説明

多核フェノール性化合物の安定剤としての使用

分子中に20個までのベンゼン核を有し、テトラヒドロベンゾオキサジンI[式中、R1はヒドロカルビル基を示し、かつR2、R3、R4及びR5は互いに無関係に水素、ヒドロキシル基もしくはヒドロカルビル基を表す]と、1もしくは複数の同一もしくは異なるフェノールII[式中、R7、R8、R9及びR10は互いに無関係に水素原子、ヒドロキシル基もしくはヒドロカルビル基を表す]及び/又は1もしくは複数の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンIとの反応によって得られる多核フェノール性化合物[但し、前記置換基の少なくとも1つは13〜3000個の炭素原子を有し、かつその他の置換基はそれらがヒドロカルビル基を表す場合にそれぞれ1〜20個の炭素原子を有する]を、無生物有機材料の光、酸素及び熱の作用に対する安定化のための安定剤として用いる使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の多核フェノール性化合物を、非生物有機材料を光、酸素及び熱の作用に対して安定化するための、特にタービン燃料(ジェット燃料)及び潤滑剤組成物における安定剤として用いる使用に関する。更に、本発明は、前記の多核フェノール性化合物を含有する、タービン燃料組成物及びタービン燃料用の添加剤濃縮物に関する。更に、本発明は、前記の多核フェノール性化合物を含有する潤滑剤組成物に関する。更に、本発明は、前記の多核フェノール性化合物の製造方法に関する。前記の幾つかの多核フェノール性化合物は新規物質なので、本発明はまた前記の新規の物質自体にも関する。
【0002】
無生物有機材料の、例えばプラスチック及び塗料の、また鉱油製品及び燃料の機械的、化学的及び/又は美的な特性は、公知のように、光、酸素及び熱の作用によって悪化する。前記の悪化は、通常は前記材料の黄変、変色、亀裂形成又は脆化として現れる。有機材料の光、酸素及び熱によるかかる妨害に対する改善された保護を達成できる安定剤もしくは安定剤組成物は既に知られている。
【0003】
例えば、WO05/073152号(1)においては、2−アルキルポリイソブテニルフェノール及びそのマンニッヒ付加物が、光、酸素及び熱の作用に対する無生物有機材料の安定化のための酸化防止剤として記載されている。安定化されるべき材料としては、燃料、例えばガソリン、ディーゼル燃料及びタービン燃料並びに潤滑剤組成物も挙げられる。タービン燃料においては、前記の2−アルキルポリイソブテニルフェノール及びそのマンニッヒ付加物は、熱安定性の改善並びにタービンの燃料回路及び燃焼系における沈積の低下をもたらす。
【0004】
また、WO03/106595号(2)は、ヒドロカルビル置換されたコハク酸誘導体及びポリアルケニルチオホスホネートエステルの他に、ヒドロカルビル置換されたフェノール、アルデヒド及びアミンからなるマンニッヒ付加物を、熱安定性の改善並びに沈積の低下のためのタービン燃料(ジェット燃料)用の添加剤として開示されている。
【0005】
ベンゼン核を有するテトラヒドロベンゾオキサジンは、燃料組成物及び潤滑剤組成物のための添加剤として知られている。例えば、WO01/25293号(3)及びWO01/25294号(4)は、ベンゼン核上の置換基として存在するポリイソブテニル基などの長鎖基を有するかかるテトラヒドロベンゾオキサジンを、バルブを清浄し、かつバルブを清浄に保つガソリン清浄剤として開示している。前記のテトラヒドロベンゾオキサジンは、(3)と(4)に挙げられる製造方法によれば、基礎となるフェノールの相応の開鎖マンニッヒ付加物との混合物として得られ、こうしてまたガソリン中で使用される。
【0006】
Jounal of Polymer Science,Part A,Polymer Chemistry,Vol.31,第1941〜1958頁(5)において、D.Jamois、M.Tessier及びE.Marechalは、エンジンオイル中でのスラッジ分散剤として適したポリイソブテン−b−ポリエチレンアミンのための製造方法を記載している。前記の著者により製造される化合物は、とりわけ、二核フェノール性化合物であって両方のフェノール核のそれぞれのオルト位を介して−CH2−N(C1225)−CH2−架橋によって結合されているものを含んでいる。
【0007】
US6323270号B1(6)からは、テトラヒドロベンゾオキサジンのオリゴマーもしくはポリマーであって窒素原子及び/又はベンゼン核上に1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はそれぞれ6〜20個の炭素原子を有するアリール基、アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基を置換基として有してよいものが知られている。かかるテトラヒドロベンゾオキサジン−オリゴマーもしくは−ポリマーの正確な化学構造は、示されていない。前記のテトラヒドロベンゾオキサジン−オリゴマーもしくは−ポリマーは、飛行機用のブレーキライニング、セラミック物品、包装材料、被覆、接着剤及び複合材料の製造のために適している。
【0008】
JP2003−255487号A(7)においては、ポリマー性の多核フェノール性化合物であって、該フェノール核のオルト位を介して、それぞれ−CH2−N(C1〜C25−アルキル)−CH2−架橋又は−CH2−N(フェニル)−CH2−架橋によって結合されているものが開示されている。また、フェノール核自体も、C1〜C25−アルキル基によって置換されていてよい。ポリマー分子中のフェノール核の数は、2〜1002個として示されている。生ずるC1〜C25−アルキル基のための具体的な例としては、メチル、エチル、ブチル、オクチル及びドデシルが挙げられる。オリゴマー性もしくはポリマー性の分布を有する置換基は、挙げられていない。前記のポリマー性の多核フェノール性化合物は、光温図表的に画像生成する材料として推奨される。
【0009】
特に、鉱油製品と燃料の範囲のために、光、酸素及び熱による材料特性の妨害に対する改善された保護作用を有する安定剤もしくは酸化防止剤の要求がある。とりわけ、タービン、例えば飛行機タービンにおける燃焼過程の時とその前に極度の熱負荷に晒されるタービン燃料(ジェット燃料)については、新たな改善された安定剤が求められる。前記安定剤は、タービンにおいて同時にその酸化防止剤及び/又は分散剤としての作用様式によって、燃料回路と燃焼系における沈積をも低減することが望ましい。更に、潤滑剤組成物用の新規の改善された安定剤であって、特に酸化挙動と劣化挙動に対する改善された保護及び/又は改善された剪断安定性を提供するものが求められる。
【0010】
従って、本発明の課題は、無生物有機材料、特に鉱油製品及び燃料、とりわけタービン燃料及び潤滑剤組成物の、光、酸素及び熱の作用に対する改善された安定性を有する安定剤を提供することであった。
【0011】
それに応じて、一般式I
【化1】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化2】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化3】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]を、無生物有機材料の光、酸素及び熱の作用に対する安定化のための安定剤として用いる使用が見出された。
【0012】
本発明により使用されるべき多核フェノール性化合物の構造的特性は、該化合物が、13〜3000個の炭素原子を有する長鎖のヒドロカルビル基を、使用されるテトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIに由来する置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の1つとして有することである。好ましい一実施態様においては、前記の13〜3000個の炭素原子を有する長鎖のヒドロカルビル基は、ポリイソブテニル基である。上述の長鎖のヒドロカルビル基は、更なる一実施態様においては、C16〜C20−アルキル基もしくは−アルケニル基を意味してもよい。特に、前記の長鎖のヒドロカルビル基は、好ましくはポリイソブテニル基であるが、該基は、オキサジン環もしくはベンゼン環上で、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位もしくは、好ましくはパラ位で存在する。すなわち前記の基は、置換基R1もしくはR2もしくはR4もしくはR7もしくはR9もしくはR13もしくはR14として生ずる。前記の長鎖のヒドロカルビル基は、好ましくはポリイソブテニル基であるが、該基は、好ましくは21〜3000個の、又は好ましくは21〜1000個の、特に26〜3000個の、又は特に26〜500個の、とりわけ30〜3000個の、又はとりわけ30〜250個の炭素原子を含む。ポリイソブテニル基の場合に、これらは、183〜42000の、好ましくは500〜15000の、特に700〜7000の、とりわけ900〜3000の、殊に好ましくは900〜1100の数平均分子量Mnを有する。
【0013】
16〜C20−アルキル基もしくは−アルケニル基としては、目的に応じて、16〜20個の炭素原子を有する相応の飽和もしくは不飽和の脂肪アルコールの基が適している。特に、ここでは、n−ヘキサデシル(パルミチル)、n−オクタデシル(ステアリル)、n−エイコシル、オレイル、リノリル及びリノレニルが挙げられ、それらは自然の存在によれば、大抵は技術的混合物として混ざって生ずる。
【0014】
上述の13〜3000個の炭素原子を有する長鎖のヒドロカルビル基は、多核フェノール性化合物において、複数存在してもよく、例えば2個もしくは2個存在してもよい。好ましい一実施態様においては、それぞれ183〜42000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基を置換基R1及び/又はR2及び/又はR4及び/又はR7及び/又はR9及び/又はR13及び/又はR14として分子中に1もしくは2個有する。
【0015】
1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基であって、13〜3000個の炭素原子を有する置換基あるいは183〜42000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基を表さないものは、互いに無関係に、水素、ヒドロキシル基を示し、又は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、大抵は、1〜20個の、好ましくは1〜12個の、とりわけ1〜8個の炭素原子を有する短鎖のヒドロカルビル基、殊に好ましくは直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基を示す。後者の基のための典型的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルである。この場合に、メチル基及びt−ブチル基が殊に好ましい。
【0016】
好ましくは本発明によれば使用される多核フェノール性化合物であるテトラヒドロベンゾオキサジンIは、使用されるテトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIに由来する置換基R2及び/又はR4及び/又はR7及び/又はR9が、短鎖のヒドロカルビル基を表す場合には、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基、特にメチル基及び/又はt−ブチル基を指す化合物でもある。そのような置換型は、当然のように、全体で1もしくは2個のテトラヒドロオキサジン環系を有するテトラヒドロベンゾオキサジンIの場合のみに該当する。
【0017】
式ZもしくはZ′の基において、置換基R11及びR12は、好ましくは水素及び/又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基、特にメチル基を示す。基ZもしくはZ′を有し、R11=R12=メチルである化合物I及びIIは、ビスフェノールA[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]から誘導される。製造によっては、基Zを有する化合物Iと相応の基Z′を有する化合物は混合物としても存在しうる。
【0018】
置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14についての1〜3000個もしくは13〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基とは、ここでは、各々の構造の純粋な炭化水素基を表すべきであり、それらは、定義によれば、なおもO及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてもよい。NR6基によって中断された典型的なヒドロカルビル基は、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミンから誘導される。特に、ヒドロカルビル基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基もしくはアリールアルキル基である。
【0019】
ヒドロカルビル基が基NR6により中断されている場合に、端部で基NR6が形式上C−H結合中に挿入されている基、従って例えばNH2末端基を有する置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14をも意味する。かかるヒドロカルビル基は、例えばポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどから誘導され、その際、末端位にある窒素原子の1つはオキサジン環中のN原子を表す。
【0020】
表現"アルキル"は、直鎖状の及び分枝鎖状のアルキル基を含む。アルキル基のための例は、既に上述したメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基の他にも、特にn−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル(ミリスチル)、n−ヘキサデシル(パルミチル)、n−オクタデシル(ステアリル)及びn−エイコシルである。
【0021】
アルケニル基のための例は、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、オレイル、リノリル及びリノレニルである。
【0022】
シクロアルキル基のための例は、C5〜C7−シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルであり、それらは更にアルキル基、例えばメチル基によって置換されていてもよい。
【0023】
表現"アリール"は、単核、二核、三核及びより多核の芳香族の炭化水素基を含む。前記のアリール基は、例えば上述したアルキル基及び/又はアルケニル基により置換されてアルキルアリール基もしくはアルケニルアリール基となっている場合に、なおも1、2、3、4もしくは5個の、好ましくは1、2もしくは3個の置換基を有してよい。典型的な例は、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル及びスチリルである。アリールアルキル基のための典型的な例は、ベンジルである。
【0024】
13〜3000個の炭素原子を有する長鎖のヒドロカルビル基がポリイソブテニル基である場合に、前記基は、原則的にそれぞれ一般に知られた市販されているポリイソブテンを基礎とすることができ、より好適には、該ポリイソブテンは、テトラヒドロベンゾオキサジンIの合成において導入される。かかるポリイソブテンは、少なくとも183の数平均分子量Mnを有する。183〜42000の、特に好ましくは500〜15000の、とりわけ700〜7000の、特に900〜3000の、殊に好ましくは900〜1100の範囲の数平均分子量Mnを有するポリイソブテンが好ましい。概念"ポリイソブテン"には、本発明の範囲内で、オリゴマーのイソブテン、例えばダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー及びヘプタマーのイソブテンも含まれる。
【0025】
好ましくは、本発明により使用される多核フェノール性化合物中に組み込まれるポリイソブテニル基は、いわゆる"反応性"ポリイソブテンから誘導される。反応性ポリイソブテンは、慣用のポリイソブテンとは、末端配置された二重結合、すなわちビニリデン二重結合[−CH−C(CH3)=CH2](α−オレフィン)又はビニル二重結合[−CH=C(CH32](β−オレフィン)の含有率の点で異なる。例えば、反応性ポリイソブテンは、ポリイソブテン巨大分子の全数に対して、少なくとも50モル%の末端配置された二重結合を有する。特に、ポリイソブテン巨大分子の全数に対して、少なくとも60モル%、特に少なくとも80モル%の末端配置された二重結合を有するポリイソブテンが好ましい。更に、実質的にホモポリマーのポリイソブテニル基は、一様なポリマー骨格を有する。それは、本発明の範囲においては、少なくとも85質量%までが、好ましくは少なくとも90質量%までが、特に好ましくは少なくとも95質量%までが、特に少なくとも99質量%までが繰返単位[−CH2C(CH32−]のイソブテン単位から構成されている、かかるポリイソブテン系を表す。
【0026】
本発明により使用される多核フェノール性化合物の基礎となりうるポリイソブテンの更なる好ましい特徴は、その少なくとも15質量%までが、特に少なくとも50質量%までが、とりわけ少なくとも80質量%までが、t−ブチル基[−CH2C(CH33]で末端化されていることである。
【0027】
更に、本発明により使用される多核フェノール性化合物のための出発材料として使用されるテトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIのための基礎として用いられるポリイソブテンは、好ましくは、多分散性係数(PDI)1.05〜10、好ましくは1.05〜3.0、特に1.05〜2.0を有する。多分散性とは、質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとからの商であると解釈される(PDI=Mw/Mn)。好ましい一実施態様においては、多核フェノール性化合物中のポリイソブテニル基のための平均された多分散性係数PDIは、基礎となるテトラヒドロベンゾオキサジンI及び/又はフェノールII中のポリイソブテニル基のための平均された多分散性係数PDIの、高くても5倍、好ましくは高くても3倍、特に高くても2倍、とりわけ高くても1.5倍である。
【0028】
テトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIのための基礎として好ましくは用いられるポリイソブテンとは、本発明の範囲においては、好ましくは少なくとも60質量%のイソブテン、特に好ましくは少なくとも80質量%のイソブテン、とりわけ少なくとも90質量%のイソブテン、特に少なくとも95質量%のイソブテンを重合導入されて含有する、カチオン重合によって得られる全ての重合体をも表す。その他に、このポリイソブテンは更にブテン異性体、例えば1−又は2−ブテン、並びに前記ブテンとは異なるが、イソブテンとカチオン性重合条件下で共重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを重合により組み込んで含有することができる。
【0029】
テトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIのための基礎として用いることができるポリイソブテンの製造のためのイソブテン使用物質として、それに相応して、イソブテン自体並びにイソブテン含有のC4炭化水素物質フロー、例えばC4ラフィネート、イソブテン脱水素からのC4留分、スチームクラッカーからのC4カット、FCCクラッカー(FCC:Fluid Catalyzed Cracking)が、その中に含まれる1,3−ブタジエンが十分に除去されている限り適している。特に適当なC4炭化水素物質フローは、一般にブタジエンを500ppmより少なく、有利に200ppmより少なく含有する。使用材料としてC4留分を使用する場合に、イソブテンとは異なる炭化水素が不活性溶剤の役割を担う。
【0030】
イソブテンと共重合可能なモノマーとして、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン及びα−メチルスチレン、C1〜C4−アルキルスチレン、例えば2−メチルスチレン、3−メチルスチレン及び4−メチルスチレン、並びに4−t−ブチルスチレン、5〜10個のC原子を有するイソオレフィン、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1及び2−プロピルヘプテン−1がこれに該当する。
【0031】
テトラヒドロベンゾオキサジンIもしくはフェノールIIのための基礎として用いることができる典型的なポリイソブテンは、例えばBASF株式会社のGlissopal(登録商標)銘柄、例えばGlissopal550、Glissopal1000及びGlissopal2300並びにBASF株式会社のOppanol(登録商標)銘柄、例えばOppanol B10、B12及びB15である。
【0032】
ポリイソブテニル基の他に、長鎖のヒドロカルビル基としては、C2〜C12−オレフィンのオリゴマーもしくはポリマーから誘導される、平均して13〜3000個の炭素原子を有するものも生じうる。ポリマー性の分布を有するそのような主に多分散性のヒドロカルビル基は、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、メチルスチレン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1もしくはドデセン−1から誘導される基である。これらは、ホモポリマー基もしくはコポリマー基であってよい。その数平均分子量Mnは、少なくとも183であり、その多分散性係数PDIは、通常は、1.05〜10である。183〜約500のMnを有する低分子の基の場合に、それらは、また単分散性で存在してもよい。
【0033】
好ましい一実施態様においては、本発明により使用される多核フェノール性化合物は、411〜25000の平均分子量Mnを有する。ここで例えば、411の分子量Mnは、本発明の範囲においては、多核フェノール性化合物の最小の代表物、すなわちビス(オルト−もしくはパラ−ヒドロキシベンジル)トリデシルアミンを表す。Mnのための特に好ましい範囲は、523〜25000もしくは523〜17000、特に593〜25000もしくは593〜10000、とりわけ649〜25000もしくは649〜5000である。
【0034】
本発明の範囲において典型的な多核フェノール性化合物のための例は以下のものであり、その際、"PIB"は、高反応性ポリイソブテン(Mn1000)から誘導されたポリイソブテニル基を指す:
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
前記の多核フェノール性化合物は、本発明によれば、無生物有機材料の光、酸素及び熱の作用に対する安定化のための安定剤として使用される。それは、特に従来の範囲における酸化防止剤としての作用を表すべきである。そのために、前記化合物は、安定化されるべき材料中にその製造の間にもしくはその後に組み込まれ、できる限り均質に分配される。安定化されるべき有機材料中での前記化合物の濃度は、該有機材料に対して、一般に、0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜5質量%、とりわけ0.01〜2質量%、特に0.05〜1質量%である。
【0039】
無生物有機材料とは、例えば化粧用調製物、例えばクリーム及びローション、医薬品製剤、例えば錠剤及び座薬、写真記録材料、特に写真乳剤、塗工剤及びプラスチックを表すべきである。それには、更に、そして特に、鉱油製品及び燃料、例えばディーゼル燃料、ガソリン、タービン燃料、エンジンオイル、潤滑油、トランスミッションオイル及び潤滑グリースが該当する。
【0040】
前記の多核フェノール性化合物によって安定化できるプラスチックとしては、例えば以下のものが挙げられる:
モノオレフィンもしくはジオレフィンのポリマー、例えば低密度もしくは高密度のポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖状のポリブテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン並びにモノオレフィンもしくはジオレフィンの共重合体又は上述のポリマーの混合物;
ポリスチレン並びにスチレンもしくはα−メチルスチレンとジエン及び/又はアクリル誘導体とのコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン、スチレン−アクリルニトリル(SAN)、スチレン−エチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−エチルアクリレート、スチレン−アクリルニトリル−メタクリレート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)もしくはメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS);ハロゲン含有ポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン並びにそれらのコポリマー;
α,β−不飽和酸及びそれらの誘導体から誘導されるポリマー、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリアクリルニトリル;
不飽和アルコール及びアミンもしくはそれらのアクリル誘導体もしくはアセタールから誘導されるポリマー、例えばポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル;
ポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリ尿素、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
【0041】
前記の多核フェノール性化合物によって安定化することができる塗工剤には、とりわけ、塗料、例えばアルキド樹脂塗料、分散液塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン塗料、アクリル樹脂塗料及び硝酸セルロース塗料もしくはワニス、例えば木材保護ワニスが該当する。
【0042】
前記の多核フェノール性化合物は、特に好ましくは、タービン燃料(ジェット燃料)における安定剤として適している。それは、また従来の範囲における酸化防止剤としての作用を表すべきである。特に、該化合物は、その安定剤としての作用様式を超えて、タービン燃料の熱安定性の改善のために用いられる。更に、該化合物は、特にまた、その安定剤としての作用様式を超えて、すなわち分散剤としての特性において、タービンの燃料系及び/又は燃焼系における沈着を抑制する。タービン燃料は、とりわけ飛行機タービンの駆動のために使用される。
【0043】
本発明の更なる対象は、タービン燃料(ジェット燃料)と、少なくとも1つの前記の多核フェノール性化合物とを含有するタービン燃料組成物である。
【0044】
本発明によるタービン燃料組成物は、主要量の液状のタービン燃料を含有し、その燃料は、例えば民間もしくは軍事用の航空において慣用のタービン燃料である。それには、例えば名称Jet Fuel A、Jet Fuel A−1、Jet Fuel B、Jet Fuel JP−4、JP−5、JP−7、JP−8及びJP−8+100の燃料が該当する。Jet A及びJet A−1は、ケロシンを基礎とする市販のタービン燃料仕様である。付随する規格は、ASTM D 1655並びにDEF STAN 91−91である。Jet Bは、ナフサ留分及びケロシン留分を基礎とする更に分解された燃料である。JP−4は、Jet Bに相当する。JP−5、JP−7、JP−8及びJP−8+100は、例えば海軍と空軍によって使用されるような軍事用のタービン燃料である。一部、前記の規格は、既に他の添加剤、例えば腐食防止剤、氷結防止剤、静電放散剤などを含有する配合物を指す。
【0045】
前記の多核フェノール性化合物は、タービン燃料もしくはタービン燃料組成物に、単独で、混合物として、場合により他の自体公知の添加剤と組み合わせて添加することができる。
【0046】
好適な添加剤であって、本発明によるタービン燃料組成物中に含まれてよいものは、通常は、清浄剤、腐食防止剤、他の酸化防止剤、例えば立体障害t−ブチルフェノール、N−ブチルフェニレンジアミンもしくはN,N′−ジフェニルアミン及びその誘導体、金属不活性化剤、例えばN,N′−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、可溶化剤、耐電防止剤、例えばStadis 450、殺生剤、氷結防止剤、例えばジエチレングリコールメチルエーテル並びに上述の添加剤の混合物を含む。
【0047】
本発明の範囲において好ましい添加剤は、以下に挙げられる特定の化合物クラス(A)、(B)及び(C)である:
好ましい添加剤(A)は、無水コハク酸から誘導される、一般に15〜700個の、とりわけ30〜200個の炭素原子を有する長鎖の炭化水素基を有する化合物である。前記化合物は、好ましくはヒドロキシ基、アミノ基、アミド基及び/又はイミド基から選択される更なる官能基を有してよい。好ましい添加剤は、ポリアルケニル無水コハク酸の相応の誘導体であって、例えばポリアルケンと無水マレイン酸との熱的経路における又は塩素化炭化水素を介した反応によって得られる誘導体である。長鎖の炭化水素基の数平均分子量は、好ましくは、約200〜10000、特に好ましくは400〜5000、特に600〜3000、特に650〜2000の範囲にある。好ましくは、前記の長鎖の炭化水素基は、慣用の、特に上述の反応性のポリイソブテンから誘導される。添加剤(A)として特に関心が持たれるのは、ポリアルケニル無水コハク酸とアンモニア、モノアミン、ポリアミン、モノアルコール及びポリオールとの誘導体である。誘導体化のために好ましいポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミンなどを含む。好適なアルコールは、一価アルコール、例えばエタノール、アリルアルコール、ドデカノール及びベンジルアルコール、多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリトリット、ペンタエリトリット、マンニトール及びソルビトールを含む。
【0048】
添加剤として適した無水コハク酸誘導体(A)は、例えばUS3522179号、US4234435号、US4849572号、US4904401号、US5569644号及びUS6165235号に記載されており、本願ではそれらの参照をもって全範囲が開示されたものとする。
【0049】
好ましい添加剤(B)は、ポリアルケニルチオホスホネートエステルである。ポリアルケニル基、つまり前記のエステルは、好ましくは、約300〜5000、特に好ましくは400〜2000、特に500〜1500の範囲の数平均分子量を有する。該ポリアルケニル基は、好ましくは、成分(A)において前記で長鎖の炭化水素基として記載されたポリオレフィンから誘導される。それは、特に、慣用のもしくは反応性のポリイソブテンから誘導されるポリアルケニル基である。好適なポリアルケニルチオホスホネートエステルを製造するための、ポリオレフィンとチオホスホリル化剤との反応による好適な方法は、例えばUS5725611号に記載されており、それは参照をもって開示されたものとする。
【0050】
好ましい添加剤(C)は、マンニッヒ付加物である。かかる付加物は、原則的に、芳香族のヒドロキシル化合物、特にフェノール及びフェノール誘導体と、アルデヒド及びモノ−もしくはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる。好ましくは、ポリイソブテン置換されたフェノールと、ホルムアルデヒド及びモノ−もしくはポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどとの反応生成物である。好適なマンニッヒ付加物及びその製造方法は、例えばUS5876468号、EP−A831141号、EP−A1233990号及びEP−A1226188号に記載されており、その参照をもって全範囲が開示されたものとする。
【0051】
本発明によるタービン燃料組成物は、前記の多核フェノール性化合物を、タービン燃料組成物の全量に対して、通常は、0.0001〜1質量%、有利には0.001〜0.5質量%、特に0.01〜0.2質量%、とりわけ0.01〜0.1質量%の量で含有する。
【0052】
添加剤(A)ないし(C)並びに場合により他の上述の添加剤は、通常は、それぞれ、タービン燃料組成物の全質量に対して、0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.6質量%、特に0.0015〜0.4質量%の量で使用することができる。
【0053】
本発明の更なる対象は、少なくとも1つの前記の多核フェノール性化合物と、場合により少なくとも1つの希釈剤と、場合により少なくとも1つの更なる前記のものから選択されることが好ましい添加剤を含有するタービン燃料(ジェット燃料)用の添加剤濃縮物である。好ましい一実施態様においては、本発明による添加剤濃縮物は、本発明によるタービン燃料組成物と同様に、(A)、(B)及び(C)の群からの1もしくは複数の添加剤、特にその混合物、例えば(A)+(B)、(A)+(C)、(B)+(C)及び(A)+(B)+(C)を含有する。
【0054】
好適な希釈剤は、例えば、石油精製の場合に生じる留分、例えばケロシン、ナフサもしくは鉱物油である。更に、芳香族の及び脂肪族の炭化水素、例えば重ソルベントナフサ、Solvesso(登録商標)もしくはShellsol(登録商標)並びに前記の溶剤及び希釈剤の混合物が適している。
【0055】
前記の多核フェノール性化合物は、本発明の添加剤濃縮物中に、濃縮物の全質量に対して、好ましくは0.1〜100質量%、特に好ましくは1〜80質量%及び特に10〜70質量%の量で存在する。
【0056】
前記の多核フェノール性化合物は、更に、好ましくは、ガソリン及び中間留分燃料、本願では特にディーゼル燃料及び燃料油における安定剤として適している。それは、また従来の範囲における酸化防止剤としての作用を表すべきである。特に、該化合物は、その安定剤としての作用様式を超えて、ガソリン及び中間留分燃料の熱安定性の改善のために用いられる。更に、該化合物は、特にまた、その安定剤としての作用様式を超えて、すなわち分散剤としての特性において、ガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジンの燃料系及び/又は燃焼系における沈着を抑制する。
【0057】
ガソリンとしては、全ての慣用のガソリン組成物が該当する。典型的な代表物として、本願では、EN228による市場に出回るEurosuper基礎燃料が挙げられる。更に、WO00/47698号による明細書のガソリン組成物も、本発明のための可能な使用分野である。
【0058】
中間留分燃料としては、全ての慣用のディーゼル燃料組成物及び燃料油組成物が該当する。ディーゼル燃料は、通常は、一般に100〜400℃の沸点範囲を有する石油ラフィネートである。これらは、たいてい、360℃まで又はまたこれを上回る95%点を有する留出物である。しかしまた、これらは、例えば最大345℃の95%点及び最大0.005質量%の硫黄含量又は例えば285℃の95%点及び最大0.001質量%の硫黄含量により特徴付けられている、いわゆる"超低硫黄ディーゼル(Ultra Low Sulphur Diesel)"又は"シティーディーゼル(City Diesel)"であってもよい。精製(Raffination)により入手可能な、主成分が長鎖パラフィンであるディーゼル燃料に加えて、石炭ガス化又はガス液化["gas to liquid" (GTL)燃料]により得られるそのような燃料が適している。前記のディーゼル燃料と、再生燃料、例えばバイオディーゼル又はバイオエタノールとの混合物も適している。特に関心が持たれるのは、目下、低い硫黄含量を有する、すなわち硫黄0.05質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に0.005質量%未満及び殊に0.001質量%未満の硫黄含量を有するディーゼル燃料である。ディーゼル燃料は、また、水を、例えば20質量%までの量で、例えばディーゼル−水−マイクロエマルジョンの形で又はいわゆる"ホワイトディーゼル"として含有してもよい。
【0059】
燃料油は、例えば低硫黄もしくは高硫黄の石油ラフィネート又は石炭もしくは褐炭の蒸留物であり、それらは通常は、150〜400℃の沸点範囲を有する。燃料油は、DIN51603−1による標準的燃料油であってよく、それは硫黄含有率0.005〜0.2質量%を有し、又は硫黄含有率0〜0.005質量%を有する低硫黄の燃料油である。燃料油のための例としては、特に家庭用の油だき装置のための燃料油もしくは燃料油ELが挙げられる。
【0060】
前記の多核フェノール性化合物は、それぞれの基礎燃料に、特にガソリンもしくはディーゼル燃料に、単独でもしくは燃料添加剤パッケージの形で、例えばいわゆるディーゼル性能パッケージの形で添加することができる。かかるパッケージは、燃料添加剤濃縮物であって、一般に溶剤の他に、一連の共添加剤としての他の成分、例えばキャリヤーオイル、冷間流動改善剤、腐食防止剤、解乳化剤、曇り防止剤(Dehazer)、抑泡剤、他のセタン価向上剤、他の燃焼改善剤、酸化防止剤もしくは安定剤、静電防止剤、メタロセン、金属不活性化剤、可溶化剤、マーカー及び/又は着色剤を含有する。
【0061】
好ましい一実施態様においては、添加されたガソリンもしくはディーゼル燃料は、前記の多核フェノール性化合物の他に、更なる燃料添加剤として、特に少なくとも1つの清浄剤(以下に、成分(D)と呼称する)を含む。
【0062】
清浄剤もしくは清浄添加剤(D)としては、燃料用の通常の沈着防止剤を指す。好ましくは、清浄剤は、数平均分子量(Mn)85〜20000、特に300〜5000、とりわけ500〜2500を有する少なくとも1つの疎水性の炭化水素基と、以下の(Da)〜(Di):
(Da)6個までの窒素原子を有するモノアミノ基もしくはポリアミノ基、その際、少なくとも1つの窒素原子は塩基性特性を有する;
(Db)ニトロ基、場合によりヒドロキシル基と組み合わせて;
(Dc)ヒドロキシル基とモノアミノ基もしくはポリアミノ基との組み合わせ、その際、少なくとも1つの窒素原子は塩基性特性を有する;
(Dd)カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(De)スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(Df)ヒドロキシル基、モノアミノ基もしくはポリアミノ基(少なくとも1つの窒素原子は塩基性特性を有する)もしくはカルバメート基によって末端化されているポリオキシ−C2〜C4−アルキレン基;
(Dg)カルボン酸エステル基;
(Dh)無水コハク酸から誘導される、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する基;及び/又は
(Di)置換されたフェノールとアルデヒド及びモノアミンもしくはポリアミンとのマンニッヒ反応によって生ずる基
から選択される少なくとも1つの極性基を有する両親媒性の物質である。
【0063】
前記の清浄添加剤中の、燃料油組成物中に十分な可溶性を提供する疎水性の炭化水素基は、数平均分子量(Mn)85〜20000、特に300〜5000、とりわけ500〜2500を有する。典型的な疎水性の炭化水素基としては、特に極性の基(Da)、(De)、(Dh)及び(Di)との組み合わせにおいて、それぞれMn=300〜5000、特に500〜2500、とりわけ700〜2300を有する長鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、特にポリプロペニル基、ポリブテニル基及びポリイソブテニル基が該当する。
【0064】
清浄添加剤の上記の群のための例として、以下のものが挙げられる:
モノアミノ基又はポリアミノ基(Da)を含有する添加剤は、有利には、ポリプロペン又は慣用の(即ち、主に真ん中にある二重結合を有する)ポリブテン又はポリイソブテンベースの、Mn=300〜5000を有するポリアルケンモノアミン又はポリアルケンポリアミンである。前記添加剤の製造の際に主に真ん中にある二重結合を有するポリブテン又はポリイソブテン(大抵は、β−位及びγ−位にある)から出発する場合には、塩素化、及び引き続くアミン化による、又はカルボニル化合物又はカルボキシル化合物への空気又はオゾンを用いたこの二重結合の酸化、及び引き続くアミン化による、還元性(水素添加)条件下での製造経路が適する。アミン化のためにはこの際、アミン、例えばアンモニア、モノアミン又はポリアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミンが使用される。相応する、ポリプロペンを基礎とする添加剤は、特にWO−A 94/24231号に記載されている。
【0065】
他の有利なモノアミノ基(Da)を含有する添加剤は、例えば特にWO−A97/03946号に記載されているように、平均重合度P=5〜100を有するポリイソブテンと窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物の水素化生成物である。
【0066】
更なる有利なモノアミノ基(Da)を含有する添加剤は、特にDE−A19620262号に記載されているように、ポリイソブテンエポキシドとアミンとの反応及び引き続くこのアミノアルコールの脱水及び還元により得られる化合物である。
【0067】
ニトロ基(Db)(場合によりヒドロキシル基と組み合わされている)を含有する添加剤は、有利には、平均重合度P=5〜100又は10〜100のポリイソブテンと、窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物であり、これは特にWO−A−96/03367号及びWO−A−96/03479号に記載されている。これらの反応生成物は、通例、純粋なニトロポリイソブテン(例えばα,β−ジニトロポリイソブテン)及び混合されたヒドロキシニトロポリイソブテン(例えばα−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブテン)からなる混合物である。
【0068】
モノアミノ基又はポリアミノ基(Dc)と組み合わせてヒドロキシル基を含有する添加剤は、特にEP−A476485号に記載されているように、特にMn=300〜5000を有する、有利に主に末端に二重結合を有するポリイソブテンから得られたポリイソブテンエポキシドと、アンモニア、モノアミン又はポリアミンとの反応生成物である。
【0069】
カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(Dd)を含有する添加剤は、有利に、500〜20000の総分子量を有する、C2〜C40−オレフィンとマレイン酸無水物とのコポリマーであり、そのカルボキシル基は完全に又は部分的にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩にされ、残りのカルボキシル基はアルコール又はアミンと反応させられている。このような添加剤は、特にEP−A307815号から公知である。この種の添加剤は、とりわけ弁座摩耗の防止に用いられ、例えばWO−A−87/01126号に記載されているように、有利に、通常の燃料清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0070】
スルホン酸基又はこのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩(De)を含有する添加剤は、有利にはスルホコハク酸アルキルエステルのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、これは特にEP−A−639632に記載されている。このような添加剤は主として弁座の摩耗を防止するために役立ち、かつ有利に通常の燃料清浄剤、たとえばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0071】
ポリオキシ−C2〜C4−アルキレン基(Df)を含有する添加剤は、有利にはポリエーテル又はポリエーテルアミンであり、これらは、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−又はジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基当たり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により、及びポリエーテルアミンの場合には、引き続くアンモニア、モノアミン又はポリアミンを用いた還元アミノ化により得られる。この種の生成物は、特にEP−A310875号、EP−A356725号、EP−A700985号及びUS−A4877416号に記載されている。ポリエーテルの場合には、このような生成物はキャリアオイル特性も満足する。これについての典型的な例は、トリデカノールブトキシラート又はイソトリデカノールブトキシラート、イソノニルフェノールブトキシラート並びにポリイソブテノールブトキシラート及び−プロポキシラート並びにアンモニアとの相応する反応生成物である。
【0072】
カルボン酸エステル基(Dg)を含有する添加剤は、有利に、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、長鎖のアルカノール又はポリオールとからなるエステル、特にDE−A3838918号に記載されたような特に100℃で2mm2の最低粘度を有するようなものである。モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸として、脂肪族又は芳香族の酸を使用することができ、エステルアルコールもしくはエステルポリオールとして特に、例えば6〜24個のC原子を有する長鎖の代表物が適している。このエステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール及びイソトリデカノールのアジパート、フタラート、イソフタラート、テレフタラート及びトリメリタート(Trimellitate)である。この種の生成物は、キャリアオイル特性も満たす。
【0073】
ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基(Dh)を有するコハク酸無水物から誘導された基を含有する添加剤は、有利に、アルキルもしくはアルケニル置換された無水コハク酸の相応する誘導体であり、特にポリイソブテニルコハク酸無水物の相応する誘導体であり、前記誘導体は、Mn=300〜5000を有する慣用の又は高反応性のポリイソブテンと無水マレイン酸との反応により熱的経路で又は塩素化されたポリイソブテンを介して得られる。特に重要なのは、この場合に、脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミンを有する誘導体である。ヒドロキシ基及び/又はアミノ基および/またはアミド基及び/又はイミド基を有する基は、例えばカルボン酸基、モノアミンの酸アミド、ジアミンもしくはポリアミンの酸アミドであってアミド官能の他になおも遊離アミン基を有するもの、酸官能及びアミド官能を有するコハク酸誘導体、モノアミンとのカルボン酸イミド、ジアミンもしくはポリアミンとのカルボン酸イミドであってイミド官能の他になおも遊離アミン基を有するもの又はジアミンもしくはポリアミンと2つのコハク酸誘導体との反応によって形成されるジイミドである。この種の燃料添加剤は、特にUS−A4849572号に記載されている。
【0074】
群(Dh)からの清浄添加剤は、好ましくは、アルキルもしくはアルケニル置換された無水コハク酸、特にポリイソブテニル無水コハク酸と、アミン及び/又はアルコールとの反応生成物である。従ってこの場合に、アルキル−、アルケニル−もしくはポリイソブテニル−無水コハク酸から誘導された、アミノ基および/またはアミド基及び/又はイミド基及び/又はヒドロキシル基を有する誘導体である。前記の反応生成物が、置換された無水コハク酸を使用した場合だけでなく、置換されたコハク酸もしくは好適な酸誘導体、例えばコハク酸ハロゲン化物もしくは−エステルを使用した場合にも得られることは自明のことである。
【0075】
好ましい一実施態様においては、添加された燃料は、ポリイソブテニル置換されたコハク酸イミドを基礎とする少なくとも1つの清浄剤を含む。特に関心が持たれるのは、脂肪族ポリアミンを有するイミドである。特に好ましいポリアミンは、この場合に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン及び、とりわけテトラエチレンペンタミンである。ポリイソブテニル基は、好ましくは500〜5000の、特に好ましくは500〜2000の、特に約1000の数平均分子量Mnを有する。
【0076】
置換されたフェノールとアルデヒド及びモノアミンもしくはポリアミンとのマンニッヒ反応により製造された基(Di)を含有する添加剤は、有利に、ポリイソブテン置換されたフェノールとホルムアルデヒド及びモノアミンもしくはポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン又はジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換されたフェノールは、Mn=300〜5000を有する通例の、または高反応性のポリイソブテンに由来するものであってよい。このような"ポリイソブテン−マンニッヒ塩基"は、特にEP831141A1号に記載されている。
【0077】
好ましくは、上述の清浄添加剤(D)は、前記の多核フェノール性化合物と一緒に、少なくとも1つのキャリヤーオイルと組み合わせて使用される。
【0078】
適した鉱物性キャリヤーオイルは、石油処理の際に生じる分画、例えばブライトストック又はベースオイルであり、これは例えばクラスSN500〜2000からの粘度を有する;しかしながらまた、芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素及びアルコキシアルカノールである。同様に使用可能であるのは、"水素化分解オイル"として公知の、かつ鉱油の精製の際に生じる分画(沸点範囲約360〜500℃を有する真空蒸留物留分、高圧下で接触水素化されかつ異性体化され、並びに脱パラフィン化された天然の鉱油から入手可能)である。同様に適するのは、上記した鉱物性キャリヤーオイルの混合物である。
【0079】
好適な合成のキャリヤーオイルのための例は、以下から選択される:ポリオレフィン(ポリアルファオレフィン又はポリ内部オレフィン(Polyinternalolefin))、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシラート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール出発したポリエーテル、アルキルフェノール出発したポリエーテルアミン、及び長鎖のアルカノールのカルボン酸エステル。
【0080】
適したポリオレフィンのための例は、Mn=400〜1800を有するオレフィン重合体、特にポリブテン又はポリイソブテンベースのオレフィン重合体である(水素化されているか又は水素化されていない)。
【0081】
適したポリエーテル又はポリエーテルアミンのための例は、有利にはポリオキシ−C2〜C4−アルキレン基を含有する化合物であり、これは、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−又はジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基当たり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により、及びポリエーテルアミンの場合には、引き続くアンモニア、モノアミン又はポリアミンを用いた還元アミノ化により得られる。この種の生成物は、特にEP−A310875号、EP−A356725号、EP−A700985号及びUS−A4877416号に記載されている。例えば、ポリエーテルアミンとして、ポリ−C2〜C6−アルキレンオキシドアミン又はこの官能性誘導体が使用されてよい。これについての典型的な例は、トリデカノールブトキシラート又はイソトリデカノールブトキシラート、イソノニルフェノールブトキシラート並びにポリイソブテノールブトキシラート及び−プロポキシラート並びにアンモニアとの相応する反応生成物である。
【0082】
長鎖のアルカノールのカルボン酸エステルのための例は、特に、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と長鎖のアルカノール又はポリオールとのエステルであり、例えばこれはDE−A−3838918号に記載されている。モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸として、脂肪族又は芳香族の酸を使用することができ、エステルアルコールもしくはエステルポリオールとして特に、例えば6〜24個のC原子を有する長鎖の代表物が適している。前記エステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、及びイソトリデカノールのアジパート、フタラート、イソフタラート、テレフタラート、及びトリメリタート、例えばジ−(n−トリデシル又はイソトリデシル)−フタラートである。
【0083】
更なる適したキャリヤーオイル系は、例えばDE−A−3826608号、DE−A−4142241号、DE−A−4309074号、EP−A−0452328号及びEP−A−0548617号に記載されている。
【0084】
特に適した合成キャリヤーオイルのための例は、約5〜35の、例えば約5〜30のC3〜C6−アルキレンオキシド単位を有するアルコール出発したポリエーテル又はこれらの混合物であり、前記アルキレンオキシド単位は、例えばプロピレンオキシド単位、n−ブチレンオキシド単位、及びi−ブチレンオキシド単位から選択される。適した出発アルコールのための例ではあるがこれを制限するものでない例は、長鎖のアルコール又は長鎖のアルキルで置換したフェノールであり、その際この長鎖のアルキル残基は、特に、直鎖又は分枝したC6〜C18−アルキル残基である。有利な例として、トリデカノール及びノニルフェノールが挙げられる。
【0085】
更なる適した合成キャリヤーオイルは、アルコキシ化されたアルキルフェノールであり、例えばこれはDE−A−10102913号に記載されている。
【0086】
好ましいキャリヤーオイルは、合成キャリヤーオイルであり、その際、ポリエーテルが特に好ましい。
【0087】
添加された燃料に、清浄添加剤(D)もしくはかかる種々の清浄添加剤の混合物が、好ましくは10〜2000質量ppm、特に好ましくは20〜1000質量ppm、より好ましくは50〜500質量ppm、特に50〜200質量ppm、例えば70〜150質量ppmの全量で添加される。
【0088】
キャリヤーオイルを併用する場合に、これは、本発明による添加される燃料に、好ましくは1〜1000質量ppm、特に10〜500質量ppm、特に20〜100質量ppmの量で添加される。
【0089】
他の共添加剤として適した冷間流動改善剤は、例えばエチレンと、少なくとも1つの他の不飽和モノマーとのコポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニル−コポリマーである。
【0090】
他の共添加剤として適した腐食防止剤は、例えばコハク酸エステル、とりわけポリオールとのコハク酸エステル、脂肪酸誘導体、例えばオレイン酸エステル、オリゴマー化された脂肪酸及び置換エタノールアミンである。
【0091】
他の共添加剤として適した解乳化剤は、例えば、アルキル置換されたフェノール−及びナフタリンスルホネートのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩並びに脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、更にアルコールアルコキシレート、例えばアルコールエトキシレート、フェノールアルコキシレート、例えばt−ブチルフェノールエトキシレート又はt−ペンチルフェノールエトキシレート、脂肪酸、アルキルフェノール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの縮合生成物、例えばエチレンオキシド−プロピレンオキシド−ブロックコポリマー、ポリエチレンイミン及びポリシロキサンである。
【0092】
他の共添加剤として適した曇り止め剤は、例えばアルコキシ化されたフェノール−ホルムアルデヒド−縮合物である。
【0093】
他の共添加剤として適した抑泡剤は、例えばポリエーテル変性されたポリシロキサンである。
【0094】
他の共添加剤として適したセタン価向上剤及び燃焼向上剤は、例えばアルキルニトレート、例えばシクロヘキシルニトレート、特に2−エチルヘキシルニトレート及びペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシドである。
【0095】
他の共添加剤として適した酸化防止剤は、例えば置換されたフェノール、例えば2,6−ジ−t−ブチルフェノール及び2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール並びにフェニレンジアミン、例えばN,N′−s−ブチル−p−フェニレンジアミンである。
【0096】
他の共添加剤として適した金属不活性化剤は、例えばサリチル酸誘導体、例えばN,N′−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミンである。
【0097】
溶剤としては、特に燃料添加剤パッケージのためには、例えば非極性有機溶剤、特に芳香族及び脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、"ホワイトスピリット"並びに名称Shellsol(登録商標)(製造元:Royal Dutch/シェルグループ)、Exxol(登録商標)(製造元:ExxonMobil)及びソルベントナフサといった工業用溶剤混合物が適している。更にここでは、特に上述の非極性有機溶剤との混合においては、極性有機溶剤、とりわけアルコール、例えば2−エチルヘキサノール、デカノール及びイソトリデカノールが該当する。
【0098】
上述の共添加剤及び/又は溶剤がガソリンもしくはディーゼル燃料で併用される場合に、それらはその慣用量で使用される。
【0099】
前記の多核フェノール性化合物は、更に、特に好ましくは、潤滑剤中の安定剤として適している。潤滑剤もしくは潤滑剤組成物とは、ここでは、エンジンオイル、潤滑油、トランスミッションオイル、ギヤオイル及びオートマチックオイル並びに主に金属としての機械的可動部の潤滑に用いられる類似の液状組成物を指すべきである。安定化とは、ここでは、とりわけ潤滑剤組成物の酸化安定性及び劣化安定性の改善、従って特に酸化防止剤としてのその作用様式を表すべきである。付加的にもしくは代わりに、前記の多核フェノール性化合物によって、潤滑剤組成物の剪断安定性が改善される。すなわち、多核フェノール性化合物は、潤滑剤組成物をより効果的に濃縮する。幾つかの場合に、前記の多核フェノール性化合物は、潤滑剤組成物中で分散剤としても作用する。
【0100】
本発明の更なる対象は、そのために慣用の成分と、少なくとも1つの前記の多核フェノール性化合物とを含有する潤滑剤組成物である。本発明による潤滑剤組成物は、前記の多核フェノール性化合物を、潤滑剤組成物の全量に対して、通常は、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に0.05〜8質量%、とりわけ0.1〜5質量%の量で含有する。
【0101】
経済的に最も重要な潤滑剤組成物は、エンジンオイル並びにトランスミッションオイル、ギヤオイル及びオートマチックオイルである。エンジンオイルは、通常は、主にパラフィン成分を含有しかつ精油所における高価な後処理と精製工程を経て製造される鉱物性基油と、約2〜10質量%の割合の添加剤(作用物質含量に対する)とからなる。特定の用途のためには、例えば高温使用のためには、前記の鉱油性基油は、部分的にもしくは完全に合成成分、例えば有機エステル、合成炭化水素、例えばオレフィンオリゴマー、ポリ−α−オレフィンもしくはポリオレフィン又は水素化分解オイルによって交換することができる。エンジンオイルは、シリンダとピストンとの間の申し分のない潤滑作用と良好な気密性を保証するために、高温でも十分に高い粘性を有さねばならない。更に、エンジンオイルは、その流動特性からも、低いエンジン温度でも問題なく始動できるものでなければならない。エンジンオイルは、酸化安定性でなければならず、また過酷な作業条件下でも、液状もしくは固形の分解生成物並びに沈着物は僅かしか生じないことも必要である。エンジンオイルは、固体を分散し(分散剤挙動)、沈着を抑制し(清浄剤挙動)、酸性の反応生成物を中和し、かつエンジンの金属表面上に摩耗防止皮膜を形成する。エンジンオイルは、通常は、粘度クラス(SAE−クラス)に従って特徴付けられる。
【0102】
トランスミッションオイル、ギヤオイル及びオートマチックオイルは、それらの基礎成分と添加剤の点でエンジンオイルと同様に構成されている。伝導装置の歯車システムにおける動力伝達は、大部分が、歯車の間のトランスミッションオイル中の液圧によって行われる。トランスミッションオイルは、その結果として、いつまでも分解することなく高い圧力を保持するものでなければならない。粘度特性の他に、ここでは、摩耗、耐圧、摩擦、剪断安定性、駆動伝達及びなじみ挙動が重要な尺度である。
【0103】
エンジンオイル並びにトランスミッションオイル、ギヤオイル及びオートマチックオイルは、本発明の範囲で使用されるべき多核フェノール性化合物の他に、一般に、なおも少なくとも1つの、しかしながら大抵は幾つかの又は全ての以下に挙げられる添加剤を、一般にこのために慣用の量(全潤滑剤組成物に対する質量%、括弧内に示される)で含有する:
(a)酸化防止剤(0.1〜5%):
硫黄化合物、例えばテルペン(α−ピネン)、樹脂油もしくは低分子ポリブテンと硫黄、ジアルキルスルフィド、ジアルキルトリスルフィド、ポリスルフィド、ジアリールスルフィド、変性されたチオール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトトリアジン、チオフェン誘導体、キサンテート、亜鉛ジアルキルジチオカルバメート、チオグリコール、チオアルデヒド、ジベンジルジスルフィド、アルキルフェノールスルフィド、ジアルキルフェノールスルフィドもしくは硫黄含有カルボン酸との反応生成物
リン化合物、例えばトリアリール−及びトリアルキルホスファイト、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホン酸−ジアルキルエステル又はホスホン酸−ピペラジド
硫黄−リン化合物、例えば亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート(金属ジアルキル−ジチオホスフェートは、潤滑油中で腐食防止剤及び高圧添加剤としても作用する)又は五硫化リンとテルペン(α−ピネン、ジペンテン)、ポリブテン、オレフィンもしくは不飽和エステルとの反応生成物
フェノール誘導体、例えば立体障害モノ−、ビス−もしくはトリスフェノール、立体障害多核フェノール、ポリアルキルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールもしくはメチレン−4,4′−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(フェノール誘導体は、しばしば硫黄もしくはアミンを基礎とする酸化防止剤と組み合わせて使用される)、アミン、例えばアリールアミン、例えばジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン又は4,4′−テトラメチルジアミノ−ジフェニルメタン
狭義での金属不活性化剤、例えばN−サリチリデン−エチルアミン、N,N′−ジサリチリデン−エチレンジアミン、N,N′−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミン、トリエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、クエン酸、グリコール酸、レシチン、チアジアゾール、イミダゾールもしくはピラゾール誘導体
(b)粘度指数向上剤(0.05〜10%)、例えば通常10000〜45000の分子量を有するポリイソブテン、通常15000〜100000の分子量を有するポリメタクリレート、1,3−ジエン、例えばブタジエンもしくはイソプレンの通常80000〜100000の分子量を有する単独重合体及び共重合体、通常80000〜100000の分子量を有する1,3−ジエン−スチレン共重合体、通常60000〜120000の分子量を有するエステル化された形の無水マレイン酸−スチレンポリマー、通常200000〜500000の分子量を有する共役ジエン及び芳香族モノマーからなる単位によるブロック状構造を有する星形ポリマー、通常80000〜150000の分子量を有するポリアルキルスチレン、通常60000〜140000の分子量を有するエチレンとプロピレンとからのポリオレフィン又はスチレン−シクロペンタジエン−ノルボルネン−ターポリマー
(c)流動点降下剤(冷間流動改善剤)(0.03〜1%)、例えば二環式芳香族化合物、例えば種々の長鎖アルキル基を有するナフタリン、12〜18個の炭素原子をアルコール基中に有し、10〜30モル%の分枝度を有し、かつ5000〜500000の平均分子量を有するポリメタクリレート、長鎖アルキルフェノール及びフタル酸−ジアルキルアリールエステル又は種々のオレフィンのコポリマー
(d)清浄剤(HD添加剤)(0.2〜4%)、例えばカルシウム−、鉛−、亜鉛−及びマンガン−ナフテネート、カルシウム−ジクロロステアレート、カルシウム−フェニルステアレート、カルシウム−クロロフェニルステアレート、アルキル芳香族化合物、例えばドデシルベンゼンのスルホン化生成物、石油スルホネート、ナトリウム−、カルシウム−、バリウム−もしくはマグネシウム−スルホネート、中性の、塩基性の及び高塩基性のスルホネート、フェネート及びカルボキシレート、サリチレート、アルキルフェノール及びアルキルフェノールスルフィドの金属塩、ホスフェート、チオホスフェート又はアルケニルホスホン酸誘導体
(e)無灰分散剤(0.5〜10%)、例えばアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンからのマンニッヒ縮合物、ポリイソブテニル無水コハク酸とポリヒドロキシ化合物もしくはポリアミンとの反応生成物、アルキルメタクリレートとジエチルアミノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジンもしくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体又は酢酸ビニル−フマレート共重合体
(f)高圧添加剤(極圧添加剤)(0.2〜2.5%)、例えば40〜70質量%の塩素含有率を有する塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸(特にトリクロロメチル末端基を有するもの)、ジアルキルハイドロジェンホスファイト、トリアリールホスファイト、アリールホスフェート、例えばトリクレシルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェート、例えばトリブチルホスフェート、トリアルキルホスフィン、二リン酸エステル、ニトロ芳香族化合物、ナフテン酸のアミノフェノール誘導体、カルバミン酸エステル、ジチオカルバミン酸誘導体、置換された1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾールとアルキル無水コハク酸もしくはアルキル無水マレイン酸との混合物、1,2,4−チアジアゾール−ポリマー、モルホリノベンゾチアジアゾール−ジスルフィド、塩素化されたアルキルスルフィド、硫黄化されたオレフィン、硫黄化されたクロロナフタリン、塩素化されたアルキルチオカーボネート、有機スルフィド及びポリスルフィド、例えばビス(4−クロロベンジル)ジスルフィド及びテトラクロロジフェニルスルフィド、トリクロロアクロレイン−メルカプタール又は特に亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)
(g)摩擦低下剤(摩耗調節剤)(0.05〜1%)、特に極性の油溶性化合物であって摩耗表面に吸着によって薄膜を生ずるもの、例えば脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪酸塩、脂肪酸アルキルエステルもしくは脂肪酸グリセリド
(h)抑泡添加剤(0.0001〜0.2%)、例えば液状シリコーン、例えばポリジメチルシロキサン又はポリエチレングリコールエーテル及び−スルフィド
(i)解乳化剤(0.1〜1%)、例えばジノニルナフタリンスルホネートのそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の形
(j)腐食防止剤(金属不活性化剤とも呼称される)(0.01〜2%)、例えば第三級アミン及びそれらの塩、イミノエステル、アミドキシム、ジアミノメタン、飽和もしくは不飽和の脂肪酸とアルカノールアミンとの誘導体、アルキルアミン、サルコシン、イミダゾリン、アルキルベンゾトリアゾール、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、ジアリールホスフェート、チオリン酸エステル、第一級n−C8〜C18−アルキルアミンもしくはシクロアルキルアミンと分枝鎖状C5〜C12−アルキル基を有するジアルキルホスフェートとの中性塩、中性もしくは塩基性のアルカリ土類金属スルホネート、亜鉛ナフテネート、モノ−及びジアルキルアリールスルホネート、バリウム−ジノニルナフタリンスルホネート、ラノリン(グリース)、ナフテン酸の重金属塩、ジカルボン酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール−及びソルビタン−ものオレエート、O−ステアロイルアルカノールアミン、ポリイソブテニルコハク酸誘導体又は亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート及び亜鉛ジアルキルジチオカルバメート
(k)乳化剤(0.01〜1%)、例えば長鎖の不飽和の天然産生のカルボン酸、ナフテン酸、合成カルボン酸、スルホンアミド、N−オレイルサルコシン、アルカンスルファミド酢酸、ドデシルベンゼンスルホネート、長鎖アルキル化されたアンモニウム塩、例えばジメチルドデシルベンジルアンモニウムクロリド、イミダゾリウム塩、アルキル−、アルキルアリール−、アシル−、アルキルアミノ−及びアシルアミノポリグリコールもしくは長鎖のアシル化されたモノ−及びジエタノールアミン
(l)着色剤及び蛍光添加剤(0.001〜0.2%)
(m)保存剤(0.001〜0.5%)
(n)防臭剤(0.001〜0.2%)
本発明の範囲における典型的な既製のエンジンオイル組成物並びにトランスミッションオイル組成物、ギヤオイル組成物及びオートマチックオイル組成物は、以下の組成を有し、その際、添加剤についての表記は、作用物質含有率に対するものであり、かつ全ての成分の合計は常に100質量%となる:
・ 80〜99.3質量%、特に90〜98質量% エンジンオイル基礎あるいはトランスミッションオイル基礎、ギヤオイル基礎及びオートマチックオイル基礎(鉱物性基油及び/又は合成成分)、添加剤のための溶剤及び希釈剤の割合を含む
・ 0.1〜8質量% 安定剤としての多核フェノール性化合物
・ 0.2〜4質量%、特に1.3〜2.5質量%、群(d)の清浄剤
・ 0.5〜10質量%、特に1.3〜6.5質量%、群(e)の分散剤
・ 0.1〜5質量%、特に0.4〜2.0質量% 群(a)の酸化防止剤及び/又は群(f)の高圧添加剤及び/又は群(g)の摩擦低下剤
・ 0.05〜10質量%、特に0.2〜1.0質量% 群(b)の粘度指数向上剤
・ 0〜2質量%、群(c)及び(h)ないし(n)のその他の添加剤
本発明の対象は、また、前記の多核フェノール性化合物の製造方法において、テトラヒドロベンゾキサジンIと、1もしくは複数の同一もしくは異なるフェノールII及び/又は1もしくは複数の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾキサジンIとを、60〜250℃の温度で、特に90〜150℃の温度で、不活性溶剤、例えば芳香族炭化水素、例えばトルエンもしくはキシレンの不在下もしくは存在下で反応させることを特徴とする製造方法である。
【0104】
前記の多核フェノール性化合物の幾つかは新規物質なので、これらの新規物質自体はまた本発明の対象である。
【0105】
少なくとも26個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖のヒドロカルビル基を有する多核フェノール性化合物は新規である。従って、また、本発明の対象は、一般式I
【化8】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化9】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化10】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、26〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]である。
【0106】
2〜C12−オレフィンのオリゴマーもしくはポリマーから誘導される、平均して少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖のヒドロカルビル基を有する多核フェノール性化合物は、新規である。従って、また、本発明の対象は、一般式I
【化11】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化12】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化13】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、平均して13〜3000個の炭素原子を有しかつC2〜C12−オレフィンのオリゴマーもしくはポリマーから誘導され、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]である。
【0107】
平均して13〜3000個の炭素原子を有しかつC2〜C12−オレフィンのオリゴマーもしくはポリマーから誘導される、ポリマー性の分布を有するかかる主に多分散性のヒドロカルビル基は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、スチレン、メチルスチレン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1もしくはドデセン−1から誘導される基である。前記基は、ホモポリマー基もしくはコポリマー基であってよい。その数平均分子量Mnは、少なくとも183であり、その多分散性係数PDIは、通常は1.05〜10である。183〜約500のMnを有する低分子の基の場合に、該基は、単分散性で存在してもよい。特に関心が持たれるのは、イソブテンから誘導される、ポリマー性分布を有する多分散性のヒドロカルビル基である。
【0108】
更に、本発明の対象は、一般式III
【化14】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有し、かつ
nは、0〜18の整数を表すが、
但し、置換基R1、R3、R4又はR5の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R3、R4又はR5の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示されるオリゴ−及びポリテトラヒドロベンゾオキサジンである。
【0109】
更に、本発明の対象は、一般式IV
【化15】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示される二核のフェノール性化合物である。
【0110】
更に、本発明の対象は、一般式V
【化16】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有し、その際、
置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化17】

置換基R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表すが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子、有利には26〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示される二核のフェノール性化合物である。
【0111】
次に、本発明を、制限のない実施例により詳細に説明する。
【0112】
製造例
実施例1:
式Vbの化合物を、4−ポリイソブテニルフェノールと3−メチル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
500mlの四ツ口フラスコ中で、120gの4−ポリイソブテニルフェノール(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で100mlのトルエン中に装入した。52gの3−メチル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンを、素早く添加した。フラスコ内容物を、還流になるまで加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温に冷却した後に、フラスコ内容物をメタノールで洗浄し、そしてトルエン相を150℃及び5ミリバールで蒸発させた。113gの生成物が、淡色の澄明な粘性の油の形で得られた。
【0113】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
テトラヒドロベンゾオキサジン−シグナル(δ=4.70ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;δ=3.82ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;)並びに4−ポリイソブテニルフェノールのオルト位についてのシグナル(δ=6.70ppm)は、完全に消失している。
【0114】
δ=3.8〜3.5ppmの範囲においてベンジルプロトンが存在し、δ=2.6〜2.0ppmの範囲においてN−メチル基のプロトンが存在し、そしてδ=6.9〜7.2ppmの範囲において芳香族化合物プロトンが存在する。
【0115】
実施例2:
式Veの化合物を、4−ポリイソブテニルフェノールと3−(ジメチルアミノ)プロピル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
1000mlの四ツ口フラスコ中で、170gの4−ポリイソブテニルフェノール(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で100mlのトルエン中に装入した。100gの3−(ジメチルアミノ)プロピル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンを、素早く添加した。フラスコ内容物を、還流になるまで加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温に冷却した後に、フラスコ内容物をメタノールで洗浄し、そしてトルエン相を90℃及び5ミリバールで蒸発させた。225gの生成物が、淡色の澄明な粘性の油の形で得られた。
【0116】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
5〜10%残留テトラヒドロベンゾオキサジン−シグナル(δ=4.70ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;δ=3.82ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−)並びに4−ポリイソブテニルフェノールのオルト位についての低い残留シグナル(δ=6.70ppm)は、90〜95%の転化率を示している。
【0117】
δ=3.8〜3.4ppmの範囲においてベンジルプロトンが存在し、δ=2.6〜2.0ppmの範囲においてN−メチル基及びN−メチレン基のプロトンが存在し、そしてδ=7.0〜7.3ppmの範囲において芳香族化合物プロトンが存在する。
【0118】
実施例3:
式Vcの化合物を、4−ポリイソブテニルフェノールと3,6−ジメチル−8−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
1000mlの四ツ口フラスコ中で、240gの4−ポリイソブテニルフェノール(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で200mlのトルエン中に装入した。88gの3,6−ジメチル−8−t−ブチル−テトラヒドロベンゾオキサジンを素早く添加した。フラスコ内容物を、還流になるまで加熱し、還流下で2時間撹拌した。トルエン相を150℃及び5ミリバールで蒸発させた。313gの生成物が、淡色の澄明な粘性の油の形で得られた。
【0119】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
残留テトラヒドロベンゾオキサジン−シグナル(δ=4.70ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;δ=3.82ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−)並びに4−ポリイソブテニルフェノールのオルト位についての低い残留シグナル(δ=6.70ppm)は、80%の転化率を示している。
【0120】
δ=3.8〜3.4ppmの範囲においてベンジルプロトンが存在し、δ=2.6〜2.0ppmの範囲においてN−メチル基のプロトンが存在し、そしてδ=7.0〜7.3ppmの範囲において芳香族化合物プロトンが存在する。
【0121】
実施例4:
式IIIvの化合物を、3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジンと3−メチル−6−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
500mlの蒸発器バルブ(Verdampferbirne)中で、100gの3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジン(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で200mlのトルエン中に装入した。16.4gの3−メチル−6−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンを、素早く添加した。トルエンを、回転蒸発器上で100℃/5ミリバールで留去し、そして160℃/900ミリバールで4時間撹拌した。110gの生成物が、粘着性のある粘性の油の形で得られた。
【0122】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
メチルプロトン(ベンゾオキサジン:2.45〜2.65ppm;2−ヒドロキシベンジルアミン:2.05〜2.30ppm)の積分値に対して、2つのフェノール単位が1つのベンゾオキサジンと結合されている。
【0123】
実施例5:
式IIIwの化合物を、3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジンと3−メチル−6−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
500mlの蒸発器バルブ中で、50gの3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジン(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で200mlのトルエン中に装入した。41gの3−メチル−6−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンを、素早く添加した。トルエンを、回転蒸発器上で100℃/5ミリバールで留去し、そして160℃/900ミリバールで4時間撹拌した。75gの生成物が、粘着性のある粘性の油の形で得られた。
【0124】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
メチルプロトン(ベンゾオキサジン:2.45〜2.65ppm;2−ヒドロキシベンジルアミン:2.05〜2.30ppm)の積分値に対して、9つのフェノール単位が1つのベンゾオキサジンと結合されている。
【0125】
実施例6:
式VIcの化合物を、3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジン及び3−メチル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとビスフェノールAとの反応によって
1000mlの四ツ口フラスコ中で、130gの3−メチル−6−ポリイソブテニルテトラヒドロベンゾオキサジン(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)、78.5gの3−メチル−6,8−ジ−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジン、22.8gのビスフェノールA及び200mlのトルエンを還流下で2時間撹拌した。フラスコ内容物を、140℃及び5ミリバールで蒸発させた。194.5gの生成物が、淡色の澄明な粘性の油の形で得られた。
【0126】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
5%の残留テトラヒドロベンゾオキサジン−シグナル(δ=4.70ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;δ=3.82ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−)並びにビスフェノールAのオルト位についての低い残留シグナル(δ=6.60ppm)は、95%の転化率を示している。
【0127】
δ=3.8〜3.4ppmの範囲においてベンジルプロトンが存在し、δ=2.6〜2.0ppmの範囲においてN−メチル基のプロトンが存在し、そしてδ=6.7〜7.3ppmの範囲において芳香族化合物プロトンが存在する。
【0128】
実施例7: 式Vnの化合物を、4−ポリイソブテニルフェノールと3−(ジメチルアミノ)プロピル−6−メチル−8−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンとの反応によって
1000mlの四ツ口フラスコ中で、300gの4−ポリイソブテニルフェノール(市販の1000のMnを有する高反応性ポリイソブテンGlissopal(登録商標)1000を基礎とする)を、室温で190gのSolvesso(登録商標)150(重ソルベントナフサ)中に装入した。145gの3−(ジメチルアミノ)プロピル−6−メチル−8−t−ブチルテトラヒドロベンゾオキサジンを、素早く添加した。フラスコ内容物を150℃で4時間撹拌した。630gの生成物の淡色の澄明な溶液(70質量%の固体含有率)が得られた。分析的測定のために、サンプルを150℃及び3ミリバールで蒸発させた。
【0129】
1H−NMR(400MHz,16スキャン,CDCl3):
残留テトラヒドロベンゾオキサジン−シグナル(δ=4.80ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−;δ=3.91ppm,2H,−CH2−N(−CH3)−CH2−O−)並びに4−ポリイソブテニルフェノールのオルト位についての低い残留シグナル(δ=6.70ppm)は、90%の転化率を示している。
【0130】
δ=3.8〜3.4ppmの範囲においてベンジルプロトンが存在し、δ=2.6〜2.0ppmの範囲においてN−メチル基のプロトンが存在し、そしてδ=6.7〜7.3ppmの範囲において芳香族化合物プロトンが存在する。
【0131】
適用例
実施例8:タービン燃料(ジェット燃料)の熱安定性の調査
DEF STAN 91−91もしくはASTM D 1655によるJet A−1仕様のタービン燃料を使用した。添加剤の添加は、製造例1〜6からの化合物1リットルあたりそれぞれ100mgで行った。
【0132】
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた三つ口ガラスフラスコ中で、まず、室温において5lの空気を1時間以内で、調査されるべき燃料150mlに導通させた。引き続き、該燃料を油浴を用いて140℃に加熱し、この温度で更に5時間撹拌した。室温に冷却した後に、全燃料量を0.45μmのメンブレンフィルタを通じて濾過した。引き続き、濾過残滓を、乾燥棚内で45分間115℃で乾燥させ、引き続き真空下でデシケータ内で2時間乾燥させた後に重量測定した。
【0133】
ブランク値(添加剤なし):8.9mg
本発明により、以下の化合物をそれぞれ100mg/lで添加した:
式Vbの化合物(製造例1):1.8mg
式Veの化合物(製造例2):1.0mg
式Vcの化合物(製造例3):1.0mg
式IIIvの化合物(製造例4):1.6mg
式IIIwの化合物(製造例5):2.5mg
式VIcの化合物(製造例6):1.0mg
本発明により使用される添加剤の使用によって、タービン燃料の熱負荷によって生じた粒子量は明らかに低減できた。
【0134】
実施例9: タービン燃料(ジェット燃料)の熱安定性の改善
DEF STAN 91−91もしくはASTM D 1655によるJet A−1仕様に準拠するタービン燃料を使用した。熱安定性の調査は、ASTM D 3241によるJETOT−Breakpoint法に従って行った。添加剤が添加されていないタービン燃料では、250℃の値が測定された。それぞれ100mg/lの以下に挙げる本発明により使用される添加剤を添加した燃料では、以下の値が測定された:
式Vbの化合物(製造例1):280℃
式Veの化合物(製造例2):260℃
式Vcの化合物(製造例3):280℃
【0135】
実施例10: タービン燃料の水適合性の調査
製造例1からの式Vbの化合物及び実施例8及び9と同じタービン燃料を使用した。
【0136】
DIN 51415もしくはASTM D 1094に従って、100mg/lの式Vbの化合物の添加後に、タービン燃料の水適合性、従って不所望なエマルジョン形成傾向を測定した。そのために、添加剤が添加されたタービン燃料80mlと水20mlとを定義されたように激しく振盪した。次いで、相分離層の視覚的評価を、それぞれ1分、5分、30分及び60分後に行った。水の添加後5分で既に、燃料と水の完全な分離が生じ、エマルジョン分は残っていない。
【0137】
実施例11: タービン燃料の水分離特性の調査
DEF STAN 91−91もしくはASTM D 1655によるJet A−1仕様のタービン燃料を使用した。タービン燃料のその水分離特性に関する傾向の調査をASTM D 3948("MSEP"試験)に従って実施した。この測定のために特徴的なことは、標準的なコアレッサフィルタを使用して、引き続き燃料相の混濁度を測定することである。その測定では、本発明により使用される添加剤を、酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール("BHT")及び金属不活性化剤であるN,N′−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパンと組み合わせて、そのために慣用の溶剤中で調査した。本発明により使用される添加剤の配量は、それぞれ215mg/l(100%の作用物質含有率に対する)であった。以下の混濁挙動についての評点が確認された[0(最悪の評点)〜100(最良の評点)の相対評価スケール]:
ブランク値(添加剤なし):98
式Vbの化合物(製造例1):97
式Vcの化合物(製造例3):98
添加剤を添加していないタービン燃料と比較して改悪は生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化2】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化3】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]を、無生物有機材料の光、酸素及び熱の作用に対する安定化のための安定剤として用いる使用。
【請求項2】
請求項1に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つが、183〜42000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基である使用。
【請求項3】
請求項2に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、183〜42000の数平均分子量Mnを有する1もしくは2つのポリイソブテニル基が、分子中に置換基として、R1及び/又はR2及び/又はR4及び/又はR7及び/又はR9及び/又はR13及び/又はR14を有する使用。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの、13〜3000個の炭素原子を有する置換基あるいは183〜42000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基を表さない他の置換基は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基を示す使用。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、該化合物が285〜25000の数平均分子量Mnを有する使用。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、該多核フェノール性化合物中のポリイソブテニル基についての平均多分散性係数PDIが、基礎となるテトラヒドロベンゾオキサジンI及び/又はフェノールII中のポリイソブテニル基についての平均多分散性係数PDIの多くても5倍である使用。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、タービン燃料(ジェット燃料)中の安定剤として用いる使用。
【請求項8】
請求項7に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、タービン燃料の熱安定性の改善のための安定剤として用いる使用。
【請求項9】
請求項7に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、タービンの燃料系及び/又は燃焼系における沈着の低減のためのタービン燃料中での安定剤として用いる使用。
【請求項10】
タービン燃料(ジェット燃料)と、請求項1から6までのいずれか1項で定義される少なくとも1つの多核フェノール性化合物とを含有するタービン燃料組成物。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項で定義される少なくとも1つの多核フェノール性化合物と、場合により少なくとも1つの希釈剤と、場合により少なくとも1つの添加剤とを含有する、タービン燃料(ジェット燃料)用の添加剤濃縮物。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の多核フェノール性化合物の使用であって、潤滑剤組成物の酸化安定性及び劣化安定性の改善のための及び/又は剪断安定性の改善のための安定剤として用いる使用。
【請求項13】
潤滑剤組成物であって、そのために慣用の成分と、請求項1から6までのいずれか1項で定義される少なくとも1つの多核フェノール性化合物とを含有する潤滑剤組成物。
【請求項14】
請求項1から6までのいずれか1項で定義される多核フェノール性化合物の製造方法において、テトラヒドロベンゾオキサジンIと、1もしくは複数の同一もしくは異なるフェノールII及び/又は1もしくは複数の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンIとを、60〜250℃の温度で、不活性溶剤の不在下もしくは存在下で反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
一般式I
【化4】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化5】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化6】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、26〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]。
【請求項16】
一般式I
【化7】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、かつ
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示されるテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式II
【化8】

[式中、
置換基R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子、ヒドロキシル基又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有する]で示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるフェノールとを、及び/又は一般式Iで示される1もしくは複数種の同一もしくは異なるテトラヒドロベンゾオキサジンとを反応させることによって得られる、1分子当たり20個までのベンゼン核を有する多核フェノール性化合物
[式中、
置換基R4はまた、式Zの基を表し、かつ置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化9】

置換基R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表し、かつ
置換基R2及びR3もしくはR3及びR4もしくはR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環を形成できるか、又は置換基R2及びR3及びR4及びR5は、ベンゼン核に結合された部分構造−O−CH2−NR13−CH2−及び−O−CH2−NR14−CH2−と一緒に、第二のテトラヒドロオキサジン環及び第三のテトラヒドロオキサジン環を形成でき、その際、R13及びR14は、互いに無関係に、それぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の少なくとも1つは、平均して13〜3000個の炭素原子を有しかつC2〜C12−オレフィンのオリゴマーもしくはポリマーから誘導され、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R13又はR14の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]。
【請求項17】
一般式III
【化10】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有し、かつ
nは、0〜18の整数を表すが、
但し、置換基R1、R3、R4又はR5の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R3、R4又はR5の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示されるオリゴ−及びポリテトラヒドロベンゾオキサジン。
【請求項18】
一般式IV
【化11】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有するが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示される二核のフェノール性化合物。
【請求項19】
一般式V
【化12】

[式中、
置換基R1は、1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、水素もしくはC1〜C4−アルキル基を示し、
置換基R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、互いに無関係に、水素原子又はそれぞれ1〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、前記基は、O及びSの群からの1もしくは複数のヘテロ原子によって及び/又は1もしくは複数の基NR6によって中断されていてよく、その際、R6は、上述の意味を有し、その際、
置換基R9はまた、式Z′の基を表してよく、
【化13】

置換基R7、R8及びR10は、上述の意味を有し、置換基R7はまた、一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R15は、水素又は一般式Iのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基を表し、かつ置換基R11及びR12は、同一もしくは異なってよく、かつ水素もしくはC1〜C10−アルキル基を表すが、
但し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10の少なくとも1つは、13〜3000個の炭素原子を有し、かつR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10の群からの他の置換基は、それらがヒドロカルビル基を表す場合には、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する]で示される三核のフェノール性化合物。

【公表番号】特表2009−528414(P2009−528414A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556750(P2008−556750)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051632
【国際公開番号】WO2007/099048
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】