説明

多層配線板の製造方法

【課題】ビアホールの形成工程を含まない多層配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性シート10と、絶縁性シート10の一方主面に埋め込まれた導電性の配線21〜27とを備える基板2を準備する工程と、基板2に形成された配線21〜27の所定位置に導電性インクを複数回吐出して、導電性の突起30が形成された基板5を作製する工程と、複数の基板51〜53を、一の基板52の一方主面に形成された突起30が他の基板53の他方主面に対向するように積層する工程と、積層した基板51〜53を加熱し、この積層方向に沿って押圧する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関し、絶縁性シートの両主面から回路パターンを埋め込んだ後、ビアホールの形成及びめっき処理を行うプリント基板の製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−277737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁性シートの両主面の回路パターンを導通させるため、ビアホールを形成しなければならず、工数がかかるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ビアホールの形成工程を行うことなく、積層された配線板の層間導通を実現する多層配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、絶縁性シートと、前記絶縁性シートの一方主面に埋め込まれた導電性の配線とを備える複数の基板を準備する工程と、前記各基板に形成された配線の所定位置に導電性インクを複数回吐出して、導電性の突起を形成する工程と、前記配線と前記突起とが形成された複数の前記基板を、前記一の基板の一方主面に形成された突起の先端が前記他の基板の他方主面に対向するように積層する工程と、前記積層した基板を加熱し、当該積層方向に沿って押圧する工程と、を備える多層配線板の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【0007】
[2]上記発明の前記突起を形成する工程において、前記配線の一の所定位置に対する導電性インクの吐出回数が、前記配線の他の所定位置に対する導電性インクの吐出回数とは異なるようにすることができる。
【0008】
[3]上記発明の前記突起を形成する工程において、前記配線の一の所定位置に形成される突起の高さが、前記配線の他の所定位置に形成される突起の高さと異なるようにすることができる。
【0009】
[4]上記発明において、前記一の基板に形成された突起の高さが、前記一の基板に積層され、前記突起の先端が対向する前記他の一又は複数の基板の前記絶縁性シートの厚さよりも高くなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の一方主面に形成された配線の所定位置に導電性インクを吐出して突起を形成し、この突起の先端が他の基板の他方主面に当接するように他の基板を積層してから加熱プレスすることにより、突起の先端が他の基板の絶縁性シートを貫通して他の基板の配線に当接するので、ビアホールを形成しなくても層間導通が可能な多層配線板を製造することができる。このように、ビアホールを形成する工程を省くことができるので、多層配線板の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る製造方法により得られた多層配線板の一例の断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法の他の例を説明するための工程断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る製造方法により得られた多層配線板の他の例の断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る多層配線板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る製造方法により得られた多層配線板の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る多層配線板の製造方法を、インクジェット方式の印刷装置を含む配線板の製造システムに適用した例を説明する。
【0013】
本発明の第1実施形態に係る多層配線板の製造方法は、絶縁性シートに配線が埋め込まれた基板を準備する第1工程と、第1工程で作製された基板に突起を形成する第2工程と、第2工程で作製された突起及び配線を有する複数の基板を積層し、加熱プレスする第3の工程とを含む。
【0014】
図1〜5は、第1工程を説明する図である。図1に示すように、所望の配線のパターンに応じて形成された凸部11a〜17aと凹部11b〜16bとを含む版面を備えたインプリントモールド(金型)1を準備する。インプリントモールド1の材質は、特に限定されないが、シリコン、ニッケル、銅、ダイアモンドライクカーボンを用いることができる。インプリントモールド1の版面にはフッ素系樹脂などの離型剤を塗布しておくことが好ましい。特に限定されないが、インプリントモールド1の配線パターンのライン/スペースは、5μm〜15μm/5μm〜15μm、その高さは5μm〜15μmとすることができる。
【0015】
また、図1に示すように、絶縁性シート10を準備する。本実施形態の絶縁性シート10は、厚さ25μmの熱可塑性ポリイミド製のシートである。本実施形態の絶縁性シート10としては、他に、厚さ18〜30μmの半硬化状態のエポキシフィルムなどの熱硬化性樹脂、オレフィン系樹脂又は液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0016】
図1に示すように、準備したインプリントモールド1を、その版面が絶縁性シート10の一方主面に対向するように配置し、図2に示すように、インプリントモールド1の版面に形成された凸部11a〜17aを絶縁性シート10に転写するため、インプリントモールド1を、加熱して軟化させた絶縁性シート10に押し付ける。このとき、絶縁性シート10は、材料となる各樹脂の特性に応じてガラス転移点以上、又は軟化点以上に加熱される。特に限定されないが、本実施形態では、転写時において、絶縁性シートを260℃〜300℃程度に加熱する。
【0017】
冷却後、図3に示すように、インプリントモールド1を離型する。絶縁性シート10の一方主面側に、版面の凸部11a〜17aに応じた配線用凹部101a〜107aを形成することができる。これにより、インプリントモールド1のライン/スペースに応じた微細な配線20のパターンを形成することができる。ちなみに、フォトリソグラフィー技術を用いて配線を形成した場合には、これほど微細な配線20のパターンを形成することが難しい。このため、本実施形態ではインプリント法により配線20を形成する。
【0018】
そして、図4に示すように、この配線用凹部101a〜107aを含む絶縁性シート10にスパッタや無電解めっきでシード層を形成し、このシード層に給電して電解めっきを行うことにより、ニッケル、鉄、アルミニウム、金、銀及び銅の群から選択された少なくとも1種類以上の金属を含む導電材料Pを充填する。ちなみに、スクリーン印刷で導電性材料を充填するとボイドが配線20に含まれてしまうが、めっき工程によって配線用凹部101a〜107aに導電性材料Pを充填することにより、ボイドを含まない配線20を形成することができる。この結果、多層配線板の電気特性を向上させることができる。
【0019】
もちろん、配線用凹部101a〜107aに導電性材料を充填する手法は、めっきに限定されず、上述の金属とバインダを含む導電性ペーストを絶縁性シート10にスクリーン印刷してもよい。スクリーン印刷によって配線用凹部101a〜107aに導電性材料を充填することにより、製造コストを低減させるとともに、生産効率を向上させることができる。
【0020】
次に、図5に示すように、配線用凹部101a〜107aからはみ出した導電性材料を研磨又はエッチングにより除去して配線21〜27(以下、配線20と総称することもある)が形成された基板2を得る。本実施形態の配線21〜27は、図5に示すように、上面(図中上側の面)のみが絶縁性シート10の一方主面側に露出し、下面および側面が絶縁性シート10と接するように、絶縁性シート10の一方主面側から埋め込まれた状態で形成されている。
【0021】
同図に示すように、配線21〜27の上面(図中上側の面で絶縁性シート10から露出している面)と絶縁性シート10の一方主面(図中上側面)とは、同じ高さであり、面一の状態となっている。このように、配線20が形成された基板2の一方主面(図中上側の面)、及び基板2の他方主面(図中下側の面)は平坦であるので、後述する第3の工程において、突起30が形成された複数の基板5(図6参照)を積層しても、各基板の間に隙間を生じさせることなく積層することができる。このため、多層化させても歪みが生じることがなく、良好な電気的特性を得ることができる。この結果、積層前の平滑化処理を省略して製造コストを低減させつつ、良好な電気特性の多層配線基板を製造することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、基板2の他方主面(図中下側の面)には配線20を形成しない例を示すが、後の積層工程において突起30が絶縁性シート10を貫通するのを妨げないように、積層される基板5(図6参照)の突起30と対向する部分以外であれば配線20を形成してもよい。
【0023】
積層するのに必要な数の基板2を準備し、第2工程に進む。
【0024】
第2工程では、インクジェット方式の印刷装置9を用いて、基板2の配線21〜27の所定位置に導電性の突起30を形成する。本実施形態におけるインクジェット方式の印刷装置9は、機能性材料を含むインクの液滴を絶縁性基材の所定領域に向かって吐出し、絶縁性基材の一方主面にパターンを形成する、いわゆるインクジェットプリンタである。図6に示すように、基板2は、本実施形態のインクジェット方式の印刷装置9に、インクジェットヘッド91のノズル92が、配線21〜27の所定位置に対向する位置となるようにセットされる。
【0025】
そして、印刷装置9の制御装置93は、ノズル92から所定位置に向けて導電性インクを複数回吐出する。図6に示すように、インクジェットヘッド91のノズル92から吐出された液滴94は、ノズル92と絶縁性シート10との間の空間を飛翔してノズル92と対向する配線22上の所定位置に着弾する。着弾後のインクの液滴94のインクに含まれる分散材料(溶媒など)が蒸発することにより、配線22上に導電性の機能層が形成される。
【0026】
なお、本実施形態において突起30の形成に用いられる導電性インクは、粒子径が1μm以下の導電性材料の微粒子や、粒子径が数nm〜数十nmの導電性材料のナノ粒子が有機溶媒中に分散されたものを用いることができる。導電性材料が金属の場合は、金属無機塩や有機金属錯体を有機溶媒中に分散させたものであっても構わない。導電性材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン及びアルミニウムの群からなる金属種群のうちの何れか一種若しくは二種以上の金属、又は二種以上の金属からなる合金を用いることができる。さらに、上記金属種群から選択された一種若しくは二種以上の金属の酸化物を含む無機物を導電性材料として用いることもできる。もちろん、上記金属種群から選択された二種以上の金属の合金を導電性材料として用いることもできる。特に限定されないが、本実施形態では、ナノ粒子型の酸化インジウムと酸化スズとの混合インク、その他の金属ナノ粒子を含むインク、又は錯体型の銀などの金属インクを、導電性インクとして用いる。
【0027】
本実施形態において、配線22上の所定位置に対する導電性インクの吐出は所定周期で行う。つまり、導電性インクの吐出後、所定時間の経過を待って、さらに導電性インクを吐出する。吐出から吐出までの所定時間においては、所定領域をレーザー照射などにより加温し、導電性インクの溶媒を蒸発させ、基板2の配線21〜27の所定位置に着弾した液滴7を乾燥、定着させる。前回吐出した導電性インクが固まった後に、同じ位置に、次の導電性インクを吐出するという動作を繰り返すと、導電性インクが絶縁性シート10の厚さ方向(図中z方向)に沿って積層され、吐出の回数に応じてz方向に伸長した、図6に示す突起30を形成することができる。
【0028】
そして、導電性インクの特性に応じた条件で焼成処理を行うことにより、導電性の突起30を備える基板5を得ることができる。なお、突起30を形成する際に焼成処理を行うことにより、突起30の硬さを向上させることができる。
【0029】
特に限定されないが、本実施形態における突起30の径(配線22の上面に沿う突起30の太さ)は、2μm以上かつ35μm以下、好ましくは2μm以上かつ15μm以下、さらに好ましくは5μm以上かつ10μm未満である。また、インクジェット方式の印刷装置9によって形成された突起30の先端は、図6に示すように凸状の曲面で形成される。このように突起30の先端を凸状の曲面とすることにより、後述する第3工程において、突起30が他の基板の絶縁性シート10を貫通する際の抵抗を低減させることができる。この結果、突起30の損傷なども防ぐことができる。
【0030】
また、突起30の高さh1(図6参照)は、導電性インクを吐出する回数により制御することができる。導電性インクの吐出回数と形成される突起30の高さh1とは、予め実験的に対応づけておくことができる。
【0031】
特に限定されないが、本実施形態において、一の基板5の突起30の高さを、この一の基板5に積層され、突起30が貫通する他の基板5の絶縁性シート10の厚さよりも高くなるように形成する。積層される複数の基板5の厚さが共通する場合には、図6に示すように、突起30の高さh1を、絶縁性シート10の厚さh2よりも高くなるように形成する。また、後述する第3の工程において積層される基板5の絶縁性シート10の厚さが異なる場合には、突起30の高さ(h1)を、その基板5に積層され、突起30が対向する他の基板5の絶縁性シート10の厚さ、つまり、突起30が貫通する絶縁性シートの厚さ(図7に示すh3)よりも高く形成する。ここにいう絶縁性シート10の厚さとは、絶縁性シート10の他方主面(配線20が形成されていない面)から配線20の他方主面(絶縁性シート10と接している面)までの長さ、つまり基板5の厚さから配線20の厚さを差し引いた長さである。これにより、積層して熱プレスをしたときに、突起30が積層された基板5の絶縁性シート10を確実に貫通し、突起30の先端を基板5の配線20と確実に接触させることができる。
【0032】
最後に、第3の工程について説明する。図7に示すように、先述した第2工程の手法で、配線211〜271及び突起301a,301bが形成された基板51と、基板51と同様に構成された基板52、基板53(図6に示す基板5に相当)及び配線21〜27が形成された一枚の基板2(図5に示す基板2に相当)を準備する。
【0033】
そして、図7に示すように、一の基板51の一方主面(突起301a,301bが形成されている面)が他の基板52の他方主面(配線212〜272及び突起302a,302bが形成されていない面)に対向するように積層し、同様に基板52の一方主面が他の基板53の他方主面に対向するように積層し、基板53の一方主面が他の基板2の他方主面に対向するように積層する。つまり、最下層を基板51とし、基板52、53をその上に積層し、基板2を最上層に配置する。積層する各基板51〜53及び基板2は、画像認識機能付きのアライメント装置により正確に位置合わせが行われる。
【0034】
そして、積層された基板51〜53及び基板2を加熱し、当該積層方向(図中z方向)に沿って押圧する。熱プレス工程における温度は、絶縁性シート10が軟化して接着性を示す温度とすることができる。熱プレス工程において絶縁性シート10同士は互いに融着又は接着する。特に限定されないが、本実施形態における熱プレス工程の温度は、例えば220℃〜260℃とすることができる。
【0035】
各基板51〜53の突起301a,301b,302a,302b,303a,303b(以下、突起30と総称することもある)の先端は、加熱によって軟化した絶縁性シート10に押しつけられ、この絶縁性シート10を厚さ方向(図中z方向)に貫通する。基板51の突起301a,301bは、基板52の絶縁性シート10を貫通して基板52の配線222と262に基板52の絶縁性シート10の他方主面(図中下側の面)側から圧接される。同じく、基板52の突起302a,302bは、基板53の絶縁性シート10を貫通して基板53の配線223と263に基板53の絶縁性シート10の他方主面(図中下側の面)側から圧接される。同様に、基板53の突起303a,303bは、最上層の基板2の絶縁性シート10を貫通して基板2の配線22と26(各基板の配線を配線20と総称することもある)に基板2の絶縁性シート10の他方主面(図中下側の面)側から圧接される。圧接された突起30と配線20とは加熱プレスにより密着し、導通可能となる。
【0036】
第3工程において、絶縁性シート10が熱硬化性樹脂である場合には、絶縁性シート10と突起30が完全に硬化するまで加熱プレスを継続してもよいし、絶縁性シート10が軟化し、絶縁性シート10同士が接着する状態になったら冷却し、その後オーブンで絶縁性シート10と突起30を完全に硬化させてもよい。絶縁性シート10が熱可塑性樹脂である場合には、突起30が対向する配線と十分に接合するまでプレスを継続することが好ましい。
【0037】
これにより、図8に示すように、各基板51〜53、基板2の層間導通がされた多層配線板100を、ビアホールを形成する工程を経ることなく得ることができる。
【0038】
本実施形態の多層配線板の製造方法によれば、加熱プレス工程により、積層された絶縁性シート10の主面(一方主面と他方主面)同士が接着するので、絶縁性シート10の間に接着剤を塗る、または接着シートを貼る等により接着層を別途形成する必要がない。このため、積層工程において接着層の形成工程が不要となるので、製造コストを低減させることができる。また、絶縁性シート10の間に接着層を形成しないので、多層配線板100を薄くすることができる。多層配線板100にICチップなどの電子部品を実装する場合においては、低背化を図ることができる。
【0039】
ビアが形成された基板を一枚ずつ積層していく方法では、各基板にかかる負荷を均等にすることができないため、部分的な変形、特に下層部分に大きな変形が生じる場合がある。これに対し、本実施形態の多層配線板の製造方法は同じ状態の基板5を一括して積層するため、各基板5にかかる負荷を均等にすることができるので、部分的な変形、特に下層部分に大きな変形が生じる事態を防止することができる。
【0040】
なお、本実施形態の多層配線板の製造方法においては、積層する基板5の態様は特に限定されない。例えば、図9に示すように、両面基板50を積層することができる。この場合には、突起30と対向する側の主面に絶縁性シート10aを配置する。熱プレス処理をすると、図10に示すように、各基板55〜57、両面基板50とが層間導通された多層配線板を、ビアホールを形成する工程を経ることなく得ることができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態に係る多層配線板の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、突起を形成する第2工程に特徴が有り、他の部分は第1実施形態の製造方法と共通する。重複した説明を避け、以下には、本実施形態の特徴となる第2工程を中心に説明し、共通する部分については第1実施形態に係る記載を援用する。
【0042】
図1〜5に示す第1実施形態の第1工程と同様に、配線21〜27が形成された基板2を準備し、配線21〜27上の所定位置に導電性インクを複数回吐出して、図11に示すように導電性の突起31,32を形成する。
【0043】
本実施形態に係る多層配線板の製造方法では、図11に示すように、配線26上に形成される突起31の高さと配線22上に形成される突起32の高さとを異ならせて、各突起31,32を形成する。具体的には、同図に示すように、配線22上に形成される突起32の高さが、配線26上に形成される突起31の高さよりも高くなるように、各突起31,32を形成する。
【0044】
異なる高さの突起31、32の形成方法は特に限定されないが、本実施形態では、導電性インクを吐出する回数を異ならせることにより、高さの異なる突起31、32を形成する。具体的に、本実施形態では、配線22上に相対的に背(高さ)の高い突起32を形成するために導電性インクを吐出する回数が、配線26上に相対的に背(高さ)の低い突起31を形成するために導電性インクを吐出する回数よりも多くなるように、導電性インクの吐出を行う。導電性インクを吐出する回数は、インクジェット方式の印刷装置9の制御装置93により制御する。
【0045】
また、本実施形態では基板5Aに形成された突起31の高さを、この突起31が貫通する一枚の基板5Aの絶縁性シート10の厚さよりも高く形成し、突起32の高さを、この突起32が貫通する二枚の基板5Aの絶縁性シート10の厚さよりも高く形成する。これにより、積層して熱プレスをしたときに、基板5Aの一の突起31には一枚の絶縁性シート10を貫通させ、他の突起32には二枚の絶縁性シート10を貫通させることができる。絶縁性シート10を貫通した突起31,32の先端は、他の基板5Aに形成された配線21〜27と接触する。つまり、同一の基板5Aに形成された複数の突起31,32は、階層の異なる層との層間導通を図ることができる。このように、突起31、32が形成された基板5Aを積層数に応じて作製し、第3工程の熱プレス工程に進む。
【0046】
本実施形態では、図12に示すように、基板51A、基板52A、基板53A及び基板2を、この順番で積層する。基板52Aには高さの異なる突起312b、322aが形成されている。突起312bは積層される基板53Aの絶縁性シート10を貫通し、基板53Aの配線263と接触する。一方、突起322aは積層される基板53Aの絶縁性シート10及びその上に積層される基板2の絶縁性シート10の二枚の絶縁性シート10を貫通し、基板2の配線22と接触する。
【0047】
そして、積層された基板51A〜53A及び基板2を第1実施形態と同様に加熱し、当該積層方向(図中z方向)に沿って押圧する。
【0048】
この熱プレス工程を経て、図13に示す多層配線板100Bを得ることができる。図13に示すように、基板52Aの配線222Aに形成された突起32は、基板53A、基板2の2枚の絶縁性シート10を貫き、基板2の配線22A´の他方主面側(図中下側の面)に接触している。つまり、突起32は、複数層間を跨いで層間導通をさせるスキップビアを構成する。図13に示すように基板53Aと基板2との間には、突起32に接する電極(ランド)が形成されておらず、突起32は基板52Aの配線222Aと基板2の配線22A´とを直接導通させる。このように、本実施形態の突起32は、基板53Aと基板2との間で電極と接することがないので、電気的な損失を低減させ、信頼性の高いスキップビアを備える多層配線板100Bを提供することができる。
【0049】
このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、ビアホールを形成することなく、スキップビア32を有する多層配線板100Bを製造することができるので、低コストで伝達特性の優れた多層配線板100Bを提供することができる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0051】
1…インプリントモールド
11a〜17a…版面の凸部
11b〜16b…版面の凹部
10…絶縁性シート
101a〜107a…凹部
P…導電性材料
50,51〜53,55〜57,51A〜53A…基板
2…基板,配線が形成された基板
5…基板,配線と突起とが形成された基板(基板2に突起が形成された基板)
20,21〜27…配線
30,31,32…突起
9…インクジェット方式の印刷装置
91…インクジェットヘッド
92…ノズル
93…制御装置
94…液滴
100,100A,100B…多層配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性シートと、前記絶縁性シートの一方主面に埋め込まれた導電性の配線とを備える複数の基板を準備する工程と、
前記各基板に形成された配線の所定位置に導電性インクを複数回吐出して、導電性の突起を形成する工程と、
前記配線と前記突起とが形成された複数の前記基板を、前記一の基板の一方主面に形成された突起の先端が前記他の基板の他方主面に対向するように積層する工程と、
前記積層した基板を加熱し、当該積層方向に沿って押圧する工程と、
を備える多層配線板の製造方法。
【請求項2】
前記突起を形成する工程において、前記配線の一の所定位置に対する導電性インクの吐出回数が、前記配線の他の所定位置に対する導電性インクの吐出回数とは異なることを特徴とする請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項3】
前記突起を形成する工程において、前記配線の一の所定位置に形成される突起の高さが、前記配線の他の所定位置に形成される突起の高さと異なることを特徴とする請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項4】
前記一の基板に形成された突起の高さが、前記一の基板に積層され、前記突起の先端が対向する前記他の一又は複数の基板の前記絶縁性シートの厚さよりも高いことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の多層配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−51367(P2013−51367A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189586(P2011−189586)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】