説明

安全弁

【課題】立て軸ポンプで使用可能な安全弁を提供する。
【解決手段】安全弁23は、高圧水配管24に介設され、出口と、出口よりも下方に位置する入口との間で鉛直方向に立ち上がる管で形成された鉛直部38と、鉛直部38の軸中心に設けられたスピンドル39と、上下に移動できるようにスピンドル39に挿通され、下向きに縮径するテーパ形状のフロート37と、鉛直部38内でフロート37の下方に位置するオリフィス42とを備える。フロート37の水中重量をフロート37の投影面積で除して得られる圧力が、オリフィス42の入口圧力とオリフィス42の出口圧力の差より大きいと、フロート37とオリフィス42との間に隙間が生じず流体は流れない。圧力が、入口圧力と出口圧力の差以下となると、フロート37とオリフィス42との間に隙間が生じて流体が流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出管から吸込水槽側にバルブを介設したバイパス配管が設けられた立軸ポンプが知られている。そのような立軸ポンプは、吐出側を締め切るような管理運転においても立軸ポンプの内部の水が流動できるようにされている。つまり、通常運転時には、バイパス配管のバルブを閉弁状態にしてバイパス配管に水が流れないようにするが、排水を目的にしていない管理運転時は、吐出側を締め切り、ポンプ内部での過熱防止と負荷低減のためにバイパス配管を介して吸込水槽へ水を流すようにしている。
【0003】
管理運転は、通常、時間制限が設けられることが多く長時間行われない。これに加えて、バイパス配管から水を吸込水槽へ単純に戻すだけでは、槽底に付着しているヘドロ等の剥離や堆積している堆積物の移送、浮遊等による吸込水槽の掃除を効果的に行うことはできない。
【0004】
効果的な吸込水槽の掃除のために、バイパス配管の下端に吸込水槽の底面近傍に水平に配設されたノズル配管が連結され、かつ水中で浮遊しないヘドロ等を吸込水槽の底面から排出するための汚水ポンプを立軸ポンプとは別に備えたポンプ設備が特許文献1に開示されている。このポンプ設備では、吸込水槽に流入してきた砂等の無機物やし渣等の有機物のうち水中に浮遊するものは、ノズル配管に設けたノズルから噴射される加圧水で攪拌流動させて立軸ポンプにより吸込水槽から排出させる。残りの浮遊しないものは、ノズルからの加圧水により集積させて汚水ポンプにより吸込水槽から排出させる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のポンプ設備は、吸込水槽に立軸ポンプとは別に汚水ポンプを設けるため装置が複雑となり、汚水ポンプのコスト及びメンテナンスの手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−200502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複雑な装置を設けることなく簡易な構成で吸水槽を効果的に清掃できる立軸ポンプで使用可能な安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高圧水配管に介設され、出口と、この出口よりも下方に位置する入口との間で鉛直方向に立ち上がる管で形成された鉛直部と、前記鉛直部の軸中心に設けられたスピンドルと、上下に移動できるように前記スピンドルに挿通され、下向きに縮径するテーパ形状のフロートと、前記鉛直部内で前記フロートの下方に位置するオリフィスとを備え、前記フロートの水中重量を前記フロートの投影面積で除して得られる圧力が、前記オリフィスの入口圧力と前記オリフィスの出口圧力の差より大きいと、前記フロートと前記オリフィスとの間に隙間が生じず流体は流れず、前記フロートの水中重量を前記フロートの投影面積で除して得られる圧力が、前記入口圧力と前記出口圧力の差以下となると、前記フロートと前記オリフィスとの間に隙間が生じて流体が流れる、安全弁を提供する。
【0009】
前記スピンドルの上端は前記鉛直部の頂部に配置された中空軸に挿入され、前記中空軸にめねじ部が設けられると共に、前記スピンドルに前記めねじ部と螺合するおねじ部が設けられ、前記スピンドルの前記フロートの上方にストッパが固着され、前記スピンドルに設けられたハンドルを回転させてストッパの鉛直方向の位置を調整して前記フロートの移動範囲を規制できることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高圧水配管内の圧力を制御することにより、安全弁を開閉し、高圧水配管を通じた高圧水の供給を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる立軸ポンプを示す縦断面図。
【図2】吸水槽を示す平面図。
【図3】別の実施形態における吸水槽を示す平面図。
【図4】安全弁を示す断面図。
【図5】別の実施形態における安全弁を示す断面図。
【図6】別の実施形態における安全弁を示す断面図。
【図7】立軸ポンプの性能曲線を示す図。
【図8】別の実施形態における立軸ポンプを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
図1に、本発明にかかる立軸ポンプ(以下、単にポンプという。)10を示す。
【0014】
ポンプ10は、図示しない流入側(上流側)管路から排水ポンプ場の吸水槽11内に流入する雨水等の水を下流側に排水するためのものであり、鉛直方向に延びるケーシング12を備えている。吸水槽11は、略直方体の空間を備えている。ケーシング12は、直管状の揚水管12a、揚水管12aの下端に連結されたポンプケーシング12b、及び揚水管12aの上端に連結されて鉛直方向から水平方向に湾曲した吐出エルボ12cを備えている。ポンプケーシング12bの下端側、すなわちケーシング12の最下部には、吸込ベル13が設けられている。吸込ベル13は、下向きに開口しており、その上端側がポンプケーシング12bの下端側に連結されている。また、吸込ベル13は上端から下端に向けて拡径しており、下端側先端部13aが水平方向に延びている。吸込ベル13の下端側先端部13aは吸込口14を形成している。
【0015】
吐出エルボ12cには吐出弁15を介して吐出管16が連結されている。ポンプケーシング12b内には羽根車17が配設されている。この羽根車17が下端に固定されている主軸18は鉛直方向に延びてケーシング12の外部に突出している。主軸18は、ラジアル軸受として機能する無注水軸受19,20(以下、単に軸受という。)に支持されている。軸受19はポンプケーシング12bの内面から突出するリブ19aに取り付けられ、軸受20は揚水管12aの内面から突出するリブ20aに取り付けられている。主軸18の上端側は概略的に示すモータ、減速機構等からなる駆動機構21に連結されている。
【0016】
吐出エルボ12cから後に詳述する安全弁23が介設された高圧水配管24が分岐している。高圧水配管24の安全弁23に対して、吐出エルボ12cと反対側には分配部25が設けられている。分配部25から4本の高圧水噴出管29が分岐している。つまり、本実施形態における分配部25は、高圧水配管24の水を4本の高圧水噴出管29に分配する構造である。4本の高圧水噴出管29の各先端はノズル26を有し、ノズル26は吸水槽11の底部側に位置するように設けられている。ノズル26の噴出方向は水平成分を有する。本実施形態においては、ノズル26はポンプ10の底部側で水流が広範囲に行きわたるように、斜め上方向、水平方向及び斜め下方向の3方向に向けられている。噴出の3方向の、水平方向の成分は全て同一方向である。
【0017】
図2は、整流板28が設けられた吸水槽11を示す。整流板28は、ポンプ10の吸込口14の下方に位置するように吸水槽11の側壁27aから吸込口14の反対側まで側壁27bと平行に延びている。4本の高圧水噴出管29のノズル26a,26b,26c,26dのうち、ノズル26a,26bは吸水槽11内の整流板28を境界とした一側に配置され、ノズル26c,26dは、吸水槽11内の整流板28を境界とした他側に配置されている。ノズル26aは、整流板28の一端側で、かつ、整流板28が側壁27aと接続する部分の近傍に配置され、ノズル26aの向きは整流板28と平行に、整流板28の前記一端側から他端側に噴出される方向である。ノズル26bは、整流板28の他端側で、かつ、側壁27b近傍に配置され、ノズル26bの向きは整流板28と平行に、整流板28の前記他端側から前記一端側に噴出される方向である。ノズル26c,26dもまた、ノズル26a,26bと同様の位置関係を有して配置されている。ノズル26a,26bの、整流板28の一端側から他端側へ向かう方向と直交する方向における位置関係は、互いに逆であってもよい。ノズル26c,26dの位置関係についても同様に互いに逆であってもよい。
【0018】
図3は、整流板が設けられていない吸水槽11を示す。ノズル26eは、側壁27aと側壁27bが接続する部分の近傍に配設されている。ノズル26eの向きは、ノズル26eから噴出される高圧水の水平方向の成分が、側壁27aと側壁27bが接続する部分から側壁27bと平行に噴出される方向である。ノズル26fは、吸込口14に対して、ノズル26eと反対側の、側壁27b近傍に配置されている。ノズル26fの向きは、ノズル26fから噴出される高圧水の水平方向の成分が、側壁27bと直交し、ノズル26fから側壁27b側へ向かう方向と反対方向に噴出される方向である。ノズル26gは、ノズル26fの噴出方向の、側壁27c近傍に配置されている。ノズル26gの向きは、ノズル26gから噴出される高圧水の水平方向の成分が、側壁27aと側壁27cが接続する部分に向かって側壁27cと平行に噴出される方向である。ノズル26hは、側壁27aと側壁27cが接続する部分の近傍に配設されている。ノズル26hの向きは、ノズル26hから噴出される高圧水の水平方向の成分が、側壁27aと側壁27cが接続する部分から側壁27aと平行に噴出される方向である。すなわち、ノズル26eの噴出方向の前方にノズル26fが配設され、ノズル26fの噴出方向の前方にノズル26gが配設され、ノズル26gの噴出方向の前方にノズル26hが配設され、ノズル26hの噴出方向の前方にノズル26eが配設されている。本実施形態においては、4つのノズル26e,26f,26g,26hの向きは、ポンプ10の羽根車17の回転方向と同じ方向である。
【0019】
高圧水配管24が分岐する部分の吐出エルボ12cの内周面には、フィルタ30が設けられている。
【0020】
吐出エルボ12cのほぼ最上部に吸気孔32が穿設され、この吸気孔32に吸気管33が接続されている。この吸気管33は真空破壊弁34を介して大気に連通されている。真空破壊弁34は逆止弁であり、ケーシング12内が負圧になると、大気連通側からケーシング12内へ空気が吸いこまれる方向にのみ開弁する。
【0021】
制御装置36は、ポンプ10の吐出弁15と接続されている。この制御装置36により、ポンプ10の吐出弁15の開閉が制御される。
【0022】
次に、高圧水配管24の安全弁23について説明する。図4乃至図6に、安全弁23の態様を示す。図4は、テーパ形状のフロート37を利用した逆止弁である。安全弁23の入口(吐出エルボ12c側からの高圧水配管24が接続された部分)が出口(分配部25側への高圧水配管24が接続された部分)より下方に位置している。安全弁23は、入口と出口の間で鉛直方向に立ち上がり、水平方向の断面が円形の管で形成された鉛直部38を備え、入口、鉛直部38及び出口がクランク状に接続されて形成されている。鉛直部38を構成する管の軸中心には、スピンドル39が設けられている。テーパ形状のフロート37の軸中心には、テーパの軸方向に貫通する貫通孔40が設けられている。貫通孔40には、軸受41が貫設されている。テーパ形状のフロート37は、底面側に向けてテーパ形状となるように軸受41を介してスピンドル39に挿通されている。テーパ形状のフロート37はスピンドル39上で上下に移動できるようになっている。鉛直部38には、テーパ形状のフロート37がテーパ部分で嵌合する大きさのオリフィス42が設けられている。テーパ形状のフロート37のテーパ部分がオリフィス42に嵌合すると、安全弁23の鉛直部38を封止するようになっている。安全弁23のスピンドル39の下端が支持される部分には、その部分を包囲し、かつ、テーパ形状のフロート37の底面を支持できるような形状のハンチング防止用のダンパ44が設けられている。
【0023】
図5は、図4のスピンドル39の上端が、上端にハンドル46、下端に固着されたストッパ47が設けられ、鉛直部38の頂面を貫通した中空の軸48に、挿入された安全弁23を示す。中空の軸48の外周面にはおねじ部50が設けられており、おねじ部50と螺合するめねじ部51が鉛直部38の頂面に設けられている。スピンドル39の上端は、中空の軸48に挿入され、中空の軸48のおねじ部50が、鉛直部38のめねじ部51と螺合することにより支持されている。
【0024】
図6は、図5の安全弁23のテーパ形状のフロート37及びオリフィス42が、円筒形状のフロート53及び鉛直部38の内周面の円断面形状が下方に向かうにつれて小さくなっている傾斜部54を上方に備えるオリフィス55に変更された安全弁23を示す。安全弁23は、円筒形状のフロート53がオリフィス55の傾斜部54がある範囲のスピンドル39上で上下に移動すると、円筒形状のフロート53の底面と傾斜部54が形成する隙間の大きさを変化させるようになっている。フロート53の底面は、傾斜部54の最下端で支持される大きさである。
【0025】
図7は、ポンプ10の流量−揚程曲線(H−Q曲線)の一例をポンプ効率η及び軸馬力Lと共に示している。図7において、横軸は最適流量Qoptに対する流量Qの割合(Q/Qopt)であり、縦軸は最適揚程Hoptに対する揚程Hの割合(H/Hopt)である。Q/Qoptが約0.6〜1.2の範囲は定格運転域、Q/Qoptが約1.2以上は過大流領域、Q/Qoptが約0.6以下は部分流領域である。
【0026】
次に、本発明にかかるポンプ10の動作について説明する。降雨情報等に基づいて、例えば吸込ベル13の吸込口14よりも低い待機水位(吸水槽11内に水がない状態でもよい。)でポンプ10が始動されると、ケーシング12内には水が存在しないので羽根車17は空気中で回転する(空転運転)。このとき、ポンプ10の吐出弁15は、始動前と同様、開弁状態である。吸水槽11内の水位が上昇して羽根車17の下端まで達すると吸水槽11内の水は羽根車17の回転により吸い上げられ、吸込ベル13、ポンプケーシング12b、揚水管12a、及び吐出エルボ12cを介して吐出管16へ排水される(通常運転)。
【0027】
排水が終了すると、ポンプ10の運転を停止する。ケーシング12の内部の水は落水する。そのため、次回の始動時までケーシング12の内部は水で満たされていない。ケーシング12の内部に水がない状態で軸受19,20等に水分が付着した状態であるか、又はケーシング12の内部が多湿である状態が長く続くと、軸受19,20等の金属表面に空気中の酸素が結びつくことにより、錆が発生しやすくなる。そのため、ある一定期間使用しない場合には、軸受19,20の錆防止等の性能維持のために管理運転を行う。
【0028】
ポンプ10の管理運転は排水を目的にしていないため、揚水に費やされるエネルギーを出来る限り少なくするように吐出弁15を閉弁した状態にして運転を行う。
【0029】
その際、高圧水配管24の安全弁23を開弁させるようにする。そのようにすれば、高圧水配管24へ水を流すことができる。これにより、ポンプ10の内部の水を流動させることができるので、主軸18の羽根車17の回転により発生した熱がポンプ10の内部の水に蓄積され水温が上昇するのを回避できる。また、ポンプ10の水を流動させることで、ポンプ10の吐出側が締め切られて水がポンプ10の内部に充填されたまま送水されずに存在することにより、駆動機構21、軸受19,20及び羽根車17への負荷が大きい状態が維持されるのを回避できる。
【0030】
高圧水配管24の安全弁23の開閉は、高圧水配管24上にある安全弁23のオリフィス42,55の入口圧力P1と、スピンドル39上で上下するフロート37,53の水中重量による圧力Pfと、安全弁23のオリフィス42,55の出口圧力P2との関係に従って行われる。本実施形態のポンプ10は、ポンプ10の吐出弁15を締め切った状態で揚水量を変化させることにより、図7のポンプ10の流量−揚程曲線(H−Q曲線)に示す範囲において、所望の水圧の水を得て安全弁23を開弁することに利用する。
【0031】
安全弁23は定格運転では開弁させないようにするため、安全弁23が開弁する圧力に対応するHb(対応する流量はQb)は、図7に示す定格運転域よりも高圧の水が得られる部分流領域で設定する。
【0032】
上述した流量−揚程曲線(H−Q曲線)を示すポンプ10において、Q/Qoptが定格運転域又は過大流領域で運転する場合、Q/QoptがQbより大きな値をとるため、H/HoptはHb未満(通常運転時に対応する第1の圧力)となり、所望の水圧の水を得ることはできない。そのため、安全弁23の入口の水は開弁することに利用できない。このことから、ポンプ10を定格運転域又は過大流領域で運転する場合には、安全弁23が開弁されることはない。
【0033】
Q/Qoptが部分流領域の、Qbより大きな値をとる範囲で運転する場合には、定格運転域又は過大流領域で運転する場合と同様に、H/HoptはHb未満となり、所望の水圧の水を得ることはできない。そのため、安全弁23の入口の水は開弁することに利用できない。
【0034】
Q/Qoptが部分流領域の、0より大きくQbと同じかQbより小さな値をとる範囲で運転する場合には、H/HoptはHb以上(管理運転時に対応する第2の圧力)となり、所望の水圧の水を得ることができる。つまり、高圧水配管24の安全弁23を開弁するためには、Q/Qoptが部分流領域の、0より大きくQbと同じかQbより小さな値をとる範囲で運転する。
【0035】
ポンプ10の管理運転は、ポンプ10の吐出弁15を閉弁した状態にし、部分流領域の、Q/Qoptが0より大きくQbと同じかQbより小さくなる範囲で、ポンプ10を運転することにより行う。これにより、高圧水配管24の安全弁23を開弁することができ、ノズル26の方へと高圧水を流すことができる。
【0036】
安全弁23の開弁により高圧水配管24を流れる水は、吸水槽11へ単純に戻すと、揚水によるエネルギーを放出することになるので損失となる。この損失を低減するため、水を落下させる際、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変換してノズル26から水流を発生させ利用する。
【0037】
安全弁23の開閉のメカニズムを説明する。高圧水配管24上にある安全弁23のオリフィス42,55の入口圧力P1と、スピンドル39上で上下するフロート37,53の水中重量による圧力Pfと、安全弁23のオリフィス42,55の出口圧力P2との関係により安全弁23の開閉が行われる。吐出エルボ12cから高圧水配管24に伝達される安全弁23のオリフィス42,55の入口圧力P1は、吐出エルボ12cの圧力とほぼ同じであるので、上述した方法で水圧を制御することにより入口圧力P1を容易に制御できる。フロート37,53の重量をWt、浮力をWwとすると、フロート37,53の水中重量WfはWtとWwとの差である。フロート37,53の水中重量による圧力Pfは、フロート37,53の投影面積をAとすると、WfをAで除したものである。
【0038】
フロート37,53の水中重量による圧力Pfが、入口圧力P1と出口圧力P2の差(P1>P2)より大きいと、フロート37,53の水中重量に抗して押し上げる力は発生しないため、フロート37,53とオリフィス42,55の間には、隙間が生じず流体は流れない。
【0039】
フロート37,53の水中重量による圧力Pfが、入口圧力P1と出口圧力P2の差(P1>P2)と同圧になると、フロート37,53とオリフィス42,55の間には、隙間が生じ流体は流れ始める。
【0040】
フロート37,53の水中重量による圧力Pfが、入口圧力P1と出口圧力P2の差(P1>P2)より小さいと、フロート37,53とオリフィス42,55の間には、隙間が生じ流体は流れる。フロート37,53は、入口圧力P1と出口圧力P2の差が大きいほど上に移動する。図7のHbは、安全弁23のフロート37,53の形状や重量及びオリフィス42,55の直径等により決定される。ポンプ10において、適切なパラメータを選択することにより、高圧水配管24内が通常運転時の圧力である第1の圧力で安全弁23を閉弁させ、管理運転時の圧力である前記第1の圧力よりも高圧の第2の圧力で安全弁23を開弁させ、高圧水配管24に高圧水を流すことができる。このようにして、高圧水配管24内の圧力を制御することにより、安全弁23を開閉し、高圧水配管24を通じた高圧水の供給を制御できる。
【0041】
図5及び図6の安全弁23は、ハンドル46を回転させ、ストッパ47の鉛直方向の位置を予め調整することにより、フロート37,53の移動範囲を規制することができ、高圧水配管24の最大流量を調整できる。
【0042】
高圧水配管24を流れる高圧水は、ポンプ10のケーシング12から供給され、分配部25を通って高圧水噴出管29に送られノズル26から噴出される。ノズル26からジェット水(高圧水)は、斜め上方向、水平方向及び斜め下方向の3方向に噴出される。噴出の3方向の水平方向の成分は全て同一方向であるので、水平方向に向きが一定の水流を発生させることができる。ノズル26から吸水槽11の底面へ向けて斜め下方向にも噴出されるので、底面に沿った水流によって、底面に付着しているヘドロ等に力を加えることができ剥離することができる。そして、底面に堆積していたヘドロ等とともに剥離されたヘドロ等もジェット水により水中を浮遊する。
【0043】
図2に示すようにノズル26a,26b,26c,26dが配置された吸水槽11においては、吸水槽11内の整流板28で仕切られた領域の中で、ノズル26aとノズル26bの向きが180°異なり、かつ、ノズル26a,26bがノズル26a,26bの向きに直交する方向で互いにずれている。そのため、ノズル26a,26bの向きに直交する方向のずれが略楕円の短軸となり、ノズル26a,26bの向きと平行な方向のずれが略楕円の長軸となるような略楕円の旋回流を、ノズル26aとノズル26bの中点を中心として発生させることができる。旋回流の旋回方向は、ノズル26a,26bの向きと同方向である。ノズル26c,26dについても、ノズル26a,26bと同様である。
【0044】
また、図3に示すようにノズル26が配置された吸水槽11においては、ある1つのノズル26、例えばノズル26eにより噴出された水流がその噴出方向前方のノズル26f近傍に到達する。ノズル26f近傍に到達した水流は、ノズル26fが噴出した水流により押し出される。前記水流により押し出されて、前記水流と一体となった水流は、ノズル26g近傍に到達し、同様にノズル26gが噴出した水流により押し出される。このようにして、4つのノズル26e,26f,26g,26hによって、吸水槽11内で、ポンプ10の吸込口14を中心にした旋回流を発生させることができる。本実施形態においては、ノズル26e,26f,26g,26hの向きが、羽根車17の回転する方向と同方向であるので、ノズル26e,26f,26g,26hからのジェット水の噴出により、ポンプ10の羽根車17の回転抵抗を軽減できる。
【0045】
ジェット水により浮遊したヘドロ等は、上述の旋回流に乗って吸込口14の周囲を循環する。その後、ポンプ10の運転を停止すると、高圧水配管24の内部で高圧水が得られなくなり、安全弁23は閉弁する。その結果、ノズル26からジェット水は噴出されなくなり、やがて、旋回流は消失する。そして、旋回流により吸込口14の周囲を循環していたヘドロ等は、旋回流の中心付近の槽底に集積する。
【0046】
次にポンプ10を始動すると、吸水槽11の底面に集積しているヘドロ等は水とともにポンプ10の吸込口14から吸い上げられ、ポンプ10の吐出側から排出される。このようにして、吸水槽11の内部、特に底面を掃除することができる。
【0047】
すなわち、本発明によれば、ポンプ10のケーシング12の内部から高圧水配管24、分配部25、及び高圧水噴出管29を介して供給される高圧水をノズル26から噴出し、吸水槽11内で旋回流を発生させることができる。旋回流がポンプ10の吸込口14の周囲で発生するように高圧水噴出管29のノズル26が配設されているので、吸水槽11の底面に堆積したヘドロ等を旋回流に乗せて吸込口14近傍に移送し、ポンプ10の吐出側へ容易に排出することができる。これにより、複雑な装置を設けることなく簡易な構成で吸水槽11を効果的に清掃できる。
【0048】
また、高圧水配管24が分岐する部分のケーシング12の内周面にフィルタ30を設けることにより、高圧水配管24への送水時、高圧水配管24の中へヘドロ等が入り込むのを阻止し、高圧水配管24を詰まらせることを防止できる。また、通常の排水運転時にフィルタ30の表面を通過する水により、フィルタ30に付着したヘドロ等を容易に洗い流すことができ、フィルタ30を容易に洗浄できる。これにより、フィルタ30の目詰まりによる交換等のメンテナンスの手間を減少させることができる。
【0049】
本発明は実施形態のものに限定されず、種々の変形が可能である。例えば、図8に示すように、ケーシング12内が負圧になると、大気連通側からケーシング12内へ空気が吸いこまれる方向にのみ開弁する真空破壊弁57が介設された吸気管58を吐出エルボ12cと安全弁23の間の高圧水配管24から分岐させてもよい。このようにすれば、吸気管33のための吸気孔32を吐出エルボ12cに設ける必要がなくなる。また、吸気管58の真空破壊弁57より先端側で大気と連通している部分にサイレンサ59を介設してもよい。また、ポンプ10の吸込口14を中心に、吸水槽11の底面に、浮遊したヘドロ等を集積させるピットを設けてもよい。また、ノズル26の配置は、吸水槽11の下方の、吸込口14の周囲で旋回流を発生させるものであればいかなる配置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 立軸ポンプ
11 吸水槽
12 ケーシング
12a 揚水管
12b ポンプケーシング
12c 吐出エルボ
13 吸込ベル
13a 下端側先端部
14 吸込口
15 吐出弁
16 吐出管
17 羽根車
18 主軸
19,20 無注水軸受
19a,20a リブ
21 駆動機構
23 安全弁
24 高圧水配管
25 分配部
26,26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h ノズル
27,27a,27b,27c 側壁
28 整流板
29 高圧水噴出管
30 フィルタ
32 吸気孔
33,58 吸気管
34,57 真空破壊弁
36 制御装置
37,53 フロート
38 鉛直部
39 スピンドル
40 貫通孔
41 軸受
42,55 オリフィス
44 ダンパ
46 ハンドル
47 ストッパ
48 軸
50 おねじ部
51 めねじ部
54 傾斜部
59 サイレンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水配管に介設され、出口と、この出口よりも下方に位置する入口との間で鉛直方向に立ち上がる管で形成された鉛直部と、
前記鉛直部の軸中心に設けられたスピンドルと、
上下に移動できるように前記スピンドルに挿通され、下向きに縮径するテーパ形状のフロートと、
前記鉛直部内で前記フロートの下方に位置するオリフィスと
を備え、
前記フロートの水中重量を前記フロートの投影面積で除して得られる圧力が、前記オリフィスの入口圧力と前記オリフィスの出口圧力の差より大きいと、前記フロートと前記オリフィスとの間に隙間が生じず流体は流れず、
前記フロートの水中重量を前記フロートの投影面積で除して得られる圧力が、前記入口圧力と前記出口圧力の差以下となると、前記フロートと前記オリフィスとの間に隙間が生じて流体が流れる、安全弁。
【請求項2】
前記スピンドルの上端は前記鉛直部の頂部に配置された中空軸に挿入され、
前記中空軸にめねじ部が設けられると共に、前記スピンドルに前記めねじ部と螺合するおねじ部が設けられ、
前記スピンドルの前記フロートの上方にストッパが固着され、
前記スピンドルに設けられたハンドルを回転させてストッパの鉛直方向の位置を調整して前記フロートの移動範囲を規制できるようにしている、請求項1に記載の安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177478(P2012−177478A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103693(P2012−103693)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2009−26093(P2009−26093)の分割
【原出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】