説明

実装構造体の製造方法

【課題】モジュールの小型化のため、SMD部品と半導体チップの部品間隔を狭くし、両部品を効率よく混載実装することができる小面積の実装構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】回路基板101の第一の電極部103に、SMD部品113の電極部114と接続させるための電極接合材105を形成する工程と、ICチップ107が搭載される領域に絶縁性樹脂110を供給する工程と、ICチップ107を絶縁性樹脂110が供給された領域に搭載すると共に、絶縁性樹脂110を外周囲に選択的に流し広げる工程と、SMD部品113を電極接合材105上に搭載する工程と、電極接合材105と絶縁性樹脂110とを一括して加熱する工程とを有する製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路用プリント基板(以下、電子回路用プリント基板を単に回路基板と称するが、この回路基板とはインタポーザや電子部品が装着される他の部品などの被装着体を意味する)に電子部品を実装してなる実装構造体を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電子回路基板は、あらゆる製品に使用されるようになり、その性能が向上し、回路基板上で用いられる周波数が高くなっている。高周波を使用する電子機器の実装方法としては、インピーダンスが低くなるフリップチップ実装が適している。
【0003】
また、携帯機器の増加に伴い、ICチップをパッケージではなく、裸のまま(ベアIC)で回路基板に搭載するフリップチップ実装が要求されている。また、フリップチップ以外にもCSP(Chip Size Package),BGA(Ball Grid Array)などが用いられるようになってきている。
【0004】
また近年、モジュールの小型化のため、フリップチップ実装部品とSMD部品(表面実装部品)とを1つの回路基板上に混載して実装する構造体や製造方法が求められてきている。
【0005】
従来、半導体部品(ICチップ)などのフリップチップ実装部品とSMD部品とを1つの回路基板上に混載して実装する構造体の製造方法として、SMD部品の実装に使用したはんだのフラックスによる電極表面の汚染を防止するために、初めに半導体部品をフリップチップ実装し、エンボスマスクなどを用いた特殊な印刷によってはんだを供給し、SMD部品を実装してリフロー炉などにより加熱する方法が行われている。
【0006】
図3(a)〜(e)は電子機器の回路基板にICチップなどのフリップチップ実装部品とSMD部品とを1つの回路基板上に混載して実装する従来の構造体の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0007】
図3(a)は回路基板上にICチップなどの半導体をフリップチップ実装する工程、図3(b)はフリップチップ実装された半導体を絶縁性樹脂で封止する工程、図3(c)はSMD部品を実装するためにエンボスマスクを用いて電極接合材を塗布する工程、図3(d)は塗布された電極接合材上にSMD部品を実装する工程、図3(e)はリフロー炉などを用いて電極接合材を加熱した後の構造図をそれぞれ示している。
【0008】
図3(a)〜(e)において、301は回路基板、302は回路基板301の電極部、303は回路基板301の第一の電極部、304は回路基板301の第二の電極部、305は電極接合材、307は第二の電子部品(ICチップ)、308は第二の電子部品307の電極部、309は突起電極(バンプ)、312は実装ツール、313は第一の電子部品(SMD部品)、314は第一の電子部品313の電極部、315は絶縁性樹脂、316は絶縁性樹脂塗布ツール、317は電極接合材塗布用エンボスマスクである。
【0009】
まず、図3(a)に示すように、例えばICチップなどの第二の電子部品307の電極部308にバンプ309を形成しておき、実装ツール312を用いて回路基板301の第二の電極部304に対応させて、第二の電子部品307のバンプ309を位置合わせして実装する。
【0010】
そして、図3(b)に示すように、例えばニードルのような絶縁性樹脂塗布ツール316を用いて絶縁性樹脂315を、第二の電子部品307と回路基板301間に供給して加熱硬化させる。
【0011】
次に、図3(c)に示すように、電極接合材塗布用エンボスマスク317を用いて、前記バンプ309に対応する第二の電極部304以外の回路基板301の第一の電極部303上に、電極接合材305を供給する。
【0012】
そして、図3(d)に示すように、回路基板301の第一の電極部303上に形成された電極接合材305に対応させて、第一の電子部品313の電極部314を位置合わせして実装する。
【0013】
最後に、リフロー炉などを用いて電極接合材305を加熱し、回路基板301の第一の電極部303と第一の電子部品313の電極部314とを電気的に接合することにより、図3(e)に示す構造体が作製される。
【0014】
図4(a)〜(c)はICチップとSMD部品間の距離が狭くなるように回路基板の電極部を狭い構造とした場合にICチップとSMD部品を混載して実装する従来の構造体の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0015】
図4(a)〜(c)において、401は回路基板、402は回路基板401の電極部、403は回路基板401の第一の電極部、404は回路基板401の第二の電極部、407は第二の電子部品(ICチップ)、408は第二の電子部品407の電極部、409は突起電極(バンプ)、412は実装ツール、415は絶縁性樹脂、416は絶縁性樹脂塗布ツールである。
【0016】
まず、図4(a)に示すように、第二の電子部品407の電極部408にバンプ409を形成しておき、回路基板401の第二の電極部404に相対するように、バンプ409を位置合わせして実装する。
【0017】
そして、図4(b)に示すように、例えばニードルのような絶縁性樹脂塗布ツール416を用いて絶縁性樹脂415を、第二の電子部品407と回路基板401間に供給する。
【0018】
次に、絶縁性樹脂415を加熱硬化させると図4(c)に示す状態になる。この状態では、バンプ409に対応する第二の電極部404以外の第一の電極部403上に、絶縁性樹脂415が乗り上げてしまい、SMD部品を実装できなくなる。
【0019】
絶縁性樹脂415として、低い粘度(例えば、100Pa・s以下)の絶縁性樹脂を用いると、絶縁性樹脂塗布ツール416を用いて供給する際に、ダレ広がってしまい第一の電極部403上に付着してしまう乗り上げが発生することが多くなる。
【0020】
また、第一の電極部403を高くして絶縁性樹脂415の乗り上げを減らそうとした場合、部品間隔が狭い場合には、第二の電子部品407を実装する際に第一の電極部403に実装ツール412が衝突してしまうため、簡単には第一の電極部403を高くすることはできない。
【0021】
前記混載実装時のタクトの短縮化や信頼性の向上を目的として、SMD部品を先に実装した後、封止樹脂を塗布し、最後にICチップを実装して、リフローなどにより一括樹脂硬化する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0022】
また、熱硬化性接着剤を塗布した状態でICチップを加熱加圧して実装し、熱硬化性接着剤を半硬化状態にした後、SMD部品用の電極接合材を塗布してSMD部品を実装し、最後にリフローにより一括樹脂硬化する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0023】
これらの方法において使用される先塗布の熱硬化接着剤は、一般的に粘度が高い(例えば、100Pa・s以上)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2004−356549号公報
【特許文献2】特開2002−299809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、ICチップを実装した後にSMD部品を実装する方法では、ICチップを封止するための絶縁性樹脂が回路基板上におけるSMD部品の実装用電極上まで濡れ広がり、電極表面を汚染しないように、ICチップとSMD部品間の距離を広げる必要があるが、エンボスマスクの設計上、部品間距離は0.5mm以上必要であって部品間距離を狭くすることができない。
【0026】
また、逆にSMD部品を先に実装した場合でも、ICチップの方がSMD部品より部品高さが低いことが多いため、部品高さの高いSMD部品に隣接してICチップを実装することは、ICチップの実装ツールでは、ICチップの保持面をICチップよりも大きくしており、垂直に降下させることが難しいため、SMD部品に当たらないように十分な距離が必要となることから部品間距離を狭くすることができない。
【0027】
本発明は、前記従来技術の課題を考慮して、低い粘度の絶縁性樹脂を用いた場合でも、回路基板における半導体からなる電子部品が実装される電極と受動部品からなる電子部品が実装される電極とを狭い間隔で形成し、両電子部品の部品間距離を従来よりも狭くし、モジュールを小型化できる実装構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、受動部品からなる第一の電子部品と半導体からなる第二の電子部品とが同一回路基板面上に混載される実装構造体の製造方法であって、少なくとも第一の電極と第二の電極とが設けられた回路基板に対して少なくとも前記第一の電極上に電極接合材を形成する工程と、前記第二の電子部品が搭載される前記回路基板上に絶縁性樹脂を供給する工程と、前記第二の電子部品の電極を前記回路基板上の前記絶縁性樹脂が供給された領域の前記第二の電極上に搭載すると共に、前記絶縁性樹脂を前記第一の電極の周囲に選択的に流し広げる工程と、前記第一の電子部品を電極接合材が形成された前記第一の電極上に搭載する工程と、前記絶縁性樹脂と前記電極接合材とを一括して加熱する工程とを有することを特徴とする。
【0029】
この方法により、SMD部品などの第一の電子部品接合用の電極接合材を回路基板の電極上に形成し、ICチップなどの第二の電子部品が搭載される領域に絶縁性樹脂を供給し、第二の電子部品を絶縁性樹脂の上から実装して電気的接合を得ると共に、絶縁性樹脂を電極接合材が存在する領域以外に選択的に流し広げて第一の電子部品を電極接合材の上へ実装して、絶縁性樹脂と電極接合材とを一括して加熱硬化することによって、第一の電子部品と第二の部品との間隔を狭く混載実装することができるため、小面積のモジュールを製造することができる。
【0030】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の実装構造体の製造方法において、回路基板における第一の電極と第二の電極との少なくとも一方の周囲を、該電極面より低くしたことを特徴とする。
【0031】
この方法により、回路基板を低くして凹部を設けることにより、絶縁性樹脂を流し広げる際に、より選択的に樹脂を流し広げることができるため、電極接合材への干渉を減らすことができる。
【0032】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の実装構造体の製造方法において、絶縁性樹脂として、粘度が1〜70Pa・sの樹脂を用いたことを特徴とする。
【0033】
この方法により、絶縁性樹脂を流し広げる際に、絶縁性樹脂の粘度が低いため、電極接合材が塗布された第一の電極上へ濡れ上がりにくくなるため、電極接合材への干渉を減らすことができる。
【0034】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項に記載の実装構造体の製造方法において、第二の電子部品の電極を回路基板における絶縁性樹脂が供給された領域の第二の電極上に搭載する工程において、第二の電子部品の電極上に形成されたバンプを、超音波を印加しながら第二の電極上に搭載することを特徴とする。
【0035】
この方法により、第二の電子部品の実装を超音波で金属接合させて確実に接続し、さらに超音波の振動によって絶縁性樹脂の流れ広がりを促進し、良好に樹脂を流し広げることにより、電極接合材への干渉を減らすことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、SMD部品などの第一の電子部品接合用の電極接合材を回路基板の電極上に形成し、ICチップなどの第二の電子部品が搭載される領域に絶縁性樹脂を供給し、第二の電子部品を絶縁性樹脂の上から実装して電気的接合を得ると共に、絶縁性樹脂を電極接合材が存在する領域以外に選択的に流し広げて第一の電子部品を電極接合材の上へ実装して、絶縁性樹脂と電極接合材とを一括して加熱硬化することによって、第一の電子部品と第二の部品との間隔を狭く混載実装することができるため、小面積のモジュールを製造することができる実装構造体の製造方法を提供することができる。
【0037】
さらに、絶縁性樹脂を流し広げる際に、電極接合材への干渉を減らすことができ、第一の電子部品と第二の電子部品との間隔を狭く混載実装することが可能な実装構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)〜(e)は本発明の実施の形態1の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【図2】(a−1),(a−2),(b−1),(b−2)は本発明の実施の形態2の実装構造体の製造に用いる回路基板のICチップ側から見た平面図、(c)は本実施の形態2の実装構造体の断面模式図
【図3】(a)〜(e)は従来の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【図4】(a)〜(c)は従来の他の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、第一の電子部品(例えば、抵抗やコンデンサ,コイルなどのSMD部品)と第二の電子部品(例えば、ICチップ)とを回路基板に実装して作製する実装構造体の製造方法について説明する。
【0041】
図1(a)〜(e)は本実施の形態1の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図であり、101は回路基板、102は回路基板101の電極部、103は回路基板101の第一の電極部、104は回路基板101の第二の電極部、105は電極接合材、106は電極接合材塗布用マスク、107は第二の電子部品であるICチップ、108はICチップ107の電極部、109は突起電極(バンプ)、110は絶縁性樹脂、111は絶縁性樹脂塗布ツール、112は実装ツール、113は第一の電子部品であるSMD部品、114はSMD部品113の電極部である。
【0042】
図1(a)に示すように、回路基板101上の第一の電極103に電極接合材塗布用マスク106を用いて、電極接合材105をスクリーン印刷法により供給する。具体的には、所定のパターンで設けられた開口部を有する電極接合材塗布用マスク106を回路基板101上に配置し、電極接合材塗布用マスク106に対してスキージを押し付けながら移動させて、電極接合材105の厚さが均一になるように印刷塗布する。電極接合材塗布用マスク106はメタルマスク(または金属製)であること、また、スキージは金属製であることが好ましい。印刷後に、電極接合材塗布用マスク106は回路基板から除去する。
【0043】
なお、スクリーン印刷法に代えて、他の方法、例えばインクジェット,ディスペンサー,含浸,スピンコートなどにより、電極接合材を回路配線基板の所定の領域に供給するようにしてもよい。
【0044】
回路基板101として、セラミック多層基板,FPC(フレキシブルプリント基板),ガラス布積層エポキシ基板(ガラエポ基板)やガラス布積層ポリイミド樹脂基板、あるいはアラミド不織布エポキシ基板(例えば、パナソニック株式会社製のアリブ「ALIVH」(登録商標)として販売されている樹脂多層基板)などが用いられる。
【0045】
なお、回路基板101上の第一の電極部103および第二の電極部104として、例えば、Cuの上にNiをメッキして表面をAuのフラッシュメッキしたものを使用する。また、ICチップ107やSMD部品113が実装される以外の電極部102は、前記電極部103,104と材質が同じでも、異なるものであってもよい。
【0046】
従来の回路基板は、第一の電極と第二の電極の距離を0.5mm以上に設計しているが、本実施の形態では0.3mmで設計された回路基板を使用した。従来の回路基板において、0.5mm以上に設計している理由は、印刷用のエンボスマスクの設計限界値であることや、SMD部品とICチップとの部品間隔が狭くなると、電極間でショートする可能性があるためである。
【0047】
本実施の形態では、エンボスマスクが不要になる上、流し広げた絶縁性樹脂110が電極間を絶縁させるため、電極間距離を0.5mm以下の距離にすることが可能になる。
【0048】
電極接合材105として、クリームはんだ,導電性ペーストあるいはナノペーストのように金属接合するものが用いられる。
【0049】
クリームはんだのはんだ組成としては、例えば、スズ系合金単一またはそれら合金の混合物、具体的にはSn−Bi系,Sn−In系,Sn−Bi−In系,Sn−Ag系,Sn−Cu系,Sn−Ag−Cu系,Sn−Ag−Bi系,Sn−Cu−Bi系,Sn−Ag−Cu−Bi系,Sn−Ag−In系,Sn−Cu−In系,Sn−Ag−Cu−In系、およびSn−Ag−Cu−Bi−In系からなる群から選ばれる合金組成を用いることができる。特にSn−Ag系あるいはSn−Ag−Cu系の群から選ばれる合金組成を用いることが好ましい。
【0050】
導電性ペーストとして、絶縁性樹脂に単一の金属(例えば、Au,Ag,Cuなどや合金系、複数の金属が混合しているもの、あるいは前記はんだ組成でもよい)を導電性粒子として配合したものが用いられる。
【0051】
ナノペーストには、ナノミクロンサイズの金属粒子(例えばAu,Ag,Cuなどを分散剤に混合したもの)を用いて、加熱により分散剤を気化させて金属電極同士を金属接合させる。
【0052】
次に、図1(b)に示すように、絶縁性樹脂110を、例えば、ディスペンサーやインクジェット方式により絶縁性樹脂塗布ツール111によって、回路基板101上におけるICチップ107が搭載される領域および/または第二の電極部104上に供給する。
【0053】
絶縁性樹脂110として、絶縁性熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,アクリル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド,フェノール樹脂,ポリエステル樹脂,シリコーン樹脂,オキセタン樹脂など、様々な樹脂を含むことができる)を用いる。これらの絶縁性熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記絶縁性熱硬化性樹脂の中では、特にエポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂には、ビスフェノール型エポキシ樹脂,多官能エポキシ樹脂,可撓性エポキシ樹脂,臭素化エポキシ樹脂,グリシジルエステル型エポキシ樹脂,高分子型エポキシ樹脂の群から選ばれるエポキシ樹脂も用いることができる。その中でも、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂,ナフタレン型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好適に用いられる。また、これらを変性させたエポキシ樹脂も用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、場合によっては絶縁性熱可塑性樹脂(例えば、ポニフェニレンサルファイド(PPS),ポリカーボネイト,変性ポリフェニレンオキサイド(PPO)など)を使用することもできる。また、絶縁性熱硬化性樹脂に絶縁性熱可塑性樹脂を混合したものなども使用できる。熱可塑性樹脂のみを使用する場合には、最初は加熱して一旦軟化させた後、加熱を停止して自然冷却させることにより硬化させる。
【0056】
一方、絶縁性熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を混合したものを使用する場合には、熱硬化性樹脂の方が支配的に機能するため、熱硬化性樹脂のみの場合と同様に加熱することにより硬化させる。
【0057】
本実施の形態では、代表例として絶縁性熱硬化性樹脂を用いた場合について説明する。
【0058】
上記のような絶縁性熱硬化性樹脂と組み合わせて用いる硬化剤としては、チオール系化合物,変性アミン系化合物,多官能フェノール系化合物,イミダゾール系化合物、および酸無水物系化合物の群から選ばれる化合物を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施の形態において、第二の電子部品の一例としてのICチップ107の表面には、回路配線あるいは電極部108が形成されている。本例では電極部108としてAlパッドの電極を形成している。なお、電極の材質はAuやCuなどでもよく、また下地としてNiなどのメッキをした上に金属をメッキした電極でもよい。
【0060】
ICチップ107上の電極部108に、ワイヤボンディング装置などを用いて、金属線(例えば、金ワイヤ、あるいはスズ,アルミニウム,銅、またはこれらの金属に微量元素を含有させた合金のワイヤなど)に熱と超音波を加えて電極部108と接合させ、接合部の面積が大きくなるように押し付けながら、最後は引きちぎり、先端が細くなるようにバンプ(突起電極)109を形成する。
【0061】
次に、図1(b)に示すように、電子部品搭載装置において、部品保持部材の先端の熱せられた実装ツール112により、バンプ109が電極部108上に形成されたICチップ107を吸着保持しつつ、該ICチップ107を、前記前工程で準備された回路基板101に対して、ICチップ107のバンプ109に対応する回路基板101の第二の電極部104上に位置するように位置合わせする。その後、ICチップ107を回路基板101に押圧実装する。この位置合わせには公知の位置認識動作を使用する。
【0062】
前記押圧実装する際の荷重は、バンプ109の頭部が回路基板101の電極部104に接触し変形して導通が得られる程度の荷重でよい。また、実装ツール112の温度は、絶縁性樹脂110が完全に硬化する温度より低く、好ましくは絶縁性樹脂110の粘度が最も低下する温度に設定するとよい。
【0063】
ICチップ107の実装後は、図1(c)に示すように、絶縁性樹脂110は回路基板101上の電極接合材105が塗布された第一の電極部103の周辺まで濡れ広がる。この際、濡れ広がりは、最大で電極接合材105に接してもよいが、電極接合材105の上を覆うことがないようにする。
【0064】
本実施の形態では、電極接合材105の粘度に比べて、絶縁性樹脂110の粘度が低くい上、ICチップ107を実装する際に絶縁性樹脂110が硬化開始する高い温度に設定しないことにより、電極接合材105を完全に覆うことはない。
【0065】
次に、図1(d)に示すように、チップ実装機などを用いて、第一の電子部品(受動部品)であるSMD部品113の電極部114が対応する回路基板101上の電極接合材105が塗布された第一の電極部103に位置するように位置合わせし、その後、SMD部品113を回路基板101に実装する。この位置合わせには公知の位置認識動作を使用する。
【0066】
次に、加熱炉、例えばオーブンやリフロー炉などを用いて、絶縁性樹脂110が完全に硬化する温度以上で、かつ電極接合材105がSMD部品113の電極部114と回路基板101の電極部103とを電気的に導通する温度まで加熱し、図1(e)に示すような構造体が作製される。
【0067】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る第一の電子部品(例えば、抵抗やコンデンサ,コイルなどのSMD部品)と第二の電子部品(例えば、ICチップ)とを回路基板に接合して作製する実装構造体の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、図1を参照して説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0068】
本実施の形態2では、製造方法および装置などは図1を参照して説明した実施の形態1と同様のものが用いられるが、使用する回路基板のみが実施の形態1の場合と異なる。
【0069】
図2(a−1),(b−1)は本実施の形態2で使用する回路基板の平面図、図2(a−2),(b−2)は図2(a−1),(b−1)においてSMD部品を実装した後の回路基板の平面図、図2(c)は本実施の形態2の実装構造体の断面模式図である。
【0070】
実施の形態2の回路基板101が実施の形態1で使用した回路基板と異なる構成は、第一の電極部103の周辺部と第二の電極104の周辺部およびICチップ107が実装される回路基板101上の領域を電極部より低くして凹部215を設けた点である。
【0071】
図2(b−1)に示す構成では第一の電極部103が2辺において、図2(a−1)に示す構成と異なり方向が90°回転して配置されている。ただし、これは一構成例であって、1〜4辺をこのような配置にしてもよい。
【0072】
前記高さの差により、ICチップ107を実装した後の絶縁性樹脂110の広がりをコントロールすることができ、必要な部分に絶縁性樹脂を流すことができる(図2(c))。
【0073】
前記凹部215の深さは、深いほど効果が大きいが、回路基板101の本来の性質を変えないように、30〜150μmとすることが好ましい。
【0074】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、製造方法および装置などは図1に示した実施の形態1の場合と同様のものを用い、使用する電極接合材105としてクリームはんだを用いる。
【0075】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4では、製造方法および装置などは図1に示した実施の形態1の場合と同様のものを用い、使用する電極接合材105として導電性接着剤を用いる。
【0076】
一般的な導電性接着剤は、硬化温度が絶縁性樹脂と近いものが多く、例えば150〜200℃であり、工程の最後で一括硬化する際の温度を低くすることができる。
【0077】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5では、製造方法および装置などは図1に示した実施の形態1の場合と同様のものを用い、使用する絶縁性樹脂110として粘度が1〜70Pa・s程度の低粘度の絶縁性樹脂を用いる。
【0078】
一般的に用いられる半導体用先塗布の絶縁性樹脂は、塗布後形状保持のために粘度が高く、例えば100Pa・s以上であるが、本実施の形態5のように、粘度を70Pa・s以下にすることにより、ICチップ107を実装した後の絶縁性樹脂110の流動性が良くなる。
【0079】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6では、製造方法および装置などは図1に示した実施の形態1の場合と同様のものを用い、電子部品搭載装置において、ICチップ107を実装する際の加熱・加圧処理の際に、さらに超音波を印加しながら実装する。
【0080】
超音波を印加することにより、加熱・加圧処理を行うだけの場合に比べ、バンプ109と回路基板101の電極の電気的接続がより良くなる。具体的には、金属同士の接合が得られるようになる。
【0081】
次に、本発明の実施の形態の効果について、実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。
【0082】
(実施例)
本実施例において、第二の電子部品(半導体)であるICチップ107として、厚み300μm、6mmのSi基板の四辺にAlパッドの電極(サイズは70×70μm)が各辺36個あるものを使用した。このICチップ107の電極のうち、各辺パッド1個ずつ間隔をあけて、直径25μmのAu線を用いて、電極接合部の直径50μm、高さ65μm(先端にいくほど径が小さくなり、先端は尖っている)のバンプ109を作成した。このようにして、ICチップ107の各辺に18個のバンプを形成した。
【0083】
また、第一の電子部品(受動部品)であるSMD部品113として、0603サイズの角型チップ抵抗器の0Ω抵抗器(例えば、パナソニックエレクトロニックデバイス(株)製)を用いた。
【0084】
後述する比較例および実施例1,3〜5用の回路基板101には、ALIVH基板で厚み400μmのものを用い、前記ICチップ107の各電極に対応する箇所に、60μmサイズで、Cuの下地にNiとフラッシュAuメッキによる第二の電極部104を設けたものを使用した。なお、回路基板101の電極の中心とICチップ107の電極の中心が一致するように設計している。
【0085】
SMD部品113を実装するため、第二の電極部104から0.3mm間隔を空けて、0.5×0.3mmの2つの長方形の第一の電極部103を0.3mm離して設けた。第一の電極部103の材質は、第二の電極部104と同じものを用いた。
【0086】
実施例2の回路基板101には、上記と同じものを用いたが、図2(a−1)に示すように、第一の電極部103の周辺部と第二の電極104の周辺部およびICチップ107が実装される回路基板101上の領域を電極部より50μm低くして、回路基板101に凹部215を設けた。
【0087】
比較例として、市販のアンダーフィル(粘度8Pa・s)(ナミックス株式会社製)を使用した。
【0088】
実施例1〜3,5の絶縁性樹脂110として、エポキシ樹脂に酸無水物系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で60%混合したものを用いた。この材料の25℃での粘度は、E型粘度計を用いて測定した際、140Pa・sであった。
【0089】
実施例4の絶縁性樹脂110として、エポキシ樹脂に酸無水物系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で40%混合したものを用いた。この材料の25℃での粘度は、E型粘度計を用いて測定した際、70Pa・sであった。
【0090】
比較例および実施例1〜5のそれぞれにおいて、実装機と加熱圧着機、硬化炉(リフロー炉及びオーブン)を用いて試料(実装構造体)を作成した。その後、ICチップの1辺(36バンプ接続部+配線)分の抵抗値と0603部品の接続抵抗値およびせん断強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0091】
比較例および実施例1〜5のそれぞれにおける試料の作成方法は以下の通りである。
【0092】
(比較例)
前記構成のICチップ107を、図3の従来例のように回路基板に実装機を用いて210℃のツールで50N荷重を加えて実装し、アンダーフィルをディスペンサーで注入し、150℃のオーブンで30分硬化させた。
【0093】
次に、厚さ0.12mmのエンボスマスクを用いてスクリーン印刷機により、SnAgCuクリームはんだを回路基板の電極上に印刷し、チップ部品実装機を用いてSMD部品113である0603チップ抵抗部品を実装し、230℃ピークのリフロー炉で加熱して試料を作成した。
【0094】
(実施例1)
図1のように、回路基板101上のSMD部品113である0603部品が実装される電極上のみに、厚さ0.12mmのメタルマスクを用いてスクリーン印刷機により、SnAgCuクリームはんだを供給する。
【0095】
次に、絶縁性樹脂115を、50℃に保温したディスペンサーにて、ICチップ107が実装される領域6mmの範囲に3mg供給する。その上に、ICチップ107を実装機を用いて70℃・50Nの荷重で実装した。
【0096】
最後に、チップ部品実装機を用いて0603チップ抵抗部品を実装し、230℃ピークのリフロー炉で加熱して試料を作成した。
【0097】
(実施例2)
実施例1と同様に試料を作成し、回路基板101として凹部215が設けられた回路基板を使用して試料を作成した。
【0098】
(実施例3)
実施例1と同様に試料を作成し、SnAgCuクリームはんだの代わりにAgフィラーの導電性接着剤(ナミックス株式会社製)を使用し、リフロー炉で加熱する代わりに150℃オーブンで30分加熱して試料を作成した。
【0099】
(実施例4)
実施例1と同様に試料を作成し、絶縁性樹脂115として低粘度(70Pa・s)の絶縁性樹脂を使用して試料を作成した。
【0100】
(実施例5)
実施例1と同様に試料を作成し、ICチップ107を回路基板101に実装する際に、70℃50Nの荷重に加えて超音波を印加して実装して試料を作成した。
【0101】
【表1】

【0102】
表1の結果より、従来製造方法の比較例に対して、いずれの実施例においても、ICチップ1辺分の抵抗値、0603部品の接続抵抗値および0603部品のせん断強度が良くなる効果が見られた。このことは比較例では、従来法の限界部品電極間距離0.5mm以下の0.3mmの回路基板を使用したため、絶縁性樹脂が電極上まで広がって0603部品の導通を阻害したためである。このことにより、本発明による実施例では従来法より部品電極間距離が狭い構造体を作製できることが分る。
【0103】
このように本実施例において、従来0.5mmの部品電極間距離が0.3mmまで狭くすることができた。
【0104】
また実施例1〜5の結果検証により、ICチップ107を超音波接合したもの、回路基板101に凹部215を設けたもの、絶縁性樹脂110の粘度が低いものの方が、効果が高いことが分る。また、実施例1〜5において濡れ広がった絶縁性樹脂110が、SMD部品113である0603部品を補強するため、比較例と比べてせん断強度が向上していることも分る。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る実装構造体の製造方法は、半導体部品とSMD部品の部品間隔が狭い実装構造体を製造できるため、ICチップ(ベアIC),CSP(Chip Size Package),MCM(Multi Chip Module),BGA(Ball Grid Array)や表面弾性波(SAW)デバイスなどの半導体部品と、抵抗,コンデンサ,コイルなどのSMD部品(表面実装部品)とを狭い部品間距離で回路基板に混載実装する製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0106】
101 回路基板
102 回路基板の電極部
103 回路基板の第一の電極部
104 回路基板の第二の電極部
105 電極接合材
106 電極接合材塗布用マスク
107 第二の電子部品(ICチップ)
108 第二の電子部品の電極部
109 突起電極(バンプ)
110 絶縁性樹脂
111 絶縁性樹脂塗布ツール
112 実装ツール
113 第一の電子部品(SMD部品)
114 第一の電子部品の電極部
215 回路基板の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動部品からなる第一の電子部品と半導体からなる第二の電子部品とが同一回路基板面上に混載される実装構造体の製造方法であって、
少なくとも第一の電極と第二の電極とが設けられた回路基板に対して少なくとも前記第一の電極上に電極接合材を形成する工程と、
前記第二の電子部品が搭載される前記回路基板上に絶縁性樹脂を供給する工程と、
前記第二の電子部品の電極を前記回路基板上の前記絶縁性樹脂が供給された領域の前記第二の電極上に搭載すると共に、前記絶縁性樹脂を前記第一の電極の周囲に選択的に流し広げる工程と、
前記第一の電子部品を電極接合材が形成された前記第一の電極上に搭載する工程と、
前記絶縁性樹脂と前記電極接合材とを一括して加熱する工程とを有することを特徴とする実装構造体の製造方法。
【請求項2】
前記回路基板における前記第一の電極と前記第二の電極との少なくとも一方の周囲を、該電極面より低くしたことを特徴とする請求項1に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁性樹脂として、粘度が1〜70Pa・sの樹脂を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第二の電子部品の電極を前記回路基板における前記絶縁性樹脂が供給された領域の前記第二の電極上に搭載する工程において、前記第二の電子部品の電極上に形成されたバンプを、超音波を印加しながら前記第二の電極上に搭載することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の実装構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9580(P2012−9580A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143312(P2010−143312)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】