説明

大規模ストリーム配信の品質管理方法,視聴品質の管理装置及び視聴品質の管理プログラム

【課題】大規模なストリーム配信サービスにおいて,ユーザの視聴品質を一元的に管理し,保守運用コストの削減を可能にするとともに,視聴品質の劣化原因,劣化箇所をすぐに特定できるようにする。
【解決手段】統合管理装置6は,コンテンツの配信を受けているユーザの視聴品質情報を,各拠点ごとに配備された情報管理装置4から受信し,そのユーザの視聴品質情報をもとに,階層的にコンテンツ(エンコーダ)9,そのコンテンツを分配しているストリーム配信サーバ1,配信中のユーザが属しているユーザエリアのそれぞれの視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を集計し,全視聴ユーザに対する劣化ユーザの比率を計算して,劣化影響度の大きい順にコンテンツ,配信サーバ,ユーザエリアの劣化比率と所定の閾値とを比較し,劣化原因を判定し,劣化箇所を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,大規模なストリーム配信サービスにおける視聴品質の管理技術に関し,特に,全ユーザの視聴品質を階層構造で一元管理し,劣化箇所の特定及び劣化中のユーザエリアを絞り込み,劣化が発生した場合に故障テロップを視聴ユーザに配信するための情報を抽出する大規模ストリーム配信の品質管理方法,視聴品質の管理装置及び視聴品質の管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のあるいは既存の視聴品質管理技術としては「ストリーム品質管理装置」及び「ストリーム品質管理用プログラム」があり,下記の特許文献1の第6ページ以降に記載されている。また,視聴品質劣化への対応技術としては「配信サービス品質劣化推定方法及びその装置」があり,下記の特許文献2の第6ページ以降に記載されている。
【特許文献1】特開2003−258885号公報
【特許文献2】特開2003−304285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術は,ストリーム配信の視聴品質を管理できるユーザ数に限界があるため,視聴品質の管理を行うユーザ数が膨大になる地上波テレビ放送のような大規模なストリーム配信サービスでは,ユーザの視聴品質を管理する情報管理装置を配信拠点ごとに設置する必要がある。配信拠点ごとに情報管理装置を設置した場合,保守運用者を配信拠点ごとに配備する必要があり,保守運用コストが膨大となる。
【0004】
また,ユーザからの苦情申告時には,苦情ユーザの視聴品質を管理している情報管理装置を把握できていないため,すべての情報管理装置を対象に苦情ユーザの視聴品質情報を検索する必要が発生し,苦情対応処理に長い時間を費やすことになる。
【0005】
大規模なストリーム配信サービスでは,一つのコンテンツを複数の配信拠点に分配したり,1台の配信サーバが複数のコンテンツを配信したり,ユーザが配信拠点を跨いで視聴したりというように,運用形態が複雑化する。このような運用形態の複雑化により,1ユーザの視聴品質情報や同一のコンテンツを視聴中の劣化ユーザ数や特定地域のユーザエリア内で視聴中の劣化ユーザ数などの統計情報が複数の情報管理装置で分散管理される。
【0006】
したがって,視聴品質が劣化する原因であるエンコーダ故障,配信サーバ故障を特定することや,劣化が発生しているユーザエリアを絞り込むことに時間を要することになり,そのため劣化中のユーザエリア情報,視聴品質の劣化原因,その劣化度合などの故障情報をテロップとして,視聴品質が劣化している視聴中ユーザへ通知することができない。
【0007】
これらの分散した情報管理装置の情報を一元的に管理する方法や装置は存在しないため,全情報管理装置の視聴ユーザの一元管理を行ったり,視聴品質の劣化原因を特定し劣化箇所を絞り込んだり,故障の起きているエリアへ故障原因や劣化度合を通知するサービスを提供できない。
【0008】
本発明は,上記従来技術の問題点を解決し,大規模なストリーム配信サービスにおいて,ユーザごとに視聴品質を一元的に管理し,劣化原因の特定及び劣化しているユーザエリアを絞り込むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明は,統合管理装置が情報管理装置で分散管理されたユーザの視聴品質情報に関する統計情報を,コンテンツ(エンコーダ)単位,配信サーバ単位,配信拠点内のユーザエリア単位に一元的に管理し,視聴品質の劣化原因を特定し,視聴品質が劣化中のユーザエリアを絞り込み,その劣化情報を視聴中のユーザに通知するための情報を抽出する。ここでユーザエリアとは,ユーザが属するネットワークの地域別管理単位のことである。
【0010】
情報管理装置は,ユーザが配信サーバに対して視聴開始要求を行ったときに,接続したユーザID,視聴するコンテンツID,ユーザが属するユーザエリア,接続した配信サーバIPアドレスなどの接続要求情報と,ユーザが配信サーバに対して視聴切断要求を行ったときに,切断したユーザIDなどの切断要求情報が管理できていること,ユーザの劣化,劣化予兆及び劣化回復の視聴品質を管理していることを前提とする。ユーザIDは,ユーザを一意に識別するユーザ識別情報であり,一意性があればユーザ名でもよい。また,コンテンツIDは,コンテンツを一意に識別するコンテンツ識別情報であり,一意性があればコンテンツ名でもよい。
【0011】
情報管理装置におけるユーザ視聴品質の劣化,劣化予兆は,例えばユーザからの帯域変更要求のトレース,ストリームデータの再送要求数のカウント,ユーザ端末内のバッファに保持されるストリームデータ量の計測などにより判別することができる。
【0012】
情報管理装置は,ユーザが配信サーバに視聴開始の要求を行ったときに,ユーザ視聴開始情報としてユーザIDとコンテンツIDを統合管理装置に通知する。また,ユーザが配信サーバに視聴切断の要求を行ったときに,ユーザ視聴切断情報としてユーザIDを統合管理装置に通知する。
【0013】
統合管理装置は,情報管理装置からユーザ視聴開始情報を受信すると,受信した時刻とユーザIDとコンテンツIDと通知された情報管理装置のIPアドレスをユーザ管理データベースに保存する。また,情報管理装置からユーザ視聴切断情報を受信すると,受信した時刻とユーザIDと通知された情報管理装置のIPアドレスをユーザ管理データベースに保存する。
【0014】
統合管理装置は,ユーザからの苦情申告を受け付けると,ユーザ管理データベースから苦情申告のユーザIDと視聴していたコンテンツIDと視聴時間帯をキーにして情報管理装置のIPアドレスを検索する。検索した情報管理装置から苦情申告ユーザの過去の視聴品質情報を遠隔で検索し苦情対応を行うため,苦情対応時間が短縮できる。また,統合管理装置が設置している拠点ですべての苦情申告に対応できるため,配信拠点ごとに配備している保守運用者が不必要となり,保守運用コストの削減が可能となる。
【0015】
ユーザの視聴品質の劣化原因としては,エンコーダの故障,配信サーバの故障,ネットワークの故障及び輻輳,ユーザマシンの故障,アクセス回線の故障及び輻輳が考えられる。エンコーダが故障した場合には,配信サーバやネットワークやユーザマシンやアクセス回線が正常でも,ユーザの視聴品質は劣化する。配信サーバが故障した場合には,ネットワークやユーザマシンやアクセス回線が正常でも,ユーザの視聴品質は劣化する。ネットワークは個々のユーザエリアで構成されるため,劣化影響度の大きさはコンテンツ,配信サーバ,ユーザエリアの順となる。
【0016】
劣化原因の特定を行うために,本発明では,一階層目にコンテンツ,二階層目にそのコンテンツを分配している配信サーバ,三階層目にその配信サーバが配信中のユーザが属しているユーザエリアのそれぞれの視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を集計し,階層構造で管理する。
【0017】
情報管理装置は,ユーザが配信サーバに視聴開始の要求を行ったときに,管理している階層構造の一階層目からユーザ視聴開始情報のコンテンツIDを検索し,階層構造の一階層目にコンテンツIDが存在しない場合には,階層構造の一階層目に視聴開始情報のコンテンツID,二階層目に配信サーバIPアドレス,三階層目にユーザエリアを追加する。
【0018】
また,階層構造の一階層目にコンテンツIDが存在した場合には,管理している階層構造の二階層目からユーザ視聴開始情報の配信サーバIPアドレスを検索し,階層構造の二階層目に配信サーバIPアドレスが存在しない場合,階層構造の二階層目に視聴開始情報の配信サーバIPアドレス,三階層目にユーザエリアを追加する。
【0019】
また,階層構造の二階層目に配信サーバIPアドレスが存在した場合には,管理している階層構造の三階層目からユーザ視聴開始情報のユーザエリアを検索し,階層構造の三階層目にユーザエリアが存在しない場合,階層構造の三階層目に視聴開始情報のユーザエリアを追加する。
【0020】
情報管理装置は,ユーザの視聴開始時には,階層構造のコンテンツと配信サーバとユーザエリアについて,視聴ユーザ数をそれぞれ1加算する。ユーザの視聴品質状態が良好から劣化に変わった場合には,階層構造のコンテンツと配信サーバとユーザエリアについて,劣化ユーザ数をそれぞれ1加算する。また,ユーザの視聴品質状態が劣化から良好に変わった場合には,階層構造のコンテンツと配信サーバとユーザエリアについて,劣化ユーザ数をそれぞれ1減算する。
【0021】
情報管理装置は,階層構造の情報と,階層構造のコンテンツと配信サーバとユーザエリアについて,視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を統合管理装置に通知する。統合管理装置は,それぞれの情報管理装置から階層構造情報を受信し,階層構造をマージして再構築する。再構築したコンテンツと配信サーバとユーザエリアについて視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を合計する。
【0022】
統合管理装置は,劣化判定を行うために,階層構造の一階層目の全コンテンツについて,それぞれ視聴ユーザ数から劣化ユーザ数を除算して劣化度合を計算し,劣化度合とユーザが設定した閾値とを比較して,コンテンツの劣化度合が閾値を上回った場合には,そのコンテンツ(エンコーダ)を劣化の原因と特定する。また,劣化の原因と特定したコンテンツの階層構造の配下にある配信サーバとユーザエリアとを劣化判定処理の対象外とする。
【0023】
劣化判定処理の対象となる階層構造の二階層目の配信サーバIPアドレスが一致するものについて,視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を合計する。
【0024】
劣化判定処理の対象となる階層構造の二階層目の配信サーバIPアドレスについて,それぞれ視聴ユーザ数から劣化ユーザ数を除算して劣化度合を計算し,劣化度合とユーザが設定した閾値とを比較して,配信サーバIPアドレスの劣化度合が閾値を上回った場合には,その配信サーバIPアドレスの配信サーバを劣化の原因と特定する。また,劣化の原因と特定した配信サーバの階層構造の配下にあるユーザエリアを劣化判定処理の対象外とする。
【0025】
劣化判定処理の対象となる階層構造の三階層目のユーザエリアが一致するものについて,視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を合計する。
【0026】
劣化判定処理の対象となる階層構造の三階層目のユーザエリアについて,それぞれ視聴ユーザ数から劣化ユーザ数を除算して劣化度合を計算し,劣化度合とユーザが設定した閾値とを比較して,ユーザエリアの劣化度合が閾値を上回った場合には,そのユーザエリアを劣化の地域と特定する。なお,ユーザエリアは1台の配信サーバが配信する地域の範囲と一致していてもよく,この場合には上記の三階層目の処理を省略することができる。
【0027】
以上のように,本発明では,大規模ストリーム配信サービスにおいて階層的にコンテンツ,そのコンテンツを分配している配信サーバ,その配信サーバが配信中のユーザが属しているユーザエリアのそれぞれの視聴ユーザ数と劣化ユーザ数を集計し全視聴ユーザに対する劣化ユーザ数の比率を計算し,劣化影響度の大きい順にコンテンツ,配信サーバ,ユーザエリアの計算した劣化比率と劣化比率閾値とを比較し,劣化原因を判定し劣化箇所を特定する。
【0028】
また,故障中の配信サーバに配信中のコンテンツ(エンコーダ),または劣化ユーザエリアにおいて視聴されているコンテンツ(エンコーダ)の情報を抽出し,ユーザ画面に対して故障状態を知らせるテロップを流す。
【発明の効果】
【0029】
本発明により,視聴品質の管理を一元化することで,大規模なストリーム配信サービスの保守運用稼動のコスト削減と苦情申告の対応時間の短縮が可能となる。
【0030】
また,エンコーダの故障や配信サーバの故障による視聴品質の劣化原因が特定でき,劣化が発生しているユーザを絞り込むことが可能となり,故障原因や故障地域などの故障情報を視聴ユーザに提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は,本発明の一実施形態であるストリーム配信システムの接続構成図である。本発明を適用するシステムは,図1に示すように,ストリームコンテンツを配信する複数のストリーム配信サーバ1と,ストリームコンテンツを再生する複数のクライアント端末2と,ストリーム配信サーバ1から流れてくるストリームデータ及びストリーム制御メッセージから配信品質を収集する複数の情報収集装置3と,情報収集装置3から視聴品質劣化ユーザ情報を収集する複数の情報管理装置4と,情報管理装置4のもつ情報を格納する視聴品質情報データベース(DB)5と,複数の情報管理装置4から視聴品質劣化情報を収集する統合管理装置6と,統合管理装置6のもつ情報を格納する視聴品質情報データベース(DB)7と,ストリーム配信サーバ1へコンテンツを配信するコンテンツ供給源(以下,コンテンツ(エンコーダ)という)9と,統合管理装置6が送出する品質劣化が生じたユーザエリア,配信サーバ,コンテンツの劣化箇所と劣化度を示す情報の通知データを受け取るストリーム配信事業者端末8と,それらを結ぶネットワーク設備である回線20〜24と,ルータ10と,TAP装置(ネットワーク分配装置)11とから構成される。
【0032】
ユーザエリアとは拠点内のネットワークの管理単位を示しており,拠点内に地域毎に複数存在する。コンテンツ(エンコーダ)9は,例えばコンテンツの符号化ストリームデータ,それを配信するコンテンツサーバ,配信対象の特定のコンテンツを記憶している記憶媒体,コンテンツの符号化ストリームデータを生成するエンコーダなどであり,本発明の実施の形態においていずれの実現形態であってもよい。
【0033】
なお,図1では,ストリーム配信サーバ1,クライアント端末2がそれぞれ多数ある場合の例を示しているが,その数はそれぞれ1以上あればよい。また,情報管理装置4は配信拠点毎に一つあればよい。また,統合管理装置6及びストリーム配信事業者端末8がそれぞれ1台ある例を示しているが,その数はそれぞれ1以上あってもよい。また,コンテンツ(エンコーダ)9が二つある場合を示しているが,1以上あればよい。また,ネットワーク回線20,21,22,23,24の種類としては,電話回線,ADSL回線,光ファイバ回線などがあるが,これらに限定されるものではない。
【0034】
本システムの第一の特徴は,情報管理装置4で分散管理されたユーザ情報を統合管理装置6で一元管理ができることである。すなわち,本システムでは,特許文献1に示されているような既存のストリーム品質管理用プログラム(特開2003−258885号公報参照)による情報管理装置4を用いて視聴ユーザのストリーム品質管理を行い,統合管理装置6は,視聴ユーザの視聴の開始時に情報管理装置4から送られたユーザ視聴情報をユーザ管理データベース604(図2)に記録して管理する。統合管理装置6で視聴ユーザIDとコンテンツIDをキーに検索することで,その視聴ユーザがどの情報管理装置4に属しているかが分かり,その情報管理装置4から視聴ユーザの品質情報を取り出すことができるようになることで,分散管理されたユーザ視聴情報の一元管理を統合管理装置6によって実現することができる。
【0035】
本システムの第二の特徴は,情報管理装置4で分散管理されたユーザ視聴情報を統合管理装置6へ収集し,コンテンツ(エンコーダ)9とストリーム配信サーバ1及びユーザエリアの依存関係を階層構造(以下,階層構造と呼ぶ)を用いて,それぞれの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数の集計処理を行い,階層構造の中でコンテンツ(エンコーダ)9,ストリーム配信サーバ1,ユーザエリアの劣化比率が順に閾値を超えているかを見て,コンテンツ9,ストリーム配信サーバ1,ユーザエリアのうちどこが劣化しているかを特定でき,どの程度の劣化なのかを知ることができることである。
【0036】
本システムの第三の特徴は,劣化や故障が起きたときに障害が起きているユーザに限定して故障テロップをユーザ画面に挿入するため,第二の特徴で限定された劣化箇所をもとに,階層構造を上流階層にたどり,テロップを挿入すべきコンテンツ(エンコーダ)9の特定ができることである。
【0037】
図2は,本発明の一実施形態である情報管理装置4,統合管理装置6の構成例を示したブロック構成図である。
【0038】
既存のストリーム品質管理用プログラム(例えば,特許文献1参照)を用いて視聴ユーザのストリーム品質管理を行い,情報収集装置3より情報管理装置4の受信部401へ視聴ユーザのユーザ視聴情報が送られており,データベース保存部403によりユーザごとの視聴情報が格納されて,特定のユーザの視聴状況を参照できるようになっていることが前提である。なお,データベース保存部403及び階層構造化の劣化比率テーブル411は,図1に示す視聴品質情報DB5に相当するものである。
【0039】
図3は,既存部分であるデータベース保存部403のデータベース構造の例を示している。ユーザの視聴開始時に収集される情報は,図3(A)〜(C)の[CONNECT],[OPEN],[START]であり,視聴品質遷移時に収集される情報は,図3(D)の[CHANGE]であり,視聴終了時(切断時)に収集される情報は,図3(E)〜(H)の[STOP],[CLOSE],[DOWN],[SHUTDOWN]である。これらの情報のうち,特に●で示した項目は,本実施の形態で再利用するDBフィールドである。
【0040】
これらの図3に示す情報は,ストリーム配信サーバ1とクライアント端末(PC)2の間を流れるパケットをTAP装置11を介して情報収集装置3がトレースし,トレースした情報を情報管理装置4へ転送することによって収集される。
【0041】
情報管理装置4にて分散管理された視聴ユーザ情報の一元管理方法は,次のとおりである。情報管理装置4の送信部408は,あるユーザがストリームの視聴開始を行うと,視聴開始情報としてユーザIDとコンテンツIDを統合管理装置6の受信部601に通知する。また,ユーザがストリーム配信サーバ1に視聴切断の要求を行ったときに,ユーザ視聴切断情報としてユーザIDを受信部601に通知する。これらの通知は,送信部408が統合管理装置6の受信部601に向けて行う。
【0042】
統合管理装置6のテーブル生成DB保存部603は,受信時刻を付加して情報管理装置4から受け取ったユーザID,コンテンツID,情報管理装置IPアドレスとともに,再生開始情報としてユーザ管理DB604に記録する。ユーザ管理DB604への記録の形態を図4に示す。
【0043】
また,ユーザが視聴を停止したときに,情報管理装置4の送信部408は,ユーザIDを統合管理装置6の受信部601へ送り,テーブル生成DB保存部603は,ユーザIDをキーにユーザ管理DB604を検索し,受信時刻を終了時刻としてユーザ管理DB604への記録を行う。
【0044】
問い合わせを受けたときに,ストリーム配信事業者の窓口担当者81は,顧客のユーザID,視聴時刻,コンテンツを聞き出して,そのユーザID,視聴時刻,コンテンツをキーにユーザ管理DB604を検索して,その視聴ユーザが管理されている情報管理装置4の情報管理装置IPアドレスを参照して,問い合わせ部605がそのIPアドレスを用いて遠隔で,その拠点の情報管理装置4のデータベース保存部403にアクセスし,視聴ユーザの品質情報を引き出す。窓口担当者81は,引き出された情報に基づいてユーザの対応ができる。このようにして分散管理されたユーザ情報を,統合管理装置6にて一元的に管理できるようになる。
【0045】
次に,劣化箇所の特定方法と劣化度の推定方法について説明する。前提として,配信拠点毎(拠点A,拠点B,他拠点)にストリーム配信サーバ1とユーザエリアが複数存在し,それぞれのユーザエリアに複数の視聴ユーザが収容され,コンテンツ(エンコーダ)9は他の配信拠点へも配信を行っており,ストリーム配信サーバ1は,1以上のコンテンツをハンドリング可能で,視聴ユーザは配信拠点内で管理されるストリーム配信サーバ1にアクセス可能で,複数のコンテンツを視聴でき,情報管理装置4により配信拠点毎に視聴ユーザの視聴品質の推定が行われ,それら配信拠点の情報管理装置4の管理情報は,統合管理装置6が収集して一元的に管理しているものとする。
【0046】
ユーザの視聴が開始された時もしくは再送要求や帯域変更要求などにより視聴品質の劣化が起きた時に,ユーザ品質監視部404は,情報収集装置3から受信部401及びコマンド判定部402を介してユーザ視聴情報を受け取ると,ユーザ視聴管理テーブル405を更新する。
【0047】
図5に,情報管理装置4で管理するユーザ視聴管理テーブル405の構成例を示す。ユーザ視聴管理テーブル405には,図5に示すように,ストリーム配信を受けているユーザのユーザID,ユーザIPアドレス,ユーザエリア,コンテンツ名,配信サーバIPアドレス,視聴品質が記録される。
【0048】
また,ユーザ品質監視部404は,ユーザ視聴情報を階層構造検索部406に通知する。階層構造検索部406は,そのユーザがどのコンテンツ(エンコーダ)9,ストリーム配信サーバ1を経由したストリームを見ており,どのユーザエリアに属するかを,受け取ったユーザ視聴情報を参照して決定し,階層構造テーブル生成部407によって階層構造化の劣化比率テーブル411に記録する。
【0049】
図6に,情報管理装置4で管理する階層構造化の劣化比率テーブル411の構成例を示す。情報管理装置4は,図6に示すように,階層構造化の劣化比率テーブル411によって,コンテンツ(エンコーダ)9がルートとなる階層構造で,ストリーム配信の劣化の状態を示す情報を管理し,コンテンツ(エンコーダ)9 ,ストリーム配信サーバ1,ユーザエリアの依存関係がどのようになっているかを把握しながら,それぞれの部分の劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数を更新する。これらの情報を階層構造で管理することによって,特定のコンテンツ(エンコーダ)9はどのストリーム配信サーバ1に配信をしているのか,特定のストリーム配信サーバ1はどのユーザエリアに配信を行っているのかを判別できるようになり,それぞれの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数の計算を行うことができる。
【0050】
視聴ユーザの視聴開始のとき,受信部401はユーザ再生開始のユーザ視聴品質情報を受け取りユーザ視聴開始と判断する。ユーザ視聴開始のときに既存のデータベース保存部403にユーザ情報がデータベースとして記録され,そこにはユーザIPアドレス,ユーザID,使用中のユーザエリア,配信を受けているストリーム配信サーバ1の配信サーバIPアドレス,視聴中のコンテンツIDが記録されるため,ユーザ品質監視部404は,階層構造検索部406にてユーザIPアドレス,ユーザID,使用中のユーザエリア,配信を受けているストリーム配信サーバ1,視聴中のコンテンツ(エンコーダ)9と視聴状況を判断して,ユーザ視聴管理テーブル405に登録して管理する。
【0051】
さらに,階層構造テーブル生成部407にて劣化ユーザ数や劣化予兆ユーザ数の管理を行うために,階層構造化の劣化比率テーブル411を生成し,コンテンツ,配信サーバ,ユーザエリアの依存関係を構築しながら階層構造で管理していく。そのためにまず,階層構造検索部406は,階層構造に登録しようとするコンテンツ(エンコーダ)9が既に階層構造に存在するかを確認する。存在していれば,階層構造テーブル生成部407は,そのコンテンツ視聴者数のカウンタに1を加算する。存在しなければ階層構造への新規登録となり,コンテンツIDを登録して,そのコンテンツの視聴者数のカウンタを1とする。
【0052】
さらに,ストリーム配信サーバ1を階層構造に登録するため,そのユーザが視聴しているコンテンツの配下からそのユーザが配信を受けているストリーム配信サーバ1が登録されているかを検索し,登録されていれば,そのストリーム配信サーバ1の視聴者数のカウンタに1を加算する。登録されていなければ新規登録となり,配信サーバIPアドレスを登録して,視聴者数を1とする。
【0053】
さらに,ユーザエリアを階層構造に登録するため,そのユーザが視聴しているストリーム配信サーバ1の配下から,そのユーザが属するユーザエリアが登録されているかを検索して,登録されていればそのユーザエリアの視聴者数のカウンタに1を加算する。登録されていなければ新規登録となり,ユーザエリアを登録して,そのユーザエリアの視聴者数のカウントを1とする。
【0054】
ストリーム配信サーバ1が複数のコンテンツ(エンコーダ)9をハンドリングしていても,該当のコンテンツを見ている部分のみカウンタを更新し,該当のコンテンツを見ていない部分はカウンタを更新しない。ユーザエリアが複数のストリーム配信サーバ1から配信を受けていても該当するストリーム配信サーバ1から配信を受けている部分のみカウンタを更新し,該当するストリーム配信サーバ1から配信を受けていなければカウンタを更新しない。この決まりは視聴状況の変化があったときや,視聴の停止が行われたときも適用する。
【0055】
視聴状況の変化があったとき,ユーザ品質監視部404は,受信したユーザ情報情報のうちのユーザIDをキーにユーザ視聴管理テーブル405を検索して,そのユーザの視聴状況を確認して書き換える。このとき,書き換える前の視聴状況と,書き換えた後の視聴状況の比較を行い,この後に階層構造テーブル生成部407にて実行するカウンタの増減方法の判別を行う。
【0056】
カウンタの増減方法は,ユーザの視聴状況が良好から劣化に遷移した場合,劣化ユーザ数に1加算し,良好から劣化予兆に遷移した場合,劣化予兆ユーザ数に1加算を行い,劣化から良好に遷移した場合,劣化ユーザ数から1減算を行い,劣化から劣化予兆に遷移した場合,劣化ユーザ数から1減算及び劣化予兆ユーザ数に1を加算し,劣化予兆から良好に遷移した場合,劣化予兆ユーザ数から1減算を行い,劣化予兆から劣化に遷移した場合には,劣化予兆ユーザ数から1減算し,劣化ユーザ数に1を加算する。こうすることで,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアそれぞれの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数を増減させる。このとき,階層構造テーブル生成部407にて,階層構造化の劣化比率テーブル411内のカウンタの増減を行うために,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアの階層構造をたどり,該当するコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアそれぞれの劣化,劣化予兆ユーザ数の増減を行う。
【0057】
視聴の停止が行われたとき,情報管理装置4のユーザ品質監視部404は,受信した視聴状況情報のうちのユーザIDをキーにユーザ視聴管理テーブル405を検索して,そのユーザの視聴情報を確認し,ユーザ視聴管理テーブル405からそのユーザ情報を消去する。
【0058】
また,階層構造テーブル生成部407は,階層構造化の劣化比率テーブル411内の各階層構造における視聴者数,劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数のカウンタ減算を行うために,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアの階層構造をたどり,視聴を停止したユーザの視聴品質に応じて,該当するコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアの劣化,劣化予兆,視聴者数のカウンタの減算を行う。このとき,視聴者が0になった場合には,階層構造から該当するコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアとそれぞれのカウンタを階層構造化の劣化比率テーブル411から消去する。このようにすることで,配信拠点内でコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアごとに劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数を視聴の依存関係を把握しながら管理することができる。
【0059】
次に,統合管理装置6において,各拠点で集計されたコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアごとの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数を合計して,ストリーム配信サービス設備全体のコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアごとの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数を算出できるようにするために,各拠点における情報管理装置4の送信部408から統合管理装置6の受信部601へ階層構造の情報とともに劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数のカウンタを送る。すなわち,各拠点の情報管理装置4から統合管理装置6へ,それぞれ階層構造化の劣化比率テーブル411の情報をそのまま,もしくは加工して送信する。
【0060】
この階層構造化の劣化比率テーブル411の情報の送信は,例えば情報管理装置4がタイマ発生部409よりタイマ発生を受け,周期判定部410にてあらかじめ定められた時間間隔で周期的に行われる。
【0061】
統合管理装置6は,受信部601及びメッセージ判定部602を介してすべての情報管理装置4の階層構造化の劣化比率テーブル411を受け取ると,階層構造生成部606を経由し,コンテンツ劣化判定部607,配信サーバ劣化判定部608,ユーザエリア劣化判定部609によって階層構造に従い,劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数の集計を統合管理装置6上の階層構造化の劣化比率テーブル612に対して行う。
【0062】
図7に,統合管理装置6で管理する階層構造化の劣化比率テーブル612の例を示す。階層構造化の劣化比率テーブル612は,基本的には各情報管理装置4で管理する階層構造化の劣化比率テーブル411と同様な構成になっている。
【0063】
階層構造化の劣化比率テーブル612における劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数の集計の方法は次のとおりである。情報管理装置4から受け取った一つの階層構造化の劣化比率テーブル411の情報をもとに,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアの順で階層構造化の劣化比率テーブル612を検索し,コンテンツから階層構造で登録していく。
【0064】
まず,階層構造生成部606は,登録しようとするコンテンツを検索し,既に階層構造化の劣化比率テーブル612に存在しているなら,既存のコンテンツの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数に,登録しようとしているコンテンツの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数をそれぞれ合計して記録する。コンテンツが存在していないなら新規登録となり,階層構造のルートとなるコンテンツを登録し,劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数は,各拠点の情報管理装置4から送られてきたものをそのまま記録する。
【0065】
次に,階層構造生成部606は,ストリーム配信サーバを階層構造化の劣化比率テーブル612に登録する。登録しようとするストリーム配信サーバの情報には,どのコンテンツに属するかの情報が付加されているので,そのコンテンツの配下に位置するストリーム配信サーバを検索し,既に存在しているなら,既存のストリーム配信サーバの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数と登録しようとしているストリーム配信サーバの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数をそれぞれ合計して記録する。該当するストリーム配信サーバが存在してないなら新規登録となり,該当するコンテンツの配下にストリーム配信サーバを登録し,劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数は,各拠点の情報管理装置4から送られてきたものをそのまま記録する。
【0066】
次に,階層構造生成部606は,ユーザエリアを階層構造化の劣化比率テーブル612に登録する。登録しようとするユーザエリアの情報には,どのコンテンツとストリーム配信サーバに属するかの情報が付加されているので,そのコンテンツとストリーム配信サーバの組合せの配下に位置するユーザエリアを検索し,既に存在しているなら,既存のユーザエリアの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数と,登録しようとしているユーザエリアの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数とをそれぞれ合計して記録する。該当するユーザエリアが存在していないなら,新規登録となり,該当するコンテンツとストリーム配信サーバの組合せの配下にユーザエリアを登録し,劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数は,情報管理装置4から送られてきたものをそのまま記録する。
【0067】
これを全拠点の情報管理装置4について繰り返して集計を行うことで,ストリーム配信サービス設備全体のコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアそれぞれの劣化ユーザ数,劣化予兆ユーザ数,視聴者数を知ることができる。
【0068】
次に,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアごとの劣化率を算定して劣化箇所と劣化度を算出する。算出方法は次のとおりである。階層構造化の劣化比率テーブル612に記録された階層構造に従って,コンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアの順に,それぞれコンテンツ劣化判定部607,配信サーバ劣化判定部608,ユーザエリア劣化判定部609により,劣化判定を行っていく。この劣化判定においてコンテンツに劣化が起きていることが判明した場合,その配下のストリーム配信サーバやユーザエリアは劣化していることが明らかであるので,配下のストリーム配信サーバやユーザエリアは劣化判定の対象にしない。同様にストリーム配信サーバが劣化していることがわかった場合には,その配下のユーザエリアも劣化しているので,そのユーザエリアは劣化判定の対象にしない。
【0069】
ただし,例えば視聴者数が所定の閾値より少ない場合,少数の劣化でも劣化率が大きくなるなど劣化率の信憑性が低くなるために,視聴者数がある程度を上回らない限りは閾値を監視しないで劣化判定も行わないようにする。その階層構造の配下に位置するストリーム配信サーバやユーザエリアも劣化判定を行わない。視聴者数がある数を上回っているならばその部分は劣化判定を行う。
【0070】
劣化予兆の状態は劣化の状態よりもいくらか症状が軽いため,劣化状態の症状(影響度)を1とすると,劣化予兆状態は1よりもいくらか低いと考えられる。そのために劣化率を計算するとき劣化ユーザ数1に対して,劣化予兆ユーザ数は1を加算するのではなく,運用者が指定した比率により劣化予兆ユーザ数から劣化ユーザ数に変換して加算し,より正確な劣化率を算出する。それで劣化率を算出するときに,劣化ユーザ数はそのまま加算し,劣化予兆ユーザ数には1以下のある数字との積を行い,劣化ユーザ数との合計を視聴者数で除算することで劣化率を算出する。
【0071】
ただし,コンテンツが劣化していると判定されている場合,その配下のストリーム配信サーバとユーザエリアは劣化判定には用いない。また,ストリーム配信サーバが劣化していると判定される場合,その配下のユーザエリアは劣化判定には用いないで劣化率の算出を行う。劣化率が算出できたら劣化を判定する閾値との比較を行う。
【0072】
劣化特定部610による劣化判定は,劣化の程度が高いと判断できる閾値,劣化の程度が中くらいと判断できる閾値,劣化の程度が低いと判断できる閾値を設けて,それぞれの閾値を超えるか超えないかを監視することによって行う。
【0073】
図8に,劣化度合を示す表の例を示す。劣化度合を示す表には,劣化度合が「強」「中」「弱」「劣化なし」と判定するための劣化率の閾値と,劣化度との対応情報が格納されている。それぞれの閾値を超えたら,その部分は劣化箇所と判定でき,どの閾値を超えたかで劣化程度も判定できる。
【0074】
劣化が高いと判断する閾値を超えると,その箇所は劣化箇所と判断でき,劣化度は1(強)である。劣化が中くらいと判断する閾値を超えた場合,その箇所は劣化箇所と判断でき,劣化度は2(中)である。劣化が低いと判断する閾値を超えた場合,その箇所は劣化箇所と判断でき,劣化度は3(弱)である。そのいずれの閾値も超えない場合には,その部分は劣化していないと判断する。
【0075】
このようにすることで劣化箇所と劣化程度を知ることができる。劣化箇所と劣化度が判明したら,通知部611は,ストリーム配信事業者端末8へ劣化箇所と劣化度合を通知する。この階層構造による視聴者数と劣化ユーザ数の把握を行う方法により,コンテンツ(エンコーダ)9,ストリーム配信サーバ1,ユーザエリアそれぞれが品質劣化を起こしているか否かを判別することができる。
【0076】
最後に,テロップ挿入やコンテンツ帯域の制限を行うため,劣化箇所の情報からコンテンツ(エンコーダ)9を特定する方法は,次のとおりである。本システムでは,統合管理装置6の階層構造化の劣化比率テーブル612により,階層構造でコンテンツ,ストリーム配信サーバ,ユーザエリアが管理されていたが,劣化箇所の判定を行った後に,劣化特定部610は,その階層構造を使用して,判定された劣化箇所より階層構造の木を上流階層にたどることで配信を受けているコンテンツ(エンコーダ)9を判別する。通知部611は,ストリーム配信事業者端末8に対して,劣化場所と劣化度を通知するとともに,テロップを挿入すべき場所であるコンテンツ(エンコーダ)9を知らせる。
【0077】
コンテンツを配信する経路において,自動でもしくは手動でそのコンテンツ(エンコーダ)9の部分にテロップを挿入することで,劣化の影響を受けているストリーム配信サーバ1やユーザエリア配下のユーザ画面にテロップを表示し,劣化箇所と劣化程度を知らせることができる。
【0078】
以上説明した大規模ストリーム配信の品質管理と劣化箇所の特定を行う本実施の形態の特徴は,以下のとおりである。
(1)統合管理装置6が情報管理装置4から視聴開始時にユーザ名とユーザが視聴したコンテンツ名,視聴終了時にユーザ名を受け取り,保持する。
(2)統合管理装置6は,ユーザ視聴開始時の視聴コンテンツ名と配信サーバIPアドレスとユーザIPアドレスを抽出し,一階層目にコンテンツ名,二階層目にそのコンテンツを分配している配信サーバIPアドレス,三階層目にそのストリーム配信サーバ1が配信中のユーザが属しているユーザのIPアドレスを階層構造で管理する。
(3)劣化原因がコンテンツ(エンコーダ)9でないユーザについて,ストリーム配信サーバ1ごとの視聴ユーザ数と劣化ユーザ数を集計し,全視聴ユーザに対する劣化ユーザ数の比率を計算し,劣化比率閾値と計算した値とを比較することで,劣化しているストリーム配信サーバ1を特定するとともに,その劣化度合を推定する。
(4)劣化原因がコンテンツ(エンコーダ)9及びストリーム配信サーバ1でないユーザについて,ユーザエリアごとの視聴ユーザ数と劣化ユーザ数を集計し,全視聴ユーザに対する劣化ユーザ数の比率を計算し,劣化比率閾値と計算した値とを比較することで,劣化しているユーザエリアを特定するとともに,その劣化度合を推定する。
(5)特定のストリーム配信サーバ1の故障で視聴品質が劣化している場合,故障中のストリーム配信サーバ1に接続しているユーザに対して,劣化度合や劣化原因などの情報の故障テロップを流すために,リアルタイムに故障中のストリーム配信サーバ1に配信中のコンテンツ(エンコーダ)9を抽出する。
(6)特定ユーザエリアだけ視聴品質が劣化している場合,劣化ユーザエリアの視聴中ユーザに対して,劣化度合や劣化ユーザエリア情報などの故障テロップを流すために,リアルタイムに劣化ユーザエリアの視聴中のコンテンツ(エンコーダ)9を抽出する。
【0079】
以上の情報管理装置4,統合管理装置6が行う処理は,コンピュータとソフトウェアプログラムとによって実現することができ,そのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも,ネットワークを通して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態であるストリーム配信システムの接続構成図である。
【図2】本発明の一実施形態である情報管理装置及び統合管理装置のブロック構成図である。
【図3】データベース保存部のデータベース構造の例を示す図である。
【図4】統合管理装置で管理するユーザ管理データベースの例を示す図である。
【図5】情報管理装置で管理するユーザ視聴管理テーブルの例を示す図である。
【図6】情報管理装置で管理する階層構造化の劣化比率テーブルの例を示す図である。
【図7】統合管理装置で管理する階層構造化の劣化比率テーブルの例を示す図である。
【図8】劣化度合を示す表の例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 ストリーム配信サーバ
2 クライアント端末(PC)
3 情報収集装置
4 情報管理装置
5 視聴品質情報DB
6 統合管理装置
7 視聴品質統合DB
8 ストリーム配信事業者端末
9 コンテンツ(エンコーダ)
10 ルータ
11 TAP装置
20 コンテンツ(エンコーダ)とストリーム配信サーバ間の回線
21 ストリーム配信サーバのインターネット接続回線
22 ストリーム配信サーバのインターネット接続回線(TAP装置前)
23 ストリーム配信サーバのインターネット接続回線(TAP装置後)
24 ユーザエリア回線
81 窓口担当者
401 受信部
402 コマンド判定部
403 データベース保存部
404 ユーザ品質監視部
405 ユーザ視聴管理テーブル
406 階層構造検索部
407 階層構造テーブル生成部
408 送信部
409 タイマ発生部
410 周期判定部
411 階層構造化の劣化比率テーブル
601 受信部
602 メッセージ判定部
603 テーブル生成DB保存部
604 ユーザ管理DB
605 問い合わせ部
606 階層構造生成部
607 コンテンツ劣化判定部
608 配信サーバ劣化判定部
609 ユーザエリア劣化判定部
610 劣化特定部
611 通知部
612 階層構造化の劣化比率テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する複数の情報管理装置と,前記複数の情報管理装置にネットワークを介して接続され,ユーザの視聴情報を一元管理する統合管理装置とを備えるシステムにおける大規模ストリーム配信の品質管理方法であって,
前記統合管理装置が,
ユーザのコンテンツ視聴開始時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報とユーザが視聴したコンテンツ識別情報とを受け取る過程と,
前記情報管理装置から受け取った情報をもとに,少なくとも受信時刻,ユーザ識別情報,コンテンツ識別情報および前記情報管理装置のアドレス情報を含むユーザ視聴情報を,ユーザ管理データベースに記録する過程と,
ユーザのコンテンツ視聴終了時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報を受け取る過程と,
前記ユーザのコンテンツ視聴終了時に受け取ったユーザ識別情報をもとに,前記ユーザ管理データベースにおける該当するユーザ視聴情報を更新する過程と,
コンテンツ視聴ユーザからの問い合わせに対し,そのユーザのユーザ識別情報を用いて前記ユーザ管理データベースを検索し,そのユーザのユーザ視聴品質情報を管理する情報管理装置を特定する過程とを有する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項2】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する管理装置を備えるシステムにおける大規模ストリーム配信の品質管理方法であって,
前記管理装置が,
ユーザのコンテンツ視聴開始,ユーザのコンテンツ視聴停止およびユーザの視聴品質遷移に伴い,視聴されているコンテンツと,そのコンテンツを分配しているストリーム配信サーバと,配信中のユーザが属しているユーザエリアとの階層的な関係を示す階層構造化された情報を生成または更新し,該階層構造化された情報におけるコンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとに,それぞれの視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を集計する過程と,
前記コンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとの視聴ユーザ数および劣化ユーザ数の集計結果をもとに,それぞれ視聴ユーザ数に対する劣化ユーザ数の劣化比率を計算し,各劣化比率と所定の閾値との比較により,コンテンツの劣化,ストリーム配信サーバの劣化もしくはユーザエリアの劣化判定を行う過程と,
前記劣化判定結果に基づき劣化箇所を特定する過程とを有する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項3】
請求項2記載の大規模ストリーム配信の品質管理方法において,
前記管理装置が,
前記階層構造化された情報における視聴ユーザ数,劣化ユーザ数に加えて,ユーザの視聴品質が劣化する可能性が大きい劣化予兆ユーザ数を集計し,前記劣化比率の計算において劣化予兆ユーザ数を1以下の所定の重み値で前記劣化ユーザ数に換算し,劣化比率を算出する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の大規模ストリーム配信の品質管理方法において,
前記劣化判定を行う過程では,前記各劣化比率と比較する複数種類の所定の閾値を用い,各閾値との大小比較を行い,
前記劣化箇所を特定する過程では,前記各閾値との大小比較により劣化の程度を示す劣化度合を出力する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項5】
請求項2,請求項3または請求項4記載の大規模ストリーム配信の品質管理方法において,
前記劣化箇所を特定する過程により特定のストリーム配信サーバの故障で視聴品質が劣化していることが判明した場合に,故障中のストリーム配信サーバに接続しているユーザの端末に対して故障テロップを流すために,前記階層構造化された情報からリアルタイムに故障中のストリーム配信サーバに配信中のコンテンツを抽出する過程を有する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項6】
請求項2,請求項3または請求項4記載の大規模ストリーム配信の品質管理方法において,
前記劣化箇所を特定する過程により特定のユーザエリアだけ視聴品質が劣化していることが判明した場合に,劣化ユーザエリア内で視聴中のユーザの端末に対して故障テロップを流すために,前記階層構造化された情報からリアルタイムに劣化ユーザエリアに配信中のコンテンツを抽出する過程を有する
ことを特徴とする大規模ストリーム配信の品質管理方法。
【請求項7】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する複数の情報管理装置にネットワークを介して接続され,ユーザの視聴情報を一元管理する,大規模ストリーム配信システムにおける視聴品質の管理装置であって,
ユーザのコンテンツ視聴開始時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報とユーザが視聴したコンテンツ識別情報とを受け取る手段と,
前記情報管理装置から受け取った情報をもとに,少なくとも受信時刻,ユーザ識別情報,コンテンツ識別情報および前記情報管理装置のアドレス情報を含むユーザ視聴情報を,ユーザ管理データベースに記録する手段と,
ユーザのコンテンツ視聴終了時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報を受け取る手段と,
前記ユーザのコンテンツ視聴終了時に受け取ったユーザ識別情報をもとに,前記ユーザ管理データベースにおける該当するユーザ視聴情報を更新する手段と,
コンテンツ視聴ユーザからの問い合わせに対し,そのユーザのユーザ識別情報を用いて前記ユーザ管理データベースを検索し,そのユーザのユーザ視聴品質情報を管理する情報管理装置を特定する手段とを備える
ことを特徴とする視聴品質の管理装置。
【請求項8】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する,大規模ストリーム配信システムにおける視聴品質の管理装置であって,
ユーザのコンテンツ視聴開始,ユーザのコンテンツ視聴停止およびユーザの視聴品質遷移に伴い,視聴されているコンテンツと,そのコンテンツを分配しているストリーム配信サーバと,配信中のユーザが属しているユーザエリアとの階層的な関係を示す階層構造化された情報を生成または更新し,該階層構造化された情報におけるコンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとに,それぞれの視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を集計する手段と,
前記コンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとの視聴ユーザ数および劣化ユーザ数の集計結果をもとに,それぞれ視聴ユーザ数に対する劣化ユーザ数の劣化比率を計算し,各劣化比率と所定の閾値との比較により,コンテンツの劣化,ストリーム配信サーバの劣化もしくはユーザエリアの劣化判定を行う手段と,
前記劣化判定結果に基づき劣化箇所を特定する手段とを備える
ことを特徴とする視聴品質の管理装置。
【請求項9】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する複数の情報管理装置にネットワークを介して接続され,ユーザの視聴情報を一元管理する,大規模ストリーム配信システムにおける視聴品質の管理装置が備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって,
前記コンピュータを,
ユーザのコンテンツ視聴開始時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報とユーザが視聴したコンテンツ識別情報とを受け取る手段と,
前記情報管理装置から受け取った情報をもとに,少なくとも受信時刻,ユーザ識別情報,コンテンツ識別情報および前記情報管理装置のアドレス情報を含むユーザ視聴情報を,ユーザ管理データベースに記録する手段と,
ユーザのコンテンツ視聴終了時に,前記情報管理装置からユーザ識別情報を受け取る手段と,
前記ユーザのコンテンツ視聴終了時に受け取ったユーザ識別情報をもとに,前記ユーザ管理データベースにおける該当するユーザ視聴情報を更新する手段と,
コンテンツ視聴ユーザからの問い合わせに対し,そのユーザのユーザ識別情報を用いて前記ユーザ管理データベースを検索し,そのユーザのユーザ視聴品質情報を管理する情報管理装置を特定する手段,
として機能させるための視聴品質の管理プログラム。
【請求項10】
各ストリーム配信サーバからユーザの端末へ配信されるコンテンツのユーザ視聴品質情報を収集し管理する,大規模ストリーム配信システムにおける視聴品質の管理装置が備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって,
前記コンピュータを,
ユーザのコンテンツ視聴開始,ユーザのコンテンツ視聴停止およびユーザの視聴品質遷移に伴い,視聴されているコンテンツと,そのコンテンツを分配しているストリーム配信サーバと,配信中のユーザが属しているユーザエリアとの階層的な関係を示す階層構造化された情報を生成または更新し,該階層構造化された情報におけるコンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとに,それぞれの視聴ユーザ数,劣化ユーザ数を集計する手段と,
前記コンテンツ,ストリーム配信サーバおよびユーザエリアごとの視聴ユーザ数および劣化ユーザ数の集計結果をもとに,それぞれ視聴ユーザ数に対する劣化ユーザ数の劣化比率を計算し,各劣化比率と所定の閾値との比較により,コンテンツの劣化,ストリーム配信サーバの劣化もしくはユーザエリアの劣化判定を行う手段と,
前記劣化判定結果に基づき劣化箇所を特定する手段,
として機能させるための視聴品質の管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−217470(P2006−217470A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30233(P2005−30233)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】