説明

定着装置、これを用いた画像形成装置

【課題】キュリー点が概ね定着温度に設定される磁性発熱層を備える定着装置においても、発熱層の過熱防止、記録媒体の分離性の向上を図る。
【解決手段】外部コイルコ2を誘導加熱回路であるインバータにより高周波駆動することによって高周波磁界を発生させ、この磁界により、主に金属性の定着ローラ3に渦電流が流れるようにしてローラ温度を上昇させるが、定着ローラ3は、芯金3A、断熱弾性体層3B、整磁層3C、発熱層3D、表層3Eとからなり、整磁層3Cが発熱層3Dとは別体となっていて、キュリー点が例えば100〜300℃になるように形成された磁性体からなり、加圧ローラ4の押圧により変形し、ニップを形成する。この整磁層3Cの存在により、発熱層3D等の過熱が防止される。また、定着ローラ3側が凹形状となるニップを形成しやすいため、記録媒体Sの分離性が優れたものとし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置とこれを用いた画像形成装置に関し、詳細には、電磁誘導加熱方式を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷機、これらの複合装置などの画像形成装置においては、潜像担持体に担持したトナー像などの可視像を記録シートなどの記録媒体に転写することで画像出力を得る。トナー像は、定着装置を通過する際に熱と圧力とによる融解、浸透作用によって記録媒体上に定着させる。このように、定着装置に採用される加熱方式には、発熱源としてハロゲンランプなどを用いた加熱ローラとこれに対向当接する加圧ローラとを備えて定着ニップ部を構成可能な熱ローラ定着方式、ローラ自体よりも熱容量が小さくてすむフィルムを加熱部材として用いたフィルム定着方式があるが、近年、加熱方式に電磁誘導加熱方式を用いた定着方式(例えば、特許文献1参照)が注目されている。
【0003】
特許文献1に開示されている電磁誘導加熱方式を用いた定着方式においては、加熱ローラの内部においてボビンに巻いた誘導加熱コイルを設け、誘導加熱コイルに電流を印加することにより加熱ローラに渦電流を発生させ、それによって加熱ローラを発熱させる構成が備えられている。この構成においては、熱ローラ定着方式のような余熱を必要とせず、瞬時に所定の温度まで立ち上げることができるという利点がある。
【0004】
また電磁誘導加熱方式を用いた定着方式に関しては、高周波電源により高周波電圧が印加される誘導加熱コイルからなる高周波誘導加熱装置と、前記加熱回転体に設けられた磁性を有する発熱層とを有し、発熱層は、キュリー点が概ね定着温度に設定され、高周波誘導加熱装置に高周波電源により高周波電圧が印加されたとき発熱する定着装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この装置では、高周波誘導加熱装置により接着剤中に含有された強磁性体がキュリー点に達する迄瞬時に昇温し、キュリー点に達すると磁性を失うことにより、昇温せず、一定の温度を保持する。この強磁性体のキュリー点は概ね定着温度に設定されているので、強磁性体は概ね定着温度に保持される。したがって、定着装置として要求される加熱回転体表面の高離型性、耐熱性等を損なうことなく、また複雑な制御装置を必要とすることなく、加熱回転体の立ち上がり時間の短縮及び高精度の温度制御を行なうことができる。
【0006】
さらに、芯金や離型性樹脂層の厚みや形状が異なる加熱回転体においては、その熱容量も異なるが、強磁性体粉末の含有量を調整することにより、立ち上がり時間、制御温度の精度向上を図ることができ、また強磁性体粉末はキュリー点で磁性を失うので、磁性粉末を含むトナーが磁力で加熱回転体に吸引され、オフセット等が発生することもない、とされている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−13805号公報
【特許文献2】特許2975435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このようにキュリー点が概ね定着温度に設定される磁性発熱層を備える定着装置においても、発熱層の過熱防止、記録媒体の分離性の向上を図ることが求められている。そこで本発明は、これらの問題を解決可能な定着装置ならびに画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る定着装置は、磁束によって発熱する発熱層を有する定着回転体と、該定着回転体と押圧、当接する加圧回転体を備え、前記定着回転体と前記加圧回転体との間を通過する記録媒体上に、画像を定着させる定着装置であって、少なくとも前記定着回転体が、加圧回転体に押圧されることにより変形するように形成した整磁層を有することを特徴とする。
【0010】
同請求項2に係るものは、請求項1の定着装置において、前記整磁層が単層で、鉄、ニッケルを含む合金材料からなり、前記加圧回転体の押圧、当接により掛かる力で変形可能な厚さを有することを特徴とする。
【0011】
同請求項3に係るものは、請求項2の定着装置において、前記整磁層の厚さが150μm以下であることを特徴とする。
【0012】
同請求項4に係るものは、請求項1から3のいずれかの定着装置において、前記整磁層を、変形可能な基層上にメッキにより形成してなることを特徴とする。
【0013】
同請求項5に係るものは、請求項1から4のいずれかの定着装置において、前記整磁層が、キュリー点が100〜300℃になるように形成した磁性体からなることを特徴とする。
【0014】
同請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかの定着装置において、前記定着回転体は、前記整磁層の内側に、該整磁層より熱伝導率の悪い断熱部を有することを特徴とする。
【0015】
同請求項7に係るものは、請求項6の定着装置において、前記整磁層の熱伝導率を11W/mKとし、前記断熱部を熱伝導率が0.1W/mKの発泡シリコンゴムで形成してなることを特徴とする。
【0016】
同請求項8に係るものは、請求項6の定着装置において、前記断熱部を空気層で形成してなることを特徴とする。
【0017】
同請求項9に係るものは、請求項6の定着装置において、前記断熱部が弾性体を含むことを特徴とする。
【0018】
同請求項10に係るものは、請求項6から9のいずれかの定着装置において、磁束を発生させる磁束発生部を定着回転体の外側に配置し、該定着回転体は、前記断熱部の内側に、前記整磁層を透過した磁束が通過する、整磁層よりも体積抵抗率の低い導電体を有することを特徴とする。
【0019】
同請求項11に係るものは、請求項10の定着装置において、前記導電体を前記整磁層に対して非固定としてなることを特徴とする。
【0020】
同請求項12に係るものは、請求項6から11のいずれかの定着装置において、前記断熱部の厚みを、10mm以下としてなることを特徴とする。
【0021】
同請求項13に係るものは、請求項6から11のいずれかの定着装置において、前記断熱部の厚みを、1mm以上又は好ましくは3mm以上としてなることを特徴とする。
【0022】
同請求項14に係るものは、請求項10から13のいずれかの定着装置において、前記導電体を多層備え、少なくとも最も外側の導電体が前記加圧回転体に押圧されることにより変形するように形成し、かつ最も外側の導電体の内外に弾性体を含む断熱部を備えることを特徴とする。
【0023】
同請求項15に係るものは、請求項14の定着装置において、前記最も外側の導電体の外側に位置する前記断熱部は、前記最も外側の導電体の内側に位置する前記断熱部に比べて、熱伝導率が悪いものとしたことを特徴とする。
【0024】
同請求項16に係るものは、請求項1から15のいずれかの定着装置において、前記定着回転体が、ローラ、スリーブ、ベルトの何れかであることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項17に係る画像形成装置は、請求項1から16のいずれかの定着装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、定着回転体側が凹形状となるニップを形成しやすいため、記録媒体の分離性が優れ、また整磁層により発熱層の過熱防止も達成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本実施例による定着装置が適用される画像形成装置の一実施例を示す図である。もちろん本発明は、図1に示した4連タンデム方式によりフルカラー画像を形成可能な複写機あるいはプリンタには限定されず、またカラー画像を作成するものだけでなく、単一色の画像を形成するものをも対象とする。
【0029】
図1に示す画像形成装置20は、色分解毎の画像を転写体として用いられる転写ベルトに吸着した紙などの記録シートに重畳転写することによりカラー画像が潜像担持体から直接記録シートに形成される方式が用いられている。図1において、画像形成装置20は、原稿画像に応じた各色毎の画像を形成する作像装置21Y、21M、21C、21BKと、各作像装置21Y、21M、21C、21BKに対向して配置された転写装置22と、各作像装置21Y、21M、21C、21BKと転写装置22とが対向する転写領域に記録シートを供給するシート供給手段としての手差しトレイ23、給紙装置24に装備されている二つの給紙カセット24、24のいずれかと、手差しトレイ23、給紙カセット24、24から搬送されてきた記録シートを作像装置21Y、21M、21C、21BKによる作像タイミングに合わせて供給するレジストローラ30と、転写領域において転写後のシート状媒体の定着を行う定着装置1を備えている。なお、本実施例では、定着対象としてトナー像を担持した記録シートを対象としているが、転写形式によって記録シート等の記録媒体を介せずに感光体に接触する転写体、つまり、転写と同時に定着を行う媒体を対象とすることもできる。
【0030】
定着装置1は、詳細は後述するが、一対のローラを採用した定着方式を採用した構成とされている。このため、定着装置1には、定着ローラを加熱するための熱源を備え、この定着ローラに加圧ローラが当接、押圧している。
【0031】
転写装置22は、転写体として複数のローラに掛け回されているベルト(以下、転写ベルトという)が用いられ、各作像装置における感光体ドラムと対向する位置には転写バイアスを印加する転写バイアス手段がそれぞれ配置され、さらに転写ベルトの移動方向(図1中、矢印で示す方向)において第1色目を転写される側には、第1色目の転写に先立ち記録シートを転写ベルトに吸着させるための吸着用バイアスを印加する吸着用バイアス手段が転写ベルトに当接可能に配置されている。
【0032】
この画像形成装置20において、各作像装置21Y、21M、21C、21BKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の現像を行うものであり、用いるトナーの色は異なるが、その構成が同様であるから、作像装置21Cの構成を各作像装置21M、21Y、21BKの代表として説明する。
【0033】
作像装置21Cは、静電潜像担持体としての感光体ドラム25C、感光体ドラム25Cの回転方向(図2に示す構成では時計方向)に沿って順に配置されている帯電装置27C、現像装置26C、クリーニング装置28Cを有し、帯電装置27Cと現像装置26Cとの間で書き込み装置29からの書き込み光により色分解された色に対応する画像情報に応じた静電潜像を形成する構成が用いられる。静電潜像担持体としては、ドラム状の他に、ベルト状とする場合もある。なお図1に示す画像形成装置20は、転写装置22が斜めに延在させてあるので、水平方向での転写装置22の占有スペースを小さくすることができている。
【0034】
上記構成を備えた画像形成装置20では、次の行程および条件に基づき画像形成が行われる。なお、以下の説明では、各作像装置を代表して符号21Cで示したマゼンタトナーを用いて画像形成が行われる作像装置を対象として説明するが、他の作像装置も同様である。
【0035】
まず画像形成時、感光体ドラム25Cは、図示しないメインモータにより回転駆動され、帯電装置27Cに印加されたACバイアス(DC成分はゼロ)により除電され、その表面電位が略−50Vの基準電位に設定される。次に感光体ドラム25Cは、帯電装置27CにACバイアスを重畳したDCバイアスを印加されることによりほぼDC成分に等しい電位に均一に帯電されて、その表面電位がほぼ−500V〜−700V(目標帯電電位はプロセス制御部により決定される)に帯電される。
【0036】
感光体ドラム25Cは、一様帯電されると書き込み行程が実行される。書き込み対象となる画像は、図示しないコントローラ部からのデジタル画像情報に応じて書き込み装置29を用いて静電潜像形成のために書き込まれる。つまり、書き込み装置29では、デジタル画像情報に対応して各色毎で2値化されたレーザダイオード用発光信号に基づき発光するレーザ光源からのレーザ光がシリンダレンズ(図示せず)、ポリゴンモータ29A、fθレンズ(図示せず)、第1〜第3ミラー、およびWTLレンズ等を介して、各色毎の画像を担持する感光体ドラム、この場合には、便宜上、感光体ドラム25C上に照射され、照射された部分の感光体ドラム表面での表面電位が略−50Vとなり、画像情報に対応した静電潜像が作像される。
【0037】
感光体ドラム25C上に形成された静電潜像は、現像装置26Cにより色分解色と補色関係にある色のトナーを用いて可視像処理されるが、現像行程では、現像スリーブにACバイアスを重畳したDC:−300V〜−500Vが印加されることにより、書き込み光の照射により電位が低下した画像部分にのみトナー(Q/M:−20〜−30μC/g)が現像され、トナー像が形成される。
【0038】
現像行程により可視像処理された各色のトナー画像は、レジストローラ30によりレジストタイミングを設定されて繰り出される記録シートに転写されることになるが、記録シートは、転写装置22の転写ベルトに達する前にローラで構成されたシート吸着用バイアス手段による吸着用バイアスの印加によって転写ベルトに静電吸着されるようになっている。転写ベルトに静電吸着されて転写ベルトと共に搬送移動する記録シートは、各作像装置での感光体ドラムに対向する位置で転写装置22に装備されている転写バイアス手段22Y、22M、22C、22BKによるトナーと逆極性のバイアス印加によって感光体ドラムからトナー像を静電転写される。
【0039】
各色の転写工程を経た転写紙は、転写ベルトユニットの駆動側ローラで転写ベルトから曲率分離され、定着装置1に向けて搬送され、定着ローラと加圧ローラとにより構成される定着ニップを通過することにより、トナー像が転写シートに定着され、その後、片面プリントの場合には、胴内排紙トレイまたは外部の排紙トレイ(図示せず)へと排出される。
【0040】
なお図1に示す画像形成装置20は、記録シートの両面への画像形成が可能な構成を備えている。図1において、定着装置1を通過した記録シートは、予め両面画像形成モードが選択されている場合に、両面反転ユニット34に向けて搬送され、同ユニット34内で第1面と第2面とを表裏反転されたうえで、両面搬送ユニット35に搬送される。両面搬送ユニット35から搬送される記録シートは片面側への画像形成時と同様に、レジストローラ30に向け搬送され、所定のタイミングで転写位置に向け繰り出される。記録シートの第1面および第2面への画像形成が終了して定着装置1を通過した記録シートは、片面への画像形成時と同様に各排紙ユニットの何れかに排出される。
【0041】
図2は、図1に示した画像形成装置で用い得るローラ方式の定着装置の概念的構成を示す断面図である。図において、2は磁束発生部となる外部コイル、3は定着回転体である定着ローラ、4は加圧回転体である加圧ローラ、5はインバータ、Sは記録媒体である。すなわち、この実施例の定着装置は、外部コイルコ2を誘導加熱回路であるインバータにより高周波駆動することによって高周波磁界を発生させ、この磁界により、主に金属性の定着ローラに渦電流が流れるようにしてローラ温度を上昇させている。
【0042】
図3は、定着ローラ3と、その一部を拡大して取り出して示す断面図である。定着ローラ3は、芯金3A、断熱弾性体層3B、整磁層3C、発熱層3D、表層3E(図示の例ではSiゴムとPFAからなる)とからなり、整磁層3Cが発熱層3Dとは別体となっている。芯金3Aは例えばアルミニウムまたはその合金製のものが用いられる。
【0043】
また整磁層3Cは、キュリー点が例えば100〜300℃になるように形成された磁性体からなり、図4に示すように、加圧ローラ4の押圧により変形しニップを形成するように構成してある。この整磁層3Cの存在により、後述のように発熱層3D等の過熱が防止される。また、定着ローラ3側が凹形状となるニップを形成しやすいため、記録媒体Sの分離性が優れたものとし得る。なおもちろん、加圧ローラ4の押圧により変形するのは、図示の実施例では芯金3A以外の、断熱弾性体層3B、整磁層3C、発熱層3D、表層3Eである。
【0044】
図5(A)は定着ローラ3の断面図であり、太目の実線の矢印は外部コイル2からの誘導磁束、細目の実線の矢印は渦電流を示し(図5(C)参照)、整磁層3Cを構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tc未満のため、整磁層3Cを構成する整磁合金が磁性体のままであり、外部コイルコ2が発生させた誘導磁束が整磁層3Cを非透過となっている状態を示す。すなわち、キュリー点未満で整磁層3Cが磁束を透過させず、誘導磁束が芯金3Aに届いていない状態を示している。
【0045】
一方、図5(B)は、同じく定着ローラ3の断面図であり、誘導磁束が整磁層3Cを透過して芯金3Aに届いている状態を示している。図中点線の矢印はアルミニウムまたはその合金製の芯金3Aからの誘導磁束である(図5(C)参照)。すなわち、整磁層3Cを構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tcより高いため、整磁層3Cを構成する整磁合金の磁性が失われて非磁性体となり、断熱弾性体層3Bの存在にもかかわらず、誘導磁束が芯金3Aに届いている状態を示している。
【0046】
すなわち、磁性体である整磁層3Cはキュリー点に達するまではほぼ瞬時に昇温し、キュリー点に達すると磁性を失い、したがって昇温しなくなり、一定の温度を保持する。したがって、整磁層3Cをなす素材のキュリー点が、この種の定着装置において現れる温度である100〜300℃になるように形成した磁性体で構成しておけば、定着ローラ3の発熱層3Dや芯金3Aが過熱することが無くなり、概ね定着温度に保持できるようになり、定着ローラ3表面における高い離型性と耐熱性等とを損なわず、また複雑な制御を必要としなくなる。
【0047】
なお、整磁層3Cが単層の場合に変形可能な条件としては、例えば材料が鉄、ニッケルを含む合金であり、厚みが150μm以下であり、この条件が整えば整磁層3Cを確実に変形させることができる。整磁層3Cは、図6に示すように、変形可能な基層3CA上にメッキにより磁性材層3CBを形成して整磁層3Cを構成しても良い。整磁層3Cを確実に変形させ、かつ整磁層3Cの破断が低減する。
【0048】
また定着ローラ3の整磁層3Cの内側に設ける断熱弾性体層3Bは、整磁層3Cよりも熱伝導率の悪い材料から構成することが好ましい。これにより、発熱層3Dによる熱効率が向上する。断熱弾性体層3Bは、整磁層より熱伝導率の悪い発泡シリコンゴム等の材料(熱伝導率は0.1W/mK)の層でも良いが、整磁層3Cの熱伝導率が例えば11W/mKであれば、例えば空気層等その他の断熱層であっても採用できる。なお図示の例では断熱部を断熱弾性体層3Bとしたが、断熱部は弾性体を含んでも、含まなくてもいずれでも良い。ただし、弾性体を含むようにすれば、加圧ローラ4による押圧力(ニップ圧)を大きくすることができるので、定着性が優れるものとすることができる
【0049】
なお本実施例において、断熱弾性体層3Bの厚みは10mm以下程度とするか、あるいは磁束の強さ等の関係式から適当な厚さを導くかして形成することが好ましい。整磁層を透過した磁束が、確実に導電体に通過することが望ましいからである。一方、断熱部である断熱弾性体層3Bの厚みは、1mm以上、好ましくは3mm以上である構成が望ましい。1mm以上の厚みで確実に断熱でき、また3mm以上であれば確実にニップ圧を確保できる。
【0050】
なおまた後述するように、定着回転体は、ローラ、スリーブ、ベルトの何れでも良く、整磁層が発熱層と別体の場合、整磁層は発熱層に対して固定されてもよく、固定されていなくてもよい。後者の場合、ベルトやスリーブが発熱層を有しローラが整磁層を有してもよい。
【実施例2】
【0051】
なお上述した実施例1では、磁束発生部となる外部コイル2を定着ローラ3の外側に配置してあるが、図7に示すような形態で内部に配置しても良い。図中6は導電体である。
【実施例3】
【0052】
図8は、定着ローラ3の変形例を用いた実施例の断面図である。この例の定着ローラ3は多層構造となっており、断熱弾性体層3B中に導電体層3F(アルミニウムまたはその合金層)を入れて断熱弾性体層を多層としたものである。なお、図示の例では断熱弾性体層3B中の導電体層を一層のみとしてあるが、さらに多層に設けても良い。導電体層を多層に備える場合、少なくとも最も外側の導電体層は加圧ローラ4に押圧されることにより変形するように形成し、最も外側の導電体の内外には弾性体を含む断熱部(図示の例では断熱弾性体層3B1、3B2)を備えることが好ましい。これにより、ニップ圧を確保しつつ、導電体と整磁層3Cの距離を小さくできるため、過熱防止とニップ圧確保の両立がより確実になる。
【0053】
なおこの実施例では、最も外側の熱伝導率が低い導電体の外に位置する断熱部を、最も外側の導電体の内に位置する断熱部に比べて熱伝導率が悪いものとすることで、最も外側の導電体が発熱しても、その熱は外側に伝わりにくく、表面側の発熱層の過熱がよりいっそう防止しやすくなる構成とすることができる。例えば、図8の例で、外側断熱部である断熱弾性体層3B1を熱伝導率が例えば0.1W/mKの発泡シリコンゴムで、内側断熱部である断熱弾性体層3Bを熱伝導率0.5W/mKのシリコンゴムで構成することができる。
【実施例4】
【0054】
さらに、定着ローラ3は、断熱弾性体層3Bの内側に、整磁層3Cよりも体積抵抗率の低い導電体を有する構成とすることができる。構造としては図8のような構造でも良いし、整磁層3Cのすぐ内側に配置するものであっても良い。このような体積抵抗率の低い導電体を設けることにより、発熱層3Bの過熱をより効果的に防止できる。すなわち、過熱防止と、ニップ圧確保や熱効率向上が両立できる。導電体は整磁層に対して固定されてもよく、固定されていなくてもよい。後者の場合、ベルトやスリーブが整磁層を有しておりローラが導電体を有してもよい。なお従来は、導電体を整磁層に直付けしているので、過熱防止はできても、ニップ圧確保や熱効率向上ができない。
【実施例5】
【0055】
図9は本発明の実施例5を示す断面図である。本実施例は、定着回転体をローラではなく定着ベルト40で構成し、定着ローラ41と加熱ローラ42とに掛け回し、定着ローラ41に対して定着ベルト40を挟んで加圧回転体43が位置してニップを形成し、外部コイル2を加熱ローラ42の近傍に配置している。定着ベルト40は、図示は省略するが、発熱層及び整磁層を備え、加熱ローラ42がアルミニウムまたはその合金製の芯金42Aを備えている。図中44はテンションローラである。
【実施例6】
【0056】
図10は本発明の実施例6を示す断面図である。本実施例も、定着回転体をローラではなく定着ベルト40で構成し、定着ローラ41と加熱ローラ42とに掛け回しているが、外部コイル2を定着ローラ41の近傍に配置している。定着回転体である定着ベルト40は、テンションローラ43と定着ローラ41とに掛け回してある。定着ベルト40が発熱層を備え、定着ローラ41は整磁層を備える構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施例による定着装置が適用される画像形成装置の一実施例を示す全体構成図
【図2】図1に示した画像形成装置で用い得るローラ方式の定着装置の概念的構成を示す断面図
【図3】定着ローラと、その一部を拡大して取り出して示す断面図
【図4】加圧回転体に押圧されて、断熱弾性体層、整磁層が変形している状態を示す断面図
【図5】定着回転体の断面図(磁束が非透過:A)と、定着回転体の断面図(磁束が透過:B)及びA、B中の矢印の意味を示す図(C)
【図6】整磁層の構成にメッキ層を用いた定着回転体の変形例の断面図
【図7】磁束発生部となる外部コイルを定着回転体である定着ローラの外側に配置した例の断面図
【図8】多層とした断熱弾性体層を有する定着回転体の例の断面図
【図9】ベルト方式の定着回転体を用いた実施例の断面図
【図10】ベルト方式の定着回転体を用いた他の実施例の断面図
【符号の説明】
【0058】
1:定着装置
2:外部コイル(磁束発生部)
3:定着ローラ(定着回転体)
3A:芯金
3B、3B1、3B2:断熱弾性体層
3C:整磁層
3D:発熱層
3E:表層
3F:導電体層
4:加圧ローラ(加圧回転体)
5:インバータ
6:導電体
40:定着ベルト
41:定着ローラ
42:加熱ローラ
42A:芯金
43:加圧回転体
44:テンションローラ
S:記録媒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束によって発熱する発熱層を有する定着回転体と、該定着回転体と押圧、当接する加圧回転体を備え、前記定着回転体と前記加圧回転体との間を通過する記録媒体上に、画像を定着させる定着装置であって、
少なくとも前記定着回転体が、加圧回転体に押圧されることにより変形するように形成した整磁層を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1の定着装置において、前記整磁層が単層で、鉄、ニッケルを含む合金材料からなり、前記加圧回転体の押圧、当接により掛かる力で変形可能な厚さを有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2の定着装置において、前記整磁層の厚さが150μm以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの定着装置において、前記整磁層を、変形可能な基層上にメッキにより形成してなることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの定着装置において、前記整磁層が、キュリー点が100〜300℃になるように形成した磁性体からなることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの定着装置において、前記定着回転体は、前記整磁層の内側に、該整磁層より熱伝導率の悪い断熱部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項6の定着装置において、前記整磁層の熱伝導率を11W/mKとし、前記断熱部を熱伝導率が0.1W/mKの発泡シリコンゴムで形成してなることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項6の定着装置において、前記断熱部を空気層で形成してなることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項6の定着装置において、前記断熱部が弾性体を含むことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかの定着装置において、磁束を発生させる磁束発生部を定着回転体の外側に配置し、該定着回転体は、前記断熱部の内側に、前記整磁層を透過した磁束が通過する、整磁層よりも体積抵抗率の低い導電体を有することを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10の定着装置において、前記導電体を前記整磁層に対して非固定としてなることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項6から11のいずれかの定着装置において、前記断熱部の厚みを、10mm以下としてなることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項6から11のいずれかの定着装置において、前記断熱部の厚みを、1mm以上又は好ましくは3mm以上としてなることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項10から13のいずれかの定着装置において、前記導電体を多層備え、少なくとも最も外側の導電体が前記加圧回転体に押圧されることにより変形するように形成し、かつ最も外側の導電体の内外に弾性体を含む断熱部を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項14の定着装置において、前記最も外側の導電体の外側に位置する前記断熱部は、前記最も外側の導電体の内側に位置する前記断熱部に比べて、熱伝導率が悪いものとしたことを特徴とする定着装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかの定着装置において、前記定着回転体が、ローラ、スリーブ、ベルトの何れかであることを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかの定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−33085(P2008−33085A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207614(P2006−207614)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】