、まず、基板10Aを液滴吐出装置1のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置1は、表面Sに対するノズル118の相対位置を2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、液滴吐出装置1は、表面Sに向けて液状の絶縁材料7Aの液滴Dを所定の周期でノズル118から吐出する。そうすると、表面Sの全域に亘って所定ピッチで複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、表面Sを覆う絶縁材料層7Bが得られる。なお、吐出される絶縁材料7Aの液滴Dの体積と数とは、後述する加熱工程後に得られる絶縁層7の厚さが約10μmなるように、設定されている。
【0053】
なお、絶縁材料層7Bは、テープ形状を有する基板10Aの全面を覆う必要はなく、後述する導電層8のパターン(図5(d))の下地となるのに十分な範囲を覆えばよい。
ここで、液滴吐出装置1のヘッド114におけるノズル118は「第1ノズル」とも表記される。
【0054】
また、本実施形態では、基板10Aと、基板10A上に設けられた一つ以上の層と、をまとめて「基体10B」とも表記する。
絶縁材料層7Bを形成した後で、図4(b)および(c)に示すように、得られた絶縁材料層7Bを半硬化して、絶縁材料層7B'を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域の波長を有する光を、約4秒間、絶縁材料層7Bに照射して、半硬化状態にあ
る絶縁材料層7B'を得る。本実施形態では、絶縁材料層7Bに照射する光の波長は365nmである。なお、絶縁材料層7Bに照射する光の波長が、本発明の「第1波長」に対応する。
【0055】
ここで、「絶縁材料層」または「絶縁材料」が半硬化するとは、「絶縁材料層」または「絶縁材料」に含まれる光硬化性材料の状態が、吐出時の状態と、完全な硬化状態と、の間の状態になることを意味する。本実施形態では、このような中間の状態が上述の「半硬化状態」である。なお、吐出時の状態とは、光硬化性材料がノズル118から吐出されうる粘性を有している状態である。
【0056】
次に、図4(d)に示すように、液滴吐出装置2を用いて、半硬化状態にある絶縁材料層7B'上に導電性材料層8Bのパターンを形成する。具体的には、まず、基板10Aを液滴吐出装置2のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置2は、絶縁材料層7B'の表面に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置2は、導電性材料層8Bのパターンに対応する位置にノズル118が達する毎に、絶縁材料層7B'の表面に向けて液状の導電性材料8Aの液滴Dをノズル118から吐出する。そうすると、導電層8(図5(d))のパターンが形成されるべき位置に複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、絶縁材料層7B'上に導電性材料層8Bのパターンが形成される。なお、吐出される導電性材料8Aの液滴Dの体積と数とは、後述する加熱工程後に得られる導電層8の厚さが約4μmなるように、設定されている。
【0057】
ここで、液滴吐出装置2のヘッド114におけるノズル118は「第2ノズル」とも表記される。
なお、本実施形態では、図5(a)に示すように、導電性材料層8Bのパターンは、互いに平行な2つのストライプ部を含む。2つのストライプ部のそれぞれは、絶縁層7(図5(d))の一部分上に位置している。また、2つのストライプ部のそれぞれの幅は約50μmあり、その長手方向は図5(a)の紙面に垂直な方向に延びている。
【0058】
次に、図5(a)に示すように、液滴吐出装置3を用いて、絶縁材料層7B'と導電性材料層8Bと、を覆う絶縁材料層9LBを形成する。具体的には、基板10Aを液滴吐出装置3のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置3は、絶縁材料層7B'と導電性材料層8Bとに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置3は、絶縁材料層7B'と導電性材料層8Bとに向けて、液状の絶縁材料9Aの液滴Dを所定の周期でノズル118から吐出する。そうすると、絶縁材料層7B'と導電性材料層8Bとの全域に亘って所定ピッチで複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、絶縁材料層7B'と導電性材料層8Bとを覆う絶縁材料層9LBが得られる。なお、吐出される絶縁材料9Aの液滴Dの体積と数とは、後述する加熱工程後に得られる絶縁層9Lの厚さが約10μmなるように、設定されている。
【0059】
ここで、液滴吐出装置3のヘッド114におけるノズル118は「第3ノズル」とも表記される。
絶縁材料層9LBを形成した後で、図5(b)に示すように、得られた絶縁材料層9LBを半硬化して、絶縁材料層9LB'を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域の波長を有する光を、約4秒間、絶縁材料層9LBに照射して、半硬化状態にある絶縁材料層9LB'を得る。本実施形態では、絶縁材料層9LBに照射する光の波長は365nmである。ここで、絶縁材料層9LBに照射する光の波長が、本発明の「第2波長」に対応する。このように本実施形態では、上述の「第1波長」と「第2波長」とは同じである。ただし、絶縁材料層7Bに含まれる光硬化性材料と、絶縁材料層9LBに含まれる
光硬化性材料とが互いに異なる場合には、「第1波長」と「第2波長」とは互いに異なり得る。
【0060】
半硬化状態にある絶縁材料層9LB'を得た後で、図5(c)に示すように、基体10Bを加熱し、熱量Qを与える。本実施形態では、クリーンオーブンを用いて、150度の温度で約60分間、基体10Bを加熱する。この加熱によって、絶縁材料層7B'および絶縁材料層9LB'における樹脂の重合反応がさらに進むので、それぞれの層における樹脂が硬化する。この結果、絶縁材料層7B'と絶縁材料層9LB'とがそれぞれ絶縁層7と絶縁層9Lとになる。
【0061】
さらに、絶縁層7と絶縁層9Lとの形成と同時に、導電性材料層8Bにおける銀粒子が燒結または融着するので、導電性材料層8Bから導電層8が得られる。
以上の工程によって、図5(d)に示すように、基板10Aを覆う絶縁層7と、絶縁層7上に位置する導電層8のパターンと、絶縁層7と導電層8のパターンとを覆う絶縁層9Lと、からなる多層構造が得られる。本実施形態では、絶縁層7および絶縁層9Lはアクリル樹脂であり、導電層8は銀配線である。なお、導電層8が設けられた基板10Aを「配線基板10」と表記する。
【0062】
本実施形態によれば、絶縁材料層7B'と、導電性材料層8Bと、絶縁材料層9LB'と、を一度に加熱する。このため、絶縁材料層7B'を構成する樹脂と、絶縁材料層9LB'を構成する樹脂とが、重合反応によって同時に収縮するので、最終的に得られる絶縁層7と絶縁層9Lとの間の界面に、応力が残らない。このため、外部からの衝撃や熱に対して安定な多層構造が基板10A上に得られる。
【0063】
(実施形態2)
実施形態2の多層構造形成方法を利用した配線基板の製造方法を説明する。以下では、実施形態1において説明された構成と同じ構成には実施形態1と同じ参照符号が付されている。
【0064】
(F.製造方法)
まず、基板10Aの1つの表面SをUV洗浄する。UV洗浄によって、表面Sが洗浄されるだけでなく、後述する液状の絶縁材料7Aに対して表面Sが適切な親液性を呈するようになる。このため、本実施形態では、UV洗浄後の表面Sが、上述の被吐出部および被塗布部になる。
【0065】
次に、図6(a)に示すように、液滴吐出装置1を用いて、表面Sの全面に絶縁材料層7Bを形成する。具体的には、まず、基板10Aを液滴吐出装置1のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置1は、表面Sに対するノズル118の相対位置を2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、液滴吐出装置1は、第1吐出データに応じて、表面Sに向けて液状の絶縁材料7Aの液滴Dを所定の周期でノズル118から吐出する。そうすると、表面Sの全域に亘って所定ピッチで複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、表面Sを覆う絶縁材料層7Bが得られる。なお、吐出される絶縁材料7Aの液滴Dの体積と数とは、後述する硬化工程後に得られる絶縁層7(図6(c))の厚さが約10μmなるように、設定されている。
【0066】
なお、図6は基板10AのYZ断面を示している。YZ断面とは、上述のY軸方向およびZ軸方向の双方に平行な平面である。また、本実施形態では、基板10Aと基板10A上の一つ以上の層とをまとめて「基体10B」とも表記する。
【0067】
次に、図6(b)および(c)に示すように、得られた絶縁材料層7Bを硬化して、絶縁層7を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域に属する第1波長を有する光を約60秒間、絶縁材料層7Bに照射して、絶縁層7を得る。本実施形態では、絶縁材料層7Bに照射する光の波長は365nmである。
【0068】
このように、後述する導電性材料層8Bのパターン(図6(d))を形成する前に、その下地となる絶縁材料層7Bを硬化するので、導電性材料層8Bのパターンにおいて断線が生じない。
【0069】
次に、図6(d)に示すように、液滴吐出装置2を用いて、絶縁層7上に導電性材料層8Bのパターンを形成する。具体的には、まず、基板10Aを液滴吐出装置2のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置2は、絶縁層7の表面に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置2は、第2吐出データに応じて、導電性材料層8Bのパターンに対応する位置にノズル118が達する毎に、絶縁層7の表面に向けて液状の導電性材料8Aの液滴Dをノズル118から吐出する。そうすると、絶縁層7上に複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、絶縁層7上に導電性材料層8Bのパターンが形成される。なお、吐出される導電性材料8Aの液滴Dの体積と数とは、後述する加熱工程後に得られる導電層8(図7(b))の厚さが約4μmなるように、設定されている。
【0070】
ここで、絶縁層7の表面が本発明の「物体表面」の一例である。
次に、図7(a)に示すように導電性材料層8Bのパターンを活性化して、図7(b)に示す導電層8のパターンを形成する。具体的には、クリーンヒータを用いて、150℃の温度で30分間、導電性材料層8Bのパターンを焼成(加熱)する。そうすると、導電性材料層8Bにおける銀粒子が燒結または融着して、導電層8のパターンが得られる。本実施形態では、導電層8のパターンを、「配線パターン25(または導電パターン)」とも表記する。なお、図7(a)および(b)は基体10BのYZ断面を示している。YZ断面とは、上述のY軸方向とZ軸方向との双方に平行な平面である。
【0071】
このように本実施形態では、絶縁層7と配線パターン25とを覆う絶縁パターン11(後述)を設ける前に、予め導電性材料層8Bを焼成して導電層8を形成しておく。そうすると、絶縁パターン11の硬化収縮に起因する応力によって導電層8が変形する可能性がより低くなる。絶縁層7と導電層8との間の密着力が、絶縁層7と導電性材料層8B(活性化される前の導電層8)との間の密着力よりも強いからである。
【0072】
また、配線パターン25は、アクリル樹脂からなる絶縁層7上に位置する。アクリル樹脂からなる絶縁層7は、ポリイミドからなる基板10Aと、銀からなる配線パターン25とを密着させる機能を果たすので、本実施形態の配線パターン25は剥がれにくい。
【0073】
配線パターン25は、図7(c)に示すように、配線25Aと、配線25Bと、配線25Cと、を含む。配線25A、25B、25Cのいずれも、ストライプ状の形状を有している。これら配線25A、25B、25Cのそれぞれの幅は約50μmある。より具体的には、これら配線25A、25B、25Cのそれぞれは、いわゆる「べた膜」である絶縁層7の一部分上に位置している。すなわち、これら配線25A、25B、25Cはいずれも、ほぼ同一のレベルにある表面L1上に位置している。ただし、これら配線25A、25B、25Cのうちのどの2つの配線も、表面L1上では互いから物理的に分離されている。なお、後述の工程によって、配線25Aと配線25Bとは、互いに電気的に接続されるべき配線である。一方、配線25Cは、配線25Aと配線25Bとのどちらからも電気的に絶縁されるべき配線である。なお、図7(c)は、基体10BのXY平面を示している。XY平面とは、上述のX軸方向とY軸方向との双方に平行な平面である。
【0074】
本実施形態では、配線25A上にポスト形成領域18Aが設定されており、配線25B上にポスト形成領域18Bが設定されている。ポスト形成領域18A、18Bとは、後に導電ポストが設けられる位置である。なお、ポスト形成領域18Aを囲むように、下地領域19Aが位置し、ポスト形成領域18Bを囲むように下地領域19Bが位置している。
【0075】
次に、図8(a)に示すように、液滴吐出装置3を用いて、下地領域19A、19B上に絶縁材料パターン9Bを設ける。
具体的には、基板10Aを液滴吐出装置3のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置3は、基体10Bの表面に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置3は、第3吐出データに応じて、下地領域19A、19Bに対応する位置にノズル118が達する毎に、下地領域19A、19Bに向けて液状の絶縁材料9Aの液滴Dをノズル118から吐出する。そうすると、下地領域19A、19B上に複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、下地領域19A、19B上に絶縁材料パターン9Bが形成される。
【0076】
ここで、下地領域19A、19Bは、銀からなる配線パターン25上の表面であり、このため下地領域19A、19Bは絶縁材料9Aに対して撥液性を呈する。このため、下地領域19A、19Bに着弾した絶縁材料9Aの液滴Dが濡れ広がりの度合いは小さい。このため、下地領域19A、19Bは、インクジェット法でビアホールを形取るのに適している。
【0077】
次に、図8(b)および(c)に示すように、得られた絶縁材料パターン9Bを半硬化して、絶縁材料パターン9B'を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域の波長を有する光を、約4秒間、絶縁材料パターン9Bに照射して、半硬化状態にある絶縁材料パターン9B'を得る。本実施形態では、絶縁材料パターン9Bに照射する光の波長は365nmである。そして、2つの絶縁材料パターン9B'の内側が、それぞれビアホール40A、40Bとなる。つまり2つの絶縁材料パターン9B'のそれぞれは、ビアホール40A、40Bをそれぞれ縁取っている。なお、絶縁材料パターン9Bに照射する光の波長が本発明の「第1波長」に対応する。
【0078】
ここで、「絶縁材料パターン」または「絶縁材料」が半硬化するとは、「絶縁材料パターン」または「絶縁材料」に含まれる光硬化性材料の状態が、吐出時の状態と、光照射による実質的な硬化状態と、の間の状態になることを意味する。本実施形態では、このような中間の状態が上述の「半硬化状態」である。なお、吐出時の状態とは、光硬化性材料がノズル118から吐出されうる粘性を有している状態である。
【0079】
次に図8(d)に示すように、下地領域20を親液化する。ここで、下地領域20とは、下地領域19A、19Bに接するとともに、下地領域19A、19Bを囲んでいる領域である。あるいは、下地領域20は、下地領域19A、19Bでもポスト形成領域18A、18Bでもない表面でもある。本実施形態では、下地領域20は、配線パターン25の表面の一部と、絶縁層7の表面の一部とからなる。
【0080】
下地領域20を親液化する場合、具体的には、上述の第1波長は異なる第2波長の光を約60秒、下地領域20の表面に均一に照射する。そうすると、下地領域20の一部である絶縁層7の表面は、後述する液状の絶縁材料11A(図9(a))に対して親液性を呈するようになる。なお、本実施形態では、第2波長は172nmである。
【0081】
なお、親液性の程度を表す指標の一つは、「接触角」である。本実施形態では、親液化された絶縁層7の表面に絶縁材料11Aの液滴Dが接触した場合、液滴Dと絶縁層7の表
面とがなす接触角は、20度以下である。
【0082】
絶縁層7の表面を親液化する理由は次の通りである。絶縁層7を得るための硬化工程、または配線パターン25を得るための焼成(加熱)工程を経ると、絶縁層7の表面は、液状の絶縁材料11Aに対して撥液性を呈するようになる。ここで、物体表面が撥液性を呈する場合には、広い面積に亘って均一な層を形成することが困難になる。これに対して、本実施形態では、焼成工程の後で絶縁層7の表面が親液化されるので、絶縁材料11Aの液滴が濡れ広がる程度(親液性の程度)が、絶縁層7の表面に亘って再び大きくなる。このため、絶縁層7上に亘って、表面が平坦な絶縁パターン11を形成できる。
【0083】
次に、液滴吐出装置4を用いて、下地領域20上に絶縁材料パターン11Bを形成する。具体的には、図9(a)に示すように、まず、基板10Aを液滴吐出装置4のステージ106上に位置決めする。そうすると、液滴吐出装置4は、下地領域20に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置4は、第4吐出データに応じて、絶縁材料パターン11Bに対応する位置にノズル118が達する毎に、絶縁層7の表面または配線パターン25の表面へ液状の絶縁材料11Aの液滴Dをノズル118から吐出する。そうすると、下地領域20上に複数の液滴Dが着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の液滴Dが濡れ広がると、絶縁層7上および配線パターン25上に絶縁材料パターン11Bが形成される。つまり、絶縁材料パターン9B'を囲む絶縁材料パターン11Bが得られる。
【0084】
上述したように、絶縁層7の表面は、先の親液化工程によって、液状の絶縁材料11Aに対して親液性を呈する。このため、絶縁層7の表面に着弾した絶縁材料11Aの液滴Dは、これらの表面上で均一に濡れ広がることができる。なお、絶縁層7と絶縁層7上に位置する配線パターン25とが形成する段差(高さ約4μm)を、絶縁材料パターン11Bが吸収できるように、吐出される液滴Dの体積と数とは、第4吐出データにおいて設定されている。このため、後述する硬化工程後に得られる絶縁パターン11の表面は、絶縁パターン11に亘って平坦になる。
【0085】
次に、図9(b)および(c)に示すように、得られた絶縁材料パターン11Bを半硬化して、絶縁材料パターン11B'を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域の波長を有する光を、約4秒間、絶縁材料パターン11Bに照射して、半硬化状態にある絶縁材料パターン11B'を得る。本実施形態では、絶縁材料パターン11Bに照射する光の波長は365nmである。ここで、絶縁材料パターン11Bに照射する光の波長が本発明の「第3波長」に対応する。このように本実施形態では、上述の「第1波長」と「第3波長」とは互いに同じである。ただし、絶縁材料パターン9Bに含まれる光硬化性材料と、絶縁材料パターン11Bに含まれる光硬化性材料とが互いに異なる場合には、「第1波長」と「第3波長」とは互いに異なり得る。なお、絶縁材料パターン11Bを半硬化する工程は省略されてもよい。
【0086】
半硬化状態にある絶縁材料パターン11B'を得た後で、図9(c)に示すように、基体10Bを加熱し、熱量Q'を与える。本実施形態では、クリーンオーブンを用いて、150度の温度で約60分間、基体10Bを加熱する。この加熱によって、絶縁材料パターン9B'、11B'における樹脂の重合反応がさらに進むので、それぞれの絶縁材料パターンにおける樹脂がほぼ完全に硬化する。この結果、絶縁材料パターン9B'と絶縁材料パターン11B'とが、それぞれ絶縁パターン9と絶縁パターン11とになる。
【0087】
上述したように、下地領域19A、19Bと下地領域20とが接しているので、絶縁パターン11も絶縁パターン9に接している。また、絶縁パターン11の厚さは、絶縁層7上で約10μmあり、配線パターン25上で約6μmある。なお、絶縁パターン9の表面
と絶縁パターン11の表面とは、同じレベルの表面L3を構成するように、液滴吐出装置4による液滴Dの吐出走査が設定されている。
【0088】
以上説明したように、本実施形態では、絶縁材料パターン9B'と、絶縁材料パターン11B'と、を一度に加熱する。つまり2つの絶縁材料パターンを一度に熱重合させる。このため、絶縁材料パターン9B'を構成する樹脂と、絶縁材料パターン11B'を構成する樹脂とが、重合反応によって同時に収縮するので、最終的に得られる絶縁パターン9と絶縁パターン11との間の界面に、応力が残らない。このため、外部からの衝撃と熱とに対して安定な多層構造が基板10A上に得られる。
【0089】
絶縁パターン11を形成した後で、図9(d)に示すように、液滴吐出装置5を用いて、絶縁パターン9に縁取られたビアホール40A、40Bを導電性材料15Aで満たす。
具体的には、まず、液滴吐出装置5は、基体10Bに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、ビアホール40A、40Bに対応する位置にノズル118が達した場合に、液滴吐出装置5はノズル118から導電性材料15Aの液滴Dを吐出する。吐出された導電性材料15Aの液滴Dは、ビアホール40A、40Bによって露出した導電層8のパターン(配線パターン25)に着弾する。そしてビアホール40A、40B内を満たすのに充分な数の液滴Dがビアホール40A、40B内に着弾することによって、図9(d)に示すように、ビアホール40A、40Bが導電性材料15Aで満たされる。
【0090】
次に、再度、液滴吐出装置5を用いて導電性材料15Aの液滴Dを吐出して、2つのビアホール40A、40Bを結ぶ導電性材料パターン15Bを、絶縁パターン9,11上に形成する。
【0091】
そして、ビアホール40A、40B内の導電性材料15Aと、導電性材料パターン15Bとを活性化する。本実施形態では、図10(a)に示すように、熱量Qを与えて加熱して、導電性材料15Aにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。具体的には、クリーンオーブンを用いて、150度で30分間、基体10Bを加熱する。このような活性化の結果、図10(b)に示すように、2つのビアホール40A、40Bのそれぞれの内に位置する導電ポスト41A、41Bと、導電ポスト41A、41Bに連結された配線パターン15とが得られる。
【0092】
導電ポスト41A、41Bと配線パターン15とによって、配線パターン25の一部である配線25Aと配線25Cとは、互いに電気的に連結される。一方、配線パターン25の一部である配線25Bは、配線25Aに対しても配線25Cに対しても電気的絶縁が保たれる。
【0093】
次に、図示はしていないが、絶縁パターン9,11の表面と配線パターン15の表面とを親液化する。具体的には、上述の第2波長の光を約60秒間、基体10Bの表面に均一に照射する。そうすると、絶縁パターン9,11の表面と、配線パターン15の表面とは、液状の絶縁材料17A(図1)に対して親液性を呈するようになる。上述したように、第2波長は172nmである。
【0094】
その後、液滴吐出装置6による液状の絶縁材料17Aの吐出工程(不図示)によって、絶縁パターン9,11と、配線パターン15とを覆う絶縁材料層17Bを形成する。
そして、絶縁材料層17Bを硬化して、絶縁層17を形成する。具体的には、光照射装置140から紫外域に属する第1波長を有する光を約60秒間、絶縁材料層17Bに照射して、絶縁層17を得る。本実施形態では、第1波長は365nmである。絶縁層17は、いわゆるべた膜である。
【0095】
その後、クリーンオーブンで基体10Bを加熱して、絶縁層17におけるポリマーの重合反応を完全に進行させる。以上の工程を経て、基体10Bから、図10(c)に示す配線基板10が得られる。
【0096】
(G.実装工程)
次に、図11に示すように、配線基板10に、液晶パネル32と半導体素子26とを実装する。具体的には、配線基板10の一部に、導電層8のパターンが、絶縁パターン9,11にも絶縁層17にも覆われていない部分を形成する。そして、露出した導電層8のパターンに、液晶パネルの対応するパッド、または半導体素子26の対応するパッドを適切に接合する。このようにして、液晶表示装置34が得られる。このように、本実施形態の製造方法は、液晶表示装置34の製造に適用できる。なお、本実施形態では、半導体素子26は液晶ドライバ回路である。
【0097】
さらに、本実施形態の製造方法は、液晶表示装置の製造だけでなく、種々の電気光学装置の製造にも適用される。ここでいう「電気光学装置」とは、複屈折性の変化、旋光性の変化、または光散乱性の変化などの光学的特性の変化(いわゆる電気光学効果)を利用する装置に限定されず、信号電圧の印加に応じて光を射出、発光、透過、または反射する装置全般を意味する。
【0098】
具体的には、電気光学装置とは、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、表面伝導型電子放出素子を用いたディスプレイ(SED:Surface−Conduction Electron−Emitter Display)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などを含む用語である。
【0099】
さらに、本実施形態の多層構造形成方法は、種々の電子機器の製造方法に適用され得る。例えば、本実施形態の製造方法は、図12に示すような、電気光学装置520を備えた携帯電話機500の製造方法にも適用されるし、図13に示すような、電気光学装置620を備えたパーソナルコンピュータ600の製造方法にも適用される。
【0100】
なお、上述した電気光学装置または電子機器において用いられる配線基板10は、本実施形態の配線基板10に代えて、実施形態1の配線基板10、または後述する実施形態3の配線基板10であってもよい。
【0101】
(実施形態3)
本実施形態の多層構造形成方法は、絶縁パターン11の形成方法を除いて、実施形態2の多層構造形成方法と基本的に同じである。このため、実施形態2における工程または構成と同様なものについては、重複を避ける目的で説明を省略する。
【0102】
まず、実施形態2で説明したように、配線パターン25上の下地領域19A、19Bに、半硬化状態にある絶縁材料パターン9B'を設ける(図8(a)〜(c))。その後、下地領域20へ光照射を行って、絶縁層7の表面を親液化する(図8(d))。そして、絶縁パターンを形成するための吐出工程が、常に平坦な表面に対して行われるように、以下の工程を行う。
【0103】
図14(a)に示すように、吐出工程と半硬化工程によって、絶縁層7上の部分であって配線パターン25がない部分に、半硬化状態の絶縁材料パターン51B'を設ける。絶縁材料パターン51B'の厚さは、配線パターン25の厚さと同じに設定されているので、配線パターン25によって生じた段差がなくなる。すなわち、配線パターン25と、絶
縁材料パターン51B'とは、ほぼ同じレベルの表面L2を形成する。
【0104】
そして、吐出工程と半硬化工程とによって、表面L2のうち、絶縁材料パターン9B'もビアホール40A、40Bもない分部に、半硬化状態の絶縁材料パターン52B'を設ける。このことで、図14(b)に示すように、絶縁材料パターン9B'を囲む絶縁材料パターン52B'が得られる。ここで、下地の絶縁材料パターン51B'は半硬化状態にあり、このため、絶縁材料パターン51B'の表面は、絶縁材料パターン52B'を形成するための液滴Dに対して親液性を示す。そして、絶縁材料パターン51B'の表面が親液性なので、絶縁材料パターン51B'上に厚さが均一な絶縁材料パターン52B'を吐出工程によって設けることは容易である。
【0105】
絶縁材料パターン52B'の厚さは、絶縁材料パターン9B'の厚さと同じに設定されているので、絶縁材料パターン52B'と絶縁材料パターン9B'とは、ほぼ同じレベルの表面L3を形成する。
【0106】
そして、図14(b)に示すように、基体10Bを加熱し、熱量Q'を与える。本実施形態では、クリーンオーブンを用いて、150度の温度で約60分間、基体10Bを加熱する。この加熱によって、絶縁材料パターン9B',51B',52B'における樹脂の重合反応がさらに進むので、それぞれのパターンにおける樹脂がほぼ完全に硬化する。この結果、図14(c)に示すように、絶縁材料パターン9B'と絶縁材料パターン51B'と絶縁材料パターン52B'がそれぞれ絶縁パターン9と絶縁パターン51と絶縁パターン52とになる。
【0107】
以降は、実施形態2と同様な工程を行うことで、配線基板10を形成できる。
本実施形態の絶縁パターン51と絶縁パターン52とは、実施形態2の絶縁パターン11に対応する。このように、本実施形態では、実施形態2の絶縁パターン11に相当する部分を、複数回の「吐出形成」を経て形成する。「吐出形成」とは、広義には、吐出工程による材料パターンの形成を意味し、狭義には、吐出工程による材料パターンの形成と半硬化工程による材料パターンの半硬化とのセットを意味する。
【0108】
このような工程を行えば、常に平坦な表面上に絶縁パターンが設けられる。このため、配線パターン25の厚さが厚い場合でも、配線パターン25の側面を絶縁パターンによって良好に被覆できる。
【0109】
(変形例1)
実施形態1,2,3によれば、6つの液滴吐出装置1,2,3,4,5,6が、それぞれ絶縁材料7A、導電性材料8A、絶縁材料9A、絶縁材料11A、導電性材料15A、絶縁材料17Aを吐出する。このような構成に代えて、1つの液滴吐出装置(例えば液滴吐出装置1)が、互いに異なる2つ以上の「液状の材料」を吐出してもよい。この場合、これら2つ以上の「液状の材料」は、液滴吐出装置1における別々のノズル118から吐出されてもよいし、液滴吐出装置1における1つのノズル118から吐出されてもよい。1つのノズル118から、互いに異なる2つ以上の「液状の材料」が吐出される場合には、「液状の材料」を切り換える際に、タンク101からノズル118までの経路を洗浄する工程を追加すればよい。
【0110】
ここで、1つのノズル118から、互いに異なる2つ以上の「液状の材料」が吐出される場合には、実施形態1において説明された「第1ノズル」と、「第2ノズル」と、「第3ノズル」とは、1つの同じノズル118に対応する。
【0111】
(変形例2)
実施形態1,2,3によれば、ポリイミドからなる基板10A上に多層構造が設けられる。しかしながら、このような基板10Aに代えて、セラミック基板、ガラス基板、エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、またはシリコン基板などが利用されても、上記実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0112】
(変形例3)
実施形態1,2,3の導電性材料8A、15Aには、銀のナノ粒子が含まれている。しかしながら、銀のナノ粒子に代えて、他の金属のナノ粒子が用いられてもよい。ここで、他の金属として、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。ただし、銀であれば比較的低温で還元できるため、扱いが容易であり、この点で、液滴吐出装置を利用する場合には、銀のナノ粒子を含む導電性材料8A、15Aを利用することは好ましい。
【0113】
また、導電性材料8A、15Aが、金属のナノ粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金(I)、クロロトリメチルホスフィン金(I)、クロロトリフェニルフォスフィン金(I)、銀(I)2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)錯体、銅(I)ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
【0114】
このように、液状の導電性材料8A、15Aに含まれる金属の形態は、ナノ粒子に代表される粒子の形態でもよいし、有機金属化合物のような化合物の形態でもよい。
さらに、導電性材料8A、15Aは、金属に代えて、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
【0115】
(変形例4)
実施形態1,2,3において上述したように、導電性材料8A、15Aにおける銀のナノ粒子は、有機物などのコーティング剤で被覆されてもよい。このようなコーティング剤として、アミン、アルコール、チオールなどが知られている。より具体的には、コーティング剤として、2−メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ジエチルメチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミンなどのアミン化合物、アルキルアミン類、エチレンジアミン、アルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキルチオール類、エタンジチオールなどがある。コーティング剤で被覆された銀のナノ粒子は、分散媒中でより安定して分散され得る。
【0116】
(変形例5)
実施形態1,2,3によれば、本発明の「第1光硬化性材料」と「第2光硬化性材料」とは互いに同じである。しかしながら、本発明はこのような形態に限定されない。つまり、本発明の「第1光硬化性材料」および「第2光硬化性材料」とが互いに異なってもよい。例えば、実施形態2および3によれば、絶縁層7と絶縁パターン9,11,51,52とは互い同じ材料からなるが、このような構成に代えて、絶縁層7と絶縁パターン9,11,51,52とが互いに異なる材料からなってもよい。具体的には、絶縁層7がアクリル樹脂であり、絶縁パターン9,11がポリイミド樹脂であってもよい。この場合には、絶縁材料7Aが、感光性アクリル樹脂(アクリル系の感光性樹脂)またはそのモノマー/オリゴマーを含有した液状の材料であり、絶縁材料9A、11Aが、感光性のポリイミド前駆体を含有した液状の材料であればよい。実施形態1の絶縁層7と絶縁層9Lとの関係も上記と同様に変更できる。このように本発明の「第1光硬化性材料」および「第2光硬
化性材料」が互いに異なってもよい。
【0117】
(変形例6)
実施形態1によれば、絶縁層7上に導電層8のパターンが形成される。しかしながら、本発明の多層構造形成方法はこのような構造の形成に限定されない。具体的には、絶縁層7上の導電層8のパターンが省略されてもよい。また、積層された複数の絶縁層の厚さの合計が所望の値になるように、液滴吐出装置を用いてそれぞれの絶縁材料層を形成することと、形成されたそれぞれの絶縁材料層を半硬化することと、を繰り返してもよい。そのような場合にも、最終的に一度の加熱によってそれら複数の絶縁材料層を硬化すれば、実施形態1と同様に、外部からの衝撃や熱に対して安定な配線基板が得られる。
【0118】
(変形例7)
実施形態2および3によれば、紫外域の波長の光を照射して、絶縁層7の表面および絶縁パターン9,11の表面を親液化した。しかしながら、このような親液化に代えて、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラズマ処理を施しても、絶縁層7の表面および絶縁パターン9,11の表面を親液化できる。O2プラズマ処理は、基板10A(基体10B)に対して、図示しないプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射する処理である。O2プラズマ処理の条件は、プラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体10Bの相対移動速度が0.5〜10mm/sec、基体温度が70〜90℃であればよい。
【0119】
(変形例8)
実施形態1,2,3によれば、絶縁層7はインクジェット法によって形成される。具体的には、絶縁材料層7Bが液滴吐出装置1によって形成される。しかしながら、絶縁層7は、インクジェット法に代えて、他の層形成方法で形成されてもよい。例えば、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などの印刷法によって形成されてもよい。
【0120】
(変形例9)
実施形態1によれば、絶縁層7および絶縁層9Lは、インクジェット法によって形成される。具体的には、絶縁材料層7Bおよび絶縁材料層9LBが、液滴吐出装置1、3によってそれぞれ形成される。しかしながら、絶縁層7および絶縁層9Lは、インクジェット法に代えて、他の層形成方法で形成されてもよい。例えば、スクリーン印刷法やグラビア印刷法などの印刷法によって形成されてもよい。
【0121】
(変形例10)
実施形態2および3において、配線パターン25は基板10A上に形成されてもよい。また、配線パターン25は金(Au)の配線パターンであってもよい。配線パターン25が基板10A上に形成されていても、銀(Ag)に代えて配線パターン25が金(Au)からなっても、上記実施形態の多層構造形成方法を行えば、上記実施形態で説明した効果と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本実施形態1,2,3の液滴吐出装置を示す模式図。
【図2】(a)および(b)は液滴吐出装置におけるヘッドを示す模式図。
【図3】液滴吐出装置における制御部の機能ブロック図。
【図4】(a)から(d)は実施形態1の配線基板の製造方法を説明する図。
【図5】(a)から(d)は実施形態1の配線基板の製造方法を説明する図。
【図6】(a)から(d)は実施形態2の配線基板の製造方法を説明する図。
【図7】(a)から(c)は実施形態2の配線基板の製造方法を説明する図。
【図8】(a)から(d)は実施形態2の配線基板の製造方法を説明する図。
【図9】(a)から(d)は実施形態2の配線基板の製造方法を説明する図。
【図10】(a)から(c)は実施形態2の配線基板の製造方法を説明する図。
【図11】実施形態1,2,3の液晶表示装置の模式図。
【図12】実施形態1,2,3の携帯電話機を示す模式図。
【図13】実施形態1,2,3のパーソナルコンピュータを示す模式図。
【図14】(a)から(c)は実施形態3の配線基板の製造方法を説明する図。
【符号の説明】
【0123】
1,2,3,4,5,6…液滴吐出装置、7,17…絶縁層、7A,17A…絶縁材料、7B,7B’…絶縁材料層、9,11…絶縁パターン、9A,11A…絶縁材料、9B,9B’,11B,11B’…絶縁材料パターン、9L…絶縁層、9LB,9LB’…絶縁材料層、8…導電層、8A,15A…導電性材料、8B…導電性材料層、10…配線基板、10A…基板、10B…基体、15B…導電性材料パターン、15…配線パターン、25…配線パターン、26…半導体素子、32…液晶パネル、34…液晶表示装置、40A,40B…ビアホール、41A,41B…導電ポスト、104…第1位置制御装置、106…ステージ、108…第2位置制御装置、112…制御部、114…ヘッド、118…ノズル、140…光照射装置、500…携帯電話機、520…電気光学装置、600…パーソナルコンピュータ、620…電気光学装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出装置が用いられる多層構造形成方法であって、
第1光硬化性材料を含む第1絶縁材料の液滴を吐出して、配線パターン上でビアホールを縁取る第1絶縁材料パターンを形成するステップ(A)と、
前記第1絶縁材料パターンに第1波長の光を照射して、前記第1絶縁材料パターンを半硬化するステップ(B)と、
第2光硬化性材料を含む第2絶縁材料の液滴を吐出して、半硬化された前記第1絶縁材料パターンに接する第2絶縁材料パターンを形成するステップ(C)と、
半硬化された前記第1絶縁材料パターンと前記第2絶縁材料パターンとを、一度に加熱して硬化するステップ(D)と、
を含んだ多層構造形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の多層構造形成方法であって、
前記ステップ(C)と前記ステップ(D)との間で前記第2絶縁材料パターンに第2波長の光を照射して、前記第2絶縁材料パターンを半硬化するステップ(E)をさらに含んだ多層構造形成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の多層構造形成方法であって、
前記配線パターンは基板上に形成された金(Au)の配線パターンである、
多層構造形成方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の多層構造形成方法であって、
導電性材料の液滴を吐出して、物体表面上に前記導電性材料のパターンを形成するステップ(F)と、
前記導電性材料のパターンを活性化して、前記配線パターンを形成するステップ(G)と、
をさらに含んだ多層構造形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の多層構造形成方法であって、
前記ステップ(F)は銀(Ag)を含む液滴を吐出するステップであり、
前記配線パターンは前記銀の配線パターンである、
多層構造形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の多層構造形成方法を包含した配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一つに記載の多層構造形成方法を包含した電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−34880(P2008−34880A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269837(P2007−269837)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2005−182752(P2005−182752)の分割
【原出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】