説明

多芯ケーブルの接続部及びその接続方法

【課題】多芯ケーブルの各導体と被接続部材上の電極端子とを、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる、多芯ケーブルの接続部及びその接続方法を提供すること。
【解決手段】断面略円形であって、単線、もしくは、撚り線からなる導体3、5の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブル1の導体3、5と、導体3、5に対応して被接続部材7上に平面的に形成された電極端子8、9とを、異方性導電材10、11を用いて接続することにより構成された、多芯ケーブル1の接続部において、異方性導電材10、11が、樹脂12内部に半田粒子13を分散させた硬化前のペースト状の状態で導体3、5と電極端子8、9との間の被接続部に供給されると共に、半田粒子13の融点以上の温度に加熱されて、樹脂12が加熱硬化されて構成されるものである、多芯ケーブル1の接続部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板上の電極端子に多芯ケーブルの各導体を接続する、多芯ケーブルの接続部及びその接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の分野においては、例えばノートパソコンや携帯機器の普及により電子機器の小型化、軽量化が求められている。また、これらの機器では、例えばコントローラとなる部品等と液晶表示装置を構成する部品等を3次元的に可動可能なヒンジを利用して配線により接続することにより、機器の高機能化が図られている。また、この配線に使用するケーブルとしては、電気信号を授受する必要があることから、屈曲性に優れ、且つ、ノイズ特性に優れた極細同軸ケーブルを使用することが多くなっている。
【0003】
配線にあたって、使用ケーブルを複数本まとめて、各導体を並列配置した構成の多芯ケーブルを、例えばプリント基板上の電極端子に接続する際は、普通、プリント基板上の電極端子に多芯ケーブルの各導体を夫々直接半田付けしたり、プリント基板に着脱可能なコネクタ上の電極端子に多芯ケーブルの各導体を夫々半田付けすることが行われている。
【0004】
しかし、近年、電子機器の高密度実装化により多芯ケーブルの各導体と接続される前記電極端子のピッチが一段と狭くなりつつあり、接続時の半田による、隣接する導体間及び電極端子間の短絡の恐れや接続作業上の問題から、半田付けに替わる狭ピッチ接続可能な接続方法として、異方性導電材を用いた接続方法が検討されるようになっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数本の同軸ケーブルを備えた多心ケーブルの中心導体と回路基板の導体パターン部とを、針形状、または微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状を有する導電性粒子が、絶縁性の樹脂中に分散された構成の異方導電性接着剤を用いて、加圧加熱することにより接続する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、複数本の同軸ケーブルを備えた多心ケーブルの露出した外部導体を、樹脂中に半田粒子を分散させたフィルム状接着剤を介して、グランドバーに接続する方法が開示されている。前記半田粒子は、接続時に熱が加えられると、溶融して変形する。このため、前記半田粒子を含む前記フィルム状接着剤を用いた接続方法においては、接続時の加熱により前記半田粒子が溶融して変形し、接続対象物である外部導体の表面の一部を覆い、または、外部導体の隙間に入り込むことにより、外部導体とグランドバーとを電気的に安定して接続できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−134126号公報
【特許文献2】特開2009−29841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般にケーブルの導体は、断面略円形であり、プリント基板等の電極端子は、プリント基板等上に平面的に形成されている。このため、両者の接続部は、基本的に円形の曲面と平面との点接触により構成される。
【0009】
このことから、特許文献1に記載の異方導電性接着剤を用いた接続方法においては、ケーブル導体の中心線直下が唯一接続に有効な領域であり、この領域に存在する異方導電性接着剤中の導電性粒子のみが、導体と電極端子との間に適正に挟まれて、両者の接続に寄与する。それ以外の領域の導電性粒子は、導体と電極端子との間に挟まれることができないだけでなく、接続に有効な領域の外側に押し出されて、両者の接続に寄与しない。したがって、この接続方法においては、導体と電極端子との接触面積が小さく、両者を十分な電気的導通性を持って接続することができないという問題がある。
【0010】
また、この特許文献1に記載の異方導電性接着剤を用いた接続方法においては、前記導電性粒子として、針形状、または微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状を有する導電性粒子を用いており、その形状から、接続の際に導電性粒子の動きを制限することができるために、導体と電極端子との間に導電性粒子が挟まる確率を高めることができる反面、前記により外側に押し出された導電性粒子が、針形状、または微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状を有することにより、隣接する電極端子間を電気的に橋渡しし易くする結果、隣接する電極端子間が短絡する恐れがあり、これにより導体と電極端子とを十分な電気的信頼性を持って接続することができないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に記載のフィルム状接着剤を用いた接続方法においては、すなわち、フィルム状接着剤を用いて、同軸ケーブルの外部導体とグランドバーとを接続する方法においては、フィルム状接着剤はそのままの形状では外部導体全体をその接着剤中に埋没させることができないため、2枚のグランドバーを利用して、すなわち2枚のフィルム状接着剤付きグランドバーを用いて、上下から外部導体を挟み込むことにより、外部導体全体を接着剤で包囲し、外部導体を含む接続部の機械的強度を確保すると共に、外部導体とグランドバーとの接触面積を増やして、両者を十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って接続できるようにしている。この接続方法において、1枚のフィルム状接着剤付きグランドバーを用いて、同軸ケーブルの外部導体とグランドバーとを接続した場合は、熱圧着中にフィルム状接着剤が外部導体の反対面まで十分回りこまないため、外部導体全体をその接着剤で包囲することができない。これは、フィルム状接着剤は、熱圧着中に粘性が一時的に下がることにより熱圧着中の流動性を得ているが、元々フィルム状態を保持するために粘度の高い材料で作られており、その分熱圧着の際に3〜5MPaの高い圧力をかける必要があるのに対し、同軸ケーブルの外部導体の接続においては、外部導体と中心導体は短絡してはいけないので、特に中心導体を包囲する絶縁体が潰れないように適正な圧力をかけて接続する必要があり、この圧力が通常1MPa以下であるからである。この圧力では、外部導体をフィルム状接着剤中に押し込むことはできても、フィルム状接着剤中に埋没させるまでには至らず、外部導体全体をその接着剤で包囲することはできない。したがって、この接続方法においては、2枚のフィルム状接着剤付きグランドバーを用いて、上下から外部導体をサンドイッチ状に挟み込むしかないのである。
【0012】
しかしながら、この接続方法においては、2枚のグランドバーのうち少なくとも1枚は接続用部材として本来余分なものであり、このような余分な接続用部材を用いることにより接続工程が煩雑になる上、元々グランドバーを利用した接続方法であるため、同軸ケーブルの中心導体とプリント基板等の電極端子との間の接続には採用することができないと共に、隣接する導体間及び隣接する電極端子間の短絡が許されない、狭ピッチの接続構造にはやはり採用することができないという問題がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、多芯ケーブルの各導体と被接続部材上の電極端子とを、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる、多芯ケーブルの接続部及びその接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、断面略円形であって、単線、もしくは、複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブルの前記導体と、前記導体に対応して被接続部材上に平面的に形成された一もしくは複数の電極端子とを、異方性導電材を用いて接続することにより構成された、多芯ケーブルの接続部において、前記異方性導電材が、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態で前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給されると共に、前記半田粒子の融点以上の温度に加熱されて、前記樹脂が加熱硬化されて構成されるものであることを特徴とする多芯ケーブルの接続部を提供する。
【0015】
上記において、前記半田粒子としては、通常のSn−Pb系半田合金や、環境に配慮したSnを中心とするPbフリー半田合金、例えばSn−Ag−Cu系半田合金や、低融点のSn−Bi系半田合金からなる半田粒子を用いることが好ましい。
【0016】
この多芯ケーブルの接続部によれば、上記構成の採用により、特に、前記異方性導電材が、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態で前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給されると共に、前記半田粒子の融点以上の温度に加熱されて、前記樹脂が加熱硬化されて構成されるものであることにより、前記樹脂が加熱硬化される前において、前記導体を前記異方性導電材中に容易に埋没させることができ(換言すれば、前記導体を埋没させた構造とすることができ)、この後前記異方性導電材を加熱して、前記樹脂内部の前記半田粒子を溶融化させると共に前記樹脂を加熱硬化させることにより、前記導体と前記電極端子とを、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。
【0017】
請求項2の発明は、少なくとも前記導体のうち前記接続部を構成する露出された前記導体と、前記電極端子との、いずれか一方に、前記異方性導電材を構成する前記半田粒子と同じ金属もしくは前記半田粒子と同程度の融点を有する他の金属からなるめっきを施してなることを特徴とする請求項1に記載の多芯ケーブルの接続部を提供する。
【0018】
この多芯ケーブルの接続部によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、加熱して前記半田粒子を溶融化させる際に、前記めっきを同時に溶融化させることができ、これにより半田等の溶融金属の量を増加させて接続作業を促進させることができるほか、接続対象物である導体が複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の場合、前記細線中に半田等の溶融金属入り込んで半田等の溶融金属が不足するのを防止することができ、これにより多芯ケーブルの各導体と被接続部材上の電極端子とを、より一層、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。
【0019】
請求項3の発明は、断面略円形であって、単線、もしくは、複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブルの前記導体と、前記導体に対応して被接続部材上に平面的に形成された一もしくは複数の電極端子とを、異方性導電材を用いて接続する、多芯ケーブルの接続方法において、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態の前記異方性導電材を、多芯ケーブルの接続部における前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給して、前記導体を前記異方性導電材中に埋没させた後、加熱ツールにより前記異方性導電材を前記半田粒子の融点以上の温度に加熱して、前記樹脂の硬化速度よりも速く前記半田粒子を溶融化させると共に、前記樹脂の硬化に必要な時間その加熱温度に保持して、前記樹脂を加熱硬化させることを特徴とする多芯ケーブルの接続方法を提供する。
【0020】
この多芯ケーブルの接続方法によれば、上記構成の採用により、特に、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態の前記異方性導電材を、多芯ケーブルの接続部における前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給して、前記導体を前記異方性導電材中に埋没させた後、加熱ツールにより前記異方性導電材を前記半田粒子の融点以上の温度に加熱して、前記樹脂の硬化速度よりも速く前記半田粒子を溶融化させると共に、前記樹脂の硬化に必要な時間その加熱温度に保持して、前記樹脂を加熱硬化させることにより、前記導体と前記電極端子とを、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。また、上記請求項1に記載の接続部を容易に形成することができる。
【0021】
また、この多芯ケーブルの接続方法においては、前記加熱ツールを利用して、常温又は100℃以下の低温状態のまま前記加熱ツールを下降させて、前記導体を前記異方性導電材中に押し込んで埋没させた後、前記加熱ツールを所定の温度に迅速に上昇させる。そして、前記により所定の温度にされた前記加熱ツールにより、前記異方性導電材を前記半田粒子の融点以上の温度に加熱して、前記樹脂の硬化速度よりも速く前記半田粒子を溶融化させると共に、前記樹脂の硬化に必要な時間その加熱温度に保持して、前記樹脂を加熱硬化させることが好ましい。
【0022】
請求項4の発明は、少なくとも前記導体のうち前記接続部を構成する露出された前記導体と、前記電極端子との、いずれか一方に、前記異方性導電材を構成する前記半田粒子と同じ金属もしくは前記半田粒子と同程度の融点を有する他の金属からなるめっきを施してなることを特徴とする請求項3に記載の多芯ケーブルの接続方法を提供する。
【0023】
この多芯ケーブルの接続方法によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、加熱して前記半田粒子を溶融化させる際に、前記めっきを同時に溶融化させることができ、これにより半田等の溶融金属の量を増加させて接続作業を促進させることができるほか、接続対象物である導体が複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の場合、前記細線中に半田等の溶融金属入り込んで半田等の溶融金属が不足するのを防止することができ、これにより多芯ケーブルの各導体と被接続部材上の電極端子とを、より一層、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の多芯ケーブルの接続部及びその接続方法によれば、多芯ケーブルの各導体と被接続部材上の電極端子とを、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多芯ケーブルの接続部を示す説明図(上面図)である。
【図2】図1中A−A´断面図である。
【図3】図1中B−B´断面図である。
【図4】同本発明の一実施の形態に係る、極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの中心導体についての接続方法を示す説明図(斜視図)である。
【図5】同本発明の一実施の形態に係る、極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの外部導体についての接続方法を示す説明図(斜視図)である。
【図6】同本発明の一実施の形態に係る、極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの、中心導体及び外部導体についての接続部を示す説明図(斜視図)である。
【図7】加熱ツールの温度プロファイルと、異方性導電材を構成する樹脂の硬化特性(粘度の変動)を示す、概略説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る、中心導体が単線からなる極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの、中心導体についての接続状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な一実施の形態を図1〜8に基づいて詳述する。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る多芯ケーブルの接続部を示す説明図(上面図)、図2は、図1中A−A´断面図、図3は、図1中B−B´断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態においては、多芯ケーブル1として、8本の極細同軸ケーブル2を(中心導体3の配列ピッチで)0.2mmの配列ピッチで並列配置し、図示しないラミネートテープにより束ねて、全体を固定して構成された多芯ケーブル1を用いる。前記極細同軸ケーブル2は、直径0.016mmの細線を7本撚り合わせた、外径0.048mmの中心導体3と、中心導体3の周上に押出し等により被覆形成された、外径0.11mmの絶縁体4と、絶縁体4の周上に直径0.02mmの細線を横巻きすることにより被覆形成された、外径0.15mmの外部導体(シールド)5と、外部導体5の周上に押出し等により被覆形成された、外径0.2mmのジャケット6とを備えている。中心導体3及び外部導体5の形状は、いずれも断面略円形である。
【0029】
また、図1に示すように、接続部を形成するにあたっては、多芯ケーブル1を構成する前記極細同軸ケーブル2の端末を、CO2レーザまたはYAGレーザ等を用いて段剥ぎすることにより、いずれも外側から外部導体5、絶縁体4、中心導体3を夫々一様な長さに露出させる。
【0030】
一方、多芯ケーブル1と接続される、被接続部材としてのプリント基板7には、前記極細同軸ケーブル2の中心導体3及び外部導体5に対応する電極端子として、並列に配置された複数の信号電極8と、一つの共通グランド電極9とが、元々平面的に形成されている。複数の信号電極8の配列ピッチは、極細同軸ケーブル2の中心導体3の配列ピッチに対応して、0.2mmの配列ピッチ(電極パターンの幅0.1mm、隣接電極間のスペース0.1mm)で形成されている。
【0031】
ここで、中心導体3と信号電極8、及び、外部導体5とグランド電極9を夫々接続して接続部を構成するが、これらの接続部を構成するにあたっては、いずれも、異方性導電材10、11を用いて接続する。異方性導電材10、11は、いずれも、エポキシ系の熱硬化性樹脂12内部にSn−Ag−Cu系のPbフリー半田合金からなる半田粒子13(融点220℃、平均粒径20μm)を分散させた、硬化前のペースト状の状態で前記中心導体3と信号電極8、及び、前記外部導体5とグランド電極9との間の夫々被接続部に供給され、前記半田粒子13の融点以上の温度に加熱されて、前記樹脂11が加熱硬化されて構成されるものである。異方性導電材10、11の供給方法としては、例えば、ディスペンサ等を用いて、平面的に形成された信号電極8及びグランド電極9の表面に塗布する方法を採用することができるが、これに限定されるものではない。また、異方性導電材10、11は、通常、半透明ないし黒色をしているが、図1では、説明を分かり易くするため、点線で表記している。
【0032】
次に、接続部の状態を詳しくみてみると、図2に示すように、中心導体3と信号電極8との接続においては、予め硬化前に信号電極8の表面に塗布された異方性導電材10中に中心導体3を埋没させることにより、中心導体3を異方性導電材10中に固定していると共に、異方性導電材10を半田粒子13の融点以上の温度に加熱することにより、複数の半田粒子13を溶融集合肥大化させ、且つまた、溶融半田を中心導体3を構成する細線や中心導体3と信号電極8との間の近接された隙間に入り込ませるなどにより新たな存在形態とされた、前記半田粒子13を介して、中心導体3と信号電極8とを十分な電気的導通を持って接続しており、また、異方性導電材10を構成する樹脂12を加熱硬化させることにより、中心導体3及び信号電極8を含む接続部の機械的強度を確保している。
【0033】
また、図3に示すように、外部導体5とグランド電極9との接続においては、予め硬化前にグランド電極9の表面に塗布された異方性導電材11中に外部導体5を埋没させることにより、外部導体5を異方性導電材11中に固定していると共に、異方性導電材11を半田粒子13の融点以上の温度に加熱することにより、複数の半田粒子13を溶融集合肥大化させ、且つまた、溶融半田を外部導体5を構成する細線や外部導体5とグランド電極9との間の近接された隙間に入り込ませるなどにより新たな存在形態とされた、前記半田粒子13を介して、外部導体5とグランド電極9とを十分な電気的導通を持って接続しており、また、異方性導電材11を構成する樹脂12を加熱硬化させることにより、外部導体5及びグランド電極9を含む接続部の機械的強度を確保している。なお、外部導体5とグランド電極9との接続では、外部導体5は夫々共通するグランド電極9に接続されて電気回路を構成するので、隣接する外部導体5間の短絡は電気的に問題にならない。
【0034】
図4及び図5は、夫々図2及び図3に対応する、極細同軸ケーブル2を用いた多芯ケーブル1の接続部の接続方法を示すものである。すなわち、図4は、その中心導体3についての接続方法を示すものであり、図5は、その外部導体4についての接続方法を示すものである。
【0035】
図4においては、予め硬化前にプリント基板7の信号電極8の表面にディスペンサ等を用いて異方性導電材10を塗布し、また、同時に、プリント基板7のグランド電極9の表面にもディスペンサ等を用いて異方性導電材11を塗布しておく。ここで、プリント基板7の信号電極8及びグランド電極9に対し、多芯ケーブル1の中心導体3及び外部導体5を夫々精度良く位置合わせする。この状態で、接続部の上方に配置された加熱ツール14を利用して、中心導体3を異方性導電材10中に押し込んで埋没させる。このとき、加熱ツール14を、常温又は100℃以下の低温状態でそのまま下降させて、中心導体3を異方性導電材10中に押し込んで埋没させる。この後、加熱ツール14を所定の温度に迅速に上昇させ、加熱ツール14と接触状態にある異方性導電材10を半田粒子13の融点以上の温度に加熱して、樹脂12の硬化速度よりも速く半田粒子13を溶融化させると共に、樹脂12の硬化に必要な時間その加熱温度に保持して、樹脂12を加熱硬化させる。これにより接続を完了する。
【0036】
因みに、半田粒子13を溶融化させると、溶融半田は自己の持つ表面エネルギーを最小にする挙動をするため、複数の半田粒子13を融合して元の体積よりも大きく溶融集合肥大化させる(直鎖状の形状とはならない)、且つまた、毛細管現象により溶融半田を中心導体3を構成する細線や中心導体3と信号電極8との間の近接された隙間に入り込ませるなどにより、中心導体3と信号電極8とを十分な電気的導通を持って金属的に確実に接続することができる。なお、半田粒子13が溶融集合肥大化された場合でも、中心導体3の配列ピッチは0.2mmであることから、隣接する中心導体3と中心導体3との間隔に対して半田粒子13の粒径は十分小さく、短絡には至らない。
【0037】
また、上記において、加熱ツール14を所定の温度に迅速に上昇させる際は、図7に示すように、加熱ツール14の温度プロファイルと、異方性導電材10を構成する樹脂12の硬化特性(粘度の変動)を参照して、異方性導電材10を半田粒子13の融点以上の温度に迅速に加熱して、樹脂12の硬化速度よりも速く半田粒子13を溶融化させる。本実施の形態においては、加熱ツール14を用いて、5Nの荷重で、中心導体3を異方性導電材10中に押し込み、埋没させた後、加熱ツール14を50℃/秒の速度で250℃まで昇温させた。このとき、異方性導電材10内部の温度は、約230℃である。なお、前記により半田粒子13を溶融化させた後は、その加熱温度を樹脂12の硬化に必要な時間(本実施の形態では約30秒間)保持して、樹脂12を加熱硬化させた。樹脂12を加熱硬化させた後は、加熱ツール14を上昇させ、接続部全体を自然冷却させた。
【0038】
図5は、極細同軸ケーブル2を用いた多芯ケーブル1の外部導体4についての接続方法を示すものである。この接続方法においては、接続の際に加熱ツール14を用いて、2.5Nの荷重で、外部導体5を異方性導電材11中に押し込み、埋没させた以外は、既に述べた、中心導体3についての接続と基本的に同じ方法により接続した。なお、加熱ツール14を用いて、外部導体5を異方性導電材11中に押し込む際の前記荷重は、中心導体3の場合についても言えることであるが、外部導体5とグランド電極9との間の近接された隙間に、毛細管現象により溶融半田が入り込みやすいように、すなわち、前記隙間が半田粒子の粒径以下の狭い間隔となるように、適宜条件設定された荷重である。
【0039】
図6は、以上の接続方法により、異方性導電材10、11を用いて、極細同軸ケーブル2の中心導体3及び外部導体5を夫々プリント基板7上の対応する信号電極8及びグランド電極9に接続して構成された、多芯ケーブル接続部を示すものである。
【0040】
図4〜6に示す実施の形態によれば、中心導体3及び外部導体5についてのいずれの接続部も、接続工程を煩雑化させることなく、異方性導電材10、11を用いた狭ピッチ接続可能な接続方法により、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って夫々接続することができる。また、いずれの接続部も容易に形成することができる。
【0041】
図8は、本発明の他の実施の形態に係るものであり、中心導体3´が単線からなる極細同軸ケーブル2´を用いた多芯ケーブル1´の、中心導体3´についての接続状態を示す説明図である。図2に相当する断面図である。これの内容については、中心導体3´が単線からなる以外は、既に述べた、前記した実施の形態と同じであり、詳しい説明は省略する。
【0042】
また、本発明のいずれの実施の形態においても、別途、接続部を構成する中心導体3及び3´の表面に予め半田めっきを施したものを用い、半田めっき方法としては中心導体3及び3´を半田浴中に浸漬する方法を採用して、同様の接続方法により同様の接続部を形成する、実施例(変形例)を行った。なお、この場合の半田めっきとしては、半田粒子13と同じ金属からなる半田めっきを採用したが、半田粒子13と同程度の融点を有する他の金属からなる半田めっきとして、例えばSn−Ag−Cu系半田合金や低融点のSn−Bi系半田合金からなるいわゆるPbフリー半田めっきを採用することもできる。
【0043】
この変形例においては、異方性導電材10、11を加熱して半田粒子13を溶融化させる際に、前記半田めっきを同時に溶融化させることができ、これにより接続に必要な溶融半田金属の量を増加させて、接続作業を促進させることができるほか、接続対象物である中心導体が複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の場合、前記細線中に溶融半田金属が入り込んで(接続に必要な)溶融半田金属が不足するのを防止することができ、これにより多芯ケーブルの中心導体と被接続部材上の電極端子とを、より一層、十分な電気的信頼性を持って且つ安定した接続構造を持って確実に接続することができる。無論、外部導体に半田めっきを施した場合でも、同じように効果を得ることができる。
【0044】
また、本発明においては、異方性導電材を構成する樹脂として、一般的には長期信頼性の観点から熱硬化性のエポキシ樹脂等を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0045】
また、本発明は、元々、断面略円形の導体の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブルの前記導体と、前記導体に対応して被接続部材上に平面的に形成された電極端子とを、異方性導電材を用いて接続することを対象とするものであり、同軸ケーブルを用いた実施例に限定されるものでないことは勿論であるが、同軸ケーブルを用いた実施例であっても、中心導体、外部導体といった導体構成に拘泥されるものでもない。したがって、例えば、多芯ケーブルを構成するケーブルとして同軸ケーブルを用いた場合、中心導体、外部導体のいずれか一方について本発明を適用し、他方を半田ペーストや導電性接着剤を用いた接続方法により形成することも可能である。
【0046】
本発明は、以上の実施の形態の限定されることなく、その発明の範囲において種々の改変が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 多芯ケーブル
2 極細同軸ケーブル
3、3´ 中心導体
4 絶縁体
5 外部導体
6 ジャケット
7 プリント基板
8 信号電極
9 グランド電極
10、11 異方性導電材
12 樹脂
13 半田粒子
14 加熱ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略円形であって、単線、もしくは、複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブルの前記導体と、前記導体に対応して被接続部材上に平面的に形成された一もしくは複数の電極端子とを、異方性導電材を用いて接続することにより構成された、多芯ケーブルの接続部において、前記異方性導電材が、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態で前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給されると共に、前記半田粒子の融点以上の温度に加熱されて、前記樹脂が加熱硬化されて構成されるものであることを特徴とする多芯ケーブルの接続部。
【請求項2】
少なくとも前記導体のうち前記接続部を構成する露出された前記導体と、前記電極端子との、いずれか一方に、前記異方性導電材を構成する前記半田粒子と同じ金属もしくは前記半田粒子と同程度の融点を有する他の金属からなるめっきを施してなることを特徴とする請求項1に記載の多芯ケーブルの接続部。
【請求項3】
断面略円形であって、単線、もしくは、複数本の細線を撚り合わせた撚り線からなる導体の複数本を並列配置した構成の多芯ケーブルの前記導体と、前記導体に対応して被接続部材上に平面的に形成された一もしくは複数の電極端子とを、異方性導電材を用いて接続する、多芯ケーブルの接続方法において、樹脂内部に半田粒子を分散させた硬化前のペースト状の状態の前記異方性導電材を、多芯ケーブルの接続部における前記導体と前記電極端子との間の被接続部に供給して、前記導体を前記異方性導電材中に埋没させた後、加熱ツールにより前記異方性導電材を前記半田粒子の融点以上の温度に加熱して、前記樹脂の硬化速度よりも速く前記半田粒子を溶融化させると共に、前記樹脂の硬化に必要な時間その加熱温度に保持して、前記樹脂を加熱硬化させることを特徴とする多芯ケーブルの接続方法。
【請求項4】
少なくとも前記導体のうち前記接続部を構成する露出された前記導体と、前記電極端子との、いずれか一方に、前記異方性導電材を構成する前記半田粒子と同じ金属もしくは前記半田粒子と同程度の融点を有する他の金属からなるめっきを施してなることを特徴とする請求項3に記載の多芯ケーブルの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54442(P2011−54442A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202953(P2009−202953)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】