多層配線基板の製造方法、多層配線基板及び電子機器
【課題】コンタクトホールの位置や大きさの制御性に優れた多層配線基板の製造方法、多層配線基板、電子機器。
【解決手段】第1導電層1と第2導電層とが絶縁層3を介して積層され、絶縁層3に開口された開口部4を介して第1導電層1と第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、第1導電層1上に撥液部2を形成する工程と、撥液部2の周囲に絶縁層3の形成材料を含む機能液L2を配置し、第1導電層1上に開口部4を有する絶縁層3を形成する工程と、を備え、絶縁層3を形成する工程では、機能液L2が撥液部2と接触する部分の角度が機能液L2の前進接触角よりも大きくなる条件で機能液L2を配置し、機能液L2の撥液部2に面する部分の位置を撥液部2の内側に流動させることにより、撥液部2の面積よりも小さい開口面積を備える開口部4を形成する。
【解決手段】第1導電層1と第2導電層とが絶縁層3を介して積層され、絶縁層3に開口された開口部4を介して第1導電層1と第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、第1導電層1上に撥液部2を形成する工程と、撥液部2の周囲に絶縁層3の形成材料を含む機能液L2を配置し、第1導電層1上に開口部4を有する絶縁層3を形成する工程と、を備え、絶縁層3を形成する工程では、機能液L2が撥液部2と接触する部分の角度が機能液L2の前進接触角よりも大きくなる条件で機能液L2を配置し、機能液L2の撥液部2に面する部分の位置を撥液部2の内側に流動させることにより、撥液部2の面積よりも小さい開口面積を備える開口部4を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、多層配線基板及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出法(インクジェット方式)を用いて所望の材料を含む液状体を吐出し、所定位置に着弾させることによって一定の材料パターンを形成する技術が活発に開発されている。このパターン形成技術は、用いるインクジェットヘッドの解像度に応じて微少な液状体を所望の位置に塗布することが可能であり、そのため微細なパターンの形成ができるという特長を有する。例えば、回路基板の微細な配線パターンを形成するには、配線材料または配線材料の溶液を塗布することにより配線パターンを形成することができる。
【0003】
しかしこの方法は、液状体を塗布する面の性質の影響を受けやすい。例えば、液状体の液滴を着弾させる箇所が液状体に対して濡れやすく(親液性)なっていると、塗布された液滴は所望の形状以上に塗れ広がってしまうことがある。逆に、着弾箇所が液状体に対して濡れにくく(撥液性)なっていると、液状体が着弾面で凝集し液溜り(バルジ)を形成してしまい、やはり所望の形状が形成できないという場合がある。
【0004】
ところで、近年の電子装置の小型化・多機能化という市場の要求に応え、電子回路は高密度化・高集積化する傾向を示している。この電子回路の高集積化を果たす技術の一つとしては、回路の多層配線構造が挙げられる。このような構造を備えた回路では、電子回路を平面的に形成するだけでなく、回路基板を積層させて縦方向にも形成することで、小さい設置面積で高い性能の回路を実現している。このような多層配線構造を採る場合、各層の配線パターン同士は、各層間の絶縁膜に形成されるコンタクトホールを介して接続される。一般に、このような多層配線構造を備えた回路では、回路の高密度化・高集積化の要求のため、コンタクトホールも微細なものが求められている。
【0005】
このようなコンタクトホールを形成する技術として、特許文献1や特許文献2には液滴吐出法を用いた形成方法が挙げられている。詳しくは、液滴吐出法にて絶縁膜の形成材料を含む液状体(絶縁インク)を塗布し層間絶縁膜を形成する際に、コンタクトホールの形成領域にのみ絶縁インクの塗布を行わないことで絶縁膜を形成しない領域を設け、この絶縁層を形成しない領域をコンタクトホールとする方法である。
【特許文献1】特開2003−282561号公報
【特許文献2】特開2006−140437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した方法では、例えば金属配線等の濡れ性がよい箇所にコンタクトホールを形成する場合に、塗布した絶縁インクが所望の領域外に濡れ拡がりやすいため、コンタクトホールを所望の大きさに制御することが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、コンタクトホールの位置や大きさの制御性に優れた多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。また、このような多層配線基板の製造方法を用いて製造することにより、微細なコンタクトホールを備えた多層配線基板を提供することを目的とする。更には、このような多層配線基板を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の多層配線基板の製造方法は、第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記絶縁層に開口された開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、前記第1導電層上に撥液部を形成する工程と、前記撥液部の周囲に前記絶縁層の形成材料を含む機能液を配置して前記第1導電層上に前記開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、を備え、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度が前記機能液の前進接触角よりも大きくなる条件で前記機能液を配置し、前記機能液の前記撥液部に面する部分の位置を前記撥液部の内側に流動させることにより、前記撥液部の面積よりも小さい開口面積を備える前記開口部形成することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、まず、形成する開口部(コンタクトホール)と重なる第1導電層上の領域よりも広い領域に、撥液材料を含む液状体(撥液インク)を塗布し撥液部を形成する。この撥液インクの塗布を液滴吐出法により行うので、所望の正確な位置に撥液部を形成することができる。
【0010】
次いで、絶縁層形成材料を含む機能液(絶縁インク)を塗布すると、絶縁インクは形成された撥液部の撥液性によりはじかれるため、ひとまず撥液部以外の領域に配置され、撥液部に重なる領域が開口された状態で塗布される。ここで、絶縁インクが撥液部と接触する部分の角度(接触角)が前進接触角よりも大きくなるような塗布条件で絶縁インクの塗布を行うと、絶縁インクは撥液部の外縁部で留まらず、撥液部の内側にまで流動し濡れ広がる。本発明では、絶縁インクの塗布を液滴吐出法により行うため精密な塗布の制御が可能であり、精密な塗布の制御により精密に絶縁インクの撥液部の内部への流動を制御することができる。この流動する絶縁インクが形成されるコンタクトホールと重なる領域に至るまで塗布を行うことで、コンタクトホールと重なる領域以外の領域に絶縁インクを配置し、コンタクトホールを設けた絶縁層を形成することができる。更に、絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して第1導電層と電気的に接続する第2導電層を形成することで、多層配線基板を形成することができる。
【0011】
このような方法で多層配線基板を製造すると、撥液部の位置によりコンタクトホールの位置を正確に設定し、撥液部の内部に流動する絶縁インクを接触角で制御することにより撥液部の面積よりも小さい開口面積を備えるコンタクトホールを自在に形成することができる。そのため、正確にコンタクトホールの位置や大きさが制御された多層配線基板を製造することができる。
【0012】
本発明においては、前記撥液部を液滴吐出法により形成することが望ましい。
この方法によれば、微細な面積の撥液部を容易に形成することができ、形成した撥液部を基に微細なコンタクトホールを形成することができる。
【0013】
本発明においては、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の塗布量によって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することが望ましい。
ある接触角(静的接触角)で固体表面に配置された液状体の液滴に更に液状体を供給すると、自重により液滴がつぶれ変形する。この変形に対応して接触角は変化し、接触角が前進接触角を越えるまで液状体を供給すると、自重による変形を緩和させ接触角が前進接触角に等しくなるまで液滴は濡れ広がる。このことから、絶縁インクの塗布量を制御することで、容易に絶縁インクの前進接触角よりも大きくなる条件で塗布することが可能となり、コンタクトホールの形成が容易になる。
【0014】
本発明においては、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の加熱することによって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することが望ましい。
固体表面に配置された液状体の接触角は液状体の温度により変化し、液状体の温度が上がると前進接触角は小さく、温度が下がると前進接触角は大きくなる。そのため、ある接触角で配置された絶縁インクの温度を上げると、前進接触角の値が変化し、接触角が前進接触角以上になると流動を開始する。したがって、絶縁インクの温度を制御することで、容易に接触角を変化させることができ、絶縁インクの撥液部の内側への流動を制御することが容易となる。
【0015】
本発明においては、前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことが望ましい。
この方法によれば、撥液材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液パターン及び撥液部を形成することが出来る。
【0016】
本発明においては、前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することが望ましい。
この方法によれば、撥液材料を塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成し、良好な撥液性を発現することができる。そのため、容易に撥液パターン及び撥液部を形成することができる。
【0017】
本発明においては、前記撥液材料は、前記撥液部を構成する高分子の前駆体であり、前記撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、前駆体を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。
【0018】
本発明においては、前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることが望ましい。
光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状のコンタクトホールを容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した絶縁層形成材料が流動し形状が変形することを避け、コンタクトホールの形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化しコンタクトホールを形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の多層配線基板は、第1導電層と第2導電層とが絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されてなる多層配線基板であって、前記コンタクトホールは、前記第1導電層の上に配置された撥液部の上に形成され、前記コンタクトホールの開口面積は、前記撥液部の面積より小さい面積であり、前記コンタクトホールの側壁と前記撥液部とが成す角は、前記液状体と前記撥液部との前進接触角と等しい角度を備えることを特徴とする
この構成によれば、微細なコンタクトホールにより導電層が接続された高集積な多層配線基板を提供することができる。
【0020】
また、本発明の電子機器は、前述の多層配線基板の製造方法で製造された多層配線基板を備えることを特徴とする。
この構成によれば、微細なコンタクトホールで接続された高集積な配線基板により、小型化された電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図11を参照しながら、本発明の実施形態に係る多層配線基板の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0022】
(液滴吐出装置)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法に用いる液滴吐出装置について説明する。本実施形態では、この液滴吐出装置をソルダーレジストの形成に用いる。図1は、液滴吐出装置の概略的な構成図である。本装置の説明においては、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、水平面の鉛直方向をZ軸方向とする。本実施形態の場合、後述する液滴吐出ヘッドの非走査方向をX軸方向、液滴吐出ヘッドの走査方向をY軸方向としている。
【0023】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301から基板12に対して液滴Lを吐出するものであって、液滴吐出ヘッド301と、X方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305と、制御装置306と、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
【0024】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、液滴吐出ヘッド301の形状の長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板12に対し液状体の液滴Lが吐出される。本実施形態では、液状体は撥液材料を含む液状体(撥液インクL1)であり、絶縁材料を含む機能液(絶縁インクL2)である。
【0025】
X方向駆動軸304は、基台309に対して動かないように固定されており、X方向駆動モータ302が接続されている。X方向駆動モータ302はステッピングモータ等であり、制御装置306からX方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸304を回転させる。X方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド301はX軸方向に移動する。
【0026】
Y方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されており、Y方向駆動モータ303を介してステージ307が接続されている。Y方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置306からY方向の駆動信号が供給されると、Y方向ガイド軸305に沿ってステージ307をY方向に移動させる。
【0027】
制御装置306は、液滴吐出ヘッド301に液滴Lの吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ302には液滴吐出ヘッド301のX方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ303にはステージ307のY方向の移動を制御する駆動パルス信号を、それぞれ供給する。また、後述のヒータ315の電源投入及び遮断も制御する。
【0028】
ステージ307は、この液滴吐出装置300により液状体を配置するために後述する基板12を支持するものであって、基板12を基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。また、ステージ307は基板12を固定する面とは反対の面に先述のY方向駆動モータ303を備えている。
【0029】
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY方向の駆動モータが備えられている。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置306により制御される。
【0030】
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板12を熱処理する手段であり、基板12上に塗布された液滴Lに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。
【0031】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301と基板12を支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板12に対して液滴Lを吐出する。本実施形態では、液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルは、非走査方向であるX方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド301は、基板12の進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板12の進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板12とノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0032】
図2は、液滴吐出ヘッド301の断面図である。
液滴吐出ヘッド301には、液状体を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体を収容する材料タンクを含む液状体供給系323を介して液状体が供給される。
【0033】
ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形して内圧が高まり、ノズル325から液状体の液滴Lが吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御し、液状体の吐出量を制御する。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御する。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0034】
なお、液滴吐出法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0035】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0036】
続いて、図3には液滴吐出法による塗布パターンの形成方法を示す概略図を示す。液滴吐出ヘッド301から連続的に吐出された液滴Lは、基板12の表面に着弾する。このとき液滴Lは、隣接する液滴同士で重なり合う位置に吐出・塗布される。これにより、液滴吐出ヘッド301と基板12との1回の走査で、塗布した液滴Lが描く塗布パターンが、途切れることなく形成されることになる。また、吐出される液滴Lの吐出量及び隣接する液滴Lとのピッチにより所望の塗布パターンの制御が可能である。図では塗布パターンは線状になる場合を示しているが、隣接する塗布パターンの隙間(図に示す幅W)を無くすことで、面状に液滴Lを塗布することもできる。
【0037】
次いで、塗布した液体と液滴接触角との関係を示す模式図を図4に示し、この図を用いて液滴が流動する様子を簡単に説明しておく。ここでは、液滴の塗布量を増やしていった場合の液滴が流動する様子を示す。
図には基板12に配置された液状体の液滴Lを示す。基板12に配置された液状体は、ある静的接触角(接触角)θ1を備えて配置されている(図4(a))。この液滴Lに更に液状体を供給すると、配置された液状体は自重によりつぶれ変形する。この変形に対応して接触角θ1はθ2に変化する(図4(b))。すなわち、この接触角θ2が前進接触角θaを超えるまで変形が進むと液滴Lは流動を始める。基板12の接触角が前進接触角θaを越えるまで液状体を供給すると、自重による変形を緩和させるため液滴Lは濡れ広がる。液滴Lの接触角θ3が前進接触角θaと等しくなるまで濡れ広がると、流動が停止する。(図4(c))。このように、塗布された液状体が濡れ広がるかどうかは、液状体の液滴Lと基板12の表面とが成す接触角が、それらの前進接触角θaよりも大きい接触角であることが条件となる。
【0038】
(撥液材料)
続いて、上述した固体表面の接触角に密接な関係のある撥液部について説明する。本実施形態の撥液部は撥液材料で形成されている。本実施形態では撥液材料として、シラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができる。シラン化合物としては、一般式(1)
R1SiX1X2X3 …(1)
(式中、R1 は有機基を表し、X1 は−OR2 ,−Clを表し、X2及びX3は−OR2 ,−R3,−Clを表し、R2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X1,X2,X3は同一でも異なっても良い)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物を用いることができる。
【0039】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基R1の例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
【0040】
−OR2で示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0041】
一般式(I)で表されるシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、等が挙げられる。
【0042】
他にも、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0043】
撥液材料としてシラン化合物を用いることにより、配置した箇所にシラン化合物の自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0044】
シラン化合物の中でも、Siと直接結合するアルキル基にフッ素を含有する含フッ素アルキルシラン化合物は、CnF2n+1で表されるパ−フルオロアルキル構造を有するものが好適に用いられる。これには、下記の一般式(2)
CnF2n+1(CH2)mSiX1X2X3 …(2)
(式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表している。X1 は−OR2 ,−Clを表し、X2及びX3は−OR2 ,−R3,−Clを表し、R2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X1,X2,X3は同一でも異なっても良い)
で表される化合物を例示することができる。
【0045】
−OR2で示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0046】
上記のような含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0047】
より具体的には、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
【0048】
また、撥液材料としてフッ素樹脂を用いる場合には、所定量のフッ素樹脂を所定溶媒に溶解させたものが用いられる。具体的には、住友スリーエム株式会社製「EGC1720」(HFE(ハイドロフルオロエーテル)溶媒にフッ素樹脂を0.1wt%溶解させたもの)を用いることができる。この場合、HFEにアルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、エステル系の溶剤を適宜混合することにより、液滴吐出ヘッド301から安定して吐出可能に調整可能である。この他に、フッ素樹脂としては、旭硝子株式会社製「ルミフロン」(各種溶媒に溶解可能)、ダイキン工業株式会社製「オプツール」(溶媒;PFC、HFE等)、大日本インキ化学工業株式会社製「ディックガード」(溶媒;トルエン、水・エチレングリコール)等を用いることができる。更に、フッ素を含む樹脂としては、側鎖にF基、−CF3、−(CF2)nCF3が含まれるものや、主鎖に−CF2−、−CF2CF3、−CF2CFCl−が含まれるものを用いることが可能である。また、撥液性の発現のために加熱・重合の必要があるものについては、必要に応じて例えば150℃から200℃の加熱を行って塗布したフッ素を含む樹脂を重合させ、撥液性を発現させることができる。本実施形態では撥液材料にオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)を用いる。
【0049】
以上を踏まえ、図5から図9を用いて多層配線基板の製造方法を説明する。図5には簡略化した例として、コンタクトホールを介して第1導電層と第2導電層とが接続された多層配線基板10の断面図を示す。
【0050】
図5に示すように、多層配線基板10は、第1導電層1と、第1導電層1上に形成された撥液部2と、撥液部2を覆って第1導電層1上に形成された絶縁層3と、撥液部2の内側の絶縁層3に設けられたコンタクトホール4と、コンタクトホール4を介して第1導電層1と電気的に接続する第2導電層5とを備えている。
【0051】
第1導電層1と第2導電層5は、帯状の配線や板状の導電パットなど回路構成に合わせて様々な形状を備えている。これら各導電層は例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体などにより形成されている。本実施形態では銅を用いる。
【0052】
第1導電層1には、一部の領域を覆う撥液部2が形成されている。撥液部2は、液滴吐出法を用い前述の撥液材料を含む液状体(撥液インクL1)を塗布することで形成される。
【0053】
第1導電層1及び撥液部2を覆って絶縁層3が形成されている。この絶縁層3の形成材料として、本実施形態では光硬化性を有する材料を含んでいる。具体的には、本実施形態の光硬化性材料は、光重合開始剤と、アクリル酸のモノマーおよび/またはオリゴマ−と、を含んでいる。一般的には、この光硬化性材料は、溶剤と、溶剤に溶解した樹脂と、を含有してよい。ここで、この場合の光硬化性材料は、それ自体が感光して重合度を上げる樹脂を含有してもよいし、あるいは、樹脂と、その樹脂の硬化を開始させる光重合開始剤と、を含有していてもよい。また、このような形態に代えて、光硬化性材料として、光重合して不溶の絶縁樹脂を生じるモノマーと、そのモノマーの光重合を開始させる光重合開始剤と、を含有してもよい。ただしこの場合の光硬化性材料は、モノマー自体が光官能基を有していれば、光重合開始剤を含有しなくてもよい。絶縁層3の形成方法については後で詳述する。
【0054】
絶縁層3には、第1導電層1と接続するコンタクトホール4が形成されている。コンタクトホール4は絶縁層3を貫通して形成されている。このコンタクトホール4の形成方法については後で詳述する。
【0055】
絶縁層3上には第2導電層5が形成されている。第2導電層5は、コンタクトホール4を介して第1導電層1と接続している。
【0056】
次に、多層配線基板10の製造方法について図を用いて説明する。図6から図9は、図5に示す多層配線基板10を製造する工程を示す工程図であり、各図において(a)は断面図、(b)は平面図を示す。
【0057】
まず、図6(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から吐出された撥液インクL1は、形成するコンタクトホールと重なる領域を含む領域(第2領域AR2)に着弾し、第1導電層1上に第2領域AR2を覆う撥液部2を形成する。本実施形態では液滴吐出法で撥液インクL1を塗布するため、正確な位置に所望の大きさの撥液部2を形成することができる。図6(b)では第2領域AR2の平面視形状を円形として示しているが、必要に応じて方形、矩形といった他の形状を取ることも可能である。また、塗布する撥液インクL1の吐出量を少なくし、第2領域AR2を小さく形成することも可能である。例えば撥液インクL1を1滴のみ着弾させると、撥液インクL1は着弾面で略円形に濡れ広がり、微少な第2領域AR2を形成することができる。図6(b)では撥液部2は厚みを持たせて図示しているが、実際の厚みは数nmから100nm程度である。
【0058】
次いで、図7(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から絶縁インクL2を吐出し、第2領域AR2を除く第1導電層1上に絶縁インクL2を塗布する。絶縁インクL2は第2領域AR2に形成された撥液部2ではじかれるため、ひとまず第2領域AR2以外の領域に配置され、第2領域AR2に重なる領域に開口部4aが形成された状態で塗布される。図7(b)に示すように、第2領域AR2の周囲を囲むように絶縁インクL2が塗布される。ここで、コンタクトホールと重なる領域以外の領域のほとんどを絶縁インクL2で覆うことができ、形成される開口部4aによりコンタクトホールを形成する位置をほぼ確定できる。
【0059】
次いで、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から更に絶縁インクL2を吐出し塗布を重ねると、厚みを増した絶縁インクL2は自重により変形し、変形により塗布された絶縁インクL2と撥液部2との接触角はこれらの前進接触角に達する。すると絶縁インクL2は、撥液部2の撥液性に逆らって第2領域AR2の内側に濡れ広がる。濡れ広がる絶縁インクL2が所望の第1領域AR1を覆うまで塗布を行い、所定の光照射を行って絶縁インクL2を硬化させることで、所望の開口径のコンタクトホール4を備えた絶縁層3を形成する。図8(b)に示すように、絶縁インクL2は、第2領域AR2の周囲から第2領域AR2の中心に向かって等方的に濡れ広がる。そして、等方的に絶縁インクL2が濡れ広がるため、第1領域AR1は第2領域AR2の中心付近に形成される。この様にすることで、撥液部を形成した第2領域AR2よりも小さい開口径のコンタクトホール4を形成することができる。また、第1領域AR1を第2領域AR2の中心位置に設定することで、コンタクトホール4を位置精度良く形成することができる。
【0060】
次いで、図9(a)に示すように、コンタクトホール4及び絶縁層3の上面に導電性材料を配置して第2導電層5を形成する。例えば、前述のような液滴吐出法を用いて導電性材料を含む機能液をコンタクトホール4及び絶縁層3の所定の領域に塗布すると第2導電層5を形成することができる。撥液部2の厚みは数nmから100nm程度と微少量であるので、後述の配線パターン形成のための熱処理を行うことによる撥液部の部分的な分解、または微粒子同士の融着等の反応により、第1導電層1はコンタクトホール4を介して第2導電層5と導通を確保して形成される。図9(b)に示すように、第2導電層5を形成すると、第1領域AR1の大きさの開口径を備えたコンタクトホール4により接続される。
【0061】
ここで導電性材料を含む機能液は、例えば金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体などを含む導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0062】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性の点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0063】
配置された後には、機能液の液滴に含まれる分散媒あるいはコーティング剤を除去するため熱処理及び/又は光処理を行い、第2導電層5を形成する。詳しくは、配置された機能液の分散媒を除去し、導電性微粒子間を接触または融着させて配線を形成する。導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤がコーティングされている場合には、このコーティング剤も合わせて除去する。本実施形態では電気炉(不図示)による加熱により熱処理を行い、第2導電層5を形成する。
【0064】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0065】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
【0066】
熱処理及び/又は光処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。上記熱処理及び/又は光処理により、微粒子間の電気的接触が確保され第2導電層5が形成される。以上のようにして、コンタクトホールを介して第1導電層と第2導電層が接続された多層配線基板10が完成する。
【0067】
以上のような構成の多層配線基板10の製造方法によれば、まず撥液部2の位置によりコンタクトホール4の位置を正確に設定し、次いで絶縁インクL2を撥液部2と絶縁インクL2との前進接触角以上となるように塗布することで、第1領域AR1の大きさを制御することができる。このことにより、撥液部2よりも小さいコンタクトホール4を自在に形成することができる。そのため、正確にコンタクトホール4の位置や大きさが制御された多層配線基板10を製造することができる。
【0068】
また、本実施形態では、液滴吐出法を用いて撥液インクL1の塗布を行い、撥液部2を形成している。そのため、微細な面積の撥液部2を容易に形成することが可能であり、微細なコンタクトホール4を形成することができる。
【0069】
また、本実施形態では、絶縁層3を形成する工程において、絶縁インクL2の塗布量を制御することで第1領域AR1の大きさを制御することとしている。微少な塗布量の調整が可能な液滴吐出法の特長を活かし、絶縁インクL2の塗布量を精密に制御することで、容易に絶縁インクL2の前進接触角よりも大きくなる条件で塗布することが可能となり、コンタクトホール4の形成が容易になる。
【0070】
また本実施形態では、撥液部2の形成材料にODSを用いている。ODSは配置した面で自己組織化膜を形成するシラン化合物である。そのため、液材材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液部2を形成することが出来る。更に、撥液材料を塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成し、良好な撥液性を発現することができる。そのため、容易に撥液部2を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態では、絶縁層3の形成材料は光硬化性樹脂であることとしている。光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状のコンタクトホール4を容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した絶縁層形成材料が流動し形状が変形することを避け、コンタクトホール4の形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化しコンタクトホール4を形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、撥液材料は自己組織化膜を形成するシラン化合物であるODSを用いるものとしたが、撥液材料は撥液部2を構成する高分子の前駆体であっても構わない。このような前駆体として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。その場合には、撥液部2を形成する工程には、配置した撥液材料を加熱して重合させる操作を含むことが望ましい。この方法によれば、フッ素樹脂を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、絶縁インクL2の塗布量を制御することで第1領域AR1の大きさを制御するとしたが、絶縁インクL2の温度を制御して制御することとしても構わない。液状体の前進接触角は液状体の温度により変化し、液状体の温度が上がると前進接触角は小さく、温度が下がると前進接触角は大きくなる。そのため、接触角θで配置した絶縁インクL2の温度を上げると、前進接触角の値が変化し、接触角θが前進接触角以上になると流動を開始する。したがって、絶縁インクL2の第2領域AR2の内側への流動を制御することが可能となる。また、絶縁インクL2の塗布量と温度の両方を同時に制御して第1領域AR1の大きさを制御することとしても構わない。
【0074】
(多層配線基板)
続いて、上記製造方法を用いて製造される多層配線基板について図10を参照して説明する。ここでは、携帯電話に搭載される多層配線基板500の例を用いて説明する。図10に示す多層配線基板500は、シリコンからなる基材12上に、3つの配線層P1、P2、P3が積層されてなるものである。以下の説明では、各配線層の積層方向を上方向、基材12が配置されている方向を下方向として各構成部材の上下関係を示す。
【0075】
基材12は、他にもガラス、石英ガラス、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、絶縁膜、有機膜、などが下地層として形成されたものも含む。
【0076】
配線層P1は、基板12上に形成された絶縁層13と、基板12上で且つ絶縁層13に埋め込まれて配置された抵抗20及びコンデンサ21と、抵抗20及びコンデンサ21と接続される配線15A,15B,15Cと、各配線を覆って絶縁層13上に形成される第1層間絶縁膜(絶縁層)60を備える。
【0077】
基板12上に配置された抵抗20は、2つの電極部20aを備えている。これら電極部20aは、抵抗20の上面に形成されている。また、抵抗20と同様に基板12上に配置されたコンデンサ21は、2つの電極部21aを備えており、これら電極部21aもコンデンサ21の上面に形成されている。
【0078】
なお、実際には電極部20a、21aは、抵抗20、コンデンサ21の上面から略突出なく形成されているが、ここでは、突起状に図示している。また、液滴吐出法等を用いて導電性材料を吐出することで実際に突起を形成してもよい。
【0079】
基板12の上面であって、抵抗20及びコンデンサ21の周囲及び上面には絶縁層13が形成されている。絶縁層13は、上述した液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0080】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cが形成されている。各配線も、上述した液滴吐出法を用いて導電性材料を含む機能液を塗布することで形成される。本実施形態では、導電性材料として銀微粒子を含む機能液を用いている。これらの配線のうち、配線15Bは一端が電極部20aの一方と、他端が電極部21aの一方と接続しており、抵抗20とコンデンサ21を電気的に接続している。また、配線15Aは他方の電極部20aと接続しており、配線15Cは他方の電極部21aと接続している。
【0081】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cを覆って、第1層間絶縁膜60が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0082】
第1層間絶縁膜60には、配線15Aと接続する第1コンタクトホールH1と、配線15Cと接続する第2コンタクトホールH2が形成されている。これら各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0083】
配線層P2は、第1層間絶縁膜60上に配置される半導体チップ70と、同じく第1層間絶縁膜60上に配置される配線61と、これら半導体チップ70及び配線61を覆い第1層間絶縁膜60上に形成される第2層間絶縁膜62と、を備えている。第1層間絶縁膜60上に備えられた半導体チップ70は、上面に外部接続用の端子72を備えている。
【0084】
第1層間絶縁膜60上に備えられた配線61は、第1コンタクトホールH1に接続されている。配線61は配線15A,15B,15Cと同じく、液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成されている。また配線61は、配線15A,15B,15Cと同一材料により形成されている。
【0085】
第1層間絶縁膜60の上面には、配線61、半導体チップ70を覆って、第2層間絶縁膜62が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13及び第1層間絶縁膜60と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0086】
第2層間絶縁膜62には、第2層間絶縁膜62を貫通して配線61に接続する第3コンタクトホールH3と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通する上述した第2コンタクトホールH2の一部と、が形成されている。各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0087】
配線層P3は、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63A及び63Bと、これらの配線63A,63Bを覆って第2層間絶縁膜62上に形成される第3層間絶縁膜64と、第3層間絶縁膜64上に配置されたアンテナ素子24及び水晶振動子25と、を備えている。
【0088】
第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Aは、第2コンタクトホールH2を介して配線15Cと接続している。また、配線63Aは半導体チップ70が備える一方の端子72と接続している。したがって、配線63A、第2コンタクトホールH2、配線15Cを介して半導体チップ70とコンデンサ21が接続している。
【0089】
また、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Bは、第3コンタクトホールH3を介して配線61と接続している。また、配線63Bは半導体チップ70が備える他方の端子72と接続している。したがって、配線63B、第3コンタクトホールH3、配線61、第1コンタクトホールH1を介して半導体チップ70と抵抗20が接続している。
【0090】
これら配線63A,63Bは前述の液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成され、また配線15A,15B,15C,61と同一材料により形成されている。
【0091】
第3層間絶縁膜64には、第3層間絶縁膜64を貫通して配線63Aと水晶振動子25とを接続する第4コンタクトホールH4と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通し配線63Bとアンテナ素子24とを接続する第5コンタクトホールH5が形成されている。各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0092】
このような多層配線基板500の各コンタクトホールH1からH5は、前述したコンタクトホールの形成方法を用いて形成されている。そのため、各コンタクトホールを位置精度良く形成された多層配線基板500とすることが出来る。また、第1領域を小さく設定し小さい開口径のコンタクトホールを形成することで、微細なコンタクトホールで各層間を電気的に接続した多層配線基板500とすることが可能となる。
【0093】
(電子機器)
図11は、本発明にかかる多層配線基板を電子機器の一実施形態としての携帯電話の斜視構成図である。この携帯電話1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
【0094】
本実施形態の携帯電話1300においては、微細なコンタクトホールで層間が接続された多層配線基板を備えているので、基板を高密度化することが可能となり、携帯電話1300の装置全体が小型化された電子機器となる。
【0095】
上記の実施形態の多層配線基板は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、プロジェクタ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等に好適に用いることができる。高密度化された配線基板を用いることにより装置の小型化が可能となり、また、高集積化された配線基板を用いることでより高性能な演算能力を備えた電子機器とすることが可能となる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】液滴吐出装置の概略的な構成図である。
【図2】液滴吐出装置に備わる液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図3】液滴吐出法によるパターン形成方法を示す概略図である。
【図4】液滴の濡れ広がり方を示す概略図である。
【図5】本実施形態の多層配線基板の一例を示す断面図である。
【図6】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図7】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図8】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図9】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図10】多層配線基板の別形態を示す断面図である。
【図11】電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0098】
1…第1導電層、2…撥液部、3…絶縁層、4…コンタクトホール(開口部)、5…第2導電層、15A,15B,15C,61,63A,63B…配線(第1導電層、第2導電層)60…第1層間絶縁膜(絶縁層)、62…第2層間絶縁膜(絶縁層)、64…第3層間絶縁膜(絶縁層)、500…多層配線基板、H1〜H5…第1〜第5コンタクトホール(開口部)、1300…携帯電話(電子機器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、多層配線基板及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出法(インクジェット方式)を用いて所望の材料を含む液状体を吐出し、所定位置に着弾させることによって一定の材料パターンを形成する技術が活発に開発されている。このパターン形成技術は、用いるインクジェットヘッドの解像度に応じて微少な液状体を所望の位置に塗布することが可能であり、そのため微細なパターンの形成ができるという特長を有する。例えば、回路基板の微細な配線パターンを形成するには、配線材料または配線材料の溶液を塗布することにより配線パターンを形成することができる。
【0003】
しかしこの方法は、液状体を塗布する面の性質の影響を受けやすい。例えば、液状体の液滴を着弾させる箇所が液状体に対して濡れやすく(親液性)なっていると、塗布された液滴は所望の形状以上に塗れ広がってしまうことがある。逆に、着弾箇所が液状体に対して濡れにくく(撥液性)なっていると、液状体が着弾面で凝集し液溜り(バルジ)を形成してしまい、やはり所望の形状が形成できないという場合がある。
【0004】
ところで、近年の電子装置の小型化・多機能化という市場の要求に応え、電子回路は高密度化・高集積化する傾向を示している。この電子回路の高集積化を果たす技術の一つとしては、回路の多層配線構造が挙げられる。このような構造を備えた回路では、電子回路を平面的に形成するだけでなく、回路基板を積層させて縦方向にも形成することで、小さい設置面積で高い性能の回路を実現している。このような多層配線構造を採る場合、各層の配線パターン同士は、各層間の絶縁膜に形成されるコンタクトホールを介して接続される。一般に、このような多層配線構造を備えた回路では、回路の高密度化・高集積化の要求のため、コンタクトホールも微細なものが求められている。
【0005】
このようなコンタクトホールを形成する技術として、特許文献1や特許文献2には液滴吐出法を用いた形成方法が挙げられている。詳しくは、液滴吐出法にて絶縁膜の形成材料を含む液状体(絶縁インク)を塗布し層間絶縁膜を形成する際に、コンタクトホールの形成領域にのみ絶縁インクの塗布を行わないことで絶縁膜を形成しない領域を設け、この絶縁層を形成しない領域をコンタクトホールとする方法である。
【特許文献1】特開2003−282561号公報
【特許文献2】特開2006−140437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した方法では、例えば金属配線等の濡れ性がよい箇所にコンタクトホールを形成する場合に、塗布した絶縁インクが所望の領域外に濡れ拡がりやすいため、コンタクトホールを所望の大きさに制御することが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、コンタクトホールの位置や大きさの制御性に優れた多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。また、このような多層配線基板の製造方法を用いて製造することにより、微細なコンタクトホールを備えた多層配線基板を提供することを目的とする。更には、このような多層配線基板を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の多層配線基板の製造方法は、第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記絶縁層に開口された開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、前記第1導電層上に撥液部を形成する工程と、前記撥液部の周囲に前記絶縁層の形成材料を含む機能液を配置して前記第1導電層上に前記開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、を備え、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度が前記機能液の前進接触角よりも大きくなる条件で前記機能液を配置し、前記機能液の前記撥液部に面する部分の位置を前記撥液部の内側に流動させることにより、前記撥液部の面積よりも小さい開口面積を備える前記開口部形成することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、まず、形成する開口部(コンタクトホール)と重なる第1導電層上の領域よりも広い領域に、撥液材料を含む液状体(撥液インク)を塗布し撥液部を形成する。この撥液インクの塗布を液滴吐出法により行うので、所望の正確な位置に撥液部を形成することができる。
【0010】
次いで、絶縁層形成材料を含む機能液(絶縁インク)を塗布すると、絶縁インクは形成された撥液部の撥液性によりはじかれるため、ひとまず撥液部以外の領域に配置され、撥液部に重なる領域が開口された状態で塗布される。ここで、絶縁インクが撥液部と接触する部分の角度(接触角)が前進接触角よりも大きくなるような塗布条件で絶縁インクの塗布を行うと、絶縁インクは撥液部の外縁部で留まらず、撥液部の内側にまで流動し濡れ広がる。本発明では、絶縁インクの塗布を液滴吐出法により行うため精密な塗布の制御が可能であり、精密な塗布の制御により精密に絶縁インクの撥液部の内部への流動を制御することができる。この流動する絶縁インクが形成されるコンタクトホールと重なる領域に至るまで塗布を行うことで、コンタクトホールと重なる領域以外の領域に絶縁インクを配置し、コンタクトホールを設けた絶縁層を形成することができる。更に、絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して第1導電層と電気的に接続する第2導電層を形成することで、多層配線基板を形成することができる。
【0011】
このような方法で多層配線基板を製造すると、撥液部の位置によりコンタクトホールの位置を正確に設定し、撥液部の内部に流動する絶縁インクを接触角で制御することにより撥液部の面積よりも小さい開口面積を備えるコンタクトホールを自在に形成することができる。そのため、正確にコンタクトホールの位置や大きさが制御された多層配線基板を製造することができる。
【0012】
本発明においては、前記撥液部を液滴吐出法により形成することが望ましい。
この方法によれば、微細な面積の撥液部を容易に形成することができ、形成した撥液部を基に微細なコンタクトホールを形成することができる。
【0013】
本発明においては、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の塗布量によって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することが望ましい。
ある接触角(静的接触角)で固体表面に配置された液状体の液滴に更に液状体を供給すると、自重により液滴がつぶれ変形する。この変形に対応して接触角は変化し、接触角が前進接触角を越えるまで液状体を供給すると、自重による変形を緩和させ接触角が前進接触角に等しくなるまで液滴は濡れ広がる。このことから、絶縁インクの塗布量を制御することで、容易に絶縁インクの前進接触角よりも大きくなる条件で塗布することが可能となり、コンタクトホールの形成が容易になる。
【0014】
本発明においては、前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の加熱することによって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することが望ましい。
固体表面に配置された液状体の接触角は液状体の温度により変化し、液状体の温度が上がると前進接触角は小さく、温度が下がると前進接触角は大きくなる。そのため、ある接触角で配置された絶縁インクの温度を上げると、前進接触角の値が変化し、接触角が前進接触角以上になると流動を開始する。したがって、絶縁インクの温度を制御することで、容易に接触角を変化させることができ、絶縁インクの撥液部の内側への流動を制御することが容易となる。
【0015】
本発明においては、前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことが望ましい。
この方法によれば、撥液材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液パターン及び撥液部を形成することが出来る。
【0016】
本発明においては、前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することが望ましい。
この方法によれば、撥液材料を塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成し、良好な撥液性を発現することができる。そのため、容易に撥液パターン及び撥液部を形成することができる。
【0017】
本発明においては、前記撥液材料は、前記撥液部を構成する高分子の前駆体であり、前記撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、前駆体を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。
【0018】
本発明においては、前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることが望ましい。
光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状のコンタクトホールを容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した絶縁層形成材料が流動し形状が変形することを避け、コンタクトホールの形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化しコンタクトホールを形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の多層配線基板は、第1導電層と第2導電層とが絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されてなる多層配線基板であって、前記コンタクトホールは、前記第1導電層の上に配置された撥液部の上に形成され、前記コンタクトホールの開口面積は、前記撥液部の面積より小さい面積であり、前記コンタクトホールの側壁と前記撥液部とが成す角は、前記液状体と前記撥液部との前進接触角と等しい角度を備えることを特徴とする
この構成によれば、微細なコンタクトホールにより導電層が接続された高集積な多層配線基板を提供することができる。
【0020】
また、本発明の電子機器は、前述の多層配線基板の製造方法で製造された多層配線基板を備えることを特徴とする。
この構成によれば、微細なコンタクトホールで接続された高集積な配線基板により、小型化された電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図11を参照しながら、本発明の実施形態に係る多層配線基板の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0022】
(液滴吐出装置)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法に用いる液滴吐出装置について説明する。本実施形態では、この液滴吐出装置をソルダーレジストの形成に用いる。図1は、液滴吐出装置の概略的な構成図である。本装置の説明においては、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、水平面の鉛直方向をZ軸方向とする。本実施形態の場合、後述する液滴吐出ヘッドの非走査方向をX軸方向、液滴吐出ヘッドの走査方向をY軸方向としている。
【0023】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301から基板12に対して液滴Lを吐出するものであって、液滴吐出ヘッド301と、X方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305と、制御装置306と、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
【0024】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、液滴吐出ヘッド301の形状の長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板12に対し液状体の液滴Lが吐出される。本実施形態では、液状体は撥液材料を含む液状体(撥液インクL1)であり、絶縁材料を含む機能液(絶縁インクL2)である。
【0025】
X方向駆動軸304は、基台309に対して動かないように固定されており、X方向駆動モータ302が接続されている。X方向駆動モータ302はステッピングモータ等であり、制御装置306からX方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸304を回転させる。X方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド301はX軸方向に移動する。
【0026】
Y方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されており、Y方向駆動モータ303を介してステージ307が接続されている。Y方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置306からY方向の駆動信号が供給されると、Y方向ガイド軸305に沿ってステージ307をY方向に移動させる。
【0027】
制御装置306は、液滴吐出ヘッド301に液滴Lの吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ302には液滴吐出ヘッド301のX方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ303にはステージ307のY方向の移動を制御する駆動パルス信号を、それぞれ供給する。また、後述のヒータ315の電源投入及び遮断も制御する。
【0028】
ステージ307は、この液滴吐出装置300により液状体を配置するために後述する基板12を支持するものであって、基板12を基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。また、ステージ307は基板12を固定する面とは反対の面に先述のY方向駆動モータ303を備えている。
【0029】
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY方向の駆動モータが備えられている。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置306により制御される。
【0030】
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板12を熱処理する手段であり、基板12上に塗布された液滴Lに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。
【0031】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301と基板12を支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板12に対して液滴Lを吐出する。本実施形態では、液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルは、非走査方向であるX方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド301は、基板12の進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板12の進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板12とノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0032】
図2は、液滴吐出ヘッド301の断面図である。
液滴吐出ヘッド301には、液状体を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体を収容する材料タンクを含む液状体供給系323を介して液状体が供給される。
【0033】
ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形して内圧が高まり、ノズル325から液状体の液滴Lが吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御し、液状体の吐出量を制御する。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御する。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0034】
なお、液滴吐出法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0035】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0036】
続いて、図3には液滴吐出法による塗布パターンの形成方法を示す概略図を示す。液滴吐出ヘッド301から連続的に吐出された液滴Lは、基板12の表面に着弾する。このとき液滴Lは、隣接する液滴同士で重なり合う位置に吐出・塗布される。これにより、液滴吐出ヘッド301と基板12との1回の走査で、塗布した液滴Lが描く塗布パターンが、途切れることなく形成されることになる。また、吐出される液滴Lの吐出量及び隣接する液滴Lとのピッチにより所望の塗布パターンの制御が可能である。図では塗布パターンは線状になる場合を示しているが、隣接する塗布パターンの隙間(図に示す幅W)を無くすことで、面状に液滴Lを塗布することもできる。
【0037】
次いで、塗布した液体と液滴接触角との関係を示す模式図を図4に示し、この図を用いて液滴が流動する様子を簡単に説明しておく。ここでは、液滴の塗布量を増やしていった場合の液滴が流動する様子を示す。
図には基板12に配置された液状体の液滴Lを示す。基板12に配置された液状体は、ある静的接触角(接触角)θ1を備えて配置されている(図4(a))。この液滴Lに更に液状体を供給すると、配置された液状体は自重によりつぶれ変形する。この変形に対応して接触角θ1はθ2に変化する(図4(b))。すなわち、この接触角θ2が前進接触角θaを超えるまで変形が進むと液滴Lは流動を始める。基板12の接触角が前進接触角θaを越えるまで液状体を供給すると、自重による変形を緩和させるため液滴Lは濡れ広がる。液滴Lの接触角θ3が前進接触角θaと等しくなるまで濡れ広がると、流動が停止する。(図4(c))。このように、塗布された液状体が濡れ広がるかどうかは、液状体の液滴Lと基板12の表面とが成す接触角が、それらの前進接触角θaよりも大きい接触角であることが条件となる。
【0038】
(撥液材料)
続いて、上述した固体表面の接触角に密接な関係のある撥液部について説明する。本実施形態の撥液部は撥液材料で形成されている。本実施形態では撥液材料として、シラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができる。シラン化合物としては、一般式(1)
R1SiX1X2X3 …(1)
(式中、R1 は有機基を表し、X1 は−OR2 ,−Clを表し、X2及びX3は−OR2 ,−R3,−Clを表し、R2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X1,X2,X3は同一でも異なっても良い)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物を用いることができる。
【0039】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基R1の例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
【0040】
−OR2で示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0041】
一般式(I)で表されるシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、等が挙げられる。
【0042】
他にも、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0043】
撥液材料としてシラン化合物を用いることにより、配置した箇所にシラン化合物の自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0044】
シラン化合物の中でも、Siと直接結合するアルキル基にフッ素を含有する含フッ素アルキルシラン化合物は、CnF2n+1で表されるパ−フルオロアルキル構造を有するものが好適に用いられる。これには、下記の一般式(2)
CnF2n+1(CH2)mSiX1X2X3 …(2)
(式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表している。X1 は−OR2 ,−Clを表し、X2及びX3は−OR2 ,−R3,−Clを表し、R2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X1,X2,X3は同一でも異なっても良い)
で表される化合物を例示することができる。
【0045】
−OR2で示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0046】
上記のような含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0047】
より具体的には、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
【0048】
また、撥液材料としてフッ素樹脂を用いる場合には、所定量のフッ素樹脂を所定溶媒に溶解させたものが用いられる。具体的には、住友スリーエム株式会社製「EGC1720」(HFE(ハイドロフルオロエーテル)溶媒にフッ素樹脂を0.1wt%溶解させたもの)を用いることができる。この場合、HFEにアルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、エステル系の溶剤を適宜混合することにより、液滴吐出ヘッド301から安定して吐出可能に調整可能である。この他に、フッ素樹脂としては、旭硝子株式会社製「ルミフロン」(各種溶媒に溶解可能)、ダイキン工業株式会社製「オプツール」(溶媒;PFC、HFE等)、大日本インキ化学工業株式会社製「ディックガード」(溶媒;トルエン、水・エチレングリコール)等を用いることができる。更に、フッ素を含む樹脂としては、側鎖にF基、−CF3、−(CF2)nCF3が含まれるものや、主鎖に−CF2−、−CF2CF3、−CF2CFCl−が含まれるものを用いることが可能である。また、撥液性の発現のために加熱・重合の必要があるものについては、必要に応じて例えば150℃から200℃の加熱を行って塗布したフッ素を含む樹脂を重合させ、撥液性を発現させることができる。本実施形態では撥液材料にオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)を用いる。
【0049】
以上を踏まえ、図5から図9を用いて多層配線基板の製造方法を説明する。図5には簡略化した例として、コンタクトホールを介して第1導電層と第2導電層とが接続された多層配線基板10の断面図を示す。
【0050】
図5に示すように、多層配線基板10は、第1導電層1と、第1導電層1上に形成された撥液部2と、撥液部2を覆って第1導電層1上に形成された絶縁層3と、撥液部2の内側の絶縁層3に設けられたコンタクトホール4と、コンタクトホール4を介して第1導電層1と電気的に接続する第2導電層5とを備えている。
【0051】
第1導電層1と第2導電層5は、帯状の配線や板状の導電パットなど回路構成に合わせて様々な形状を備えている。これら各導電層は例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体などにより形成されている。本実施形態では銅を用いる。
【0052】
第1導電層1には、一部の領域を覆う撥液部2が形成されている。撥液部2は、液滴吐出法を用い前述の撥液材料を含む液状体(撥液インクL1)を塗布することで形成される。
【0053】
第1導電層1及び撥液部2を覆って絶縁層3が形成されている。この絶縁層3の形成材料として、本実施形態では光硬化性を有する材料を含んでいる。具体的には、本実施形態の光硬化性材料は、光重合開始剤と、アクリル酸のモノマーおよび/またはオリゴマ−と、を含んでいる。一般的には、この光硬化性材料は、溶剤と、溶剤に溶解した樹脂と、を含有してよい。ここで、この場合の光硬化性材料は、それ自体が感光して重合度を上げる樹脂を含有してもよいし、あるいは、樹脂と、その樹脂の硬化を開始させる光重合開始剤と、を含有していてもよい。また、このような形態に代えて、光硬化性材料として、光重合して不溶の絶縁樹脂を生じるモノマーと、そのモノマーの光重合を開始させる光重合開始剤と、を含有してもよい。ただしこの場合の光硬化性材料は、モノマー自体が光官能基を有していれば、光重合開始剤を含有しなくてもよい。絶縁層3の形成方法については後で詳述する。
【0054】
絶縁層3には、第1導電層1と接続するコンタクトホール4が形成されている。コンタクトホール4は絶縁層3を貫通して形成されている。このコンタクトホール4の形成方法については後で詳述する。
【0055】
絶縁層3上には第2導電層5が形成されている。第2導電層5は、コンタクトホール4を介して第1導電層1と接続している。
【0056】
次に、多層配線基板10の製造方法について図を用いて説明する。図6から図9は、図5に示す多層配線基板10を製造する工程を示す工程図であり、各図において(a)は断面図、(b)は平面図を示す。
【0057】
まず、図6(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から吐出された撥液インクL1は、形成するコンタクトホールと重なる領域を含む領域(第2領域AR2)に着弾し、第1導電層1上に第2領域AR2を覆う撥液部2を形成する。本実施形態では液滴吐出法で撥液インクL1を塗布するため、正確な位置に所望の大きさの撥液部2を形成することができる。図6(b)では第2領域AR2の平面視形状を円形として示しているが、必要に応じて方形、矩形といった他の形状を取ることも可能である。また、塗布する撥液インクL1の吐出量を少なくし、第2領域AR2を小さく形成することも可能である。例えば撥液インクL1を1滴のみ着弾させると、撥液インクL1は着弾面で略円形に濡れ広がり、微少な第2領域AR2を形成することができる。図6(b)では撥液部2は厚みを持たせて図示しているが、実際の厚みは数nmから100nm程度である。
【0058】
次いで、図7(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から絶縁インクL2を吐出し、第2領域AR2を除く第1導電層1上に絶縁インクL2を塗布する。絶縁インクL2は第2領域AR2に形成された撥液部2ではじかれるため、ひとまず第2領域AR2以外の領域に配置され、第2領域AR2に重なる領域に開口部4aが形成された状態で塗布される。図7(b)に示すように、第2領域AR2の周囲を囲むように絶縁インクL2が塗布される。ここで、コンタクトホールと重なる領域以外の領域のほとんどを絶縁インクL2で覆うことができ、形成される開口部4aによりコンタクトホールを形成する位置をほぼ確定できる。
【0059】
次いで、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から更に絶縁インクL2を吐出し塗布を重ねると、厚みを増した絶縁インクL2は自重により変形し、変形により塗布された絶縁インクL2と撥液部2との接触角はこれらの前進接触角に達する。すると絶縁インクL2は、撥液部2の撥液性に逆らって第2領域AR2の内側に濡れ広がる。濡れ広がる絶縁インクL2が所望の第1領域AR1を覆うまで塗布を行い、所定の光照射を行って絶縁インクL2を硬化させることで、所望の開口径のコンタクトホール4を備えた絶縁層3を形成する。図8(b)に示すように、絶縁インクL2は、第2領域AR2の周囲から第2領域AR2の中心に向かって等方的に濡れ広がる。そして、等方的に絶縁インクL2が濡れ広がるため、第1領域AR1は第2領域AR2の中心付近に形成される。この様にすることで、撥液部を形成した第2領域AR2よりも小さい開口径のコンタクトホール4を形成することができる。また、第1領域AR1を第2領域AR2の中心位置に設定することで、コンタクトホール4を位置精度良く形成することができる。
【0060】
次いで、図9(a)に示すように、コンタクトホール4及び絶縁層3の上面に導電性材料を配置して第2導電層5を形成する。例えば、前述のような液滴吐出法を用いて導電性材料を含む機能液をコンタクトホール4及び絶縁層3の所定の領域に塗布すると第2導電層5を形成することができる。撥液部2の厚みは数nmから100nm程度と微少量であるので、後述の配線パターン形成のための熱処理を行うことによる撥液部の部分的な分解、または微粒子同士の融着等の反応により、第1導電層1はコンタクトホール4を介して第2導電層5と導通を確保して形成される。図9(b)に示すように、第2導電層5を形成すると、第1領域AR1の大きさの開口径を備えたコンタクトホール4により接続される。
【0061】
ここで導電性材料を含む機能液は、例えば金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体などを含む導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0062】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性の点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0063】
配置された後には、機能液の液滴に含まれる分散媒あるいはコーティング剤を除去するため熱処理及び/又は光処理を行い、第2導電層5を形成する。詳しくは、配置された機能液の分散媒を除去し、導電性微粒子間を接触または融着させて配線を形成する。導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤がコーティングされている場合には、このコーティング剤も合わせて除去する。本実施形態では電気炉(不図示)による加熱により熱処理を行い、第2導電層5を形成する。
【0064】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0065】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
【0066】
熱処理及び/又は光処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。上記熱処理及び/又は光処理により、微粒子間の電気的接触が確保され第2導電層5が形成される。以上のようにして、コンタクトホールを介して第1導電層と第2導電層が接続された多層配線基板10が完成する。
【0067】
以上のような構成の多層配線基板10の製造方法によれば、まず撥液部2の位置によりコンタクトホール4の位置を正確に設定し、次いで絶縁インクL2を撥液部2と絶縁インクL2との前進接触角以上となるように塗布することで、第1領域AR1の大きさを制御することができる。このことにより、撥液部2よりも小さいコンタクトホール4を自在に形成することができる。そのため、正確にコンタクトホール4の位置や大きさが制御された多層配線基板10を製造することができる。
【0068】
また、本実施形態では、液滴吐出法を用いて撥液インクL1の塗布を行い、撥液部2を形成している。そのため、微細な面積の撥液部2を容易に形成することが可能であり、微細なコンタクトホール4を形成することができる。
【0069】
また、本実施形態では、絶縁層3を形成する工程において、絶縁インクL2の塗布量を制御することで第1領域AR1の大きさを制御することとしている。微少な塗布量の調整が可能な液滴吐出法の特長を活かし、絶縁インクL2の塗布量を精密に制御することで、容易に絶縁インクL2の前進接触角よりも大きくなる条件で塗布することが可能となり、コンタクトホール4の形成が容易になる。
【0070】
また本実施形態では、撥液部2の形成材料にODSを用いている。ODSは配置した面で自己組織化膜を形成するシラン化合物である。そのため、液材材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液部2を形成することが出来る。更に、撥液材料を塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成し、良好な撥液性を発現することができる。そのため、容易に撥液部2を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態では、絶縁層3の形成材料は光硬化性樹脂であることとしている。光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状のコンタクトホール4を容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した絶縁層形成材料が流動し形状が変形することを避け、コンタクトホール4の形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化しコンタクトホール4を形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、撥液材料は自己組織化膜を形成するシラン化合物であるODSを用いるものとしたが、撥液材料は撥液部2を構成する高分子の前駆体であっても構わない。このような前駆体として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。その場合には、撥液部2を形成する工程には、配置した撥液材料を加熱して重合させる操作を含むことが望ましい。この方法によれば、フッ素樹脂を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、絶縁インクL2の塗布量を制御することで第1領域AR1の大きさを制御するとしたが、絶縁インクL2の温度を制御して制御することとしても構わない。液状体の前進接触角は液状体の温度により変化し、液状体の温度が上がると前進接触角は小さく、温度が下がると前進接触角は大きくなる。そのため、接触角θで配置した絶縁インクL2の温度を上げると、前進接触角の値が変化し、接触角θが前進接触角以上になると流動を開始する。したがって、絶縁インクL2の第2領域AR2の内側への流動を制御することが可能となる。また、絶縁インクL2の塗布量と温度の両方を同時に制御して第1領域AR1の大きさを制御することとしても構わない。
【0074】
(多層配線基板)
続いて、上記製造方法を用いて製造される多層配線基板について図10を参照して説明する。ここでは、携帯電話に搭載される多層配線基板500の例を用いて説明する。図10に示す多層配線基板500は、シリコンからなる基材12上に、3つの配線層P1、P2、P3が積層されてなるものである。以下の説明では、各配線層の積層方向を上方向、基材12が配置されている方向を下方向として各構成部材の上下関係を示す。
【0075】
基材12は、他にもガラス、石英ガラス、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、絶縁膜、有機膜、などが下地層として形成されたものも含む。
【0076】
配線層P1は、基板12上に形成された絶縁層13と、基板12上で且つ絶縁層13に埋め込まれて配置された抵抗20及びコンデンサ21と、抵抗20及びコンデンサ21と接続される配線15A,15B,15Cと、各配線を覆って絶縁層13上に形成される第1層間絶縁膜(絶縁層)60を備える。
【0077】
基板12上に配置された抵抗20は、2つの電極部20aを備えている。これら電極部20aは、抵抗20の上面に形成されている。また、抵抗20と同様に基板12上に配置されたコンデンサ21は、2つの電極部21aを備えており、これら電極部21aもコンデンサ21の上面に形成されている。
【0078】
なお、実際には電極部20a、21aは、抵抗20、コンデンサ21の上面から略突出なく形成されているが、ここでは、突起状に図示している。また、液滴吐出法等を用いて導電性材料を吐出することで実際に突起を形成してもよい。
【0079】
基板12の上面であって、抵抗20及びコンデンサ21の周囲及び上面には絶縁層13が形成されている。絶縁層13は、上述した液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0080】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cが形成されている。各配線も、上述した液滴吐出法を用いて導電性材料を含む機能液を塗布することで形成される。本実施形態では、導電性材料として銀微粒子を含む機能液を用いている。これらの配線のうち、配線15Bは一端が電極部20aの一方と、他端が電極部21aの一方と接続しており、抵抗20とコンデンサ21を電気的に接続している。また、配線15Aは他方の電極部20aと接続しており、配線15Cは他方の電極部21aと接続している。
【0081】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cを覆って、第1層間絶縁膜60が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0082】
第1層間絶縁膜60には、配線15Aと接続する第1コンタクトホールH1と、配線15Cと接続する第2コンタクトホールH2が形成されている。これら各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0083】
配線層P2は、第1層間絶縁膜60上に配置される半導体チップ70と、同じく第1層間絶縁膜60上に配置される配線61と、これら半導体チップ70及び配線61を覆い第1層間絶縁膜60上に形成される第2層間絶縁膜62と、を備えている。第1層間絶縁膜60上に備えられた半導体チップ70は、上面に外部接続用の端子72を備えている。
【0084】
第1層間絶縁膜60上に備えられた配線61は、第1コンタクトホールH1に接続されている。配線61は配線15A,15B,15Cと同じく、液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成されている。また配線61は、配線15A,15B,15Cと同一材料により形成されている。
【0085】
第1層間絶縁膜60の上面には、配線61、半導体チップ70を覆って、第2層間絶縁膜62が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13及び第1層間絶縁膜60と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁インクを塗布し、塗布した絶縁インクを硬化させることで形成される。
【0086】
第2層間絶縁膜62には、第2層間絶縁膜62を貫通して配線61に接続する第3コンタクトホールH3と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通する上述した第2コンタクトホールH2の一部と、が形成されている。各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0087】
配線層P3は、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63A及び63Bと、これらの配線63A,63Bを覆って第2層間絶縁膜62上に形成される第3層間絶縁膜64と、第3層間絶縁膜64上に配置されたアンテナ素子24及び水晶振動子25と、を備えている。
【0088】
第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Aは、第2コンタクトホールH2を介して配線15Cと接続している。また、配線63Aは半導体チップ70が備える一方の端子72と接続している。したがって、配線63A、第2コンタクトホールH2、配線15Cを介して半導体チップ70とコンデンサ21が接続している。
【0089】
また、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Bは、第3コンタクトホールH3を介して配線61と接続している。また、配線63Bは半導体チップ70が備える他方の端子72と接続している。したがって、配線63B、第3コンタクトホールH3、配線61、第1コンタクトホールH1を介して半導体チップ70と抵抗20が接続している。
【0090】
これら配線63A,63Bは前述の液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成され、また配線15A,15B,15C,61と同一材料により形成されている。
【0091】
第3層間絶縁膜64には、第3層間絶縁膜64を貫通して配線63Aと水晶振動子25とを接続する第4コンタクトホールH4と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通し配線63Bとアンテナ素子24とを接続する第5コンタクトホールH5が形成されている。各コンタクトホールの内部は、各配線の形成材料と同一材料で充填されている。
【0092】
このような多層配線基板500の各コンタクトホールH1からH5は、前述したコンタクトホールの形成方法を用いて形成されている。そのため、各コンタクトホールを位置精度良く形成された多層配線基板500とすることが出来る。また、第1領域を小さく設定し小さい開口径のコンタクトホールを形成することで、微細なコンタクトホールで各層間を電気的に接続した多層配線基板500とすることが可能となる。
【0093】
(電子機器)
図11は、本発明にかかる多層配線基板を電子機器の一実施形態としての携帯電話の斜視構成図である。この携帯電話1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
【0094】
本実施形態の携帯電話1300においては、微細なコンタクトホールで層間が接続された多層配線基板を備えているので、基板を高密度化することが可能となり、携帯電話1300の装置全体が小型化された電子機器となる。
【0095】
上記の実施形態の多層配線基板は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、プロジェクタ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等に好適に用いることができる。高密度化された配線基板を用いることにより装置の小型化が可能となり、また、高集積化された配線基板を用いることでより高性能な演算能力を備えた電子機器とすることが可能となる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】液滴吐出装置の概略的な構成図である。
【図2】液滴吐出装置に備わる液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図3】液滴吐出法によるパターン形成方法を示す概略図である。
【図4】液滴の濡れ広がり方を示す概略図である。
【図5】本実施形態の多層配線基板の一例を示す断面図である。
【図6】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図7】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図8】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図9】本実施形態の多層配線基板の製造方法を示す工程図である。
【図10】多層配線基板の別形態を示す断面図である。
【図11】電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0098】
1…第1導電層、2…撥液部、3…絶縁層、4…コンタクトホール(開口部)、5…第2導電層、15A,15B,15C,61,63A,63B…配線(第1導電層、第2導電層)60…第1層間絶縁膜(絶縁層)、62…第2層間絶縁膜(絶縁層)、64…第3層間絶縁膜(絶縁層)、500…多層配線基板、H1〜H5…第1〜第5コンタクトホール(開口部)、1300…携帯電話(電子機器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記絶縁層に開口された開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、
前記第1導電層上に撥液部を形成する工程と、
前記撥液部の周囲に前記絶縁層の形成材料を含む機能液を配置して前記第1導電層上に前記開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、を備え、
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度が前記機能液の前進接触角よりも大きくなる条件で前記機能液を配置し、前記機能液の前記撥液部に面する部分の位置を前記撥液部の内側に流動させることにより、前記撥液部の面積よりも小さい開口面積を備える前記開口部を形成することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記撥液部を液滴吐出法により形成することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の塗布量によって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の加熱することによって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することを特徴とする請求項5に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記撥液材料は、前記撥液部を構成する高分子の前駆体であり、
前記撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
第1導電層と第2導電層とが絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されてなる多層配線基板であって、
前記コンタクトホールは、前記第1導電層の上に配置された撥液部の上に形成され、
前記コンタクトホールの開口面積は、前記撥液部の面積より小さい面積であり、
前記コンタクトホールの側壁と前記撥液部とが成す角は、前記液状体と前記撥液部との前進接触角と等しい角度を備えることを特徴とする多層配線基板。
【請求項10】
請求項9に記載の多層配線基板を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記絶縁層に開口された開口部を介して前記第1導電層と前記第2導電層とが電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、
前記第1導電層上に撥液部を形成する工程と、
前記撥液部の周囲に前記絶縁層の形成材料を含む機能液を配置して前記第1導電層上に前記開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、を備え、
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度が前記機能液の前進接触角よりも大きくなる条件で前記機能液を配置し、前記機能液の前記撥液部に面する部分の位置を前記撥液部の内側に流動させることにより、前記撥液部の面積よりも小さい開口面積を備える前記開口部を形成することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記撥液部を液滴吐出法により形成することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の塗布量によって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層を形成する工程では、前記機能液の加熱することによって、前記機能液が前記撥液部と接触する部分の角度を制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することを特徴とする請求項5に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記撥液材料は、前記撥液部を構成する高分子の前駆体であり、
前記撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
第1導電層と第2導電層とが絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されてなる多層配線基板であって、
前記コンタクトホールは、前記第1導電層の上に配置された撥液部の上に形成され、
前記コンタクトホールの開口面積は、前記撥液部の面積より小さい面積であり、
前記コンタクトホールの側壁と前記撥液部とが成す角は、前記液状体と前記撥液部との前進接触角と等しい角度を備えることを特徴とする多層配線基板。
【請求項10】
請求項9に記載の多層配線基板を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−71240(P2009−71240A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241015(P2007−241015)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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