説明

多結晶半導体材料、特にシリコンを取得する方法及び装置

多結晶シリコンを取得する装置は:そのシリコンに対して石英で作られ、カップ形状のグラファイト容器(4)において除去可能に収納された少なくとも1つのるつぼ(3);固定された底部ハーフシェル(6)及び垂直に可動式である上部ハーフシェル(7)を含む流体密封のケーシング(5);グラファイトプレート(14)が介在した状態でそのるつぼに向かい合って配置された上部誘導コイル(12)、そのグラファイト容器の側壁(17)の周りに配置された側部誘導コイル(16)及びそのグラファイト容器の底壁(19)に向かい合って配置され、その底壁からの距離(D)を変更するために垂直に可動式である底部誘導コイル(18);及び、誘導コイルのお互いに別々のa.c.電力供給に対する手段(20);を含み、少なくともその側部誘導コイル(16)は、お互いに重なり合って配置された複数の平面の巻き(13a...13e)、及びそれらの巻きを全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に選択的に短絡させ、供給する又は供給しないための及びそれらの供給の周波数を全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に変更するための手段(25)を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶半導体材料、特にシリコンをその半導体材料の融解及びそれに続くその半導体材料の方向性凝固によって取得する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「ソーラー純度(solar purity)」として呼ばれる高い純度を有する半導体材料、特にシリコンに対する需要は、その材料が高効率の光起電力セルの生産において必要な限りますます高くなっている。
【0003】
そのような材料を取得するために、精製が従来の治金学的方法によって最初に行われ、最後に、インゴット(ingot)が形成される。そのインゴットから、光起電力セルの生産に必要なウエハを次に分割することができる。そのインゴットは、「方向性凝固システム」(DSS)として知られる方法で、すなわち、その半導体材料をるつぼにおいて融解し、次にその方向性凝固が生じるようにして最後に多結晶シリコンを取得することによって、形成される。
【0004】
方向性凝固を取得するためには、そのるつぼにおいて、1‐2 cm/hの凝固先端の前進を得るような冷却率を得るように形成されているインゴットの垂直温度勾配を維持することによって凝固を起こすことが必要である。当該技術の利点は、その出発原料において存在する不純物が、溶融物質において優先的に残り、その結果、凝固先端とともに上向きに上昇する。一度そのインゴットが凝固すると、結果として、精製された多結晶シリコンを望まれる純度で得るように、そのインゴット自体の上部分を除去するのに十分である。
【0005】
前記の結果を得るためには、熱流の非常に正確な制御を与えること、特に、そのるつぼからの熱の如何なる側部の漏洩、すなわち垂直である凝固先端の前進の方向を横切る方向における熱流も防止することが可能であることが必要である。周知のDSS炉において、電気抵抗器が備えられるか又は誘導加熱が備えられても、これは重い絶縁層を使用することによって得られ、その炉の費用及び全体の寸法を増やし、その結果として、それを管理するためのエネルギー消費のレベルを増加させる。さらに、その精製されるべき固体半導体材料の溶融のステップは、長時間と高いレベルのエネルギー消費を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、通常は実施がシンプル且つ安価な「ソーラー」程度の純度を持つシリコンである多結晶半導体材料を取得する装置及び方法を提供することによって、従来技術における欠点を克服し、熱流の信頼性が高く効果的な制御を可能にし、必要な器具の全体の寸法及びエネルギー消費のレベルの低減を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本文献において、「ソーラー」程度の純度は、高効率の光起電力セルを生産するために必要な純度の程度を意味する。
【0008】
本発明は、従って、請求項1によると、通常、ソーラー程度の純度を持つ多結晶シリコンを取得するための半導体材料の融解及びそれに続く方向性凝固に対する装置に関し、また、請求項9によると、通常はシリコンであるソーラー程度の純度を持つ多結晶半導体材料を、その半導体材料の融解のステップ及びそれに続くその半導体材料の方向性凝固のステップによって取得する方法に関する。
【0009】
特に、当該装置は、本発明によると:精製されるべき半導体材料が含まれるるつぼを収納するカップ形状のグラファイト容器の底壁からの距離が使用中に可変であるように、垂直に可動式である少なくとも1つの底部誘導コイル;及び、同軸に配置され、その垂直方向において互いに重なり合って置かれた複数の巻きを有する少なくとも1つの側部誘導コイル;及びそれらの巻きを、全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に選択的に短絡させる、又はそれぞれを、全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に、a.c.電源供給手段に接続する又は該a.c.電源供給手段から接続を切る手段;を含む。さらに、少なくともその側部誘導コイルは、それらの巻きの電源供給の周波数を全て一緒に、又は一度に1つ以上を別々に、少なくとも2つの異なる値の間でグラファイト及び/又はそのるつぼに含まれる半導体材料の選択的な加熱を、一度後者が伝導温度に達すると誘導によって生成するように変更する手段を含む。
【0010】
その巻きの電源供給の周波数を変更する手段は、それらの巻きを選択的に短絡させる又はそれぞれをそのa.c.電力供給手段に接続するか若しくは該a.c.電力供給手段から接続を切るための手段に結合されたキャパシタの第1バッテリ及びキャパシタの第2バッテリを含む。それらの巻きを選択的に短絡させる又はそれぞれをそのa.c.電力供給手段に接続するか若しくは該a.c.電力供給手段から接続を切る手段は、代わりに、適切に接続されたスイッチ列を含む。
【0011】
本発明の方法によると、凝固のステップは:
‐少なくとも1つの底部誘導コイルを無効化するが、それの巻きにおける循環において冷却剤の流れを維持するステップ;
‐その底部誘導コイルを、るつぼの下に配置された底サセプタと実質的に接触するまでそのるつぼに近づけるステップ;
‐その少なくとも1つの側部誘導コイルの1巻きが垂直方向においてお互いに同軸に設置されると、その融解半導体材料がそのるつぼにおいて占領する少なくとも全体の高さを使用中に覆うように、るつぼの側部の熱漏洩を補償するようにそのるつぼに沿って配置されたサセプタにおいて熱の局所生成を誘導によって成し遂げるような方法で、その少なくとも1つの側部誘導コイルの1つ以上の巻きを選択的又はお互いから独立して駆動させる又は無効化するステップ;及び
‐一度にその側部誘導コイルの少なくとも1つの巻きを選択的に短絡させ、その短絡させる巻きは、その半導体材料の凝固先端の後を実質的に追う電磁場のシールドをその/それらの巻きと共に形成するように、次第に高くなって配置された巻きの中から選択される、ステップ;を含む。
【0012】
さらに、その融解ステップは:
‐そのるつぼに関して底部、上部、及び側部に配置された誘導コイルを駆動させ、それらに対してあらかじめ設定された第1周波数(キロヘルツの単位にある)で、電磁誘導によってそのるつぼを取り囲むグラファイト・サセプタの加熱を生成するように供給するステップ;及び
‐その半導体材料がそのサセプタによって伝導性になる温度に加熱されると直ちに、少なくとも1つの側部誘導コイル、及び場合によっては少なくとも1つの底部誘導コイルの少なくともいくつかの巻きのサプライの周波数を、あらかじめ設定された第2周波数に(数十ヘルツから数百ヘルツの単位によって)減らすステップであり、その電磁誘導は、その半導体材料に直接影響を与える、ステップ;を含む。
【0013】
このような方法で、その融解ステップは、必要な熱の少なくとも一部分が融解するべき材料内で直接発達する限り、速い方法で減少したレベルのエネルギー消費で達成でき、実際に、それらのサセプタによる照射による如何なる漏洩もさらに制限する。さらに、それらの周波数において適切に作用することによって、その融解材料におけるかくはん(stirring)の誘導効果が得られ、その効果はそれを完全に均一にし、方向性凝固を実施するための理想的な状態にもってくる。
【0014】
後者のステップの間に、適切な温度センサを使用し、そして干渉することによって、その読み出しに基づいて、個々の誘導コイルにおいて、熱流の極度に良い制御を維持することがさらに可能であり、特に、側部誘導コイルの巻きを、短絡させる及び/又は別々に供給することが可能であることを利用して、無効化された底誘導コイルを冷却素子として使用する。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は、付属の図面の図に関して例を手段として説明される、次の非限定的な例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従って取得され、処理されるべき半導体材料の負荷を可能にするように設計された構成において示した、半導体材料の融解及びそれに続く方向性凝固に対する装置の垂直対称の軸に平行な方向における断面の高さ方向の概略図である。
【図2】稼働している動作構成における図1の装置を、再度断面において高さ方向に示す図であり、その半分だけが示され見えない部分対照的である、図である。
【図3】図1の装置の構成的詳細を再度断面において高さ方向に概略的な方法で、拡大された寸法で示した図である。
【図4】図2の装置の構成的詳細を再度断面において高さ方向に概略的な方法で、拡大された寸法で示した図である。
【図5】図1及び2の装置のいくつかの構成要素を再度概略的に拡大された寸法で示した図である。
【図6】図1及び2の装置のいくつかの構成要素を再度概略的に拡大された寸法で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
図1から4を参照すると、全体として1で示されている装置は、通常ソーラー程度の純度を持つ多結晶シリコンを取得するために半導体材料2の融解及びそれに続く方向性凝固に対する装置である。
【0018】
装置1は:半導体材料2に対する、望ましくは石英又はセラミック材で作成され、カップ形状のグラファイト容器において取り外し可能に格納された、少なくとも1つのるつぼ;及び、流体密封のケーシング5を含み、そのケーシングは内部にカップ形状のグラファイト容器4を有し、カップ形状の底部ハーフシェル(half shell)6及び上部ハーフシェル7によって範囲が定められ、後者は望ましくはスチールで作成されており、通常、お互いの上部に結合され(図2)、それらの凹面は互いに向かい合っており、それぞれの端部8、9には流体密封において共に接合された適切なガスケット(非表示)が備えられている。
【0019】
装置1は、さらに、底部ハーフシェル6は、ケーシング5が、グラファイト容器4へのアクセスを可能にするために図1に示される「開放」構成を取るような方法で、適切な場合、上部ハーフシェル7を底部ハーフシェル6から垂直に動かす手段10をさらに有する。本発明の1つの態様に従って、底部ハーフシェル6は、例えば、地面において停止している脚部11に固定して垂直に搭載されている一方、上部ハーフシェル7は、支持構造部11によって垂直に可動である方法で支持されており、それは、その上部ハーフシェル7が底部ハーフシェル6から離れて、又はそれに向けて動かされることを可能にするように周知のタイプの動作手段10をさらに支持する。
【0020】
装置1は、さらに、本発明の1つの態様に従って:少なくとも1つの上部誘導コイル(又は多数の別々の誘導コイルの「ブロック」)12であり、平面らせんに従って形作ってもよい巻き13を有し、それらの巻きのそれぞれは、例えば、グラファイトプレート14が少なくとも介在して、そのグラファイト容器4の口15に向かい合って設定された、上部誘導コイル;使用中に、ハーフシェル6、7が共に結合されている(図2)とき、グラファイト容器4の側壁17の周りに設置される少なくとも1つの側部誘導コイル16(又は多数の別々の誘導コイルの「ブロック」);及びグラファイト容器4の底壁19に直接向かい合って設置された底部誘導コイル18;を含む。
【0021】
最後に、装置1は:誘導コイル12、16及び18を別々に且つ互いから独立して供給するための、結果として単にブロックで概略的に表わされている周知であるa.c.電力供給手段20;及び誘導コイル12、16及び18の巻き13内で冷却を供給するための、結果としてブロックで概略的に表わされる冷却手段21であり、それらの巻きは、管状素子によって構成される限り空洞である、冷却手段21;を含む。
【0022】
本発明に従って、底部誘導コイル18は、使用中において、底壁19からのその距離D(図3)を変えることが可能であるように垂直に可動であり、一方その少なくとも1つの側部誘導コイル16(図5及び6)は、複数の巻き13a…13eを含み、各巻きは、1つの同じ平面における展開を有し、それらは、ハーフシェル6、7の対称の軸Aに関して同軸に設定され、垂直方向においてお互いの上に重なり合って設置され、お互いから独立しているように形作られている。
【0023】
特に、巻き13a…13eの各々は、関連の銅管によって形成され、1つの同じ平面においてリングを形成するように曲げられており、対称の軸Aを有し、隣り合って設置された2つの対向する端部22で終わり、その巻きによって形成されるリングの外側において半径方向に突き出すように角度を形成するように曲げられている。巻き13a…13eは、全てが同じ寸法を有しており、従って垂直である軸Aの延長部の方向においてお互いの上にひとまとめに設置されており、関連するバイス(vices)23によって単一の機能ユニットにおいて一緒に保持されている。端部22は、コネクタ24を備え、それらは冷却手段21へその水力接続をするように設計されている(ポンプが備えられた周知の流体回路(hydraulic circuit)によって定義されるが、簡略化のため非表示)。また、端部22は、供給手段20への電気接続を備えている。
【0024】
上記の特徴と組み合わせて、少なくとも1つの側部誘導コイル16(図5)はさらに、巻き13a…13eを選択的に(本発明の第1態様に従って)又は1つ以上を一度に別々に短絡させるため、及び/又は、本発明の他の態様に従って、全て一緒に又は一度に1つ以上をa.c.電気供給手段20にそれぞれ接続させる又はそれから切断するために、図5においてブロックとして、及び図6において可動クリップとして全体的に概略的に表わされている電気接続手段25を備え、そのクリップは、電気コネクタ24に作用するように設計されている。
【0025】
特に、上記にそれらの機能的態様において記載された手段25は、一度、割り当てられた機能が定義されると、当業者に対して明らかな方法で適切に接続されたスイッチ25bの列(bank)を含むように実装することができ、それは、結果的に詳しくは記載されない。実際に、スイッチ25bは、図6におけるクリップによって概略的に表わされる巻き13を一度に1つ以上短絡させる機能及び供給手段20へ/からの巻き13a…13eの選択的な接続/切断の機能の両方を実施することができるということは明らかである。本発明の1つの態様に従って、供給手段が、巻き13a…13eの少なくともいくつかを、図5に概略的に表わされるように直列に又は並列のいずれか一方で供給してよい。又は、他の場合には、異なる変換器20によってお互いから独立して供給してもよい。その変換器は、従って、各巻き13a…13eを異なるパワー及び周波数で制限して供給してよい。実際には、誘導コイル16は、如何なる方法にでも接続することができる複数の別々の単一の巻きの誘導コイルによって構成されているかのようである。
【0026】
本発明の最後の態様ではあるが、決して最も重要度が低くはない態様に従い、少なくとも側部誘導コイル16は(及び、場合により底部誘導コイル18もまた)、巻き13の電力供給の周波数を、全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に、2つの異なる値の間で、壁17及び19が形成されるグラファイト及び/又はるつぼ3に含まれる半導体材料2の選択的加熱を(後者が一度伝導温度に達すると(例えばシリコンは約900℃))誘導によって生成するように、変更するための手段26(図5においてブロック25に一体化されているとして示される)を含む。
【0027】
適切に示された場合において、その巻き13a…13eの電力供給の周波数を変更する手段26は、概略的に示された、電気接続手段25に結合され、特にスイッチ25bの列(バンク(bank))に電気接続されたキャパシタの第1バッテリ27及び第2バッテリ28を含む。
【0028】
巻き3の供給の周波数の変化は、使用中にグラファイト素子17、19及び半導体材料2それ自体の両方を含むようになる磁場の選択的且つ局所化された変化を生成する。全体として見なされる誘導コイル16によって生成される磁場のさらなる又は代替の局所変化は、従って、例えばa.c.電力供給手段20から1つ以上の巻き13の接続を切ることによって、それらの全体的な誘導の変化を生じさせることによって得ることができる。
【0029】
望ましい実施形態において、底部ハーフシェル6は、その内部において断熱素子29及び底部誘導コイル18及び手段30によってグラファイト容器4を支持する。その手段30は、ブロックで概略的に表わされている、そのグラファイト容器4の底壁19から離れて及びそれへ向かって後者を垂直に動かすための手段である。その手段30は、ステム(stem)31の上下移動に対して作用する如何なる周知のモーターによっても構成することができ、そのステムは、それの上端部で平面誘導コイル18を固定して支持し、それの内部に冷却手段21及びその誘導コイル18専用のa.c.供給手段20への水力及び電気接続ラインを持っている。
【0030】
代わりに、上部誘導コイル12及びグラファイトプレート14、側部誘導コイル16及び他の絶縁素子29は、互いに結合されているハーフシェル6、7を持つグラファイト容器4(図2)を取り囲み、互いに離れているハーフシェル6、7を持つグラファイト容器4(図1)を覆われないままにするように、上部ハーフシェル7に関して固定されている。周知技術に従って、グラファイト容器4の側壁17及び底壁19及びグラファイトプレート14は、それぞれ、少なくとも1つの側部誘導コイル16、少なくとも1つの底部誘導コイル18及び少なくとも1つの上部誘導コイル12に対する電磁サセプタを構成するような構成及び寸法を有し、サセプタは、それらに動作可能に関連している。
【0031】
特に、注目すべきは、絶縁素子29は、ハーフシェル6、7が結合されている状態において、少なくとも1つの底部誘導コイル18が内部に設置された区画を定めることから、そのコイルは、それに関連するサセプタ19に直接向かい合う。一方、絶縁素子29は、誘導コイル12及び16が望ましくは前記区画の外側に代わりに配置され、従って、サセプタ14、16が関連している絶縁素子29がそれらの間に設置されるように、サセプタ14、17、19を取り囲む。
【0032】
周知の方法において、記載された装置1は、ケーシング5が、流体密封の方法において密封され、従って、ハーフシェル6、7が結合された状態で、そのケーシングにおいて真空を生成するための、ブロック(図2)によって示される周知の手段32、及びそのハーフシェル6、7が結合された状態でケーシング5によって範囲が定められる作動室内において、望ましくはアルゴンである不活性ガスを循環させるための、ブロック(図2)によって示される周知の手段33も含む;本発明の1つの態様によると、グラファイト容器4の側壁17には、不活性のガスの循環に有利に働き、従ってそのケーシング5内において絶縁支持素子29によって定められる断熱室内の熱流のバランスに貢献するように、複数の直通の垂直スリット34(図3、4)が備えられている。
【0033】
本発明の最後の態様によると、その冷却手段21は、それらによって使用される、誘導コイル12、16、18のうち少なくとも1つの中空の巻き13(例えば誘導コイル18の)において循環する冷却剤は、水の代わりに透熱オイルであってよい。このようにして、ケーシング5内の冷却剤のいかなる漏洩の場合においても、融解又は方向性凝固のプロセスの間、又はるつぼの故障及びその結果として底部ハーフシェル6における溶融シリコン2の漏れの場合に、シリコンと水との可能な化学反応における結果としての爆発の危険性は無い。
【0034】
記載されてきた内容に基づいて、装置1により、通常はシリコンであるソーラー程度の純度を持つ多結晶半導体材料を取得するための方法を効果的に実施することが可能であることが明確である。その方法は、半導体材料2の融解のステップ、及び、それに引き続いて、少なくとも3つの誘導コイルを使用することによって得られる半導体材料2それ自体の方向性凝固のステップである。適切な場合において、それらのコイルは、交流電流においてお互いに独立して別々に供給することができ、グラファイト・サセプタ14、17及び19が介在して、半導体材料2を含むるつぼ3の上部、底部及びそれに沿ってそれぞれ配置された誘導コイル12、16及び18である。特に、本発明の方法によると、その凝固は:
‐底部誘導コイル18の機能を停止させるが、それの巻き13における循環において冷却剤の流れを維持するステップ;
‐底部誘導コイル18を、るつぼ3の下に設置された底部サセプタ19と実質的な接触をするまでそのるつぼ3に近づけるステップ;
‐巻きが垂直方向においてお互いに同軸に設置されると、溶融半導体材料2によって、るつぼ3において占める少なくとも全体の高さを使用中に覆うように、側部誘導コイル16の1つ以上の巻き13a…13eを選択的且つお互いから独立して駆動させる及び機能停止させるステップであり、るつぼ3自体の横方向の熱漏洩を補償するように、そのるつぼ3に沿って設置されたサセプタ17における熱の局所形成を導入することによって成し遂げるような方法で、上記の巻きを駆動させる及び機能停止させるステップ;及び
‐側部誘導コイル16の少なくとも1つの巻き13a…13eを一度に選択的に短絡させるステップであり、その又はそれらの巻きが次第に高いところに設置されたもの(すなわち、13e…13a)から短絡するように選択し、そうすることによって、その半導体材料2の凝固先端を実質的に追跡する電磁場のシールドをそれ/それらと共に形成する、ステップ;によって得られる。
【0035】
再度、本発明の決して重要度が低くない態様によると、その融解ステップは:
‐誘導コイル12、16及び18を作動させ、サセプタ14、17、19の加熱を電磁誘導によって生成するように事前に設定された第1周波数でそれらを供給するステップ;及び
‐半導体材料2がサセプタによって伝導性になるような温度(例えば、シリコンに対して約900℃)に加熱されると直ちに、側部誘導コイル16及び場合により底部誘導コイル18の少なくともいくつかの巻き13の供給の周波数を、その電磁誘導の少なくとも1部分が半導体材料2に直接影響する事前に設定された第2周波数に減らすステップ;によってなし遂げられる。
【0036】
事前に設定された第1周波数は、通常は約2kHzの周辺であるキロヘルツの範囲において選択され、一方で、事前に設定された第2周波数は、通常約500Hzである、2、3ヘルツから200、300ヘルツまでの範囲において選択される。シリコンが伝導温度にある状態で、500Hzの周波数は、供給手段20によって供給される電力の約30%のシリコンにおいて電力の直接供給を保証すると見なされている一方、50Hzでは、その供給手段20によって供給される全ての電力が、シリコンに入る。
【0037】
最後に、本発明の方法によると、方向性凝固のステップを実施する少なくとも前に、その融解状態及び/又は初期の融解の状態における半導体材料2は、磁場の周波数及び/又は強度の半導体材料2において局所変化を生じさせることによってそれの均一化を起こすようにかき混ぜられる。そうすることによって、その材料2それ自体において対流運動が生成される。前記磁場の局所変化は、サセプタ14、17、19を加熱するための使用される周波数よりもいくつかの単位低い適切な周波数で側部誘導コイル16の巻き13a…13eの少なくともいくつかを供給することによって及び/又はその側部誘導コイル16の少なくとも1つの巻き13a…13eを、それの誘導を変更するように供給しないことによって得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常はソーラーの程度の純度を持つ多結晶シリコンを取得するための、半導体材料の融解及びそれに続く方向性凝固に対する装置であり:望ましくは石英又はセラミック材料で作られ、カップ形状のグラファイト容器において除去可能に収納された、前記半導体材料に対する少なくとも1つのるつぼ;少なくとも1つのグラファイトプレートが介在した状態で、前記グラファイト容器の口に向かい合って配置された少なくとも1つの上部誘導コイルであり、前記少なくとも1つのグラファイトプレートが動作可能に関連している、少なくとも1つの上部誘導コイル;前記グラファイト容器の側壁の周りに使用中に配置される少なくとも1つの側部誘導コイル;前記グラファイト容器の底壁に直接向かい合って配置された少なくとも1つの底部誘導コイル;前記誘導コイルを別々にお互いに独立して供給するa.c.電力供給手段;及び前記誘導コイルの関連する中空の巻きの内部で冷却剤を供給する冷却手段;を含み、組み合わせにおいて:
‐前記少なくとも1つの側部誘導コイルは、垂直方向においてお互いに重なって配置された複数の巻き、及び該巻きを全て一緒にもしくは一度に1つ以上を別々に選択的に短絡させるか、又は前記巻きを全て一緒にもしくは一度に1つ以上を別々に前記a.c.電力供給手段にそれぞれ接続させる又は該a.c.電力供給手段からの接続を切る手段を含み;
‐前記少なくとも1つの側部誘導コイルは、前記グラファイト及び/又は前記るつぼにおいて含まれる半導体材料の選択的加熱を、前記半導体材料が伝導温度に一度達すると誘導によって生成するように、前記巻きの電力供給の周波数を全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に、少なくとも2つの異なる値の間で変更する手段を含む;
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり:流体密封のケーシングであり、内部に前記グラファイト容器を収納し、底部ハーフシェル及び上部ハーフシェルによって範囲が定められ、前記底部及び上部ハーフシェルは、カップ形状であり、前記底部及び上部ハーフシェルの凹面が互いに向かい合った状態でお互いに重なって結合されている、流体密封のケーシング;及び、前記グラファイト容器へのアクセスを可能にするために前記底部ハーフシェルから前記上部ハーフシェルを垂直に離れる方向に動かす手段;をさらに含むことを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であり、前記少なくとも1つの底部誘導コイルは、該少なくとも1つの底部誘導コイルの前記底壁からの距離を使用中に変更することが可能であるように垂直に可動式である;ことを特徴とし、前記底部ハーフシェルは、該底部ハーフシェルの内部に前記グラファイト容器を断熱素子によって支持し、前記少なくとも1つの底部誘導コイル及び該少なくとも1つの底部誘導コイルを前記グラファイト容器の底壁から離れて及び該底壁へ向けて垂直に動かす手段も支持する、ことを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の装置であり、前記底部ハーフシェルは垂直に固定して搭載され、一方、前記上部ハーフシェルは、前記底部ハーフシェルから離れて又は該底部ハーフシェルへ向けて動かされることが可能であるように支持構造部によって垂直に可動式に支持されている;ことを特徴とし、前記少なくとも1つの上部誘導コイル及び少なくとも1つの側部誘導コイルは、両方とも、前記上部及び底部ハーフシェルが結合された状態で前記グラファイト容器を絶縁素子が介在した状態で取り囲み、前記上部及び底部ハーフシェルが互いから離れて動いた状態で、前記グラファイト容器を覆われていないままに残すような方法で、前記上部ハーフシェルによって固定して運ばれる、ことを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の装置であり、前記上部及び底部ハーフシェルが結合された状態で、前記ケーシングにおいて真空を生成する手段及び前記上部及び底部ハーフシェルが結合された状態で、望ましくはアルゴンである不活性ガスを前記ケーシングにおいて循環させる手段;を含み、前記グラファイト容器の側壁には、前記不活性ガスの循環を促すように複数の直通の垂直スリットが備えられている、ことを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の装置であり、前記グラファイト容器の側壁及び底壁及び前記グラファイトプレートは、前記少なくとも1つの側部誘導コイル、底部誘導コイル及び上部誘導コイルに対して、電磁サセプタをそれぞれ構成するような構成及び寸法を有することを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の装置であり、前記巻きの電力供給の周波数を変更する手段は、前記巻きを全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に選択的に短絡させるか、又は前記巻きを全て一緒に又は一度に1つ以上を別々に前記a.c.電力供給手段にそれぞれ接続する又は該a.c.電力供給手段から接続を切る手段に結合されている、キャパシタの第1バッテリ及びキャパシタの第2バッテリを含むことを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の装置であり、前記誘導コイルのうち少なくとも1つの中空の巻きにおいて循環する冷却剤は、透熱性オイルであることを特徴とする、装置。
【請求項9】
通常はシリコンであるソーラーの程度の純度を持つ多結晶半導体材料を、該半導体材料の融解のステップ、及びそれに続く、交流電流において別々に且つお互いに独立して供給することができ、グラファイト・サセプタが介在した状態で前記半導体材料を含むるつぼの上部、底部及び該るつぼに沿ってそれぞれ配置された少なくとも3つの誘導コイルを使用することによって取得される該半導体材料の方向性凝固のステップによって取得する方法であり;該方向性凝固のステップは:
‐前記少なくとも1つの底部誘導コイルを無効化するが、該底部誘導コイルの巻きにおける循環において、冷却剤の流れを維持するステップ;
‐前記少なくとも1つの側部誘導コイルの巻きが、垂直方向においてお互いに同軸に配置されると、前記るつぼにおいて占領される少なくとも全体の高さを、使用中に前記溶融半導体材料によって覆うように、前記るつぼの側部熱漏洩を補償するように該るつぼに沿って配置されたサセプタにおいて熱の局所生成を誘導によって成し遂げるような方法で、前記少なくとも1つの側部誘導コイルの1つ以上の巻きを選択的に且つお互いから独立して駆動させ無効化するステップ;及び
‐前記少なくとも1つの側部誘導コイルの少なくとも1つの巻きを一度に選択的に短絡させ、前記少なくとも1つの巻きが、前記半導体材料の凝固先端を実質的に追う電磁場のシールドを前記巻きで形成するように、次第により高く配置された巻きのうちから短絡されるべき巻きを選択する、ステップ;
によって得られる、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であり、前記融解のステップは:
‐前記底部、上部及び側部誘導コイルのうち少なくとも1つを、前記サセプタの過熱を電磁誘導によって生成するように第1の事前に設定された周波数で供給することによって、前記底部、上部及び側部誘導コイルのうち少なくとも1つを駆動させるステップ;及び
‐前記半導体材料が前記サセプタによって伝導性となるような温度に加熱されると直ちに、前記少なくとも1つの側部誘導コイル、及び場合により前記少なくとも1つの底部誘導コイルの少なくともいくつかの巻きの供給の周波数を、前記電磁誘導の少なくとも一部が前記半導体材料に直接影響を与えるようになる第2の事前に設定された周波数まで減らすステップ;
によって得られることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、前記第1の事前に設定された周波数は、キロヘルツの範囲において選択されるが、前記第2の事前に設定された周波数は、2、3ヘルツから数百ヘルツまでの範囲において選択されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のうちいずれか1項に記載の方法であり、前記方向性凝固のステップを実施する少なくとも前に、前記溶融状態及び/又は初期の溶融状態にある前記半導体材料が、かき混ぜ運動を内部に生成するように磁場の周波数及び/又は強度の半導体材料において局所変化を起こすことによって、該半導体材料の均一化を起こすために掻き混ぜられることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、前記磁場の局所変化は、前記少なくとも1つの側部誘導コイルの少なくともいくつかの巻きを、前記サセプタを加熱するために使用された周波数よりもいくつかの桁分低い適切な周波数で供給することによって及び/又は前記側部誘導コイルのインダクタンスを変更するように該側部誘導コイルの巻きのうち少なくとも1つを供給しないことによって得られることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項9乃至11のうちいずれか1項に記載の方法であり、前記少なくとも1つの底部誘導コイルを無効化するが、該少なくとも1つの底部誘導コイルの巻きにおける循環において冷却剤の流れを維持するステップの後に、前記底部誘導コイルは、該底部誘導コイルが、前記るつぼの下に配置された底部サセプタに実質的に接触するまで前記るつぼに近づけられることを特徴とする、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−508251(P2013−508251A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534787(P2012−534787)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002685
【国際公開番号】WO2011/048473
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512105048)サエト ソシエタ ペル アチオニ (2)
【Fターム(参考)】