説明

安定化したリン酸カルシウム複合体

本発明は、ホスホペプチドで安定化した非晶質リン酸カルシウムおよび/または非晶質フッ化リン酸カルシウム複合体に関し、この複合体はpH7.0未満で形成される。このような複合体の生成方法も提供される。この複合体は、歯科用途、特に歯の再石灰化に有用である。好ましくは、この複合体は、約5.0〜最大7.0未満の範囲のpHで形成される。より好ましくは、この複合体は、約5.0〜約6.0のpH範囲で形成される。好ましい実施形態では、この複合体は、pH約5.5で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホペプチドによって安定化した非晶質リン酸カルシウムおよび/または非晶質フッ化リン酸カルシウムに関する。本発明の複合体の生成方法、ならびに齲蝕、歯石、歯の侵食/腐食、および歯の過敏症の治療方法または予防方法が提供される。これらは、齲蝕ならびに他の歯科/医療用途(歯石防止、侵食/腐食防止、および歯の過敏症防止を含めた)の早い段階で再石灰化(修復)するため、歯の構造を保護するという抗齲蝕原性の特性を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
齲蝕は、通常、歯垢の歯原性バクテリアによって食物の糖発酵から産生される有機酸による、歯の硬組織の脱灰によって開始される。齲蝕は、依然として公衆衛生の主要な問題である。さらに、修復された歯の表面は、修復部辺縁周辺で、さらなる齲蝕を受けやすいことがある。ほとんどの先進国では、フッ化物を使用することによって齲蝕の罹患率が低下したが、この疾患は依然として公衆衛生の主要な問題である。歯の浸食/腐食は、食物由来の酸または逆流酸による歯のミネラル損失である。歯の過敏症は、保護用石灰化層であるセメント質の損失による露出した象牙質細管に起因するものであり、歯石は、歯の表面上の、リン酸カルシウムミネラルの望ましくない付着である。したがって、これらの症状、齲蝕、歯の侵食/腐食、歯の過敏症、および歯石はすべて、リン酸カルシウム濃度の不均衡である。
【0003】
齲蝕、歯の侵食/腐食、および歯の過敏症は、安定型非晶質リン酸カルシウム(ACP)または安定型非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)で、生物利用可能なカルシウムイオンおよびリン酸イオンを提供して、損失したリン酸カルシウムミネラルを置き換えることによって治療することができる。安定型ACPおよび安定型ACFPは、歯石の表面と結合し、さらなる付着を防止または低減することもできる。したがって安定型ACPおよび安定型ACFPは、口腔疾患および他の病状の予防および治療に主要な役割を果たすことができる。
【0004】
カゼインは、ミセルの形態で乳中に存在し、半径約100nmのほぼ球形の粒子であり、水、塩、ラクトース、および乳漿タンパク質の連続相中に分散していると考えられている(非特許文献1)。カゼインミセルは、骨および歯の形成のための、生物利用可能なカルシウムイオンおよびリン酸イオンの供給源を提供する、リン酸カルシウムの担体として働く。カルシウムイオンおよびリン酸イオンを可溶性の状態および生物利用可能な状態に維持するカゼインミセルの能力は、カゼインホスホペプチド(CPP)として周知の、カゼインの多重リン酸化ペプチド画分によって保持される。メルボルン大学の特許文献1には、アルカリ性pHで生成されたカゼインホスホペプチド−非晶質リン酸カルシウム複合体(CPP−ACP)およびCPPで安定化した非晶質フッ化リン酸カルシウム複合体(CPP−ACFP)が記載されている。このような複合体は、動物およびヒトのインサイチュ齲蝕モデルにおいて、エナメル質の脱灰を防止し、エナメル質表層下の病変の再石灰化を促進することが示されている(Reynolds,1998)。
【0005】
複合体の形成に活性であるCPPは、全長カゼインタンパク質の一部分であろうとなかろうと、複合体を形成する。全長カゼインのトリプシン消化によって単離することができる活性(CPP)の具体例は、既に特許文献2に明記されており、以下のペプチド、Bos αs1−カゼインX−5P(f59−79)[1]、Bos β−カゼインX−4P(f1−25)[2]、Bos αs2−カゼインX−4P(f46−70)[3]およびBos αs2−カゼインX−4P(f1−21)[4]を含む。
【0006】
【化1】

今や、ペプチドで安定化した、ACPおよびACFPの可溶性塩基形態は、pH7.0未満の媒体中でも生成できることが見出されている。このような複合体は、歯のエナメル質表層下の病変を再石灰化する、驚くべき活性レベルを示す。
【特許文献1】国際公開第98/40406号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,015,628号明細書
【非特許文献1】Schmidt,D.G.(1982)Dev.Dairy Chem,1,61−86
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で使用される「含む(comprise)」という用語(またはその文法上の変形)は、用語「含む(include)」と等価であり、互換的に使用することができるが、他の要素または特徴の存在を排除するものと解釈されるべきではない。
【0008】
発明の要旨
一態様では、本発明は、ホスホペプチド(PP)で安定化したACPまたはACFP複合体を提供し、この複合体は、pH7.0未満で形成される。好ましくは、この複合体は、約5.0〜最大7.0未満の範囲のpHで形成される。より好ましくは、この複合体は、約5.0〜約6.0のpH範囲で形成される。好ましい実施形態では、この複合体は、pH約5.5で形成される。好ましい実施形態では、この複合体は歯科用途に適している。好ましい別の一実施形態では、この複合体は、再石灰化を促進するための、歯および/または歯肉への適用に適している。
【0009】
「〜のpH(pH〜)で形成される」という用語は、複合体がその中で形成される媒体が、規定値の全体的なpHを有することを意味する。媒体内の局在的pH値は、例えば、形成する複合体の周囲の微環境で変わり得る。換言すれば、本発明の目的のための関連pH値は、総じて媒体の測定可能なpHである。
【0010】
ACP相は、好ましくは主に塩基相であり、ACPは、主にCa2+、PO3−、およびOH種を含む。ACPの塩基相は、一般式[Ca(PO[Ca(PO)(OH)]であり、x≧1である。
【0011】
ACFP相は、好ましくは主に塩基相であり、ACFPは、主にCa2+、PO3−、およびF種を含む。ACFPの塩基相は、一般式[Ca(PO[Ca(PO)F]であり、y=1のときx≧1であり、x=1のときy≧1である。
【0012】
本発明のPPで安定化したACP複合体中のACPは、構造的に、ACFP中のフッ化物アニオンの代わりに水酸化物アニオンを含有すると考えられている。
【0013】
本発明の説明の文脈における「ホスホペプチド」は、少なくとも2つのアミノ酸がリン酸化されるアミノ酸配列を意味する。配列内の少なくとも2つのホスホアミノ酸は、好ましくは隣接している。ホスホペプチドは、好ましくは配列A−B−C−D−Eを含み、A、B、C、D、およびEは、独立に、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ホスホヒスチジン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸であり、A、B、C、D、およびEのうち少なくとも2つ、好ましくは3つがホスホアミノ酸である。一実施形態では、ホスホアミノ酸残基はホスホセリンであり、例えば3つの隣接したホスホセリン残基である。好ましい実施形態では、ホスホペプチドは、3つの隣接したホスホセリン残基に続く2つのグルタミン酸残基を、Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu(ただし、Ser(P)はホスホセリンであり、Gluはグルタミン酸である)で表わされる配列として含む。
【0014】
一実施形態では、PPは、そのままのカゼインまたはカゼイン画分であるカゼインホスホペプチドである。したがって、PPは、カゼインリンタンパク質またはポリホスホペプチドでもよい。形成される複合体は、式[CPP(ACP)または[(CPP)(ACFP)を有することができ、nは1以上、例えば6である。形成される複合体は、コロイド状の複合体でもよく、そのコア粒子は凝集して、水に懸濁するコロイド小粒子(例えば約2〜5nm)およびコロイド大粒子(例えば約100nm)を形成する。
【0015】
PPは、どんな供給源由来のものでもよく、全長のカゼインポリペプチドを含む、より大きいポリペプチドの状態(context)で存在してもよく、あるいは、カゼインもしくはホスフィチンなどのホスホアミノ酸に富む他のタンパク質のトリプシン消化もしくは他の酵素消化によって、または化学的加水分解(例えばアルカリまたは酸による)によって、あるいは先に定義したように配列A−B−C−D−Eを含むならば、化学的合成または組み換え合成によって単離してもよい。このコア配列のフランキング(flanking)配列は、どんな配列でもよい。しかし、αS1(59−79)[1]、β(1−25)[2]、αS2(46−70)[3]およびαS2(1−21)[4]のフランキング配列が好ましい。フランキング配列は、場合によっては、1つまたは複数の残基の欠失、付加、または同類置換によって修飾することができる。フランキング領域のアミノ酸組成および配列は、重要ではない。
【0016】
好ましい実施形態では、PPは、αS1(59−79)[1]、β(1−25)[2]、αS2(46−70)[3]およびαS2(1−21)[4]からなる群から選択される、1つまたは複数のカゼインホスホペプチドである。
【0017】
いかなる理論または作用の態様にも拘泥するものではないが、PPは、ACPまたはACFPクラスターに結合して、溶液中に存在する準安定な複合体を生成すると考えられている。この結合は、リン酸カルシウムの核生成および沈降を開始する寸法へとACPまたはACFPが成長するのを阻害すると考えられている。このように、カルシウムイオンおよびフッ化物イオンなどの他のイオンは、例えば歯の表面で脱灰を防止し、齲蝕の形成を防止するために局在化することができる。したがって、これによって、歯を再石灰化することができる生物利用可能な形態で、非晶質リン酸カルシウムを送達する機構が提供されると考えられている。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明は、上記のように、安定なACFP複合体または安定なACP複合体を提供し、この複合体は、これらに限定されるものではないが、カルシウムイオン、フッ化物イオン、およびリン酸イオンを含めたイオンを共局在化する送達ビヒクルとして、標的部位で作用する。好ましい実施形態では、複合体は、齲蝕防止(anti−caries)、侵食/腐食防止、歯石防止、および歯の過敏症防止の優れた効果をもたらす非晶質形態のリン酸カルシウムを含む。標的部位は、好ましくは歯または骨である。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、ホスホペプチドで安定化した非晶質リン酸カルシウム(ACP)または非晶質フッ化カルシウム(ACFP)複合体を提供し、この複合体はpH7.0以下で形成され、ACPまたはACFPは主に塩基形態である。
【0020】
錯誤回避のために、本発明のホスホペプチドで安定化したACPまたはACFP複合体は、WO98/40406に記載のように、pH7.0超で形成される複合体を排除する。
【0021】
複合体は、水分子を含有するものの、カルシウムイオン、フッ化物イオンおよび水酸化物イオン以外のイオンを好ましくは実質的に含まない。複合体はまた、好ましくはPPで配合され、それによって水に可溶性となる。本発明のコンテキストでは、「可溶性」という用語はまた、複合体もコロイド分散液中に存在していると説明される状況を含む。
【0022】
一実施形態では、ACP複合体は、本質的にPP、リン酸カルシウムイオンおよび水酸化物イオン、ならびに水から構成される。
【0023】
一実施形態では、ACFP複合体は、本質的にPP、リン酸カルシウムイオン、フッ化物イオンおよび水酸化物イオン、ならびに水から構成される。
【0024】
さらなる態様では、本発明はまた、
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pHを約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオンおよび水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、上記の安定なACP複合体の生成方法を提供する。
【0025】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、水酸化物イオンを溶液中で滴定して、ホスホペプチド溶液を実質的には一定のpHに維持する。別の好ましい実施形態では、カルシウムイオンおよびリン酸イオンを、絶えず混合しながら、かつホスホペプチド溶液中のリン酸カルシウム沈殿物の形成を回避する速度で、ホスホペプチド溶液中で滴定する。
【0026】
さらなる態様では、本発明はまた、
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pHを約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオン、水酸化物イオンおよびフッ化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、前述の安定なACFP複合体の生成方法を提供する。
【0027】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、水酸化物イオンを溶液中で滴定して、ホスホペプチド溶液を実質的には一定のpHに維持する。別の好ましい実施形態では、リン酸カルシウムイオンおよびフッ化物イオンを、絶えず混合しながら、かつホスホペプチド溶液中のリン酸カルシウム沈殿物の形成を回避する速度で、ホスホペプチド溶液中で滴定する。
【0028】
pHは、所望により、水素イオン(酸)または水酸化物イオン(塩基)を添加することによって調節することができる。
【0029】
複合体自体を攻撃しない水素イオンの供給源ならば、生理学的に相溶性のあるまたは許容されるどんな酸を使用してもよい。一般には、塩酸が使用される。pHを調節し、そうでなければ複合体を形成するために必要とされる水酸化物イオンを供給するために、生理学的に許容される任意の塩基、例えばNaOHを、水酸化物イオンの供給源として使用することができる。使用される厳密な酸および塩基は、上記に対して重要な問題であるとは考えられていない。
【0030】
好ましい実施形態では、高濃度のカルシウムイオンおよびリン酸イオン(例えば、3Mカルシウムイオンおよび1Mリン酸イオン)を、本発明の安定なACP複合体の生成方法または安定なACFP複合体の生成方法で使用されるホスホペプチド溶液中で滴定する。好ましくは、カルシウムイオンおよびリン酸イオンの溶液は、アリコート(例えば、1分当たり約1体積%)で、混合しながら非常にゆっくり添加される。好ましい実施形態では、カルシウムイオン溶液のアリコートの前に、リン酸イオン溶液のアリコートを添加する。水酸化物イオンは、好ましくは連続的に添加される。好ましい実施形態では、カルシウムイオンの各添加後に、水酸化物イオンが添加される。
【0031】
本発明のさらなる態様では、
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pHを約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオンおよび水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、ホスホペプチドで安定化した非晶質リン酸カルシウム(ACP)複合体の生成方法が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様では、
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pHを約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオンおよび水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、ホスホペプチドで安定化した非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体の生成方法が提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様では、ホスホペプチドで安定化したACPまたはACFP複合体を含む配合物が提供され、その配合物のpHは、7.0未満である。一実施形態では、配合物のpHは、約pH5.0〜最大pH7.0未満である。好ましくは、配合物のpHは、約pH5.0〜約6.0である。好ましい実施形態では、配合物のpHは、約5.5である。
【0034】
したがって、ホスホペプチドで安定化したACPまたはACFP複合体は、pH約7.0未満で形成し、その後異なるpH、好ましくはpH4〜10の環境に置くことができる。一実施形態では、そのpHは、4.5〜6.5、より好ましくは、5〜6、最も好ましくは約5.5である。
【0035】
本発明の複合体は、骨の成長刺激を必要とする対象、例えば、骨折修復、関節置換術、骨移植術、または頭蓋顔面外科手術を受ける対象におけるカルシウム補給として有用である。これらの複合体は、食物不耐、アレルギー、あるいは宗教的または文化的要因などの何らかの理由により、食物カルシウム必要量を供給するのに十分な量の乳製品を消費することができない、またはそれを不本意とする対象における食物補給としても有用である。
【0036】
本発明の実施形態を以下に記載するが、その複合体用の環境は以下に例示されるように、ある特定の目的の配合物であってよい。この環境のpHは、当初複合体が形成されたpHに関わらず、形成された複合体の安定性をもたらす最適な効果のために、先に設定したように調節することができる。
【0037】
一実施形態では、上記のように、望ましくは薬剤として許容される担体として複合体を歯に適用することを含む、歯を再石灰化する方法が提供される。複合体は、ACP、ACFP、またはその両方を含有することができる。この方法は、好ましくは治療を必要とする対象に適用される。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態では、安定なACFPまたはACP複合体は、齲蝕もしくは虫歯の予防および/または治療を助けるための、練り歯磨き、洗口剤、あるいは口腔用配合物などの経口組成物中に組み込まれる。ACFPまたはACP複合体は、組成物の0.01〜50重量%、好ましくは1.0〜50%を構成することができる。経口組成物では、投与されるPP−ACPおよび/またはPP−ACFPの量は、組成物の0.01〜50重量%、好ましくは1.0%〜50重量%であることが好ましい。特に好ましい実施形態では、本発明の経口組成物は、約2%のPP−ACP、PP−ACFP、またはその両方の混合物を含有する。上記の薬剤を含有する本発明の経口組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉、および液体歯磨剤を含めた歯磨剤、洗口剤、トローチ、チューインガム、歯科用軟膏剤、歯肉マッサージクリーム、うがい用錠剤、乳製品ならびに他の食料品など、口腔に適用できる様々な形態で調製し、使用することができる。本発明の経口組成物は、さらに、特定の経口組成物のタイプおよび形態に応じて、周知の追加成分を含むことができる。
【0039】
本発明の特定の好ましい形態では、経口組成物は、うがい剤または洗浄剤など、実質的に液体の特徴のものでよい。このような調製物では、ビヒクルは一般に、望ましくは下記の湿潤剤を含む水−アルコール混合物である。一般に、水とアルコールの重量比は、約1:1〜約20:1の範囲である。このタイプの調製物における水−アルコール混合物の総量は、一般に、調製物の約70〜約99.9重量%の範囲である。アルコールは、一般に、エタノールまたはイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0040】
本発明のこのような液体調製物および他の調製物のpHは、一般に約5〜約9、典型的には約5.0〜7.0の範囲である。pHは、酸(例えばクエン酸または安息香酸)または塩基(例えば水酸化ナトリウム)で、あるいは緩衝化して(クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等と同様)制御することができる。
【0041】
一実施形態では、本発明の経口組成物は、pH約5.5であり、安定なACPまたはACFPを含有する。
【0042】
本発明の他の望ましい形態では、経口組成物は、歯磨き粉、歯科用錠剤、または練り歯磨き(歯科用クリーム)、あるいはゲル状歯磨剤など、実質的に固体またはペースト状の特徴のものでよい。このような固体またはペースト状の経口調製物の担体は、一般に歯科用として許容される研磨剤を含有する。研磨剤の具体例は、非水溶性のメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、無水リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミナ水和物、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、ベントナイト、およびそれらの混合物である。他の適切な研磨剤には、メラミン−、フェノール−、および尿素−ホルムアルデヒド、ならびに架橋ポリエポキシドおよびポリエステルなどの微粒子の熱硬化性樹脂が含まれる。好ましい研磨剤には、粒径が最大約5ミクロン、平均粒径が最大約1.1ミクロン、および表面積が最大約50,000cm/gである結晶シリカ、シリカゲルまたはコロイド状シリカ、ならびに非晶質アルミノケイ酸アルカリ金属複合体が含まれる。
【0043】
視覚的に透明なゲルを使用する場合には、商標SYLODでSyloid 71およびSyloid 74として、または商標SANTOCELでSantocel 100として販売されているもの、アルミノケイ酸アルカリ金属複合体などのコロイド状シリカの研磨剤が特に有用である。それらは一般に、歯磨剤内に使用するゲル化剤−液体(水および/または湿潤剤を含む)系の屈折率に近い屈折率を有するからである。
【0044】
いわゆる「非水溶性」の研磨剤の多くは、アニオン性の特徴を有し、また少量の可溶性材料を含む。したがって不溶性メタリン酸ナトリウムは、例えばThorpe’s Dictionary of Applied Chemistry,Volume9,4th Edition,pp.510−511に示されるような、任意の適切な方法で形成することができる。マドレル(Madrell’s)塩およびクロール(Kurrol’s)塩として周知の不溶性メタリン酸ナトリウムの形態は、適切な材料のさらなる具体例である。これらのメタリン酸塩は、水にわずかに溶解するに過ぎず、したがって一般に、不溶性メタリン酸(IMP)と呼ばれる。この中には、少量の可溶性リン酸塩材料が、通常は最大4重量%といった数パーセントの不純物として存在している。可溶性リン酸塩材料の量は、不溶性メタリン酸塩の場合には、可溶性トリメタン酸ナトリウムを含むと考えられているが、所望により水洗によって減少または排除することができる。不溶性メタリン酸アルカリ金属は、一般に、材料の1%以下が37ミクロンを超える粒径の粉末形態で使用される。
【0045】
研磨材料は一般に、固体またはペースト状の組成物中に約10%〜約90%の重量濃度で存在する。好ましくは、練り歯磨き中に約10%〜約75%、歯磨き粉中に約70%〜約99%の量で存在する。練り歯磨きは、研磨剤がシリカの性質である場合には、一般に、約10〜30重量%の量で存在する。他の研磨剤は、一般に、約30〜75重量%の量で存在する。
【0046】
練り歯磨きでは、液体賦形剤は、調製物中に約10〜約80重量%の範囲の量の水および湿潤剤を含むことができる。グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよびポリプロピレングリコールは、適切な湿潤剤/担体の具体例である。水、グリセリンおよびソルビトールの液体混合物も有利である。屈折率が重要視される透明ゲルでは、好ましくは水2.5〜30%w/w、グリセリン0〜約70%w/w、およびソルビトール約20〜80%w/wが使用される。
【0047】
練り歯磨き、クリーム、およびゲルは、一般に、約0.1〜約10、好ましくは約0.5〜約5%w/wの割合で、天然または合成増粘剤またはゲル化剤を含有する。適切な増粘剤は、例えばLaporte Industries Limited.製のLaponite(例えば、CP、SP2002、D)として利用可能な合成ヘクトライト、合成コロイド状のアルカリ金属ケイ酸マグネシウム複合体クレイである。Laponite Dは、およそ、SiO 58.00重量%、MgO 25.40重量%、NaO 3.05重量%、LiO 0.98重量%ならびに少量の水および微量金属となっている。その真比重は2.53であり、湿度8%での見かけのバルク密度は1.0g/mlである。
【0048】
他の適切な増粘剤には、アイリッシュモス、イオタカラゲナン、ガムトラガカント、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、Natrosolとして利用可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および微砕Syloid(例えば244)などのコロイド状シリカが含まれる。プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびへキシレングリコールなどの湿潤性ポリオール、メチルセロソルブおよびエチルセロソルブなどのセロソルブ、オリーブ油、ヒマシ油、および石油など、直鎖中に少なくとも約12個の炭素を含有する植物油およびワックス、ならびに酢酸アミル、酢酸エチル、および安息香酸ベンジルなどのエステルといった可溶化剤を含めることもできる。
【0049】
経口調製物は、従来と同じく販売されているものであり、またはその他の方法でラベルを付した適切なパッケージとして流通しているものであることを理解されたい。したがって、口内洗浄剤の瓶は、実質的に口内洗浄剤またはうがい剤と記載され、その使用指示を記したラベルを有するものであり、練り歯磨き、クリーム、またはゲルは、通常、実質的に練り歯磨き、ゲル、または歯科用クリームと記載されたラベルを有する、一般にはアルミニウム、裏打ち鉛、またはプラスチックの押し出しチューブ、あるいは内容量を測量するための他のスクイーズ、ポンプ、または加圧ディスペンサに入れられることになる。
【0050】
有機界面活性剤は、予防作用を高めるために本発明の組成物に使用することができ、有効な薬剤を口腔全体に完全に分散させるのを助け、本発明の組成物を、より化粧品として許容されるものにする。有機界面活性剤は、好ましくはアニオン性、非イオン性または両性の性質であり、好ましくは有効な薬剤と相互作用しない。界面活性剤として、組成物に洗浄特性および発泡特性を付与する洗浄材料を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤の適切な具体例は、硬化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩などの高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、高級アルキルスルホ酢酸、1,2−ジヒドロキシプロパンスルホン酸エステルなどの高級脂肪酸エステル、ならびに脂肪酸、アルキル基、またはアシル基中に12〜16個の炭素を有するものなどの、低級脂肪酸アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和の高級脂肪酸アシルアミド等である。前記アミドの具体例は、石鹸または類似の高度脂肪酸材料を実質的に含まない、N−ラウロイルサルコシン、ならびにN−ラウロイル、N−ミリストイル、またはN−パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、およびエタノールアミン塩である。これらのサルコナイト化合物を本発明の経口組成物に使用することは、特に有利である。というのは、これらの材料は、酸性溶液における歯のエナメル質の可溶性をいくらか低減させることに加えて、口腔内の炭水化物分解による酸形成の阻害において、顕著な効果を延長するからである。使用に適した水溶性の非イオン性界面活性剤の具体例は、エチレンオキシドと、疎水性長鎖(例えば、約12〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有する様々な反応性水素含有化合物との濃縮生成物であり、それらの濃縮生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)は、ポリ(エチレンオキシド)と、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸アミド、多価アルコール(例えば、ソルビタンモノステアラート)、およびポリプロピレンオキシド(例えば、Pluronic材料)との濃縮生成物など、親水性ポリオキシエチレン部分を含有するものである。
【0051】
界面活性剤は、一般に、約0.1〜5重量%の量で存在する。界面活性剤が本発明の有効な薬剤を溶解する助けとなり、それによって可溶化湿潤剤の必要量を低減できるということは、注目に値するものである。
【0052】
増白剤、保存剤、シリコーン、クロロフィル化合物、ならびに/あるいは尿素、リン酸二アンモニウム、およびそれらの混合物などのアンモニア処理した材料などの様々な他の材料を、本発明の経口調製物に組み込むことができる。これらの助剤が存在する場合には、所望の特性および特徴に実質的に悪影響を及ぼさない量で、調製物に組み込まれる。
【0053】
任意の適切な矯味材料または甘味材料を使用することもできる。
【0054】
適切な矯味用成分の具体例は、芳香油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン、およびオレンジの油、ならびにサリチル酸メチルである。適切な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニン、メチルエステル)、サッカリン等が含まれる。適切には、矯味剤および甘味剤は、それぞれまたは一緒に、調製物の約0.1%〜5%超を構成することができる。
【0055】
本発明はまた、上記の組成物の使用を提供する。本発明の好ましい実施においては、本発明の組成物を含有するうがい剤または歯磨剤などの本発明の経口組成物は、好ましくは、歯肉および歯に、毎日もしくは2日置きまたは3日置き、あるいは好ましくは1日に1〜3回というように規則的に、好ましくは約4.5〜7.0の酸性のpHで、少なくとも2週間〜8週間まで、またはさらに最長では生涯施用される。一実施形態では、経口組成物のpHは、約5.0、5.5、6.0、6.5または7.0である。
【0056】
本発明の組成物は、望ましくは通常の可塑剤または軟化剤、グルコース、ソルビトール等の糖類または他の甘味剤と共に、ロゼンジ、あるいはチューインガムまたは他の製品に、例えば温めたガムベースに攪拌することによって、あるいはガムベース、具体例としてはジェルトン、ゴムラテックス、ビニライト樹脂等の外面をコーティングすることによって、組み込むこともできる。
【0057】
別の実施形態では、本発明の複合体は、好ましくは、食用品0.1〜100%w/w、より好ましくは1〜50%w/w、最も好ましくは1〜10%、特に2%w/wを含む栄養補助食品を形成するために配合される。この複合体は、食品に組み込むこともできる。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、上記のACFPおよび/またはACP複合体のいずれかを、薬剤として許容される担体と一緒に含む薬剤組成物を含む組成物を提供する。このような組成物は、歯科用の抗齲蝕原性組成物、治療組成物および栄養補助食品からなる群から選択することができる。歯科用組成物または治療組成物は、ゲル、液体、固体、粉末、クリームまたはロゼンジの形態でよい。治療組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態でもよい。一実施形態では、ACPおよび/またはACFP複合体は、実質的には、このような組成物の唯一の再石灰化用の有効成分である。
【0059】
本発明はさらに、齲蝕もしくは虫歯、歯の侵食/腐食、象牙質知覚過敏症、および歯石の任意の1種または複数を治療する、あるいは予防するための、使用指示と一緒に提供される前述の配合物を含む。
【0060】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のACFPおよび/またはACP複合体が添加された歯の修復材料を含む、歯の修復用組成物が提供される。歯の修復材料のベースは、グラスアイオノマーセメント、複合材料または相溶性のある任意の他の修復材料でよい。歯の修復材料に含まれるCPP−ACP複合体またはCPP−ACFP複合体の量は、0.01〜80重量%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5重量%であることが好ましい。前述の薬剤を含有する本発明の歯の修復材料は、歯科実務に適用できる様々な形態で調製し、使用することができる。本例の歯の修復材料はさらに、他のイオン、例えば抗菌イオンであるZn2+、Ag等、あるいは特定の歯の修復材料のタイプおよび形態に応じて、他の追加成分を含むことができる。本実施形態による歯の修復材料のpHは、2〜10、より好ましくは5〜9、さらにより好ましくは5〜7であることが好ましい。CPP−ACP複合体またはACFP複合体を含有する歯の修復材料のpHは、約2〜10の範囲、より好ましくは約5〜9の範囲、さらに好ましくは約5〜7の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明はまた、修復組成物の製造方法を対象とする。この方法は、好ましくは前述のACPおよび/またはACFP複合体を、ベースとなる歯の修復材料に添加することを含む。本発明はまた、齲蝕の治療および/または予防のための、前記修復組成物の使用に関する。
【0062】
本発明はまた、(a)歯の修復材料および(b)CPP−ACP複合体またはCPP−ACFP複合体を、歯の修復用の、前述の複合体を含有する組成物の調製に関する使用指示と一緒に含むパーツ一式に関する。
【0063】
本発明はまた、(a)歯の修復材料、(b)カゼインホスホペプチド、(c)カルシウムイオンおよび(d)リン酸イオン、および(e)水酸化物イオン、ならびに場合によってはフッ化物イオンを、歯の修復用組成物の調製に関する使用指示と一緒に含むパーツ一式に関する。
【0064】
さらなる態様では、齲蝕または虫歯、歯の侵食/腐食、象牙質知覚過敏症、および歯石のそれぞれの1種または複数の治療方法または予防方法が提供され、この方法は、本発明の複合体または組成物を、好ましくはこのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む。複合体の局所投与が好ましい。この方法は、好ましくは、複合体を前述の配合物として投与することを含む。
【0065】
本発明はまた、本発明の修復組成物または本発明に従って製造された歯の修復組成物を提供すること、ならびに治療および/または予防を必要とする動物の歯に適用することを含む、動物の齲蝕、歯の侵食/腐食、歯の過敏症および歯石の治療方法ならびに/あるいは予防方法を提供する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、身体、特に骨からのカルシウム損失、カルシウム欠乏、カルシウム吸収不良等に関係する1種または複数の症状の治療方法に関する。このような症状の具体例には、これらに限定されるものではないが、骨粗鬆症および骨軟化症が含まれる。一般に、カルシウム生体利用性を高めることによって改善することができる任意の症状が企図される。
【0067】
本明細書は、特にヒトへの適用に言及しているが、本発明は、獣医用の目的にも有用であることが明確に理解されよう。したがって、すべての態様において、本発明は、牛、羊、馬および家禽などの家畜、猫および犬などのペット、ならびに動物園の動物に有用である。
【0068】
ここで本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
CPP−ACFPおよびCPP−ACP溶液の調製
3.25MのCaCl、1.25MのNaHPO、1MのNaOHおよび1MのNaFの保存溶液を、約30アリコートで、カゼインのトリプシン消化物10〜15%w/vに、最終濃度約78mMのCa2+、48mMのリン酸塩および12mMのフッ化物の濃縮物が得られるまで添加した。溶液をゆっくり添加した(すなわち、1分当たり約1体積%未満を添加)。まず、リン酸溶液の1アリコートを添加し、次いでカルシウム溶液の1アリコートを添加した。pHを、NaOHを用いて十分に混合して、7.0、6.5、6.0、5.5および5.0に維持した。水酸化ナトリウム溶液を、通常はカルシウムイオンの各添加後に水酸化物イオンを添加し、pHスタットによって自動的に添加した。カルシウムイオン、リン酸イオン、水酸化物イオンおよびフッ化物イオンの添加後、溶液を0.1ミクロンのフィルタで濾過して1〜2倍の濃度にした。濃縮水を、所望により水洗して、塩および不活性(かつ苦味)ペプチドを除去することができる。フッ化物の添加なしに、CPP−ACP溶液を、上記のように調製した。
【0070】
各滴定および濾過が完了したら、各濃縮水のサンプルを取り、3000分子量のカットオフCentriprep3限外濾過膜を使用して、濾液として10%未満を収集した。サンプルを含有するCentriprepを、Beckman J2−21遠心分離機中、JA10.5ロータを使用して、1,000gで15分間、遠心分離にかけた。Centriprep遠心分離の前の元のサンプルおよびCentriprep遠心分離後の濾液のサンプルを、カルシウム、リン酸およびフッ化物の濃度分析用に取っておいた。元のサンプルの分析によって、カルシウムイオン、リン酸イオンおよびフッ化物イオンの全濃度が得られ、濾液の分析によって、遊離(未結合)のカルシウム、リン酸およびフッ化物の濃度が得られた。全体の濃度および未結合の濃度の間の差は、CPPによるCa、Pi、およびFの結合濃度であり、表1および表2に示されている。
【0071】
本発明の一実施形態の第1の実例では、表1に示すように、2%CPP−ACFPの結合したカルシウム、リン酸およびフッ化物を、酸性pH値で調製した複合体として測定した。
【0072】
【表1】

本発明の一実施形態の第2の実例では、表2に示すように、2%CPP−ACPの結合したカルシウムおよびリン酸塩を、酸性pH値で調製した複合体として測定した。
【0073】
【表2】

この実験の結果は、カゼインホスホペプチド(CPP)によって安定化した非晶質リン酸カルシウムおよび非晶質フッ化リン酸カルシウムのナノ複合体またはナノクラスターが、酸性pHで形成され、濾過ステップ後、高濃度での凝集により保持されることを示している。表1および2のカルシウムおよびリン酸塩およびフッ化物塩の結合比は、形成された複合体が、塩基性非晶質リン酸カルシウムおよび塩基性非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含有することを示している。塩基性ACP相は、[Ca(PO[Ca(PO)(OH)]であり、すべてのpH値に対してx=1〜2である。塩基性ACFP相は、[Ca(PO[Ca(PO)F]であり、x=1かつy=1〜2(pH5.0)であり、y=1かつx=1〜2(pH5.5〜7.0)である。また、酸性pHで結合したカルシウムイオンおよびリン酸イオンの量は、形成pHが約5.0の領域に低下するまで、比較的多いままであることがわかる。
【0074】
いかなる理論または作用の態様にも拘泥するものではないが、複合体の形成は、好ましくは攪拌を伴ってNaOHを添加するなど、規則的にOHアニオンを添加することによって、酸性pHで実現することができ、その結果OHアニオンとカルシウムイオンおよびリン酸(PO3−)イオンとが、CPPによって安定化される塩基性ACPを十分に形成し、次いでさらなるOH添加の際に、ACPをより多く形成するための反応を促進すると考えられる。さらに、ACFPの場合には、Fによって複合体形成のためのより低いpH環境が可能となり、表1から、多量のカルシウムが、所与の酸性pHで、それと同じpHでのACPよりもACFP複合体中で結合することがわかる。
【0075】
(実施例2)
酸性pH値でのCPP−ACPおよびCPP−ACFPによるエナメル質表層下病変のインビトロ再石灰化の比較
摘出したヒトの第三大臼歯の研磨したエナメル質表面を、スラブ(8×4mm)として切り取り、耐酸性マニキュア液で被覆して、1mmだけ分離した咬合半分および歯肉半分の近遠心ウィンドウ(1×7mm)を形成した。比較に使用したプロトコルは、当業者には周知であり、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる、Reynolds(1997),Remineralization of enamel subsurface lesions by casein phosphopeptide−stabilized calcium phosphate solutions.J Dent Res 76:1587−1595に記載されているものとした。表層下エナメル質の病変を、WhiteのCarbopol法(Reynolds、1997に記載)を使用してこれらのウィンドウ上に発症させた。エナメルスラブを、4×4mmブロックに半分に切断した。あるブロック上の歯肉半分の病変および別のブロック上の咬合半分の病変を、マニキュア液で封止して、脱灰した対照を作成した。
【0076】
エナメル質の半病変を、37℃で10日間、混合なしで異なる再石灰化溶液に曝した。再石灰化溶液は、2%CPP−ACPまたは2%CPP−ACFPであり、pH7.0、6.5、6.0、5.5および5.0で調製され、それぞれの形成pHの溶液として維持された。
【0077】
再石灰化後、ブロックの各組をエタノールで脱水し、メタクリル酸メチル樹脂(Paladur、Kulzer、ドイツ)に埋め込んだ。3つの200〜300μm断面を、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる(Shen et al.,2001,J.Dent.Res.80:2066−2070)に既に記載のように、病変の表面に対して垂直に切り、80±5μmにまで重ね、10×14μmの厚さの増分のアルミニウムステップウェッジに沿ってX線写真を撮った。
【0078】
病変のX線写真画像は、Dilux 22顕微鏡(Ernst Leitz Wetzlar、ドイツ)によって透過光線を介して視覚化された。その画像は、ビデオカメラ(Sony DXC 930P)によって得られ、画像ソフト(Optimas 6.2)の制御下でデジタル化された(Scion imaging corporation、colour grabber 7)。病変、対照およびアルミニウムステップウェッジの画像を、Shen et al.(2001)によって既に記載のように走査した。エナメル質断面厚を測定し、体積パーセントのミネラルデータを、Shen et al.(2001)によって以前記載されているように、Angmar(1963)の式を使用して決定した。再石灰化パーセント(%R)も、Shen et al.(2001)によって既に記載のように計算した。
【0079】
これらの溶液による、エナメル質表層下の病変の再石灰化が、表3に示される。
【0080】
【表3】

表3の結果は、2%CPP−ACPおよびCPP−ACFP溶液が、酸性pH値にも関わらず、かなりのレベルでエナメル質表層下病変を再石灰化することを示している。CPP−ACPおよびCPP−ACFPは両方、pH5.5で最適に再石灰化した。通常、エナメル質の脱灰が普通なら生ずるはずのpH5.0でさえ、2%CPP−ACPは18%を再石灰化し、2%CPP−ACFPは40%を再石灰化し、これによって酸性溶液中のCPP−ACFPの優れた特性が示された。
【0081】
(実施例3)
pH7.0および5.5でのCPP−ACPによるエナメル質のインサイチュ再石灰化の比較
この研究は、pH5.5で調製され、それに維持されたCPP−ACP0.5%w/vを含有する口内洗浄剤を、pH7.0で調製され、それに維持されたCPP−ACP0.5%w/vを含有する口内洗浄剤と比較し、口腔内モデルにおけるエナメル質再石灰化を高める能力を評価するための、二重盲目試験およびクロスオーバー設計である。研究の承認は、メルボルン大学Human Research Ethics CommitteeおよびRoyal Dental Hospital of Melbourne Ethics in Clinical Research Committeeから得た。スタッフおよび歯学科の大学院生(年齢21〜47歳)から4人の健康な成人被験者(男性2人および女性2人)を採用した。すべての被験者は、進行中の齲蝕活動、歯周病、または他の口腔病のない、少なくとも22本の本来の歯を有していた。被験者には、唾液分泌量に影響を与える抗生物質または薬剤を使用している者はいなかった。各被験者の未刺激性の唾液分泌量は、0.2ml/分を超えていた。未刺激性唾液分泌量は、被験者に頭を前下方に傾け、正確に2分間、予め秤量した遠心分離管中に唾液を流すように指示することによって測定した。刺激性唾液分泌量は、被験者に無糖のチューインガムを正確に2分間噛み、生成されるすべての唾液を、予め秤量した遠心分離管中に流すよう指示することによって測定した。
【0082】
既に記載のように(Shen et al.,2001)、歯列弓内で第1小臼歯から最も奥にある歯までを被覆する取り外し可能な口蓋用アクリル製器具を、各被験者に合わせて製造した。
【0083】
摘出したヒト第3大臼歯は、Royal Dental Hospital of Melbourneから得た。摘出されたいかなる軟組織も除去し、歯を18%v/v酢酸ホルマリン溶液中で保存した。健康な、比較的平面な口腔および亀裂、染み、およびフッ素沈着のない(解剖顕微鏡で観察した)舌側面を選択し、ミリQ水で三回すすいだ。エナメル質表面を除去し、低速コントラアングル歯科用ハンドピースでSoflex(商標)(3M)ディスクを使用して、鏡面になるよう湿潤研磨した。次いで、研磨した各表面を、水冷ダイアモンドブレードソーを使用して、約8×4mmのスラブとして歯から切り取り、互いに1mmだけ分離した2種類(咬合および歯肉)の近遠心ウィンドウ(1×7mm)を除き、総スラブを耐酸性マニキュア液で被覆した。各スラブを、黄色歯科用粘着性ワックスの3〜4cmスティックの端部上に載せ、Carbopol 907(商標)(カルボキシポリメチレン、BF Goodrich,Cleveland,OH)20g/l、ヒドロキシアパタイト(Bio−Gel(登録商標)HTP,Bio−Rad Laboratories,Richmond,CL)500mg/l、および乳酸(Ajax Chemicals,Auburn,NSW)0.1mol/l、pH4.8からなる未攪拌の脱灰緩衝液40ml中に、37℃で4日間浸すことによって、エナメル質ウィンドウ中で病変を発症させた。2日後に溶液の交換を行い、その時スラブを溶液から除去し、ミリQ水で3回すすぎ、ふき取って乾燥させ、新しい脱灰緩衝液中に入れた。スラブは、脱灰の4日後に同様にすすぎ乾燥させた。人工病変断面のX線顕微鏡写真によって評価されるように、この脱灰手順によって、表面層はそのままで、約80〜100μmの深さの一貫した表層下病変(LDd)が発症した。各エナメルスラブの脱灰後、各ウィンドウの正中線に沿ってスラブを4×4mmの半スラブに切断し、各半スラブの切断面をマニキュア液で被覆した。各組の一方の半スラブを脱灰対照として保持し、ラベルを付した1.5ml微小遠心管中でミリQ水1滴と一緒に保存し、それによって加湿環境を作り出した。その組の他方のエナメル質半スラブを、口腔内器具内に挿入し、再石灰化プロトコル用の歯科用ワックスを使用して保持した。ワックスのないウィンドウを維持するために注意が払われた。4つの半スラブを各器具に挿入し、2つを両側のトラフ内のそれぞれの側に挿入した(Shen et al.,2001)。
【0084】
試験用口内洗浄剤は、実施例1に記載のようにpH5.5またはpH7.0で調製されたCPP−ACP0.5%w/vを含有するものとした。その生成物を、コードを付した生成物として提供した。コードは、データすべてが得られるまで解除しなかった。この研究は、2つの処理(i)pH7.0でCPP−ACP0.5%(w/v)を含有する口内洗浄剤、および(ii)pH5.5でCPP−ACP0.5%(w/v)を含有する口内洗浄剤を伴う、二重盲目試験のクロスオーバー設計を利用する。被験者は、口内洗浄剤のそれぞれを、無作為に割り当てられる。
【0085】
試験の開始時、すべての被験者は、試験期間中、使用するように指示された標準的なフッ化物歯磨剤を適切に供給された。被験者は、早朝および就寝時に、フッ化物歯磨剤で歯を磨くように指示された。また、口腔内器具の挿入前に、水で口をすすぐように指示された。被験者は、表層下に脱灰した病変を含有する、4種類のヒトエナメル質半スラブが挿入された、取り外し可能な口蓋用器具を装着した。各被験者は、器具を口内に挿入するとすぐに、口内洗浄剤5mlで60秒間すすぐように指示された。被験者は、その器具をさらに40分間装着し続けた。これを10日間、1日に4回、以下の時刻、10:00am、11:30am、2:00pm、および3:30pmに行った。器具が装着されている間、被験者は、いかなる飲食もしないよう指示された。10日の試験期間後、1週間の洗浄期間を取った。次いで被験者は、他の処理にクロスオーバーされた。器具を口内から取り外すとき、ミリQ水で簡単にすすぎ、湿った封止ビニール袋内に保持し、室温で保存した。被験者は、エナメル質ブロックを含有する領域を磨かないよう伝えられた。被験者は製品の使用および器具の装着回数を日誌につけた。試験期間中、被験者の食事または口腔衛生手順に変更はなかった。各処理期間後、エナメル質半スラブを除去し、そのそれぞれの脱灰した対照エナメル質半スラブと組にし、埋め込み、切片し、X線顕微鏡およびコンピュータを使用した濃度測定画像分析にかけて、再石灰化のレベルを決定した。
【0086】
各処理後、エナメル質半スラブを、そのそれぞれの対照半スラブと組にし、次いで、無水アルコールで脱水した。半スラブの各組を、Shen et al.(2001)によって記載されているように、埋め込み、切片し、X線顕微鏡およびコンピュータを使用した濃度測定画像分析にかけた。病変および健康なエナメル質の隣接領域のX線画像を、0〜256の濃淡値で読み取りを行う、プログラムの線形輝度関数を使用して走査した。各病変を、人為結果または亀裂のない領域を介して、6回走査した。各走査は、歯の表面から病変を介して健康なエナメル質まで、200の読み取りから構成された。各スライド上のアルミニウムステップウェッジ画像を走査し、平均ステップ濃淡値の読み取り値を、アルミニウムの厚さに対してプロットした。ステップウェッジ曲線の直線部分および直線回帰内にある、歯の断面画像の読み取り値を使用して、濃淡値データを、アルミニウムの等価厚値に変換した。断面厚を測定し、Angmar et al.(1963)の式を使用して、体積%のミネラルデータを算出し、アルミニウム、有機物質と水およびアパタイト系ミネラルの線吸収係数を算出した(それぞれ131.5、11.3および260.5)。2つの病変間のメジアンストリップ(median strip)の画像を、6回走査し、平均して、健康なエナメル質の対照濃度測定プロファイルを得た。同様に、メジアンストリップの歯肉および咬合部位に対する病変画像(処理したウィンドウおよび脱灰対照ウィンドウ)を、可能な限りそのメジアンストリップに近いものの、病変の縁部で一般に見られるいかなる異常も回避するように走査し、ミネラルプロファイル%を算出した。
【0087】
脱灰し、処理した病変の各エナメル質半スラブの体積%でのミネラルプロファイルを、メジアンである健康なエナメル質の同じ断面の体積%でのミネラルプロファイルと比較した。脱灰した対照病変およびメジアンである健康なエナメル質の濃度測定プロファイル未満の領域間の差を、台形積分によって計算し、それをΔZdで表す。処置した病変およびメジアンである健康なエナメル質の濃度測定プロファイル未満の領域間の差を、台形積分によって計算し、それをΔZrで表す。次いでこれらのパラメータを、処理後の変化%値に変換し、したがって、ミネラル変化%(%MC)は、ΔZ値における変化%を表す。
【0088】
【化2】

3つの処理データを、分散分析(ANOVA)を使用し、無作為完全ブロック設計(Norusis M.1993)に関して統計的に試験した。Levene’s試験を使用して、分散の均一性を確認し、正規確率プロットおよびコルモゴロフ−スミルノフ試験を使用して、データの正規性を確認した。すべての統計的分析は、SPSSバージョン11.0ソフトウェア(Norusis M.1993)を使用して実施した。
【0089】
エナメル質再石灰化値の完全なデータ一式が得られたら、コードを解除し、デコードされたデータを分析した。表4の結果は、4人の被験者についての平均MC%値、ならびに各器具における4つのエナメル質半スラブからの各断面上で実施された12つの走査(6つはそれぞれ歯肉および咬合の病変からものである)から得られた、各被験者についてのデータを表している。pH5.5のCPP−ACP0.5%(w/v)を含有する口内洗浄剤の使用によって、14.16±1.90%のエナメル質表層下病変の再石灰化が生じ、pH7.0のCPP−ACP0.5%(w/v)を含有する口内洗浄剤の使用では、わずかに10.3±2.28%のエナメル質表層下の再石灰化が生じた。この差は、統計的に有意であった(p<0.01)。これらのデータは、pH5.5で形成されたCPP−ACPが、pH7.0で形成されたCPP−ACPよりも37%高いエナメル質インサイチュ再石灰化効果を有することを示しており、したがって、実施例3で得られたインビトロでの結果を裏付けるものである。
【0090】
表4
pH7.0またはpH5.5でのCPP−ACP0.5%(w/v)を含有する口内洗浄剤によるエナメル質表層下病変のインサイチュ再石灰化
【0091】
【表4】

a.pH7.0での口内洗浄剤と比べた再石灰化の増加パーセント
(実施例4)
この実施例では、先により一般的に記載したように、本発明の複合体を異なる目的の組成物に配合することができる方法を例示するために、いくつかの配合物が提供される。これらは単に、本発明の様々な実施形態を使用して提供することができる配合物のタイプの具体例である。
【0092】
CPP−ACPまたはCPP−ACFPを含有する練り歯磨き配合物
【0093】
【表5】

【0094】
【表6】

【0095】
【表7】

【0096】
【表8】

うがい剤配合物
【0097】
【表9】

【0098】
【表10】

ロゼンジ配合物
【0099】
【表11】

チューインガム配合物
【0100】
【表12】

本明細書に開示され定義される本発明は、本文もしくは図より言及されまたは明らかである2つ以上の個々の特徴の、他の組合せすべてに及ぶことを理解されたい。これらの異なる組合せのすべては、本発明の様々な代替の態様を構成している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホペプチドで安定化した非晶質リン酸カルシウム(ACP)または非晶質フッ化カルシウム(ACFP)複合体であって、該複合体は、pH7.0以下で形成され、該ACPまたはACFPが主に塩基形態である、複合体。
【請求項2】
前記ホスホペプチドが、配列A−B−C−D−Eを含み、A、B、C、DおよびEが独立に、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ホスホヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
歯科用途に適する、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記ホスホペプチドが、配列Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Gluを含み、Ser(P)がホスホセリンであり、Gluがグルタミン酸である、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
前記ホスホペプチドが、カゼインホスホペプチドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記カゼインホスホペプチドが、酵素加水分解または化学的加水分解によって全長カゼインタンパク質から単離される、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記カゼインホスホペプチドが、αS1(59−79)、β(1−25)、αS2(46−70)およびαS2(1−21)からなる群から選択される、請求項5または6に記載の複合体。
【請求項8】
pH約5.0〜最大7.0未満の範囲で形成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
pH約5.0〜約6.0の範囲で形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
pH約5.5で形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pHを約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオンおよび水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、ホスホペプチドで安定化した非晶質リン酸カルシウム(ACP)複合体の生成方法。
【請求項12】
前記水酸化物イオンを、前記ホスホペプチド溶液中で滴定して、本質的に一定のpHに維持する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルシウムイオンおよびリン酸イオンを、絶えず混合しながら、かつホスホペプチド溶液中のリン酸カルシウム沈殿物の形成を回避する速度で、ホスホペプチド溶液中で滴定する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
(i)少なくとも1種のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと、
(ii)pH約7.0以下に維持しながら、カルシウムイオン、リン酸イオンおよび水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む、ホスホペプチドで安定化した非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体の生成方法。
【請求項15】
前記水酸化物イオンを、前記ホスホペプチド溶液中で滴定して、本質的に一定のpHに維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カルシウムイオンおよびリン酸イオンを、絶えず混合しながら、かつホスホペプチド溶液中のリン酸カルシウム沈殿物の形成を回避する速度で、ホスホペプチド溶液中で滴定する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ホスホペプチドが、配列A−B−C−D−Eを含み、A、B、C、DおよびEが独立に、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ホスホヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸である、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ホスホペプチドが、配列Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Gluを含み、Ser(P)がホスホセリンであり、Gluがグルタミン酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ホスホペプチドが、カゼインホスホペプチドである、請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記カゼインホスホペプチドが、酵素加水分解または化学的加水分解によって、全長カゼインタンパク質から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を、そのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む、齲蝕の治療または予防方法。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を、そのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む、歯のエナメル質の再石灰化方法。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を、そのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む、歯石の治療または予防方法。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を、そのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む、象牙質知覚過敏症の治療または予防方法。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を、そのような治療を必要とする対象の歯または歯肉に投与するステップを含む、歯の侵食/腐食の治療または予防方法。

【公表番号】特表2008−521754(P2008−521754A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541584(P2007−541584)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001781
【国際公開番号】WO2006/056013
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507170262)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (8)
【Fターム(参考)】