説明

天体望遠鏡接眼部の情報合成構造

【課題】現在天体望遠鏡が捉えている天体観察像を確認しながら、正確な電子情報を合成することができる天体望遠鏡接眼の情報合成構造を提供する。
【解決手段】ファインダー望遠鏡19が捉えている天体観察像を、延長接眼鏡筒23を介してカメラ29で撮影する。電子情報発生手段18によりカメラ29にて撮影された天体映像を確認しながら天体映像に対する電子情報の作成等を行う。実際に天体映像を確認しながら電子情報の作成又は作成済み電子情報の選択且つ位置調整を行うため、不正確な電子情報が表示されることはなく、ビームスプリッタ28を介して合成した場合に電子情報と天体観察像の位置関係が正確に一致する。偏光フィルター33及び偏光反射面28aが設けられているため、表示パネル34自体がカメラ29へ映り込むことはなく、天体観察像に関連する電子情報の作成等を行う場合に、必要な天体映像と電子情報だけがパソコン18の画面に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天体望遠鏡接眼部の情報合成構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天体望遠鏡の望遠鏡本体又はファインダー望遠鏡における接眼部から天体を観察する場合、その観察されている天体観察像中に、天体の説明や画像等の電子情報も合成して見えるようにした観測装置が知られている。こうすることで、初心者でも天体の理解が容易になる。また、天体望遠鏡により目的とする観測対象を探し出すのも容易になる。
【0003】
この種の観測装置としては、天体望遠鏡の鏡筒の端部に、光束を直交方向に反射して接眼部に導くコンバイナを設ける共に、該コンバイナの接眼部とは反対側に電子情報を表示する表示パネルを設け、該表示パネルに表示された電子情報をコンバイナを介して視認することにより、電子情報を接眼部で観察されている天体観察像中に合成している。
【0004】
天体観察像に合成される電子情報は、天体望遠鏡の角度をロータリーエンコーダーでモニターしながら演算して、記憶データの中から天体望遠鏡の角度に応じて選択され、表示パネルに表示される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−122652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような関連技術にあっては、天体観察像中に合成する電子情報を、天体望遠鏡の角度からロータリーエンコーダーによりモニターしながら演算により間接的に求めるため、天体望遠鏡の回転精度に誤差があると、表示パネルに表示される電子情報にも狂いが生じ、正確な電子情報を合成できない場合がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、現在天体望遠鏡が捉えている天体観察像に対して正確な電子情報を合成することができる天体望遠鏡接眼部の情報合成構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、天体望遠鏡の鏡筒の端部における天体映像に由来する第1の光束の光路と電子映像に由来する第2の光束の光路とが交差する位置に設けられるビームスプリッタであって、前記ビームスプリッタにおいて前記第1の光束の光路は第1の光路と第2の光路に分岐し、前記第2の光束の光路は第3の光路と第4の光路に分岐し、前記第1の光路と第3の光路が実質的に一致し、前記第2の光路と第4の光路が実質的に一致するように設けられるものと、前記ビームスプリッタを介して前記第1の光路及び前記第3の光路上に設けられる接眼光学系と、前記ビームスプリッタを介して前記第2の光路及び前記第4の光路上に設けられる撮像装置と、前記第2の光束の光路上において前記電子映像を表示する装置と前記撮像装置の間に設けられる光束選択手段であって、前記電子映像の光束の前記撮像装置への入射を遮断するものと、前記撮像装置で撮像された前記天体映像に基づいて前記電子映像を生成する制御部とを具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記光束選択手段が、前記第2の光束の光軸上において前記電子映像を表示する装置と前記ビームスプリッタの間に設けられる第1の偏光手段と、前記第4の光軸上において前記ビームスプリッタと前記撮像装置の間に設けられる第2の偏光手段であって、前記第1の偏光手段を経由した光束を遮断するものとを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記第1の偏光手段が第1の偏光を有する偏光フィルターであり、前記第2の偏光手段は前記第1の偏光と直交する偏光を有するビームスプリッタの偏光反射面であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記第1の偏光手段が第1の偏光を有する第1の偏光フィルターであり、前記第2の偏光手段は前記第1の偏光と直交する偏光を有する第2の偏光フィルターであることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記制御部が前記天体映像を表示する装置および情報入力装置を有し、前記天体映像を確認しながら前記天体映像に関連する電子情報の作成又は作成済み電子情報の選択且つ位置調整が可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、天体望遠鏡の鏡筒が、望遠鏡本体の鏡筒であることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、天体望遠鏡の鏡筒が、ファインダー望遠鏡の鏡筒であることを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、天体望遠鏡の鏡筒が、望遠鏡本体又はファインダー望遠鏡の端部に回転自在に取付けられ、床上の観察者に届く長さを有する延長接眼鏡筒であることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、前記電子映像を表示する装置は液晶パネルであり、前記第1の偏光手段は前記液晶パネルに内蔵される偏光フィルターであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、まず現在天体望遠鏡が捉えている天体観察像をカメラで撮影する。撮影された天体映像は、観察者が接眼部から見ている天体観察像と同じである。次に、電子情報発生手段により、カメラにて撮影された天体映像を確認しながら天体映像に対する電子情報の作成等を行う。実際に天体映像を確認しながら電子情報の作成又は作成済み電子情報の選択且つ位置調整を行うため、間違った電子情報が表示されることはなく、ビームスプリッタを介して合成した場合に電子情報と天体観察像の位置関係が正確に一致する。尚、映込防止手段が設けられているため、表示パネル自体がカメラへ映り込むことはなく、電子情報発生手段で天体観察像に対する電子情報の作成等を行う場合に、必要な天体映像と電子情報だけが電子情報発生手段に表示されることになり、作業が行い易い。
【0017】
本発明によれば、さらに、望遠鏡本体の鏡筒に適用するため、観察対象を狭視野・高倍率で詳細に観察する場合に好適である。
【0018】
本発明の他の技術的特徴によれば、本発明がファインダー望遠鏡の鏡筒に適用されると、観察対象付近を広視野・低倍率で特定し、観察対象を探すのに好適である。尚、天体によってはファインダー望遠鏡だけで十分な観察が行える。
【0019】
また、本発発明が延長接眼鏡筒の鏡筒に適用されると、望遠鏡本体の鏡筒の位置が高い大型の天体望遠鏡の場合も、観察者は高い台の上に立つ必要がなく、床上にいるままで観察が行える。従って、子供等にとって安全である。
【0020】
本発明によれば、さらに、映込防止手段としての光束選択手段が、偏光フィルターと、ビームスプリッタの偏光反射面であるため、鏡筒の端部内の狭いスペースにも採用することができる。
【0021】
また、電子映像表示装置を液晶パネル等の偏光表示装置とすることにより偏光フィルターを別途設ける必要がないので電子映像の光量の減衰を伴わずに天体映像と合成した映像を接眼部で観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
第1実施形態
本発明の好適な第1実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。この実施形態に係る天体望遠鏡1は、望遠鏡本体2の鏡筒が赤道儀式の架台3により、地軸と平行と極軸を中心にして、常に天体を捉えた状態で同期回転するようになっている。望遠鏡本体2は、口径が100cmクラスに相当する大型のもので、先端開口が上下に長い形状をしており、取り入れられた天体からの光束Lが、内部で平面鏡4と凹面鏡5により折り返される構造になっている。
【0023】
凹面鏡5で反射された光束Lは、集光しながら平面鏡4に形成された中央孔6を通過し、望遠鏡本体2の基端部7内において、光軸K上の焦点位置にピントを結ぶようになっている。望遠鏡本体2の基端部7は、大型のため、床面から高い位置にある。
【0024】
望遠鏡本体2の基端部7には、視野レンズ44、ビームスプリッタ8と共に、光軸K上のピント位置にエリアCCDイメージセンサ等のエリアカメラ9が設置されている。ビームスプリッタ8にて分岐される直交方向には、延長接眼鏡筒10が設置されている。
【0025】
延長接眼鏡筒10のビームスプリッタ8を挟んだ反対側には、拡大レンズ11、偏光フィルター12を介して表示パネル13が設置されている。光束Lの一部を反射するビームスプリッタ8は、偏光フィルター12を透過した光を反射しない性質を有する偏光反射面8aを有している。
【0026】
延長接眼鏡筒10はA方向に回転自在で、また基端部7ごとB方向にも回転自在である。延長接眼鏡筒10は一端が床面上にいる観察者に届く長さを有し、一端側には接眼部14が設けられている。他端側にはカウンタウェイト15が設けられている。カウンタウェイト15により延長接眼鏡筒10の重さが、延長接眼鏡筒10を支えている観察者の腕に加わらないようになっている。ビームスプリッタ8にて反射された光束Lの一部はミラー16を介して接眼部14側へ反射され、接眼レンズ17を介して、接眼部14より光学的に天体観察像を観察することができる。
【0027】
前記カメラ9、表示パネル13は、後述するパソコン(電子情報発生手段)18に接続されており、その機能は後述する。
【0028】
望遠鏡本体2の側面には、ファインダー望遠鏡19が取付けられている。ファインダー望遠鏡19は、望遠鏡本体2における光束Lの取り入れ側の光軸Kに沿った方向を向いている。ファインダー望遠鏡19の内部には対物レンズ20や視野レンズ21が設けられ、望遠鏡本体2よりも低倍率で天体観察像を捉えられるようになっている。
【0029】
ファインダー望遠鏡19は望遠鏡本体2に取付けられているため、高い位置にある。従って、ファインダー望遠鏡19の基端部22にも、左右両側に延長接眼鏡筒23が取付けられている。
【0030】
ファインダー望遠鏡19は望遠鏡本体2よりも低倍率とはいえ、望遠鏡本体2自体が大型のため、ファインダー望遠鏡19だけでも十分な天体観測が行える。従って、ファインダー望遠鏡19の左右両側に延長接眼鏡筒23を取付けることにより、より多くの観察者が天体観察像を見ることができる。
【0031】
ファインダー望遠鏡19の基端部22には、ビームスプリッタ24とミラー25が設けられ、ファインダー望遠鏡19内の光束を左右に振り分けている。このビームスプリッタ24は普通の反射面24aを有している。左右の延長接眼鏡筒23は、左右に振り分けられた光束Lを中心にして、A方向に回転することができる。
【0032】
<情報合成構造>
左右に振り分けられた光束Lは、それぞれ延長接眼鏡筒23の回転軸に位置するミラー26にて更に一端側に反射される。延長接眼鏡筒23の一端側に反射された光束Lは、リレーレンズ27及びビームスプリッタ28を介して光軸K上にピントを結ぶ。光軸K上のピント位置にはカメラ29が設置されている。
【0033】
ビームスプリッタ28にて分岐される直交方向には、接眼レンズ30を内部に有する接眼部31が設けられ、そのビームスプリッタ28を挟んだ反対側には拡大レンズ32、偏光フィルター33を介して表示パネル34が設置されている。ビームスプリッタ28は前記同様の偏光反射面28aを有している。カメラ29と表示パネル34は、電子情報発生手段としてのパソコン18に接続されている。延長接眼鏡筒23の他端側にはカウンタウェイト35がそれぞれ設けられている。
【0034】
図5は本発明の情報合成構造の構成概念図である。光束Lは光軸Kに沿った光路(以下光路Kという)を通りビームスプリッタ28で折り曲げられて接眼部31に向かうとともに、光束の一部がビームスプリッタ28を透過して光路K’に沿って撮像装置29に向かう。一方、表示パネル34に表示された電子映像の光束Leの光路Keはビームスプリッタ28を透過して接眼部31に向かう。撮像装置(カメラ)29で撮像した映像は電子情報発生手段を有する制御部18に入力され、その映像に基づいて電子情報が生成され表示パネル34に出力される。
【0035】
この場合、表示パネル34に表示された電子情報が撮像装置29に写り込むとループが形成されて電子情報の生成に支障があるため、ビームスプリッタ28の反射面28aから撮像装置29に到る光路Ke’において電子情報の光束Leを遮断する光束選択手段を設ける必要がある。本実施形態においては、表示パネル34とビームスプリッタ28の間の光路Keに偏光フィルター33を設けて電子情報に係る光束Leの偏光方向を限定し、ビームスプリッタ28の反射面28aを偏光フィルター33の偏光と直交する偏光特性を有する偏光反射面とすることにより写り込みを遮断する。
【0036】
一方、天体映像の光束Lはビームスプリッタ28aを透過して経路K’に沿って撮像装置29に到達することができる。換言すれば、表示パネル34からビームスプリッタ28にいたる光路Keおよびビームスプリッタ28から撮像装置29に到る光路Ke’上に撮像装置への光束Leの写り込みを防止するための光束選択手段が設けられる。
【0037】
<延長接接眼鏡筒>
望遠鏡本体2の基端部7側と、ファインダー望遠鏡19における延長接眼鏡筒23の一端部側の構造は、倍率等が異なるだけで、基本的に同じなので、以下ファインダー望遠鏡19側の延長接眼鏡筒23の構造を代表して説明する。
【0038】
カメラ29にて撮影される天体映像と、接眼部31から見える光学的な天体観察像とは同一である。表示パネル34の表示画像は、偏光フィルター33と、ビームスプリッタ28の偏光反射面28aにより、カメラ29に映り込まないので、カメラ29では、ビームスプリッタ28を通過した天体からの天体観察像だけが撮像される。
【0039】
そのカメラ29にて撮影された天体映像をパソコン18の画面に映す。そして、オペレータはパソコン18の画面上で、映し出された天体映像に関連づけられた電子情報を重畳的に表示させることができる。電子情報とは、現在観察中の天体の説明(文字、記号等)や、画像(イラスト等)、録画画像、CG画像などである。
【0040】
パソコン18では、画面に表示された天体映像に対して、電子情報を作成して表示させることもできるし、予め記憶されたものから選択して表示させ、位置調整を行うことができる。パソコン18のオペレータは、実際に接眼部31から観察者が見ている天体観察像と同一の天体映像をパソコン18の画面上で確認しながら電子情報の作成又は作成済み電子情報の選択且つ位置調整を行うため、不正確な電子情報が表示されることはなく、天体映像(天体観察像)との位置関係も正確である。
【0041】
本発明によれば、ビームスプリッター28は光軸Kを通って接眼部31に到る天体映像の光束と、表示パネル34から接眼部31に到る表示画像の光束とが交差する位置に配置される。情報合成部において光軸K上に置かれた第1のビームスプリッターによりカメラへの天体映像を分岐し、さらに光軸K上に置かれた第2のビームスプリッタにより表示パネルの情報映像を合成することもできるが、2枚のビームスプリッタにより接眼部に到る天体映像の光量の減衰が大きい。これに対して、情報合成部においてビームスプリッター28を1枚配置することにより情報映像を天体映像に合成することによって接眼部31への天体映像の光量の減衰を抑えることができる。
【0042】
そして、パソコン18から、天体観察像を除いた電子情報だけが表示パネル34に出力される。表示パネル34には電子情報だけが表示される。接眼部31から観察者は、ビームスプリッタ28等を介して表示パネル34に表示された電子情報を、観察中の天体観察像に合成した状態で見ることができる。
【0043】
例えば、図7は、電子情報の無い生の天体観察像で、土星を観察しているところである。それに、「土星」の文字36、距離を表す目盛37、地球や月のイラスト38などの電子情報が合成したのが図8である。カーソル39も表示され、ポインターとして説明員が使用することができる。この合成された天体観察像は、ファインダー望遠鏡19の延長接眼鏡筒23側の観察者と、パソコン18の操作者の合計3名が、殆ど同じものを見ているため、そのうちの誰か一人が説明する場合も、説明しやすく、理解しやすい。望遠鏡本体2の延長接眼鏡筒10からの観察者は、ファインダー望遠鏡19側の観察者とは、視野及び倍率が異なったものを見ているが、合成された天体観察像を見ることは同じである。
【0044】
また、図9に示すように、赤外線やX線で撮影された他の天体画像40、41を合成して、現在観察中の可視光の天体観察像と比較することもできる。
【0045】
図10に示すように、曇りの日や雨の日など、生の天体観察像が観察出来ない場合には、表示パネル34に他の大型天体望遠鏡や宇宙望遠鏡で撮影された録画映像49のみを表示して見ることができる。映画やテレビの画面でなく、実際に望遠鏡を覗いて見る映像なので、あたかも自分が大型天体望遠鏡や宇宙望遠鏡を実際に見ている疑似体験ができる。
【0046】
図11に示すように、宇宙からみた地球などを表したCG画像10のみを表示して、未知の世界を体験することもできる。これも、映画やテレビの画面でなく、望遠鏡を通して見ることにより、今まで経験したことのない新たな体験をすることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、偏光フィルター33を表示パネル34とビームスプリッタ28の間の光路Keに配置したが、表示パネル34と偏光フィルター33を一体に構成してもよい。たとえば、偏光フィルターが内蔵された液晶パネル(LCD)等の偏光表示パネル54を使用しても良い。この場合には、偏光表示パネル54の偏光方向と偏光フィルター33の偏光方向とが直交するように位置づけられる。すなわち、液晶パネル54に内蔵された偏光フィルター34は本発明の光束選択手段に含まれ、偏光フィルター34の偏光方向と偏光フィルター33の偏光方向とが直交する。他の実施形態においても同様である。
【0048】
電子映像表示装置として偏光表示パネル54を用いることにより、表示装置の一部としての偏光手段を偏光フィルター31として利用できる。そのため偏光フィルターを別途設ける必要がなく光量の減衰がない。
【0049】
第2実施形態
図12に本発明の第2実施形態に係る情報構成構造であって延長接眼鏡筒10に適用したものを示す。第1実施形態と異なるのはビームスプリッタ58は偏光面を持たず、その代わりにカメラ29とビームスプリッタ58の間に偏光フィルター59を配置していることである。
【0050】
すなわち、図5において、表示パネル34とビームスプリッタ28の間の光路Keに偏光フィルター33を設けて電子情報に係る光束Leの偏光方向を限定し、さらにビームスプリッタ28とカメラ29の間の光路Ke’に偏光フィルター33の偏光と直交する偏光特性を有する偏光フィルター59を設けることにより電子情報の写り込みによるループ形成を遮断する。その結果、天体映像の光束Lのみが光路K’に沿ってカメラ29に到達することができる。他の構成は第1実施例と同じである。
【0051】
変更実施形態
第1実施形態および第2実施形態では、表示パネル34に表示される電子情報の映像の光束がビームスプリッタ28を直進して接眼部31に到達し、ビームスプリッタ28におけるカメラ29に向かう反射光が遮断される構成とした。これに対して、ビームスプリッタに対するカメラ29および接眼部31の位置関係を交換し、表示パネルに表示される電子情報の映像の光束がビームスプリッタを反射して接眼部に到達し、ビームスプリッタの透過光が遮断される構成としてもよい。
【0052】
すなわち、図13に示すように、ビームスプリッタ28’は偏光フィルター33を透過した光を透過させない偏光反射面33a’を有する。このように構成しても第1実施形態と同様の情報合成構造を構成することができる。
【0053】
また、偏光面を持たないビームスプリッタ58とビームスプリッタとカメラ29の間の光路K’に偏光フィルター33を透過した光を透過させない偏光フィルター59を配置しても第2実施形態と同様の情報合成構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】天体望遠鏡を示す全体斜視図。
【図2】望遠鏡本体の断面図。
【図3】望遠鏡本体の基端部と延長接眼鏡筒の断面図。
【図4】ファインダー望遠鏡及び延長接眼鏡筒の断面図。
【図5】情報合成構造の概念図。
【図6】延長接眼鏡筒の一端の情報合成構造を示す断面図。
【図7】電子情報を合成しない天体観察像を示す図。
【図8】文字等の電子情報を合成した天体観察像を見ている図。
【図9】天体画像等の電子情報を合成した天体観察像を見ている図。
【図10】録画映像を見ている図。
【図11】CG画像を見ている図。
【図12】第2実施形態に係る情報合成構造を示す断面図。
【図13】本発明の変更実施形態に係る情報合成構造の概念図
【符号の説明】
【0055】
1 天体望遠鏡
2 望遠鏡本体
8 ビームスプリッタ
8a 偏光反射面(映込防止手段)
9 カメラ
10 延長接眼鏡筒
12 偏光フィルター(映込防止手段)
13 表示パネル
14 接眼部
18 パソコン(電子情報発生手段)
19 ファインダー望遠鏡
23 延長接眼鏡筒
28 ビームスプリッタ
28a 偏光反射面(映込防止手段)
29 カメラ
31 接眼部
33 偏光フィルター(映込防止手段)
34 表示パネル
A、B 回転方向
54 偏光表示パネル
58 ビームスプリッタ
59 偏光フィルター
L 光束
K 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天体望遠鏡の鏡筒の端部における天体映像に由来する第1の光束の光路と電子映像に由来する第2の光束の光路とが交差する位置に設けられるビームスプリッタであって、前記ビームスプリッタにおいて前記第1の光束の光路は第1の光路と第2の光路に分岐し、前記第2の光束の光路は第3の光路と第4の光路に分岐し、前記第1の光路と第3の光路が実質的に一致し、前記第2の光路と第4の光路が実質的に一致するように設けられるものと、
前記ビームスプリッタを介して前記第1の光路及び前記第3の光路上に設けられる接眼光学系と、
前記ビームスプリッタを介して前記第2の光路及び前記第4の光路上に設けられる撮像装置と、
前記第2の光束の光路上において前記電子映像を表示する装置と前記撮像装置の間に設けられる光束選択手段であって、前記電子映像の光束の前記撮像装置への入射を遮断するものと、
前記撮像装置で撮像された前記天体映像に基づいて前記電子映像を生成する制御部と
を具備することを特徴とする天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項2】
前記光束選択手段は、
前記第2の光束の光軸上において前記電子映像を表示する装置と前記ビームスプリッタの間に設けられる第1の偏光手段と、
前記第4の光軸上において前記ビームスプリッタと前記撮像装置の間に設けられる第2の偏光手段であって、前記第1の偏光手段を経由した光束を遮断するものとを有することを特徴とする請求項1記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項3】
前記第1の偏光手段は第1の偏光を有する偏光フィルターであり、
前記第2の偏光手段は前記第1の偏光と直交する偏光を有するビームスプリッタの偏光反射面であることを特徴とする請求項2記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項4】
前記第1の偏光手段は第1の偏光を有する第1の偏光フィルターであり、
前記第2の偏光手段は前記第1の偏光と直交する偏光を有する第2の偏光フィルターであることを特徴とする請求項2記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項5】
前記制御部は前記天体映像を表示する装置および情報入力装置を有し、前記天体映像を確認しながら前記天体映像に関連する電子情報の作成又は作成済み電子情報の選択且つ位置調整が可能であることを特徴とする請求項1記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項6】
天体望遠鏡の鏡筒が、望遠鏡本体の鏡筒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項7】
天体望遠鏡の鏡筒が、ファインダー望遠鏡の鏡筒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項8】
天体望遠鏡の鏡筒が、望遠鏡本体又はファインダー望遠鏡の端部に回転自在に取付けられ、床上の観察者に届く長さを有する延長接眼鏡筒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。
【請求項9】
前記電子映像を表示する装置は液晶パネルであり、
前記第1の偏光手段は前記液晶パネルに内蔵される偏光フィルターであることを特徴とする請求項2記載の天体望遠鏡接眼部の情報合成構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−258212(P2009−258212A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104510(P2008−104510)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】