説明

多機能型とした電圧制御型の温度補償水晶発振器

【課題】小型化を促進して必要に応じた機能を選択的に構成し、さらには省電力化に適した多機能型のVC−TCXOを提供する。
【解決手段】ICチップ2と水晶片3とを収容する容器本体1を備え、ICチップ2は第1発振出力機能及び温度補償機能からなる基本的機能と、第2発振出力機能、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能からなる付加的機能と、これらの機能用の基本的IC端子と付加的IC端子と、基本的実装端子と付加的実装端子とを有するVC−TCXOであって、付加的IC端子の2個は付加的機能のうちのいずれか2個と回路形成面の表面層の回路パターンの変更によって選択的に接続され、基本的実装端子は容器本体1の外底面の4角部として、付加的IC端子の2個と接続する付加的実装端子の2個は外底面の対向する長辺の中央部に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用とした電圧制御型の温度補償水晶発振器(所謂VC−TCXO)を技術分野とし、特に多機能化した小型な水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
水晶発振器の中でもVC−TCXO10は水晶振動子の周波数温度特性を補償し、例えばAFC回路からの電圧によって発振周波数を公称値(公称周波数)に維持する。これにより、環境変化を伴う携帯電話等の通信機器に周波数の基準源として適用される。近年では、ユーザーの要求も多様化し、例えば携帯電話では動作・非動作機能(発振出力のON・OFF)を有するPLL用の基準信号源及びクロック信号源としての出力端子を別個に備えて多機能化したものがある。
【0003】
(従来技術の一例)
第5図は一従来例を説明する水晶発振器(VC−TCXO10)の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はカバーを除く内底面の平面図、同図(c)は外底面の図である。
【0004】
水晶発振器は、例えば積層セラミックからなる凹状とした容器本体1にICチップ2と水晶片3とを収容し、金属カバー4を接合して密閉封入してなる。容器本体1は凹部の内壁段部に一対の水晶保持端子5を、内底面に回路端子6を、外底面に実装端子7を有する。水晶保持端子5は回路端子6中の水晶端子に、水晶端子を除く回路端子6は外底面の実装端子7に図示しない貫通電極を含む導電路によって電気的に接続する。
【0005】
ICチップ2は容器本体1の内底面に例えば図示しないバンプを用いた超音波熱圧着によって固着される(所謂フリップチップボンディング)。水晶片3は両主面に励振電極8aを有し、一端部両側に引出電極8bを延出する(第6図)。引出電極8bの延出した水晶片3の一端部両側を内壁段部の水晶保持端子5に導電性接着剤9によって固着する。そして、容器本体1の開口端面に設けられた図示しない金属リングに例えばシーム溶接によって金属カバー4を接合し、水晶片3(及びICチップ2)が密閉封入される。なお、水晶片3が密閉封入された状態で水晶振動子あるいは水晶ユニットと呼ばれる。
【0006】
(基本的回路構成)
第7図中に示すVC−TCXO10の基本的な回路構成はICチップ2内に集積化され、図示しない電圧制御型の発振回路及び温度補償機構を有する。すなわち、制御電圧によって発振周波数が制御される第1発振出力機能と温度補償機能との基本的機能を有する。発振回路は外付けの水晶振動子(水晶片3)とともに形成され、制御電圧の印加される図示しない電圧可変容量素子(バリキャップダイオード等)を発振閉ループ内に挿入して電圧制御型とする。制御電圧は例えば周波数自動制御(AFC)回路からのAFC電圧とし、これを電圧可変容量素子に印加して公称周波数に一致させる。
【0007】
温度補償機構は少なくとも周囲温度を検出する例えばリニア抵抗として温度に応答した検出電圧を生ずる温度センサ11を含み、これによる温度補償電圧を例えば前述の電圧可変容量素子に印加する。そして、特に水晶振動子の周波数温度特性に起因した発振周波数の変化を相殺して温度補償する。
【0008】
なお、温度補償電圧は発振回路の動作中常に供給され、AFC電圧は水晶発振器の搭載される携帯電話に組み込まれたAFC回路から必要時に供給される。そして、温度補償機構に対する温度補償データは基本的機能の実装端子7(Vcc、Vout、GND、Vafc)を用いて書き込まれる。また、基本的機能の実装端子7は、第5図(c)での左斜め上を起点として時計回りに電源、第1発振出力、アース、制御電圧例えばAFC入力端子(Vcc、Vout、GND、Vafc)の順になる。
【0009】
(VC−TCXO10の多機能化)
そして、多機能化の場合には、例えばVC−TCXO10の発振出力を並列分岐し、第1及び第2緩衝増幅器12(ab)を経て第1出力Vout1及び第2発振出力Vout2とする。緩衝増幅器12は第1及び第2発振出力Vout1、Vout2間での相互干渉による波形歪み等を防止する。
【0010】
ここでは、第1及び第2発振出力Vout1、Vout2はいずれもクリップドサイン波とし、第1発振出力Vout1は通常の例えば受信周波数を中間周波数にする際のPLLによるシンセサイザの基準信号源とし、第2発振出力Vout2は常時出力としてベースバンド用のクロック源とする。そして、第1緩衝増幅器12aには例えばPLL回路の間欠動作に対応した動作・非動作信号(Ved)が印加され、第1発振出力Vout1をON・OFFする動作・非動作機能を有する。なお、動作・非動作信号は第1緩衝増幅器12aのベースや電源ラインのスイッチに印加される。また、動作・非動作機能はクロック用発振器でのスタンバイ機能に相当し、省電力化を目的とする。
【0011】
さらに、温度補償機構の温度センサ11による検出温度電圧を温度情報として出力し、例えば外部回路の温度補償用として必要に応じて利用される。これにより、VC−TCXO10の基本的機能に対して、第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能の付加的機能が追加される。
【0012】
これらのことから、ICチップ2の一主面(回路形成面)には、第8図に示したように、IC端子13として、水晶端子X1、X2、電源端子Vcc、第1発振出力端子Vout1、AFC入力端子Vafc、アース端子GNDの基本的IC端子13a以外に、第2発振出力端子Vout2、動作・非動作入力端子Ved、温度出力端子Vtsensの付加的IC端子13bの計9個が設けられる「同図(a)」。この場合、各端子は長辺方向に沿った両側に設けられ、対称性を維持するダミー端子(NC)を設けて計10個とする「第8図(b)」。
【0013】
なお、図中では、基本的IC端子及び付加的IC端子の符号13a及び13bは便宜的に省略され、IC端子は全て符号13としている。また、これに準じた基本的及び付加的実装端子7a、7b、さらには基本的及び付加的IC中間端子13a′、13b′も図中では省略され、実装端子及びIC中間端子は全て符号7、13′としている。
【0014】
なお、容器本体1の内底面に形成される前述した回路端子6はこれらのIC端子13に対応して形成される。そして、水晶端子X1、X2を除き、貫通電極(スルーホール)等を含む配線路(回路パターン)によって容器本体1の外底面に設けた各実装端子7と電気的に接続する。但し、実装端子7のアース端子GNDは2個として計8個とし、対称性を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−324318号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】超小型表面実装 VC-TCXO モジュール(型名DSA222MAA) 大真空発行のカタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の水晶発振器(VC−TCXO10)では、小型化が進行するほど、例えば平面外形が3.2×2.5mmや2.5×2.0mmから例えば2.0×1.6mm(いずれも既成規格寸法)以下になると、アース端子7(GND)を1個としても全て(計7個)の実装端子7(Vcc、Vout1、Vout2、Vafc、Vstv、GND)を形成することが困難になる。
【0018】
そして、容器本体1の平面外形を小さくすることから、ICチップのサイズも小さくする必要がある。この場合、通常では、第9図に示したように、容器本体1の内底面の回路端子6はIC端子13よりも大きくし、超音波熱圧着時のバンプ14の位置ズレを防止する。しかし、上記例ではIC端子13に対応した回路端子6を計10端子とするので、2.0×1.6mmとした平面外形の内底面には形成することも困難になる問題があった。
【0019】
また、この例では、VC−TCXO10としての通常の基本的機能以外に、PLL用の基準信号源とする第1発振出力Voutの動作・非動作機能、第2発振出力機能(クロック機能)、及び検出温度電圧の温度電圧出力機能の3つの付加的機能を備える。しかし、現実には、これらの3つの付加的機能うち、例えばいずれか一つの機能、あるいはいずれか二つの機能のみを必要とする場合が多い。
【0020】
そして、例えば基準信号源としての第1発振出力機能及びその動作・非動作機能と温度電圧出力機能のみを必要とした場合には、省電力化を阻害する問題があった。すなわち、上記例では、第1及び第2発振出力機能を有し、第2発振出力(クロック信号)Vout2は第1発振出力Vout1(基準信号)から分岐して得る。したがって、VC−TCXO10の動作を停止すると、第1発振出力Vout2のみならず、第2発振出力Vout2も得られなくなる。
【0021】
このことから、上記例ではVC−TCXO10自体の動作は継続し、第1発振出力Vout1の第1緩衝増幅器12aの動作を停止させて第1発振出力の動作・非動作機能とする。このため、第2発振出力機能を不要とした場合でも、第1発振出力の動作・非動作機能はVC−TCXO10自体の動作が継続するので、省電力化を阻害する問題があった。
【0022】
(発明の目的)
本発明は小型化を促進するとともに必要に応じた機能を選択的に構成し、さらには省電力化に適した多機能型の水晶発振器(VC−TCXO10)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(着目点)
本発明は、上記構成の水晶発振器では、前述したようにVC−TCXO10としての通常の基本的機能以外に、第1発振出力(基準信号)の動作・非動作機能、第2発振出力機能(クロック機能)、及び温度電圧出力機能の3つの付加的機能を備えるものの、いずれか一つの機能、あるいはいずれか二つの機能のみを必要とする場合が多い点に着目した。
【0024】
(構想点)
そこで、本発明は、動作・非動作、クロック及び温度電圧出力機能に対応した3つの付加的実装端子7、即ち動作・非動作入力端子Ved、第2発振出力端子(クロック端子)Vout2及び温度出力端子のいずれか一つを排除して2端子として、VC−TCXO10の本来の基本的実装端子7(Vcc、Vout1、Vafc、GND)の4端子と合わせて6端子とする。
【0025】
この場合、動作・非動作、第2発振出力及び温度電圧出力機能のうち不要な機能をICチップ2から排除することも考えられた。しかし、この場合には、それぞれに対応したICチップ2を形成する必要があることから、基本的にはICチップ2の基本構成は代えずに共通化し、ICチップ2の表層パターンのみを変更して対応するとした。
【0026】
(解決手段)
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、以下の構成とする。
すなわち、ICチップと水晶片とを容器本体に収容して少なくとも水晶片を密閉封入し、前記容器本体の平面視矩形状とした外底面に前記ICチップと電気的に接続した実装端子を備え、
前記ICチップは発振閉ループ内に制御電圧の印加される電圧可変容量素子を挿入した第1発振出力機能及び前記水晶片に起因した周波数温度特性を補償する少なくとも温度センサを有した温度補償機能からなる基本的機能と、前記基本機能以外の第2発振出力機能、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能からなる付加的機能とを有するとともに、
前記ICチップの回路形成面となる一主面にはIC端子を有し、前記IC端子は少なくとも前記基本的機能に対応した一対の水晶端子、電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子からなる基本的IC端子と、前記付加的機能に対応した付加的IC端子とを有し、
前記実装端子は前記基本的IC端子のうちの一対の水晶端子を除く電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子に電気的に接続した基本的実装端子と、前記付加的機能に対応して電気的に接続した付加的実装端子とを有する電圧制御型とした温度補償水晶発振器において、
前記ICチップの付加的IC端子は2個とし、前記付加的IC端子の2個は前記第2発振出力機能、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のうちのいずれか2個と前記回路形成面の表面層の回路パターンの変更によって選択的に接続され、
前記基本的実装端子は前記容器本体の外底面の4角部として、前記付加的IC端子の2個と接続する付加的実装端子の2個は前記外底面の対向する長辺の中央部に設けた構成とする。
【発明の効果】
【0027】
このような構成であれば、容器本体の外底面の実装端子は基本的機能に対応した基本的実装端子、即ち、電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子の4個と、必要に応じて選択される付加的実装端子の2個との計6個となる。したがって、従来例での7個に比較して1個少なくなって、外底面の対向する長辺に3個ずつとして配置できるので、高機能化を維持して小型化を促進する。
【0028】
また、付加的機能を付加しても、基本的実装端子(電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子)を従来同様に外底面の4角部とする。したがって周波数の調整や測定等を含め、例えばICチップ内の温度補償機能に対して温度補償データを書き込む場合、4角部の基本的実装端子をそのまま用いるので、新たな冶具を製作する必要がなくなる。
【0029】
さらに、ICチップは付加的機能として、第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のすべてを基本的に有し、回路形成面の回路パターンを変更することによって、必要な2個の機能に対応した付加的IC端子を形成できる。したがって、第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のうちの2個の機能のみを選択して集積化する場合よりも、無駄がなく効率的になる。
【0030】
(請求項1の引用項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記ICチップは前記基本的IC端子と付加的IC端子とを第1絶縁膜上の第1表面層に有し、前記基本的IC端子と前記付加的IC端子のうちのいずれか2個の付加的IC端子とを前記第1表面層を覆う絶縁膜上となる第2表面層に電気的に延出する。これにより、請求項1での構成を明確にするとともに、予め第1表面層までを共通化したICチップを用いて、要求に応じた第2表面層を形成すればよいので、生産性を高められる。
【0031】
本発明の請求項3では、請求項1において、前記付加的機能のうちの第2発振出力機能を不要とした場合、前記第1発振出力機能の動作・非動作機能は前記第1発振出力機能への電源の供給又は停止による。これにより、第1発振出力機能を非動作とするときは電源を直接に停止するので、省電力化を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を説明する水晶発振器(VC−TCXO)の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は内底面の、同図(c)は外底面の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を説明するVC−TCXOの特にICチップ内の回路ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態を説明するICチップの図で、同図(a)は第1表面層の平面図、同図(b)はA−A断面図、同図(c)はB−B断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を説明するICチップの図で、同図(a)は第2表面層の平面図、同図(b)はA′−A′断面図、同図(c)はB′−B′断面図である。
【図5】従来例を説明するVC−TCXOの図で、同図(a)は断面図、同図(b)は内底面の、同図(c)は外底面の平面図である。
【図6】従来例を説明する水晶片の平面図である。
【図7】従来例を説明する多機能化したVC−TCXOの特にICチップ内の回路ブロック図である。
【図8】従来例を説明する図で、同図(ab)ともにICチップの回路形成面(一主面)の平面図である。
【図9】従来例の超音波熱圧着による接合を示す容器本体の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明による水晶発振器の一実施形態を第1図(断面図、内底面及び外底面の平面図)及び第2図(ICチップ内の回路ブロック)によって説明する。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0034】
水晶発振器は前述したように温度補償機能を有して電圧制御型とした基本的機能及び付加的機能を備えたVC−TCXO10とする。そして、凹状とした容器本体1の内底面のここでは8個とした回路端子6にICチップ2の回路形成面のIC端子13を、内壁段部の水晶保持端子5に引出電極8bの延出した水晶片3の一端部両側を固着し、金属カバー4を接合して密閉封入される。なお、容器本体1の内底面の回路端子6はIC端子13よりも大きく、ICチップ2はバンプを用いた超音波熱圧着によって固着される。
【0035】
容器本体1の外底面には、基本的実装端子7としての電源端子Vcc、第1発振出力端子Vout1、アース端子GND、AFC入力端子Vafcを時計回りとして4角部に有する。そして、ここでは、第2発振出力端子Vout2、動作・非動作入力端子Ved1又はVed2、温度出力端子のいずれか2個とした付加的実装端子7を対向する各長辺の中央部に有し、計6個の実装端子7とする。これらの基本的実装端子7a(Vcc、Vout1、Vafc、GND)及び付加的実装端子bの2個はこれらに対応した内底面の回路端子6と電気的に接続する。
【0036】
ICチップ2は、前述のように、外付けの水晶振動子(水晶片3)とともにVC−TCXO10とする基本構成としての電圧制御型の発振回路及び温度センサ11に基づく温度補償機構を集積化する。これにより、例えばAFC電圧とした制御電圧Vafcによって発振周波数が制御される第1発振出力機能と、温度センサ11による検出温度電圧Vtsensに対応した温度補償電圧によって周波数温度特性を補償する温度補償機能との基本的機能を有する。
【0037】
そして、VC−TCXO10の付加的機能として第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能を予め有する。具体的には、前述同様に、第2発振出力機能はVC−TCXO10の本来の第1発振出力Vout1を分岐し、干渉防止を目的としてそれぞれに第1及び第2緩衝増幅器12(ab)を接続して第1及び第2発振出力Vout1、Vout2を得る。
【0038】
第1発振出力Vout1の動作・非動作機能は第1及び2形態を有し、第1形態は前述のように第1動作・非動作入力端子Ved1からの信号によって第1緩衝増幅器12aをON・OFF(動作又は停止)する。新たに追加された第2形態は第2動作・非動作端子Ved2からの信号によってVC−TCXO10をON・OFFする。温度電圧出力機能は前述のように、温度補償機構のうちの温度センサ11の検出温度電圧Vtsensをそのまま出力する。
【0039】
これらに伴い、第3図(平面図及び断面図)に示したように、ICチップ2の回路形成面における第1絶縁膜(酸化膜)15a上の第1表面層には、IC中間端子13′として、一対の水晶端子(X1、X2)を含む基本的IC中間端子13a′(Vcc、Vout1、Vafc、GND)、及び付加的IC中間端子13b′(Vout2、Ved1、Ved2、Vtsns)の計10個が長辺に沿った一組の対向辺に5個ずつとして均等に形成される。
【0040】
そして、ここでは、第1表面層上に形成した第2絶縁膜(樹脂膜)15b上の第2表面層に水晶中間端子13a′(X1、X2)を含む基本的本IC中間端子13a′((Vcc、Vout1、Vafc、GND)と付加的IC端子13b′(Vout2、Ved1、Ved2、Vtsns)のうちの必要とされる2端子とを電気的に延出(導出)して最終的な基本的IC端子13a及び付加的IC端子13bの計8個を形成する。例えば付加的機能のうちの第2発振出力機能を不要として、第1発振出力Vout1の動作・非動作機能と温度電圧出力機能を要求された場合には次にする。
【0041】
すなわち、第1表面層の水晶端子X1、X2を含む基本的IC中間端子13a′(Vcc、Vout1、Vafc、GND)と、付加的IC中間端子13bのうちの動作・非動作入力中間端子13b′(ここではVed2)及び温度出力中間端子13b′(Vtsens)とを第2表面層に延出してIC端子13を形成する。この場合、基本的IC端子13aは基本的実装端子7aと同様に時計回りにVcc、Vout1、GND、Vafcの順とする。そして、この例では、水晶中間端子13a′(X1、X2)は一端側に、付加的IC端子13b′(Vout2、Ved1、Ved2、Vtsns)は基本的IC中間端子13a′の間とする。
【0042】
そして、これらのIC端子13に対応して形成された容器本体1の内底面の回路端子6(8個)にバンプを用いた超音波熱圧着によって固着して電気的・機械的に接続する。但し、回路端子6は前述のようにIC端子13よりも大きい。これにより、水晶端子X1、X2をを除く各回路端子6は容器本体1の外底面の4角部の基本的実装端子7a(Vcc、Vout1、GND、Vafc)、及び長辺の中央部となる付加的実装端子7bとしての動作・非動作入力端子13(Ved2)及び温度出力端子(Vtsens)と電気的に接続する。
【0043】
このような構成であれば、ICチップ2には予め基本的機能としての電圧制御による第1発振出力機能及び温度補償機能に加え、付加機能としての第2発振出力機能、第1発振出力Vout1の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能を集積化する。そして、ICチップ2の第1表面層にこれらの基本的機能及び付加的機能用のIC中間端子13′の計10個が形成される。
【0044】
さらに、この例では、基本的機能に対応した水晶端子X1、X2を含む基本的IC端子13a(Vcc、Vout1、GND、Vafc)の6個と、3つの付加的機能のうちの2つの機能に対応した付加的IC端子13bの2個との計8個をICチップ2の第2表面層に導出する。そして、ICチップ2の長辺方向に沿った両側にIC端子13の4個ずつを形成する。
【0045】
この場合、従来例でのICチップ2の両側に5個ずつのIC端子13を形成した場合よりも、本実施例ではIC端子13の間隔を広げられる。これにより、容器本体1の内底面に形成する回路端子6をIC端子13よりも大きく形成できる。したがって、ICチップ2を容器本体1の内底面に超音波熱圧着する際、IC端子13に設けたバンプを回路端子6上に位置決めする際の許容範囲(クリアランス)を確保し、確実に接合できる。
【0046】
そして、容器本体1の外底面の実装端子7は水晶端子X1、X2を除く基本的機能に対応した基本的実装端子7a(Vcc、Vout1、GND、Vafc)の4個と、付加的実装端子7bの2個との計6個となる。したがって、従来例での7個に比較して1個少なくなって、外底面の対向する長辺に3個ずつとして配置できるので、高機能化を維持して小型化を促進する。
【0047】
この場合、付加的機能を付加しても、基本的実装端子7(Vcc、Vout1、GND、Vafc)を従来同様に時計回りとして外底面の4角部とする。したがって周波数の調整や測定等を含め、例えばICチップ2内の温度補償機構に対して温度補償データを書き込む場合、4角部の基本的実装端子7をそのまま用いるので、新たな冶具を製作する必要がなくなる。
【0048】
また、ICチップ2は付加的機能として、第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のすべてを基本的に有し、回路形成面の回路パターンを変更することによって、必要な2個の機能に対応した付加的IC端子13bを形成できる。したがって、第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のうちの2個の機能のみを選択して集積化する場合よりも、無駄がなく効率的になる。そして、ここでは予め第1表面層までを共通化したICチップ2に要求に応じた第2表面層を形成すればよいので、生産性を高められる。
【0049】
さらに、この例では、3つのうちの2つの付加的機能は、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能とし、第2発振出力機能は排除する。したがって、第1発振出力の動作・非動作機能は第2形態の動作・非動作入力端子ed2からの信号によって第1発振出力Vout1を停止させることができる。これにより、VC−TCXOの動作を直接的に停止するので省電力化を促進できる。
【0050】
(他の事項)
上記実施形態では付加的機能として第2発振出力機能、動作・非動作機能及び温度電圧出力機能の3つを予め有するとしたが、これに限らず、例えば水晶振動子の周波数温度特性等に関する温度情報出力機能を有してもよい(特許文献1参照)。この場合、温度情報出力機能を付加して4つに付加的機能を予め有しても、不要な付加的機能(例えば第2発振出力機能)を排除して3つの機能としてもよく、第2表面層の最終的なIC端子端子を8個とすればよい。
【0051】
また、容器本体1は凹状としてICチップ2及び水晶片3を収容して密閉封入したが、例えば断面H状として一方の凹部に水晶片3を収容して密閉封止し、他方の凹部にICチップ2を収容して開口端面に実装端子を形成する場合でも同様に適用できる。この場合、水晶片3を密閉封入した水晶振動子の底面にICチップ2を収容した実装基板を接合した場合でも同様である。但し、実施形態での凹状とした場合には水晶片3の一端部を保持する内壁段部によってICチップ2を収容する内底面が小さくなるので、H状とした場合よりも適する。
【符号の説明】
【0052】
1 容器本体、2 ICチップ、3 水晶片、4 カバー、5 水晶保持端子、6 回路端子、7 実装端子、8 励振及び引出電極、9 導電性接着剤、10 VC−TCXO、11 温度センサ、12 緩衝増幅器、13 IC端子、14 バンプ、15 絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと水晶片とを容器本体に収容して少なくとも水晶片を密閉封入し、前記容器本体の平面視矩形状とした外底面に前記ICチップと電気的に接続した実装端子を備え、
前記ICチップは発振閉ループ内に制御電圧の印加される電圧可変容量素子を挿入した第1発振出力機能及び前記水晶片3に起因した周波数温度特性を補償する少なくとも温度センサを有した温度補償機能からなる基本的機能と、前記基本機能以外の第2発振出力機能、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能からなる付加的機能とを有するとともに、
前記ICチップの回路形成面となる一主面にはIC端子を有し、前記IC端子は少なくとも前記基本的機能に対応した一対の水晶端子、電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子からなる基本的IC端子と、前記付加機能に対応した付加的IC端子とを有し、
前記実装端子は前記基本的IC端子のうちの一対の水晶端子を除く電源端子、第1発振出力端子、制御電圧入力端子及びアース端子に電気的に接続した基本的実装端子と、前記付加的機能に対応して電気的に接続した付加的実装端子とを有する電圧制御型とした温度補償水晶発振器において、
前記ICチップの付加的IC端子は2個とし、前記付加的IC端子の2個は前記第2発振出力機能、第1発振出力の動作・非動作機能及び温度電圧出力機能のうちのいずれか2個と前記回路形成面の表面層の回路パターンの変更によって選択的に接続され、
前記基本的実装端子は前記容器本体の外底面の4角部として、前記付加的IC端子の2個と接続する付加的実装端子の2個は前記外底面の対向する長辺の中央部に設けたことを特徴とする電圧制御型の温度補償水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記ICチップは前記基本的IC端子と付加的IC端子とを第1絶縁膜上の第1表面層に有し、前記基本的IC端子と前記付加的IC端子のうちのいずれか2個の付加的IC端子とを前記第1表面層を覆う絶縁膜上となる第2表面層に電気的に延出した電圧制御型の温度補償水晶発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記付加的機能のうちの第2発振出力機能を不要とした場合、前記第1発振出力機能の動作・非動作機能は前記第1発振出力機能を直接に動作又は停止とした電圧制御型の温度補償水晶発振器。

【図2】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−205563(P2011−205563A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73077(P2010−73077)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】