説明

実装方法、電気部品付き基板及び電気装置

【課題】信頼性の高い電気装置を製造する。
【解決手段】接着剤層20は熱硬化性樹脂と放射線硬化性樹脂を含有しており、接着剤層20の一部は電気部品15の縁よりも外側にはみ出ている。放射線29は電気部品15を透過せず、接着剤層20の電気部品15の真裏に位置する部分では、放射線硬化性樹脂は重合しないが、はみ出し部分26では放射線硬化性樹脂が重合する。電気部品15は重合した放射線硬化型樹脂によって固定されるから、電気部品15を加熱押圧する時に、電気部品15の位置ずれが起こらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気部品を基板に実装する実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子のような電気部品の実装には接着剤が使用されている。
接着剤を用いて電気部品を実装する場合、基板と電気部品で接着剤を挟み込み、電気部品に押圧ヘッドを押し付けて押圧する。
【0003】
押圧ヘッドには、通常、金属・セラミック等の硬質のヘッドを用いることが多いが、シリコンラバー等の弾性体(押圧ゴム)を有する弾性体ヘッドを用いることもある。弾体性ヘッドの押圧ゴムを電気部品に押し付けて押圧を行った場合、硬質のヘッドを用いる場合と比べて、接着剤の気泡(ボイド)抜けが良く、その結果、電気部品と基板との接続信頼性が向上するという利点がある。
【0004】
しかし、従来技術の実装方法では押圧の際に電気部品の位置ずれが起こりやすく、特に弾性体ヘッドを用いた場合に、その位置ずれ量が大きくなるという問題があった。
【0005】
接着剤が熱硬化性樹脂を含有する場合には、弾性体ヘッドで電気部品を押圧する前に、接着剤が半硬化する程度に加熱しておけば、半硬化した接着剤で電気部品が固定されるので、位置ずれがある程度は防げる。しかし、その方法を用いた場合でも、25μm程度は電気部品が位置ずれした。
【特許文献1】特開平11−45904号公報
【特許文献2】特開2000−105388号公報
【特許文献3】特開2005−32952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電気部品を精度良く実装可能な実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、熱硬化性樹脂と放射線硬化性樹脂とが含有された接着剤層を用い、前記接着剤層と、基板と、電気部品とを、前記接着剤層が前記基板と、前記電気部品の間に位置し、前記接着剤層の一部が前記電気部品の縁よりも外側にはみ出す状態にし、前記接着剤層のはみ出した部分に放射線を照射した後、前記接着剤層を加熱しながら、前記電気部品と前記基板の間に押圧力を加え、前記電気部品と前記基板とを機械的に接続する電気部品の実装方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の実装方法であって、前記放射線として前記電気部品を透過しない波長のものを用い、前記放射線の照射は、前記基板の前記電気部品が配置された側の面から行い、前記はみ出した部分と一緒に、前記電気部品にも前記放射線を入射させる実装方法である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の実装方法であって、平面形状が前記電気部品の平面形状よりも大きい接着剤層を用い、前記接着剤層を前記基板と前記電気部品の間に位置させる際に、前記はみ出した部分で前記電気部品の縁を囲う実装方法である。
請求項4記載の発明は、電気部品が接着剤層によって仮固定された電気部品付き基板であって、前記接着剤層は放射線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂を含有し、前記接着剤層の一部は前記基板と前記電気部品の間に位置し、他の一部は前記電気部品の縁よりも外側にはみ出し、前記接着剤層の前記電気部品の縁よりも外側にはみ出した部分は、前記放射線硬化性樹脂が放射線照射によって重合した光重合物を含有する電気部品付き基板である。
請求項5記載の発明は、電気部品が接着剤層によって基板に固定された電気装置であって、前記接着剤層は放射線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂とを含有し、一部が前記電気部品と前記基板の間に位置し、他の一部が前記電気部品の縁よりも外側にはみ出し、前記接着剤層の前記電気部品の縁よりも外側にはみ出した部分は、前記放射線硬化性樹脂が放射線照射によって重合した光重合物を含有し、前記接着剤層の前記電気部品と前記基板との間の部分は、前記熱硬化性樹脂が加熱によって重合した熱重合物を含有する電気装置である。
【0008】
本発明は上記のように構成されており、電気部品付き基板は、接着剤層を加熱押圧する前の状態であり、接着剤層の電気部品と基板との間に位置する部分によって、電気部品が基板に仮に固定されている。
【0009】
この電気部品付き基板では、熱硬化性樹脂の熱重合物は生成されておらず、接着剤層の電気部品の真裏の部分と、電気部品の縁よりも外側にはみ出した部分は、熱重合前の熱硬化性樹脂を含有する。
【0010】
また、接着剤層の縁よりも外側にはみ出した部分は、放射線硬化性樹脂の光重合物を含有するが、電気部品の真裏の部分は光重合する前の放射線硬化性樹脂を含有している。電気部品の真裏の部分は放射線硬化性樹脂も熱硬化性樹脂も重合していないから、電気部品を基板に仮固定する力は弱く、電気部品は基板から剥がすことが可能である。
【0011】
本発明の電気装置は、電気部品付き基板を加熱した後の状態であって、接着剤層に含有される熱硬化性樹脂は、電気部品の縁から外側にはみ出した部分と、基板と電気部品の間の部分の両方で熱重合物となり、接着剤層全体が硬化しているが、硬化後の接着剤層のうち、電気部品と基板との間の部分は、光重合していない放射線硬化性樹脂を含有する。
【発明の効果】
【0012】
電気部品を機械的に接続する時に、電気部品の位置ずれが起こらないので、信頼性の高い電気装置が得られる。電気部品を機械的に接続する時には、接着剤層の電気部品の裏面に位置する部分は、放射線硬化型樹脂が重合しておらず、流動性が高いので、従来のように接着剤層全体を半硬化させた場合と比べて、小さい押圧力で電気部品の端子を基板のランドに当接させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)の符号10は本発明に用いる基板の一例を示しており、基板10は基板本体11と、基板本体11表面に配置されたランド12とを有している。
基板10表面には、後述する電気部品が実装される実装領域14が1又は複数個設けられており、ランド12は実装領域14にそれぞれ配置されている。
【0014】
基板10は、ランド12が配置された側の面を上に向けて押圧台35上に配置されており、各実装領域14には、接着フィルム原反から切り取られた接着フィルムの小片からなる接着剤層20が配置されている。
【0015】
接着剤層20はバインダー21と、バインダー21中に分散された導電性粒子22とを有しており、バインダー21は熱硬化性樹脂と放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と含有している。接着剤層20は熱可塑性樹脂を含有することで室温でも接着性を有し、接着剤層20は基板10に向かって軽く押圧されることによって、接着剤層20が基板10に密着している。
【0016】
各実装領域14に実装される電気部品の大きさは決まっており、各実装領域14に貼付された接着剤層20の大きさは、その実装領域14に実装される電気部品の大きさよりも大きく切り取られており、後述するように位置合わせ後に電気部品を接着剤層20に載せた時に、接着剤層20が電気部品の周囲からはみ出すようにされている。
【0017】
図1(b)の符号15は半導体素子のような電気部品を示しており、この電気部品15は部品本体16と、部品本体16の底面に配置された端子17とを有している。
【0018】
この電気部品15を不図示の搭載ヘッドに保持させ、端子17が配置された底面を下側に向け、対応する実装領域14上に配置する。搭載ヘッドを移動させて、端子17が対応する実装領域14のランド12の真上に位置するように位置合わせをした後、搭載ヘッドを下降させて電気部品15を接着剤層20に接触させる。
【0019】
上述したように、接着剤層20は室温で接着性を有するから、この搭載ヘッド又は他の圧着ヘッドで電気部品15を接着剤層20に押し付け、電気部品15の底面を接着剤層20に密着させると、電気部品15は接着剤層20によって基板10に接着され、仮固定される。
【0020】
電気部品15を接着剤層20に接触させ、電気部品15を基板10に仮固定する工程を第一の仮固定工程とすると、第一の仮固定工程の後の状態では、接着剤層20中の熱硬化性樹脂と放射線硬化性樹脂は重合しておらず、接着剤層20の機械的強度が弱いので、位置あわせをやり直す場合や、電気部品15が不良の場合、電気部品15を接着剤層20から剥がすことが可能になっている。
【0021】
上述したように、接着剤層20は電気部品15の周囲にはみ出すようにされているから、電気部品15が仮固定された状態では、接着剤層20の電気部品15の縁からはみ出したはみ出し部分26で、電気部品15の全周が囲まれている(図3(a))。
【0022】
電気部品15が仮固定された基板10の上方には光源28が配置されている。光源28は電気部品15を透過しない波長の放射線29を放射するよう構成されており、この光源28から基板10の電気部品15が配置された側の面に向かって放射線29を照射すると、はみ出し部分26に放射線29が入射する(図1(c))
バインダー21中の放射線硬化性樹脂は、所定の波長領域の光で重合するものであって、その波長領域には上記放射線29の波長も含まれている。
【0023】
従って、はみ出し部分26に放射線29が入射すると、放射線硬化性樹脂は光重合して光重合物が生成される。上述したように接着剤層20は基板10に接着されており、放射線硬化性樹脂は、はみ出し部分26が基板10に密着したまま光重合するから、はみ出し部分26内部の放射線硬化性樹脂の光重合物が基板10に固定され、電気部品15は、はみ出し部分26に光重合物が生成されることで基板10に固定される。
【0024】
はみ出し部分26に放射線29を入射させ、光重合物を生成して電気部品15を固定する工程を第二の仮固定工程とすると、第二の仮固定工程では、放射線29は電気部品15にも入射するが、その放射線29は電気部品15を透過せずに吸収又は反射される。従って、接着剤層20のうち、電気部品15の真裏に位置する部分の放射線硬化性樹脂は光重合しない。
【0025】
図1(d)、図3(b)の符号2は、第二の仮固定工程後の電気部品付き基板を示しており、この電気部品付き基板2の上方には押圧ヘッド30が配置されている。
【0026】
押圧ヘッド30の一面にはゴム製又は金属製の当接部32が設けられており、押圧ヘッド30を下降させて当接部32を電気部品15に接触させ、押圧ヘッド30を更に下降させて電気部品15を押圧し、電気部品15と基板10の間に、第一の仮固定のときよりも大きい押圧力を加える。
【0027】
接着剤層20aのうち、電気部品15の真裏位置には放射線29が照射されておらず、その真裏位置の部分は放射線硬化性樹脂の光重合物を含有しない。従って、接着剤層20aの電気部品15の真裏位置の部分は、バインダー21の流動性が維持されており、上記押圧力によってバインダー21が押し退けられる。
【0028】
このとき、バインダー21を昇温させておけば、バインダー21中の熱可塑性樹脂が軟化して流動性がより高くなるので、小さい押圧力でバインダー21が押し退けられる。
【0029】
上述したように、はみ出し部分26は内部の放射線硬化性樹脂の光重合物が基板10に固定されており、はみ出し部分26は電気部品15の周囲に位置するから、バインダー21が押し退けられるときに、電気部品15にどの方向に水平移動する力が加わっても、電気部品15は位置ずれせずに、真下に押し付けられる。
【0030】
端子17はランド12の真上に位置するから、電気部品15が位置ずれせずに真下に押し付けられると、端子17がランド12に直接又は導電性粒子22を介して当接され、電気部品15と基板10とが電気的に接続される。
【0031】
押圧ヘッド30には加熱手段33が設けられ、当接部32は加熱手段33によって加熱されており、熱伝導によって接着剤層20aが加熱され、熱硬化性樹脂の硬化温度以上に昇温すると、バインダー21、27中の熱硬化性樹脂が加熱によって重合して熱重合物となり、電気部品15と基板10とが電気的に接続された状態で固定される。
【0032】
図2の符号1は、熱重合物が生成された接着剤層25によって、電気部品15が固定された状態の電気装置を示しており、基板10と電気部品15は電気的に接続されているだけでなく、接着剤層25によって機械的に接続されている。
【0033】
電気部品15の裏面位置では、接着剤層25が基板10と電気部品15が密着したまま、バインダー24の熱硬化性樹脂が熱重合しているから、電気部品15と基板10は強固に接続されている。従って、電気部品15や基板10が接着剤層25から剥がれ難い。
【0034】
尚、はみ出し部分26の熱硬化性樹脂は熱重合していなくてもよいし、電気部品15の裏面位置で熱硬化性樹脂を熱重合させる時に、はみ出し部分26も一緒に加熱して熱硬化性樹脂を熱重合させてもよい。
【0035】
以上は、平面形状が電気部品15の平面形状よりも大きい接着剤層20を用い、電気部品15の裏面全部と、その周囲に接着剤層20を位置させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
端子17とランド12が当接する部分に接着剤層20が位置するのであれば、図4に示したように、電気部品15の裏面の一部に接着剤層20が配置されていない部分があってもよい。
【0037】
また、はみ出し部分26は電気部品15の全周を取り囲む必要も無く、一部がかけてもよく、電気部品15の種類や押圧条件毎に電気部品15の移動しやすい方向が分かっていれば、移動を妨げるようにはみ出し部分26を設ければよい。
【0038】
しかし、電気部品15の位置ずれ方向が予測できない場合には、電気部品15が移動する力がどの方向に加わってもよいように、電気部品15の平面形状の縁を構成する各辺から、接着剤層の一部がはみ出るようにすることが好ましく(図4)、より好ましくは、図3(a)に示したように、電気部品15の全周をはみ出し部分26で取り囲むことである。
【0039】
以上は1枚の接着フィルムの小片で接着剤層20を構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数枚の接着フィルムの小片で1つの接着剤層20を構成してもよい。
【0040】
また、電気部品15の端子17が配置された側の面に、電気部品15の縁からはみ出すよう接着剤層20を形成してから、該電気部品15の接着剤層20が形成された側の面を基板10に押し当てて、基板10と電気部品15との間に接着剤層20を位置させてもよい。
【0041】
また、接着剤層20はフィルム状のものに限定されず、ペースト状のものを基板10の実装領域14に塗布して接着剤層としてもよい。この場合、接着剤層20はペースト状であってもよいし、接着剤を塗布後、第二の仮固定の前に接着剤中の溶剤を蒸発除去して、固化させてもよい。
【0042】
以上は1つの実装領域14に対し、1つの接着剤層20を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の実装領域14に亘って大面積の接着剤層20を形成してもよい。
【0043】
基板10の種類も特に限定されず、リジッド基板、フレキシブル基板等を用いることもできる。また、基板10と電気部品15の接続以外にも、電気部品15と他の電気部品との接続に本願の実装方法を用いることができる。
電気部品15の種類は特に限定されず、半導体素子(ベアチップ、パッケージIC)、抵抗素子等種々のものを用いることができる。
【0044】
複数の電気部品15を同じ基板10に実装する場合には、各電気部品15に一つずつ押圧ヘッド30を押圧して電気部品15の機械的接続を行ってもよいし、一つの押圧ヘッド30で複数の電気部品15を一度に押圧して電気部品15の機械的接続を行ってもよい。
【0045】
押圧ヘッド30の当接部32を弾性材料で構成しておけば、電気部品15の高さが異なる場合であっても、一つの押圧ヘッド30で複数の電気部品15を一度に押圧することができる。
【0046】
押圧ヘッド30の当接部32は、ゴム(エラストマー)のような弾性材料又は金属のような硬質材料のいずれで構成してもよいが、当接部32が弾性材料で構成された場合、当接部32を硬質材料で構成された場合に比べて、電気部品15の位置ずれが起こりやすいので、本願が特に有効である。
【0047】
以上は、押圧ヘッド30に加熱手段を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、加熱手段は押圧台35に設けてもよいし、押圧台35と押圧ヘッド30の両方に設けてもよい。
【0048】
押圧台35に設けた加熱手段により接着剤層20aの加熱を行う場合には、加熱を行う工程と、第一、第二の仮固定工程とで、押圧台を変えてもよい。
また、押圧ヘッド30で電気部品15を押圧する時に、電気部品15が載せられた基板10を高温に加熱された炉の内部に配置し、該炉の内部で電気部品15の押圧を行ってもよい。
【0049】
放射線硬化性樹脂は、所定の波長の放射線で硬化するものであれば特に限定されないが、例えば分子内に二重結合((メタ)アクリル系二重結合)を有する樹脂であり、より具体的には、1,4ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスロトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイト付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマー類、ウレタンアクリレートオリゴマー類、エポキシアクリレート類、オリゴエステルアクリレート類、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系化合物、ポリマーの側鎖にカルボン酸や水酸基のような反応性官能基を有するポリマーに、グリシジルメタクリレートやメタクリロイルオキシエチルイソシアネートのように分子内に二重結合とポリマー側鎖に官能基を有するモノマー(オリゴマー)を反応させて得た、分子内側鎖に(メタ)アクリレート基を導入したポリマー(オリゴマー)等がある。
【0050】
これらの放射線硬化性樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよく、また、放射線硬化性樹脂の感度を上げるために、バインダー21には光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0051】
放射線硬化性樹脂が重合する波長領域は特に限定されないが、可視光領域で重合するものを用いると、接着剤層20の搬送及び保存や、電気装置1を製造する工程で使用する照明に特殊なものを使用する必要があるので、放射線硬化性樹脂は紫外線領域で重合するものが好ましい。
【0052】
熱硬化性樹脂も特に限定されないが、例えば、分子内にエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂類、環状構造にエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂類、一価または多価カルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂類、1級または2級アミン化合物とエピクロルヒドリンから誘導されるグリシジルアミン基を有するエポキシ樹脂類、分子内にトリアジン骨格を持つエポキシ樹脂類、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂のようにゴム材料内にエポキシ基を含有させた材料、(メタ)アクリル樹脂内にグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどのようにグリシジル基を有するアクリル樹脂等を用いることができる。
【0053】
これらの熱硬化性樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、熱硬化性樹脂の硬化剤をバインダー21に添加させてもよい。
【0054】
上述したように、バインダー21に熱可塑性樹脂を含有させると、第一の仮固定の時の接着剤層20の接着性が向上する。熱可塑性樹脂も特に限定されないが、例えばフェノキシ樹脂、アクリルゴム等を用いることができる。熱可塑性樹脂は1種類を単独で接着剤に含有させてもよいし、2種類以上を混合して接着剤に含有させてもよい。
【0055】
放射線29は電気部品15を透過しない波長のものであれば特に限定されず、例えば、電気部品15がシリコンチップ(ベアチップ)の場合は、赤外線やX線のようにシリコンを透過する波長の放射線は使用できないが、可視光、紫外線のようにシリコンを透過しない波長の放射線を使用することができる。
【0056】
また、ベアチップがセラミックやエポキシ樹脂でパッケージングされたパッケージICで電気部品15が構成された場合は、可視光や紫外線のように、セラミックやエポキシ樹脂を透過しない波長の放射線を使用することができる。
【0057】
また、電気部品15が広い波長領域に対して透明な場合には、マスクで電気部品15を覆うか、レーザー光を用いることで、はみ出し部分26だけに選択的に放射線29を入射させてもよい。
【実施例】
【0058】
<実施例>
放射線硬化性樹脂であるトリメチロールプロパントリアクリレートを5gと、光重合開始剤である日本チバ・ガイギー(株)社製の商品名「イルガキュア184」を0.1gと、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)社製の商品名「エピコート828」)を20gと、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂(東都化成(株)社製の商品名「YP50」)を10gと、熱硬化性樹脂の硬化剤(旭化成ケミカルズ(株)社製の商品名「HX3941HP」)を40gと、導電性粒子であるニッケル粒子(直径5μm、球形)を10gとを混合し、実施例の接着剤を作成した。この接着剤は茶色〜灰褐色であり、室温でペースト状であった。
【0059】
<比較例>
上記実施例の接着剤の配合から、放射線硬化性樹脂と、光重合開始剤を除き、更に、導電性粒子の添加量を10gから8gに変えた以外は、上記実施例と同じ条件で比較例の接着剤を作成した。この接着剤は室温でペースト状であった。
上記実施例と比較例の接着剤を用いて下記に示す評価試験を行った。
【0060】
<評価試験>
基板10の実装領域14に、電気部品15を載せた時に電気部品15の周囲からはみ出すように、実施例の接着剤を塗布して接着剤層20を形成し、該接着剤層20に電気部品15であるシリコンチップ(ベアチップ)を載せた。
【0061】
次いで、シリコンを透過しない放射線である紫外線を基板10の電気部品15が載置された面に照射した後(1000mJ/cm2)、当接部32がゴム製の押圧ヘッド30で電気部品15が載せられた基板10を加熱押圧した。
得られた電気装置1について、X線観察装置により電気部品15の位置ずれ量を測定した(試験数、50個)。
【0062】
ここでは電気部品15の平面形状は四角形であり、位置ずれ量は、電気部品15の四辺のうち、互いに平行な二辺の伸びる方向(X軸方向)と、互いに平行な他の二辺の伸びる方向(Y軸方向)について測定した。
位置ずれ量の測定結果を下記表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1から明らかなように、実施例の接着剤を用いて、放射線照射によりはみ出し部分26の放射線硬化型樹脂を重合させてから、電気部品15の機械的接続を行った時には、位置ずれ量が小さいことがわかる。
【0065】
これに対し、上記比較例の接着剤を用いて、放射線照射の変わりに、熱硬化性樹脂が完全に硬化しない程度の低温で加熱して接着剤を半硬化させた後、電気部品の機械的接続を行ったところ、表1の比較例の欄に記載したように、X軸方向もY軸方向も位置ずれ量が大きかった。
【0066】
以上の結果から、接着剤層の電気部品15の周囲にはみ出した部分を放射線照射によって硬化させることで、電気部品15の位置ずれが小さくなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)〜(d):本発明の実装方法を説明する断面図
【図2】電気装置を説明する断面図
【図3】(a):放射線照射前の状態を示す平面図、(b):放射線照射後の状態を示す平面図
【図4】接着剤層の配置の他の例を説明する平面図
【符号の説明】
【0068】
1……電気装置 2……電気部品付き基板 10……基板 15……電気部品 20……接着剤層 21……バインダー 22……導電性粒子 26……はみ出し部分 29……放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と放射線硬化性樹脂とが含有された接着剤層を用い、
前記接着剤層と、基板と、電気部品とを、前記接着剤層が前記基板と、前記電気部品の間に位置し、前記接着剤層の一部が前記電気部品の縁よりも外側にはみ出す状態にし、
前記接着剤層のはみ出した部分に放射線を照射した後、
前記接着剤層を加熱しながら、前記電気部品と前記基板の間に押圧力を加え、前記電気部品と前記基板とを機械的に接続する電気部品の実装方法。
【請求項2】
前記放射線として前記電気部品を透過しない波長のものを用い、
前記放射線の照射は、前記基板の前記電気部品が配置された側の面から行い、前記はみ出した部分と一緒に、前記電気部品にも前記放射線を入射させる請求項1記載の実装方法。
【請求項3】
平面形状が前記電気部品の平面形状よりも大きい接着剤層を用い、
前記接着剤層を前記基板と前記電気部品の間に位置させる際に、
前記はみ出した部分で前記電気部品の縁を囲う請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の実装方法。
【請求項4】
電気部品が接着剤層によって仮固定された電気部品付き基板であって、
前記接着剤層は放射線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂を含有し、
前記接着剤層の一部は前記基板と前記電気部品の間に位置し、他の一部は前記電気部品の縁よりも外側にはみ出し、
前記接着剤層の前記電気部品の縁よりも外側にはみ出した部分は、前記放射線硬化性樹脂が放射線照射によって重合した光重合物を含有する電気部品付き基板。
【請求項5】
電気部品が接着剤層によって基板に固定された電気装置であって、
前記接着剤層は放射線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂とを含有し、一部が前記電気部品と前記基板の間に位置し、他の一部が前記電気部品の縁よりも外側にはみ出し、
前記接着剤層の前記電気部品の縁よりも外側にはみ出した部分は、前記放射線硬化性樹脂が放射線照射によって重合した光重合物を含有し、
前記接着剤層の前記電気部品と前記基板との間の部分は、前記熱硬化性樹脂が加熱によって重合した熱重合物を含有する電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−242752(P2007−242752A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60600(P2006−60600)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】