説明

多層膜フィルター、及び、それを用いた蛍光顕微鏡

【課題】光学フィルターとして所望の特性を実現し得る構造を有する多層膜フィルター、及び、それを用いた蛍光顕微鏡を提供する。
【解決手段】第1の材料からなる層Hと第1の材料と屈折率の異なる第2の材料からなる層Lが交互に積層される多層膜部22を含んで多層膜フィルター20を構成する。多層膜部22は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層膜フィルター、及び、それを用いた蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光観察で検出される蛍光は一般に励起光に比べて微弱であるため、蛍光顕微鏡では、波長の違いを利用して蛍光は励起光から効率よく分離される。この分離には一般に、マイナスフィルターやダイクロイックミラーなどの光学フィルターが用いられる。このため、光学フィルターは、蛍光顕微鏡の性能を左右する重要な光学素子である。
【0003】
屈折率の異なる薄膜を積層してなる多層膜構造は、層間の境界で生じる反射光と透過光が干渉することでさまざまな光学特性を実現し得ることが知られていて、前記光学フィルターとして好適である。このため、従来から、多層膜構造を用いてさまざまな光学特性を実現する光学フィルター(以降、多層膜フィルターと記す。)が提案されている。
【0004】
このように光学フィルターの高性能化は進んでいるが、その一方で、光学フィルターに対する要求の高度化には著しいものがある。例えば、マイナスフィルターを例にすると、以下のようなものがある。
【0005】
最近の分子生物学研究においては、生きた細胞の動的挙動を観察するニーズが高くなったことから、蛍光物質の励起や観察に用いる光とは別に、細胞を操作するための光(以降、操作光と記す。)や、細胞に刺激を与えてその反応を見るための光(以降、刺激光と記す。)を使用することがある。このような場合には、操作光や刺激光を阻止し、他の波長の光を効率よく透過する、マイナスフィルターが求められる。
【0006】
また、同様の分野において、蛍光物質の励起に複数の波長の光を用いることで、複数の種類の蛍光を同時に検出して、細胞内の相互作用や複数の観察対象の配置を正確に観察したいというニーズもある。このような場合にも、励起光を阻止しながら、励起光よりも短い波長と長い波長の両方を効率よく透過する、マイナスフィルターが求められる。
【0007】
どちらの場合にも、マイナスフィルターには、阻止または反射する光の波長帯域(以降、反射帯と記す。)の幅が十分に狭いことが求められる。
さらに最近では、光通信分野,照明分野,ディスプレイ分野などの産業技術分野でも、マイナスフィルターへの需要が増加している。これは、様々な産業機器の光源として、狭い発光波長帯域をもつLEDやレーザーが広く用いられるようになっていることと関係している。このため、これらの光源が使用される様々な産業技術分野でも、これら光源のもつ狭い波長帯域のみ阻止する、若しくは透過率を調整するマイナスフィルターが求められている。
【0008】
これらの要求に対して、マイナスフィルターとして機能する以下のような多層膜フィルターが提案されている。
特許文献1では、屈折率差のある2つの材料が積層された多層膜フィルターが開示されている。特許文献1に開示される多層膜フィルターは、2つの材料の屈折率差を小さくすることで、狭い反射帯を有するマイナスフィルターとして機能する。
【0009】
特許文献2では、相対的に屈折率の高い誘電体薄膜と相対的に屈折率の低い誘電体薄膜が交互に積層された多層膜フィルターが開示されている。特許文献2に開示される多層膜フィルターは、2種類の誘電体薄膜の光学膜厚を等しくすることで生じる高次反射(主に3次反射)を利用することで、狭い反射帯を有するマイナスフィルターとして機能する。
【0010】
特許文献3では、高屈折率層と低屈折率層が交互に積層された多層膜フィルターが開示されている。特許文献3で開示される多層膜フィルターは、異なる屈折率を有する材料を積層する点は特許文献1及び特許文献2と同様である。しかしながら、特許文献3で開示される多層膜フィルターは、低屈折率層の光学膜厚と高屈折率層の光学膜厚を異ならせることで形成される第2次反射帯を用いることで、狭い反射帯を有するマイナスフィルターとして機能する。
【0011】
特許文献4では、さまざまな屈折率を有する材料からなる薄膜が積層された多層膜フィルターが開示されている。特許文献4に開示される多層膜フィルターは、狭い反射帯に加えて、広い透過帯を有するマイナスフィルターとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−319727号公報
【特許文献2】特開2003−215332号公報
【特許文献3】特開2006−023471号公報
【特許文献4】特開2006−085041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示される多層膜フィルターは、反射帯幅が積層される薄膜の屈折率差に依存している。このため、使用できる薄膜材料の制限から反射帯幅を自由に選択し得ない。また、反射帯幅を十分に狭くするためには、製造時に制御が困難なほど小さな屈折率差を高精度に制御しなければならない。このため、実際の製造は困難である。
【0014】
特許文献2に開示される多層膜フィルターは、高次の反射帯で生じる高次反射を利用するため、隣接する反射帯との間隔が狭くなり、広い透過帯が確保できない。また、十分に狭い反射帯を形成するためにはより高次の反射(例えば、5次反射)を利用する必要があるが、隣接する反射帯がさらに近接するため、透過帯の幅が狭くなる。
【0015】
特許文献3に開示される多層膜フィルターは、特許文献2に開示される多層膜フィルターに比べて、広い透過帯と狭い反射帯を確保することができる。しかしながら、用いられる第2次反射帯の前後の波長帯域に主反射帯と第3次反射帯が形成されるため、十分に広い透過帯を確保できない。
【0016】
特許文献4に開示される多層膜フィルターは、狭い反射帯と広い透過帯を有する高性能なマイナスフィルターとして設計されうる。しかしながら、その設計に基づいて多層膜フィルターを製造する場合には、さまざまな屈折率を有する薄膜が必要であるが、現時点において、そのような薄膜の製造は、製造技術上非常に難易度が高く、安定した生産が難しい。また、従来の製造設備の流用は困難であり、専用の製造設備が必要となるため、製造コストが非常に高くなってしまう。
【0017】
従って、特許文献1から特許文献4に開示される多層膜フィルターに関する技術では、狭い反射帯と広い透過帯を有する、従来の製造技術により製造可能な製造性の高いマイナスフィルターを提供することは困難であり、高度化した光学フィルターに対する要求を十分に満たすことはできない。
【0018】
また、多層膜フィルターは、ダイクロイックミラーとしても構成されるが、ダイクロイックミラーでは、マイナスフィルターとは異なる要求が生じる。具体的には、マイナスフィルターは、通常、光が入射面に対して垂直に入射するように配置されるが、ダイクロイックミラーは、一般に、入射角が45度となるように配置される。このため、ダイクロイックミラーには、マイナスフィルターと異なり、光が入射面に対して斜めに入射する場合に生じるP偏光とS偏光での分光透過率特性の相違を、使用波長帯域で可能な限り抑制することが求められる。
【0019】
特許文献1から特許文献3に開示される多層膜フィルターは、いずれも、相対的に高い屈折率を有する層と相対的に低い屈折率を有する層が交互に積層されていて、上記2層の光学膜厚の比率もおよそ一定である。このような2層を一組とした繰り返し構造では、P偏光とS偏光での分光透過率特性の相違を完全に排除することはできない。また、特許文献4では、P偏光とS偏光での分光透過率特性の相違を抑制する技術は開示されていない。
【0020】
従って、特許文献1から特許文献4に開示される多層膜フィルターに関する技術では、使用波長帯域でP偏光に対する分光透過率特性とS偏光に対する分光透過率特性が一致するダイクロイックミラーを提供することは困難であり、高度化した光学フィルターに対する要求を十分に満たすことはできない。
【0021】
このように、従来の多層膜フィルターは、光学フィルターに対する高度化した要求を十分に満たすことができないため、要求を満たしうる多層膜フィルターの新たな構造が求められている。
【0022】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、光学フィルターとして所望の特性を実現し得る構造を有する多層膜フィルター、及び、それを用いた蛍光顕微鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様は、第1の材料からなる層と第1の材料と屈折率の異なる第2の材料からなる層が交互に積層される多層膜部を含み、多層膜部は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜フィルターを提供する。
【0024】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜フィルターを提供する。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、第1の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される、第2の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される、第3の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される、第1の光学膜厚を有する第4の層と、第4の層に積層される、第2の光学膜厚を有する第5の層と、第5の層に積層される、第3の光学膜厚を有する第6の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、第1の光学膜厚、第2の光学膜厚、及び第3の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる多層膜フィルターを提供する。
【0025】
本発明の第4の態様は、第2の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、第1の範囲の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される、第2の範囲の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される、第3の範囲の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される、第1の範囲の光学膜厚を有する第4の層と、第4の層に積層される、第2の範囲の光学膜厚を有する第5の層と、第5の層に積層される、第3の範囲の光学膜厚を有する第6の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、第1の範囲の光学膜厚の中心値を第1の光学膜厚とし、第2の範囲の光学膜厚の中心値を第2の光学膜厚とし、第3の範囲の光学膜厚の中心値を第3の光学膜厚とすると、第1の光学膜厚、第2の光学膜厚、及び第3の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる多層膜フィルターを提供する。
【0026】
本発明の第5の態様は、第3の態様または第4の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、第1の光学膜厚、第2の光学膜厚、第3の光学膜厚のうちの2つの光学膜厚は、略等しい多層膜フィルターを提供する。
【0027】
本発明の第6の態様は、第3の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の多層膜フィルターにおいて、基準波長をλとし、第1の光学膜厚をt1とし、第2の光学膜厚をt2とし、第3の光学膜厚をt3とし、λ=4×(t1+t2+t3)の条件を満たすとき、垂直に入射する光に対して基準波長近傍に反射帯を有する多層膜フィルターを提供する。
【0028】
本発明の第7の態様は、第3の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の多層膜フィルターにおいて、基準波長をλとし、第1の光学膜厚をt1とし、第2の光学膜厚をt2とし、第3の光学膜厚をt3とし、λ=4×(t1+t2+t3)の条件を満たすとき、垂直に入射する光に対して基準波長の1/5倍の波長近傍に反射帯を有する多層膜フィルターを提供する。
【0029】
本発明の第8の態様は、第6の態様または第7の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜フィルターは、第6の態様または第7の態様に記載の反射帯を利用するマイナスフィルターである多層膜フィルターを提供する。
【0030】
本発明の第9の態様は、第6の態様または第7の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜フィルターは、第6の態様または第7の態様に記載の反射帯を利用するダイクロイックミラーである多層膜フィルターを提供する。
【0031】
本発明の第10の態様は、第1の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜フィルターを提供する。
本発明の第11の態様は、第10の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、第1の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される、第2の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される、第3の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される、第4の光学膜厚を有する第4の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、第1の光学膜厚、第2の光学膜厚、第3の光学膜厚、及び第4の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる多層膜フィルターを提供する。
【0032】
本発明の第12の態様は、第10の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜部は、第1の範囲の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される、第2の範囲の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される、第3の範囲の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される、第4の範囲の光学膜厚を有する第4の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、第1の範囲の光学膜厚の中心値を第1の光学膜厚とし、第2の範囲の光学膜厚の中心値を第2の光学膜厚とし、第3の範囲の光学膜厚の中心値を第3の光学膜厚とし、第4の範囲の光学膜厚の中心値を第4の光学膜厚とすると、第1の光学膜厚、第2の光学膜厚、第3の光学膜厚、及び第4の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる多層膜フィルターを提供する。
【0033】
本発明の第13の態様は、第11の態様または第12の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、基準波長をλとし、第1の光学膜厚をt1とし、第2の光学膜厚をt2とし、第3の光学膜厚をt3とし、第4の光学膜厚をt4とし、λ=2×(t1+t2+t3+t4)の条件を満たすとき、垂直に入射する光に対して基準波長近傍に反射帯を有する多層膜フィルターを提供する。
【0034】
本発明の第14の態様は、第11の態様または第12の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、基準波長をλとし、第1の光学膜厚をt1とし、第2の光学膜厚をt2とし、第3の光学膜厚をt3とし、第4の光学膜厚をt4とし、λ=2×(t1+t2+t3+t4)の条件を満たすとき、垂直に入射する光に対して基準波長の1/3倍の波長近傍に反射帯を有する多層膜フィルターを提供する。
【0035】
本発明の第15の態様は、第13の態様または第14の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜フィルターは、第13の態様または第14の態様に記載の反射帯を利用するマイナスフィルターである多層膜フィルターを提供する。
【0036】
本発明の第16の態様は、第13の態様または第14の態様に記載の多層膜フィルターにおいて、多層膜フィルターは、第13の態様または第14の態様に記載の反射帯を利用するダイクロイックミラーである多層膜フィルターを提供する。
【0037】
本発明の第17の態様は、第1の態様乃至第16の態様のいずれか1つに記載の多層膜フィルターにおいて、斜めに入射する入射光に含まれるP偏光に対する透過率特性と入射光に含まれるS偏光に対する透過率特性との相違が、所定の波長帯域で小さい多層膜フィルターを提供する。
【0038】
本発明の第18の態様は、第1の態様乃至第17の態様のいずれか1つに記載の多層膜フィルターを含む蛍光顕微鏡を提供する。
本発明の第19の態様は、第18の態様に記載の蛍光顕微鏡において、多層膜フィルターは、検出光路に配置される蛍光顕微鏡を提供する。
【0039】
本発明の第20の態様は、第18の態様に記載の蛍光顕微鏡において、多層膜フィルターは、照明光路に配置される蛍光顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、光学フィルターとして所望の特性を実現し得る構造を有する多層膜フィルター、及び、それを用いた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、従来技術に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図2】図2は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図3】図3は、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図4】図4は、5層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図5】図5は、6層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図6】図6は、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、膜厚の差と、反射率及び反射帯幅との関係を説明するための図である。
【図7】図7は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、基本構成の積層回数と反射率の関係を説明するための図である。
【図8】図8は、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、基本構成に含まれる全層の膜厚設定とリップルの発生パターンの関係を説明するための図である。
【図9】図9は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性と4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図10】図10は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性と従来技術に係る2つの多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【図11】図11は、実施例1に係る多層膜フィルターの構成を示す概略図である。
【図12】図12は、実施例1に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図13】図13は、実施例2に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図14】図14は、実施例3に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図15】図15は、実施例4に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図16】図16は、従来技術に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図17】図17は、実施例5に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図18】図18は、実施例5に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図19】図19は、実施例6に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図20】図20は、実施例6に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図21】図21は、実施例7に係る多層膜フィルターの構成を示す概略図である。
【図22】図22は、実施例7に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図23】図23は、実施例8に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
【図24】図24は、実施例9に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図25】図25は、実施例9に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図26】図26は、実施例9に係る多層膜フィルターの入射角毎の分光透過率特性を示す図である。
【図27】図27は、実施例10に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図28】図28は、実施例11に係る光学部品の、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図29】図29は、実施例11に係る光学部品の、入射角30度で入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図30】図30は、実施例11に係る光学部品の、入射角45度で入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図31】図31は、実施例11に係る光学部品の、入射角60度で入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。
【図32】図32は、実施例12に係る、多層膜フィルターを含む、蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。
【図33】図33は、全体としてバンドパスフィルターとして機能する複数の多層膜フィルターの透過率特性を示した図である。
【図34】図34は、実施例13に係る、多層膜フィルターを含む、蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。
【図35】図35は、実施例14に係る、多層膜フィルターを含む、蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。
【図36】図36は、実施例15に係る、多層膜フィルターを含む、蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
まず、後述する各実施例に係る多層膜フィルターの特徴を明らかにするために、従来技術に係る多層膜フィルターの構成、及び、形成される反射帯について概説する。
従来技術に係る多層膜フィルターは、異なる屈折率を有する2つの材料が交互に積層された多層膜部を含み、多層膜部は、2層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。なお、2層を1周期とする周期的な膜厚構造とは、2層を1周期として層の膜厚が周期的に異なる構造をいう。すなわち、屈折率の周期と薄膜の周期はいずれも2層であり、多層膜部は、2層から成る基本構成が積層された構造体である。
【0043】
このような多層膜フィルターに形成される反射帯やその反射帯が示す振る舞いについては、例えば、文献1(Alfred Thelen / Design of Optical Interference Coatings / McGraw-Hill Book Company (1989)),文献2(Ronald R. Willey / Practical Design and Production of Optical Thin Films / Marcel Dekker, Inc. (2002)),文献3(Philip W. Baumeister / Optical Coating Technology / SPIE Press (2004))などで開示され、且つ、詳細に説明されている。
【0044】
上記の文献では、以下の2点が明らかにされている。
第1に、任意の波長λの1/4に相当する膜厚(QWOT)で、第1の材料から成る層と、第1の材料と異なる屈折率を有する第2の材料から成る層とが交互に積層された多層膜フィルター(QWOT Stack)では、波長λを中心とした反射帯が形成されることが示されている。なお、反射帯は、阻止帯(Block Band)とも呼ばれる。この反射帯は、積層された2種類の材料の層から成る基本構成の積層回数が多い程、反射率が高くなる。また、第1の材料から成る層と第2の材料から成る層の屈折率差が大きい程、反射率が高く、反射帯の幅は広くなる。逆に、これらの屈折率差が小さい程、反射率は低く、反射帯の幅は狭くなる。
【0045】
第2に、任意の波長λの1/4に相当する膜厚で、第1の材料から成る層と第2の材料から成る層とが交互に積層された多層膜フィルターでは、波長λの整数分の1の波長帯域にも反射帯が形成されうることが示されている。なお、波長λを中心に形成される上述した反射帯は主反射帯と呼ばれ、一方、波長λの整数分の1の波長帯域に形成される反射帯は高次反射帯と呼ばれる。また、高次反射帯のうち、特に、λ/2の波長帯域に形成される反射帯は2次反射帯、λ/3の波長帯域に形成される反射帯は3次反射帯、同様にλ/n(nは整数)の波長帯域に形成される反射帯はn次反射帯と呼ばれる。
【0046】
即ち、従来技術としては、2層から成る基本構成が積層された多層膜部を有する多層膜フィルターが知られており、主反射帯とその高次反射帯が形成されうることが知られている。その一方、主反射帯よりも長波長に形成される反射帯は知られていない。また、主反射帯の整数分の1の波長帯域以外に形成される高次反射帯も知られていない。
【0047】
図1は、従来技術に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。図1に例示される特性を有する多層膜フィルター100は、上述した2層からなる基本構成が積層された多層膜部を含む多層膜フィルターであり、以下の膜構成を有している。
多層膜フィルター100
基板/(1.2H 0.8L)60/空気
なお、上記の表記法では、基板側に積層される層から順に記載されている。H、Lは、それぞれ高屈折率層(以降、H層と記す。)、低屈折率層(以降、L層と記す。)を示している。H及びLの直前に記載される数値は、設計基準波長λでの光学膜厚を示し、λ/4相当の光学膜厚が1として表記される。また、括弧内は基本構成を示し、括弧後の数値は基本構成の積層回数を示している。
【0048】
多層膜フィルター100の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、以下のとおりである。
λ=1000nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
図1に例示されるように、従来技術に係る多層膜フィルター100は、1000nmを中心に形成される主反射帯とその1/2倍の波長帯域(500nm)に形成される2次反射帯を有している。主反射帯より長波長に反射帯を有しない。なお、基本構成の2層の平均的な光学膜厚が設計基準波長λの1/4倍と一致しているため、図1では、主反射帯が形成される波長(以降、主反射波長λと記す。)と設計基準波長λとは、一致している。しかしながら、設計基準波長λは任意に選択されうるため、これらは常に一致するとは限らない。
【0049】
すでに上述したように、主反射帯は反射帯幅の選択性が小さく、任意の反射帯幅を得られない。このため、主反射帯を利用する場合、多層膜フィルター100は、狭い反射帯を有するマイナスフィルターとして十分に機能しない。また、2次反射帯を利用する場合、多層膜フィルター100は、隣接する反射帯(主反射帯、及び、図示しない3次反射帯)との間隔が狭いため、広い透過帯を有するマイナスフィルターとして十分に機能しない。
【0050】
従って、図1に例示される従来技術に係る多層膜フィルターは、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして機能しない。
次に、実施例に係る多層膜フィルターの構成、及び、形成される反射帯について概説する。
【0051】
各実施例に係る多層膜フィルターは、いずれも、異なる屈折率を有する2つの材料が交互に積層された多層膜部を含み、多層膜部は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。すなわち、屈折率の周期と薄膜の周期は一致せず、多層膜部は、3層以上(屈折率の周期と薄膜の周期の最小公倍数に等しい)から成る基本構成が積層された構造体である。
【0052】
より具体的には、3層を1周期とする周期的な膜厚構造(以降、T3膜厚構造と記す。)を有する多層膜部(以降、T3多層膜部と記す。)は、6層(=3×2)からなる基本構成が積層された構造体であり、4層、5層、6層を1周期とする周期的な膜厚構造(以降、それぞれ、T4膜厚構造、T5膜厚構造、T6膜厚構造と記す。)を有する多層膜部(以降、それぞれ、T4多層膜部、T5多層膜部、T6多層膜部と記す。)は、それぞれ4層(4と2の最小公倍数)、10層(5と2の最小公倍数)、6層(6と2の最小公倍数)からなる基本構成が積層された構造体である。
【0053】
本発明者は、数多くの設計検討の結果、上記の構造によれば、従来技術に係る多層膜フィルターで形成される反射帯以外の反射帯(以降、新規反射帯と記す。)を形成できることを見出した。また、これら新規反射帯の性質を検討した結果、多くの工業的に有用な性質を持つことも見出した。
【0054】
以下、T3多層膜部を含む多層膜フィルター1、T4多層膜部を含む多層膜フィルター2、T5多層膜部を含む多層膜フィルター3、及びT6多層膜部を含む多層膜フィルター4のそれぞれに形成される反射帯について、具体的に説明する。
【0055】
図2は、T3多層膜部を含む多層膜フィルター1の分光透過率特性を例示した図である。図3は、T4多層膜部を含む多層膜フィルター2の分光透過率特性を例示した図である。図4は、T5多層膜部を含む多層膜フィルター3の分光透過率特性を例示した図である。図5は、T6多層膜部を含む多層膜フィルター4の分光透過率特性を例示した図である。
【0056】
多層膜フィルター1、多層膜フィルター2、多層膜フィルター3、及び多層膜フィルター4の膜構成は、以下のとおりである。それぞれ6層、4層、10層、6層からなる基本構成が示されている。
多層膜フィルター1
基板/(1.4H 0.8L 0.8H 1.4L 0.8H 0.8L)20/空気
多層膜フィルター2
基板/(1.6H 0.8L 0.8H 0.8L)30/空気
多層膜フィルター3
基板/(1.8H 0.8L 0.8H 0.8L 0.8H 1.8L 0.8H 0.8L 0.8H 0.8L)12/空気
多層膜フィルター4
基板/(2H 0.8L 0.8H 0.8L 0.8H 0.8L)20/空気
【0057】
上記構成の多層膜フィルターの設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=1000nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、いずれも1であり、設計基準波長λの1/4倍と一致しているため、主反射波長λも1000nmである。
【0058】
図2に例示されるように、T3多層膜部を含む多層膜フィルター1は、1000nm(=λ)を中心に形成される主反射帯の他に、主反射波長λの3倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの3/5倍の波長帯域に形成される新規反射帯を有する。
【0059】
図3に例示されるように、T4多層膜部を含む多層膜フィルター2は、1000nm(=λ)を中心に形成される主反射帯の他に、主反射波長λの2倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの2/3倍の波長帯域に形成される新規反射帯を有する。
【0060】
図4に例示されるように、T5多層膜部を含む多層膜フィルター3は、1000nm(=λ)を中心に形成される主反射帯の他に、主反射波長λの5倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの5/3倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの5/7倍の波長帯域に形成される新規反射帯を有する。
【0061】
図5に例示されるように、T6多層膜部を含む多層膜フィルター4は、1000nm(=λ)を中心に形成される主反射帯の他に、主反射波長λの3倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの3/2倍の波長帯域に形成される新規反射帯と、主反射波長λの3/4倍の波長帯域に形成される新規反射帯を有する。
【0062】
このように、T3多層膜部からT6多層膜部を含む多層膜フィルターでは、従来技術に係る多層膜フィルターで形成され得ない新規反射帯が形成される。なお、ここでは、T3膜厚構造からT6膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターを例示したが、膜厚構造は特にこれに限られない。T7膜厚構造やそれ以上の膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターを構成することも可能であり、それらの多層膜フィルターでも、新規反射帯が形成される。加えて、上記の例示においては1000nmを中心に主反射帯が形成された場合に500nm以上に形成される新規反射帯について解説しているが、これよりも短い波長領域にも新規反射帯は形成され、利用できる。
【0063】
なお、上記の多層膜フィルターでは、最長波長帯域に形成される新規反射帯の波長を基準にすると、それ以外の新規反射帯及び主反射帯は、最長波長帯域に形成される新規反射帯の整数分の1の波長帯に形成されている。
【0064】
また、上述した多層膜フィルターに形成される新規反射帯は、次のような性質を有する。
第1に、新規反射帯は、基本構成に含まれる層間の膜厚の差が大きいほど、反射率及び反射帯幅が大きくなる性質を有している。即ち、層間の膜厚の差が小さいほど、反射率及び反射帯幅が小さくなる。このため、基本構成の膜厚を変化させることで、新規反射帯の反射率及び反射帯幅を調整することができる。
【0065】
第2に、新規反射帯は、基本構成の積層回数が多い程、反射率が高くなる性質を有している。また、基本的に、積層回数は、反射帯幅に影響を及ぼさない。このため、基本構成の積層回数を増やすことで、新規反射帯の反射率を向上させることができる。
【0066】
第3に、新規反射帯は、基本構成に含まれる全層の膜厚設定に応じて、リップル(透過帯における分光透過率特性の波打ち)の発生パターンが変化する性質を有している。このため、使用波長帯域に応じて、リップルの発生パターンを調整することができる。
【0067】
第4に、一部の新規反射帯は、入射光が斜めに入射する場合であっても、P偏光に対する分光透過率特性とS偏光に対する分光透過率特性が新規反射帯の一端の波長帯域において一致し得るという性質を有している。このため、この性質をもつ新規反射帯を上手く利用すると、多層膜フィルターが斜めに配置される場合でも、新規反射帯の一端の波長帯域では、入射光(P偏光とS偏光を含む)に対する急峻な分光透過率特性が実現される。なお、斜めに入射する入射光を波長に基づいて透過または反射することにより2方向に分離したり、2方向から斜めに入射する波長帯の異なる入射光を1方向に合成するような光学フィルターをダイクロイックミラーと呼ぶ。ここに示した第4の性質は、ダイクロイックミラーとして有用な性質となる。
【0068】
以下、新規反射帯の第1の性質から第3の性質について、図6、図7、及び図8を参照しながら、具体的に説明する。なお、第4の性質については、後述する実施例において、具体的に説明する。
【0069】
図6は、T4多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、膜厚の差と、反射率及び反射帯幅との関係を説明するための図である。図6には、膜厚を異ならせた複数の多層膜フィルター(多層膜フィルター5、多層膜フィルター6、多層膜フィルター7、多層膜フィルター8)の分光透過率特性が例示されている。図6に分光透過率特性が例示される複数の多層膜フィルターの膜構成は、以下のとおりである。
多層膜フィルター5
基板/(0.5H 0.5L 0.5H 0.5L)50/空気
多層膜フィルター6
基板/(0.5H 0.5L 0.55H 0.45L)50/空気
多層膜フィルター7
基板/(0.5H 0.5L 0.6H 0.4L)50/空気
多層膜フィルター8
基板/(0.5H 0.5L 0.7H 0.3L)50/空気
【0070】
多層膜フィルター5、多層膜フィルター6、多層膜フィルター7、及び多層膜フィルター8の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=600nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、いずれも0.5であるので、主反射波長λは300nmである。
【0071】
多層膜フィルター5は、T4膜厚構造を有さず、従来技術に係る2層を基本構成とした多層膜フィルターである。このため、図6に例示されるように、多層膜フィルター5では、300nmに形成される主反射帯より長波長側に反射帯は形成されない。一方、T4膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルター6、多層膜フィルター7、及び多層膜フィルター8では、いずれも主反射波長λの2倍の波長帯域(=600nm)に新規反射帯が形成されている。
【0072】
新規反射帯の反射率及び反射帯幅は、多層膜フィルター6、多層膜フィルター7、多層膜フィルター8の順に大きくなっている。これは、層間の膜厚の差が大きくなる順番と一致している。従って、新規反射帯は、基本構成に含まれる層間の膜厚の差が大きいほど、反射率及び反射帯幅が大きくなる性質を有している。
【0073】
なお、膜厚の差が大きくなるほど、新規反射帯の周辺に発生するリップル(透過帯における分光透過率特性の波打ち)も顕著になっている。しかしながら、リップルは、多層膜部の前後にアンチリフレクション層(AR層)または整合層(ML層)を設けることで、抑制することができる。また、実施例において後述するように、多層膜部に含まれる全層の膜厚を調整することによっても抑制し得る。
【0074】
また、ここでは、T4多層膜部を含む多層膜フィルターを例に説明したが、特にこれに限られない。T3多層膜部やT5多層膜部以上を含む多層膜フィルターで形成される新規反射帯でも同様の性質を有している。
【0075】
図7は、T3多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、基本構成の積層回数と反射率の関係を説明するための図である。図7には、積層回数を異ならせた複数の多層膜フィルター(多層膜フィルター9、多層膜フィルター10、多層膜フィルター11)の分光透過率特性が例示されている。図7に分光透過率特性が例示される複数の多層膜フィルターの膜構成は、以下のとおりである。
多層膜フィルター9
基板/(0.8H 1.3L 0.9H 0.8L 1.3H 0.9L)10/空気
多層膜フィルター10
基板/(0.8H 1.3L 0.9H 0.8L 1.3H 0.9L)20/空気
多層膜フィルター11
基板/(0.8H 1.3L 0.9H 0.8L 1.3H 0.9L)40/空気
【0076】
多層膜フィルター9、多層膜フィルター10、及び多層膜フィルター11の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=300nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、いずれも1であり、設計基準波長λの1/4倍と一致しているため、主反射波長λも300nmである。
【0077】
図7に例示されるように、T3多層膜部を含む多層膜フィルター9、多層膜フィルター10、及び多層膜フィルター11では、いずれも主反射波長λの3倍の波長帯域(=900nm)に新規反射帯が形成されている。
【0078】
新規反射帯の反射率は、多層膜フィルター9、多層膜フィルター10、多層膜フィルター11の順に大きくなっている。これは、積層回数が多くなる順番と一致している。従って、新規反射帯は、基本構成の積層回数が多い程、反射率が高くなる性質を有している。
【0079】
なお、新規反射帯の周辺にはリップルが生じているが、リップルは、多層膜部の前後にアンチリフレクション層(AR層)または整合層(ML層)を設けることで、抑制することができる。また、実施例において後述するように、多層膜部に含まれる全層の膜厚を調整することによっても抑制し得る。
【0080】
また、ここでは、T3多層膜部を含む多層膜フィルターを例に説明したが、特にこれに限られない。T4多層膜部以上を含む多層膜フィルターで形成される新規反射帯でも同様の性質を有している。
【0081】
図8は、T4多層膜部を含む多層膜フィルターにおける、基本構成に含まれる全層の膜厚設定とリップルの発生パターンの関係を説明するための図である。図8には、基本構成に含まれる全層の膜厚設定を異ならせた複数の多層膜フィルター(多層膜フィルター12、多層膜フィルター13、多層膜フィルター14)の分光透過率特性が例示されている。図8に分光透過率特性が例示される複数の多層膜フィルターの膜構成は、以下のとおりである。
多層膜フィルター12
基板/(0.25H 0.45L 0.4H 0.9L)20/空気
多層膜フィルター13
基板/(0.4H 0.85L 0.35H 0.4L)20/空気
多層膜フィルター14
基板/(0.35H 0.5L 0.15H 1L)20/空気
【0082】
多層膜フィルター12、多層膜フィルター13、及び多層膜フィルター14の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=600nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、いずれも0.5であるので、主反射波長λは300nmである。
【0083】
図8に例示されるように、T4多層膜部を含む多層膜フィルター12、多層膜フィルター13、及び多層膜フィルター14では、いずれも主反射波長λの2倍の波長帯域(=600nm)に新規反射帯が形成されている。
【0084】
多層膜フィルター12では、新規反射帯の短波長側のリップルが小さく、長波長側により大きなリップルが生じているのに対して、多層膜フィルター13では、新規反射帯の長波長のリップルが小さく、短波長側により大きなリップルが生じている。また、多層膜フィルター14では、新規反射帯の長波長側と短波長側の両方に略均等にリップルが生じている。
【0085】
このように、新規反射帯の周辺に発生するリップルの発生パターンは、多層膜フィルター12、多層膜フィルター13、多層膜フィルター14でそれぞれ異なっている。従って、新規反射帯は、基本構成に含まれる全層の膜厚設定に応じて、リップルの発生パターンが変化する性質を有している。
【0086】
なお、ここでは、T4多層膜部を含む多層膜フィルターを例に説明したが、特にこれに限られない。T3多層膜部やT5多層膜部以上を含む多層膜フィルターで形成される新規反射帯でも同様の性質を有している。
【0087】
次に、T3多層膜部を含む多層膜フィルターとT4多層膜部を含む多層膜フィルターを比較しながら、それぞれの特徴について説明する。
図9は、T3多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性とT4多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
【0088】
図9に例示されるT4多層膜部を含む多層膜フィルター15とT3多層膜部を含む多層膜フィルター16は、同等の波長帯域に同等の反射帯幅及び反射率を有する新規反射帯を有している。多層膜フィルター15及び多層膜フィルター16の膜構成は、以下のとおりである。
多層膜フィルター15
基板/(0.5H 0.35L 0.5H 0.65L)30/空気
多層膜フィルター16
基板/(0.46H 0.27L 0.27H 0.46L 0.27H 0.27L)30/空気
【0089】
多層膜フィルター15、及び多層膜フィルター16の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=650nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、多層膜フィルター15の基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、0.5であるため、主反射波長λは計算上325nmである。一方、多層膜フィルター16の基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は、0.33であるため、主反射波長λは計算上およそ217nmである。
なお、ここで主反射波長λを計算上の値として示したのは、実際の薄膜ではその屈折率に分散(波長依存性)があり、正確にその波長を中心とした反射帯が形成されるわけではないことによる。これは明細書及び/または特許請求の範囲に記載される他の説明においても同様である。即ち、明細書及び/または特許請求の範囲に記載される「基準波長の1/5倍の波長近傍に反射帯を有する」や「基準波長の1/3倍の波長近傍に反射帯を有する」という表現も、屈折率分散の影響から正確にその波長を中心とした反射帯が形成されるわけではないが、反射帯がその近傍に形成されることを示している。
【0090】
図9に例示されるように、主反射帯よりも長波長に形成される新規反射帯は、多層膜フィルター16の方が多層膜フィルター15よりも離れている。より具体的には、上記の設計基準波長λを基準にすると、主反射帯とより長波長に形成される新規反射帯の距離は、多層膜フィルター16では設計基準波長λの2/3倍程度(=λ−λ/3)であるのに対して、多層膜フィルター15では設計基準波長λの1/2倍程度(=λ−λ/2)である。
【0091】
このため、より広い透過波長域を確保することを重視する場合には、T3多層膜フィルター16の方が、T4多層膜部を含む多層膜フィルター15よりも好ましい。
一方、同等の反射帯幅及び反射率を有する新規反射帯を形成するためには、全体の膜厚には大差はないが、全層数は多層膜フィルター15の方が多層膜フィルター16よりも多い。具体的には、多層膜フィルター15では、全層数は120であるのに対して、多層膜フィルター16では、全層数は180である。従って、層数が少ない多層膜フィルター15の方が、一層当たりの膜厚を厚くすることができるため、製造性に優れている。
【0092】
このため、多層膜フィルターの製造性を重視する場合には、T4多層膜部を含む多層膜フィルター15の方が、T3多層膜部を含む多層膜フィルター16よりも好ましい。
なお、T5多層膜部以上を含む多層膜フィルターも、従来技術に係る多層膜フィルターに比べて、多層膜フィルター15や多層膜フィルター16と同様に有用である。特に、T5多層膜部を含む多層膜フィルターは、既に示したようにT3,T4多層膜部を含む多層膜フィルターよりも長波長(主反射波長の5倍の波長帯域)に反射帯を形成することができるなどの理由から有用性が高い。
また、T6多層膜部を含む多層膜フィルターは、T3多層膜部を含む多層膜フィルターの変形として使用でき、T3多層膜部を含む多層膜フィルターと同様に有用性が高い。T6多層膜部を含む多層膜フィルターの有用性を例示すると次のようになる。T3多層膜部を含む多層膜フィルターを斜め入射で使用する場合、高屈折率層(H層)の実効的な屈折率と低屈折率層(L層)の実効的な屈折率が変化する影響で意図しない反射(リップル)が発生する。この反射は、高屈折率層と低屈折率層の膜厚をある比率で調整することにより抑制できるが、調整の結果、多層膜フィルターは、T6多層膜部を含むことになる。即ち、例えば、斜め入射で使用する場合、T6多層膜部を含む多層膜フィルターは、T3多層膜部を含む多層膜フィルターの変形として、T3多層膜部を含む多層膜フィルターと同様に有用性が高い。
しかし、T5多層膜部以上を含む多層膜フィルターは、多層膜フィルター15や多層膜フィルター16に対して、全層数が増加し、且つ、全体の膜厚も増加する傾向にある。即ち、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルターは、多層膜部の周期的な膜厚構造に含まれる層数が大きい程、全層数は増加し、その結果、製造性が悪くなってしまう。
以上から、用途により高い有用性を有する6層を1周期とする多層膜フィルターまでが好ましく、中でも特に有用性が高いT3多層膜部またはT4多層膜部を含む多層膜フィルターが特に好ましい。
【0093】
さらに、T3多層膜部を含む多層膜フィルターと従来技術に係る多層膜フィルターを比較しながら、T3多層膜部を含む多層膜フィルターに代表される各実施例に係る多層膜フィルターの特徴について説明する。
【0094】
図10は、T3多層膜部を含む多層膜フィルターの分光透過率特性と従来技術に係る2つの多層膜フィルターの分光透過率特性を例示した図である。
図10に例示されるように、T3多層膜部を含む多層膜フィルター17は、650nm付近に主反射帯よりも長波長に形成される新規反射帯を有している。また、従来技術に係る2つの多層膜フィルター18、19は、それぞれ650nm付近に主反射帯、2次反射帯を有している。
【0095】
なお、多層膜フィルター18は、いわゆるQWOTスタックであり、多層膜フィルター19は、上述した特許文献3で開示される技術を用いた多層膜フィルターである。多層膜フィルター18と多層膜フィルター19は、いずれも2層から成る基本構成が積層された多層膜フィルターである。
【0096】
多層膜フィルター17、多層膜フィルター18、及び多層膜フィルター19の膜構成は、以下のとおりである。
多層膜フィルター17
基板/(0.5H 0.35L 0.5H 0.65L)30/空気
多層膜フィルター18
基板/(1H 1L)12/空気
多層膜フィルター19
基板/(1.55H 2.45L)15/空気
【0097】
多層膜フィルター17、多層膜フィルター18、及び多層膜フィルター19の設計基準波長λ、及び、H層、L層、基板、空気のそれぞれの屈折率n、n、n、nは、いずれも以下のとおりである。
λ=650nm、n=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
また、多層膜フィルター17の基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は0.5であるため、主反射波長λは325nmである。多層膜フィルター18の基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は1であるため、主反射波長λは650nmである。多層膜フィルター19の基本構成の一層当たりの平均的な膜厚は2であるため、主反射波長λは1300nmである。
【0098】
図10に例示されるように、他の多層膜フィルターと同じ材料で構成されている場合には、多層膜フィルター18の主反射帯の反射帯幅は、他の多層膜フィルターの反射帯の反射帯幅よりも広い。また、多層膜フィルター19は、狭い2次反射帯を有するが、2次反射帯(650nm)とその前後波長帯域に形成される主反射帯(1300nm)及び3次反射帯(433nm)との間隔が狭いため、広い透過帯を有しない。このように、多層膜フィルター18及び多層膜フィルター19では、狭い反射帯と広い透過帯は両立し得ない。これに対して、多層膜フィルター17は、狭い反射帯(新規反射帯)と広い透過帯を有している。
【0099】
以上のように、多層膜フィルターは、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有することで、従来技術にかかる多層膜フィルターとは異なる特性を実現し得る。このため、上記構造を用いることで、狭い反射帯と広い透過帯を有する従来の製造技術により製造可能な製造性の高いマイナスフィルターや、使用波長帯域でP偏光に対する分光透過率特性とS偏光に対する分光透過率特性が一致するダイクロイックミラーを提供することができる。
なお、以上では、H層、L層、基板、空気の屈折率が以下の値となる場合を例に、上述した性質について説明している。
=2.2、n=1.46、n=1.52、n=1.0
しかしながら、これらの性質はこの場合に限られるものではなく、他の屈折率もしくは材料を用いた場合でも同様であり、これらの性質を利用することができる。
【0100】
以下、各実施例について説明する。なお、実施例1から実施例6では、T3膜厚構造を有するT3多層膜部を含む多層膜フィルターの具体例を開示し、実施例7から実施例11では、T4膜厚構造を有するT4多層膜部を含む多層膜フィルターの具体例を開示する。
【実施例1】
【0101】
図11は、本実施例に係る多層膜フィルターの構成を示す概略図である。図12は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
図11(a)に例示されるように、本実施例に係る多層膜フィルター20は、高屈折率材料(第1の材料)からなる層(以降、H層と記す。)と低屈折率材料(第2の材料)からなる層(以降、L層と記す。)が交互に積層された多層膜部21と、整合部22を含んでいる。また、多層膜フィルター20は、両面研磨平行平板である透明な基板24の主成膜面に形成されていて、基板24の裏面には反射防止膜25が形成されている。
【0102】
なお、高屈折率材料、低屈折率材料は、それぞれTa2O5、SiO2であり、H層及びL層は、イオンアシスト蒸着(IAD)を用いて形成される。また、基板24の材料は、BK7であり、反射防止膜25は、MgF2からなる単層である。
【0103】
多層膜フィルター20の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.18H 0.13L (0.28L 0.36H 0.36L 0.28H 0.36L 0.36H)60 1.4H 0.13L 0.34H 0.83L/空気
設計基準波長λ=636nm(主反射波長λ=λ/3)
上記膜構成で示されるように、多層膜部21は、基本構成23が積層された構造体であり、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0104】
図11(b)に示されるように、基本構成23は、第1の光学膜厚t1を有する第1の層26aと、第1の層26aに積層される第2の光学膜厚t2を有する第2の層27aと、第2の層27aに積層される第3の光学膜厚t3を有する第3の層28aと、第3の層28aに積層される第1の光学膜厚t1を有する第4の層26bと、第4の層26bに積層される第2の光学膜厚t2を有する第5の層27bと、第5の層27bに積層される第3の光学膜厚t3を有する第6の層28bとからなる。
【0105】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3、3層の合計光学膜厚tc、基本構成の膜厚tbは、以下のとおりである。
t1=0.28λ/4、t2=0.36λ/4、t3=0.36λ/4
tc=λ/4、tb=λ/2
【0106】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3では、以下の関係が成立している。
t1/t2=0.78
t2=t3
また、上記膜構成で示されるように、整合部22は、多層膜フィルター20の反射帯の周辺に生じるリップルを抑制するための1層以上の整合層を含む。整合層もH層やL層と同様の材料からなる。
【0107】
図12で示されるように、多層膜フィルター20では、反射幅が28nmである反射帯が、設計基準波長λの約1.02倍の波長である650nmを中心に形成される。このため、多層膜フィルター20は、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0108】
なお、650nmを中心に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター20は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【実施例2】
【0109】
図13は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
本実施例に係る多層膜フィルター30は、反射帯周辺に生じるリップルをさらに抑制するために、整合部に含まれる整合層の層数を増やしている点を除いて、実施例1に係る多層膜フィルター20と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例1に係る多層膜フィルター20と同様である。
【0110】
多層膜フィルター30の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.146H 0.307L 0.236H 0.276L 0.35H 0.286L 0.344H 0.216L 0.38H 0.289L 0.326H 0.397L 0.256H 0.374L 0.334H 0.316L 0.358H 0.289L 0.361H 0.244L 0.417H 0.254L 0.33H 0.388L 0.266H 0.454L 0.306H 0.347L 0.204H 0.3L 0.256H 0.372L 0.365H 0.289L 0.352H 0.355L 0.306H 0.356L 0.347H 0.296L 0.346H 0.358L 0.291H 0.347L 0.353H 0.295L 0.349H 0.357L 0.287H 0.354L 0.355H 0.29L 0.348H 0.359L 0.287H 0.357L 0.353H 0.287L 0.353H 0.359L 0.284H 0.355L 0.355H 0.287L 0.353H 0.36L 0.28H 0.359L 0.357H 0.283L 0.355H 0.361L 0.281H 0.361L 0.357H 0.282L 0.357H 0.363L 0.278H 0.36L 0.358H 0.281L 0.357H 0.363L 0.276H 0.363L 0.36H 0.278L 0.358H 0.364L 0.275H 0.364L 0.359H 0.278L 0.359H 0.365L 0.274H 0.363L 0.361H 0.276L 0.36H 0.366L 0.271H 0.366L 0.361H 0.275L 0.361H 0.365L 0.271H 0.366L 0.361H 0.273L 0.361H 0.367L 0.269H 0.366L 0.362H 0.273L 0.363H 0.367L (0.263H 0.37L 0.366H 0.266L 0.365H 0.37L)28 0.265H 0.368L 0.364H 0.268L 0.363H 0.371L 0.264H 0.369L 0.366H 0.268L 0.366H 0.367L 0.265H 0.37L 0.362H 0.27L 0.362H 0.368L 0.268H 0.366L 0.364H 0.269L 0.364H 0.37L 0.265H 0.369L 0.363H 0.271L 0.364H 0.364L 0.269H 0.367L 0.361H 0.273L 0.36H 0.368L 0.27H 0.366L 0.363H 0.272L 0.364H 0.367L 0.268H 0.368L 0.36H 0.276L 0.362H 0.361L 0.273H 0.364L 0.361H 0.276L 0.357H 0.369L 0.273H 0.366L 0.361H 0.274L 0.364H 0.363L 0.273H 0.365L 0.355H 0.282L 0.357H 0.359L 0.278H 0.361L 0.361H 0.278L 0.357H 0.366L 0.276H 0.366L 0.354H 0.279L 0.363H 0.356L 0.279H 0.36L 0.351H 0.29L 0.351H 0.358L 0.283H 0.359L 0.363H 0.279L 0.358H 0.364L 0.28H 0.368L 0.339H 0.288L 0.36H 0.343L 0.291H 0.346L 0.354H 0.303L 0.341H 0.369L 0.28H 0.369L 0.377H 0.247L 0.386H 0.266L 0.363H 0.3L 0.432H 0.261L 0.379H 0.319L 0.277H 0.378L 0.345H 0.378L 0.315H 0.377L 0.257H 0.354L 0.407H 0.251L 0.38H 0.26L 0.341H 0.352L 0.277H 0.343L 0.263H 0.498L 0.356H 0.274L 1.674H 0.148L 0.374H 0.923L/空気
設計基準波長λ=622nm(主反射波長λ=λ/3程度)
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体である。また、基本構成の第1の層と第4の層、第2の層と第5の層、第3の層と第6の層の光学膜厚はほぼ同等であり、多層膜部は、実質的には3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0111】
即ち、基本構成は、第1の範囲r1の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される第2の範囲r2の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される第3の範囲r3の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される第1の範囲r1の光学膜厚を有する第4の層と、第4の層に積層される第2の範囲r2の光学膜厚を有する第5の層と、第5の層に積層される第3の範囲r3の光学膜厚を有する第6の層とからなる。
【0112】
第1の範囲r1の光学膜厚の中心値である第1の光学膜厚t1、第2の範囲r2の光学膜厚の中心値である第2の光学膜厚t2、第3の範囲r3の光学膜厚の中心値である第3の光学膜厚t3は、それぞれ異なるが、第2の光学膜厚t2と第3の光学膜厚t3は、ほぼ等しい。3層の合計光学膜厚tcは、およそλ/4であり、基本構成の膜厚tbは、およそλ/2である。
【0113】
第1の範囲r1は、0.263λ/4から0.266λ/4の範囲であり、膜厚に比べて極狭い範囲である。また、第2の範囲r2及び第3の範囲r3は、0.365λ/4から0.37λ/4の範囲であり、膜厚に比べて極狭い範囲である。第2の範囲r2に対する第1の範囲r1の比率は、およそ0.72である。
【0114】
図13で示されるように、多層膜フィルター30では、反射幅が32nmである反射帯が、設計基準波長λの約1.02倍の波長である635nmを中心に形成される。このため、多層膜フィルター30は、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0115】
さらに、多層膜フィルター30では、整合層による細かな膜厚調整により反射帯近傍の透過帯に生じるリップルが抑制されているため、多層膜フィルター20と比べて、透過特性が改善している。従って、多層膜フィルター30は、さらに高い有用性を有する。
【0116】
なお、635nmを中心に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター30は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【実施例3】
【0117】
図14は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
本実施例に係る多層膜フィルター40は、反射帯周辺に生じるリップルをさらに抑制するために、厳密に周期的な膜厚構造を有さず緩やかに周期的な膜厚構造を有している点を除いて、実施例2に係る多層膜フィルター30と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例2に係る多層膜フィルター30と同様である。
【0118】
多層膜フィルター40の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.146H 0.307L 0.236H 0.276L 0.35H 0.286L 0.344H 0.216L 0.38H 0.289L 0.326H 0.397L 0.256H 0.374L 0.334H 0.316L 0.358H 0.289L 0.361H 0.244L 0.417H 0.254L 0.33H 0.388L 0.266H 0.454L 0.306H 0.347L 0.204H 0.3L 0.256H 0.372L 0.365H 0.289L 0.352H 0.355L 0.306H 0.356L 0.347H 0.296L 0.346H 0.358L 0.291H 0.347L 0.353H 0.295L 0.349H 0.357L 0.287H 0.354L 0.355H 0.29L 0.348H 0.359L 0.287H 0.357L 0.353H 0.287L 0.353H 0.359L 0.284H 0.355L 0.355H 0.287L 0.353H 0.36L 0.28H 0.359L 0.357H 0.283L 0.355H 0.361L 0.281H 0.361L 0.357H 0.282L 0.357H 0.363L 0.278H 0.36L 0.358H 0.281L 0.357H 0.363L 0.276H 0.363L 0.36H 0.278L 0.358H 0.364L 0.275H 0.364L 0.359H 0.278L 0.359H 0.365L 0.274H 0.363L 0.361H 0.276L 0.36H 0.366L 0.271H 0.366L 0.361H 0.275L 0.361H 0.365L 0.271H 0.366L 0.361H 0.273L 0.361H 0.367L 0.269H 0.366L 0.362H 0.273L 0.363H 0.367L 0.268H 0.368L 0.363H 0.271L 0.362H 0.367L 0.268H 0.367L 0.363H 0.27L 0.362H 0.369L 0.266H 0.368L 0.364H 0.269L 0.365H 0.368L 0.265H 0.369L 0.363H 0.269L 0.363H 0.369L 0.265H 0.368L 0.365H 0.267L 0.365H 0.37L 0.264H 0.369L 0.364H 0.268L 0.365H 0.369L 0.263H 0.369L 0.365H 0.267L 0.364H 0.369L 0.264H 0.37L 0.365H 0.266L 0.365H 0.37L 0.262H 0.37L 0.365H 0.266L 0.366H 0.369L 0.263H 0.37L 0.365H 0.266L 0.365H 0.37L 0.262H 0.371L 0.365H 0.265L 0.367H 0.37L 0.262H 0.371L 0.365H 0.266L 0.366H 0.37L 0.262H 0.37L 0.366H 0.266L 0.366H 0.37L 0.262H 0.371L 0.365H 0.265L 0.366H 0.37L 0.262H 0.37L 0.365H 0.266L 0.365H 0.37L 0.262H 0.37L 0.366H 0.266L 0.365H 0.37L 0.263H 0.371L 0.365H 0.266L 0.366H 0.37L 0.263H 0.369L 0.365H 0.267L 0.365H 0.371L 0.262H 0.37L 0.366H 0.266L 0.365H 0.37L 0.263H 0.37L 0.365H 0.266L 0.365H 0.37L 0.262H 0.369L 0.366H 0.266L 0.365H 0.371L 0.262H 0.37L 0.367H 0.265L 0.366H 0.37L 0.263H 0.37L 0.365H 0.266L 0.365H 0.371L 0.263H 0.369L 0.367H 0.266L 0.365H 0.371L 0.262H 0.371L 0.365H 0.266L 0.365H 0.369L 0.264H 0.369L 0.365H 0.266L 0.365H 0.371L 0.263H 0.369L 0.366H 0.267L 0.365H 0.369L 0.263H 0.37L 0.365H 0.267L 0.364H 0.368L 0.265H 0.368L 0.364H 0.268L 0.363H 0.371L 0.264H 0.369L 0.366H 0.268L 0.366H 0.367L 0.265H 0.37L 0.362H 0.27L 0.362H 0.368L 0.268H 0.366L 0.364H 0.269L 0.364H 0.37L 0.265H 0.369L 0.363H 0.271L 0.364H 0.364L 0.269H 0.367L 0.361H 0.273L 0.36H 0.368L 0.27H 0.366L 0.363H 0.272L 0.364H 0.367L 0.268H 0.368L 0.36H 0.276L 0.362H 0.361L 0.273H 0.364L 0.361H 0.276L 0.357H 0.369L 0.273H 0.366L 0.361H 0.274L 0.364H 0.363L 0.273H 0.365L 0.355H 0.282L 0.357H 0.359L 0.278H 0.361L 0.361H 0.278L 0.357H 0.366L 0.276H 0.366L 0.354H 0.279L 0.363H 0.356L 0.279H 0.36L 0.351H 0.29L 0.351H 0.358L 0.283H 0.359L 0.363H 0.279L 0.358H 0.364L 0.28H 0.368L 0.339H 0.288L 0.36H 0.343L 0.291H 0.346L 0.354H 0.303L 0.341H 0.369L 0.28H 0.369L 0.377H 0.247L 0.386H 0.266L 0.363H 0.3L 0.432H 0.261L 0.379H 0.319L 0.277H 0.378L 0.345H 0.378L 0.315H 0.377L 0.257H 0.354L 0.407H 0.251L 0.38H 0.26L 0.341H 0.352L 0.277H 0.343L 0.263H 0.498L 0.356H 0.274L 1.674H 0.148L 0.374H 0.923L/空気
設計基準波長λ=622nm(主反射波長λ=λ/3程度)
上記膜構成で示されるように、多層膜フィルター40では、厳密に周期的な膜厚構造を有しないため、多層膜部と整合部を明確に区別することはできない。しかしながら、多層膜フィルター40は、実質的には3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0119】
即ち、多層膜フィルター40にも、第1の範囲r1の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される第2の範囲r2の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される第3の範囲r3の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される第1の範囲r1の光学膜厚を有する第4の層と、第4の層に積層される第2の範囲r2の光学膜厚を有する第5の層と、第5の層に積層される第3の範囲r3の光学膜厚を有する第6の層とからなる基本構成を見出し得る。
【0120】
第1の範囲r1の光学膜厚の中心値である第1の光学膜厚t1、第2の範囲r2の光学膜厚の中心値である第2の光学膜厚t2、第3の範囲r3の光学膜厚の中心値である第3の光学膜厚t3は、それぞれ異なるが、第2の光学膜厚t2と第3の光学膜厚t3は、ほぼ等しい。3層の合計光学膜厚tcは、およそλ/4であり、基本構成の膜厚tbは、およそλ/2である。第2の範囲r2に対する第1の範囲r1の比率は、およそ0.72である。
【0121】
図14で示されるように、多層膜フィルター40では、反射幅が32nmである反射帯が、設計基準波長λの約1.02倍の波長である635nmを中心に形成される。このため、多層膜フィルター40は、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0122】
さらに、多層膜フィルター40では、緩やかに周期的な膜厚構造による細かな膜厚調整により反射帯近傍の透過帯に生じるリップルが抑制されているため、多層膜フィルター20と比べて、透過特性が改善している。従って、多層膜フィルター40は、さらに高い有用性を有する。
【0123】
本実施例で示されるように、周期的な膜厚構造は厳密な周期性を必要とするものではなく、ある程度の周期性で足りる。このため、本明細書で記載される周期的な膜厚構造は、厳密な周期性を有する膜厚構造に限定されず、ある程度の周期性を有する膜厚構造を含む。
【0124】
なお、635nmを中心に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター40は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【実施例4】
【0125】
図15は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
本実施例に係る多層膜フィルター50は、第1の光学膜厚t1が第2の光学膜厚t2及び第3の光学膜厚t3よりも厚い点を除いて、実施例1に係る多層膜フィルター20と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例1に係る多層膜フィルター20と同様である。
【0126】
多層膜フィルター50の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.191H 0.465L 0.293H (0.4L 0.3H 0.3L 0.4H 0.3L 0.3H)70 0.223H 0.32L 0.379H 0.993L/空気
設計基準波長λ=636nm(主反射波長λ=λ/3)
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体であり、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0127】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3、3層の合計光学膜厚tc、基本構成の膜厚tbは、以下のとおりである。
t1=0.4λ/4、t2=0.3λ/4、t3=0.3λ/4
tc=λ/4、tb=λ/2
【0128】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3では、以下の関係が成立している。
t2/t1=0.75
t2=t3
図15で示されるように、多層膜フィルター50では、反射幅31nmの反射帯が、設計基準波長λの約1.02倍の波長である650nmを中心に形成される。このため、多層膜フィルター50は、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0129】
また、本実施例に係る多層膜フィルター50でも、実施例2または実施例3に係る多層膜フィルターと同様の膜厚調整を行うことで、リップルを抑制し、透過特性を改善することができる。
【0130】
なお、650nmを中心に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター50は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【0131】
図16は、従来技術に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
従来技術に係る多層膜フィルター60は、H層とL層の2層から成る基本構成が積層された多層膜部を有する多層膜フィルターである。なお、各構成の材料は、実施例1に係る多層膜フィルター20と同様である。
【0132】
多層膜フィルター60の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.2H 0.4L (2.2H 1.8L)30 2.2H 0.9L/空気
設計基準波長λ=650nm(主反射波長λ=2λ=1300nm)
図16で示されるように、多層膜フィルター60は、2次反射帯として、反射幅30nmの反射帯が650nmを中心に形成される。しかしながら、主反射帯、3次反射帯が、それぞれ1300nm、433nmを中心に形成されるため、多層膜フィルター60は、広い透過帯を有しない。このため、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして機能しない。
【0133】
図16に示される分光透過率特性と図12から図15に示される分光透過率特性を比較すると、実施例1から実施例4の多層膜フィルターの有用性が容易に理解できる。
【実施例5】
【0134】
図17は、本実施例に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。図18は、本実施例に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。なお、図18は、入射角45度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。
【0135】
本実施例に係る多層膜フィルター70は、実施例2に係る多層膜フィルター30と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例2に係る多層膜フィルター30と同様である。
【0136】
多層膜フィルター70の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.109H 0.445L 0.209H 0.339L 0.26H 0.254L 0.372H 0.223L 0.331H 0.342L 0.215H 0.431L 0.289H 0.245L 0.44H 0.278L 0.263H 0.472L 0.255H 0.262L 0.487H 0.233L 0.277H 0.517L 0.195H 0.314L 0.453H 0.188L 0.333H 0.432L 0.183H 0.371L 0.424H 0.19L 0.384H 0.43L 0.178H 0.414L 0.413H 0.191L 0.419H 0.43L (0.195H 0.408L 0.399H 0.196L 0.403H 0.399L)20 0.178H 0.412L 0.371H 0.19L 0.438H 0.4L 0.182H 0.434L 0.351H 0.186L 0.427H 0.366L 0.165H 0.474L 0.306H 0.176L 0.513H 0.276L 0.183H 0.518L 0.228H 0.238L 0.5H 0.204L 0.256H 0.463L 0.221H 0.306L 0.432H 0.198L 0.284H 0.464L 0.199H 0.355L 0.404H 0.158L 0.394H 0.424L 0.193H 0.481L 0.255H 0.21L 0.367H 0.266L 0.29H 0.229L 0.322H 0.201L 0.463H 0.81L/空気
設計基準波長λ=737nm(主反射波長λ=λ/3)
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体である。また、基本構成の第1の層と第4の層、第2の層と第5の層、第3の層と第6の層の光学膜厚は、それぞれ第1の範囲r1、第2の範囲r2、第3の範囲r3にあり、それぞれほぼ同等である。従って、多層膜部は、実質的には3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0137】
第1の範囲r1の光学膜厚の中心値である第1の光学膜厚t1、第2の範囲r2の光学膜厚の中心値である第2の光学膜厚t2、第3の範囲r3の光学膜厚の中心値である第3の光学膜厚t3は、それぞれ異なるが、第2の光学膜厚t2と第3の光学膜厚t3は、ほぼ等しい。3層の合計光学膜厚tcは、およそλ/4であり、基本構成の膜厚tbは、およそλ/2である。
【0138】
第1の範囲r1は、0.195λ/4から0.196λ/4の範囲であり、膜厚に比べて極狭い範囲である。また、第2の範囲r2は、0.403λ/4から0.408λ/4の範囲であり、膜厚に比べて極狭い範囲である。第3の範囲r3は、0.399λ/4であり、第3の光学膜厚t3に等しい。第2の範囲r2に対する第1の範囲r1の比率は、およそ0.48である。
【0139】
図17に示されるように、多層膜フィルター70では、光が垂直に入射する場合には、反射帯が設計基準波長λの約1.03倍の波長である760nmを中心に形成される。多層膜フィルター70は、反射帯がその短波長側の端部の波長帯域において急峻な特性を示しているため、当該波長帯域で特に良好な波長分離特性を有する。
【0140】
また、図18に示されるように、本実施例に係る多層膜フィルター70では、光が45度の入射角で入射する場合には、反射帯が700nm程度を中心に形成される。即ち、分光透過率特性が全体的に短波長側に移動している。一般に、このような斜め入射による分光透過率特性の移動には、分光透過率特性における反射帯端部の急峻な特性の劣化が伴う。これは、斜め入射ではS偏光とP偏光で分光透過率特性が異なることが原因である。
【0141】
しかしながら、多層膜フィルター70では、図18に示されるように、反射帯の短波長側の端部で、S偏光の特性(図18の線Sを参照)とP偏光の特性(図18の線Pを参照)が一致している。つまり、反射帯の短波長側の端部ではS偏光とP偏光で光学特性に分離がなく、端部の波長が一致している。このため、光が斜めに入射する場合であっても、反射帯の短波長側の端部における入射光全体に対する特性(図18の線RNDを参照)の急峻さが維持されている。従って、多層膜フィルター70は、入射光に対して斜めに配置されるダイクロイックミラーとして好適である。
【0142】
なお、図17及び図18に示される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。また、新規反射帯で得られるS偏光とP偏光で反射帯端部の波長が一致する性質は、従来技術に係る多層膜フィルターでは得られない非常に有用な性質である。つまり、多層膜フィルター70は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、ダイクロイックミラーとして所望の特性を実現している。
【実施例6】
【0143】
図19は、本実施例に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。図20は、本実施例に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。なお、図20は、入射角45度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。
【0144】
本実施例に係る多層膜フィルター80は、実施例4に係る多層膜フィルター50と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例4に係る多層膜フィルター50と同様である。
【0145】
多層膜フィルター80の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.131H 0.18L 1.806H 1.724L 1.535H 1.783L 1.568H 1.566L 1.802H 1.46L 1.514H 1.794L 1.504H 1.485L (1.8H 1.6L 1.6H 1.8L 1.6H 1.6L)21 1.817H 1.487L 1.521H 1.802L 1.49H 1.448L 1.802H 1.583L 1.539H 1.774L 1.529H 1.545L 1.557H 0.793L/空気
設計基準波長λ=625nm(主反射波長λ=5λ/3)
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体であり、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0146】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3、3層の合計光学膜厚tc、基本構成の膜厚tbは、以下のとおりである。
t1=1.8λ/4、t2=1.6λ/4、t3=1.6λ/4
tc=5λ/4、tb=5λ/2
【0147】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3では、以下の関係が成立している。
t2/t1=8/9
t2=t3
図19に示されるように、多層膜フィルター80では、光が垂直に入射する場合には、反射帯が設計基準波長λの約0.99倍の波長である621nmを中心に形成される。多層膜フィルター80は、反射帯がその長波長側の端部の波長帯域において急峻な特性を示しているため、当該波長帯域で特に良好な波長分離特性を有する。
【0148】
また、図20に示されるように、本実施例に係る多層膜フィルター80では、光が45度の入射角で入射する場合には、分光透過率特性が全体的に短波長側に移動しているが、反射帯の長波長側の端部(575nm付近)で、S偏光の特性(図20の線Sを参照)とP偏光の特性(図20の線Pを参照)が一致している。つまり、反射帯の長波長側の端部ではS偏光とP偏光で光学特性に分離がなく、端部の波長が一致している。このため、光が斜めに入射する場合であっても、反射帯の長波長側の端部における入射光全体に対する特性(図20の線RNDを参照)の急峻さが維持されている。従って、多層膜フィルター80は、入射光に対して斜めに配置されるダイクロイックミラーとして好適である。
【0149】
なお、図19及び図20に示される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。また、新規反射帯で得られるS偏光とP偏光で反射帯端部の波長が一致する性質は、従来技術に係る多層膜フィルターでは得られない非常に有用な性質である。つまり、多層膜フィルター80は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、ダイクロイックミラーとして所望の特性を実現している。
【実施例7】
【0150】
図21は、本実施例に係る多層膜フィルターの構成を示す概略図である。図22は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
図21(a)に示されるように、本実施例に係る多層膜フィルター90は、H層とL層が交互に積層された多層膜部91と、整合部92を含んでいる。また、多層膜フィルター90は、両面研磨平行平板である透明な基板94の主成膜面に形成されていて、基板94の裏面には反射防止膜95が形成されている。
【0151】
なお、高屈折率材料、低屈折率材料は、それぞれTa2O5、SiO2であり、H層及びL層は、イオンアシスト蒸着(IAD)を用いて形成される。また、基板94の材料は、BK7であり、反射防止膜95は、MgF2からなる単層である。
【0152】
多層膜フィルター90の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.288H 0.478L 0.367H 0.531L (0.6H 0.35L 0.4H 0.65L)40 0.326H 0.542L 0.149H 1.946L/空気
設計基準波長λ=600nm(主反射波長λ=λ/2)
上記膜構成で示されるように、多層膜部91は、基本構成93が積層された構造体であり、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0153】
図21(b)に示されるように、基本構成93は、第1の光学膜厚t1を有する第1の層96と、第1の層96に積層される第2の光学膜厚t2を有する第2の層97と、第2の層97に積層される第3の光学膜厚t3を有する第3の層98と、第3の層98に積層される第4の光学膜厚t4を有する第4の層99とからなる。
【0154】
第1の光学膜厚t1、第2の光学膜厚t2、第3の光学膜厚t3、第4の光学膜厚t4、4層の合計光学膜厚tcは、以下のとおりである。
t1=0.6λ/4、t2=0.35λ/4、
t3=0.4λ/4、t4=0.65λ/4、tc=λ/2
また、上記膜構成で示されるように、整合部92は、多層膜フィルター90の反射帯の周辺に生じるリップルを抑制するための1層以上の整合層を含む。整合層もH層やL層と同様の材料からなる。
【0155】
図22で示されるように、本実施例に係る多層膜フィルター90では、反射幅63nmの反射帯が設計基準波長λ(600nm)付近に形成される。このため、多層膜フィルター20は、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0156】
なお、600nm付近に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター90は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【実施例8】
【0157】
図23は、本実施例に係る多層膜フィルターの分光透過率特性を示す図である。
本実施例に係る多層膜フィルター100は、反射帯周辺に生じるリップルをさらに抑制するために、整合部に含まれる整合層の層数を増やしている点を除いて、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様である。
【0158】
多層膜フィルター100の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.316H 0.54L 0.363H 0.567L 0.641H 0.413L 0.522H 0.435L 0.758H 0.382L 0.524H 0.364L 0.729H 0.282L 0.475H 0.351L (0.6H 0.35L 0.4H 0.65L)34 0.369H 0.573L 0.309H 0.788L 0.399H 0.623L 0.279H 0.851L 0.475H 0.532L 0.494H 0.412L 0.812H 0.429L 0.322H 1.322L/空気
設計基準波長λ=600nm(主反射波長λ=λ/2)
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体であり、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。なお、基本構成は、実施例7に係る多層膜フィルター90の基本構成と同じである。
【0159】
図23で示されるように、多層膜フィルター100では、反射幅62nmの反射帯が設計基準波長λ(600nm)付近に形成される。このため、多層膜フィルター100は、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様に、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0160】
さらに、多層膜フィルター100では、整合層による細かな膜厚調整により反射帯近傍の透過帯に生じるリップルが抑制されているため、多層膜フィルター90と比べて、透過特性が改善している。従って、多層膜フィルター100は、さらに高い有用性を有する。
【0161】
なお、600nm付近に形成される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。つまり、多層膜フィルター100は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとして所望の特性を実現している。
【実施例9】
【0162】
図24は、本実施例に係る多層膜フィルターの、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。図25は、本実施例に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。図26は、本実施例に係る多層膜フィルターの入射角毎の分光透過率特性を示す図である。なお、図25は、入射角45度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。図26は、入射角0度、入射角30度、入射角45度、及び入射角60度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。
【0163】
本実施例に係る多層膜フィルター110は、反射帯周辺に生じるリップルをさらに抑制するために、厳密に周期的な膜厚構造を有さず緩やかに周期的な膜厚構造を有している点を除いて、実施例8に係る多層膜フィルター100と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例8に係る多層膜フィルター100と同様である。
【0164】
多層膜フィルター110の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.248H 0.592L 0.353H 0.543L 0.633H 0.392L 0.551H 0.406L 0.755H 0.374L 0.505H 0.399L 0.703H 0.368L 0.442H 0.443L 0.641H 0.4L 0.406H 0.551L 0.6H 0.438L 0.388H 0.558L 0.627H 0.393L 0.399H 0.535L 0.627H 0.357L 0.404H 0.57L 0.6H 0.357L 0.407H 0.629L 0.586H 0.37L 0.41H 0.638L 0.593H 0.362L 0.405H 0.639L 0.593H 0.357L 0.404H 0.644L 0.596H 0.356L 0.403H 0.647L 0.599H 0.352L 0.401H 0.647L 0.598H 0.35L 0.4H 0.651L 0.602H 0.349L 0.4H 0.651L 0.601H 0.348L 0.398H 0.653L 0.602H 0.347L 0.398H 0.654L 0.603H 0.346L 0.397H 0.654L 0.603H 0.345L 0.397H 0.655L 0.604H 0.345L 0.397H 0.655L 0.604H 0.344L 0.397H 0.655L 0.604H 0.344L 0.397H 0.655L 0.605H 0.344L 0.397H 0.655L 0.604H 0.344L 0.397H 0.654L 0.604H 0.345L 0.399H 0.654L 0.604H 0.346L 0.398H 0.652L 0.602H 0.346L 0.4H 0.651L 0.603H 0.347L 0.401H 0.65L 0.6H 0.35L 0.4H 0.648L 0.601H 0.35L 0.404H 0.645L 0.598H 0.354L 0.403H 0.646L 0.593H 0.357L 0.407H 0.635L 0.592H 0.355L 0.399H 0.656L 0.517H 0.379L 0.385H 0.687L 0.51H 0.374L 0.432H 0.676L 0.528H 0.4L 0.413H 0.676L 0.529H 0.382L 0.45H 0.591L 0.573H 0.397L 0.407H 0.771L 0.395H 0.676L 0.251H 0.79L 0.56H 0.406L 0.615H 0.262L 1.022H 0.375L 0.336H 1.254L/空気
設計基準波長λ=600nm(主反射波長λ=λ/2程度)
上記膜構成で示されるように、多層膜フィルター110では、厳密に周期的な膜厚構造を有しないため、多層膜部と整合部を明確に区別することはできない。しかしながら、多層膜フィルター110は、実質的には4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0165】
即ち、多層膜フィルター110には、第1の範囲r1の光学膜厚を有する第1の層と、第1の層に積層される第2の範囲r2の光学膜厚を有する第2の層と、第2の層に積層される第3の範囲r3の光学膜厚を有する第3の層と、第3の層に積層される第4の範囲r4の光学膜厚を有する第4の層とからなる基本構成を見出し得る。
【0166】
第1の範囲r1の光学膜厚の中心値である第1の光学膜厚t1、第2の範囲r2の光学膜厚の中心値である第2の光学膜厚t2、第3の範囲r3の光学膜厚の中心値である第3の光学膜厚t3、第4の範囲r4の光学膜厚の中心値である第4の光学膜厚t4は、それぞれ異なる。4層の合計光学膜厚tcは、およそλ/2である。
【0167】
図24で示されるように、多層膜フィルター110では、光が垂直に入射する場合には、反射幅62nmの反射帯が設計基準波長λ(600nm)付近に形成される。このため、多層膜フィルター110は、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様に、狭い反射帯と広い透過帯を有するマイナスフィルターとして好適である。
【0168】
さらに、多層膜フィルター110では、緩やかに周期的な膜厚構造による細かな膜厚調整により反射帯近傍の透過帯に生じるリップルが抑制されているため、多層膜フィルター90と比べて、透過特性が改善している。従って、多層膜フィルター110は、さらに高い有用性を有する。
【0169】
また、図25に示されるように、多層膜フィルター110では、光が45度の入射角で入射する場合には、光が垂直に入射する場合に比べて、分光透過率特性が全体的に短波長側に移動している。また、S偏光とP偏光で分光透過率特性が異なっている。
【0170】
しかしながら、多層膜フィルター110では、反射帯の短波長側の端部で、S偏光の特性(図25の線Sを参照)とP偏光の特性(図25の線Pを参照)に分離がなく、端部の波長が一致している。つまり、S偏光とP偏光の反射帯端部の波長が一致している。このため、光が入射角45度で入射する場合であっても、反射帯の短波長側の端部における入射光全体に対する特性(図25の線RNDを参照)の急峻さが維持されている。
【0171】
また、このような性質は、図26に示されるように、入射角によらず維持されている。つまり、入射角0度、30度、45度、60度で入射する光に対する分光透過率特性(それぞれ、図26の線RND0、線RND30、線RND45、線RND60を参照)のいずれも、反射帯の短波長側の端部で急峻である。
【0172】
従って、多層膜フィルター110は、入射光に対して斜めに配置されるダイクロイックミラーとして好適である。また、反射波長を変更することができるマイナスフィルターとしても好適である。
【0173】
なお、図24、図25、及び図26に示される反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。また、新規反射帯で得られるS偏光とP偏光で反射帯端部の波長が一致する性質は、従来技術に係る多層膜フィルターでは得られない非常に有用な性質である。つまり、多層膜フィルター110は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マイナスフィルターとダイクロイックミラーとのいずれとしても所望の特性を実現している。
【実施例10】
【0174】
図27は、本実施例に係る多層膜フィルターの、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。なお、図27は、入射角45度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。
【0175】
本実施例に係る多層膜フィルター120は、反射帯周辺に生じるリップルをさらに抑制するために整合部に含まれる整合層の層数を増やしている点と、基板の裏面に形成される反射防止膜が45度で入射する可視光域の光の反射を防止するように構成されている点を除いて、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様の構成を有している。なお、各構成の材料も、実施例7に係る多層膜フィルター90と同様である。
【0176】
多層膜フィルター120の膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/0.131H 0.223L 1.065H 1.115L 0.908H 1.06L 0.932H 1.07L 0.851H 1.095L 0.964H 1.11L 0.84H 1.133L 0.968H 1.097L 0.781H 1.14L 0.982H 1.102L 0.769H 1.169L (1H 1.1L 0.7H 1.2L)10 0.995H 1.099L 0.725H 1.169L 0.994H 1.084L 0.758H 1.152L 0.982H 1.091L 0.824H 1.137L 0.969H 1.033L 0.816H 1.043L 0.865H 1.064L 0.936H 1.697L/空気
設計基準波長λ=1050nm(主反射波長λ=λ
上記膜構成で示されるように、多層膜部は、基本構成が積層された構造体であり、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有している。
【0177】
図27で示されるように、多層膜フィルター120では、狭い反射帯が400nm付近、490nm付近、640nm付近に形成される。また、それぞれの反射帯は、少なくともその反射帯の一方の端部でS偏光の特性とP偏光の特性が一致している。このため、反射帯の少なくとも一方の端部における入射光全体に対する特性の急峻さが維持されている。
【0178】
従って、広く用いられている405nmレーザー、488nmレーザー、638nmレーザーのレーザー光を反射し、他の帯域の光を透過するマルチバンドのダイクロイックミラーとして好適である。上記の3波長のレーザーは、特に、バイオ分野において最も一般的に利用されるレーザーである。このため、多層膜フィルター120は、蛍光色素を使用する分析機器に用いられるマルチバンドのダイクロイックミラーとして特に好適である。
【0179】
なお、主反射帯は、垂直に光が入射する場合には、設計基準波長(1050nm)近傍に形成されるが、光が入射角45度で入射する場合には、960nm付近に形成される。従って、図27に示される反射帯のうち、400nm付近、640nm付近に形成される
反射帯は、従来技術に係る多層膜フィルターでは形成されない新規反射帯である。また、490nm付近に形成される反射帯は、2次反射帯に相当する反射帯である。即ち、多層膜フィルター120は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造により、マルチバンドのダイクロイックミラーとしても所望の特性を実現している。
【実施例11】
【0180】
図28は、本実施例に係る光学部品の、垂直に入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。図29、図30、及び図31は、本実施例に係る光学部品の、斜めに入射する光に対する分光透過率特性を示す図である。なお、図29、図30、図31は、それぞれ入射角30度、45度、60度で入射する光に対する分光透過率特性を示している。
【0181】
本実施例に係る光学部品130は、両面研磨平行平板である透明な基板を挟んで、第1の多層膜フィルターと、第2の多層膜フィルターとを含んでいる。
第1の多層膜フィルター及び第2の多層膜フィルターは、それぞれH層とL層が交互に積層された複数の多層膜部と、整合部を含んでいる。なお、第1の多層膜フィルターは、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部と、2層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含んでいる。一方、第2の多層膜フィルターは、2層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部のみを含んでいる。このため、第1の多層膜フィルターは、本実施例に係る多層膜フィルターであり、第2の多層膜フィルターは、従来技術に係る多層膜フィルターである。
【0182】
なお、高屈折率材料、低屈折率材料は、それぞれTa2O5、SiO2であり、H層及びL層は、イオンアシスト蒸着(IAD)を用いて形成される。また、基板の材料は、合成石英(BK7)である。
【0183】
第1の多層膜フィルターの膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/1.167H 1.123L 0.977H 0.927L 1.056H 1.057L 0.911H 0.889L 1.064H 1.096L 0.888H 0.82L 1.125H 1.056L 0.961H 0.737L (1.16H 1.026L 1.026H 0.8L)34 1.192H 1.005L 0.917H 1.019L 1.119H 0.976L 1.062H 1.078L 1.25H 1.137L 1.409H 1.199L 1.41H 1.158L 1.424H 1.124L (1.433H 1.136L)28 1.405H 1.093L 1.411H 1.175L 1.396H 1.188L 1.345H 1.153L 1.279H 1.329L 1.305H 1.285L 1.08H 1.42L 1.845H 0.812L/空気
設計基準波長λ=870nm
【0184】
第2の多層膜フィルターの膜構成、及び、設計基準波長λは、以下のとおりである。
基板/2.557H 1.73L 0.456H 0.736L 1.138H 0.794L 0.903H 0.901L (0.89H 0.905L)8 0.882H 0.905L 0.964H 0.84L 0.779H 1.047L 3.064H 1.055L 2.94H 1.092L 2.989H 1.073L 2.986H 1.085L (3H 1.1L)12 2.979H 1.097L 2.953H 1.167L 2.88H 1.214L 2.778H 1.366L 2.498H 1.833L 2.914H 0.439L 3.521H 1.448L/空気
設計基準波長λ=522nm
また、上記膜構成で示されるように、第1の多層膜フィルターの整合部及び第2の多層膜フィルターの整合部は、それぞれ反射帯の周辺に生じるリップルを抑制するために多数の整合層を含んでいる。
【0185】
図28で示されるように、光学部品130では、長波長のみを透過する急峻な分光透過率特性が実現されている。また、図29から図31で示されるように、光学部品130では、光が斜めから入射する場合でも、P偏光とS偏光での分光透過率特性の相違が極めて小さい。このため、光学部品130は、入射光に対して斜めに配置されるダイクロイックミラーとしても、ロングパスフィルターとしても好適である。
【0186】
なお、このような性質は、従来技術に係る多層膜フィルターである第2の多層膜フィルターでは実現し得ない。これは、主に、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む第1の多層膜フィルターによって実現されている。つまり、光学部品130は、従来技術に係る多層膜フィルターとは異なる上記の構造によりダイクロイックミラーとしても、ロングパスフィルターとしても所望の特性を実現している。
【0187】
以下、上述した実施例1から実施例11に開示される多層膜フィルターを用いた蛍光顕微鏡について説明する。
【実施例12】
【0188】
図32は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。図32に例示される蛍光顕微鏡140は、観察光路上に、上述した実施例で開示されるような、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルター(多層膜フィルター146a、多層膜フィルター146b)が配置された蛍光顕微鏡である。蛍光顕微鏡140は、多層膜フィルターにより検出波長帯及びその幅を任意に変更することができる。
【0189】
蛍光顕微鏡140は、励起光を射出する光源141と、照明レンズ142と、励起フィルター143と、励起光を反射し蛍光を透過するダイクロイックミラー144と、試料Sに励起光を照射する対物レンズ145と、多層膜フィルター群146(多層膜フィルター146a、多層膜フィルター146b)と、レンズ147と、プリズム148と、カメラ149を含んでいる。
【0190】
多層膜フィルター群146を構成する多層膜フィルター146a及び多層膜フィルター146bの各々は、光軸に対する傾きが変更可能に配置されている。また、各々、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有しているため、入射角の変更により分光透過率特性の急峻さを維持しながら透過帯を移動させることができる。この性質を利用することで、多層膜フィルター群146は全体として、透過帯が形成される波長帯域及びその幅を任意に変更することができるバンドパスフィルターとして機能する。
【0191】
試料Sとしては、例えば、発生・再生研究で使用される、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、組織スライス、脳スライスなどの比較的厚い試料が用いられる。
光源141から射出された励起光は、照明レンズ142で略平行光束に変換されて、励起フィルター143に入射する。励起フィルター143は、試料S中の蛍光物質の励起に必要な波長帯域の光のみを選択的に透過させる。これにより、励起に必要な波長帯域の光のみが、ダイクロイックミラー144、対物レンズ145、及びカバーガラスCを介して、試料Sに照射されて、蛍光物質が励起される。
【0192】
試料S中の蛍光物質から生じた蛍光は、対物レンズ145を介してダイクロイックミラーに入射する。ダイクロイックミラー144は、蛍光とともに入射する試料S等を反射した励起光を反射し、蛍光のみを透過させる。ただし、蛍光には、試料S以外から生じる蛍光(自家蛍光)も含まれている。
【0193】
多層膜フィルター群146に入射した蛍光は、多層膜フィルター群146で自家蛍光が効率よく取り除かれる。そして、自家蛍光が取り除かれた蛍光が、レンズ147、プリズム148を介して、カメラ149に入射し、S/N比の良好な信号により蛍光画像が形成される。
【0194】
以下、図33を参照しながら、多層膜フィルター群146による自家蛍光の除去方法について、具体的に説明する。
図33は、バンドパスフィルターとして機能する多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bの透過率特性を示した図である。図33(a)は、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bが光軸に対して垂直に配置されている場合の特性を示し、図33(b)は、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bの一方が光軸に対して傾いて配置されている場合の特性を示している。
【0195】
なお、図33では、説明を簡略化するため、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bが同じ分光透過率特性を有する場合を例示したが、特にこれに限られない。多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bは異なる分光透過率特性と有してもよい。
【0196】
図33(a)に例示されるように、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bが光軸に垂直に配置されている場合には、互いの分光透過率特性が一致しているため、多層膜フィルター群146全体としての透過帯TBは、多層膜フィルター146a、多層膜フィルター146bのそれぞれの透過帯と一致する。
【0197】
一方で、図33(b)に例示されるように、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bの一方(ここでは、多層膜フィルター146b)が光軸に対して傾いて配置されている場合には、多層膜フィルター(多層膜フィルター146b)の特性が短波長側に移動するため、互いの分光透過率特性が一致しない。多層膜フィルター群146全体としての透過帯TBは、多層膜フィルター146aの透過帯と多層膜フィルター146bの透過帯が重なっている波長帯域のみとなるため、透過帯が狭くなる。
【0198】
このように、多層膜フィルター146aと多層膜フィルター146bの傾きをそれぞれ調整することで、任意の波長帯域に任意の帯域幅の透過帯を形成することができる。通常、検出対象とする蛍光はある特定の波長帯域Fを有するのに対して、自家蛍光はより広い波長帯域を有している。このため、透過帯の幅や形成される位置を制御することで、自家蛍光を効率よく取り除くことが可能である。
【0199】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡140によれば、自家蛍光を効率よく取り除くことができる。このため、ノイズの少ない蛍光画像を形成することができる。
なお、ここでは、一方の多層膜フィルターのみを傾ける例を示したが、特にこれに限られない。両方の多層膜フィルターを傾けても良い。両方の多層膜フィルターを傾けることで、光軸に対して垂直に配置されている場合に形成される透過帯に制限されることなく、任意の波長帯域に任意の帯域幅の透過帯を形成することができる。
【0200】
また、ここでは、多層膜フィルターを2つ用いる例を示したが特にこれに限られず、多層膜フィルターは1つだけであってもよい。その場合でも、任意の波長帯域に透過帯を形成することができる。ただし、帯域幅は制御できないが、予め最適化された透過帯幅を有する多層膜フィルターが配置されることが望ましい。
【実施例13】
【0201】
図34は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。図34に例示される蛍光顕微鏡150では、照明光路上に、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルター151が配置されていて、励起フィルターとして機能している。
【0202】
蛍光顕微鏡150は、励起光を射出する光源141と、照明レンズ142と、多層膜フィルター151と、レンズ152と、視野絞り153と、レンズ154と、励起光を反射し蛍光を透過するダイクロイックミラー144と、試料Sに励起光を照射する対物レンズ145と、バリアフィルター155と、レンズ147と、プリズム148と、カメラ149を含んでいる。
【0203】
多層膜フィルター151は、光軸に対する傾きが変更可能に配置されている。また、多層膜フィルター151は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有しているため、入射角の変更により分光透過率特性の急峻さを維持しながら透過帯を移動させることができる。
【0204】
一般に、ダイクロイックミラーやバリアフィルターの反射帯と透過帯の境界部分(以降、立ち上がり波長帯域と記す。)には、ある程度の幅(以降、公差と記す。)がある。このため、蛍光フィルタセット(ダイクロイックミラー、バリアフィルター、及び励起フィルター)は、公差を踏まえて設計される。つまり、通常、励起フィルターは、さまざまなダイクロイックミラー、バリアフィルターに対応するため、公差を大きめに想定して設計される。このため、ダイクロイックミラーやバリアフィルターの透過帯と励起フィルターの透過帯の間に必要以上に大きな間隔が生じ、その結果、励起光の照明効率が低下する。
【0205】
しかしながら、本実施例に係る蛍光顕微鏡150では、多層膜フィルター151の光軸に対する傾きを変更することで、分光透過率特性の急峻さを維持しながら多層膜フィルター151の透過帯を移動させることができる。このため、ダイクロイックミラー144とバリアフィルタ155の透過帯と多層膜フィルター151の透過帯の間の間隔を、最小限に抑えることができる。
【0206】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡150によれば、励起光の照明効率を向上させることが可能であり、より明るい蛍光画像を形成することができる。
【実施例14】
【0207】
図35は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。図35に例示される蛍光顕微鏡160では、検出光路上に、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルター172が配置されていて、バンドパスフィルターとして機能している。
【0208】
蛍光顕微鏡160は、レーザー161と、コリメータレンズ162と、レーザー光を反射し励起光を透過するダイクロイックミラー163と、試料Sを走査するガルバノミラー164と、瞳投影レンズ165と、結像レンズ166と、ミラー167と、試料Sに励起光を照射する対物レンズ168と、蛍光を集光する共焦点レンズ169と、共焦点レンズ169の焦点位置にピンホールを有する共焦点絞り170と、ミラー171と、多層膜フィルター172、フォトマルチプライヤー173と、を含む走査型共焦点レーザー顕微鏡である。
【0209】
多層膜フィルター172は、光軸に対する傾きが変更可能に配置されている。また、多層膜フィルター172は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有しているため、入射角の変更により分光透過率特性の急峻さを維持しながら透過帯を移動させることができる。
【0210】
このため、蛍光顕微鏡160では、多層膜フィルター172の光軸に対する傾きを変更することで、さまざまな蛍光波長の蛍光を励起光から有効に分離することができる。
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡160によれば、蛍光波長の異なるさまざまな蛍光物質にバンドパスフィルターを交換することなく対応することができる。
【実施例15】
【0211】
図36は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を示す概略図である。図36に例示される蛍光顕微鏡180では、検出光路上に、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する多層膜部を含む多層膜フィルター181が配置されていて、極狭い透過帯を有するマイナスフィルター(ノッチフィルター)として機能している。
【0212】
蛍光顕微鏡180は、レーザー161と、コリメータレンズ162と、レーザー光を反射し励起光を透過するダイクロイックミラー163と、試料Sを走査するガルバノミラー164と、瞳投影レンズ165と、結像レンズ166と、ミラー167と、試料Sに励起光を照射する対物レンズ168と、多層膜フィルター181と、蛍光を集光する共焦点レンズ169と、共焦点レンズ169の焦点位置にピンホールを有する共焦点絞り170と、入射光を平行光束に変換するレンズ182と、回折格子183と、集光レンズ184と、分光スリット185と、フォトマルチプライヤー173と、を含む、分光検出機能を有する走査型共焦点レーザー顕微鏡である。
【0213】
蛍光顕微鏡180では、回折格子183が回転可能に配置されている。このため、回折格子183で分光された各波長の回折光の集光位置は、回折格子183の回転角によって変化する。また、分光スリット185も検出対象の波長帯域に応じて移動する。このため、任意の波長帯域の蛍光を、フォトマルチプライヤー173で検出することができる。
【0214】
多層膜フィルター181は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有しているため、極狭い反射帯を形成することができる。また、ダイクロイックミラー163と共焦点レンズ169の間の平行光束中に配置されているため、多層膜フィルター181は、最も良好な分光透過率特性を示す。このため、蛍光を遮断することなくレーザー光のみを効率良く排除することができる。
【0215】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡180によれば、蛍光画像の明るさを低下させることなく、効率よくレーザー光を排除することができる。
【符号の説明】
【0216】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、146a、146b、151、172、181・・・多層膜フィルター、146・・・多層膜フィルター群、21、91・・・多層膜部、22、92・・・整合部、23、93・・・基本構成、24、94・・・基板、25、95・・・反射防止膜、26a、96・・・第1の層、27a、97・・・第2の層、28a、98・・・第3の層、26b、99・・・第4の層、27b・・・第5の層、28b・・・第6の層、130・・・光学部品、S・・・試料、C・・・カバーガラス、140、150、160、180・・・蛍光顕微鏡、141・・・光源、142・・・照明レンズ、143・・・励起フィルター、144、163・・・ダイクロイックミラー、145、168・・・対物レンズ、147、152、154、182・・・レンズ、148・・・プリズム、149・・・カメラ、153・・・視野絞り、155・・・バリアフィルター、161・・・レーザー、162・・・コリメータレンズ、164・・・ガルバノミラー、165・・・瞳投影レンズ、166・・・結像レンズ、167、171・・・ミラー、169・・・共焦点レンズ、170・・・共焦点絞り、173・・・フォトマルチプライヤー、183・・・回折格子、184・・・集光レンズ、185・・・分光スリット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料からなる層と前記第1の材料と屈折率の異なる第2の材料からなる層が交互に積層される多層膜部を含み、
前記多層膜部は、3層以上を1周期とする周期的な膜厚構造を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、3層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、
第1の光学膜厚を有する第1の層と、
前記第1の層に積層される、第2の光学膜厚を有する第2の層と、
前記第2の層に積層される、第3の光学膜厚を有する第3の層と、
前記第3の層に積層される、前記第1の光学膜厚を有する第4の層と、
前記第4の層に積層される、前記第2の光学膜厚を有する第5の層と、
前記第5の層に積層される、前記第3の光学膜厚を有する第6の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、
前記第1の光学膜厚、前記第2の光学膜厚、及び前記第3の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項4】
請求項2に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、
第1の範囲の光学膜厚を有する第1の層と、
前記第1の層に積層される、第2の範囲の光学膜厚を有する第2の層と、
前記第2の層に積層される、第3の範囲の光学膜厚を有する第3の層と、
前記第3の層に積層される、前記第1の範囲の光学膜厚を有する第4の層と、
前記第4の層に積層される、前記第2の範囲の光学膜厚を有する第5の層と、
前記第5の層に積層される、前記第3の範囲の光学膜厚を有する第6の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、
前記第1の範囲の光学膜厚の中心値を第1の光学膜厚とし、前記第2の範囲の光学膜厚の中心値を第2の光学膜厚とし、前記第3の範囲の光学膜厚の中心値を第3の光学膜厚とすると、前記第1の光学膜厚、前記第2の光学膜厚、及び前記第3の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記第1の光学膜厚、前記第2の光学膜厚、前記第3の光学膜厚のうちの2つの光学膜厚は、略等しい
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の多層膜フィルターにおいて、
基準波長をλとし、前記第1の光学膜厚をt1とし、前記第2の光学膜厚をt2とし、前記第3の光学膜厚をt3とし、λ=4×(t1+t2+t3)の条件を満たすとき、
垂直に入射する光に対して前記基準波長近傍に反射帯を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項7】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の多層膜フィルターにおいて、
基準波長をλとし、前記第1の光学膜厚をt1とし、前記第2の光学膜厚をt2とし、前記第3の光学膜厚をt3とし、λ=4×(t1+t2+t3)の条件を満たすとき、
垂直に入射する光に対して前記基準波長の1/5倍の波長近傍に反射帯を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜フィルターは、前記反射帯を利用するマイナスフィルターである
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜フィルターは、前記反射帯を利用するダイクロイックミラーである
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項10】
請求項1に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、4層を1周期とする周期的な膜厚構造を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項11】
請求項10に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、
第1の光学膜厚を有する第1の層と、
前記第1の層に積層される、第2の光学膜厚を有する第2の層と、
前記第2の層に積層される、第3の光学膜厚を有する第3の層と、
前記第3の層に積層される、第4の光学膜厚を有する第4の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、
前記第1の光学膜厚、前記第2の光学膜厚、前記第3の光学膜厚、及び前記第4の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項12】
請求項10に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜部は、
第1の範囲の光学膜厚を有する第1の層と、
前記第1の層に積層される、第2の範囲の光学膜厚を有する第2の層と、
前記第2の層に積層される、第3の範囲の光学膜厚を有する第3の層と、
前記第3の層に積層される、第4の範囲の光学膜厚を有する第4の層と、からなる基本構成が積層された構造体であり、
前記第1の範囲の光学膜厚の中心値を第1の光学膜厚とし、前記第2の範囲の光学膜厚の中心値を第2の光学膜厚とし、前記第3の範囲の光学膜厚の中心値を第3の光学膜厚とし、前記第4の範囲の光学膜厚の中心値を第4の光学膜厚とすると、前記第1の光学膜厚、前記第2の光学膜厚、前記第3の光学膜厚、及び前記第4の光学膜厚の少なくとも1つは、他の光学膜厚と異なる
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の多層膜フィルターにおいて、
基準波長をλとし、前記第1の光学膜厚をt1とし、前記第2の光学膜厚をt2とし、前記第3の光学膜厚をt3とし、前記第4の光学膜厚をt4とし、λ=2×(t1+t2+t3+t4)の条件を満たすとき、
垂直に入射する光に対して前記基準波長近傍に反射帯を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載の多層膜フィルターにおいて、
基準波長をλとし、前記第1の光学膜厚をt1とし、前記第2の光学膜厚をt2とし、前記第3の光学膜厚をt3とし、前記第4の光学膜厚をt4とし、λ=2×(t1+t2+t3+t4)の条件を満たすとき、
垂直に入射する光に対して前記基準波長の1/3倍の波長近傍に反射帯を有する
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜フィルターは、前記反射帯を利用するマイナスフィルターである
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項16】
請求項13または請求項14に記載の多層膜フィルターにおいて、
前記多層膜フィルターは、前記反射帯を利用するダイクロイックミラーである
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の多層膜フィルターにおいて、
斜めに入射する入射光に含まれるP偏光に対する透過率特性と前記入射光に含まれるS偏光に対する透過率特性との相違が、所定の波長帯域で小さい
ことを特徴とする多層膜フィルター。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の多層膜フィルターを含む
ことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項19】
請求項18に記載の蛍光顕微鏡において、
前記多層膜フィルターは、検出光路に配置される
ことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項20】
請求項18に記載の蛍光顕微鏡において、
前記多層膜フィルターは、照明光路に配置される
ことを特徴とする蛍光顕微鏡。


【図32】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−242437(P2011−242437A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111931(P2010−111931)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】