説明

大麦若葉石鹸

【課題】植物の成分が有効に作用する固形石鹸を提供すること。
【解決手段】最適な処理方法で処理された(A)大麦若葉末、ミネラル成分に優れた(B)タルク、保湿成分に優れた(C)ホホバ油、肌に潤いを与える(D)黒砂糖、及び抗酸化作用に優れた(E)松樹皮抽出物を含有し、泡立ち、泡の保持性及び泡の美観性に優れた固形石鹸を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)大麦若葉末、(B)タルク、(C)ホホバ油、(D)黒砂糖を含有することを特徴とする固形石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形石鹸は需要者に対する商品差別化の一つとして、原料に植物を配合している。しかし、肌に対する保湿性、使用感、洗浄力、泡立ち及び泡の保持性などの諸特性に影響を与えるため、課題解決に向けて適宜調整して製造されている。
【0003】
また、近年では、安全性、健康面及び自然志向の面から植物の含有成分を重視する需要が高まっている。例えば、特許文献1には、生薬の粉末を石鹸素地に添加した固形石鹸が記載され、特許文献2には、粒度が20メッシュである植物が配合された固形石鹸が提案されている。
【特許文献1】特開平17−263923公報
【特許文献2】特開平5−82440公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植物の含有成分は、熱やアルカリ性によって分解し易い成分も多く、含有成分を生かしきれない問題を有している。また、植物の種類、部分によっては最適な処理方法があるべきで、すべて同一の処理方法では個々の植物の含有成分を最大限に発揮することは難しい。さらに使用した際に出来る泡に植物の粉末が付着することによって美観を損ね、使用感を悪くし、泡立ち及び泡の保持能力を低下させる問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は固形石鹸への配合物としての植物について、その効能が最高に発揮される条件で植物を処理し、これを石鹸材料に配合することで、効能を最大限に生かしながら、美観、使用感、泡立ち及び泡の保持性に優れた固形石鹸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は固形石鹸に配合する種々の植物についてその処理方法と効能について鋭意検討を重ねた結果、大麦若葉末を配合することで、美観、使用感、泡立ち及び泡の保持性に優れた効能を発揮することを見出して本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)大麦若葉末、(B)タルク、(C)ホホバ油、(D)黒砂糖を含有する固形石鹸に関する。
【0008】
好ましい実施形態においては、前記固形石鹸にさらに(E)松樹皮抽出物を含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、固形石鹸を使用する際の美観、泡立ち及び泡の保持性に優れた固形石鹸を得られる。さらに(E)松樹皮抽出物を使用することにより、優れた保湿作用を有する固形石鹸を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の固形石鹸について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0011】
本発明の固形石鹸は(A)大麦若葉末、(B)タルク、(C)ホホバ油、(D)黒砂糖を含有する。
【0012】
さらに、(E)松樹皮抽出物を含有する。以下、各成分について説明する。
【0013】
(A)大麦若葉末
大麦若葉末の原料としては、具体的には大麦の若葉(以下、大麦若葉という)が用いられる。大麦若葉は、分けつ開始期から出穂開始前期(背丈が20〜40cm程度)に収穫されたものが用いられ、より好ましくは大麦の若葉が用いられる。大麦若葉は、収穫後直ちに、処理することが好ましく、処理までに時間を要する場合、その変質を防ぐために、低温貯蔵などの当業者に公知の手段により貯蔵され得る。
【0014】
本発明に用いる大麦若葉は、水などで付着した泥などを洗浄し、水気を切った後、必要に応じて、適当な大きさ(例えば、10cm)に切断して、ブランチング処理される。
【0015】
ブランチング処理は、通常、当業者が用いる方法で行えばよい。ブランチング処理方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられるが、好ましくは、常圧または加圧下において、大麦若葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理である。間歇的蒸煮処理により、大麦若葉が有する成分や色が失われることがなくブランチング処理を行うことができる。
【0016】
間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、大麦若葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ大麦若葉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
【0017】
続いて、上記ブランチング処理された大麦若葉は、水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥され得る。この乾燥工程は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは55℃〜65℃にて加温により大麦若葉が変色しない温度および時間で行われ得る。
【0018】
上記乾燥された大麦若葉は、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕され得る。粉砕された大麦若葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものが麦若葉末として用いられ得る。粒径が250メッシュ通過のものより小さいと大麦若葉末のさらなる加工時に取り扱いにくく、粒径が30メッシュ通過のものより大きいと大麦若葉末と他の化粧素材との均一な混合が妨げられる虞がある。
【0019】
このようにして得られた大麦若葉末は、必要に応じて、例えば、気流殺菌、高圧蒸気殺菌、加熱処理などの当業者が通常使用する任意の技術により殺菌され得る。
【0020】
本発明の固形石鹸に含有される大麦若葉粉末の含有量は特に制限はないが、好ましくは固形石鹸中に大麦若葉粉末の乾燥質量で0.01〜5.00質量%、より好ましくは0.05〜0.35質量%の範囲である。0.01質量%以下では大麦若葉末の効能、即ちしっとり感及び使用感が好ましくない。また、5.00質量%以上では泡立ちを悪くし、美観を損ねるので好ましくない。
【0021】
(B)タルク
本発明の固形石鹸に含有されるタルクは、化粧品添加物として用いられるものであれば良く、主成分は、含水珪酸マグネシウムであることが知られている。
【0022】
タルクは多量のミネラル成分を含み、使用時の洗浄能力を上げ、肌の引き締め、潤い及びしっとり感を与え、泡をきめ細かくクリーミーで弾力性のある泡質にすることができるうえ、泡の保持性を向上させる。
【0023】
本発明の固形石鹸に含有されるタルクの含有量は特に制限はないが、好ましくは固形石鹸中にタルクの乾燥質量で0.01〜5.00質量%、より好ましくは0.1〜1.00質量%の範囲である。0.01質量%以下ではタルクの効能、即ち優れた洗浄効果及び泡の保持性が現れない。また、5.00質量%以上では泡立ちを悪くするので好ましくない。
【0024】
(C)ホホバ油
本発明の固形石鹸に含有されるホホバ油は、ホホバの実から圧搾して得られた植物油で、化粧品添加物として用いられるものであれば良い。
【0025】
ホホバ油は、他の植物では産しない液状のワックスを持ち、このワックスは酸化安定性が高く皮脂に近い成分であり、べとつきがなく、洗い上がりの肌に保湿膜を作り、皮下組織に浸透することによって皮下に溜まった脂肪性分泌物や老廃物を溶解し皮膚の新陳代謝を活発にし、皮脂を自然な状態にコントロールする。
【0026】
本発明の固形石鹸に含有されるホホバ油の含有量は特に制限はないが、好ましくは固形石鹸中に0.1〜1.00質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲である。0.1質量%以下ではホホバ油の効能、即ち優れた保湿作用が現れない。また、0.5質量%以上では泡立ちを悪くするので好ましくない。
【0027】
(D)黒砂糖
本発明の固形石鹸に含有される黒砂糖は、化粧品添加物として用いられるものであれば良く、砂糖黍の搾り汁をそのまま加熱し、濃縮したものを冷やし、固めて作られた物である。
【0028】
黒砂糖は,ビタミン、ミネラルが豊富で保湿成分に優れるうえ、肌に潤いを与え、くすみの無いキメ細やかな透明感ある白い肌にする。
【0029】
本発明の固形石鹸に含有される黒砂糖の含有量は特に制限はないが、好ましくは固形石鹸中に黒砂糖の乾燥質量で0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲である。0.01質量%以下では黒砂糖の効能、即ち優れたしっとり感が得られない。また、5.0質量%以上では使用感を悪くするので好ましくない。
【0030】
(E)松樹皮抽出物
本発明の固形石鹸に含有される松樹皮抽出物は、化粧品添加物として用いられる松樹皮抽出物で、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus
Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0031】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるフラボノイド類のプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0032】
松樹皮抽出物には、プロアントシアニジン、すなわち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体が含まれており、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体;すなわち、オリゴメリックプロアントシア二ジン、以下、適宜OPCと示す)がさらに好ましい。
【0033】
OPCは、上述のように抗酸化物質作用のほかに、コラーゲンの酸化および分解の阻害作用なども有する。さらに、OPCは、体内でのビタミンC(アスコルビン酸)の利用を効率的にすると共に、ビタミンC(アスコルビン酸)と相俟って、体内の抗酸化力を高める作用を有する。
【0034】
また、松樹皮抽出物には、OPCとともにカテキン(catechin)類が含まれている。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。天然物からは、狭義のカテキンといわれている(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。また、カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、活性化する性質がある
【0035】
本発明の固形石鹸に含有される松樹皮抽出物の含有量は特に制限はないが、好ましくは固形石鹸中に松樹皮抽出物の乾燥質量で0.0001〜0.05質量%、より好ましくは0.001〜0.01質量%の範囲である。0.0001質量%以下では松樹樹皮抽出物の効能、即ちしっとり感が得られない。また、0.05質量%以上では泡立ちを悪くし、使用感を損ねるので好ましくない。
【0036】
本発明の固形石鹸は上記(A)〜(E)を含有し、必要に応じて、化粧添加剤として種々の添加剤も含有する。このような化粧添加剤としては、香料、高級多価アルコール、植物抽出物、鉱物等が挙げられる。
【0037】
本発明の固形石鹸は、単にその成分の抗酸化作用による美白効果だけでなく、(A)〜(E)の各成分が有する種々の生理活性が相俟って、肌の健康状態を良好に保ち、浸透成分が皮下組織に浸透することによって、新陳代謝を活発にさせ、キメ細かい透明感ある潤いの肌になると考えられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0039】
(原料麦若葉の調整)
原料として、背丈が約30cmで刈り取った二条大麦の若葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、10cm程度の大きさに切断する。この大麦若葉を、送帯型蒸機を用いて、30秒間蒸煮処理した後に、大麦若葉の温度が50℃以下となるように気化冷却する。この蒸煮処理と冷却処理からなる工程を4回繰り返す。次いで、得られる大麦若葉を、水分含量が5質量%以下となるように、乾燥機中、60℃にて6時間温風乾燥後に、大麦若葉を約5mmの大きさに切断し、殺菌する。得られる大麦若葉を、200メッシュ区分を90質量%が通過するようにハンマーミルを用いて粉砕して、大麦若葉末を得る。
【0040】
(実施例1)
(A)大麦若葉末(株式会社東洋新薬)、(B)タルク(竹原化学工業株式会社)、(C)ホホバ油(香栄興業株式会社)、(D)黒砂糖(上野砂糖株式会社)、(E)松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)、を用いて、以下の表1に記載の組成にて、固形石鹸1および2を製造した。
【0041】
(比較例1)
実施例1で(C)のホホバ油を含有しない以外は、実施例1と同様に、以下の表1に記載の組成にて、石鹸3および4を製造し、(B)のタルクを含有しない以外は、実施例1と同様に、石鹸5を製造した。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例2)
次に、実施例1で得た固形石鹸1および2を、下記表2の評価基準により評価した。なお、美観性、使用感及びしっとり感についてはパネラー10名が、実際に石鹸を使用して洗顔し、評価した。その他、泡立ち及び泡の保持性については100mlのメスシリンダー(長さ20cm)に固形石鹸(1g)と15℃の精製水(20ml)を加え、上下に20回振盪させ、生成した泡の高さを測定することにより、泡立ちを評価し、その後、10分後放置したのち再度泡の高さを測定し、泡の減少量により、泡の保持性について評価した。結果を表3に纏めて示す。
【0044】
【表2】

【0045】
(比較例2)
比較例1で得た石鹸3および5ついて、実施例2と同様にして評価した。結果を表3に纏めて示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示す結果から、実施例の固形石鹸の方がいずれかの項目においても効能が高いことがわかる。さらに、松樹皮抽出物を含有する石鹸2の方が、石鹸1よりも保湿作用が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の固形石鹸は、(A)大麦若葉末、(B)タルク、(C)ホホバ油、(D)黒砂糖、(E)松樹皮抽出物とを配合させることによって、ミネラル成分が有効に作用し、優れた固形石鹸として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)大麦若葉末、(B)タルク、(C)ホホバ油、(D)黒砂糖を含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項2】
さらに固形石鹸に(E)松樹皮抽出物を含有することを特徴とする請求項1に記載の固形石鹸。

【公開番号】特開2007−217479(P2007−217479A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37356(P2006−37356)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】