説明

媒体識別装置

【課題】
搬送状態によらず微細な模様が検出可能になり、高精度な媒体識別装置を提供し、また搬送路に異物、埃が搬送されても判別可能な媒体識別装置を提供する。
【解決手段】
媒体の識別に用いる画像である基準媒体画像を予め記憶する記憶部205と、搬送手段により搬送される媒体を撮像する撮像手段704と、基準媒体画像及び撮像手段により撮像された媒体の画像である媒体画像の所定位置を検知する手段705と、基準媒体画像又は撮像手段により撮像された媒体画像を前記所定位置から所定倍率に補正することにより媒体画像と基準媒体画像との大きさを一致させる第一の補正手段709と、第一の補正手段709により大きさの一致した媒体画像と基準媒体画像との所定の模様の位置を一致させる第二の補正手段711とを有することを特徴とする媒体識別装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨等の媒体を検知する装置およびその硬貨等の表面模様を識別するような媒体識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送路上を通る硬貨等の表面模様を読み取る識別装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この文献に記載の画像読取装置は、搬送装置によって搬送される読取媒体の通過を検出する位置センサと、読取媒体が読取部位に達したときに、読取媒体を撮像するCCDカメラとを備えている。
【0003】
しかしながら、前記文献では、様々な外形の異なる媒体を識別するとき、撮像エリアが大きくなるため、媒体検知センサの個数が多くなり、かつ媒体の模様の撮像範囲に影響しないような場所に媒体検知センサを搭載できない。そこで、現在では読取部位を挟んで対向配置された発光素子及び受光素子から媒体位置検出センサが構成されている。
【0004】
また、硬貨等の表面模様を読み取る識別装置としては、例えば特許文献2に記載されているものが知られている。この文献には円形物の画像データを複数の環状領域に区分し、その環状領域ごとに扇形に分割した扇型領域毎の模様の有無を検出し、この模様の有無データに基づいて円形物の模様を識別するものである。
【0005】
また、媒体表面を読み取る識別装置ではレンズなどの部品ばらつきや装置の組立のばらつきなどにより、同じ媒体を撮像しても装置によっては、撮像倍率が変化するため撮像された媒体の画像である媒体画像の大きさ、例えば媒体画像の外形、媒体画像の直径などが異なってくる。そのため識別に使用する媒体画像の特徴情報領域を大きくし、装置ごとの画像大きさのばらつきを吸収している。
【0006】
また、通常の搬送路では媒体を搬送させるため、媒体の厚み以上に搬送路のスペースを確保しており、媒体の通過する高さ位置が変わると、撮像距離が変化し、撮像された媒体の大きさが変化する。
【0007】
【特許文献1】特開2005−284338号公報
【特許文献2】特願平10−318654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来例によれば、搬送される媒体表面の模様を画像で読み取る装置では、媒体が撮像領域に来たかどうかを検知するために、媒体検知センサを媒体の厚み方向に対してセンサを搭載している。媒体検知センサは、媒体投入前にセンサ透過量を一定になるよう調整し、媒体が通過時のセンサ遮光量が一定値以上かどうかにより媒体検知を行っている。その後、カメラなど撮像手段で撮像を行い、撮像された画像から媒体の外形、表面模様について識別を行っている。
【0009】
媒体識別装置では、異なる媒体識別装置間で同じ基準媒体画像を記憶し、この基準媒体画像と搬送されてきた媒体を撮像した媒体画像との一致度から媒体の種類を判定する。しかし、カメラは環境、組立、設置、部品のばらつき等により、装置ごとに媒体画像を撮影するときの撮像倍率が異なる。この結果、撮像された媒体画像の大きさが異なることとなり、想定した位置と異なる位置の模様を媒体の一致度の判定対象とすることがある。このような環境、組立、設置、部品のばらつき等による媒体の一致度の判定対象である媒体画像の特徴領域と予め記憶された基準媒体画像の特徴領域の位置との差分を許容するために、従来では媒体画像の特徴領域を大きくする必要があり、詳細模様の識別ができなかった。
【0010】
さらに、媒体搬送中にセンサ光軸上に糸くず、紙切れ、埃等の異物が滞留した場合に、カメラを撮像させるためのセンサが媒体を検知できなくなり、不適当なタイミングでの撮像により撮像範囲に媒体の一部が含まれないような状態での撮像がされる等、媒体が正常な状態で撮像されずに装置が誤動作する問題がある。
【0011】
本発明の目的は、媒体検知センサを用いて、カメラの倍率調整を行い、模様識別の性能を向上させると共に、異物、埃が滞留した場合でも搬送された媒体が撮像領域に到達した際、識別できる媒体識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
媒体の識別に用いる画像である基準媒体画像を予め記憶する記憶部と、搬送手段により搬送される媒体を撮像する撮像手段と、基準媒体画像及び撮像手段により撮像された媒体の画像である媒体画像の所定位置を検知する手段と、基準媒体画像又は撮像手段により撮像された媒体画像を前記所定位置から所定倍率に補正することにより媒体画像と基準媒体画像との大きさを一致させる第一の補正手段と、第一の補正手段により大きさの一致した媒体画像と基準媒体画像との所定の模様の位置を一致させる第二の補正手段とを有することを特徴とする媒体識別装置
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、媒体の搬送状態によらず微細な模様が検出可能になり、高精度な媒体識別装置を提供することができる。また異物、埃等による誤検知を低減する媒体識別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1から図13を参照して、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態は、銀行などの金融機関に設置される例えばATM(Automated Teller Machine)のような自動取引装置内部さらには、精算機、券売機等の硬貨を取扱う各種機器に内蔵され硬貨の識別装置に関するものである。
【0015】
図1は、本発明に係るATMの内部に設けた硬貨識別装置の内部構造図である。101は硬貨識別装置の筐体であって、その上面の一端側には入出金口102が設けられている。入出金口102には、入金される硬貨が投入され、また出金される硬貨や返却される硬貨が放出される。この入出金口102は、本発明における返却口の一実施形態である。入出金口102の内部には、投入硬貨や放出硬貨を受ける回転自在なバケット102aが設けられている。103は繰出し部であって、バケット102aの回転によって入出金口102から下方へ放出された硬貨を一枚分離機構で1枚づつ分離して識別部104へ送り出す。識別部104は、入金される硬貨の真偽および金種を鑑別する。105は一時保留部であって、識別部104で真硬貨であると鑑別された硬貨を一時的に保留する。
【0016】
106は入金された硬貨を金種別に収納する金種別スタッカ、111は入金された硬貨を搬送する入金搬送部である。入金取引が成立すると、一時保留部105に保留されている硬貨は、識別部104を通って金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ106に振分けられる。
【0017】
113は出金搬送部であって、横搬送部112および縦搬送部114からなる。横搬送部112は、硬貨を搬送するベルトと、ベルト上の硬貨を1枚ずつ分離して縦搬送部114へ送り出す分離機構とを備えている。縦搬送部114は、対向するベルト間に硬貨を挟んで搬送する機構となっている。115は水平搬送ベルトであって、出金時に金種別スタッカ106の下部から放出される硬貨をベルト上で受けて、出金搬送部113へ送る。
【0018】
107は硬貨カセットであって、各金種の硬貨が混在して収納されている。116は硬貨カセット107から繰り出される硬貨を搬送し、また硬貨カセット107へ収納される硬貨を搬送する縦搬送ベルトである。硬貨カセット107は、始業時に硬貨識別装置101にセットされ、収納硬貨を繰り出して金種別スタッカ106へ分配する。このとき、繰り出された硬貨は、縦搬送部114から出金搬送部113を通って入出金口102へ放出され、繰出し部103により1枚ずつ繰り出されて識別部104で金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ106に振り分けられる。110は回収カートリッジであって、入出金口102に残っている取り忘れ硬貨や、出金硬貨のうち識別結果が異常と判定されたリジェクト硬貨などを回収する。
【0019】
108は一括スタッカであって、金種別スタッカ106が満杯となった場合に、金種別スタッカ106へ振分けることの出来ない入金硬貨を回収する。この一括スタッカ108には、各金種の硬貨が混在して収納される。また、一括スタッカ108は、金種別スタッカ106の硬貨残量が少なくなると、収納硬貨を繰り出して金種別スタッカ106へ補充する。このとき、繰り出された硬貨は、縦搬送部114から出金搬送部113を通って入出金口102へ放出され、繰出し部103により1枚ずつ繰り出されて識別部104で金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ106に振分けられる。109は磁気センサからなる出金判別部であって、入出金口102の付近(出金搬送部113の出口)に設けられている。
【0020】
図2は、図1のA部における識別部のブロック図である。バス200に各構成要素が接続されている。制御部201は、各構成要素に指示を出し、図1のA部における識別部の制御を行っている。例えば媒体を搬送する搬送部への制御等がある。記憶部205(第一の記憶手段ともいう)は、装置毎に倍率などのパラメータと、国内6金種分の硬貨の画像から抽出された特徴情報や硬貨の渦電流損から抽出された導電率の情報などテンプレートを記録している。また、予め基準媒体画像、基準媒体画像の中心位置、基準媒体画像の半径及び基準媒体画像の撮像倍率、補正倍率等も記憶している。
【0021】
模様判定部208は、記憶部205に予め登録された硬貨画像の特徴領域と、模様検知部203で撮像された硬貨の画像から抽出された特徴領域とを比較することにより、硬貨の外形と表面の模様に基づく金種、真偽判別を行う。
【0022】
媒体検知部202は硬貨が搬送されてきたかどうかを判定する。媒体検知退避部206は識別時に媒体が搬送されてきたかどうかを判定するために媒体検知部206から一定間隔で入力されるデータを一時的に保持するメモリである。画像退避部207は識別時に撮像された画像を模様判定部208で判別するために一時的に保持するメモリである。
【0023】
磁気判定部209は記憶部205に予め登録されたの硬貨渦電流損の特徴情報と、磁気検知部204で検知された硬貨の渦電流損から抽出された特徴情報とを比較することにより、媒体の導電率情報について金種、真偽判別を行なう。
【0024】
硬貨判定部210は模様判定部208と磁気判定部209から得られた結果から硬貨の識別を行い、該当する硬貨の金種、真偽を識別する。
【0025】
図3は、図1のA部における識別部の内部構造図であり、媒体検知部202、模様検知部203、磁気検知部204から構成されている。
【0026】
搬送路301は、ループ上の平ベルトから成り、上記平ベルトを駆動させる駆動部(図示しない)で硬貨302が一方向Aに搬送されるよう回転させている。硬貨302は、上記搬送路301上に1枚ずつ間隔を設けて分離された状態で搬送され、上記媒体検知部202での検知領域303に到達したタイミングで模様検知部203に撮像を行なうよう指示する。そして、模様検知部203は硬貨302の外形および硬貨302表面の模様を検知し、模様判定部208により硬貨302の外形、模様判定を行なっている。また、搬送されてきた硬貨302が磁気検知部204を通過するとき、磁気検知部204は、硬貨302の渦電流損を検知し、硬貨302の導電率判定を行なっている。
【0027】
図4は、図3の識別部の部分構造図であり、硬貨識別装置内に設けた磁気検知部204を側面から観た構造図である。
【0028】
磁気検知部204には、搬送路の上側にコイル401a、下側にコイル401bが設けられており、それらのコイルから磁界が発生させている。そして、硬貨302が磁気検知部を通過するとき、硬貨に発生する渦電流をコイル401a、401bが検知している。
【0029】
図5は、図2の硬貨識別部の部分構造図であり、硬貨識別装置内に設けた模様検知部203を側面から観た構造図である。
【0030】
模様検知部203では硬貨302の外形、模様を判定している。模様検知部203の内部には、斜め横から発光素子501が円環状に設けられており、撮像エリア全体を均一に照射している。そして硬貨502の表面で生じる反射光を取込むための集光レンズ503、この集光レンズ503を介して反射光を受ける撮像素子504、および硬貨302の表面で生じる反射光を通すガラス等の透明部材505とを備え、硬貨502の表面の凹凸形状(模様や刻印)を光学的に検知している。ここで言う透明部材505は、光透過性ガラスあるいは光透過性プラスチック等、光を透過させる透過性材料全般を示すものである。
【0031】
図6は、図2の硬貨識別部の部分構造図であり、硬貨識別装置内に設けた媒体検知部202を上面から観た構造図である。
【0032】
媒体検知部202内部では硬貨側面に一対の投受光素子を設けられており、発光素子601及び、該発光素子601から発する照射光をスリット602を介して受ける受光素子603とで構成されており、硬貨302が媒体検知領域303に到達したかどうかを光学的に検知している。604は搬送されてきた媒体を撮像する撮像範囲である。
【0033】
図7は、媒体の媒体識別の処理フローを示す。
【0034】
媒体識別では、透過量取得処理701〜媒体長さ計算703により媒体検知を行い、媒体撮像704で媒体を撮像し撮像画像を取得し、中心計算705〜模様判定712により模様識別を行なう。以下(1)〜(12)により、各ステップの詳細を説明する。
【0035】
(1)透過量取得処理701では媒体検知退避部206は媒体検知部202から一定間隔tごとに受光素子603から入力された透過量を順次図8−4のバッファ領域(第二の記憶手段もという)に蓄えていき、最終のバッファ領域になれば次に受光素子603から入力される透過量は先頭のバッファ領域に蓄える。また、透過量取得処理701では一定間隔t毎に受光素子603の透過量をバッファ領域に蓄えるとともに、現時点で入力された透過量Bと所定時間前の透過量(例えば4×t前の透過量)Aとを比較し、B/A算出する。
【0036】
(2)媒体検知部202は、媒体検知判定702にて、透過量取得処理701で算出された透過量の比率B/Aから閾値802を算出し、その閾値802より遮光したかどうかで媒体検知の判定を行なう。なお、透過量の比率と閾値802の関係は記憶部205に記憶する方法や、一定の関数により算出する方法がある。
【0037】
ここで透過量取得処理701と媒体検知判定702の詳細について図8−1〜図8−4を用いて説明する。
【0038】
図8−1は媒体検知部203で硬貨検知時の波形である。横軸は時間であり、縦軸は遮光レベルを示す。この波形では媒体がない場合は、媒体検知部の発光素子601からの照射で受光素子603が透過するため、遮光量は少なくなり遮光レベルが低くなる。逆に媒体が媒体検知領域に搬送されてきた場合、受光素子603の遮光量が多くなり遮光レベルが高くなる。
【0039】
従来では硬貨302が搬送されてきたとき、媒体検知部の受光素子603の遮光量が固定閾値801より大きくなった場合、媒体が搬送されたと判断して、模様検知部203に撮像指示を行なう。
【0040】
しかし、媒体検知部202は硬貨とともに入出金口102から糸くずなどの異物や埃が搬送されてくることがある。そして、その異物が媒体検知部202の媒体検知領域に滞留し受光素子603の遮光量が固定閾値801より大きくなった場合、媒体検知部が硬貨検知をできなくなる。そのため、模様検知部203に撮像指示できなくなり、識別装置は搬送媒体の識別ができなくなる。
【0041】
本実施形態では固定閾値801に対する受光素子603の遮光量で硬貨を検知するのではなく、図8−2のように受光素子603に透過されている光量の比率から硬貨を検知し閾値802を変更する(変更手段)。
【0042】
図8−4は媒体検知部202から一定間隔毎に受光素子603から入力される透過量を一時記憶する媒体検知退避部206のバッファ領域である。
【0043】
これらより異物や埃が残留された場合でも、図8−3のように受光素子603の残りの透過量で媒体検知および外形検出が可能になる。
【0044】
(3)続いて、媒体検知部202は、媒体長さ計算703にて、媒体検知判定にて媒体を検知した時刻と媒体が検知できなくなった時刻の差分、すなわち、媒体が媒体検知部202により検知される位置に到達していることで、遮光量が閾値以上の状態となっている時間、および媒体搬送速度から、硬貨の外形を算出する(第一の算出手段)。なお、硬貨識別部の搬送速度が等速でない場合でも硬貨識別部104にエンコーダなど媒体搬送距離に対するパルスを出力する機構を構成し、媒体通過に要した時間のエンコーダのパルス数で判定しても良い。
【0045】
(4)模様検知部203は、媒体撮像704で媒体を撮像し撮像画像を取得する。
【0046】
以下では、中心計算705〜模様判定712について説明する。
【0047】
(5)模様検知部203は、中心計算705で撮像した画像から硬貨画像の中心を算出する。中心計算により媒体画像の中心位置を算出する方法を図9−1、図9−2を用いて説明する。
【0048】
図9−2において、920は撮像範囲の中心を表す。921は撮像された媒体の画像である媒体画像を表す。922は媒体画像の中心を表す。604はカメラにより撮像される範囲である撮像範囲を表す。なお、撮像手段であるカメラは撮像領域内の所定位置が一致するように設置されている。即ち、模様検知部203は予め位置決めがされており、本実施例の場合、撮像範囲の中心が撮像画像の中心920になるよう設定されている。
【0049】
撮像画像の横軸(X軸)方向の各ラインに対して、一定閾値以上を有する画素の最初の位置901と一定閾値904以上を有する画素の最後の位置903との中点を中点位置902として算出し、その各ラインの中点位置902の度数分布905に対して、最も分布の高いところを媒体画像の中心のX座標とする。
【0050】
撮像画像の縦軸(Y軸)方向の各ラインに対して、一定閾値以上を有する画素の最初の位置911と一定閾値914以上を有する画素の最後の位置913との中点を中点位置912として算出し、その各ラインの中点位置912の度数分布915に対して、最も分布の高いところを媒体画像の中心のY座標とする。
【0051】
このようにして、撮像画像の中心を原点としたときの、媒体画像の中心922の相対位置を決定する。
【0052】
(6)模様検知部203は、半径計算706で媒体画像の中心922が算出されたラインに対して、中心位置922から各ラインの一定閾値以上を有する画素の最初の位置あるいは最後の位置への変位量の平均から円形媒体の半径を算出する。
【0053】
(7)模様検知部203は、媒体中心補正707にて、撮像された媒体画像の中心位置と基準媒体画像の中心位置を一致させる)。媒体中心補正について、図10および図11を用いて説明する。
【0054】
図10は基準媒体画像を表した図である。基準媒体画像1001とは出荷前に基準媒体を複数の装置に搬送して撮像された画像から作成した媒体画像である。1002は模様識別で一致度を判定する領域である特徴領域を表している。1004は基準媒体画像1001を基準媒体画像の中心1005から複数の環状領域毎の扇形の領域1003に区分する方法を示している。
【0055】
なお、予め基準媒体画像、基準媒体画像の中心位置、基準媒体画像の半径及び基準媒体画像の撮像倍率等は記憶部205に記憶している。
【0056】
図11は基準媒体画像と撮像された媒体画像を表している。ここで媒体中心補正707は中心計算705により算出した撮像された媒体画像の中心922と予め記憶された基準媒体画像の中心1005を一致させるように画像を移動する。
【0057】
(8)模様検知部203は、金種判別708にて、模様識別をする前処理として、撮像された媒体画像の大きさから、搬送された媒体の種類を判定する。即ち、当該搬送された媒体の種類を予め記憶した媒体の大きさと媒体の種類の関係を示したテーブル等に基づき、半径計算706により算出した媒体の半径から、媒体の種類を判定する処理である。なお、本処理は以降の処理で対象とすべき媒体の種類を絞っているに過ぎず、本処理にて媒体の種類を最終決定しているわけではない。
【0058】
(9)模様検知部203は、変位量補正709にて、環境、組立、部品、設置等のばらつきにより撮像された媒体画像921とあらかじめ記憶部205に記憶された異なる装置で同じ画像である基準媒体画像1001の撮像倍率の差異を補正するため媒体中心補正707により、媒体画像の中心の位置を一致させた両媒体画像において、いずれかの中心から特徴領域への変位量に補正倍率を乗算し、両媒体画像の中心から基準媒体画像の特徴領域の変位量と撮像された媒体画像の特徴領域の変位量が一致するにようにする。
【0059】
すなわち、基準媒体画像又は撮像された媒体画像を所定位置から所定倍率に補正することにより媒体画像と基準媒体画像の大きさを一致させる(第一の補正手段)。
【0060】
ここで図12−1から図12−3を用いて、変位量補正703について説明する。図12−1と図12−2は異なる装置Xと装置Yにて同じ硬貨302を撮像した画像である。1201a、1201bはそれぞれの媒体画像を表す。1202a、1202bは模様判定712に使用する特徴領域を表す。1204a、1204bは撮像範囲の中心を表す。1205a、1205bは撮像された媒体画像の中心を表す。1206a、1206bは撮像範囲を表す。
【0061】
図12−3は装置Xにて撮像された媒体画像1201aと装置Yにて撮像された媒体画像1201bを重ね合わせた画像である。部品や装置の組立ばらつきにより、装置X装置Yの模様検知部の撮像倍率が異なるため、図12−3のように、硬貨302の模様判定712に使用する特徴領域1202aと1202bの中心からの相対位置も異なることとなる。
【0062】
そのため従来では、複数の装置で当該硬貨種の識別を可能にするため、一致度の判定に使用する位置の特徴領域を領域1203のように拡大して識別を行っていた。特徴領域が大きいと、判定に用いたい微細部の模様領域を抽出することができず、精度の高い模様判定712を行うことができなかった。また硬貨の特徴領域は、模様がある領域とない領域が隣り合わせになっている領域とすることが多く、模様領域を大きく取ると有意な特徴を抽出することが困難になるため、硬貨の受付性能が向上しなかった。また偽造硬貨や変造硬貨に対しても、前記理由により有意な特徴を捉えることができないため、排除性能も向上しなかった。
【0063】
中心計算705から算出された媒体画像の中心922を原点とした前記基準媒体画像の相対位置にある領域に対して補正倍率を乗算する変位量補正709を実施する。変位量補正709では、媒体画像の中心922からの相対位置(X1,Y1) の領域を、記憶された補正倍率を乗算した中心922からの相対位置(a×X1,a×Y1)の領域に移動する。
【0064】
また、硬貨が搬送方向に対して一定速度で搬送される場合、媒体検知部202は、媒体長さ計算703にて硬貨が入力された時間から硬貨が出て行った時間に搬送速度をかけた距離r1が硬貨の直径になるため、その媒体の長さと撮像された画像の媒体半径r2から、模様検知部の撮像倍率2×r2/r1を算出する(第二の算出手段)ことができる。この場合、記憶部205で装置ごとの補正倍率を記憶しておく必要はない。なお、一定の速度で硬貨が搬送されない場合でも、装置内にエンコーダを用意し、媒体検知部で媒体通過中のパルス数を数えることにより、媒体の外形を算出し、補正倍率を計算することができる。補正倍率は特徴領域の変位量に対して乗算するとしたが、基準媒体画像に対して乗算してもよい。
【0065】
(10)模様検知部203は、画像変換710にて、図13のように変位量補正709により撮像された媒体画像が基準媒体画像と同サイズになった後、撮像された媒体画像の中心922を中心として、基準媒体画像1001と共に記憶していたの各扇形領域1003と同サイズで同画素数となるように中心から複数の環状領域毎の扇形の領域1301に区分し、各領域にある画素の平均を対応する基準媒体画像1001の扇形領域1003の画素数から算出し、当該領域の特徴量となる1つの画素として画像を変換する。なお、基準媒体画像1001についても、予め基準媒体画像の中心1005から複数の環状領域毎の扇形に区分された領域1003にある画素の平均を当該領域の特徴量となる1つの画素として記憶している。
【0066】
(11)模様検知部203は、回転検索711にて、前記画像変換710で変換された媒体画像の特徴領域1303を含む扇形領域を図13のA方向に回転していき、基本媒体画像の特徴領域1002を含む扇形領域の特徴量との一致度が最も高かった角度をその媒体が搬送された角度と判断し、媒体画像を当該角度に回転させ、媒体画像と基準媒体画像の特徴領域の位置を一致させる補正を行う(第二の補正手段)。
なお、特徴領域のみを回転させ一致度を判定するとしたが、画像の中心から特徴領域と等距離にある領域の媒体画像などの媒体画像の一部分あるいは媒体画像そのものを回転させ基本媒体画像の特徴量との一致度を判定することにより、より高い判定が可能となる。
【0067】
(12)模様判定部208は、模様判定712では前記回転検索711により検索された角度の画像について、記憶部205に予め登録された硬貨の特徴位置領域内の特徴と比較して当該硬貨種の模様かどうか判定する。
【0068】
上述したように、従来では環境、装置、部品、設置、組立等のばらつきにより、撮像手段の撮像倍率が装置ごとに異なるため、撮像した媒体の画像である媒体画像と、予め記憶しておき、模様判定に用いる基準として利用する画像である基準媒体画像とで、模様の一致度を判定する模様領域である特徴領域の位置にずれが生じていた。そのため、前記位置ずれを補うため、大きな模様領域を一致度判定に用いる特徴領域として設定することにより識別を行なっていた。
【0069】
そこで、本実施形態では、装置ごとの撮像倍率を記憶し、模様検知部206が、基準媒体画像の撮像倍率である基準撮像倍率と撮像倍率の比である補正倍率を撮像された媒体画像あるいは基準媒体画像に乗算することにより、基準媒体画像と撮像された媒体画像の大きさを一致させる補正を行い、特徴領域の詳細位置を算出し、より詳細な模様を用いた高精度な判定や識別を可能とする。なお、基準撮像倍率は予め記憶していてもよいし、基準媒体画像から算出してもよい。また、撮像倍率の代わりに補正倍率を記憶することによっても本発明の効果を得ることができる。
【0070】
また、模様検知部206は、撮像手段により撮像された媒体画像を媒体の所定位置を中心として円環状に変換し、媒体画像の中心を基点にして、媒体画像の特徴領域を回転移動し、媒体画像と基準媒体画像の特徴領域を一致させる補正を行う。そして、模様判定部208が、基準媒体画像の特徴領域の位置との一致度を判定することにより、模様の詳細位置を検出する。このため、搬送される媒体がどのような角度で搬送されても、判定に用いる模様の位置を検出することができ、精度の良い識別が可能となる。なお、媒体画像の特徴領域を回転移動する代わりに、基準媒体画像の特徴領域を回転移動しても良い。
【0071】
また、媒体画像の所定位置について、媒体画像の画素分布から一意の場所として決定することができる位置であれば良い。例えば、硬貨などの場合、円の中心を所定位置としても良く、また紙葉類などの所定の場所に穴が開いている場合は、その位置を所定位置としても良い。
【0072】
また、搬送された媒体が搬送方向に対して搬送路上の糸くず等により、媒体を撮像する距離が変化していたことにより、前記撮像手段で撮像された媒体画像の大きさが変化する場合がある。
【0073】
このような場合でも、本発明では検知センサを用いて媒体検知部206が、媒体の外形を算出するとともに、撮像された媒体画像の外形と検知センサで測定された媒体の外形の比率を算出し直す。これにより、撮像された媒体画像の大きさが変化しても、記憶部205に記憶していた撮像倍率や補正倍率にフィードバックをかけることが可能となる。すなわち、撮像された媒体画像に応じて撮像倍率や補正倍率を動的に変更ことが可能となる。また、媒体検出用のセンサと共用することができ、コストダウンを図ることもできる。
【0074】
これらの結果、より詳細な硬貨の判定・識別が可能となり、媒体が偽造されていたり、変造されていたりしても、排除することが可能となる。
【0075】
また、従来では外部から異物、埃が滞留した場合に、媒体検知部で媒体の検知ができなくなるため、その後の識別ができなかった。本発明では媒体が通過したときのセンサの透過量と所定期間前のセンサの透過量との変化率に応じて媒体検知の判定を行なう閾値を動的に変更することを可能にしたので、異物、埃が滞留した場合でも残りの透過量から媒体の有無や外形を検知することにより、その後の媒体振り分け装置にて、複数の媒体を振り分けることができる。
【0076】
本実施形態では硬貨の詳細模様部分を検知することができ、また外部からの異物に対しても問題ないよう設計が成されており、識別性能に秀でた硬貨識別装置を提供している。
【0077】
なお、本実施例は媒体として硬貨を用い、硬貨装置として説明したが、例えば紙葉類、カード、ゲームコインなどの搬送可能な媒体でもよく、媒体の模様を識別する装置或いは媒体を検知する装置全般に適用できるものである。また、顔認証、指静脈などの生体認証などに用いる生体画像を識別対象とし、撮像される識別対象が撮像領域内にあることを検知することに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】硬貨識別装置の内部構造図
【図2】硬貨識別部のブロック図
【図3】硬貨識別部の内部構造図
【図4】磁気検知部の内部構造図
【図5】模様検知部の内部構造図
【図6】媒体検知部の内部構造図
【図7】媒体識別の処理フロー
【図8−1】固定しきい値での媒体検知時の波形
【図8−2】変動しきい値での媒体検知時の波形
【図8−3】異物が滞留したときでの媒体検知波形
【図8−4】媒体検知退避部のバッファ
【図9−1】媒体画像の中心位置算出の図
【図9−2】撮像画像
【図10】基準媒体画像
【図11】撮像媒体の中心補正の図
【図12−1】装置Xの模様検知部で撮像された画像
【図12−2】装置Yの模様検知部で撮像された画像
【図12−3】異なる装置で撮像された媒体画像を重ね合わせた図
【図13】撮像された媒体画像を扇形区分した図
【符号の説明】
【0079】
101…硬貨識別装置の筐体、102…入出金口、103…繰出し部、104…識別部、105…一時保留部、106…金種別スタッカ、107…硬貨カセット、108…一括スタッカ、109…出金判別部、110…回収カートリッジ、111…入金搬送部、112…横搬送部、113…出金搬送部、114…縦搬送部、115…水平搬送ベルト、116…縦搬送ベルト
200…バス、201…制御部、202…媒体検知部、203…模様検知部、204…磁気検知部、205…記憶部、206…媒体検知退避部、207…画像退避部、208…模様判定部、209…磁気判定部、210…硬貨判定部、
301…搬送路、302…硬貨、303…媒体検知領域、
401a…コイル、401b…コイル、
501…発光素子、503…集光レンズ、504…撮像素子、505…透明部材、
601…発光素子、602…スリット、603…受光素子、604…撮像範囲
801…固定しきい値、802…変動しきい値
901…X軸方向の各ラインの一定閾値を有する画素の最初の位置、902…X軸方向の各ラインの中点位置903…X軸方向の各ラインの一定閾値を有する画素の最後の位置、904…閾値、905…X軸方向の中点位置の度数分布、911…Y軸方向の各ラインの一定閾値を有する画素の最初の位置、912…Y軸方向の各ラインの中点位置913…Y軸方向の各ラインの一定閾値を有する画素の最後の位置、914…閾値、915…Y軸方向の中点位置の度数分布、920…撮像範囲の中心点、921…撮像された媒体画像、922…撮像された媒体の中心、924…撮像された媒体の特徴領域
1001…基準媒体画像、1002…基準媒体画像の特徴領域、1003…扇形領域、1004…基準媒体画像を環状領域ごとの扇形に分割した領域、1005…基準媒体画像の中心、
1201a…装置Xでの硬貨画像、1201b…装置Yでの硬貨画像、1202a…硬貨画像の特徴領域、1202b…硬貨画像の特徴旅行き、1203…従来手法の特徴領域、1204a…装置Xでの撮像画像の中心、1204b…装置Yでの撮像画像の中心、1205a…装置Xでの硬貨画像の中心、75b…装置Yでの硬貨画像の中心、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を識別する媒体識別装置であって、
媒体を搬送する搬送手段と、
媒体の識別に用いる画像である基準媒体画像を予め記憶する第一の記憶手段と、
前記搬送手段により搬送される媒体を撮像する撮像手段と、
前記基準媒体画像及び前記撮像手段により撮像された媒体の画像である媒体画像の所定位置を検知する手段と、
前記基準媒体画像又は前記撮像手段により撮像された媒体画像を前記所定位置から所定倍率に補正することにより前記媒体画像と前記基準媒体画像との大きさを一致させる第一の補正手段と、
前記第一の補正手段により大きさの一致した前記媒体画像と前記基準媒体画像との所定の模様の位置を一致させる第二の補正手段とを有することを特徴とする媒体識別装置。
【請求項2】
請求項1記載の媒体識別装置であって、
前記搬送される媒体が所定の位置に到達していることを検知する検知手段を備え、
前記検知手段による前記搬送される媒体を検知した情報から前記媒体の大きさを算出する第一の算出手段を有することを特徴とする請求項1記載の媒体識別装置。
【請求項3】
前記第一の算出手段により算出された媒体の大きさと前記媒体画像の大きさとの比率から前記所定倍率を算出する第二の算出手段を有することを特徴とする請求項2記載の媒体識別装置。
【請求項4】
前記検知手段は、センサの透過量が閾値を超えることにより媒体を検知し、
前記閾値を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項2または3記載の媒体検知装置。
【請求項5】
前記第一の記憶手段は、前記センサの透過量と前記記憶された所定期間前の前記センサの透過量との変化率に対応する前記閾値とを予め記憶し、
所定期間前の前記センサの透過量を記憶する第二の記憶部を有すること
を特徴とする請求項4記載の媒体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−110325(P2009−110325A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282628(P2007−282628)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】