説明

孔壁測定装置

【課題】孔壁の形状に影響されずに正確な測定ができる孔壁測定装置を提供する。
【解決手段】地盤を掘削して形成される孔壁の形状を測定する孔壁測定装置3である。
そして、地上から吊り下げられる鉛直軸部31と、この鉛直軸部31に摺動自在に嵌め合わされる本体部32と、傾斜計が設けられて本体部32に上下方向回動自在に取り付けられる複数の測定腕部33,・・・と、鉛直軸部31と測定腕部33とを連繋する連繋手段6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の基礎などに用いられる杭の孔壁の形状を測定するための孔壁測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の基礎などに用いられる杭の孔壁の形状を測定するために、超音波を用いる方法が知られている。
この超音波を用いる方法では、孔内に充満された孔壁安定用の泥水を利用して超音波を伝播し、超音波が孔壁から反射して戻ってくるまでの時間を計測することで、孔壁の形状を測定していた。
【0003】
しかし、従来のように超音波を用いる方法では、比重の大きい泥水を用いた場合には、超音波が泥水に反射してしまうため、正確に測定することができなくなるという問題があった。
【0004】
加えて、従来の方法では、超音波の伝播のために泥水を用いるため、孔壁安定用の泥水を必要としない場合には、孔壁の計測のためだけに孔内に泥水を充満する必要があった。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、例えば、特許文献1に示す杭穴径測定装置が知られている。
【0006】
この杭穴径測定装置は、杭穴内に挿入される軸にアームをピン接続し、このアームの開き角度を計測して、穴壁までの距離を測定することを特徴としている。
【0007】
このように杭穴径測定装置を構成することで、杭穴径を機械的に測定できるため、比重の大きい泥水を用いた場合でも、正確な測定が可能となるとともに、空気中の測定が可能となる。
【特許文献1】特許第2601372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1の構成では、アームを開いて穴壁に当接させる際に、スプリングによる弾性力を利用しているので、杭径によって穴壁に押し付ける力が大きく変化し、正確な測定ができなくなる場合があった。
【0009】
さらに、杭穴が曲がって構築されているような場合には、アームの弾性力によって、杭穴径測定装置が杭穴の中心方向に移動してしまうため、曲がり具合を計測できなくなる場合があった。
【0010】
そこで本発明は、孔壁の形状に影響されずに正確な測定ができる孔壁測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の孔壁測定装置は、地盤を掘削して形成される孔壁の形状を測定する孔壁測定装置であって、地上から吊り下げられる鉛直軸部と、該鉛直軸部に摺動自在に嵌め合わされる本体部と、傾斜計が設けられて前記本体部に上下方向回動自在に取り付けられる複数の測定腕部と、前記鉛直軸部と前記測定腕部とを連繋する連繋手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記連繋手段は、前記測定腕部に取り付けられる動滑車と、前記鉛直軸部に取り付けられる定滑車と、前記動滑車と前記定滑車とに架け渡される1本のワイヤと、を備えることが好ましい。
【0013】
さらに、前記測定腕部には、フロートを取り付けることができる。
【0014】
そして、前記測定腕部の先端には、該測定腕部が回動する回動軸と略平行な取付軸が設けられ、前記フロートは該取付軸に回転自在に取り付けられることが好ましい。
【0015】
また、前記測定腕部は複数の入れ子状の腕材によって形成されるとともに、該腕材には全体の長さを調節する調節孔が軸方向に間隔をおいて設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の孔壁測定装置は、鉛直軸部と、鉛直軸部に摺動自在に嵌め合わされる本体部と、本体部に上下方向回動自在に取り付けられる複数の測定腕部と、鉛直軸部と測定腕部とを連繋する連繋手段と、を備えている。
【0017】
したがって、本体部及び測定腕部の自重によって、測定腕部が孔壁に一定の力で押し付けられることで、拡底杭などの杭径が変化する場合にも孔壁に押し付けられる力は一定になるため、孔壁の形状を正確に測定することができる。
【0018】
また、連繋手段は、測定腕部に取り付けられる動滑車と、鉛直軸部に取り付けられる定滑車と、動滑車と定滑車とに架け渡される1本のワイヤと、を備えることで、すべての測定腕部が略同一の力によって孔壁に押し付けられるため、杭孔が曲がっている場合にも正確な測定が可能となる。
【0019】
さらに、測定腕部にはフロートが取り付けられることで、水中において本体部及び測定腕部に浮力が作用して、測定腕部が孔壁に押し付けられる力が小さくなった場合でも、フロートに作用する浮力によって、測定腕部が押し付けられる力を補うことができるため、孔壁の形状を正確に測定できる。
【0020】
そして、測定腕部の先端には、測定腕部が回動する回動軸と略平行な取付軸が設けられ、前記フロートは取付軸に回転自在に取り付けられることで、フロートが上下方向に回転自在に形成され、孔壁に当接させたまま孔壁測定装置を上下させることが可能となって、孔壁の形状を鉛直方向に連続的に計測することができる。
【0021】
また、測定腕部は複数の入れ子状の腕材によって形成されるとともに、腕材には全体の長さを調節する調節孔が軸方向に間隔をおいて設けられるため、様々な杭径に対応して孔壁の形状を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
まず、図2を用いて本実施の形態の孔壁測定装置3を備える孔壁測定システムSの全体構成を説明する。
【0024】
一般に、構造物の基礎などに用いられる杭を構築する場合には、まず杭孔5を削孔し、鉄筋かごを挿入した後に、コンクリートを打設する。この際、杭孔5を削孔した後に、杭孔径や杭孔深さや杭孔の傾斜などが管理値を満足しているかどうか測定する必要がある。
【0025】
本実施の形態では、この杭孔径などを測定するために、孔壁測定システムSを用いている。
【0026】
この孔壁測定システムSは、杭孔5の中に吊り下げられる孔壁測定装置3と、地上に設置されてこの孔壁測定装置3を吊下ワイヤ23を介して吊り下げるウインチ2と、測定された結果を記録する記録器1と、を備えている。
【0027】
この記録器1は、孔壁測定装置3とケーブル24によって接続されていることで、測定値をリアルタイムに表示できる。加えて、この記録器1は、測定値を記録することもできる。そして、このような記録器1として、例えば、ノート型パソコンなどを用いることができる。
【0028】
また、ウインチ2は、孔壁測定装置3を吊り下げる2本の吊下ワイヤ23,23を巻き取るためのワイヤドラム22と、後述する孔壁測定装置3の傾斜計34に接続されたケーブル24を巻き取るためのケーブルドラム21と、これらの動力源となる原動機(不図示)と、を備えている。そして、このウインチ2は、杭孔5の直上に架け渡された架台25に載置されている。
【0029】
加えて、このウインチ2の架台25には、上記とは別に、センターワイヤ26を吊り下げるセンターウインチ28を備えている。このセンターワイヤ26の下端には、金属などによって形成されるセンターウェイト27が取り付けられている。そして、このセンターワイヤ26は、孔壁測定装置3の姿勢を制御できるように、孔壁測定装置3の鉛直軸部31及び本体部32の中心に通されている。
【0030】
さらに、このウインチ2のワイヤドラム22には、回転数を計測するロータリーエンコーダ(不図示)が取り付けられている。このため、計測された回転数から孔壁測定装置3の深度をリアルタイムに計算し、記録器1に表示及び記録できるようになっている。
【0031】
そして、本実施の形態の孔壁測定システムSは、ウインチ2の駆動によって杭孔5内を上下に移動して、孔壁51の形状を測定する孔壁測定装置3を備えている。
【0032】
この孔壁測定装置3は、図1に示すように、地上に設置されたウインチ2から吊下ワイヤ23,23によって吊り下げられる鉛直軸部31と、鉛直軸部31に鉛直方向に摺動自在に嵌め合わされる本体部32と、傾斜計34が設けられて本体部32に上下方向回動自在に取り付けられる4つの測定腕部33,・・・と、を備えている。
【0033】
鉛直軸部31は、図3に示すように、後述する本体部32に嵌め合わされる柱部311と、この柱部311の上部から四方に突設された腕部312,・・・と、を備えている。
【0034】
この柱部311は、アルミニウムなどの金属板が張り合わされて、図4に示すように八角形断面に形成されている。したがって、この八角形断面の柱部311の外面と本体部32の正方形断面の内筒321の内面とは、面を接するように嵌め合わされる。
【0035】
なお、この柱部311の断面形状は、内筒321の内面に当接して摺動自在に嵌め合わされるものであれば、円形や長方形など、どのような形状でもよい。
【0036】
また、腕部312は、アルミニウムなどの断面L字の金属などによって形成され、八角形断面の柱部311の4つの側面の上部から水平方向に、溶接などによって4つ突設されている。そして、それぞれの腕部312は、本体部32の幅からやや突出する長さに形成されており、この突出した先端側には、定滑車62が取り付けられている。
【0037】
加えて、4つある腕部312,・・・のうち、対向する2つの腕部312,312には、孔壁測定装置3の全体を吊下ワイヤ23,23によって吊り下げるために、溶接などによって、吊下金具313、313が取り付けられている。
【0038】
そして、本体部32は、図3,4に示すように、アルミニウムなどの金属によって形成され、八角形断面の柱部311を嵌め合わすための正方形断面の内筒321と、鉛直方向の剛性を高める縦材322,・・・と、縦材322,・・・を連結するための横材323,・・・と、後述する測定腕部33を取り付けるための取付金具326,・・・と、を備え、全体として断面八角形状に形成されている。
【0039】
なお、内筒321の形状は、柱部311の外面に当接して摺動自在に嵌め合わされるものであれば、円形や長方形など、どのような形状でもよい。
【0040】
この取付金具326は、図4に示すように、平行な2枚の金属板の間に、後述する測定腕部33を上下方向回動自在に取り付けるための回動軸324と、この測定腕部33が一定角度以上に開かないように制限するストッパ325と、を差し渡して形成される。そして、2枚の平行な面が略鉛直になるように、内筒321に突設されている。
【0041】
加えて、この取付金具326は、一対の縦材322,322によって挟まれることで、金属板の面外方向の外力に対して、縦材322,322が抵抗して変形しないように形成されている。
【0042】
また、回動軸324は、金属によって円柱状に形成されて、取付金具326の2枚の金属板に挟まれるように設けられる。そして、この回動軸324は、孔壁測定装置3が円形断面の杭孔5の中心近傍に挿入された際に、測定腕部33が孔壁51に直角に当接する方向に設けられる。
【0043】
さらに、ストッパ325は、金属によって円柱状に形成されて取付金具326に挟まれるように設けられる。そして、このストッパ325は、回動軸324よりも孔壁51に近くなる外側に、回動軸324と平行に設けられる。
【0044】
そして、測定腕部33は、図5(a)(b)に示すように、入れ子状の腕材の外側部材としての外腕332と、入れ子状の腕材の内側部材としての内腕333と、を備えている。
【0045】
この外腕332は、アルミニウムなどの金属によって、矩形断面を有する長尺の筒状に形成される。
【0046】
加えて、この外腕332の上端近傍には、回動軸324が挿通される取付孔331が設けられるとともに、下端近傍には、内腕333を固定するためのボルト孔336,336が設けられている。
【0047】
そして、この外腕332は、動滑車61を取り付けるための滑車取付部334を備えるとともに、傾斜計34が取り付けられている。
【0048】
この滑車取付部334は、動滑車61に張力が作用した際に、上向きのモーメントを受けるように、取付孔331より先端側の外腕332に取り付けられるものである。
【0049】
さらに、傾斜計34は、内部に液面を有することで、液面の傾斜による変化を静電容量の変化として捉えるものである。したがって、液体以外に動く部品がないため、損耗することのない、耐衝撃性に優れるものである。
【0050】
そして、この傾斜計34は、ケーブル24によって、記録器1に接続されている。
【0051】
また、内腕333は、アルミニウムなどの金属によって、筒状の外腕332の内面形状に嵌合する矩形の充実断面を有する長尺棒状に形成される。
【0052】
加えて、この内腕333には、軸方向に間隔をおいて3箇所に調節孔としてのボルト孔336,・・・が設けられている。
【0053】
さらに、この内腕333の上部は、筒状の外腕332に挿入されており、ボルト337,337によって外腕332に固定されている。
【0054】
そして、内腕333の下端には、測定腕部33を取り付ける回動軸324に略平行な取付軸335が設けられており、この取付軸335に、フロート38が上下方向に回転自在に取り付けられている。
【0055】
このフロート38は、樹脂などによって球形に形成されるもので、直径方向に取付軸335を挿通できるように、軸孔(図示せず)を備えている。
【0056】
なお、このフロート38の形状は、一定の浮力を有するものであれば、球形に限らず、たわら形、円柱形など、どのようなものでもよい。
【0057】
そして、図3に示すように、鉛直軸部31と測定腕部33とは、1本のワイヤとしての1本の連繋ワイヤ63によって、定滑車62,・・・及び動滑車61,・・・を介して連繋されている。
【0058】
すなわち、この1本のワイヤとしての連繋ワイヤ63は、鉛直軸部31の4つの腕部312,・・・のそれぞれに取り付けられた定滑車62と、4つの測定腕部33,・・・のそれぞれの上部の滑車取付部334に取り付けられた動滑車61と、を交互に経由して架け渡されることで、本体部32及び測定腕部33の自重を鉛直軸部31に伝達するように形成されている。
【0059】
次に、本実施の形態の孔壁測定装置3の測定方法について、アースドリル工法によって基礎杭を構築する場合を例として、図2,4,5を参照しながら説明する。
【0060】
まず、主にアースドリル掘削機(図示せず)などによって表層付近を掘削し、ケーシング4を建て込み、さらに掘削して、図2に示すように杭孔5を削孔する。この際、杭孔5には、孔壁51の崩壊を防止するために、比重を調整されたベントナイトなどの泥水が充満される。
【0061】
次に、杭孔5の長さを測定するとともに、孔壁51の形状を測定する。
【0062】
孔壁51の形状の測定に当たっては、はじめに、鋼材によって組まれた架台25を、杭孔5を跨ぐように設置する。
【0063】
そして、この架台25の上にウインチ2を載置する。
【0064】
さらに、図5に示すように、杭孔5の大きさに合わせて、孔壁測定装置3の内腕333に設けたボルト孔336,・・・の中から最適なものを選定し、ボルト337,337を用いて外腕332と固定することで、測定腕部33の長さを調節しておく。
【0065】
また、図3に示すように、孔壁測定装置3の鉛直軸部31に取り付けられた吊下金具313,313に、ウインチ2のワイヤドラム22に巻かれた吊下ワイヤ23,23を取り付ける。同時に、傾斜計34にケーブルドラム21に巻かれたケーブル24を取り付ける。
【0066】
次に、センターワイヤ26に取り付けられたセンターウェイト27を、杭孔5の略中心に位置するように、ゆっくりと杭孔5の底まで吊り下ろす(図2参照)。
【0067】
そして、孔壁測定装置3を、センターウェイト27に接続されたセンターワイヤ26を姿勢制御のためのガイドにしながら、杭孔5の中を吊下ワイヤ23,23によって吊り下げていく。
【0068】
この際、本体部32及び測定腕部33,・・・の自重によって、それぞれの測定腕部33が上向きに回動する方向にモーメントを受けるため、測定腕部33の先端のフロート38が孔壁51に当接する。
【0069】
そして、回動することによって生じた測定腕部33の傾斜の変化を、傾斜計34によって静電容量の変化として捉えることで、傾斜の変化を計測する。
【0070】
この傾斜変化の計測値は、傾斜計34とケーブル24によって接続された記録器1にリアルタイムに表示され、記録される。
【0071】
このようにして、孔壁51の形状を測定して、測定値が基準値を満たしていることを確認する。
【0072】
さらに、確認した後に、杭孔5の底に溜まったスライムを取り除き、上方から鉄筋かごを吊り下げた状態でコンクリートを打設する。
【0073】
最後に、周辺の掘削を行った上で、杭頭のコンクリートをはつり取って鉄筋を露出させて杭が完成する。
【0074】
そして、本実施の形態の孔壁測定装置3は、鉛直軸部31と、鉛直軸部31に摺動自在に嵌め合わされる本体部32と、この本体部32に上下方向回動自在に取り付けられる測定腕部33,・・・と、を備えるとともに、鉛直軸部31と測定腕部33,・・・とが連繋されている。
【0075】
したがって、図6(a)に示すように、本体部32の自重W1と測定腕部33,・・・の自重W2,・・・とが、連繋ワイヤ63を介して全体を吊り下げる吊下ワイヤ23,23に伝達されることとなる。
【0076】
ここにおいて、連繋ワイヤ63をかけられる動滑車61は、測定腕部33において取付軸335よりも先端側に位置する滑車取付部334に取り付けられるため、連繋ワイヤ63に生じる張力Taによって、測定腕部33は上向きのモーメントを受けることとなる。
【0077】
このように上向きのモーメントを受けることによって、測定腕部33は、回動軸324を回動中心として回動して開くこととなり、孔壁51に当接する状態まで開く。
【0078】
そして、この開いた状態の測定腕部33の傾斜角を傾斜計34によって計測することで、杭孔5の形状を測定することができる。
【0079】
つまり、測定腕部33における回動軸324からフロート38の取付軸335までの距離に、傾斜角のサイン(正弦)関数を乗じることで、回動軸324から取付軸335までの水平距離を求めることができる。
【0080】
したがって、一方の回動軸324から他方の回動軸324までの距離と、対峙する2本分の測定腕部33,33についての上記で求めた水平距離と、フロート38の直径と、を加えることによって、杭孔5の直径を測定することができる。
【0081】
さらに、本体部32及び測定腕部33,・・・の自重によって、測定腕部33,・・・が孔壁51に一定の力で押し付けられることで、拡底杭などの杭径が変化する場合にも孔壁51に押し付けられる力は一定になるため、孔壁51の形状を正確に測定することができる。
【0082】
つまり、連繋ワイヤ63に発生する張力Taは、そもそも本体部32及び測定腕部33,・・・の自重に起因しているため、この張力Taの大きさは杭径に関係なく一定となる。
【0083】
ここにおいて、連繋ワイヤ63をかける動滑車61は、腕部312の本体部32の幅よりもやや突出した先端に取り付けられていることで、連繋ワイヤ63と測定腕部33とのなす角度は大きくは変化しない。したがって、連繋ワイヤ63から測定腕部33に及ぼすモーメントもほぼ一定となり、孔壁51に押し付ける力もほぼ一定となる。
【0084】
また、複数の測定腕部33,・・・にそれぞれ動滑車61,・・・が取り付けられるとともに、鉛直軸部31に定滑車62,・・・が取り付けられて、これらの動滑車61,・・・と定滑車62,・・・とが1本のワイヤとしての連繋ワイヤ63によって連繋されることで、すべての測定腕部33,・・・が略同一の力によって孔壁51に押し付けられるため、杭孔5が曲がっている場合にも正確な測定が可能となる。
【0085】
つまり、1本の連繋ワイヤ63によって、鉛直軸部31の4つの腕部312,・・・のそれぞれに取り付けられた定滑車62と、4つの測定腕部33,・・・のそれぞれの上部の滑車取付部334に取り付けられた動滑車61と、を交互に経由して連繋することで、すべての動滑車61,・・・に作用する張力Taは等しくなる。
【0086】
このように、すべての動滑車61,・・・に作用する張力Taが等しくなることは、複数の測定腕部33,・・・の傾斜角がそれぞれ異なる場合でも同様である。したがって、傾斜角が異なっても、それぞれの測定腕部33,・・・が受けるモーメントは、傾斜角の違いによる微小な誤差を除いて、ほぼ等しいものとなる。
【0087】
加えて、本実施の形態の孔壁測定装置3は、地上に設置されたウインチ2によって吊り下げられていることで、杭孔5の中を同一の水平位置を保ったまま鉛直に上下することとなる。
【0088】
したがって、杭孔5の断面内において、常に同一の水平位置を基準として孔壁51を計測できることができるため、孔壁51を正確に測定することが可能となる。
【0089】
つまり、従来のように、スプリングによる弾性力を用いると、孔壁51が曲がっているような場合には、孔壁51に近い側の測定腕の弾性力のみが大きくなることで装置全体が杭孔5の断面内で移動してしまうこととなる。これに対して、本実施の形態の孔壁測定装置3は、同一の水平位置から移動することはなく杭孔5の曲がり具合も測定できる。
【0090】
さらに、測定腕部33,・・・にはフロート38,・・・が取り付けられることで、水中において、本体部32及び測定腕部33,・・・に浮力が作用して、張力Twが小さくなり、測定腕部33,・・・が孔壁51に押し付けられる力が小さくなった場合でも、フロート38,・・・に作用する浮力によって、測定腕部33,・・・が押し付けられる力を補うことができる。したがって、孔壁51の形状を正確に測定できる。
【0091】
すなわち、孔壁安定用に杭孔5の内部に泥水が充満されているような場合には、図6(b)に示すように、本体部32の自重W1及び測定腕部33,・・・の自重W2,・・・に加えて、本体部32及び測定腕部33,・・・に対する浮力F1と、フロート38,・・・に対する浮力F2,・・・と、が作用する。そうすると、見かけの重量が軽くなるため、測定腕部33,・・・が孔壁51に押し付けられる力が弱くなってしまう。
【0092】
しかし、フロート38に対する浮力F2は、測定腕部33における回動軸324より先端側に作用するため、測定腕部33を上方に押し上げる方向のモーメントとなる。したがって、見かけの重量が軽くなって弱まった押し付ける力を補うことができる。
【0093】
このように、測定腕部33が孔壁51に押し付けられる力が、空気中と水中とで大きくは変わらないため、空気中と水中とで同一の孔壁測定装置3を用いて計測することができる。
【0094】
さらに、地下水などが杭孔5の途中まで充満しているような場合にも、同一の孔壁測定装置3を用いることで、特に段取り替えなども必要なく、孔壁51を正確に測定することが可能となる。
【0095】
そして、図5に示すように、測定腕部33の先端には、測定腕部33の回動軸324と略平行な取付軸335が設けられ、この取付軸335にフロート38が取り付けられることで、フロート38が回転できる。したがって、孔壁51に当接させたまま孔壁測定装置3を上下させることが可能となって、孔壁51の形状を鉛直方向に連続的に計測することができる。
【0096】
つまり、フロート38が回転することで、孔壁51との摩擦が低減されるため、フロート38が孔壁51に引っ掛かって計測値の一部が欠損することや、孔壁測定装置3が動かなくなって計測不能となることを防止できる。
【0097】
また、測定腕部33は、入れ子状に形成された腕材としての外腕332と内腕333とによって形成される。
【0098】
この内腕333は、軸方向に間隔をおいて2つずつの調節孔としてのボルト孔336,・・・を備えている。そして、これらのボルト孔336,・・・と外腕332の下端近傍のボルト孔とにボルト337、・・・を挿入することで、測定腕部33の長さを複数段階に調節できる。
【0099】
すなわち、杭径が小さい場合には、図5(a)に示すように、内腕333に設けられたボルト孔336,・・・のうちの最も先端側のボルト孔336,336によって外腕332とボルト337で固定することができる。
【0100】
逆に、杭径が大きい場合には、図5(b)に示すように、内腕333に設けられた最も取付孔331側のボルト孔336,336によって外腕332とボルト337で固定することができる。
【0101】
そして、このように測定腕部33の長さを複数段階に調節する場合にも、孔壁51に押し付けられる力は変化しない。したがって、複数段階の測定腕部33の長さに対応するスプリングなどを設けなくても、同一の孔壁測定装置3によって、杭孔5の形状を正確に測定することができる。
【0102】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0103】
例えば、本実施の形態では、鉛直軸部31と測定腕部33とが、連繋ワイヤ63によって連繋されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本体部32と測定腕部33,・・・の全自重を支持することができるものであれば、リンク機構やクランク機構を用いて連繋するなど、どのように連繋するものであってもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、連繋ワイヤ63は、動滑車61と定滑車62とに交互にかけられている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、数個の動滑車61ごとに定滑車62にかけられるものであってもよい。
【0105】
さらに、本実施の形態では、測定腕部33にフロート38を取り付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、フロート38が取り付けられないものであってもよい。
【0106】
そして、本実施の形態では、測定腕部33の先端にフロート38が取り付けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、測定腕部33の回動軸324より先端側であれば、いずれの位置に取り付けられるものであってもよい。
【0107】
また、本実施の形態では、測定腕部33が複数の入れ子状の腕としての外腕332と内腕333とを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単一の部材からなるものであってもよいし、複数の長さの異なるものが用意されて取替え可能に形成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置の構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置を備える孔壁測定システムの全体構成を説明する説明図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置における鉛直軸部と測定腕部との連繋を説明する斜視図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置の構成を説明する断面図である。
【図5】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置の測定腕部の構成を説明する斜視図である。(a)は、測定腕部が最短の状態であり、(b)は、測定腕部が最長の状態である。
【図6】本発明の最良の実施の形態の孔壁測定装置の作用を説明する説明図である。(a)は、空気中の状態であり、(b)は、水中の状態である。
【符号の説明】
【0109】
G 地盤
S 孔壁測定システム
Ta 空気中の張力
Tw 水中の張力
W1 本体部の自重
W2 測定腕部の自重
F1 本体部及び測定腕部の浮力
F2 フロートの浮力
2 ウインチ
23 吊下ワイヤ
3 孔壁測定装置
31 鉛直軸部
32 本体部
324 回動軸
33 測定腕部
332 外腕(腕材)
333 内腕(腕材)
335 取付軸
336 ボルト孔
337 ボルト
34 傾斜計
38 フロート
5 杭孔
51 孔壁
6 連繋手段
61 動滑車
62 定滑車
63 連繋ワイヤ(ワイヤ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して形成される孔壁の形状を測定する孔壁測定装置であって、
地上から吊り下げられる鉛直軸部と、
該鉛直軸部に摺動自在に嵌め合わされる本体部と、
傾斜計が設けられて前記本体部に上下方向回動自在に取り付けられる複数の測定腕部と、
前記鉛直軸部と前記測定腕部とを連繋する連繋手段と、を備えることを特徴とする孔壁測定装置。
【請求項2】
前記連繋手段は、前記測定腕部に取り付けられる動滑車と、前記鉛直軸部に取り付けられる定滑車と、前記動滑車と前記定滑車とに架け渡される1本のワイヤと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の孔壁測定装置。
【請求項3】
前記測定腕部にはフロートが取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔壁測定装置。
【請求項4】
前記測定腕部の先端には、該測定腕部が回動する回動軸と略平行な取付軸が設けられ、前記フロートは該取付軸に回転自在に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の孔壁測定装置。
【請求項5】
前記測定腕部は、複数の入れ子状の腕材によって形成されるとともに、
該腕材には、全体の長さを調節する調節孔が軸方向に間隔をおいて設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の孔壁測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−2809(P2009−2809A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164295(P2007−164295)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(595067442)システム計測株式会社 (27)
【Fターム(参考)】