説明

宅内ゲートウェイ装置

【課題】IPsecによる暗号・復号化を行う宅内ゲートウェイ装置において、取り扱うデータの種類によりプロセッサの処理能力を変化させて低消費電力化を実現する。
【解決手段】家庭内ネットワークの装置である電話機101、PC−a102、PC−b103、家電機器104などを接続し、ONU21、OLT22、キャリアネットワーク121を介してISP110とIPsecトンネルを用いてデータの送受信を実施する宅内ゲートウェイ装置10において、取り扱うデータから関連する家庭内ネットワークの装置および取り扱うべきデータの速度を判断し、その情報によりプロセッサに供給するクロックの周波数を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅内ゲートウェイ装置に係り、特に、家庭内ネットワークと公衆網であるインターネットの接続を実現する宅内ゲートウェイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットアクセス技術向上に伴い、家庭内ネットワークも目覚しい発展を続けている。従来はPCによるWebアクセス、メールやり取りが主な用途であったが、例えばVoIP(Voice over IP)機能を用いたより安価な電話サービス、テレビ放送においてインターネット回線を用いた双方向のデータ通信サービス、クーラーや冷蔵庫といった家電機器や蛍光灯等の照明器具のインターネット回線を通じた屋外からの制御、と家庭内でのネットワークの機能が多岐に渡ってきている。また、それらの装置をインターネットに接続する際に使用される宅内ゲートウェイ装置の役割が重要となってきている。
宅内ゲートウェイ装置は先に述べた家庭内ネットワークを構成するPCや電話機、家電機器や照明器具といった各装置を接続し、受動光網(Passive Optical Network:以下PONと称する)システムを構成する加入者側装置(Optical Network Unit:以下ONUと称する)、局側装置(Optical Line Terminator:以下OLTと称する)、キャリアネットワークを介して、インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider:以下ISPと称する)との間でデータの送受信を行う。ISPではデータの種類によってインターネットに接続したり、VoIPゲートウェイを介して公衆交換電話網(Public Switched Telephone Networks:以下PSTNと称する)に接続したりする。各家庭とISPとの間の接続では擬似的なポイント・ツー・ポイントの回線を提供するPPPoE(PPP over Ethernet)が多く使われてきたが近年ではIPv6で標準機能となるIPsecを使って、宅内ゲートウェイ装置とISPとの間でIPsecトンネルを形成し家庭内の各装置とISP間で安全なデータのやり取りを実施することが一般的になってきている。宅内ゲートウェイ装置は宅内ネットワーク装置からのデータをカプセル化・暗号化してISPに対し転送し、ISPからのデータを復号化・デカプセル化して家庭内ネットワーク装置に転送する。データの暗号・復号化処理は取り扱うすべてのデータに対して実施しなければならず、また処理時間はデータ速度に大きく依存することになる。ここでデータの速度とは単位時間当たりのデータ量を表している。
【0003】
宅内ゲートウェイ装置の処理能力は、同じプロセッサであればその動作周波数に比例する。そのため宅内ゲートウェイ装置はそのスペックで保証すべき最高速度のデータ処理が実現できるだけの処理能力を実現するための周波数でプロセッサを動作させることになる。先に述べたPONシステムの登場により、各家庭とキャリア局間で提供されるアクセス回線の通信速度は今や1Gbit/sを超えるようになってきており、なお高速化し続けている。そのため宅内ゲートウェイ装置に要求される処理能力も日々高くなってきている。しかも宅内ゲートウェイ装置は電話機能や屋外からの家電機器の制御といった機能も実現しており、例えば電話機能であればいつ発生するかわからない電話着信を処理するために、また屋外からの家電機器の制御でもユーザが家にいない時に制御データを受信等するために、宅内ゲートウェイ装置はその装置の電源を切ることができず、常に動作させ続けなければならず、その待機中の消費電力が無視できない課題となる。
ゲートウェイ装置の待機中の低消費電力化の手段として、例えば特開2002−319956号公報(特許文献1)に開示された手段が挙げられる。本手段では、ゲートウェイ装置をインターネットと接続するための最小限の機能を持つシステム1とアプリケーションを実行する上で必要な機能を搭載したシステム2とに分割しそれぞれの電源をOFF/ONできるようにすることで待機時の低消費電力化を実現することが開示されている。
一方、プロセッサの動作周波数を動的に変化させる手段として、例えば特開2004−280216号公報(特許文献2)に開示された手段が挙げられる。本手段ではアプリケーションプログラムの実行に最適なクロック周波数を前回実行時のプロセッサの負荷状況に応じて変更することにより、きめ細やかなクロック周波数制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−319956号公報
【特許文献2】特開2004−280216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
宅内ゲートウェイ装置はユーザインタフェースを持つ装置のそばに設置されるとは限らず、部屋の片隅や入口近くの壁面への設置の形態をとることも多く、そのような場合装置に電源スイッチを実装してもユーザがこまめに電源スイッチを操作できないということが考えられる。また、上記特許文献1に示す装置ではプロセッサをシステム毎に物理的に分割する必要性があり装置コスト、装置の大きさ等の面で不利となる。また、仮にプロセッサを1つのデバイスで実現する場合、プロセッサはインターネットを接続するための最小限の機能を持つシステム1に配置されることになり、効果的な低消費電力化が実現できない。
さらに宅内ゲートウェイ装置はその主な処理がIPsecの暗号・復号化処理となり、その処理は送受信するデータ速度に依存する。上記特許文献2に示す手段によってプロセッサへの供給クロック周波数を制御しようとしても、その負荷状況が以前の負荷状況と相関がなく、最適なクロック周波数に制御することができない。従って、やはり効果的な低消費電力化が困難である。
本発明は、以上の点に鑑み、IPsecによる暗号・復号化を行う宅内ゲートウェイ装置において、ユーザのマニュアル操作を伴わずに、必要な機能を動作させたまま低消費電力化を実現することを目的とする。また、本発明は、取り扱うデータの種類によりプロセッサの処理能力を変化させることを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、IPsecの暗号・復号化処理を行う宅内ゲートウェイ装置のプロセッサへの供給クロック周波数の制御情報として、宅内ゲートウェイ装置が取り扱うデータ速度を用いる。通常のネットワーク装置が取り扱うデータの速度というものは算出が非常に困難であるが、宅内ネットワーク装置は接続される装置が限定され、それぞれが取り扱うデータの速度の上限がほぼ決まっている。すなわち例えば電話であれば64kbit/s程度の通信速度となるし、家電機器であれば接続規格によりZigBee(IEEE802.15.4参照)という通信規格であれば20〜250kbit/sの通信速度となり、PCでもイーサネット(登録商標)接続であればそのリンク速度によって10Mbit/sや100Mbit/s、1Gbit/sの通信速度となるし、無線接続であればその通信規格や通信状況によって54Mbit/sや300Mbit/sといった通信速度となる。宅内ゲートウェイ装置はそれらの装置を接続する機能を具備するためおのずとその通信速度の情報を得ることができ、取り扱うデータの種類によってそのデータの速度の上限値をもとにプロセッサへの供給クロック周波数制御を実施する。これにより、ユーザマニュアル操作を伴わず、必要な機能を動作させたまま宅内ゲートウェイ装置の低消費電力化を実現することが可能となる。
【0007】
なお、プロセッサ以外の部分についてもその動作状況に応じて電源供給の制御や省電力モードへの移行を実施することで低消費電力化できることはいうまでもない。
宅内ゲートウェイ装置は、例えば、宅内ネットワーク装置より受信したデータを暗号化し、ISPに転送する手段と、ISPより受信した暗号化されたデータを復号化し、宅内ネットワーク装置に転送する手段と、前記暗号化・復号化処理を実施するプロセッサと、前記プロセッサへの供給クロックの周波数を制御する手段と、前記宅内ネットワーク装置より受信したデータより前記周波数の制御量を決定する手段と、前記ISPより受信した暗号化されたデータより前記周波数の制御量を決定する手段とを具備する。
上述の宅内ゲートウェイ装置は、例えば、前記周波数の制御量を、宅内ゲートウェイ装置に接続される電話機からのOn−Hook、Off−Hookを検出して決定する。上述の宅内ゲートウェイ装置は、例えば、前記周波数の制御量を、宅内ネットワーク装置からのアドレス要求信号を検出して決定する。上述の宅内ゲートウェイ装置は、例えば、前記周波数の制御量を、インターネット上の遠隔装置からのアクセス要求信号を検出して決定する。
【0008】
本発明の解決手段によると、
複数の宅内ネットワーク装置に接続され、該宅内ネットワーク装置と宅外のネットワーク間のデータを送受信する宅内ゲートウェイ装置であって、
前記宅内ネットワーク装置から受信したデータを暗号化して前記ネットワークに転送し、該ネットワークから受信した暗号化されたデータを復号化して宛先に応じた前記宅内ネットワーク装置に転送し、入力されるクロックに従い動作する処理部と、
前記複数の宅内ネットワーク装置毎に、予め定められたクロック周波数の制御量が記憶された周波数決定テーブルと、
前記周波数決定テーブルを参照してクロック周波数を求めるクロック周波数制御部と、
前記クロック周波数制御部で求められたクロック周波数の前記クロックを生成して前記処理部に出力するクロック生成部と
を備え、
前記クロック周波数制御部は、
前記宅内ネットワーク装置からの通信開始を示す信号、又は、前記宅内ネットワーク装置への通信開始を示す信号を検出すると、前記周波数決定テーブルを参照して該宅内ネットワーク装置に対応する周波数の制御量を取得し、クロック周波数を取得されたクロック周波数の制御量分上げ、
前記宅内ネットワーク装置の通信終了を検出すると、クロック周波数を前記クロック周波数の制御量分下げる宅内ゲートウェイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、IPsecによる暗号・復号化を行う宅内ゲートウェイ装置において、ユーザのマニュアル操作を伴わずに、必要な機能を動作させたまま低消費電力化を実現できる。また、本発明によると、取り扱うデータの種類によりプロセッサの処理能力を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いたネットワーク構成の一例を示した図である。
【図2】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置とISPとの論理的な接続イメージを示した図である。
【図3】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置の構成図である。
【図4】本実施の形態による宅内ゲートウェイ装置のプロセッサへの供給クロックの周波数決定のための処理フローの一例を示した図である。
【図5】本実施の形態による宅内ゲートウェイ装置が取り扱うデータの識別方法を示した図である。
【図6】本実施の形態による宅内ゲートウェイ装置が取り扱うデータ種別と供給クロック周波数のためのパラメータの関係の一例を示した図である。
【図7】本実施の形態による宅内ゲートウェイ装置が取り扱うデータ種別の周波数決定テーブルの一例を示した図である。
【図8】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いたPC関連データ送受信のシーケンスを示した図である。
【図9】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いた着信時の電話関連データ送受信のシーケンスを示した図である。
【図10】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いた発信時の電話関連データ送受信のシーケンスを示した図である。
【図11】本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いた家電機器への遠隔アクセスのシーケンスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置を用いたネットワーク構成の一例を示す。
図1において、宅内ゲートウェイ装置10は、宅内に設置され、家庭内ネットワークの装置(宅内ネットワーク装置)である電話機101、PC−a102、PC−b103、家電機器104などの機器と接続され、通信する。また、宅内ゲートウェイ装置10は、ONU21、OLT22、キャリアネットワーク121を介してISPの通信装置110(以下、単にISP110と記す)とIPsecトンネルを用いてデータの送受信を実施する。ONU21、OLT22、光スプリッタ23は、光ファイバ140にてキャリア局と宅内ゲートウェイ装置10との間のアクセス回線を提供するPONシステムを構成する。キャリアネットワーク121は、アクセス回線を提供するキャリアが展開するキャリアネットワークである。キャリアネットワーク121はインターネット122と異なりキャリア設備によって構築された閉域網である。一般ユーザはISP110を介してインターネット122への接続を実現している。一般ユーザは、遠隔PC1110からインターネット122に接続し、例えば家電機器104等の宅内ネットワーク装置にアクセスすることができる。VoIPゲートウェイ111は、IP上で提供される電話サービスを終端し、PSTN123に接続することで電話サービスを実現する装置である。宅内ゲートウェイ装置10と電話機101との接続131は例えばアナログ接続である。PC−a102と宅内ゲートウェイ装置10との接続132は例えばイーサネット等の有線接続であり、PC−b103と宅内ゲートウェイ装置10との接続133は例えば無線接続である。家電機器104と宅内ゲートウェイ装置10との接続134は例えばZigBeeである。なお、接続の形態は、これらに限らず適宜の形態でもよい。また、宅内ゲートウェイ装置10に接続される装置は、適宜の装置でもよい。例えば、電話機101は、電話機能を有するPCなどの機器でもよいし、家電機器104は、宅外から制御される照明器具、防犯などのセキュリティ機器、その他適宜の電気製品でもよい。また、宅内とは、家庭内に限らず、オフィス、店舗、事務所内などでもよい。
【0012】
図2は、宅内ゲートウェイ装置10とISP110との論理的な接続のイメージ図を示す。
宅内ゲートウェイ10とISP110との間はIPsecトンネル210が構築される。その中を電話機101関連のデータ211、PC−a102関連のデータ212、PC−b103関連のデータ213、家電機器104関連のデータ214が送受信される。本イメージ図では図中のパイプの太さ(220〜224)がデータの速度(通信速度)を表している。例えば221は電話の通信速度である64kbit/sに相当しており、222はイーサネット接続でのPCの通信速度である100Mbit/sに相当しており、223は無線接続の通信速度である54Mbit/sに相当しており、224はZigBeeの通信速度である20kbit/sに相当していることを表している。宅内ゲートウェイ10において暗号化・復号化を行うプロセッサに要求される処理能力(例えば、クロック周波数)は、これらの通信速度に依存する。
220は宅内ゲートウェイ装置10が処理できるデータ速度の最大値を表しており、プロセッサへの供給クロックの周波数によって決定される。221〜224の合計が210に対し十分小さければ宅内ゲートウェイ装置10は処理能力に余裕があり、クロック周波数を落として低消費電力化を図ることが可能であることを示している。逆に221〜224の合計が210より大きい場合は宅内ゲートウェイ装置10はそのデータの暗号・復号化処理を処理しきれず通信を維持できない状態にあることを示している。
図3は、本実施の形態の宅内ゲートウェイ装置10の装置構成図を示す。
宅内ゲートウェイ装置10は、中央演算処理部(プロセッサ)310と、ONU21と接続するインタフェース(以下、IF)であるイーサネットIF315と、電話機101と接続するインタフェースであるSLIC(Subscriber Line Interface Circuit) IF306と、PC−a102と有線で接続するインタフェースであるイーサネットIF307と、PC−b103と無線で接続するインタフェースであるWiFi(Wireless Fidelity) IF308と、家電機器104と接続するインタフェースであるZigBee IF309と、メモリ部305と、クロック生成部302とを有する。
【0013】
中央演算処理部310は、データに対しIPsecによる暗号/復号化処理や、本実施の形態によるクロック周波数制御等を実施する。中央演算処理部310は、例えば、IPsec処理部301と、クロック周波数制御部303と、周波数決定テーブル304を有する。なお、周波数決定テーブル304は、メモリ部305にあってもよい。IPsec処理部301は、各インタフェース306〜309、315に接続される機器からのデータの暗号化及び各機器へのデータの復号化を実施する。クロック周波数制御部303は、各インタフェース306〜309からの情報(311〜314)およびIPsec処理部301からのフレーム情報320を基に周波数決定テーブル304を検索してクロック周波数を決定し、クロック生成部302に対し指示を出す。クロック生成部302は、クロック周波数生成部303からの指示に従い中央演算処理部310に対し指示された周波数のクロックを出力する。メモリ部305は、中央演算処理部310の動作に必要なソフトウェアや各種設定情報が格納されている。
周波数決定テーブル304は、宅内ゲートウェイ装置10に接続される装置毎に、予め定められたクロック周波数の制御量(α値)が記憶される。周波数の制御量(α値)は、プロセッサに供給するクロックの周波数を増加又は減少させるための制御量である。なお、各装置は上述のIFを介して接続されるため、IF毎に周波数の制御量が記憶されてもよい。
【0014】
図4は、本実施の形態による宅内ゲートウェイ装置10でのプロセッサへの供給クロックの周波数決定のための処理フローの一例を示している。
本処理フローは家庭内ネットワークの装置に関連するデータ毎に存在する。すなわち電話関連データを監視しそれによりクロック周波数を決定するフローがあり、別に家電製品関連データを監視しそれによりクロック周波数を決定するフローが独立に存在するということである。図4において、まず宅内ゲートウェイ装置10は、初期状態にてデータ受信を監視する(401)。このデータとは、例えば通信の開始を識別可能な適宜のデータである。例えばこの処理が電話関連データ用であれば電話のOff−Hook信号であったりネットワークからの着信である。例えばPC関連データであればPCからのアドレス要求(例えばARP:Address Resolution Protocol)信号であり、家電機器であればISPからのアクセス要求信号となる。データ受信が有ればその後のデータ送受信を処理するためにプロセッサの処理能力を上げる必要があり、宅内ゲートウェイ装置10のクロック周波数制御部303は、周波数決定テーブル304を検索して(402)、クロック周波数を装置に対応した周波数の制御量αだけ上げる(403)。αの値は後述するように家庭内ネットワークの装置に関連するデータにより決定される通信速度より予め決定される。
プロセッサの処理能力が上がった状態で該当データに対応するタイマt(n=1、2、3、・・・)をリスタートさせ(404)、該当データを継続受信しているかを監視し続ける(405)。タイマtは家庭内ネットワークの装置に関連するデータ毎に存在する。データ未受信の状態が一定時間Tを越えた時に(406)、該当データ分の処理が不要となったと判断し、プロセッサの処理能力を下げるためクロック周波数をαだけ下げる(407)。本処理フローにより家庭内ネットワークの装置に関連するデータ毎の通信速度毎に必要なプロセッサ処理能力を動的に設定することができる。
【0015】
図5に、各データの識別方法について示す。
電話関連データ用の発信時のOff−Hook信号は、電話の受話器を上げる等の動作に伴い電話回線が接続された際に発生する電圧変化を宅内ゲートウェイ装置10内のSLIC IF306にて検出する。On−Hook/Off−Hook信号311をHigh/Lowのレベル信号としてクロック周波数制御部303に伝達することにより、データを検出することができる(図5(a))。また、ネットワークからの着信信号は、VoIPゲートウェイ111から送信される着信信号フレーム501内の呼制御メッセージ502が着信信号を示していることにより検出することができる(図5(b))。
PC関連データ用のPC−a102からのアドレス要求信号は、アドレス要求フレーム503を受信した際、イーサネットタイプ504の値がアドレス要求信号を示していることにより検出することができる(図5(c))。アドレス要求信号によりデータ開始を検出する方法は、有線で接続されたPC−a102の他にIEEE802.11x規格の無線接続されたPC−b103からのアドレス要求信号やIEEE802.15.4規格のZigbeeを使用した家電機器104へのアクセス要求信号等でも同様である。アドレス要求信号がどの端末に対するデータかは、受信したインタフェースにより判別することができる。電話機であればSLICインタフェース306、有線接続PCであればイーサネットIF307、無線接続PCであればWiFi IF308、家電機器であれば上位インタフェースのイーサネットIF315で受信することにより判別することができる。なお、データの送信元や宛先で判別してもよい。
【0016】
図6は、宅内ゲートウェイ装置10が取り扱うデータ種別とそのデータ速度とクロック周波数の制御量αの関係の一例を示したものである。
電話関連であればデータ速度は64kbit/sであり、それを扱うのであればαとして32kHzクロック周波数を上げればよいということを意味している。また、例えばイーサネット接続されるPC関連であれば、PCが10Mbit/sで通信するものであれば5MHzクロック周波数を上げればよいことを示す。PCや家電製品がどのデータ速度で通信するかはリンク速度や通信規格により予め決められている。また、通信状況によりデータ速度を定めてもよい。
なお、α値はプロセッサの種類によって当然異なるため本図の数値は一例であるが、プロセッサの種類が決定されればそれよりIPsecの処理能力を算出可能でありデータ速度との関係を容易に導き出すことが可能となる。また、クロック周波数としてα値を記載しているが、これはプロセッサにはIPsec以外にも簡単な処理を行う必要がありその処理を実施するために必要な処理能力分のクロック周波数をベース値とし、そこからの増分として制御することを意味している。
図7は、図6における宅内ゲートウェイ装置10が取り扱うデータ種別のイベントと図4のα値の関係の一例を示したものである。
データ形式のイベントについては、電話関連では着信信号受信時やOff−Hook検出時、イーサネット接続PC関連・無線接続PC関連ではアドレス要求受信時、家電製品関連ではアクセス要求受信時に、それぞれ必要となるクロック周波数(α値)を決定する。
【0017】
図8は、PC関連データ送受信のシーケンスを示している。
PC関連データ送受信についてはまずPC−a102、PC−b103からISP110へのアクセスから開始される。まず、PC−a102、PC−b103はアクセス先のアドレスを得るため宅内ゲートウェイ装置10に対し、アドレス要求信号を送信する。宅内ゲートウェイ装置10は受信したアドレス要求に対し、IPsecトンネル通信のためのカプセル化、暗号化処理(801)を実施しISP110に対し転送する。この時点で宅内ゲートウェイ装置10はデータの送信元がPCであることからPC関連データ送受信の開始を判断し、プロセッサの周波数を上げる(802)。例えば、イーサネットIF307にPC−a102がリンク速度100Mbit/sで接続され、宅内ゲートウェイ装置10がイーサネットIF307を介してアドレス要求信号を受信すると、図7の例では50MHzクロック周波数を上げる。
宅内ゲートウェイ装置10は、ISP110より暗号化されたアドレス要求リプライの復号化・デカプセル化を実施し(803)、PC−a102、PC−b103に対しアドレス要求リプライを返す。その後、ファイルダウンロード等のデータ送受信が行われる。宅内ゲートウェイ装置10は802にてプロセッサの処理能力を上げているため送受信されるデータのカプセル化処理、デカプセル化処理、暗号・復号化処理(801、803)を問題なく処理できる。データ送受信終了後、宅内ゲートウェイ装置10は、送受信データのアドレスを確認し、予め定められたT時間ISP110、PC−a102およびPC−b103のアドレスがなければ、通信が終了したと判断する(804)。通信終了後、宅内ゲートウェイ装置10は、プロセッサの周波数を上述のα(例えば、50MHz)だけ下げ(805)、装置の低消費電力化を行う。
【0018】
図9、図10は電話関連データ送受信のシーケンスを示している。
図9は着信時のシーケンスである。宅内ゲートウェイ装置10は、VoIPゲートウェイ111より着信信号データを受信する。本データは電話関連データであるため、宅内ゲートウェイ装置10は、電話関連データの送受信の開始を判断し、プロセッサの周波数を電話処理分上げる(901)。Ringing、OKを経てセッションを確立した後通話が行われる。宅内ゲートウェイ装置10では音声とパケットの変換をするとともにそのデータの暗号・復号化を実施する(902)が、901にてプロセッサの処理能力を上げているため問題なく処理できる。なお、電話関連データは宅内ゲートウェイ装置10にてデータを生成するため受信したデータのカプセル化・デカプセル化処理は不要となり記載していない。電話機からOn−Hook信号が送信されると、宅内ゲートウェイ装置10は、送受信データのアドレスを確認し、T時間着信信号データやOff−Hook信号の受信がなく電話機101およびVoIPゲートウェイ111のアドレスがなければ、通信が終了したと判断する(903)。通信終了後、宅内ゲートウェイ装置10は、プロセッサの周波数を下げ(904)装置の低消費電力化を行う。
【0019】
図10は、発信時のシーケンスである。
宅内ゲートウェイ装置10はOff−Hook検出により着信信号データをVoIPゲートウェイ111に送信する。また、宅内ゲートウェイ装置10はOff−Hook検出により電話関連データ送受信の開始を判断しプロセッサの周波数を電話処理分上げる(1001)。Ringing、OKを経てセッションを確立した後通話が行われる。宅内ゲートウェイ装置10では音声とパケットの変換をするとともにそのデータの暗号化を実施する(1002)が、1001にてプロセッサの処理能力を上げているため問題なく処理できる。電話機からOn−Hook信号が送信されると、宅内ゲートウェイ装置10は、送受信データのアドレスを確認し、T時間着信信号データやOff−Hook信号の受信がなく電話機101およびVoIPゲートウェイ111のアドレスがなければ、通信が終了したと判断する(1003)。通信終了後、宅内ゲートウェイ装置10は、プロセッサの周波数を下げ(1004)装置の低消費電力化を行う。
【0020】
図11は、家電機器104への遠隔アクセスのシーケンスを示している。
インターネットに接続している遠隔PC等1110は、家電機器104にアクセスするためまず宅内ゲートウェイ装置10に対しアクセス要求データを送信する。本データの受信によりデータが家電機器関連のデータであることを判断できるため、宅内ゲートウェイ装置10はプロセッサの周波数を家電機器データ処理分上げる(1101)。ユーザ名とパスワードによる認証の完了をもって、遠隔PC等1110と家電機器104との間でデータの送受信が行われる。宅内ゲートウェイ装置10は1101にてプロセッサの処理能力を上げているため送受信されるデータのカプセル化処理、デカプセル化処理、暗号・復号化処理(1102)を問題なく処理できる。遠隔PC1110からアクセス終了信号が送信されると、宅内ゲートウェイ装置10は、送受信データのアドレスを確認し、T時間遠隔PC1110および家電機器104のアドレスデータがなければ、通信が終了したと判断する(1103)。通信終了後、宅内ゲートウェイ装置10は、プロセッサの周波数を下げ(1104)装置の低消費電力化を行う。
なお、本実施の形態では電話サービス、PCによるインターネットアクセス、デジタル家電遠隔アクセスについて記載したが、それ以外のサービスについても同様な考え方が適用できる。
また、図1に示すONU21と宅内ゲートウェイ装置10を一体化させてもよく、この場合、上述の手段をONU側プロセッサにも適用しPON区間の通信速度に応じた同様の低消費電力化を実現することができる。さらに、OLT22とONU21の間の帯域はDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)により制御されるがその情報もプロセッサの周波数制御情報として使用することでより効果的な低消費電力化が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、例えば、宅内ゲートウェイ装置に利用可能である。また、例えば、本発明による宅内ゲートウェイ装置は、電話等の電源を切ることのできないサービスを収容した際の低消費電力化に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 宅内ゲートウェイ装置
21 ONU
22 OLT
23 光スプリッタ
110 ISP
210 IPsecトンネル
301 IPsec処理部
302 クロック生成部
303 クロック周波数制御部
304 周波数決定テーブル
305 メモリ部
306 SLIC IF
307、315 イーサネットIF
308 WiFi IF
309 ZigBee IF
310 中央演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の宅内ネットワーク装置に接続され、該宅内ネットワーク装置と宅外のネットワーク間のデータを送受信する宅内ゲートウェイ装置であって、
前記宅内ネットワーク装置から受信したデータを暗号化して前記ネットワークに転送し、該ネットワークから受信した暗号化されたデータを復号化して宛先に応じた前記宅内ネットワーク装置に転送し、入力されるクロックに従い動作する処理部と、
前記複数の宅内ネットワーク装置毎に、予め定められたクロック周波数の制御量が記憶された周波数決定テーブルと、
前記周波数決定テーブルを参照してクロック周波数を求めるクロック周波数制御部と、
前記クロック周波数制御部で求められたクロック周波数の前記クロックを生成して前記処理部に出力するクロック生成部と
を備え、
前記クロック周波数制御部は、
前記宅内ネットワーク装置からの通信開始を示す信号、又は、前記宅内ネットワーク装置への通信開始を示す信号を検出すると、前記周波数決定テーブルを参照して該宅内ネットワーク装置に対応する周波数の制御量を取得し、クロック周波数を取得されたクロック周波数の制御量分上げ、
前記宅内ネットワーク装置の通信終了を検出すると、クロック周波数を前記クロック周波数の制御量分下げる宅内ゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記複数の宅内ネットワーク装置のひとつは電話機であり、
前記通信開始を示す信号は、該電話機からのOn−Hook又はOff−Hookであることを特徴とした請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項3】
前記複数の宅内ネットワーク装置のひとつは電話機であり、
前記通信開始を示す信号は、該電話機への着信信号であることを特徴とした請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項4】
前記複数の宅内ネットワーク装置のひとつはパソコン又はデータ通信装置であり、
前記通信開始を示す信号は、該パソコン又はデータ通信装置からのアドレス要求信号であることを特徴とした請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項5】
前記複数の宅内ネットワーク装置のひとつは家電機器であり、
前記通信開始を示す信号は、前記ネットワーク上の遠隔装置から該家電機器へのアクセス要求信号であることを特徴とした請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項6】
前記クロック周波数制御部は、前記宅内ネットワーク装置からのデータ又は該宅内ネットワーク装置へのデータを受信していない時間が予め定められた時間を超えたことにより、前記宅内ネットワーク装置の通信終了を検出する請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項7】
接続される前記宅内ネットワーク装置が予め定められた複数のインタフェースをさらに備え
前記クロック周波数制御部は、信号を受信するインタフェースを識別することにより前記宅内ネットワーク装置を識別し、前記周波数決定テーブルを参照して、識別された宅内ネットワーク装置に対応するクロック周波数の制御量を取得する請求項1の宅内ゲートウェイ装置。
【請求項8】
前記処理部と前記クロック周波数制御部は、ひとつのプロセッサで構成される請求項1の宅内ゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−187172(P2010−187172A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29465(P2009−29465)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
2.ZIGBEE
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】