説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】励磁コイルによる誘導磁束が消磁コイルを透過するため、該消磁コイルを透過した磁束が発熱回転体内に配置された内部部材に誘導されて渦電流を発生させ、発熱損失を生じることの防止。
【解決手段】発熱層をもつ発熱回転体300Hの外部に励磁コイル2a、発熱回転体の内部に消磁部材3Lをそれぞれ配置し、励磁コイルの対向位置にある整磁層のキュリー温度を利用した自己温度制御機能により前記発熱層の温度を制御する定着装置であって、発熱回転体内部には、磁束調整手段16による反発磁束の調整過程で消磁部材を透過した前記励磁コイルの誘導磁束で発熱する内部部材66を有する定着装置において、励磁コイルの磁路を形成する磁路形成部材50を、消磁部材3Lを間にして整磁層と逆側の消磁部材3Lの背面側に、該内部部材66を覆う態様で配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを用いた画像形成装置に関し、詳細には、電磁誘導加熱方式を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷機、これらの複合装置などの画像形成装置においては、潜像担持体に担持したトナー像などの可視像をシート状記録媒体材(以下、用紙という。)に転写することで画像出力を得る。トナー像は、定着装置を通過する際に熱と圧力とによる融解、浸透作用によって記録材上に定着させる。このように、定着装置に採用される加熱方式には、発熱源としてハロゲンランプなどを用いた加熱ローラとこれに対向当接する加圧ローラを備えて定着ニップ部を構成する熱ローラ定着方式、ローラ自体よりも熱容量が小さくてすむフィルムを加熱部材として用いたフィルム定着方式等があるが、近年、加熱方式に電磁誘導加熱方式を用いた定着方式(例えば、特許文献1参照)が注目されている。
【0003】
電磁誘導加熱方式を用いた定着方式においては、加熱ローラの内部においてボビンに巻いた誘導加熱コイルを設け、誘導加熱コイルに電流を印加することにより加熱ローラに渦電流を発生させ、それによって加熱ローラを発熱させる構成が備えられ、ハロゲンランプなどを用いる前記熱ローラ定着方式のような余熱を必要とせず、瞬時に所定の温度まで立ち上げることができるという利点がある。
【0004】
また電磁誘導加熱方式を用いた定着方式に関しては、高周波電源により高周波電圧が印加される誘導加熱コイルからなる高周波誘導加熱装置と、前記加熱ローラなど加熱回転体に設けられた磁性を有する発熱層とを有し、この発熱層として、キュリー点が概ね定着温度のものを用い、その高周波誘導加熱装置に高周波電源により高周波電圧を印加することにより定着に必要な発熱を得る定着装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に係る装置では、高周波誘導加熱装置において芯金表面に強磁性体粉末を分散させた接着剤層を有し、この接着剤中に含有された強磁性体がキュリー温度に達する迄瞬時に昇温し、キュリー温度に達すると磁性を失うことにより、昇温せず、一定の温度を保持する。この強磁性体のキュリー温度は概ね定着温度に設定されているので、強磁性体は概ね定着温度に保持される。したがって、定着装置として要求される加熱回転体表面の高離型性、耐熱性等を損なうことなく、また複雑な制御装置を必要とすることなく、加熱回転体の立ち上がり時間の短縮及び高精度の温度制御を行なうことができる。
【0006】
このような、整磁合金を用いて誘導加熱量を自己制御する定着装置では、整磁合金による整磁層を誘導コイルと消磁部材の間に介し、整磁合金がキュリー温度以上になったとき、消磁部材による反発磁束が誘導磁束を打ち消す形で自己温度制御機能を発揮させる方式がとられている。その一例を、本願発明と共通の構成を含む、本発明の出願人による特許文献3を一部引用して参考例として概説し、問題を明らかにする。
【0007】
(参考例)
定着装置を示した図12において、定着ローラ3は加圧ローラ4と対向圧接する関係にあり、矢印の向きに回転する。定着ローラ3の外周近傍には磁束発生部2が定着装置本体(図示せず)に固定されている。
【0008】
磁束発生部2は、中央のセンターコア2c、両端部の足コア2b等を有したアーチコア2dと、励磁コイル2aなどからなる。励磁コイル2aはアーチコア2dと定着スリーブ3の間に位置し、図13、図14にも示すようにセンターコア2cに巻き回された扁平なコイルである。
【0009】
図14で、励磁コイル2aは駆動源であるインバータEにより高周波駆動することによって高周波磁界(磁束)を発生させ、この磁界により定着ローラ3の外周部を構成する主に金属性の定着スリーブ3Hに渦電流を流しローラ温度を上昇させる。トナーTnを載せた用紙Sはトナー面を定着スリーブ3Hに接するように定着スリーブ3Hと加圧ローラ4との間を通過する間に加熱、加圧定着される。
【0010】
定着ローラ3の一部を半径方向で切り出し断面を模視的に示した図15において、最も内側に芯金を兼ねた消磁部材5を備え、その外側方向には、矢印で示すようにニップ部に位置する用紙Sの画像面側に向かって、空気層(或いは発泡層)による空気断熱層3B、整磁層3C、酸化防止層3D1、発熱層3E、酸化防止層3D2、弾性層3F、そして表層の離型層3Gから構成してある。整磁層3C、酸化防止層3D1、発熱層3E、酸化防止層3D2、弾性層3F、離型層3Gなどにより一体的な発熱回転体である定着スリーブ3Hとして構成される。
【0011】
図15の消磁部材5には例えばアルミニウムまたはその合金、空気断熱層3Bは例えば5mm程度の間隙とする。整磁層3Cには適宜の整磁合金(例えば厚さ50μm)、酸化防止層3D1、3D2にはニッケルストライクメッキ(例えば厚さ1μm以下)、発熱層3EにはCuメッキ(例えば厚さ15μm)、弾性層3Fにはシリコーンゴム(例えば厚さ150μm)、離型層3GにはPFA(厚さ30μm)などが用いられる。整磁層3Cから離型層3Gの表面までの厚さは例えば200〜250μm程度である。
【0012】
整磁層3Cは、キュリー温度が例えば100〜300℃になるように形成された磁性体(例えば鉄、ニッケルを含む整磁合金材料)からなり、常に、励磁コイル2aと消磁部材5の間に位置する。この整磁層3Cにより、発熱層3E等の過熱が防止される。消磁部材5は円柱状のローラであり、定着スリーブ3Hと同心円状をなしている。
【0013】
図16を参照して「整磁合金を用いた自己温度制御方式の定着装置」における消磁部材5による発熱抑制機能について説明する。
(1):図16(a)は整磁層3Cがキュリー温度未満のため、発熱抑制なしの非機能状態を示している。同図に示すとおり、整磁層3Cを構成する整磁合金の温度Tがキュリー温度Tc未満の状態(T<Tc)である。太目の実線の矢印は励磁コイル2aからの誘導磁束、細目の実線の矢印は整磁合金を流れる渦電流を示し、整磁合金の温度Tがキュリー温度Tc未満のため、定着スリーブ3H中の整磁合金が磁性体のままであり、励磁コイル2aが発生させた誘導磁束が整磁層3Cを非透過となっている。
【0014】
かかる、キュリー温度未満では整磁合金は磁性を有するので、該整磁合金が励磁コイル2aと消磁部材5の間に位置している配置において励磁コイル2aからの誘導磁束を透過させず、誘導磁束は消磁部材5に届かず、消磁部材5に反発磁界が生じないので、整磁合金の発熱抑制がない状態になっている。このため、励磁コイル2aの誘導磁束により発熱層3Eが発熱し、この熱は整磁層3Cに伝熱、感温され、キュリー温度近傍までの急速な昇温が可能な状態である。
【0015】
(2):図16(b)は整磁層3Cがキュリー温度を超えているため、発熱抑制機能ありの機能状態を示している。同図に示すとおり、整磁層3Cの温度Tがキュリー温度Tcを超過し磁性を失っているため、該整磁合金が励磁コイル2aと消磁部材5の間に位置している配置において励磁コイル2aからの誘導磁束(図中太線で示す)が整磁層3C及び断熱層3Bを透過して消磁部材5に届き、励磁コイル2aからの該誘導磁束が消磁部材5を通る。時間変化する該誘導磁束が消磁部材5(導体)を貫くとき消磁部材5に誘導電流(細い実線で示す渦電流)が流れ、この誘導される渦電流は誘導磁束を打ち消す方向に働き、これに伴い誘導磁束を打ち消す反発磁束(図中点線で示す)が誘導される。この反発磁束は励磁コイル2aからの誘導磁束を減殺するので、励磁コイル2aからの誘導磁束による発熱層3Eの発熱効率は低下し、整磁合金層の温度Tが低下する。
【0016】
磁性体であり発熱層を含む整磁層3Cは図16(a)に示したようにキュリー温度に達するまではほぼ瞬時に昇温するが、図16(b)に示したようにキュリー温度に達する(T>Tcになる)と磁性を失い、したがって誘導加熱による昇温をしなくなり、一定の温度を保持する。これが励磁コイル2a、消磁部材(芯金)5、整磁層3C、発熱層3E相互の関係によるキュリー温度を利用した自己温度制御機能である。
【0017】
従って、整磁合金3Cをなす材料のキュリー温度が、この種の定着装置において用いる温度である100〜300℃になるような材料からなる磁性体で構成しておけば、定着スリーブ3の発熱層3Eや消磁部材5が過熱することが無くなり、概ね定着温度に保持できるようになり、定着スリーブ3H表面における高い離型性と耐熱性等とを損なわず、また複雑な制御を必要としなくなる。
【0018】
(本参考例における問題点)
図17は整磁層3Cの透磁率(発熱効率)の温度依存性を示す図である。図中△印は各温度における透磁率を示す。本例の定着装置では、自己温度制御機能が働くので180℃近傍の設定温度(キュリー温度近傍に設定した定着温度)での温度管理は容易である。しかし、図16からわかるように、透磁率は設定温度(キュリー温度近傍に設定した定着温度)未満では非常に高いが、該設定温度を超えると急激に低下する。したがって、整磁層3Cはキュリー温度近傍で透磁率が大きく落ち込むため、消磁材5に磁束が透過し、消磁材5からの反発磁束によって自己温度制御機能が発揮されるためキュリー温度以上への加熱は困難である。
【0019】
このように、整磁合金を用いた自己温度制御方式の定着装置においては、発熱体の温度がキュリー温度に近づくにつれ、発熱効率が低下するため、急速にウォーミングアップを行うことができないという問題があった。その対応としては、高温まで加熱可能なように、整磁合金のキュリー温度を高くすることが考えられるが、今度は通紙時端部温度上昇の上限温度が上昇するため、小サイズ連続通紙直後の大サイズ(例えばA3用紙)画像などで、図18に示したように小サイズ通紙部と非通紙部の光沢差が大きくなるという問題を生じる。
【0020】
そこで先行技術として、整磁合金層を誘導コイルと消磁部材の間に介し誘導コイルからの励磁磁束により加熱する定着装置において、自己温度制御性を発揮させる場合には消磁部材が消磁機能を発揮することで誘導磁束に対する反発磁束を発生し、自己温度制御機能を発揮させない場合には消磁部材は消磁機能を発揮しないように制御可能とし、ウォーミングアップ時は自己温度制御機能を発揮させず、高速な立ち上がりを実現させるものを特許文献3で以下のように提案している。
【0021】
図19に、磁束発生部2及び定着ローラ30の構成及び動作状態を示す。磁束発生部2の構成は前記した図12、図13と同じである。定着ローラ30については、定着スリーブ3Hは図15に示したものと基本的な構造は同じである。本例の定着ローラ30が定着ローラ3の構成と異なるのは、図12、図15に示した消磁部材5として、整磁層3Cを含む定着スリーブ3Hの内側に消磁部材としての一対の消磁コイル3Lを設けたことである。消磁コイル3Lは定着スリーブ3Hを間にして励磁コイル2aに対向した配置を保持するように支持されている。
【0022】
図20で消磁コイル3Lの支持態様を説明する。定着装置の側板8L、8Rは磁束発生部2を固定するとともに、定着ローラ30を軸支している。定着ローラ30の外周部を構成する発熱回転体である定着スリーブ3Hはフランジ7R、7Lに固定されている。定着スリーブ3Hの内部(内側)に位置し、回転する定着スリーブに対して非回転で不動に消磁コイル3L等を支持する内部部材66はその右軸6Rが軸受6によりフランジ7Rに支持されている。フランジ7Rの軸部9Rは側板8Rの貫通部を軸支され図示しない回転駆動源に接続されている。内部部材66の左軸6Lは軸受6によりフランジ7Lに支持されかつ、フランジ7Lを貫通して外部に突出し左フランジ7Lの軸部9Lは定着装置の左側板8Lに固定されている。これより、静止状態の磁束発生部2と消磁コイル3L、3Lの間を定着スリーブ3Hが回転により移動する構成となる。
【0023】
図21を参照するに、切り替え素子16はオンにより消磁コイル3Lをショート(導通)により消磁させ、あるいはオフにより非消磁とすることで、励磁コイル2aによる誘導磁束の抑制を図るスイッチ機能を有する。切り替え素子16としてはリレースイッチまたは半導体スイッチ、可変抵抗素子等を用い得るが、その他の手段を用いてもよい。また消磁コイル3Lには駆動源は設けない。また、図19に示すように、センターコア2cを挟んで二分してある励磁コイル2aに対して、消磁コイル3Lは、励磁コイル2aに対して定着ローラの軸長手方向上、中央部に空隙をあけて、該軸長手方向上の片側ごとに1個ずつ配置している。複数個ずつ、例えば3個程度が適当であろうと考えられる。ただし本発明としては、単数でも複数でもよく、複数の場合、個数に限定はない。そして、切り替え素子16による単位時間当たりの切り替え比率で制御を行う。
【0024】
(消磁コイル導通状態:発熱抑制機能あり)
図19(a)は、消磁機能を高める動作状態を示す定着スリーブ30の断面を示す。励磁コイル2aと消磁コイル3Lとの間には、整磁層3Cを含む構成の定着スリーブ3Hが位置する。また、励磁コイル2aによる誘導磁束(実線)が整磁層3Cを通過して届く位置に消磁部材の一例としての消磁コイル3Lが配置されている。
【0025】
T>Tcでは、切り替え素子16をオンとして消磁コイル3Lをショート(導通)させる。これによりこの消磁コイル3Lには、励磁コイル2aからの誘導磁束を打ち消す向きに電流が誘起されるとともに、破線矢印で示す反発磁束(消磁磁束)を生じさせて励磁コイル2aからの誘導磁束を反発磁束で打ち消し減殺する。切り替え素子16のオンへの切り換えにより発熱層3Eの発熱を抑制することができる。
【0026】
励磁コイル2aからの誘導磁束(実線)が整磁層3Cを通過できるのは整磁層3Cがキュリー温度以上の場合であり、キュリー温度近傍、特にキュリー温度を越えた近傍の温度で消磁コイル3Lからの反発磁束が増して、励磁コイル2aによる誘導磁束が減るため、発熱層3Eでの該誘導磁束による渦電流も小さくなり、発熱量が低下する。
【0027】
発熱量が低下すると整磁層3Cの温度もキュリー温度に限りなく下がり、これに伴い、整磁層3Cを通過する磁束は減りこれに伴い反発磁束も減るが反発磁束が減じた分、発熱層3Eを通る誘導磁束が増すので、発熱量が増す。このように、整磁層3Cがキュリー温度近傍の温度となるように、発熱層3Eの発熱量が自動的に制御される。この状態は図22における設定温度200度以上の△印を結ぶ特性線に対応する。
【0028】
ここで、図19(a)に示すように消磁部材機能状態(切り替え素子16のオン状態)で、T<Tcの場合を想定すると、励磁コイル2aからの誘導磁束は整磁層3Cを通過できないので消磁コイル3Lによる反発磁束は生じない。よって、励磁コイル2aによる誘導磁束は、制約なく発熱層3Eで渦電流を生じ、発熱層3Eを最大限発熱させることができる。この状態は図22における設定温度180℃以下の△印を結ぶ特性線(最大発熱量1000W)に対応する。
【0029】
(消磁コイル非導通状態:発熱抑制機能なし)
一方、図19(b)は、消磁機能を発揮させない動作状態を示す定着ローラ30の断面図であり、切り替え素子16をオフとして消磁コイル3Lを遮断し、消磁磁束を生じさせないことによって消磁機能が発揮されないようにしている。
【0030】
消磁コイル3Lが励磁コイル2aから離れて定着スリーブ3Hを間にして反対側に位置する。整磁合金の温度Tがキュリー温度Tcより高いT>Tc場合、励磁コイル2aからの誘導磁束が整磁層3Cを透過しているが、消磁コイル3Lが遮断されているので誘導反発磁束が生じない。したがって、励磁コイル2aによる誘導磁束(実線)は制約なく発熱層3Eで渦電流を生じ、発熱させる。この状態は図22における設定温度180℃以上の○印を結ぶ特性線(最大発熱量1000W)に対応する。
【0031】
仮に、図19(b)の消磁コイル3Lが切り替え素子16をオフにした消磁非機能状態で、T<Tcを想定すると、この場合も、制約なく発熱層で渦電流を生じ、発熱させる。この状態は図22における設定温度180℃以下の○印を結ぶ特性線(最大発熱量1000W)に対応し、発熱層を最大限発熱させることができる。
【0032】
このように、切り替え素子16は消磁コイル3Lで構成する回路を開閉するオンオフという動作態様で該消磁コイル3Lに作用して前記反発磁束を調整するので磁束調整手段の一例を構成している。
【0033】
図19では説明の都合上省略しているが、実際には図23に示すように定着スリーブ3Hの内側であって加圧ローラ4との対向部位には該加圧ローラ4からの加圧力を受けるニップ部材55が不動に設けられ、このニップ部材55は不動の内部部材66により支持されている。ここで、不動とは回転する定着スリーブ3Hに対して不動という意味である。
【0034】
ここで問題となるのは、内部部材66の存在である。図23に示すように内部部材66は、回転する定着スリーブ30の内側でニップ部材55を不動に支持している。また、内部部材66は、同じように不動で支持する必要のある消磁コイル3Lや、その他の不動で支持する必要のある部材も支持することができる。
【0035】
図23(a)は図19(b)に対応し、切り替え素子16がオフの状態で内部部材66の影響を説明するために当該図23において、該内部部材66やニップ部材55を書き加えている。図23(a)はT<Tcの場合であり、定着スリーブ3Hに含まれる整磁層3Cの温度Tがキュリー温度Tcより低いので消磁コイル3Lがオフの消磁非機能状態では、励磁コイル2aによる誘導磁束は整磁層3Cを通過できないので消磁コイル3L、3Lからの反発磁束は生じない。よって、励磁コイル2aによる誘導磁束は、制約なく発熱層3Eで渦電流を生じ、発熱抑制はなく、通常発熱状態となり、格別の問題はない。
【0036】
しかし、図23(a)の状態のもとで整磁層3Cを構成する整磁合金の温度Tがキュリー温度Tc近傍まで上昇した場合には、図23(b)に示すように励磁コイル2aによる誘導磁束は整磁層3Cを通過するようになる。しかし切り替え素子16はオフ状態であるので、消磁コイル3Lによる反発磁束は生じないが、励磁コイル2aによる誘導磁束が消磁コイル3Lを透過するため、消磁コイル3Lを透過した磁束が消磁コイル3Lやニップ部材55などを支持する誘導加熱体からなる内部部材66或いは他の誘導加熱体に誘導されて渦電流を発生させ、発熱損失80を発生させてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明は、上記の問題に鑑み、励磁コイルによる誘導磁束が消磁コイルを透過するため、該消磁コイルを透過した磁束が発熱回転体内に配置された内部部材に誘導されて渦電流を発生させ、発熱損失を生じることのない定着装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成とした。
(1):本発明の第1の手段は、発熱層と、磁束を発生させ該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、前記発熱層で発生した熱で感温する整磁層と、前記励磁コイルからの誘導磁束を反発磁束で打ち消す消磁部材と、前記消磁部材に作用して前記反発磁束を調整する磁束調整手段を有し、少なくとも前記発熱層で発熱回転体を構成し、該発熱回転体の外部に前記励磁コイル、該発熱回転体の内部に前記消磁部材をそれぞれ配置し、前記励磁コイルの対向位置にある前記整磁層のキュリー温度を利用した自己温度制御機能により前記発熱層の温度を制御する定着装置であって、
前記励磁コイルの磁路を形成する磁路形成部材を、前記消磁部材を間にして前記整磁層と逆側の前記消磁部材の背面側に配置した。
ここで、整磁層は発熱回転体の一部として、或いは、発熱回転体の内部に励磁コイルと対向して固定配置され、前記発熱回転体は加圧ローラとで定着用のニップを形成し、前記消磁部材を間にして前記整磁層と逆側には消磁部材やニップ部材などの支持対象物を支持する誘導加熱可能な内部部材が配置されており、前記磁路形成部材は前記励磁コイルからの誘導磁束を導く態様で前記内部部材に支持されていて、該磁路形成部材は該誘導磁束を前記内部部材に対して磁気的に遮断する。磁束調整手段は整磁層を構成する整磁合金がキュリー温度以上になったとき、消磁部材による反発磁束が励磁コイルからの誘導磁束を打ち消す態様で自己温度制御機能を発揮し得るようにしている。
(2):本発明の第2の手段は、第1の手段に係る定着装置において、前記消磁部材は金属の導電材料からなり、前記反発磁束を調整する磁束調整手段はスイッチによる導通/非導通の切り替えにより前記反発磁束を調整することとした。
磁束調整手段は、消磁コイル3L或いは消磁部材50で構成する回路を開閉する動作態様で該消磁コイル3L或いは金属板からなり、消磁部材50に作用して前記反発磁束を調整する。
(3):本発明の第3の手段は、第1又は第2の手段に係る定着装置において、前記消磁部材は導電部材からなり、前記励磁コイルに対向して配置されるとともに該励磁コイルの導線に対向するよう形成され、前記励磁コイルの内側空間部に対向する位置に第1の空隙を有することとした。
(4):本発明の第4の手段は、第3の手段に係る定着装置において、前記消磁部材を構成する導電部材は前記磁路形成部材上に支持され、前記第1の空隙に前記磁路形成部材の一部が配置されていることとした。
(5):本発明の第5の手段は、第1乃至第4の手段の何れか1つに係る定着装置において、前記発熱回転体は円筒体をなし、前記整磁層は該円筒体の一部として構成され、該整磁層と発熱層が一体とされる構成を含み、該円筒体と前記消磁部材とは第2の空隙を介して配置されていることとした。
(6):本発明の第6の手段は、第5の手段に係る定着装置において、前記整磁層は、前記発熱層を含む前記円筒体の内面形状に倣うように形成されベルト部材に当接するとともに、整磁層と消磁部材は空隙を介して配置されていることとした。
(7):本発明の第7の手段は、第1乃至第6の手段の何れか1つに係る定着装置において、前記消磁部材はコイルであり該コイルの巻き線両端部に接続したスイッチの開閉により反発磁束が調整されることとした。
(8):本発明の第8の手段は、第1乃至第7の手段の何れか1つに係る定着装置において、前記反発磁束の調整は定着温度に係る情報に基づき行われることとした。ここで、定着温度に係る情報としては、当該定着装置を搭載している画像形成装置のマシン状態情報(例えば、定着装置がウォームアップ状態か否か、そのウォームアップ時間、当該定着装置への通紙枚数及び通紙サイズ情報、省エネモードか否か)や当該定着装置内に設けた温度センサ出力の動作情報、メディア情報、印刷情報、マシンの内部状態情報などがある。
(9):本発明の第9の手段は、第1乃至第8の手段の何れか1つに係る定着装置において、前記発熱回転体が、定着スリーブ、定着ローラ、定着ベルトの何れかであり、該発熱回転体を押圧して当接する加圧回転体を備え、前記発熱回転体と前記加圧回転体の間を通過するシート状記録媒体上に画像を定着させることとした。
(10):本発明の第10の手段は、第9の手段に係る定着装置において、前記発熱回転体は定着ベルトであるか又は定着ベルトを加熱する加熱ローラであり、該発熱回転体に掛け回した定着ベルトを張架する定着回転体を備えることとした。
(11):本発明の第11の手段は、第1乃至第10の何れか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置とした。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、消磁機能を制御可能とすることで、自己温度制御機能の発揮を調整でき、整磁層を使用時でも任意の高温に温度設定を可能とし、かつ高速なウォーミングアップや、温度オーバーシュートの抑制を実現する定着装置において、従来あった消磁部材を透過する磁束によって内部部材に生じていた発熱損失80を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】本発明による定着装置の要部構成を示した図である。
【図3】図2に示した定着ローラの一部を半径方向で切り出した断面を模視的に示した図である。
【図4】本発明による定着装置を構成する定着ローラ断面を示し、(a)は発熱抑制なし、(b)は発熱抑制有りの各場合における誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図である。
【図5】本発明による定着装置の要部構成を示した図である。
【図6】本発明による定着装置を構成する定着ローラ断面を示し、(a)は発熱抑制なし、(b)は発熱抑制有りの各場合における誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図である。
【図7】図5、図6に示した本発明による定着ローラの一部を半径方向で切り出した断面を模視的に示した図である。
【図8】消磁部材として板状のものを用いた例を示し、(a)は切り替え素子をオフにした発熱抑制なしの態様、(b)は切り替え素子をオンにした発熱抑制ありの態様、(c)は消磁部材を長手方向と直角に切断した断面をそれぞれ示している。
【図9】(a)は消磁コイルショート時の制御例、(b)は消磁コイルオープン時の制御例をそれぞれ示す。
【図10】加熱回転体を定着ベルトとした定着装置の正面図である。
【図11】本発明の効果を模視的に説明した図である。
【図12】画像形成装置に用いられるローラ方式の定着装置の一例を示した図である。
【図13】励磁コイル及びコアの構成を例示した斜視図である。
【図14】励磁コイルの正面図である。
【図15】定着ローラの半径方向での断面を模視的に示した図である。
【図16】(a)は定着ローラの断面とともに整磁合金による発熱抑制がない場合の誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図、(b)は定着ローラの断面とともに整磁合金による発熱抑制がある場合の誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図である。
【図17】磁性層3Cの透磁率(発熱効率)の温度依存性を示す図である。
【図18】小サイズ連続通紙による中央部温度落ち込みの状態を模式的に示した図である。
【図19】(a)は磁束調整手段を有した定着ローラの断面とともに、消磁コイルのスイッチオン時における誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図、(b)は磁束調整手段を有した定着ローラの断面とともに消磁コイルのスイッチオフ時における誘導磁束、渦電流の関係を模視的に示した図である。
【図20】消磁コイルの支持構造を説明した断面図である。
【図21】励磁コイル、消磁コイル、切り替え素子及びインバータの関係を説明した図である。
【図22】発熱効率の温度依存性を示す図である。
【図23】本図(a)は図19(b)に対応し、スイッチオープン状態で内部部材の影響を考慮するためにこれを書き加えT<Tcの場合を想定したときの図であり、本図(b)は同じくT>Tcの場合を想定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、既に説明したものと同等部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0042】
例1:[画像形成装置の構成・動作]
図1は、本実施例による定着装置が適用される画像形成装置の一実施例を示す図である。もちろん本発明は、図1に示したタイプの画像形成装置には限定されず、また単一色画像を作成するものだけでなく、カラー画像を形成する画像形成装置をも対象とする。
【0043】
図示の画像形成装置は、像担持体の一例であってドラム形状を有する回転体である電子写真感光体(以下、単に感光体という)41を備え、この感光体41の周りに、図中に矢印で示す回転方向に順次、帯電ローラからなる帯電装置42、露光手段の一部を構成するミラー43を備える。さらに、現像ローラ44aを備え、また、感光体41上に現像された画像(トナー像)を転写する転写装置48、感光体41の周面に摺接するブレード46aを具備したクリーニング手段46等が配置してある。そして、感光体41上であって帯電装置42と現像ローラ44aとの間の位置にはミラー43を介して潜像形成用の露光光Lbが照射、走査されるようになっている。この露光光Lbの照射位置を露光部150と称する。
【0044】
転写装置48が感光体41の下面と対向する部位は、用紙Sにトナー像が転写される公知の転写部47となっており、この転写部47より給紙方向上流側には一対のレジストローラ49が設けてある。これらレジストローラ49には、複数設けられたうちの何れかの給紙トレイ40に収納した用紙Sが、給紙コロ群110のコロによって送り出され、搬送ガイドおよび搬送ローラ群(符号を付していない)に案内されながら搬送されるようになっている。
【0045】
また、転写部47より給紙方向下流の位置には、定着装置20が配置してある。定着装置20より給紙方向下流側には両面記録実行時に転写紙の表裏を反転させ記録済みの紙面を下向きにして転写部47に再給紙する自動両面装置39が配置されていて、モード変更により両面画像を形成可能である。
【0046】
この画像形成装置における画像形成は、概ね次のようにして行なう。まず装置上部側では、感光体41が回転を始め、この回転中に感光体41が暗中において帯電装置42により均一に帯電され、作成すべき画像に対応する露光光Lbが露光部150に照射および走査されることで、作成すべき画像に対応した潜像が感光体41上に形成される。この潜像は感光体41の回転により現像装置44に近接したとき、ここでトナーにより可視像(顕像)化されて、感光体41に担持されたトナー像となる。
【0047】
一方、装置下部側では、複数の給紙トレイ40のうちいずれか一つの給紙トレイ40の給紙コロ群110により用紙Sを呼び出し、例えば図1中に破線で示すような所定の搬送経路を経て一対のレジストローラ49の位置まで搬送し、ここで一旦停止させ、感光体41上のトナー像が転写部47で用紙Sの所定位置に対向するようなタイミングで送り出す。すなわち、好適なタイミングが到来すると、レジストローラ49の位置で停止していた用紙Sをレジストローラ49から送り出しを開始し、転写部47に向けて搬送する。
【0048】
感光体41上のトナー像とこのトナー像が転写されるべき用紙Sの所定位置が転写部47で合致し、転写部材48による電界により、トナー像は用紙S上に吸引され転写される。こうして感光体41周りの画像形成部で転写によりトナー像を担持した用紙Sは、定着装置20に向けて送り出される。用紙S上のトナー像は定着装置20を通過する間に加熱、加圧されて用紙Sに定着された後、排紙部に排紙される。
【0049】
また、用紙Sの両面に画像形成をする場合、図示しない分岐爪により自動両面装置39に排紙された用紙Sが、自動両面装置39でスイッチバック反転され、レジストローラ49の手前の搬送経路に搬送される。
【0050】
なお、転写部47で転写されずに感光体41上に残った残留トナーは、感光体41の回転と共にクリーニング装置46に至り、このクリーニング装置46を通過する間に感光体41上から清掃・除去され、次の画像形成に移行可能となる。
【0051】
定着装置20については、後述する種々のタイプの発熱回転体を用いたものを適用することができる。例えば、一対のローラを採用した定着方式を採用するのも一例である。何れにしても、定着装置には、定着するための用紙Sを加熱するための発熱回転体を備え、その熱を用いて定着を行う。
【0052】
例2:[定着装置の構成・動作]
例2の1:(発熱回転体が少なくとも発熱層と整磁層を有した定着スリーブである例):
図2は、図1に示した画像形成装置で用い得るローラ方式の定着装置20の概念的構成を示す断面図である。図2に定着装置20として定着ローラ300とそのまわりに配置した磁束発生部2、定着ローラ300に加圧される加圧ローラ4を示している。背景技術の欄で説明した図23の定着ローラとの比較でいえば、定着ローラ300を構成する定着スリーブ300Hの内部に磁路形成部材50を設けた点に特徴を有する。発熱回転体である定着スリーブ300Hは加圧ローラ4と対向圧接して定着ニップを形成する関係にあり、矢印の向きに回転する。
【0053】
磁束発生部2は中央のセンターコア2c、両端部の足コア2b等を有したアーチコア2dと、励磁コイル2aなどからなる。励磁コイル2aは図12乃至図14で説明したのと同じである。励磁コイル2aは図14で述べたように、誘導加熱回路であるインバータEにより高周波駆動され高周波磁界を発生させ、この磁界により、主に金属性の定着スリーブ300Hに渦電流が流れるようにしてローラ温度を上昇させているものである。トナーTnを載せた用紙Sはトナー面を定着スリーブ3Hに接するように定着スリーブ3Hと加圧ローラ4との間を通過する間に加熱、加圧定着される。
【0054】
定着ローラ300の一部を半径方向で切り出し断面を模視的(配列順を示すものであり全てが積層された構成に限定するものではない)に示した図3において、定着スリーブ300Hの構成は、既に説明した図15における定着スリーブ3Hとの比較において、図15における発熱層3Eが厚み方向の両側を酸化防止層で挟まれているのに対して、図3における発熱層3Eが整磁層3Cとの境界部に酸化防止層を有しない点が相違する。
【0055】
定着スリーブ300Hは、空気断熱層3Bからその外側方向に、矢印で示すようにニップ部に位置する用紙Sの画像面側に向かって、整磁層3C、発熱層3E、酸化防止層3D2、弾性層3F、そして表層の離型層3Gなどによる一体的なスリーブとして構成されている。
【0056】
定着スリーブ300Hは、図2に示すように直径が例えば40mmで、整磁層3Cを含んでいる。定着スリーブ300Hの内部には消磁部材5として消磁コイル3Lを備え、加圧ローラ4とのニップ部にはニップ部材55を有し、これらニップ部材や消磁部材5としての消磁コイル3Lは内部部材66で支持される。
【0057】
整磁層3Cには公知かつ適宜の整磁合金(例えば厚さ300μm)、酸化防止層にはニッケルストライクメッキ(例えば厚さ1μm以下)、発熱層3EにはCuメッキ(例えば厚さ15μm)、弾性層3Fにはシリコーンゴム(例えば厚さ150μm)、そして離型層3GにはPFA(厚さ30μm)が用いられる。すなわち整磁層3Cから離型層3Gの表面までの厚さは例えば200〜250μmであるが、ただし、これらの数値はすべて一例である。
【0058】
また、図2に示したように、ニップ部材55は定着ローラ300側がニップ部材55に沿って凹形状となるように設けられているため、用紙Sの定着ローラ300からの分離性は優れたものとなる。なお加圧ローラ4の押圧により変形するのは、図示の実施例では、整磁層3C〜離型層3Gを構成する定着スリーブ300Hである。
【0059】
整磁層3Cは、キュリー点が例えば100〜300℃になるように形成された磁性体(例えば鉄、ニッケルを含む整磁合金材料)からなり、加圧ローラ4の押圧により変形しニップを形成するように構成してある。この整磁層3Cと定着スリーブ300Hの内側に配置された消磁部材5(本例では消磁コイル3L)の存在により、発熱層3E等の過熱が防止される。かかる発熱抑制については、背景技術において図19に基づき説明した内容の通りである。
【0060】
図2における定着装置20は、発熱回転体が定着スリーブ300Hの例であり円筒体をなし、整磁層3Cは該円筒体の一部として構成され、該整磁層3Cと発熱層3Eが一体とされる構成で、該円筒体と消磁部材(本例では消磁コイル3L、3L)とは第2の空隙Δ2(図3における空気断熱層3Bが対応)を介して配置されている。定着装置20は、発熱層3Eと、磁束を発生させ該磁束によって発熱層3Eを誘導加熱する励磁コイル2aと、発熱層3Eで発生した熱で感温する整磁層3Cと、励磁コイル2aからの誘導磁束を反発磁束(後述の図4(b)に点線矢印で示す磁束)で打ち消す消磁コイル3Lと、該消磁コイル3Lに作用して前記反発磁束を調整する磁束調整手段としての切り替え素子16を有し、少なくとも発熱層3Eと整磁層3Cとで定着スリーブ300Hを構成し、該定着スリーブ300Hの外側に前記励磁コイル2a、該定着スリーブ300Hの内側に前記消磁コイル3Lをそれぞれ配置することにより、これら励磁コイル2aと該消磁コイル3L、3Lとの間を定着スリーブ300Hの回転により整磁層3Cが移動する構成としていて、整磁層3Cのキュリー温度を利用した自己温度制御機能により発熱層3Eの温度が制御される。
【0061】
定着スリーブ300Hの内部には、通常ニップ部材55等を支持する内部部材66が配置されるが、これらの内部部材66にはニップ部の圧力に耐える剛性が要求されるため、鉄等の金属部材で形成される。このような材質は励磁コイル2aからの磁束で誘導加熱されるため、切り替え素子16による前記反発磁束の調整過程で消磁コイル3Lを磁束が透過した場合、励磁コイル2aの誘導磁束で内部部材66が発熱してしまう。切り替え素子16は、整磁層3Cを構成する整磁合金がキュリー温度以上になったとき、消磁コイル3Lによる反発磁束の生成のオン、オフ状態を切り替えることで整磁層3Cの自己温度制御機能の発現の有無を選択できるようにしている。消磁部材はコイルであり該コイルの巻き線両端部に接続したスイッチの開閉により反発磁束が調整される。
【0062】
図2、図4などに示すように、消磁コイル3Lは、励磁コイル2aに対向して配置されるとともに該励磁コイル2aの導線に対向するよう形成される。消磁コイル3Lは図21に示したように、励磁コイル2aを構成する定着ローラ軸長手方向に長さをもつ該コイルの一つづきの内側空間部Δ3の長手方向両端部に対向する位置に、該消磁コイル3L、3Lの巻き線の内側空間である第1の空隙Δ1、Δ1をそれぞれ対応させた配置としている。なお、一つづきの内側空間部Δ3にはセンターコア2cの一部が位置している。
【0063】
図2、図4などに示すように、磁路形成部材50は定着ローラ300をその軸長手方向から見た形状が横方向に長さを有する部分と、横方向に長さを有する部分の略中央部から上方に突出した部位とからなる略T字状をしていて、図中、上方に突出した部位が、励磁コイルの内側空間部Δ3に対向する第1の空隙Δ1を貫通している。また、横方向に長さを有する部分は、消磁コイル3Lに近接対向し、或いは該磁路形成部材50上に消磁コイル3Lを支持している。このように、第1の空隙Δ1には磁路形成部材50の一部(上方に突出した部位50a)が配置されている。
【0064】
図2、3に示した構成の定着装置における、発熱を抑制している場合と、発熱を抑制していない場合のそれぞれにおける温度制御態様について図4により説明する。
【0065】
図4(a)は前記図19(b)、図4(b)は前記図19(a)に対応する。太目の実線の矢印は励磁コイル2aからの誘導磁束、細い実線の矢印は時間変化する該誘導磁束が発熱層3Eに生ずる誘導電流(渦電流)、破線矢印は消磁コイル3Lからの消磁磁束を示す。切り替え素子16は定着スリーブの温度に応じてオン、オフが切り替えられる。消磁コイル3L、3Lは励磁コイル2aから離れて定着スリーブ300Hを間にして反対側に位置する。
【0066】
図4(a)に示すようにT<TcからTがTc近傍までの場合、切り替え素子16はオフとされる。整磁層3Cを構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tc未満のため、整磁層を構成する整磁合金が磁性体のままであり、励磁コイル2aが発生させた誘導磁束が整磁層3Cを非透過となっている状態を示す。すなわち、キュリー点未満で整磁層3Cが磁束を透過させず、誘導磁束が消磁コイル3Lに届いていない状態を示している。よって、励磁コイル2aによる誘導磁束は、制約なく発熱層3Eで渦電流を生じ、発熱層3Eを最大限発熱させることができる。このとき発熱は抑制されず90%程度の効率で発熱する。この状態は図22における180℃以下での△印を結ぶ特性線に対応する。
【0067】
発熱層3Eの昇温によりT>Tcになったら、図4(b)に示すように、切り替え素子16をオンにする。整磁層3Cがキュリー温度以上となり励磁コイル2aからの誘導磁束が整磁層3Cを透過して消磁コイル3Lに届くようになると図中点線の矢印で示すように消磁コイル3Lから誘導磁束が生ずる。消磁コイル3Lは金属の導電材料からなり、切り替え素子16は該消磁コイル3Lからの前記誘導磁束による反発磁束を調整する磁束調整手段であり、スイッチ機能を有し導通/非導通の切り替えにより該反発磁束を調整する。
【0068】
仮に、小サイズ通紙等で非通紙部が過昇温し、整磁層3Cを構成する整磁層3Cの温度Tがキュリー温度Tcより高いため整磁層3Cを構成する整磁合金の磁性が失われて非磁性体となり、励磁コイル2aからの誘導磁束が消磁コイル3Lに届いている状態になっても、図4(a)のように切り替え素子16をオフのままにしている場合には、消磁コイル3Lに誘導電流が流れないので消磁機能が発現しない。
【0069】
一方、図4(b)に示すように、切り替え素子16をオンに切り替えた場合には、消磁コイル3Lに消磁機能が発現し、励磁コイル2aからの誘導磁束に対する消磁磁束(逆磁束)が発生するため、発熱層3Eを透過する実効磁束が低下する。
【0070】
磁性体(上述した発熱層3Eの機能をも含む)である整磁層3Cはキュリー温度Tcに達するまではほぼ瞬時に昇温し、キュリー温度Tcに達すると磁性を失い、したがって昇温しなくなり、一定の温度を保持する。したがって、整磁層3Cをなす素材のキュリー温度が、この種の定着装置において現れる温度である100〜300℃になるように形成した磁性体で構成しておけば、定着スリーブ300Hの発熱層が過熱することが無くなり、概ねキュリー温度に保持できるようになり、定着ローラ3表面における高い離型性と耐熱性等とを損なわず、また複雑な制御を必要としなくなる。
【0071】
図17で説明したように、図中△印で示した各温度における透磁率は設定温度を超えると急激に低下する。これは図22で説明したように装置の発熱量と直接相関し、前述のように消磁回路の切り替え素子16がオフ状態で消磁コイル3Lを短絡させていない場合には発熱量は低下せず、短絡状態になった場合に図22に示すように発熱量がキュリー温度に依存して低下する。
【0072】
本発明では、図23(b)で説明したように、消磁部材としての消磁コイル3Lが短絡されていない状態では定着スリーブ300Hの内部にある内部部材に励磁コイル2aからの誘導磁束が該内部部材に作用して、発熱損失を発生させていた課題に対し、図2乃至図4に示したように、励磁コイル2aの磁路を形成する磁路形成部材50を、消磁コイル3Lを間にして整磁層(定着スリーブ300Hのうち磁束発生部2に対面する領域にある整磁層)と逆側の消磁コイル3Lの背面側に、内部部材66を覆う態様で配置している。
【0073】
磁路形成部材50は消磁コイル3Lの背面で励磁コイル2aからの磁束の磁路を形成することで磁束の透過を抑制し、励磁コイル2aからの磁束が内部部材66に達することによる発熱損失を抑制することができる。磁路形成部材50は励磁コイル2aからの磁束を誘導しやすい高透磁率の材料がよく、自身が誘導発熱しないように高抵抗材料が望ましい。より具体的にはソフトフェライトや磁性体粉を含み磁性を有したモールド材等で形成するのがよい。
【0074】
このように、励磁コイル2aの磁路を形成する磁路形成部材50は、励磁コイル2aからの誘導磁束を導く態様で内部部材66に支持されていて、該誘導磁束を内部部材66に対して磁気的に遮断する。こうして、本例では、消磁機能を制御可能とすることで、自己温度制御機能の発揮を調整でき、整磁層を使用時でも任意の高温に温度設定を可能とし、かつ高速なウォーミングアップや、温度オーバーシュートの抑制を実現する定着装置において、従来あった消磁部材を透過する磁束によって内部部材に生じていた発熱損失を低減できる。なお、消磁コイル3Lは、整磁層3Cよりも体積抵抗率の低い率の材料から構成することが好ましい。これにより、消磁性能が向上する。
【0075】
例2の2:(発熱回転体が少なくとも発熱層を有した定着スリーブで、整磁層が定着スリーブの内側に独立して構成された例):
本例は、発熱回転体が少なくとも発熱層を有した定着スリーブで、整磁層が定着スリーブの内側に独立して構成された例であり、図5乃至図7に構成及び動作態様を示す。
【0076】
本例にかかる定着装置の要部構成を示した図5において、本例に係る定着ローラ300’が、既に説明した図2乃至図4に示した前記例2の1における定着ローラ300と異なる点は、前記例2の1における定着ローラ300では整磁層3Cが定着スリーブ300Hに含まれていたのに対して、本例では整磁層3Cが定着スリーブ300H’とは別体の整磁板300Cとして定着スリーブ300H’の内側に構成されている。つまり、整磁板300Cは、発熱層3Eを含む円筒体である定着スリーブ300H’の湾曲した内周面に倣う湾曲板で形成すれば、定着スリーブ300H’内周面に摺擦される際の摺動抵抗を減じることができる。
【0077】
このように、整磁層3Cは定着スリーブ300H’と接して配置することで感温性能を向上させ、定着スリーブ300H’の過昇温に対しすぐさま伝熱することもできるが、例えば1mm以内の空隙を設けて配置し、かかる空隙を介した伝熱で整磁層をなす整磁合金を感温させることも可能である。
【0078】
また、整磁板300Cに対して、消磁部材空隙(第1の空隙Δ1)内を貫通した磁性材(磁路形成部材50の突出した部位50a)は空隙Δ4を介して離して配置することが望ましい。定着スリーブ300H’の熱流速がほぼ直接流入し熱容量が増加するためである。
【0079】
一方、前記図5の例に対して変更を加えた構成の図6(a)、(b)に示した形態では定着スリーブ300H’内面に対して整磁板300Cは例えば1mmの大きさの第4の空隙Δ4のギャップを設けて配置されていて、この点が図5とは異なっている。かかる相違としたのは、定着スリーブ300H’の熱容量を低下させるためである。この場合には、整磁板300Cに対して、消磁部材空隙(第1の空隙Δ1)内を貫通した磁性材(磁路形成部材50の突出した部位50a)は整磁板300Cに接して配置することにより、整磁板50と磁路形成部材50の磁気結合を向上させ消磁効果を高めてもよい。
【0080】
図6(a)は発熱抑制なしの場合、図6(b)は発熱抑制ありの場合における磁束や過電流の発生状況を示したものであり、かかる態様は前記例2の1における図4(a)の発熱抑制なしの場合、図4(b)の発熱抑制ありの場合にそれぞれ対応し、整磁機能の発現状況は同じであるので説明は省略する。
【0081】
図5、図6における定着ローラの一部を半径方向で切り出し断面を図7に模視的(配列順を示すものであり全てが積層された構成に限定するものではない)に示している。図7において、最も内側に内部部材66を備え、その外側方向には、矢印で示すようにニップ部に位置する用紙Sの画像面側に向かって、空気断熱層3B、磁路形成部材50、空気断熱層3B、消磁部材5(消磁コイル3L、3L)、整磁板300Cによる整磁層3C、空気断熱層3B、基材層3J、発熱層3E、酸化防止層3D2、弾性層3F、そして表層の離型層3Gから構成してある。これらのうち、基材層3J、発熱層3E、酸化防止層3D2、弾性層3F、離型層3Gなどは一体的な発熱回転体である定着スリーブ300H’として構成されている。
【0082】
内部部材66は鉄、磁路形成部材50はフェライト、消磁部材5は導電材による消磁コイル3L、整磁層3Cはt=300mmの整磁合金、基材層3JはPIでt=50μm、発熱層3EはCuでt=15μm、酸化防止層3D2はニッケルストライクメッキ(例えば厚さ1μm以下)、弾性層3Fにはシリコーンゴム(例えば厚さ150μm)、離型層3GにはPFA(厚さ30μm)などが用いられる。
【0083】
例2の3:(消磁部材が導電板の例):
本例では消磁部材として、例2の1、例2の2における消磁コイル3Lに代えて板状の低抵抗体を結線した態様で消磁部材を構成している。
【0084】
消磁部材としては、図2、図4や図21で示したようなリッツ線(Cu)等の低抵抗細線を用いたコイル形状とした消磁コイル3Lを用いてもよいがこれに限らず、図8に示されるような低抵抗体による2つの板状消磁材35を、磁路形成部材50の突出した部位50aを間にして対向した構成とし、これら2つの板状消磁部材35を長手方向での両端部で結線し、途中に切り替え素子16を介在させて回路を構成することで、例えば、図2に示した消磁コイル3Lに置き換えることができる。消磁部材はその形状を本例では板状のものを例示しているがこれに限定されない。
【0085】
ここでは、板状消磁部材35は励磁コイル2aと対向させていて、銅体が配され間に空隙を有しその空隙内に磁性体(例えばフェライト)(磁路形成部材50の突出した部位50a)を配することで、消磁部材と励磁コイルの磁気結合が向上するため消磁性能が向上する。整磁層を透過した誘導磁束が、確実にフェライトコアを通じて導電体に通過することが望ましいからである。
【0086】
切り替え素子16をオフにした図8(a)の態様は図4(a)に対応し消磁部材に消磁電流は流れず、発熱抑制されていない。切り替え素子16をオンにした図8(b)の態様は図4(b)に対応し消磁部材に消磁電流が流れ、発熱が抑制されている。
【0087】
図8に示すように消磁部材として板状部材を用いる際にも、第5の空隙Δ5を有した内部に高透磁率、高抵抗材料を用いて、磁気結合を向上させることが望ましい。図8では矢印で概念的に板状部材から誘起される反発磁束を示しているがあくまで概念上のものである。図8(c)は消磁部材等の断面を模視的に示している。
【0088】
なお、整磁層が変形可能な条件としては、例えば材料が鉄、ニッケルを含む合金であり、厚みが150μm以下であることである。この条件が整えば整磁層を確実に変形させることができる。整磁層は、例えば変形可能な基層上にメッキにより磁性材層を形成して構成しても良い。整磁層を確実に変形させ、かつ整磁層の破断を低減することができる。
【0089】
例2の4(a):(消磁部材の発熱の制御例):
反発磁束の調整で行う消磁部材の発熱の制御はマシン状態情報(ウォームアップの有無、継続時間、連続通紙か単発かなどの通紙状況、省エネモードの有無など)や定着装置内温度センサ情報に基づいて、消磁材のスイッチ(切り替え素子16)の短絡を行えばよく、立上復帰時等では消磁材を非機能とさせ、キュリー温度以上への加熱も可能となる。つまりキュリー温度を180℃に設定して用いる際にも消磁機能を発揮させないことでキュリー温度以上の温度で定着が可能となる。
【0090】
図5に示した定着装置の例で示すと、通常使用時は、図9(a)に示すように、切り替え素子16をオンにして発熱抑制をする。また、高温定着の必要がある場合や休止後の立上復帰時などの場合には、図9(b)に示すように、切り替え素子16をオフにして発熱抑制を解除する。
【0091】
例3:(発熱回転体の例):
定着に用いる発熱回転体としては、定着スリーブのような円筒状のスリーブ、該スリーブを可撓性のあるベルト状にした定着ベルト、定着スリーブのように肉厚の薄い中空状でなく中実或いは肉厚の厚いローラ状にする構成の何れでもよく、さらに、整磁層が発熱層と別体の場合、整磁層は発熱層に対して固定されてもよく、固定されていなくてもよい。固定されていない後者の場合、ベルトやスリーブが発熱層を有し、ベルトを巻きつけるローラが整磁層を有する構成であってもよい。
【0092】
図10に例示する。図10を用いて2つの態様を説明する。
第1の態様:図2に示した構成の中、磁束発生部2、定着スリーブ300H、励磁コイル3L、磁路形成部材50、切り替え素子16にかかる構成部分を採用し、定着スリーブ300Hに定着ベルト70をかけ回し、該定着ベルト70他端側を定着回転体75で張架し、定着回転体75に加圧ローラ4を圧接させた構成である。定着スリーブ300Hは整磁層、発熱層を有する。この例では定着スリーブ300Hが加熱回転体になり、定着ベルト70を支持するので、肉厚を増すなどして剛性を高める必要がある。
【0093】
第2の態様:第1の態様で説明した図10に示した構成の中、定着スリーブ300Hは加圧回転体ではなく、定着ベルト70を支持するためだけのローラとして構成する。また、定着ベルト70は発熱層及び整磁層を含ませることで加熱回転体として構成する。この例でも定着スリーブ300Hが加熱回転体になり、定着ベルト70を支持するので、肉厚を増すなどして剛性を高める必要がある。
【0094】
これら第1、第2の何れの態様においても、定着回転体75と加圧ローラ4間に用紙Sを通紙することで定着を行う。
【0095】
図11は従来の内部部材損失が発生する場合と、本発明により損失を低減させた際の発熱比率の比較を示している。これは前記図2乃至図4で示した定着装置における作用効果のデータであり、1200W投入時の発熱比率を示している。本発明によれば、内部部材への損失が低減され、トナー溶融に使用される整磁部材を含むスリーブ発熱量が向上する。
【符号の説明】
【0096】
2 磁束発生部
2a励磁コイル
2c センターコア
2b 足コア
2d アーチコア
3、30、300 定着ローラ
3B 空気断熱層
3C 整磁層
3D1 酸化防止層
3D2 酸化防止層
3E 発熱層
3F 弾性層
3G 離型層
3L 消磁コイル
3H、300H 定着スリーブ
4 加圧ローラ
5 消磁部材
6 軸受
6R 右軸
6L 左軸
7R、7L フランジ
8L、8R 側板
9R、9L 軸部
16 切り替え素子
20 定着装置
35 板状消磁部材
39 自動両面装置
40 給紙トレイ
41 感光体
42 帯電装置
43 ミラー
44 現像手段
44a 現像ローラ
46 クリーニング手段
46a ブレード
47 転写部
48 転写装置
49 レジストローラ
50 磁路形成部材
50a 突出した部位
55 ニップ部材
66 内部部材
70 定着ベルト
80 発熱損失
110 給紙コロ群
150 露光部
300C 整磁板
E インバータ
Lb 露光光
S 用紙
Tn トナー
Δ1 第1の空隙
Δ2 第2の空隙
Δ3 励磁コイルの内側空間部
Δ4 第4の空隙
Δ5 第5の空隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開2001−13805号公報
【特許文献2】特許2975435号公報
【特許文献3】特開2009−058829号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱層と、磁束を発生させ該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、前記発熱層で発生した熱で感温する整磁層と、前記励磁コイルからの誘導磁束を反発磁束で打ち消す消磁部材と、前記消磁部材に作用して前記反発磁束を調整する磁束調整手段を有し、少なくとも前記発熱層で発熱回転体を構成し、該発熱回転体の外部に前記励磁コイル、該発熱回転体の内部に前記消磁部材をそれぞれ配置し、前記励磁コイルの対向位置にある前記整磁層のキュリー温度を利用した自己温度制御機能により前記発熱層の温度を制御する定着装置であって、
前記励磁コイルの磁路を形成する磁路形成部材を、前記消磁部材を間にして前記整磁層と逆側の前記消磁部材の背面側に配置したことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記消磁部材は金属の導電材料からなり、前記反発磁束を調整する磁束調整手段はスイッチによる導通/非導通の切り替えにより前記反発磁束を調整することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記消磁部材は導電部材からなり、前記励磁コイルに対向して配置されるとともに該励磁コイルの導線に対向するよう形成され、前記励磁コイルの内側空間部に対向する位置に第1の空隙を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の定着装置において、
前記消磁部材を構成する導電部材は前記磁路形成部材上に支持され、前記第1の空隙に前記磁路形成部材の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の定着装置において、
前記発熱回転体は円筒体をなし、前記整磁層は該円筒体の一部として構成され、該整磁層と発熱層が一体とされる構成を含み、該円筒体と前記消磁部材とは第2の空隙を介して配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の定着装置において、
前記整磁層は、前記発熱層を含む前記円筒体の内面形状に倣うように形成されるとともに、前記整磁層と前記消磁部材とは空隙を介して配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の定着装置において、
前記消磁部材はコイルであり該コイルの巻き線両端部に接続したスイッチの開閉により反発磁束が調整されることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7記載の定着装置において、
前記反発磁束の調整は定着温度に係る情報に基づき行われることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載の定着装置において、
前記発熱回転体が、定着スリーブ、定着ローラ、定着ベルトの何れかであり、該発熱回転体を押圧して当接する加圧回転体を備え、前記発熱回転体と前記加圧回転体の間を通過するシート状記録媒体上に画像を定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の定着装置において、
前記発熱回転体は定着ベルトであるか又は定着ベルトを加熱する加熱ローラであり、該発熱回転体に掛け回した定着ベルトを張架する定着回転体を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1つに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−168403(P2012−168403A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30112(P2011−30112)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】