説明

安定した濃縮および希釈された水中油型エマルジョン、その調製プロセス、およびこれらのエマルジョンを用いた製剤プロセス

本発明は、水中気泡プレエマルジョンから得られる安定した水中油型エマルジョンに関する。本発明の水中油型エマルジョンは、好ましくは非イオン性の界面活性剤と、親水性化合物から選択され、例えば、ポリオール類から選択される、少なくとも1つの水酸基を含む共界面活性剤と、水相と、を含む。本発明によると、前述した3つの要素は、規則正しい液体結晶構造の領域の中で選択される比率において、および/または偏光光学顕微鏡下で観察すると、これら3つの成分の混合物の構造が複屈折性を呈するように選択される比率において用いられる。さらに、単純脂質または複合脂質は、穏やかに、好ましくはせん断が生じることなく混合することによって、前述のプレエマルジョンに追加される。また、本発明は、このようなエマルジョンを調製する方法と、前記エマルジョンを使用する簡単な製剤方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に優れた安定性を示し、濃縮または希釈される水中油型エマルジョンおよび、その調製プロセスに関する。また、本発明は、これらのエマルジョンを用いる簡単な製剤プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョンは、2つの非混合性の液相−液相の永続的な混合を可能にするものとして、多様な技術分野において広く用いられる。
【0003】
エマルジョンを、水中油型エマルジョンと油中水型エマルジョンの2つの主なカテゴリーに分類することができる。水中油型エマルジョンにおいて、連続相は水であり、油滴が水相中に分散する。それに対し、油中水型エマルジョンにおいて、連続相は油であり、水滴が油相中に分散する。
【0004】
本出願において、「安定したエマルジョン」という用語は、室温で6ヶ月保管しても凝集や相分離をしないエマルジョンのことであり、好ましくは12ヶ月間、更に好ましくは18ヶ月間保管しても凝集や相分離をしないエマルジョンのことである。
【0005】
エマルジョンに要求される性質は、エマルジョンが用いられる技術分野によって異なる。しかし、いくつかの性質に関しては全てのエマルジョンに対して要求され、特に時間の経過と温度変化に対する安定性だけでなく、特にレオロジーに関する特定の性質、すなわちpH変化と電解質に対する安定性も要求される。
【0006】
化粧品、製薬、食品分野において、エマルジョンは、さらに多くの性質、特に外観、活性物質との相性、触感、食感、香り、皮膚や食料品に対する受容性等の性質を呈する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法で得られるエマルジョンは、特に、温度と希釈、または電解質の存在やpHの変化などの物理化学的パラメーター対して敏感性が高いという不都合を呈する。
【0008】
エマルジョンの組成物のいかなる変更は、微々たるものであるかもしれないが、エマルジョンの安定性に対して影響があり、ある意味、予測するのは困難である。従って、ほとんどの場合、ある1つの変更がエマルジョンの性質を変化させるため、新規的で適切な製剤プロセスの開発が必要となる。
【0009】
結果として、従来的に、所定の属性や外観を比較するため、あるいは構成要素の含有量を増減するために、新しい製品をエマルジョンに導入する場合、一連の手さぐり的な実験により、新しく完全な製剤手順を定めることが必要となる。
【0010】
本発明の発明者らは、製剤作業を単純化する手段を探求してきた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
長期の綿密な研究の結果、低いエネルギーを必要とし、顕著な安定性を示すエマルジョンを生成する、水中油型エマルジョン複合体を製剤するための、極めて単純かつ実用的なプロセスを開発した。
【0012】
このプロセスは、出願企業の利益になるように仏国特許出願公開第03/09861号明細書において開示されており、
最終的な水中油型エマルジョンの望ましい性質と作用を決定する段階と、
最終的なエマルジョンが呈すべき性質と機能のうち少なくとも1つを呈する各エマルジョンを選択する段階と、
任意的に各エマルジョンのうち少なくとも1つを水相に希釈する段階と、
いくつかの乳液が任意的にあらかじめ希釈される多様な各エマルジョンを混合する段階と、生じた混合物を水相に希釈する段階と、を含み、好ましくは、希釈する段階と混合する段階は、せん断力が生じないように行なわれる。
安定した水中油型エマルジョンである前記各エマルジョンは、
脂肪酸エステル、ワックス、バター、ワックスエステル、天然油、合成油、鉱油、硬化油、およびそれらの混合物から成るグループから選択される少なくとも1つの単純脂質または複合脂質と、
好ましくは非イオン性界面活性剤、特に任意的にエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステルおよびアルコールエトキシレートから成るグループから選択される少なくとも1つの界面活性剤と、
親水性化合物から選択され、特にポリオール類から選択される少なくとも1つの水酸基を含む共界面活性剤と、
水と、
任意の少なくとも1つの共界面活性剤と、を含む。これによって、生じるエマルジョン複合体は安定する。
【0013】
本願明細書において、特に以下の文献に詳細に記載される「洗剤相」プロセスによって各エマルジョンを調製することができることを示す。
Fragrance Journal,1993−4,35−40,H.Sagitani
J.Dispersion Sci.,9,115(1988),H.Sagitani,Y.Hirai,K.Nabet
Chem.Soc.Jpn,35,102(1986)
【0014】
本発明の発明者らは、洗剤相プロセスが特に好都合で、効果的であることを見出した。各エマルジョンは、気泡プレエマルジョンから得られる安定した水中型油エマルジョンであり、
特に、任意的にエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステルから成るグループと、アルコールエトキシレートから成るグループから選択される界面活性剤、好ましくは非イオン性の界面活性剤と、
親水性化合物、特にポリオール類から選択される少なくとも1つの水酸基を含む共界面活性剤と、
水相と、
これら3つの成分の状態相における規則正しい液体結晶構造の領域の中で選択される比率において、および/または、偏光光学顕微鏡下で観察すると、これら3つの成分の混合物の構造が複屈折性であるように選択される比率において、単純脂質、または、複合脂質は、穏やかに混合される。該脂質は、脂肪酸エステル、ワックス、バター、ワックスエステル、天然油、合成油、特に、シリコンとその誘導体、鉱油、硬化油から成るグループより選択される。
【0015】
エマルジョンは、ゲルの形態で存在する水中油型エマルジョンであり、濃縮され、大変安定性があり、希釈可能である。
【0016】
本発明の範囲内において、構造の偏光観察が可能である、即ち、像が形成される場合、その構造は複屈折性を示す。反対に、偏光下において複屈折性を示さない構造の観察は不可能であり、その場合は、像は形成されず、暗い背景が観察される。
【0017】
必要とされる比率における、界面活性剤、共界面活性剤、および水相の混合物の構造を偏光下で観察した結果を図1に示す。
【0018】
気泡プレエマルジョンから調製される本発明の安定した水中油型エマルジョンは、白いペーストである。図2に示すように、この気泡エマルジョンを構成する空気の小球は、偏光光学顕微鏡を用いて観察可能であり、その表面は複屈折性を呈する。
【0019】
他の理論にとらわれることなく、図2おいて観察される構造は、層状の複屈折性のある秩序構造であると、出願企業は確信する。
【0020】
本願明細書において、一般的に用いられている「油」という用語は、天然植物性油や天然動物性油、海洋性油、合成油(シリコンやその誘導体)、パラフィン油などの鉱油または硬化油を含み、また脂肪酸エステル、ワックス、ワックスエステル、バター、そしてそれらの混合物などの他の単純脂肪質または複合脂肪質を含む。
【0021】
水相は水、脱イオン水、滅菌水、水中油型エマルジョン、あるいは活性剤を希釈、分散、または懸濁した水溶液であり得る。水相のpHは、約2から約10の広範囲に亘る。
【0022】
本発明の特に有用な実施例によると、界面活性剤は、レシチン誘導体、任意的にエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステル、好ましくはHLBが13以上であるデカグリセロール脂肪酸エステル、さらに好ましくはデカグリセロールラウリン酸、デカグリセロールミリスチン酸、デカグリセロールステアリン酸、デカグリセロールイソステアリン酸、デカグリセロールオレイン酸、またはこれらの混合物から成るグリセロールから生じる界面活性剤のグループから選択される。
【0023】
ポリグリセロール脂肪酸エステルはほとんど刺激性がないことから、肌や粘膜に接するエマルジョンに特に適している。
【0024】
レクチン誘導体が基になる界面活性剤は、食料品に用いるエマルジョンとして大変有用である。
【0025】
用いられる共界面活性剤としては、水溶性化合物、少なくとも1つの水酸官能基を有する化合物から選択されることが好ましく、特に、ポリオール類またはその混合物、好ましくはジグリセロールから選択される。
【0026】
これら3つの成分の状態相における規則正しい液体結晶構造の領域において、および/または、偏光光学顕微鏡下で観察すると、これら3つの構成要素の混合物の構造が複屈折性を示すように、水、界面活性剤、および共界面活性剤の比率が選択される。
【0027】
上記の領域以外の比率の、これら3つの構成要素の混合物を偏光光学顕微鏡下で観察しても、どの構造も顕著ではなく、複屈折性を示さない。
【0028】
気泡エマルジョンは、100重量部の水と、300重量部から50重量部、好ましくは200重量部から120重量部の界面活性剤と、300重量部から50重量部、好ましくは180重量部から100重量部の共界面活性剤を含む。
【0029】
当然ながら、気泡エマルジョンは、従来、エマルジョンにおいて用いられる、安定剤、pH変化剤、抗酸化剤などの添加物を含む。
【0030】
さらに、ゲル状の水中油型エマルジョンは、少なくとも1つの水溶性または脂溶性の活性剤を含むことができる。当然、水溶性の活性物質の場合、脂溶性の活性物質はエマルジョンの水相に、脂溶性の活性物質の場合、脂溶性の活性物質はエマルジョンの油相に存在する。
【0031】
また本発明は、以下のプロセスを含む安定した水中油型エマルジョンの連続した調製プロセスにも関する。
a.好ましくは非イオン性界面活性剤、特に任意的にエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステル、およびアルコールエトキシレートから成るグループからの界面活性剤を選択し、親水性化合物、好ましくは少なくとも1つの水酸基を有する親水性化合物、特に、ポリオール類から選択される共界面活性剤を選択する。
b.界面活性剤、共界面活性剤および水相の成分の状態相における規則正しい液体結晶構造の領域によって与えられる比率、および/または、偏光光学顕微鏡下で観察すると、これら3つの構成要素の混合物の構造が複屈折性を示すように選択される比率において、これら3つの構成要素を、穏やかに混合、好ましくはせん断力が生じないように混合する。そして、図2に示すように、この気泡エマルジョンを構成する空気の小球は、偏光光学顕微鏡を用いた観察によって可視的であり、その表面が複屈折性を呈する白い気泡プレエマルジョンが得られるまで混合する。
c.ゲルが得られるまで、穏やかな混合、好ましくはせん断力が生じないように混合して、この気泡プレエマルジョンに単純脂質または複合脂質を混和する。
d.任意的に油相を追加する。
e.任意的に白色エマルジョンを得るための水相を追加する。
【0032】
せん断力が生じないように穏やかに攪拌しながら、単純脂質または複合脂質を少量ずつ連続的に加える。
【0033】
気泡エマルジョンを製剤する段階b)は、偏光光学顕微鏡下の観察によってモニタされる。構成要素である界面活性剤、共界面活性剤、水相または水を、所望の比率において軽く混合する場合、図1に示すような複屈折性を示す構造が観察される。図1は、偏光光学顕微鏡を用いて観察される3つの構成要素を軽く混ぜた混合物の画像写真である。複屈折性を示すこの構造の存在は、3つの構成要素の割合が望ましいものであることを証明する。図2aから図2fに示されるように、すなわち、複屈折性を示し水相3に囲まれる表面2を有する気泡1が偏光下において観察されるように、エマルジョンの生成が観察されるまで混合を継続する。
【0034】
図2において、図2aから図2eは、同じ気泡エマルジョンを異なるショットで撮影したものであり、図2fは、図2eに関連するが、被写界深度が異なる。
【0035】
穏やかに、好ましくはせん断力が生じることなく攪拌することによって、ゲルを単純水相または複合水相に希釈し、最終的な白いエマルジョンを得る。
【0036】
段階e)で用いられる水相は、気泡エマルジョンを製剤する段階b)の水相に置き換えることができる。
【0037】
本発明の意義の範囲内において、段階c)の終了時に得られるゲルにおいて存在する水中油型エマルジョンと、段階e)の終了時の水相の追加後に得られる白色エマルジョンを「濃縮エマルジョン」と呼ぶ。
【0038】
上記のプロセスにより得られたエマルジョンの顕著な安定性を考慮して、希釈することが可能である。
【0039】
従って、別の実施例によると、本発明のプロセスは、次いで行なわれる水相で希釈する段階f)を含む。一般的に、段階f)は、水相と前に得た、安定した水中油型エマルジョンと混合することによって得られる親水性活性物質を任意的に含む水相を使用する。
【0040】
さらに別の実施例によると、本発明のプロセスは、希釈する段階f)の代わりに、希釈する段階f)の前または後に、本発明による安定した水中油型エマルジョン、または従来の水中油型エマルジョンを、ゆっくりと、好ましくはせん断力が生じないように混合して追加する段階g)を含むことができる。
【0041】
このように、水中油型エマルジョン複合体を得るため、本発明の異なる安定した水中油型エマルジョンを互いに混合することが可能である。水中油型エマルジョン複合体、それ自体もまた安定性がある。
【0042】
気泡プレエマルジョンと水中油型エマルジョンの様々な組成の化合物の混合と、および様々な個々のエマルジョンの希釈と混合の機械的操作は、せん断力が生じてしまわないように、好ましくはせん断力を防ぐように穏やかな方法で行なわれる。
【0043】
例えば、この操作は、アンカースターラー、またはプラネタリーミキサーを用いる。
【0044】
混合や希釈の各段階を、70℃より低く、好ましくは40℃より低く、さらに好ましくは室温において行なうことができる。
【0045】
段階e)においてゲルに加える水相の総量は、濃縮エマルジョンの種類とその用途によって異なる。この量は、a)噴霧可能で、内部油相の内容量が多い、またはb)乳液であり、内部油相の内容量が多いエマルジョンに対して、製剤の量の約1/5で表される。また、油相の内容量があまり多くないクリームまたは乳液などの「補形エマルジョン」として用いられるエマルジョンに対して、製剤の量の1/4で表され、噴霧可能で油相の量がさらに少ないエマルジョンに対して、製剤の量の1/2で表される。
【0046】
プロセスのあらゆる段階において得られる水中油型エマルジョンは、顕著な安定性と、共通の物理特性を呈する。
【0047】
油粒子または油滴のサイズは、本発明の安定した水中油型エマルジョンに用いる界面活性剤のタイプにより異なるが、粒子サイズの分布は水中油型エマルジョンにおい均一である。
【0048】
好都合な実施例によると、水中油型エマルジョンは細かく、すなわち油粒子または油滴の平均径は約10μm未満であり、一般的には、約1μm未満であり、好ましくは約150nmから約750nmの間である。
【0049】
本発明の安定した水中油型エマルジョンは、0.05重量%から95重量%の油、好ましくは30重量%から92重量%の油を含む。
【0050】
好ましい実施例では、本発明のエマルジョンにおける界面活性剤の含有量は、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、さらに好ましくは約5重量%以下である。
【0051】
特に好都合な方法において、本発明のエマルジョンは、化粧品用エマルジョン、医薬品用エマルジョン、または食料品用エマルジョンであり、これら各エマルジョンは、化粧品活性、医薬品活性または食料品活性を有する少なくとも1つの薬剤を含む。
【0052】
エマルジョンは、油相、界面活性剤、および/または、水相および/または油相に混和される活性剤の選択によって、少なくとも1つの特定的な属性または機能を呈するであろう。
【0053】
従って、特定のエマルジョンは、例えば既知のレオロジー、特定的なテクスチャー、拡散性、および/または感覚性、特に香り、明度または色彩などの特徴的な物理化学特性を有することができる。
【0054】
例えば、これらの特性は、エマルジョンの物理化学特性および/または知覚特性を変化させる少なくとも1つの薬剤がエマルジョンにおいて存在することによって、比較される。エマルジョンの物理化学特性および/または知覚特性は、特に顔料、レオロジー剤、テクスチャー剤、充填剤、香料またはそれらの混合物を含むグループから選択される。
【0055】
例えば、他のエマルジョンは、味覚機能、または医薬的、皮膚科学的、化粧品用などの機能や活性を有してもよい。
【0056】
例えば、味覚機能、または食料品エマルジョンで使用される機能は、特定の風味や香味、食感の改善、またはビタミンや必須脂肪酸の濃縮である。
【0057】
この機能は、天然または合成香味、糖化剤、塩析剤、甘味料、ビタミン類、無機塩類、必須脂肪酸類、苦味剤、清涼剤などによって比較される。
【0058】
医薬的な機能や活性は、医薬的な活性油、または少なくとも1つの医薬的な活性物質、または活性物質を放出の変化を可能にする薬剤の存在によって比較される。
【0059】
化粧品用または皮膚科学的な機能や活性は、老化防止、瘢痕形成、脂漏の分泌制限、洗浄、UV放射線に対する保護、保湿、皮膚柔軟、収斂などにおける活性であり得る。
【0060】
これらの機能は、化粧品の特性を有する油相によって、および/または、油相または水相に活性剤を追加することによって導入される。活性剤は、抗しわ剤、UV保護剤、保湿剤、引き締め剤、皮膚柔軟剤、収斂剤、発泡剤、感触剤、清涼剤、ビタミン、エッセンシャルオイル、たんぱく質、アミノ酸、フルーツ酸などが挙げられる。
【0061】
当然、エマルジョンは、複数の特性および/または機能を含むことができる。
【0062】
当然ながら、本発明のエマルジョンに存在する活性剤の量は、それらの性質により異なる。水相に存在する水溶性の活性剤の量は、エマルジョンの全重量の約80重量%以下、より一般的には、約10重量%以下、好ましくは約5重量%台というように、極めて広範囲で変化することができる。油相に存在する脂溶性の活性剤の量は、エマルジョンの全重量の約92重量%以下、好ましくは30重量%から50重量%、更に好ましくは1重量%から10重量%であり得る。
【0063】
本発明の水中油型エマルジョンにおいて、「補形」エマルジョンと「活性」エマルジョンは区別される。
【0064】
「補形」エマルジョンは、従来の製剤における補形剤としての役割、製剤の主剤または基剤と比較される。「補形」エマルジョンの役割は、最終的な製剤に特別な機能や特性を導入するものではなく、単独、または製剤の主剤として用いられる。単独として用いられる場合は水相を使用して、また、製剤の主剤として用いる場合は活性エマルジョンを使用してこれらの製剤を希釈することが意図される。いずれの場合も、クリーミング現象を回避し、適切な粘度を保つため、特に用いられる界面活性剤/共界面活性剤系に従うように、噴霧可能なエマルジョンの「基剤」の場合は、50%以上のベースエマルジョン、クリームまたは乳液に用いる「基剤」の場合は、40%以上のベースエマルジョンとなる最大閾値まで、これらの製剤を希釈することができる。しかし、これらのパーセンテージは、特に、クリームや乳液のベース用の基剤に使用される油相の融点によって異なり得る。
【0065】
最小限の量で最大限の効果を引き出すように、「活性」エマルジョンを製剤の主剤に追加することができるように製剤する。(すなわち、有効成分は最大限に存在する。)
【0066】
製剤者にとってさらなる困難は、噴霧可能な製剤、すなわち、簡単にポンプで汲み上げ、細かい液滴として製剤を噴射することができるような粘性を呈する製剤の調製である。
【0067】
本発明の発明者らは、本発明による安定したエマルジョンを噴霧可能なエマルジョンの形態において提供することができることを見出した。本発明による噴霧可能な製品用のエマルジョンを、濃縮エマルジョンとは異なる方法で調製することもできる。これらの濃縮エマルジョンは、クリームタイプ、すなわち自由に流動せず、また、乳液タイプ、すなわち自由に流動するものの直接的には噴霧できないが、噴霧可能なエマルジョンである。
【0068】
最終的な噴霧可能なエマルジョンの感触、および油相における最終的な濃度は、最初の濃縮エマルジョンとは異なるものであろう。
【0069】
クリームタイプの濃縮エマルジョンは、油分が豊富であり、濃縮エマルジョンの全重量の45重量%から90重量%、好ましくは約68%の油を含み、界面活性剤/共界面活性剤の比率は0.5から1.5、好ましくは約1.22であり、界面活性剤/油の比率は0.01から0.15、好ましくは約0.05である。噴霧可能な希釈エマルジョンの油分として最小濃度である35重量%から70重量%、好ましくは約40.0重量%まで、油分が豊富な濃縮エマルジョンを希釈することができる。
【0070】
乳液タイプの濃縮エマルジョンは、平均的な油分濃度を呈することができる。従って、室温下で固体である脂質から製剤される場合においては、濃縮エマルジョンの全重量の10重量%から70重量%、好ましくは約30重量%の油分を、また室温下で液体である脂質および界面活性剤から生成された場合は、高い油分濃度、好ましくは68重量%の油分を含む。つまり一般的には、界面活性剤/共界面活性剤の比率は、0.5から2.5、好ましくは約0.9から約1.3であり、界面活性剤/油の比率は、0.01から1である。好ましくは68%の油分濃度である濃縮エマルジョンは、希釈されると噴霧可能となり、この場合の油分濃度は、噴霧可能な希釈エマルジョンの最小の油分濃度である1重量%から60重量%、好ましくは約42重量%である。
【0071】
低い油分濃度を呈する噴霧可能な各濃縮エマルジョンは、(希釈されていない場合でも噴霧することできる)「活性」濃縮物の調製に適しており、これら各濃縮エマルジョンを「補形」エマルジョンに少量加えることが意図される。濃縮エマルジョンは、その全重量の1重量%から40重量%の油分を含み、好ましくは約30重量%の油分を含む。また、界面活性剤/共界面活性剤の比率は1.5から10、好ましくは約1.05であり、界面活性剤/油の比率は、0.1から3、好ましくは約0.33である。低濃度の油分を有するこれら濃縮エマルジョンは、クリーミング現象を生じさせず、希釈エマルジョンの最小油分濃度である0.05重量%から10重量%、好ましくは約5重量%まで、単独で希釈することができる。
【0072】
ゲルの形態で存在する油相により希釈され、本発明のプロセスの段階c)の終了時に得られる各エマルジョンは、総重量の10重量%から70重量%、好ましくは60重量%の油分濃度を有し、界面活性剤/共界面活性剤の比率は、0.01から10、好ましくは0.97から1.22であり、界面活性剤/油の比率は、0.01から0.5、好ましくは0.17から0.27である。加えることができる油相の総量は、0.1%から100%であるが、製剤者が加えようとするものに従って希釈が実施されるので、好ましい量は存在しない。
【0073】
本発明の水中油型エマルジョンは、非常に安定していて互いに混合することができる。生成されるエマルジョンは、それ自体においても大変安定し、構成される各エマルジョン全ての性質、機能、および/または特性を有する。2つの「活性」エマルジョンが混合される際に生じる特異な相乗効果によって、新しい性質が生じる。実用的な、極めて簡単な方法で、所望の機能、特性、および性質の組み合わせを呈するエマルジョン複合体を製剤することができる。
【0074】
これらのエマルジョンは、複数のタイプの油粒子または油適は、水相中において安定して分散されるためエマルジョン複合体と呼ばれ、それ自体に活性剤を含むことができる。
【0075】
本発明はまた、水中油型エマルジョン複合体の製剤プロセスに関する。製剤プロセスは、
所望の最終的な水中油型エマルジョンの特性と機能を決定する段階と、
最終的なエマルジョンが示す特性や機能のうち少なくとも1つを呈する各エマルジョンを選択する段階と、
任意的に、個々のエマルジョンのうち少なくとも1つの水相で希釈する段階と、
任意的に、特定の個々のエマルジョンのうち少なくとも1つの油相で希釈する段階と、
前もって希釈したいくつかの異なるエマルジョンを含む各エマルジョンを混合する段階と、
任意的に、水相で希釈する段階と、
任意的に、油相で希釈する段階と、を含む。
希釈する段階と混合する段階は、せん断力が生じないように実施されるのが好ましい。各エマルジョンは、本発明の安定した水中油型エマルジョンである。
【0076】
各種エマルジョンの混合の機械操作は、せん断力が生じてしまわないよう、好ましくはせん断力を生じない穏やかな方法において行なわれる。
【0077】
この操作は、例えばアンカースターラーやプラネタリーミキサーを用いて行なわれる。
【0078】
混合または希釈する各段階は、70℃より低く、好ましくは40℃より低く、更に好ましくは室温で実施される。
【0079】
互いに混合される個々のエマルジョンの数は、限定されない。
【0080】
しかしながら、一般的に、本発明の製剤プロセスは、20種類以下のエマルジョン、好ましくは10種類以下のエマルジョン、さらに好ましくは2種類から8種類のエマルジョンの混合を含む。
【0081】
各特性や機能は、個々のエマルジョンに依存し、異なる個々のエマルジョンが混合されるという事実に鑑み、本発明に従って、親和性の活性物質を同時に含むエマルジョン複合体を調整することが可能である。これらの活性物質は、主に親油性活性剤である。
【0082】
従って、特定の活性剤に対する非親和性は、本発明のプロセスによるエマルジョンの製剤の妨げとはならない。
【0083】
製剤の単純さの観点においては、消費者に既存の製剤をカスタマイズさせ、また、特定の製剤を生成させることができる、オーダーメードの製剤薬局や薬剤師を設置することが可能である。
【0084】
従って、本発明の別の態様は、スクリーンシステムや他のダイアログシステム上にユーザーが保存した所望のエマルジョンの品質、特性、または機能に関係する指示から、エマルジョン、特に、化粧品用エマルジョンを製造することができる薬剤師の設置を含む。さらに、薬剤師は法的必要条件を満たすように、低濃度の様々な組成物を有するエマルジョンを配布するように計画を立てることができる。
【0085】
また、本発明は、顕著な安定性を呈する水中油型エマルジョン複合体に関し、非親和性活性剤との混合を含むことができる。
【0086】
また、本発明は、少なくとも1つの水中油型エマルジョン複合体を含む生成物の調製プロセスにも関する。
【0087】
このプロセスは、本発明による少なくとも1つの水中油型エマルジョン複合体を調製する段階と、少なくとも1つのこれらのエマルジョンと生成物の他の構成要素を混合する段階を含む。
【0088】
本発明のいくつかの水中油型エマルジョン複合体を用いるとき、他の組成物を加える前に、複数のエマルジョンを互いにあらかじめ混合することが好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に記述され、実施例は、本発明を例示するためだけに与えられ、その内容を限定しない。
【0090】
以下の実施例では、気泡エマルジョンの形成を準備する段階において水中油型エマルジョンを同時に調製した。
【0091】
気泡エマルジョンの調製手順は以下の通りであり。
【0092】
蒸留水、界面活性剤、および共界面活性剤を、せん断力が生じないように、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用いて混合する。
【0093】
これら3つの構成要素を混合して大まかに均一化した直後には、図1に例示されるような複屈折性を示す構造が、偏光光学顕微鏡で観察される。濃厚な白いペーストを得るまで混合し続け、混合物の外観を偏光顕微鏡で観察すると、図2によって例示されるように、気泡1は複屈折性の特性を呈する表面2を有し、気泡の間隔3は水相で満たされているのが見られる。
【0094】
全ての実施例において、偏光顕微鏡における観察を、Olympus CX41顕微鏡を用い、倍率は1000倍において実施する。
【0095】
実施例1:「クリームベース」エマルジョンの調製
以下の表1において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表1】

【0096】
a)気泡エマルジョンの調製
油相の融点よりわずかに高い温度において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、32.8gの蒸留水、39.2gのジグリセリン、そして48gのポリグリセリル−10ミリスチン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0097】
b)水中油型エマルジョンの調製
464gの水素化ポリイソブテン、80gのステアリルベヘネート(Stearyl Behenate)、80gのパーム核硬化油、24gのホホバエステル、および32gのセチルアルコールを含む油相を導入し、混和終了まで、約55℃において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に40gずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0098】
油相の全量を混合し終え、ゲルを得る。
【0099】
このゲルに、約55℃に加熱した198gの蒸留水と2.0gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0100】
室温まで冷却しても自由に流動しない、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0101】
実施例2:「乳液ベース」エマルジョンの調製
以下の表2において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表2】

【0102】
a)気泡エマルジョンの調製
65.6gの蒸留水、78.4gのジグリセリンおよび96gのポリグリセリル−10ステアリン酸が約50℃において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用いて、せん断力が生じないようにしながら混合される。
【0103】
b)水中油型エマルジョンの調製
469.6gの水素化ポリイソブテン、および90.4gのラウリルラウレートを含む油相を導入し、混和終了まで、約50℃において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、次に40gずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0104】
油相の全量を混合し終え、ゲルを得る。
【0105】
このゲルに、約50℃に加熱した65.6gの蒸留水と2gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0106】
自由に流動するものの噴霧可能ではない、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0107】
実施例3:「油分豊富な噴霧可能エマルジョン」用濃縮エマルジョンの調製
以下の表3において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表3】

【0108】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、32.8gの蒸留水、39.2gのジグリセリン、そして48gのポリグリセリル−10イソステアリン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0109】
b)水中油型エマルジョンの調製
680gのスィートアーモンドオイルを含む油相を導入し、混和終了まで、室温において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、次に40gずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0110】
油相の全量を混合し終え、透明なゲルを得る。
【0111】
このゲルに、198gの蒸留水と2gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0112】
自由に流動するものの噴霧可能ではない、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0113】
実施例4:「少なめの油分量を有する噴霧可能なエマルジョン」用の濃縮エマルジョンの調製
以下の表4において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表4】

【0114】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、5gの蒸留水、95gのジグリセリン、そして100gのポリグリセリル−10ミリスチン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0115】
b)水中油型エマルジョンの調製
300gのスィートアーモンドオイルを含む油相を導入し、混和終了まで、室温において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、次に40gずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0116】
油相の全量を混合し終え、ゲルを得る。
【0117】
このゲルに、498gの蒸留水と2gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0118】
自由に流動し、噴霧可能で、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0119】
実施例5:「油相に少なめの油分量を有する噴霧可能なエマルジョン」用の濃縮エマルジョンの調製
以下の表5において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表5】

【0120】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、5gの蒸留水、95gのグリセロール、そして100gのポリグリセリル−10ラウリン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0121】
b)水中油型エマルジョンの調製
300gの水素化ポリイソブテンを導入し、室温において連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、最後に残りをせん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0122】
ゲルを得る。
【0123】
このゲルに、503gの蒸留水と2gのメチルパラベンを30mlから60mlずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0124】
自由に流動し、噴霧可能である、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0125】
実施例6:希釈可能な「日焼け防止用」濃縮エマルジョンの調製
以下の表6において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表6】

【0126】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、32.8gの蒸留水、39.2gのジグリセリン、そして48gのポリグリセリル−10ミリスチン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0127】
b)水中油型エマルジョンの調製
300gのクランベリーシードオイル、300gのエチルヘキシルメトキシケイ皮酸エステル、および80gのラウリルラウレートを含む油相導入し、混和終了まで、室温において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、最後に残りをせん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0128】
油相の全量を混合し終え、ゲルを得る。
【0129】
このゲルに、198gの蒸留水と2gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0130】
自由に流動するものの噴霧可能ではない、水相および/または水中油型エマルジョンにより希釈可能な、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0131】
実施例7:油相によって希釈することができる濃縮エマルジョンの調製
以下の表7において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表7】

【0132】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、80gの蒸留水、98gのジグリセリン、60gのポリグリセリル−10ミリスチン酸、および60gのポリグリセリル−10イソステアリン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0133】
b)水中油型エマルジョンの調製
587gの水素化ポリイソブテンと113gのラウリルラウレートを混合した油相を導入し、室温において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、最後に油相700gの残りをせん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0134】
油相の全量を混合し終え、透明なゲルを得る。
【0135】
油相による希釈後に水相による希釈可能な、または水相のみによる希釈可能な1kgの安定した透明なゲルが得られる。
【0136】
実施例8:希釈可能な「抗しわ」用エマルジョンの調製
以下の表8において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表8】

【0137】
a)気泡エマルジョンの調製
室温において、アンカースターラーまたはプラネタリーミキサーを用い、5gの蒸留水、95gのグリセロール、そして100gのポリグリセリル−10ミリスチン酸を、せん断力が生じないように混合する。
【0138】
b)水中油型エマルジョンの調製
300gのビルベリーシードオイル、および30gのラウリルラウレートを混合した油相を導入し、混和終了まで、室温において2.5分毎に連続して10gずつ4回、次に連続して20gずつ4回、次に連続して30gずつ4回、次に40gずつ、せん断力が生じないように穏やかに混合する。
【0139】
油相の全量を混合し終え、ゲルを得る。
【0140】
このゲルに、498gの蒸留水と2gのメチルパラベンを、せん断力が生じないように穏やかに混合しながら加える。
【0141】
自由に流動し、噴霧することも希釈することもできる、1kgの安定した白色エマルジョンが得られる。
【0142】
実施例9:希釈可能な「抗炎症」用エマルジョンの調製
以下の表9において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表9】

【0143】
エマルジョンは、実施例8と同様に調製され、実施例8におけるビルベリーシードオイルの代わりに同量のブラックカラントシードオイルを使用する。
【0144】
自由に流動し噴霧可能な安定したエマルジョンが得られる。
【0145】
実施例10:希釈可能な「細胞再生」用エマルジョンの調製
以下の表10において示す組成を呈する水中油型エマルジョンを、以下の方法で調製する。
【表10】

【0146】
エマルジョンは、実施例8と同様に調製され、実施例8におけるビルベリーシードオイルの代わりに270gのスィートアーモンドオイルと30gのピート抽出液を使用する。自由な流動する噴霧可能な安定したエマルジョンが得られる。
【0147】
実施例11:ベースエマルジョンの希釈
実施例1〜5において調製されたベースエマルジョンを水で希釈した。「安定性」を保つエマルジョンに、最大量の水を追加することができた。そこで、クリーミング現象が生じない最大量を以下の表に示す。全てのケースにおいて、希釈度に関係なく、これら全てのエマルジョンは、相分離現象を呈しなかった。
【表11】

【0148】
特殊なケース:実施例7:油相による希釈後に水相による希釈可能なエマルジョン
【表12】

【0149】
実施例12:異なるエマルジョンの混合
様々なエマルジョン複合体を、実施例6および8〜10の機能的なエマルジョンと、実施例1〜5および7のベースエマルジョンを混合して調整した。
【0150】
最終的に生成したエマルジョンによって示される活性エマルジョンの機能に対し、ベースエマルジョンと混合することができる活性エマルジョンの最小量を、以下の表に示す。(これらの値は、限定されることなく活性エマルジョンの構成に従うであろう)。
【0151】
追加することができる最大量も以下の表に示される。これらの最大量は、法基準に基づいて決定される。
【表13】

【0152】
実施例13:保湿および噴霧可能なボディーエマルジョンの製剤
以下の各エマルジョンが選択される。
(A)柔軟および流体エマルジョンベース
(B)シリコン
(C)柑橘系香料
これら各エマルジョンを以下の表に示される割合で、水と0.2%のメチルパラベンを含む水相の入ったフラスコ中に導入される。
【0153】
均質なエマルジョンが得られるまで穏やかに混合を続ける。噴霧して皮膚に塗布することができる流体エマルジョンは、このようにして得られ、白色で安定している。
【表14】

【0154】
各エマルジョンの組成を以下に示す。
(A)柔軟用および流体エマルジョン
【表15】

(B)シリコン
【表16】

(C)柑橘系香料
【表17】

【0155】
各エマルジョン(A)〜(C)は以下のように調製される。
【0156】
相Aの成分を、上記手順に従い、「気泡」エマルジョンが得られるまで室温で混合する。
【0157】
相Bをゆっくり混合しながらゆっくりと加え、最後に相Cを加える。流動性を有する白色水中油型エマルジョンはこうして得られる。
【0158】
生成したエマルジョンの粒子サイズ分布は単分散であり、長時間経っても凝集を全く呈しない。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】必要とされる本発明の界面活性剤、共界面活性剤、および水相の混合物の構造を偏光下において観察した結果を示す。
【図2】図2aから図2eは、同じ気泡エマルジョンを異なるショットで撮影したものであり、図2fは、図2eに関連するが、被写界深度が異なる。
【符号の説明】
【0160】
1 気泡
2 表面
3 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡プレエマルジョンから得られる安定した水中油滴エマルジョンであって、
好ましくは非イオン性の界面活性剤、特に、任意にエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステル、及び、アルコールエトキシレートから成るグループから選択される界面活性剤と、
親水性化合物から選択され、好ましくは少なくとも1つ、特にポリオール類から選択される水酸基を含む共界面活性剤と、
水相と、を含み、
これら3つの成分の状態相における規則正しい液体結晶構造の領域の中で選択される比率において、および/または、偏光光学顕微鏡下で観察すると、当該3つの成分の混合物の構造が複屈折性であるように選択される比率において、単純脂質、または、複合脂質は、穏やかに混合され、
前記脂質は、脂肪酸エステル、ワックス、バター、ワックスエステル、天然油、合成油、鉱油、硬化油から成るグループから選択されるエマルジョン。
【請求項2】
前記気泡プレエマルジョンは白色ペーストであり、構成体である気泡は偏光下で観察され、当該気泡の表面は複屈折性を示すことを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記界面活性剤は、レシチン誘導体から成るグリセロール誘導体と、任意でエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステルと、これら混合物のグループから選択され、
前記ポリグリセロール脂肪酸エステルは、好ましくはHLBが13以上であるデカグリセロール脂肪酸エステル、より好ましくはデカグリセロールラウリン酸、デカグリセロールミリスチン酸、デカグリセロールステアリン酸、デカグリセロールイソステアリン酸またはデカグリセロールオレイン酸であり、
前記共界面活性剤は、ポリオール、好ましくはジグリセロールであることを特徴とする、請求項1または2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記水中気泡プレエマルジョンは、100重量部の前記水と、300重量部から50重量部、好ましくは200重量部から120重量部の前記界面活性剤と、300重量部から50重量部、好ましくは180重量部から100重量部の前記共界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項5】
連続した安定水中油滴エマルジョンの調製プロセスであって、
a)好ましくは非イオン性の界面活性剤、特に任意でエトキシ化されるポリグリセロール脂肪酸エステル、およびアルコールエトキシレートから成るグループからの界面活性剤を選択し、および親水性化合物、好ましくは親水性化合物、特に、ポリオール類から選択される、少なくとも1つの水酸基を有する共界面活性剤を選択することと、
b)前記界面活性剤、前記共界面活性剤および水相の成分の状態相における規則正しい液体結晶構造の領域によって与えられる比率、および/または、偏光光学顕微鏡下で観察すると、これら3つの構成要素の混合物の構造が複屈折性を示すように選択される比率は、当該3つの構成要素を、穏やかに混合し、好ましくはせん断力が生じないように混合し、偏光光学顕微鏡を用いた観察によって可視的であり、その表面は複屈折性を呈する白い気泡プレエマルジョンが得られるまで混合することと、
c)ゲルが得られるまで、穏やかに混合し、好ましくはせん断力が生じないように混合し、前記気泡プレエマルジョンに単純脂質または複合脂質を混和することと、
d)任意的に油相を追加することと、
e)任意的に水相を追加し、白色のエマルジョンを得ること、を含むプロセス。
【請求項6】
前記単純脂質または前記複合脂肪物質は、せん断力が生じないようにゆっくりと攪拌しながら、少量ずつ連続的に加えられることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
親水性活性剤を任意に含む水相を用い、穏やかに、好ましくはせん断力を生じないように混合し、希釈する段階f)を含む、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかで定義され、請求項5から7のいずれかで調製される前記安定した水中油型エマルジョンを、穏やかに、好ましくはせん断力が生じないように混合し追加する段階g)を含む、請求項5から7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
複合水中型油エマルジョンの製剤プロセスであって、
所望の最終的な水中油型エマルジョンの特性と機能を決定する段階と、
最終的なエマルジョンが示す特性や機能のうち少なくとも1つを呈する各エマルジョンを選択する段階と、
任意的に、個々のエマルジョンのうち少なくとも1つの水相で希釈する段階と、
任意的に、個々のエマルジョンのうち少なくとも1つの油相で希釈する段階と、
前もって希釈したいくつかのエマルジョンを含む様々な前記各エマルジョンを混合する段階と、
任意的に、水相で希釈する段階と、を含み
前記希釈する段階と前記混合する段階は、好ましくは、せん断力が生じないように実施され、前記各エマルジョンは請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製される安定した水中油型エマルジョンであるプロセス。
【請求項10】
油粒子または油滴の平均径は約10μm未満であり、一般的には、約1μm未満であり、好ましくは約150nmから約750nmの間であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製されるエマルジョン。
【請求項11】
少なくとも1つの親油性活性化合物及び/または少なくとも1つの親水性活性化合物を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製されるエマルジョン。
【請求項12】
前記界面活性剤の含有量は、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、さらに好ましくは約5%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製されるエマルジョン。
【請求項13】
油の含有量は、0.05重量%から95重量%の油、好ましくは30重量%から92重量%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製されるエマルジョン。
【請求項14】
水相に存在する水溶性の活性剤の量は、エマルジョンの全重量の約80重量%以下、好ましくは約10重量%以下、更に好ましくは約5重量%台であり、油相に存在する脂溶性の活性剤の量は、エマルジョンの全重量の約92重量%以下、好ましくは約30重量%から約50重量%、更に好ましくは約1重量%から約10重量%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載され、請求項5から7のいずれかで調製されるエマルジョン。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【公表番号】特表2007−501835(P2007−501835A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523026(P2006−523026)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000122
【国際公開番号】WO2005/025533
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506046539)ジェイ アンド シー アンテルナシオナル (1)
【Fターム(参考)】