説明

天災予防装置

【課題】車両に対する天災を確実に予防すること。
【解決手段】天災予防装置10は、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する天災危険度推定部14dと、天災危険度推定部14dによって推定された所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定する天災危険性判定部14eと、天災危険性判定部14eによって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知する天災危険性通知部14gとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御を行う天災予防装置に関し、特に、車両に対する天災を確実に予防することができる天災予防装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御を行う天災予防装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された自動車情報提供システムでは、所定の車両から駐車位置に関する情報を受信し、該受信した駐車位置の気象データを取得し、該取得した気象データに基づいて天災予防措置(すなわち、天災を予防するために必要な措置)を車両の運転者に報知する。
【0003】
すなわち、当該駐車場所において、降水量が多く、大雨洪水警報が発令されている場合には、駐車する場所を高地に変更するように車両の運転手に通知する。かかる自動車情報提供システムによれば、運転手は、駐車位置の天候に合致した必要な対応を知ることができるので、車両に対する天災を予防することができる。
【0004】
ここで、かかる気象データとは、所定の広さの区域ごとに、当該区域における天気情報(例えば、降水量、降雪量、気温、風速または各種警報などの情報)が地図上にマッピングされたものである。例えば、アメダスによって観測された気象データが広く知られており、この気象データは、大局的な観点から天候状況を俯瞰することに優れている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−148984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術(特許文献1)では、当該駐車場所が属する区域における気象データが天災を受けるおそれのある天候であれば、天災危険度(すなわち、天災を受ける危険性)が高い駐車場所であると画一的に推定するものであるため、当該駐車場所の正確な天災危険度を推定することができず、車両に対する天災を確実に予防することができないという問題点があった。
【0007】
すなわち、かかる気象データは、特定の区域という枠における天候を示すものに過ぎず、実際には、同一の区域内に存在する駐車場所であっても、天候は一様ではないため、それぞれの駐車場所における天災危険度(すなわち、天災を受ける危険性)は、相違する。さらに、それぞれの駐車場所が有する地理的特性(例えば、駐車場所が設けられている地形)および環境(例えば、屋内または屋外という環境)や、車両体型(例えば、車高や車両の形状など)によっても、天災危険度は、相違することとなる。
【0008】
このため、上記の従来技術のように、当該駐車場所が属する区域における気象データが天災を受けるおそれのある天候である場合に、天災危険度(すなわち、天災を受ける危険性)が高い駐車場所であると画一的に推定したのでは、当該駐車場所の正確な天災危険度を推定することができない。
【0009】
例えば、大雨洪水警報が発令されるほど降水量が多くなくても、当該駐車場所が周辺地域に比較して低地に存在し、周辺地域に流れる河川が増水していれば、当該駐車場所に雨水が流入・滞留するおそれが高くなる。ところが、上記の従来技術では、かかる降水量から当該駐車場所の正確な水没危険度(すなわち、車両が水没する危険性)を推定することが不可能であるため、水没予防措置(すなわち、水没を予防するために必要な措置)を報知することができず、車両の運転手は、車両が水没する危険性を看過することとなる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、車両に対する天災を確実に予防することができる天災予防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明に係る天災予防装置は、気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御を行う天災予防装置であって、前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する天災危険度推定手段と、前記天災危険度推定手段によって推定された所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定する天災危険性判定手段と、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知する天災危険性通知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記天災危険度推定手段は、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所から所定の範囲内に存在する駐車場所の天災危険度を推定し、前記天災危険性通知手段は、前記天災危険度推定手段によって天災危険度が推定された所定の範囲内に存在する駐車場所のうち、前記所望の駐車場所の天災危険度に比較して天災危険度が低い駐車場所を通知することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置の中から所望の駐車場所の天災危険度をもとに天災予防措置を選択する天災予防措置選択手段をさらに備え、前記天災危険性通知手段は、前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を通知することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記天災予防措置選択手段は、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置からの中から車両データをもとに天災予防措置を選択し、前記天災危険性通知手段は、前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を通知することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を実行する天災予防措置実行手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記天災危険度推定手段は、前記気象データ、並びに車両に対する天災を発生させる要因となる地形データ、駐車場所の環境、車両データ若しくはこれらの組合せに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記車両の運転手の降車意思を検知する降車意思検知手段をさらに備え、前記天災危険度推定手段は、前記降車意思検知手段によって車両の運転手に降車の意思があると検知された場合に、前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明に係る天災予防装置は、上記の発明において、前記車両の運転手が降車したか否かを検知する降車検知手段をさらに備え、前記天災危険性通知手段は、前記降車検知手段によって車両の運転手が降車したと検知された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を前記車両の運転手が所持する通信装置に通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定し、推定された所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定し、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知することとしたので、当該駐車場所の天災危険度を正確に推定することができ、車両に対する天災を確実に予防することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所から所定の範囲内に存在する駐車場所の天災危険度を推定し、天災危険度が推定された所定の範囲内に存在する駐車場所のうち、所望の駐車場所の天災危険度に比較して天災危険度が低い駐車場所を通知することとしたので、車両の運転手が駐車しようとした駐車場所の天災危険性が高い場合でも、安全かつ近隣に存在する駐車場所を推奨することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置の中から所望の駐車場所の天災危険度をもとに天災予防措置を選択し、選択された天災予防措置を通知することとしたので、天災危険性に応じた天災予防措置を実行することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置からの中から車両データをもとに天災予防措置を選択し、選択された天災予防措置を通知することとしたので、車両の状態に応じた天災予防措置を実行することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を実行することとしたので、車両の運転手によって当該車両が天災危険度の高い駐車場所に駐車された場合でも、車両に対する天災を確実に予防することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、気象データ、並びに車両に対する天災を発生させる要因となる地形データ、駐車場所の環境、車両データ若しくはこれらの組合せに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することとしたので、多面的な観点において車両に対する天災の発生に因果関係がある傾向データを複合的に用いて所望の駐車場所の天災危険度を推定することができ、当該駐車場所の天災危険度をより正確に推定することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、車両の運転手の降車意思を検知し、車両の運転手に降車の意思があると検知された場合に、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することとしたので、天災危険度が高い駐車場所に駐車されることを看過せず、車両に対する天災を確実に予防することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、車両の運転手が降車したか否かを検知し、車両の運転手が降車したと検知された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を車両の運転手が所持する通信装置に通知することとしたので、車両の運転手が車外にいる場合でも、当該駐車場所の天災危険性を通知することが可能な天災予防装置が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る天災予防装置をナビゲーション装置に適用した場合の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る天災予防装置の概要および特徴を説明した後に、本実施例1に係る天災予防装置を説明し、最後に、他の実施例として種々の変形例(実施例2)を説明することとする。
【0028】
(概要および特徴)
まず最初に、本発明に係る天災予防装置の概要および特徴を説明する。図1は、本実施例1に係る天災予防装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この天災予防装置10は、気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御をおこなうものである。
【0029】
ここで、本発明に係る天災予防装置10は、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定し、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定し、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知する「天災危険性通知処理」に主たる特徴があり、かかる「天災危険性通知処理」によって、車両に対する天災を確実に予防することができるようにしている。
【0030】
この主たる特徴を具体的に説明すると、この天災予防装置10は、気象データ(例えば、降水量、降雪量、気温、風速または各種警報などの情報)、並びに車両に対する天災(すなわち、車両の水没および車両に対する雪害などの天災)を発生させる要因となる推定要素情報(例えば、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データ)を当該車両から取得する。なお、かかる地形データは、駐車場所が有する地理的特性(例えば、駐車場所が設けられている地形)を示す情報であり、駐車場所の環境情報は、駐車場所が存在する環境(例えば、屋内または屋外という環境)を示す情報であり、また、車両データは、車両体型(例えば、車高や車両の形状など)を示す情報である。
【0031】
そして、この天災予防装置10は、車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データを反映した「水没危険度算定式」および「雪害危険度算定式」に、上記の気象データ、および車両に対する天災を発生させる要因となる推定要素情報を代入することで、所望の駐車場所の天災危険度(すなわち、水没危険度および雪害危険度)を推定する(図8参照)。
【0032】
なお、かかる「水没危険度算定式」は、周辺地域の標高に比較して当該駐車場所の標高が低い場合には、雨水が滞留しやすく、水没危険度が高くなるという傾向、当該駐車場所が屋外にある場合には、滞留した雨水に直接さらされるため、水没危険度が高くなるという傾向、車両の車高が低い場合には、車内に雨水などが浸入しやすく、水没危険度が高くなるという傾向などを反映して設定された算定式である。
【0033】
また、「雪害危険度算定式」は、当該駐車場所の側面が山などの斜面に接している場合には、雪崩などが起こるおそれがあるため、雪害危険度が高くなるという傾向、当該駐車場所が屋外にある場合には、車両が降雪に直接さらされ、また気温の影響も受けやすいため、車載物(例えば、サイドブレーキ、ワイパー、ウォッシャ液およびクーラント)が凍結してしまうおそれがあるので、雪害危険度が高くなるという傾向、また、ウォッシャ液やクーラントの添加剤が劣化している場合には、より凍結を起こしやすくなるため、雪害危険度が高くなるという傾向などを反映して設定された算定式である。
【0034】
このように、車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データとして、水没または雪害の発生に因果関係がある傾向データを用いて所望の駐車場所の天災危険度を推定することで、当該駐車場所の正確な天災危険度を推定することができるようにしている。
【0035】
したがって、上記した従来技術の例で言えば、天災の発生に相関関係がある気象データのみに依存して駐車場所の天災危険度を推定するのではなく、天災の発生に因果関係がある傾向データを用いて所望の駐車場所の天災危険度を推定することとしたので、当該駐車場所の天災危険度を正確に推定することができ、上記した主たる特徴のように、車両に対する天災を確実に予防することが可能になる。
【実施例1】
【0036】
次に、本実施例1に係る天災予防装置について説明する。なお、ここでは、本実施例1に係る天災予防装置の構成を説明した後に、この天災予防装置の各種処理の手順を説明することとする。
【0037】
(天災予防装置の構成)
図1は、本実施例1に係る天災予防装置の構成を示すブロック図である。この天災予防装置10は、人工衛星から発信される位置情報を取得するGPS受信機31と、通信メディア32と、入力部11と、出力部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
【0038】
このうち、入力部11は、ユーザーからの入力操作を受け付けるインターフェースであり、例えば、所望の駐車場所(例えば、降車時の場所(すなわち、現在地)、目的地など利用者が閲覧を希望する任意の駐車場所)の天災危険性(すなわち、水没危険性並びに雪害危険性)の通知要求の受付をおこなう。
【0039】
出力部12は、液晶パネルやディスプレイなどの表示デバイスであり、例えば、天災危険性判定部14eによって天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災(すなわち、水没による被害または雪害)を受けるおそれがある旨を表示もしくは音声出力する。
【0040】
記憶部13は、制御部14による各種処理に必要なデータおよびプログラムを格納する格納手段(記憶手段)であり、地図データ記憶部13a、気象データ記憶部13bおよび通知内容ルールベース13cを備える。このうち、地図データ記憶部13aは、地図情報に地形データを対応付けて記憶する処理部であり、例えば、図2に示すように、「A駅」周辺の地図情報に地形データを対応付けて記憶している。
【0041】
気象データ記憶部13bは、推定要素情報取得部14cによって取得された気象データを記憶する処理部であり、例えば、図3−1および図3−2に示すように、推定要素情報取得部14cによって取得された「A市」の気象データ(すなわち、各時間帯ごとの気温、降水量、降雪量、風向、風速、湿度、日照時間、気圧および各種警報などの情報)を記憶している。なお、本実施例1では、AMeDAS(Automated Meteorological Data Acquisition System:地域気象観測システム)によって観測された気象データを用いることとし、通信メディア32を介して気象庁などの機関と通信を行うことによってかかる気象データを取得することとする。
【0042】
通知内容ルールベース13cは、天災危険度に応じた通知内容を記憶するルールベースであり、例えば、図4に示すように、水没危険度が「X」未満である場合の通知内容として、水没のおそれが低い旨のメッセージを、水没危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合の通知内容として、水没のおそれが高い旨のメッセージおよび水没予防措置A(図5参照)を、水没危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合の通知内容として、水没のおそれが高い旨のメッセージおよび水没予防措置B(図5参照)を、水没危険度が「Z」以上である場合の通知内容として、水没のおそれが高い旨のメッセージおよび水没予防措置C(図5参照)を記憶している。
【0043】
なお、水没予防措置Aとは、マフラー25に蓋をして車内への雨水の進入を防止する雨水進入防止措置を指し、水没予防措置Bとは、雨水進入防止措置およびサスペンション24を制御して車高(タイヤの設置面から車体までの高さ)を上げる車高補正措置を指し、水没予防措置Cとは、水没危険度が低い場所へ駐車場所を変更する駐車場所変更措置を指す。
【0044】
また、通知内容ルールベース13cは、図6に示すように、雪害危険度が「X」未満である場合の通知内容として、雪害を受けるおそれが低い旨のメッセージを、雪害危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合の通知内容として、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージおよび雪害予防措置A(図7参照)を、雪害危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合の通知内容として、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージおよび雪害予防措置B(図7参照)を、雪害危険度が「Z」以上である場合の通知内容として、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージおよび雪害予防措置C(図7参照)を記憶している。
【0045】
なお、雪害予防措置Aとは、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置を指し、雪害予防措置Bとは、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置、並びに、ウォッシャ液およびクーラントの不凍措置を指し、雪害予防措置Cとは、雪害危険度が低い場所へ駐車場所を変更する駐車場所変更措置を指す。
【0046】
制御部14は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、降車意思検知部14aと、降車検知部14bと、推定要素情報取得部14cと、天災危険度推定部14dと、天災危険性判定部14eと、天災予防措置選択部14fと、天災危険性通知部14gと、天災予防措置実行部14hとを備える。
【0047】
このうち、降車意思検知部14aは、車両の運転手の降車意思を検知する処理部であり、具体的には、IGキー21が「OFF」状態になった場合、IGキー21が取り外された場合、若しくはドア22のドアロックが「OFF」状態になった場合に、運転手に降車の意思があると検知する。
【0048】
降車検知部14bは、車両の運転手が降車したか否かを検知する処理部であり、具体的には、IGキー21が取り外され、かつドア22が「開」状態になった場合、IGキー21が取り外され、かつドア22が「開」状態を経て「閉」状態になった場合、シート荷重センサ23において人による荷重がなくなり、かつドア22が「開」状態になった場合、若しくは、シート荷重センサ23において人による荷重がなくなり、かつドア22が「開」状態を経て「閉」状態になった場合に、運転手が降車したと検知する。
【0049】
推定要素情報取得部14cは、天災危険度を推定する際に、推定要素となる情報を取得する処理部であり、車両に対する天災を発生させる要因となる推定要素情報を取得する。具体的には、気象データ(すなわち、時刻ごとの気温、降水量、降雪量、風向、風速、湿度、日照時間、気圧および各種警報などの情報)、並びに車両に対する天災(すなわち、車両の水没および車両に対する雪害などの天災)を発生させる要因となる推定要素情報(例えば、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データ)を当該車両から取得する。
【0050】
これを具体的に説明すると、推定要素情報取得部14cは、GPS受信機31から位置情報(例えば、降車時の場所(現在地)、または利用者によって指定された目的地などの駐車場所)を取得し、かかる位置情報をもとに、地図データ記憶部13aを参照して、駐車場所の地形データ(図2参照)および駐車場所の環境情報(例えば、駐車場所が「屋外」または「屋内」という環境情報)を取得する。また、自車両1の車両型式およびサスペンション24の制御情報をもとに、車両データ(例えば、タイヤ設置面から車体までの車高)を取得する。
【0051】
また、推定要素情報取得部14cは、地図データ記憶部13aを参照して、GPS受信機31から得られた位置情報(例えば、降車時の場所(現在地)、または利用者によって指定された目的地などの駐車場所)に対応する区域の気象データ(すなわち、時刻ごとの気温、降水量、降雪量、風向、風速、湿度、日照時間、気圧および各種警報などの情報)を取得して気象データ記憶部13bに記憶する(図3−1または図3−2参照)。
【0052】
天災危険度推定部14dは、推定要素情報取得部14cによって取得された気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する処理部である。例えば、降車時にかかる処理がおこなわれている場合には、車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データを反映した「水没危険度算定式」および「雪害危険度算定式」に、推定要素情報取得部14cによって取得された推定要素情報(すなわち、気象データ、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データ)を代入することで、現在地(すなわち、降車時の駐車場所)の天災危険度(すなわち、水没危険度および雪害危険度)を推定する(図8参照)。
【0053】
なお、かかる「水没危険度算定式」は、周辺地域の標高に比較して当該駐車場所の標高が低い場合には、雨水が滞留しやすく、水没危険度が高くなるという傾向、当該駐車場所が屋外にある場合には、滞留した雨水に直接さらされるため、水没危険度が高くなるという傾向、車両の車高が低い場合には、車内に雨水などが浸入しやすく、水没危険度が高くなるという傾向などを反映して設定された算定式である。
【0054】
例えば、AM「10:00」に、周辺地域の標高に比較して低く、屋外である駐車場所(屋外駐車場5)に駐車しようとした場合(図2参照)、豪雨が降るため(図3−1参照)、図9に示すように、「A駅」周辺では、雨水が滞留することが想定される。このような状況では、気象データ、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データをもとに、かかる雨水の滞留度に対応した水没危険度が推定されることとなる。
【0055】
また、「雪害危険度算定式」は、当該駐車場所の側面が山などの斜面に接している場合には、雪崩などが起こるおそれがあるため、雪害危険度が高くなるという傾向、当該駐車場所が屋外にある場合には、車両が降雪に直接さらされ、また気温の影響も受けやすいため、車載物(例えば、サイドブレーキ、ワイパー、ウォッシャ液およびクーラント)が凍結してしまうおそれがあるので、雪害危険度が高くなるという傾向、また、ウォッシャ液やクーラントの添加剤が劣化している場合には、より凍結を起こしやすくなるため、雪害危険度が高くなるという傾向などを反映して設定された算定式である。
【0056】
例えば、AM「10:00」に、当該駐車場所(屋外駐車場5)に駐車しようとした場合(図2参照)、降雪量が多く、気温が低いため(図3−2参照)、雪害危険度が高くなることが想定される。
【0057】
このように、気象データ、並びに車両に対する天災を発生させる要因となる地形データ、駐車場所の環境、車両データ若しくはこれらの組合せに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することとしたので、多面的な観点において車両に対する天災の発生に因果関係がある傾向データを複合的に用いて所望の駐車場所の天災危険度を推定することができ、当該駐車場所の天災危険度をより正確に推定することが可能になる。
【0058】
また、天災危険度推定部14dは、降車意思検知部14aによって車両の運転手に降車の意思があると検知された場合に、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する。このため、天災危険度が高い駐車場所に駐車されることを看過せず、車両に対する天災を確実に予防することが可能になる。
【0059】
天災危険性判定部14eは、天災危険度推定部14dによって推定された所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定する処理部であり、通知内容ルールベース13cによって定められた天災危険度の許容範囲に基づく判定をおこなう。具体的には、天災危険度(すなわち、水没危険度および雪害危険度)が「X」未満であるか否か、天災危険度が「X」以上〜「Y」未満であるか否か、天災危険度が「Y」以上〜「Z」未満であるか否か、また、天災危険度が「Z」以上であるか否かを判定する。
【0060】
天災予防措置選択部14fは、天災危険性判定部14eによって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置の中から所望の駐車場所の天災危険度をもとに天災予防措置を選択する処理部である。具体的には、通知内容ルールベース13cを参照して、天災危険度推定部14dによって推定された所望の駐車場所の天災危険度(すなわち、水没危険度または雪害危険度)に応じた天災予防措置を選択する。
【0061】
これを具体的に説明すると、天災予防措置選択部14fは、水没危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合には、水没予防措置Aを、水没危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合には、水没予防措置Bを、水没危険度が「Z」以上である場合には、水没予防措置Cを、また、雪害危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合には、雪害予防措置Aを、雪害危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合には、雪害予防措置Bを、雪害危険度が「Z」以上である場合には、雪害予防措置C(図7参照)を天災予防措置として選択する。
【0062】
このように、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置の中から所望の駐車場所の天災危険度をもとに天災予防措置を選択し、選択された天災予防措置を通知することとしたので、天災危険性に応じた天災予防措置を実行することが可能になる。
【0063】
天災危険性通知部14gは、天災危険性判定部14eによって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知する処理部である。具体的には、天災危険性判定部14eによって天災危険度(すなわち、水没危険度および雪害危険度)が「X」未満であると判定された場合には、当該車両が天災を受けるおそれが低い旨を通知し、また、天災危険度が「X」以上であると判定された場合には、当該車両が天災を受けるおそれが高い旨を通知するとともに、天災予防措置選択部14fによって選択された天災予防措置を推奨する。
【0064】
より詳細には、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「X」以上〜「Y」未満であると判定された場合には、水没のおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、マフラー25に蓋をして車内への雨水の進入を防止する雨水進入防止措置を推奨し、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「Y」以上〜「Z」未満であると判定された場合には、水没のおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、雨水進入防止措置およびサスペンション24を制御して車高(タイヤの設置面から車体までの高さ)を上げる車高補正措置を推奨する。
【0065】
また、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「X」以上〜「Y」未満であると判定された場合には、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置を推奨し、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「Y」以上〜「Z」未満であると判定された場合には、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置、並びに、ウォッシャ液およびクーラントの不凍措置を推奨する。
【0066】
ここで、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「Z」以上であると判定された場合(図9参照)、若しくは雪害危険度が「Z」以上であると判定された場合には、天災危険度推定部14dは、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所から所定の範囲内に存在する駐車場所の天災危険度を推定する。
【0067】
例えば、降車時にかかる処理がおこなわれている場合には、車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データを反映した「水没危険度算定式」および「雪害危険度算定式」に、推定要素情報取得部14cによって取得された現在地から所定の範囲内(例えば、1km以内)に存在する駐車場所の推定要素情報を代入することで、現在地から「1km」以内に存在する駐車場所の天災危険度を推定する。
【0068】
そして、天災危険性通知部14gは、天災危険度推定部14dによって天災危険度が推定された所定の範囲内に存在する駐車場所のうち、所望の駐車場所の天災危険度に比較して天災危険度が低い駐車場所を通知する。具体的には、図9に示すように、現在地から「1km」以内に存在する駐車場所(すなわち、屋外駐車場5および屋内駐車場6)のうち、最も天災危険度が低い駐車場所(すなわち、屋内駐車場6)および該駐車場所への経路を駐車場所変更措置として推奨する。
【0069】
このように、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所から所定の範囲内に存在する駐車場所の天災危険度を推定し、天災危険度が推定された所定の範囲内に存在する駐車場所のうち、所望の駐車場所の天災危険度に比較して天災危険度が低い駐車場所を通知することとしたので、利用者(運転手)が駐車しようとした駐車場所の天災危険性が高い場合でも、安全かつ近隣に存在する駐車場所を推奨することが可能になる。
【0070】
また、天災危険性通知部14gは、降車検知部14bによって車両の運転手が降車したと検知された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を車両の運転手が所持する通信装置に通知する。このため、利用者(運転手)が車外にいる場合でも、当該駐車場所の天災危険性を通知することが可能になる。
【0071】
天災予防措置実行部14hは、入力部11を介して天災予防措置の実行を受け付けた場合に、該受け付けた天災予防措置を実行する処理部である。具体的には、水没予防措置として、マフラー25に蓋をして車内への雨水の進入を防止する雨水進入防止措置を実行したり、サスペンション24を制御して車高(タイヤの設置面から車体までの高さ)を上げる車高補正措置を実行したりする。また、雪害予防措置として、サイドブレーキ26が引けないようにロックする凍結防止措置を実行したり、ワイパー27aをリフトアップする凍結防止措置を実行したり、一定周期ごとにE/Gを始動してバッテリーを充電しつつ、エアコン28aを作動してウォッシャ液27bおよびクーラント28bを暖める不凍措置を実行したりする。
【0072】
(各種処理の手順)
次に、本実施例1に係る天災予防装置の各種処理の手順について説明する。図10は、本実施例1に係る天災危険性通知処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、この「天災危険性通知処理」は、乗車中(停車時もしくは走行中)に、入力部11を介して所望の駐車場所(例えば、目的地など利用者が閲覧を希望する任意の駐車場所)の天災危険性の通知要求を受け付けた場合(ステップS1001肯定)、若しくは降車意思検知部14aによって車両の運転手に降車の意思があると検知された場合(ステップS1002肯定)に、開始されることとなる。なお、ここでは、図9に示す例を中心に、「天災危険性通知処理」が降車時におこなわれた場合の処理手順について説明する。
【0073】
降車意思検知部14aによって車両の運転手に降車の意思があると検知された場合(ステップS1001否定かつステップS1002肯定)に、推定要素情報取得部14cは、天災危険度の推定対象となる駐車場所の位置情報(すなわち、現在地)をGPS受信機31から取得する(ステップS1003)。
【0074】
続いて、推定要素情報取得部14dは、天災危険度を推定する際に、推定要素となる情報を取得する(ステップS1004)。具体的には、気象データ、並びに車両に対する天災(すなわち、車両の水没および車両に対する雪害などの天災)を発生させる要因となる推定要素情報(例えば、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データ)を当該車両から取得する。
【0075】
これを具体的に説明すると、推定要素情報取得部14cは、GPS受信機31から得られた位置情報(すなわち、降車時の場所(現在地))をもとに、地図データ記憶部13aを参照して、駐車場所の地形データ(図2参照)および駐車場所の環境情報(すなわち、駐車場所が「屋外」という環境情報)を取得する。また、自車両1の車両型式およびサスペンション24の制御情報をもとに、車両データ(すなわち、タイヤ設置面から車体までの車高)を取得する。
【0076】
また、推定要素情報取得部14cは、地図データ記憶部13aを参照して、GPS受信機31から得られた位置情報(例えば、降車時の場所(現在地))に対応する区域の気象データ(すなわち、時刻ごとの気温、降水量、降雪量、風向、風速、湿度、日照時間、気圧および各種警報などの情報)を取得する(図3−1参照)。
【0077】
そして、天災危険度推定部14dは、推定要素情報取得部14cによって取得された気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する(ステップS1005)。例えば、降車時にかかる処理がおこなわれている場合には、車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データを反映した「水没危険度算定式」および「雪害危険度算定式」に、推定要素情報取得部14cによって取得された推定要素情報(すなわち、気象データ、地形データ、駐車場所の環境情報および車両データ)を代入することで、現在地(すなわち、降車時の駐車場所)の天災危険度(すなわち、水没危険度および雪害危険度)を推定する(図8参照)。
【0078】
ここで、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「X」未満であると判定された場合(ステップS1006否定)には、水没のおそれが低い旨を出力部12で通知する(ステップS1007)。
【0079】
一方、天災危険性判定部14eによって降車時の駐車場所(現在地)の水没危険度が「X」以上であると判定された場合(ステップS1006肯定)には、天災予防措置選択部14fは、取り得る水没予防措置の中から降車時の駐車場所(現在地)の水没危険度をもとに水没予防措置を選択する(ステップS1008)。具体的には、水没危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合には、水没予防措置Aを、水没危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合には、水没予防措置Bを、水没危険度が「Z」以上である場合には、水没予防措置Cを選択する。
【0080】
続いて、降車検知部14bによって車両の運転手が降車したと検知された場合(ステップS1009肯定)には、天災危険性通知部14gは、通信メディア32を介して利用者(車両の運転手)が所持する通信端末に水没のおそれが高い旨を通知するとともに、天災予防措置選択部14fによって選択された水没予防措置を推奨する(ステップS1010)。
【0081】
また、降車検知部14bによって車両の運転手が降車していないと検知された場合(ステップS1009否定)には、天災危険性通知部14gは、出力部12において、水没のおそれが高い旨を通知するとともに、天災予防措置選択部14fによって選択された水没予防措置を推奨する(ステップS1011)。
【0082】
これを具体的に説明すると、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「X」以上〜「Y」未満であると判定された場合(図9参照)には、水没のおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、マフラー25に蓋をして車内への雨水の進入を防止する雨水進入防止措置を推奨し、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「Y」以上〜「Z」未満であると判定された場合(図9参照)には、水没のおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、雨水進入防止措置およびサスペンション24を制御して車高(タイヤの設置面から車体までの高さ)を上げる車高補正措置を推奨する。
【0083】
また、天災危険性判定部14eによって水没危険度が「Z」以上であると判定された場合(図9参照)には、天災危険度推定部14dは、水没の要因となる傾向データを反映した「水没危険度算定式」に、推定要素情報取得部14cによって取得された現在地から所定の範囲内(例えば、1km以内)に存在する駐車場所の推定要素情報を代入することで、現在地から「1km」以内に存在する駐車場所の水没危険度を推定し、天災危険性通知部14gは、図9に示すように、現在地から「1km」以内に存在する駐車場所(すなわち、屋外駐車場5および屋内駐車場6)のうち、最も水没危険度が低い駐車場所(すなわち、屋内駐車場6)および該駐車場所への経路を駐車場所変更措置として推奨する。
【0084】
図10の説明に戻り、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「X」未満であると判定された場合(ステップS1012否定)には、雪害を受けるおそれが低い旨を出力部12で通知する(ステップS1013)。
【0085】
また、天災危険性判定部14eによって降車時の駐車場所(現在地)の雪害危険度が「X」以上であると判定された場合(ステップS1012肯定)には、天災予防措置選択部14fは、取り得る雪害予防措置の中から降車時の駐車場所(現在地)の雪害危険度をもとに雪害予防措置を選択する(ステップS1014)。具体的には、雪害危険度が「X」以上〜「Y」未満である場合には、雪害予防措置Aを、雪害危険度が「Y」以上〜「Z」未満である場合には、雪害予防措置Bを、雪害危険度が「Z」以上である場合には、雪害予防措置Cを選択する。
【0086】
続いて、降車検知部14bによって車両の運転手が降車したと検知された場合(ステップS1015肯定)には、天災危険性通知部14gは、通信メディア32を介して利用者(車両の運転手)が所持する通信端末に雪害を受けるおそれが高い旨を通知するとともに、天災予防措置選択部14fによって選択された雪害予防措置を推奨する(ステップS1016)。
【0087】
また、降車検知部14bによって車両の運転手が降車していないと検知された場合(ステップS1015否定)には、天災危険性通知部14gは、出力部12において、雪害を受けるおそれが高い旨を通知するとともに、天災予防措置選択部14fによって選択された雪害予防措置を推奨する(ステップS1017)。
【0088】
これを具体的に説明すると、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「X」以上〜「Y」未満であると判定された場合には、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置を推奨し、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「Y」以上〜「Z」未満であると判定された場合には、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、サイドブレーキおよびワイパーの凍結防止措置、並びに、ウォッシャ液およびクーラントの不凍措置を推奨する。また、天災危険性判定部14eによって雪害危険度が「Z」以上であると判定された場合には、雪害を受けるおそれが高い旨のメッセージを通知するとともに、水没予防措置Cと同様に、駐車場所変更措置を推奨する。
【0089】
最後に、入力部11または利用者(車両の運転手)が所持する通信端末を介して天災予防措置の実行を受け付けた場合(ステップS1018肯定)に、天災予防措置実行部14hは、受け付けた天災予防措置を実行する(ステップS1019)。具体的には、水没予防措置として、マフラー25に蓋をして車内への雨水の進入を防止する雨水進入防止措置を実行したり、サスペンション24を制御して車高(タイヤの設置面から車体までの高さ)を上げる車高補正措置を実行したりする。また、雪害予防措置として、サイドブレーキ26が引けないようにロックする凍結防止措置を実行したり、ワイパー27aをリフトアップする凍結防止措置を実行したり、一定周期ごとにE/Gを始動してバッテリーを充電しつつ、エアコン28aを作動してウォッシャ液27bおよびクーラント28bを暖める不凍措置を実行したりする。
【0090】
上述してきたように、本実施例1に係る天災予防装置10によれば、天災の発生に因果関係がある傾向データを用いて所望の駐車場所の天災危険度を推定することとしたので、当該駐車場所の天災危険度を正確に推定することができ、車両に対する天災を確実に予防することが可能になる。
【実施例2】
【0091】
さて、これまで本発明の実施例1について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施例にて実施されてもよいものである。
【0092】
例えば、本発明では、所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置からの中から車両データをもとに天災予防措置を選択し、選択された天災予防措置を通知するようにしても良い。具体的には、天災危険性判定部14eによって所望の駐車場所の水没危険度が「X」以上であると判定された場合に、車両データ(例えば、タイヤ設置面から車体までの車高)を照査して実行可能であると確認された天災予防措置(この場合、車高補正措置)を選択するようにしても良い。このように、車両データをもとに天災予防措置を選択することで、車両の状態に応じた天災予防措置を実行することが可能になる。
【0093】
また、本実施例1では、入力部11を介して天災予防措置の実行を受け付けた場合に、該受け付けた天災予防措置を実行することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、天災予防措置選択部14fによって選択された天災予防措置を自動的に実行するようにしても良い。このように、天災予防措置選択部14fによって選択された天災予防措置を実行することで、車両の運転手によって当該車両が天災危険度の高い駐車場所に駐車された場合でも、車両に対する天災を確実に予防することが可能になる。
【0094】
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0095】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明に係る天災予防装置は、気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御を行う天災予防装置に有用であり、特に、車両に対する天災を確実に予防することができる天災予防装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施例1に係る天災予防装置の構成を示すブロック図である。
【図2】地図データ記憶部に記憶される情報の構成例を示す図である。
【図3−1】気象データ記憶部に記憶される情報の構成例を示す図である。
【図3−2】気象データ記憶部に記憶される情報の構成例を示す図である。
【図4】通知内容ルールベースに記憶される情報の構成例を示す図である。
【図5】水没予防措置の内容を説明するための説明図である。
【図6】通知内容ルールベースに記憶される情報の構成例を示す図である。
【図7】雪害予防措置の内容を説明するための説明図である。
【図8】水没危険度算定式および雪害危険度算定式の一例を示す図である。
【図9】水没危険性を説明するための説明図である。
【図10】本実施例1に係る天災危険性通知処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1 自車両
5 屋外駐車場
6 屋内駐車場
10 天災予防装置
11 入力部
12 出力部
13 記憶部
13a 地図データ記憶部
13b 気象データ記憶部
13c 通知内容ルールベース
14 制御部
14a 降車意思検知部
14b 降車検知部
14c 推定要素情報取得部
14d 天災危険度推定部
14e 天災危険性判定部
14f 天災予防措置選択部
14g 天災危険性通知部
14h 天災予防措置実行部
21 IGキー
22 ドア
23 シート荷重センサ
24 サスペンション
25 マフラー
26 サイドブレーキ
27a ワイパー
27b ウォッシャ液
28a エアコン
28b クーラント
31 GPS受信機
32 通信メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象データに基づいて車両に対する天災を予防する制御を行う天災予防装置であって、
前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定する天災危険度推定手段と、
前記天災危険度推定手段によって推定された所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲内であるか否かを判定する天災危険性判定手段と、
前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を通知する天災危険性通知手段と、
を備えたことを特徴とする天災予防装置。
【請求項2】
前記天災危険度推定手段は、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所から所定の範囲内に存在する駐車場所の天災危険度を推定し、
前記天災危険性通知手段は、前記天災危険度推定手段によって天災危険度が推定された所定の範囲内に存在する駐車場所のうち、前記所望の駐車場所の天災危険度に比較して天災危険度が低い駐車場所を通知することを特徴とする請求項1に記載の天災予防装置。
【請求項3】
前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置の中から所望の駐車場所の天災危険度をもとに天災予防措置を選択する天災予防措置選択手段をさらに備え、
前記天災危険性通知手段は、前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を通知することを特徴とする請求項1または2に記載の天災予防装置。
【請求項4】
前記天災予防措置選択手段は、前記天災危険性判定手段によって所望の駐車場所の天災危険度が許容範囲外であると判定された場合に、取り得る天災予防措置からの中から車両データをもとに天災予防措置を選択し、
前記天災危険性通知手段は、前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を通知することを特徴とする請求項3に記載の天災予防装置。
【請求項5】
前記天災予防措置選択手段によって選択された天災予防措置を実行する天災予防措置実行手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の天災予防装置。
【請求項6】
前記天災危険度推定手段は、前記気象データ、並びに車両に対する天災を発生させる要因となる地形データ、駐車場所の環境、車両データ若しくはこれらの組合せに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の天災予防装置。
【請求項7】
前記車両の運転手の降車意思を検知する降車意思検知手段をさらに備え、
前記天災危険度推定手段は、前記降車意思検知手段によって車両の運転手に降車の意思があると検知された場合に、前記気象データおよび車両に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の天災予防装置。
【請求項8】
前記車両の運転手が降車したか否かを検知する降車検知手段をさらに備え、
前記天災危険性通知手段は、前記降車検知手段によって車両の運転手が降車したと検知された場合に、当該車両が天災を受けるおそれがある旨を前記車両の運転手が所持する通信装置に通知することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の天災予防装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3173(P2006−3173A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178768(P2004−178768)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】