説明

多材射出成形機および多材射出成形方法

【課題】必要とされる型締力の割に生産効率がよく、型開閉に伴う成形サイクルを短縮することが可能な多材射出成形機および多材射出成形方法を提供する。
【解決手段】多材射出成形機10は、第1の盤12に取付けられる金型14,15と、第2の盤13に取付けられる金型21,22と、金型14,15と金型21,22との間に配設される中間金型27と、中間金型27またはそのキャビティ28を少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構29と、金型14および中間金型27の間と金型21および中間金型27の間にそれぞれ形成される複数の一次キャビティC1,C1に射出を行う第1の射出装置31と、金型15および中間金型27の間と金型22と中間金型27の間にそれぞれ形成され前記一次キャビティC1,C1と形状の異なる複数の他のキャビティC2,C2に射出を行う第1の射出装置31以外の他の射出装置32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形機および多材射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形機としては、特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1は、可動盤に回転盤が取付けられており、回転盤に取付けられた2個の可動型を回転移動可能となっている。また固定盤には2個の固定型が固定的に取付けられている。そして一次射出により成形した一次成形品を可動型とともに二次成形位置へ移動させ、異なる射出装置から二次射出を行って多材成形品を成形する。しかしながら特許文献1では次のような問題があった。
【0003】
即ち特許文献1では、複数の金型が盤に対して並列的に並んで配設されているため、両方のキャビティの投影面積に比例して型締力が必要となる。そして2面の金型を有し、各金型にキャビティが1個づつ形成されるタイプでは、1回の型開閉毎に1個の成形品しか成形ができなかった。従って1個の成形品を得るために2面分の型締力が必要となるという問題があった。
【0004】
前記の問題に対応するものとして特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2では固定金型と可動金型の中間に垂直軸に沿って回転する中間金型(可動型部)が設けられている。そして固定金型と中間金型の第1型部との間で一次成形を行った後、中間金型を反転し、可動金型と中間金型の第1型部との間のキャビティで二次成形を行う。またその際に第2型部は反転され、固定金型との間のキャビティで次の一次成形を行う。特許文献2のタイプは、前記2個のキャビティが型開閉方向に重なるためにキャビティ1面分の型締力またはそれに近い型締力で前記2個のキャビティの型締が行えるという利点がある。しかし特許文献2については、一次成形から二次成形に移行する際に、中間金型の端部が固定金型や可動金型に当接しないように回転させるために可動盤を大きく型開きする必要があり、その結果、成形サイクルが長くなるという問題があった。また可動盤を大きく型開きするデーライトの問題等により設置スペースを広く必要となるものであった。また特許文献2については、型取付時に固定金型や可動金型に対して、中間金型の高さを調整するのが難しい場合があった。一方特許文献2の装置を縦型にすることも考えられるが、その場合にも可動盤を大きく型開きする必要がある問題に加えて、中間金型の回転軸を支える脚部を頑丈な構造にする必要があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−103205号公報(請求項2、0035、図2)
【特許文献2】特開2007−50585号公報(請求項1、図1〜図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、必要とされる型締力の割に生産効率がよく、型開閉に伴う成形サイクルを短縮することが可能な多材射出成形機および多材射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の多材射出成形機は、一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形機において、第1の盤に取付けられる金型と、第2の盤に取付けられる金型と、前記第1の盤に取付けられる金型と前記第2の盤に取付けられる金型との間に配設される中間金型と、中間金型またはそのキャビティを少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構と、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型および中間金型の間にそれぞれ形成される複数の一次キャビティに射出を行う第1の射出装置と、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型と中間金型の間にそれぞれ形成され前記一次キャビティと形状の異なる複数の他のキャビティに射出を行う前記第1の射出装置以外の他の射出装置と、が備えられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の多材射出成形機は、請求項1において、型開閉方向に設けられた回転軸を中心に回転または反転される中間盤が配設され、前記中間盤の両面にそれぞれ複数の中間金型とそのキャビティ形成面が配設されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の多材射出成形機は、請求項1において、型開閉方向に設けられた回転軸を中心に回転または反転される中間金型が配設され、前記中間金型の両面にそれぞれ複数のキャビティ形成面が配設されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の多材射出成形機は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第1の盤と第2の盤は上下方向に配設され、上下方向に型開閉がなされる縦型射出成形機であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の多材射出成形方法は、一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形方法において、第1の盤に取付けられる金型と、第2の盤に取付けられる金型と、前記第1の盤に取付けられる金型と前記第2の盤に取付けられる金型との間に配設される中間金型と、中間金型またはそのキャビティを少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構と、第1の射出装置と、前記第1の射出装置以外の他の射出装置とが備えられ、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型および中間金型の間に形成される複数の一次キャビティに前記第1の射出装置から射出を行い複数の一次成形品を成形した後、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型と中間金型の間にそれぞれ形成され前記一次成形品に接続される複数の他のキャビティに前記他の射出装置から射出を行い複数の多材成形品を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多材射出成形機または多材射出成形方法は、一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形機において、第1の盤に取付けられる金型と、第2の盤に取付けられる金型と、前記第1の盤に取付けられる金型と前記第2の盤に取付けられる金型との間に配設される中間金型と、中間金型またはそのキャビティを少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構と、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型および中間金型の間にそれぞれ形成される複数の一次キャビティに射出を行う第1の射出装置と、前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型と中間金型の間にそれぞれ形成され前記一次キャビティと形状の異なる複数の二次キャビティに射出を行う前記第1の射出装置以外の他の射出装置と、が備えられているので、必要とされる型締力の割に生産効率がよく、型開閉に伴う成形サイクルを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、型開して中間盤を回転させて一次成形品を二次成形側へ移動させた後の状態を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、型締および射出を行っている状態を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、型開して二次成形の完了した多材成形品を取出す際の状態を示す図である。
【図4】図4は、別の実施形態の多材射出成形機を示す水平断面図である。
【図5】図5は、更に別の実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、一次キャビティにより一次成形品を成形している状態を示す図である。
【図6】図6は、更に別の実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、一次成形した後に、中間金型を移動させた後の状態を示す図である。
【図7】図7は、更に別の実施形態の多材射出成形機および多材射出成形方法を示す図であって、二次キャビティにより多材成形品を成形している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図3に示される本発明の本実施形態の多材射出成形機10は、一次成形した一次成形品P1に少なくとも二次成形を行うものである。縦型射出成形機である多材射出成形機10の縦型の型締装置11は、図示しないベッドに対して固定的に配設される下固定盤12の上面の金型取付面に複数の金型14,15(本実施形態では2個)が取付けられている。各金型14,15は、それぞれ1面のキャビティ形成面16,17が形成され、それぞれのキャビティ形成面16,17の形状は異なっている。具体的には一側の金型14のキャビティ形成面16は多材成形品P2の平板部を構成するため平らに形成されているのに比べて他側の金型15のキャビティ形成面17は多材成形品P2の枠部を形成するための凹部が形成されている。また一側の金型14と他側の金型15の外側の側面にはそれぞれノズルタッチ面18,19が形成され、内部にホットランナが形成されている。
【0015】
下固定盤12の上方には図示しない上受圧盤が配設され、下固定盤12と上受圧盤の間には図示しないタイバが4本、縦方向に配設されている。そして前記タイバには下固定盤12の金型取付面と平行に上可動盤13が前記タイバに摺動自在に挿通されている。そして上受圧盤と上可動盤13の間には型開閉・型締機構20が配設されている。本実施形態では型開閉・型締機構20は、各金型の背面を直接押圧できるようラムを有する2個の型締シリンダと図示しない型開閉機構からなる。しかし型開閉・型締機構の種類および数は限定されない。上可動盤13の下面の金型取付面には複数の金型21,22(本実施形態では2個)が取付けられている。各金型21,22は、それぞれ1面のキャビティ形成面23,24が形成され、それぞれのキャビティ形成面23,24の形状は異なっている。すなわち上可動盤13の一側の金型21は、上方から平面視して下固定盤12の一側の金型14と同一位置に取付けられ、前記一側の金型14のキャビティ形成面16と同一形状のキャビティ形成面23が形成されている。また上可動盤13の他側の金型22は、上方から平面視して下固定盤12の他側の金型15と同一位置に取付けられ、前記他側の金型15のキャビティ形成面17と同一形状のキャビティ形成面24が形成されている。
【0016】
また下固定盤12と上可動盤13の間には中間盤25が設けられている。中間盤25は上可動盤13の平面方向中心位置から下方に向けて型開閉方向に設けられる軸である回転軸26に固定されている。そして回転軸26は、上可動盤13にベアリングにより回転自在に保持され、電動モータや減速機構等の回転機構29(移動機構)により回転可能となっている。従って中間金型27またはそのキャビティ28は、移動機構である回転機構29により少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動される。そして回転軸26および中間盤25の内部には中間金型27内に流動させる冷却水の管や、中間金型27や中間盤25内のホットランナのヒータの電線等が配設されている。また中間盤25および回転軸26は、上可動盤13が上昇され型開きされた際に、全体が型開閉方向に移動可能となっている。本実施形態では中間盤25および回転軸26は、上可動盤13に対して自重で型開方向に相対的に移動されるようになっているが、動力により移動されるものでもよい。なお中間盤25および回転軸26は、下固定盤12に取付けられ、昇降されるように設けてもよい。更には中間盤25をベッド等から立設した台などに設け、中間盤25の外周に巻き付けられたタイミングベルトにより中間盤25を回転または反転させるようにしてもよく、前記移動機構は限定されない。
【0017】
そして中間盤25の上下の両面には複数の中間金型27が取付けられている。中間盤25の下面には、下固定盤12に取付けられた金型14,15と対向して2個の中間金型27,27が取付けられている。各中間金型27には前記金型14,15のキャビティ形成面16,17と対向するキャビティ形成面28がそれぞれ1面形成されている。そして前記キャビティ形成面16,17と型合せした際に、図2に示されるように形状の異なる一次キャビティC1および他のキャビティである二次キャビティC2がそれぞれ形成されるようになっている。また中間盤25の上面にも、第2の盤である上可動盤13に取付けられる金型21,22と対向して2個の中間金型27,27が取付けられている。中間金型27,27にはそれぞれ1面のキャビティ形成面28,28が形成され、前記上可動盤13に取付けられる金型21,22のキャビティ形成面23,24と型合せした際に形状の異なる一次キャビティC1および二次キャビティC2がそれぞれ形成されるようになっている。従って本発明では中間金型27は、前記第1の盤である下固定盤12に取付けられる金型14,15と前記第2の盤である上可動盤13に取付けられる金型21,22との間に配設される。本実施形態では4個の中間金型27の4面のキャビティ形成面28は、同一形状であり、型開閉方向の軸(回転軸26)を中心に型開閉方向と直交する面上を回転または反転されるようになっている。そして一次成形位置S1で一次成形した一次成形品P1を中間金型27のキャビティ形成面28に保持した状態で異なる成形位置である二次成形位置S2へ移動可能となっている。
【0018】
なお本実施形態の多材射出成形機の型締装置11は、下固定盤12と上可動盤13からなる縦型型締装置であるが、上固定盤と下可動盤からなる縦型型締装置であってもよい。また水平方向に可動盤が移動する横型射出成形機の型締装置であってもよい。更には縦型および横型に限らず、固定された位置で回転可能な中間盤に対して第1の盤と第2の盤が近接遠退方向に移動されるものでもよい。また第1の盤、第2の盤、中間盤に取付けられる各金型14,15,21,22,27は、それぞれの金型の間で複数の一次キャビティC1,C1と、前記一次キャビティC1,C1とは形状の異なる二次キャビティC2,C2が形成されるものであれば、金型の個数は一または複数でもよく限定されない。即ち1個の金型に複数のキャビティ形成面が形成されたものでもよい。また金型およびキャビティ形成面の個数は3個以上であってもよく、他のキャビティとしては二次キャビティ以外に三次キャビティ以上のキャビティを用いて同時に三次成形以上の成形を行うものでもよい。また本実施形態では前記したように下固定盤の一側の金型14のキャビティ形成面16と上可動盤13の一側の金型21のキャビティ形成面23、他側の金型15のキャビティ形成面17と他側の金型22のキャビティ形成面24はそれぞれ同一であり、中間金型27の4面のキャビティ形成面28は同一となっている。しかし下固定盤12の金型14,15と中間盤25の金型27の間に形成される形状の異なる一次キャビティC1および二次キャビティC2と、上可動盤13の金型21,22と中間盤25の金型27の間に形成される一次キャビティC1および二次キャビティC2で、上下方向の一次キャビティC1,C1および二次キャビティC2,C2の形状を相違させ、異なる多材成形品P2を成形するようにしてもよい。また一次キャビティC1および二次キャビティC2に到達するまでのランナの一部または全部をコールドランナ(スプル)としてもよい。
【0019】
型締装置11の下固定盤12の一側と他側には、複数の一次キャビティC1,C1に第1の樹脂材料M1の射出を行う第1の射出装置31と複数の二次キャビティC2,C2に第2の樹脂材料M2の射出を行う他の射出装置である第2の射出装置32がそれぞれ加熱筒33,34およびノズル35,36が水平方向となるように配設されている。そして一次側の射出を行う第1の射出装置31のノズル35は、下固定盤12の一側の金型14のノズルタッチ面18に対して進退可能に設けられている。また二次側の射出を行う第2の射出装置32のノズル36は、下固定盤12の他側の金型15のノズルタッチ面19に対して進退可能に設けられている。なお第1の射出装置31および第2の射出装置32のノズル35,36が当接される位置は、下固定盤12、中間盤25、中間金型27、上可動盤13に取付けられる金型21,22、および上可動盤13の側面やパーティング面であってもよい。更に第1の射出装置31および第2の射出装置32は、下固定盤12や上可動盤13に形成された孔を通じて、ノズルが金型14,15,21,22に当接されるものでもよい。またノズル35,36にはシャットオフバルブ等を用いてもよい。また他の射出装置を2本以上備え、合計3本以上の射出装置を有するものでもよい。
【0020】
次に本実施形態の多材射出成形機10の多材射出成形方法について説明する。図1は、多材射出成形機10の一側の一次成形位置S1で一次成形された成形品P1が型開された後、中間金型27のキャビティ形成面28に保持された状態で中間盤25が回転されて他側の二次成形位置S2へ移動された後の状態である。その際同時に他側の二次成形位置S2に位置していた中間金型27は、完成品である多材成形品P2が取り出された後にキャビティ形成面28が空の状態で前記一次成形位置S1へ移動される。なお中間盤25および回転軸26は、常に一方方向に回転されるものでもよく、180°回転された後、逆方向に180°反転されて元の位置に戻るものでもよい。また中間金型27等が3面取付けられている場合は、中間盤25を120°ずつ回転させることが望ましい。
【0021】
次に図2に示されるように、型締装置11を作動させて上可動盤13および金型21,22を下降させる。その際に最初に中間盤25の下面側に取付けられた中間金型27,27と下固定盤12に取付けられた金型14,15が当接されるが、なおも上可動盤13を下降させるにつれて、上可動盤13に対して中間盤25および回転軸26が相対的に位置変化して、中間盤25の上面側に取付けられた中間金型27と上可動盤に取付けられた金型21,22も当接され型締がなされる。そして前記第1の盤である下固定盤12に取付けられる金型14および一側に位置する中間金型27の間と第2の盤である上可動盤13に取付けられる金型21および一側に位置する中間金型27の間に、それぞれ複数の一次キャビティC1,C1が型開閉方向に重なる位置に形成される。また前記第1の盤である下固定盤12に取付けられる金型15および他側に位置する中間金型27と第2の盤である上可動盤13に取付けられる金型22および他側に位置する中間金型27の間に、それぞれ複数の二次キャビティC2,C2が型開閉方向に重なる位置に形成される。一次キャビティC1,C1とは他のキャビティである二次キャビティC2,C2は、一次成形品P1,P1に接続された状態で使用され、金型15のキャビティ形成面17および一次成形品P1(または金型22のキャビティ形成面24および一次成形品P1)によってキャビティが形成される。
【0022】
そして一次側の射出を行う第1の射出装置31を下固定盤12の一側の金型14のノズルタッチ面18に当接させると共に、二次側の射出を行う第2の射出装置32を下固定盤12の他側の金型15のノズルタッチ面19に当接させる。そして型締力が及ぼされた状態で、前記第1の射出装置31からホットランナを介して一側の金型14および一次成形位置にある中間金型27との間に形成される一次キャビティC1と一側の金型21および一次成形位置にある中間金型27との間に形成される一次キャビティC1からなる複数のキャビティC1,C1に第1の射出装置31から第1の樹脂材料M1を射出(充填および保圧)する。
【0023】
また前記第2の射出装置32からホットランナを介して他側の金型15のキャビティ形成面17と他側に位置する中間金型27に保持された一次成形品P1の間により形成されるキャビティC2、他側の金型22のキャビティ形成面24と他側に位置する中間金型27に保持された一次成形品P1の間により形成されるキャビティC2からなる複数のキャビティC2,C2に第2の樹脂材料M2を射出(充填および保圧)する。本実施形態では、一次成形により成形される一次成形品P1は、平板状の平板であり、二次成形により異なる樹脂材料である第2の樹脂材料M2による枠部が前記一次成形品P1の周囲に固着されて多材成形品P2が成形される。なおこの際の第1の射出装置31、第2の射出装置32からの射出は同時であってもどちらか一方が先でもよい。なおいずれか一方の金型にスライドコアを使用すること等により、二次キャビティは、両方の金型のキャビティ形成面と一次成形品P1から構成することも可能である。
【0024】
次に図3に示されるように型開閉・型締機構20を作動させて型開を行う。型開の際は、型閉の逆であり、最初に中間盤25の上面側の中間金型27と上可動盤13の金型21,22の間が型開され、上可動盤13が一定高さまで上昇してから、中間盤25の下面側の中間金型27と下固定盤12の金型14,15との間が型開される。そして中間盤25が下固定盤12と上可動盤13の中間位置となると型開閉・型締機構20の作動を停止させる。その際に一次成形品P1は、一次成形位置S1に位置する中間金型27のキャビティ形成面28に当接して残され、二次成形品(完成品)である多材成形品P2は、二次成形位置S2に位置する中間金型27のキャビティ形成面28に当接した状態で残される。そして中間盤25の他側から取出機37,37を進入させ、前記多材成形品P2の面に取出機37,37の吸盤を吸着させ、再び移動させて取出しを行う。この際に図示しないエジェクタや離型エアにより多材成形品P2の離型を補助するようにしてもよい。なお多材成形品P2は、下固定盤12や上可動盤13に取付けられる金型14,15,21,22の側に保持されて型開されるようにしてもよく、常に下側に位置する金型15,27に保持されるようにしてもよい。
【0025】
そして取出しが完了すると回転機構29を作動させることにより回転軸26と共に中間盤25が回転され、一次成形位置S1で一次成形した一次成形品P1を中間金型27のキャビティ形成面28に保持された状態で異なる成形位置(他側の二次成形位置S2)へ移動される。そして移動が完了すると再び図1の状態となり型閉が行われる。なお本実施形態では、型開閉方向の軸を中心に型開閉方向に直交する面上を回転または反転させる中間盤25に金型27が取付けられている。そして下固定盤12や上可動盤13の金型14,15,21,22と平行に中間盤25と中間金型27を回転または反転移動されるので、特許文献2のタイプよりも型開間隔が狭い状態で中間盤25を回転または反転させることができ、成形サイクルが短縮できる。また型開閉方向に複数のキャビティC1,C2が重なっているスタックモールドの思想を取り入れたものであるので、特許文献1のタイプよりも必要とされる型締力の割に生産効率がよく、同時に複数の多材成形品P2,P2を成形することができる。そして縦型の型締装置11を採用することにより両側に第1の射出装置31および第2の射出装置32を配置することができる。また縦型の型締装置11の上可動盤13から中間盤25を吊り下げる構造を採用することにより、中間盤25を型開閉方向へ移動させる動力機構を省略することができる。
【0026】
次に図4に示される本発明の別の実施形態の多材射出成形機40について説明する。別の実施形態の多材射出成形機40は、横型射出成形機の型締装置41に中間金型42が回転可能なスタックモールド43が取り付けられる例である。従って型締装置41には中間盤は配設されていない。型締装置41は、第1の盤である固定盤44と図示しない受圧盤の間にタイバ45が配設され、タイバ45に第2の盤である可動盤46が挿通されている。受圧盤と可動盤46の間には型締機構47が配置されている。そして固定盤44に取付けられる金型48には形状の異なる2面のキャビティ形成面49,50が形成されている。また可動盤46に取付けられる金型51にも固定盤44に取付けられる金型48と同様に同じ位置に形状の異なる2面のキャビティ形成面52,53が形成されている。
【0027】
固定側の金型48のキャビティ形成面49とキャビティ形成面50の間には射出された溶融樹脂を中間金型42内へ送る円筒状のホットランナブロック54が固定的に配置されている。そしてホットランナブロック54の溶融樹脂通路55の先端側は一側に向けて屈曲して、外周面56の一側に開口部57が形成されている。そして前記ホットランナブロック54の周囲には中央に前記ホットランナブロック54が挿通される内周孔58を有する円盤状の中間金型42が配設されている。中間金型42の固定側、可動側の両側の面には同一のキャビティ形成面59がそれぞれ2面づつ形成されている。そして型閉された際に中間金型42のキャビティ形成面59,59と固定金型側のキャビティ形成面49,50により、形状の異なる2個のキャビティが形成されるようになっている。また型閉された際に中間金型42のキャビティ形成面59,59と可動金型側のキャビティ形成面52,53により、形状の異なるキャビティが形成されるようになっている。そして中間金型42の内部にはキャビティ形成面59から内周孔58に向けてホットランナの溶融樹脂通路60が形成され、内周孔58の対向する2箇所に開口部61が設けられている。
【0028】
前記中間金型42の内周孔58とホットランナブロック54の外周面56の間は摺動自在となっており、中間金型42は型開閉方向に移動可能となっている。そして中間金型42が型開位置となった際に、ホットランナブロック54の開口部57と中間金型42の一側に位置する開口部61が接続されホットランナが連通されるようになっている。また中間金型42の内部の外周寄りには、二次キャビティに連設されるホットランナの溶融樹脂通路62が形成され、外周部63に開口部64が形成されている。また中間金型42の外周部63は、固定側の金型48から可動側の金型51側に向けて円筒状のガイド部材65が突出固定されている。そして中間金型42の外周部63は、前記ガイド部材65の内周面にガイドされている。ただし前記ガイド部材65は、後述する第2の射出装置66のノズル67が挿入される部分や、成形品の取出位置の部分には、開口が設けられている。
【0029】
また図示は省略するが、前記ガイド部材65等には中間金型42のみを型開閉方向の軸75(仮想軸)を中心に回転または反転させる回転機構(移動機構)が取付けられている(ホットランナブロック54も同時に回転させる構造にしてもよい。)。また可動側の金型51の前端の複数個所には、中間金型42が型閉位置から型開されていく際に係合されるフック68が設けられ、中間金型42側にはその係合部69が設けられている。前記フック68等からなる機構は、中間金型42が型開位置に到達した時点で係合が解除され、可動側の金型51のみが更に型開されるようになっている。なお前記フック68に替えて別の機構を用いてもよく、縦型の型締装置の上型側から中間金型42を取付ける際は、フック68等の機構を用いないでもよい。
【0030】
多材射出成形機40の固定盤44は、第1の射出装置70のノズル71が挿入される孔72が設けられている。そして固定盤44の反固定金型側には、ノズル71と加熱筒73が水平方向に配置された第1の射出装置70が進退自在に配設されている。また中間金型42を閉鎖した際に他側(反操作側)となる側方にはノズル67と加熱筒74が水平方向の配設される他の射出装置である第2の射出装置66が進退自在に配設されている。よって第1の射出装置70と第2の射出装置66は直交する方向に向けて配設されている。
【0031】
次に図4に示される別の実施形態の多材射出成形機40の多材射出成形方法について説明する。多材射出成形機40の多材射出成形方法も基本的には先に本実施形態の多材射出成形機10の多材射出成形方法と同様である。一次成形位置S1で型開閉方向に重なる位置に複数形成された一次キャビティに対して第1の射出装置70から射出を行い、冷却させて同時に2個の一次成形品を成形する。その後型開してから中間金型42のみを型開閉方向の軸75(仮想軸)を中心に回転させて、中間金型42のキャビティ形成面59,59に保持された一次成形品を同時に二次成形側に移動させる。すなわち別の実施形態では、中間金型42は移動されずにそのキャビティ59,59が軸75を中心に型開閉方向と直交する方向に一次成形位置S1から二次成形位置S2へ移動される。そして再度型閉および型締して型開閉方向に重なる位置に複数形成された他のキャビティである二次キャビティに対して第2の射出装置66から再び射出を行い、冷却させて同時に2個の多材成形品(完成品)を成形する。その際同時に、二次成形位置S2から一次成形位置S1へ空の状態で移動させた中間金型42のキャビティ形成面59、59は、一次成形位置S1で再び金型48のキャビティ形成面49および金型51のキャビティ形成面52と共に2個の一次キャビティを形成して次の一次成形品の成形を行う。そして再び型開が行われ、二次成形品の取出しと、一次成形品の移動を繰り返す。
【0032】
次に図5ないし図7に示される本発明の更に別の実施形態の多材射出成形機80について説明する。更に別の実施形態の多材射出成形機80は、縦型射出成形機の型締装置81には、第1の盤である上盤82には1個の金型83が取付けられ、前記金型83には一面のキャビティ形成面84が形成されている。また第2の盤である下盤85には1個の金型86が取付けられ、前記金型86には一面のキャビティ形成面87が形成されている。そして第1の盤である上盤82と第2の盤である下盤85の間には中間盤88が図示しない移動機構であるシリンダにより少なくとも型開閉方向と直交する方向の一側と他側の間で往復移動自在に取付けられている。また中間盤88は、上盤82および/または下盤85の型開閉移動とともに型開閉方向にも移動可能となっている。
【0033】
そして中間盤88の上面の一側と他側には、2個の中間金型89,90が上盤82の金型83と対向可能に取付けられている。そして前記中間金型89,90には成形位置に位置した際に金型83とキャビティ形成面84と対向するキャビティ形成面91,92がそれぞれ形成されている。なお前記キャビティ形成面91,92は、それぞれ形状が異なっている。また中間盤88の下面の一側と他側には、2個の中間金型93,94が下盤85の金型86と対向可能に取付けられている。そして前記中間金型93には成形位置に位置した際に金型86とキャビティ形成面87と対向するキャビティ形成面95,96がそれぞれ形成されている。なお前記キャビティ形成面95,96は、それぞれ形状が異なっている。従ってキャビティ形成面84とキャビティ形成面91により形成される一次キャビティC1と、金型83と中間金型90の間に形成される他のキャビティである二次キャビティC2とでは形状が異なっている。また型開閉方向に同じ位置に取付けられる中間金型89,93(または中間金型90,94)のキャビティ形成面91,95同士(またはキャビティ形成面92,96同士)は、同じ形状となっている。なお中間盤88の上面および下面にそれぞれ複数のキャビティ形成面を有する1面の金型を設けてもよい。また中間盤88を配設せずに、移動機構により移動可能な中間金型の両面に複数のキャビティ形成面を形成するようにしてもよい。
【0034】
また型締装置81の一側には前記一次キャビティC1に接続される第1の射出装置97が設けられ、型締装置81の他側には前記二次キャビティC2に接続される他の射出装置である第2の射出装置98が設けられている。それぞれ第1の射出装置97および第2の射出装置98のノズルは中間盤88の側面に当接され、それぞれホットランナを介して前記一次キャビティC1および二次キャビティC2に溶融樹脂が射出される。
【0035】
次に本発明の更に別の実施形態の多材射出成形機80の多材射出成形方法について説明する。まず図5に示されるように、中間盤88を他側に向けて移動させてから型締を行い、一側の中間金型89と金型83、一側の中間金型93と金型86との間にそれぞれ一次キャビティC1,C1を形成する。そして第1の射出装置97から前記一次キャビティC1,C1に対して射出を行い一次成形品P1を成形する。その後に型開を行う際に、一次形成品P1は、金型83のキャビティ形成面84および金型86のキャビティ形成面87に保持されて型開が行われる。この際の型開量はごく僅かでよいのでサイクル短縮が図れる。そして図6に示されるように図示しない移動手段により中間盤88を他側から一側に向けて型開閉方向と直交する方向に移動させる。
【0036】
その後再び型締を行い、他側の中間金型90と一次成形品P1の間(中間金型90と金型83の間)、他側の中間金型94と一次成形品P1の間(中間金型94と金型86の間)にそれぞれ二次キャビティC2,C2を形成する。そして第2の射出装置98から前記二次キャビティC2,C2に対して射出を行い多材成形品P2を成形する。その後に型開を行うが多材成形品P2はどちらのキャビティ形成面84,92(またはキャビティ形成面87,96)に保持されたものでもよい。そして図示しない取出機により多材成形品P2を取出す。そして再度中間盤88を一側に向けて移動させ、再び一次成形を行う。本実施形態ではスタックモールド構造により、同時に複数の多材成形品P2を成形することが可能であり、生産効率がよい。なお図5ないし図7に示される実施形態も金型内の駒の移動によりキャビティ形状を変更する手段を併用したものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に使用される樹脂は、同一樹脂(異色および同色)および異なる樹脂に限定されず、多材により成形される様々な形状の多材成形品全般の成形に用いることが可能である。特にはアクリル製ガラス、車輌用樹脂窓材、テレビの外枠、ヘッドライト用レンズ、およびテールライト用レンズ等の成形に有効に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
10,40,80 多材射出成形機
11,41,81 型締装置
12 下固定盤(第1の盤)
13 上可動盤(第2の盤)
14,15,21,22,48,51,83,86 金型
16,17,23,24,28,49,50,52,53,59,84,87,91,92,95,96 キャビティ形成面
25,88 中間盤
26 回転軸
27,42,89,90,93,94 中間金型
29 回転機構(移動機構)
31,70,97 第1の射出装置
32,66,98 第2の射出装置
C1 一次キャビティ
C2 二次キャビティ
P1 一次成形品
P2 多材成形品
S1 一次成形位置
S2 二次成形位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形機において、
第1の盤に取付けられる金型と、
第2の盤に取付けられる金型と、
前記第1の盤に取付けられる金型と前記第2の盤に取付けられる金型との間に配設される中間金型と、
中間金型またはそのキャビティを少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構と、
前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型および中間金型の間にそれぞれ形成される複数の一次キャビティに射出を行う第1の射出装置と、
前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型と中間金型の間にそれぞれ形成され前記一次キャビティと形状の異なる複数の他のキャビティに射出を行う前記第1の射出装置以外の他の射出装置と、が備えられたことを特徴とする多材射出成形機。
【請求項2】
型開閉方向に設けられた回転軸を中心に回転または反転される中間盤が配設され、
前記中間盤の両面にそれぞれ複数の中間金型とそのキャビティ形成面が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の多材射出成形機。
【請求項3】
型開閉方向に設けられた回転軸を中心に回転または反転される中間金型が配設され、
前記中間金型の両面にそれぞれ複数のキャビティ形成面が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の多材射出成形機。
【請求項4】
前記第1の盤と第2の盤は上下方向に配設され、上下方向に型開閉がなされる縦型射出成形機であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多材射出成形機。
【請求項5】
一次成形した一次成形品に少なくとも二次成形を行う多材射出成形方法において、
第1の盤に取付けられる金型と、
第2の盤に取付けられる金型と、
前記第1の盤に取付けられる金型と前記第2の盤に取付けられる金型との間に配設される中間金型と、
中間金型またはそのキャビティを少なくとも型開閉方向と直交する方向に移動させる移動機構と、
第1の射出装置と、
前記第1の射出装置以外の他の射出装置とが備えられ、
前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型および中間金型の間に形成される複数の一次キャビティに前記第1の射出装置から射出を行い複数の一次成形品を成形した後、
前記第1の盤に取付けられる金型および中間金型の間と第2の盤に取付けられる金型と中間金型の間にそれぞれ形成され前記一次成形品に接続される複数の他のキャビティに前記他の射出装置から射出を行い複数の多材成形品を成形することを特徴とする多材射出成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−56927(P2011−56927A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212581(P2009−212581)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】