説明

室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物及び新規のオルガノポリシロキサン重縮合触媒

本発明は、室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物であって、重縮合によって架橋し、アルキルスズをベースとする触媒を含有しない前記組成物、並びに新規のオルガノポリシロキサン重縮合触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物であって、重縮合によって架橋し、毒性の問題を示すアルキルスズをベースとする触媒を含有しない前記組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、シリコーンの化学における新規の重縮合触媒、及びオルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としてのその使用にも関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、使用前に2構成型(2成分型、2液型とも称される)(RTV−2)組成物の形で存在する組成物を対象とする。
【背景技術】
【0004】
重縮合によって架橋するエラストマー配合物は一般的に、ヒドロキシル末端基を有するシリコーンオイル(一般的にはポリジメチルシロキサン)(随意にアルコキシ末端基を持つようにシランで前もって官能化されたもの)、架橋剤、重縮合触媒、慣用的にスズ塩又はチタン酸アルキル、補強用フィラー及び他の随意としての添加剤、例えば増量用フィラー、粘着促進剤、着色剤、殺生物剤等を含む。
【0005】
これらの室温加硫性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物はよく知られており、1構成型(1成分型、1液型とも称される)組成物(RTV−2)と2構成型(2成分型、2液型とも称される)組成物(RTV−1)との2つのグループに分類される。
【0006】
架橋の際に、水(RTV−1組成物の場合には大気中の湿分によって提供され、RTV−2組成物の場合には組成物の一部に導入される)が重縮合反応を可能にし、これがエラストマー性(弾性)網状構造の形成をもたらす。
【0007】
一般的に、1構成型(RTV−1)組成物は空気からの湿分に曝されたときに架橋し、即ちそれらは閉じられた環境中では架橋しない。例えば、シーラント又は常温硬化性接着剤として用いられる1構成型シリコーン組成物は、アセトキシシラン、ケチミノキシシラン、アルコキシシラン等のタイプの反応性官能基の加水分解及び続いての生成したシラノール基と他の残留反応性官能基との間の縮合反応というメカニズムに従う。この加水分解は一般的に、大気に曝された表面から材料中に広がる水蒸気によって実施される。一般的に、重縮合反応の反応速度は極めて遅い。従って、これらの反応は好適な触媒によって触媒される。用いられる触媒としては、大抵の場合、スズベース触媒(スズを基剤/主体とする触媒)、チタンベース触媒、アミンベース触媒又はこれらの触媒の組合せ物が用いられる。スズベース触媒(特に仏国特許第2557582号明細書を参照されたい)及びチタンベース触媒(特に仏国特許第2786497号明細書を参照されたい)は、非常に効果的な触媒である。
【0008】
2構成型組成物に関しては、これらは2つの構成品の形で販売されて貯蔵される。その第1の構成品はベースポリマー材料を含有し、第2の構成品は触媒を含有する。これら2つの構成品は使用時に混合され、この混合物が架橋して比較的硬いエラストマーの形になる。これらの2構成型組成物はよく知られており、特にWalter Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、第2版、第395〜398頁に記載されている。これらの組成物は、本質的に次の4種の成分を含む。
・反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマー、
・架橋剤、一般的にケイ酸塩又はポリケイ酸塩、
・スズ触媒、及び
・水。
【0009】
通常、縮合触媒は有機スズ化合物をベースとするものである。実際、多くのスズベース触媒がすでにこれらのRTV−2組成物用の架橋用触媒として提唱されている。最も広く用いられている化合物は、アルキルスズカルボキシレート、例えばトリブチルスズモノオレエート、又はジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート若しくはジメチルスズジラウレートである(Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、第2版、第337頁、Academic Press社、又は欧州特許公開第147323号若しくは同第235049号公報を参照されたい)。
【0010】
しかしながら、アルキルスズベース触媒は、非常に有効であり、通常は無色であり、液状であり、シリコーンオイル中に可溶であるものの、毒性があるという欠点を有する(生殖毒性物質CMR2)。
【0011】
チタンベース触媒もRTV−1組成物中に広く用いられているが、しかしスズベース触媒より反応速度が遅いという大きな欠点を有する。さらに、これらの触媒は、ゲル化の問題のせいで、RTV−2組成物用中には用いることができない。
【0012】
亜鉛、ジルコニウム又はアルミニウムをベースとする触媒のような他の触媒も時として挙げられるが、しかしこれらは効果が平凡なので工業的にはあまり開発されていない。
【0013】
持続性のある開発のためには、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の無毒性の触媒を開発することが必要だと思われる。
【0014】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応の触媒についての別の重要な局面は、ポットライフ(可使時間)、即ち組成物が混合後に硬化することなく使用可能な時間である。この時間は、使用を可能にするのに充分長くなくてはならないが、しかし遅くとも製造の数分乃至数時間後には取扱い可能な成形物品を得るのに充分短くなくてはならない。従って、この触媒は、触媒された混合物のポットライフと成形物品が取扱い可能な時間(この時間は例えば成形やシールの製造等のような目指す用途に依存する)との間の良好な折衷点を得ることを可能にするものでなければならない。さらに、この触媒は、触媒された混合物に、貯蔵時間に応じて変化することのない展延時間を付与しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許第2557582号明細書
【特許文献2】仏国特許第2786497号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第147323号公報
【特許文献4】欧州特許公開第235049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の主な目的は、1構成型エラストマー組成物の架橋及び2構成型エラストマー組成物の架橋の両方において用いることができる触媒系を見出すことにある。
【0017】
本発明の別の主な目的は、1構成型及び2構成型の2つのタイプのエラストマー組成物の貯蔵、加工及び架橋の制約を同時に満たし続ける触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ここに、重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと触媒として有効量の少なくとも1種の触媒系Xとを含むことを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物であって、
(a)該触媒系Xが次式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含み;そして
(b)該触媒系Xが次の方法:
・工程1:前記金属錯体又は塩Aを少なくとも1種の油状オルガノポリシロキサンポリマーK(その粘度が少なくとも100mPa・s、好ましくは少なくとも5000mPa・s、より一層好ましくは少なくとも10000mPa・sであるもの)中に分散させ、そして
・工程2:この混合物を、随意に混練後に、触媒系Xである均質混合物が得られるまでミル粉砕する:
に従って製造されたものであることを特徴とする前記オルガノポリシロキサン組成物が見出され、これが本発明の主題を構成する。
【0019】
「金属錯体又は塩A」の定義には、該金属錯体又は塩Aの任意のオリゴマー形態又は類似体が包含されるものとする。
【0020】
この目的を達成するために、本出願人は、全く驚くべきことに、そして予期しなかったことに、金属錯体又は塩Aをベースとし、独創的な方法に従って調製した触媒系Xは、重縮合反応用の触媒として上記の式(1)の金属錯体又は塩Aを用いることを可能にするということを見出した。
【0021】
また、本発明者らは、固体の形の本発明に従う金属錯体又は塩Aはオルガノポリシロキサンの重縮合反応において凡庸な活性を示すだけであり、しかもシリコーン媒体中における溶解性が非常に低いので使用するのに問題があるという従来の技術上の偏見を克服した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
リガンドの定義は、Didier Astrucによる著書「Chimie Organometallique」(Organometallic Chemistry)、2000年、EDP Sciences社、特に第1章「Les complexes monometalliques」(Single Metal Complexes)、第31頁以降に記載されていることの留意されたい。
【0023】
中性リガンドYの性状はそれほど重要ではなく、当業者は当該金属に適した任意のタイプの中性リガンドを用いるであろう。
【0024】
本発明の構成成分の性状をもう少し詳しく説明するためには、任意の慣用の混合装置、特にスロー撹拌装置を用いることができることを明確にするのが重要である。例えば、撹拌機を備えたミキサー中で混合装置を実施することができる。例として、一軸スクリュー又は多軸スクリュー押出機、遊星形ミキサー、鉤形ミキサー、スロー分散機、固定式ミキサー、及びパドル、プロペラ、アーム又はアンカー形ミキサーを挙げることができる。
【0025】
粘度が少なくとも100mPa・s、好ましくは少なくとも5000mPa・s、より一層好ましくは少なくとも10000mPa・sである任意の油状オルガノポリシロキサンポリマーKが、本発明の実施のために好適である。
【0026】
特に有利な実施態様に従えば、ミル粉砕は、3本ロールミルを用い、均質混合物が得られるようにロール間の締め付け圧を調節して、実施される。
【0027】
1つの好ましい実施態様に従えば、触媒系Xは、次の式(2)の少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含む。
[M(L1r1(L2r2] (2)
(ここで、
r1≧1且つr2≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0028】
本発明の創意のある特徴の少なくとも一部は、重縮合触媒として用いられる金属化合物Aの画定された組合せの適切且つ有利な選択によるものであることに留意されたい。
本発明の創意のある特徴の少なくとも一部は、重縮合触媒として用いられる金属化合物Aの画定された組合せの適切且つ有利な選択によるものであることに留意されたい。
【0029】
1つの好ましい実施態様に従えば、触媒系Xは、下記の式(3)〜(7)の金属錯体又は塩より成る群から選択される少なくとも1種の金属錯体又は塩Aである。
(3):[Ce(L1)r3(L2)r4];ここで、r3≧1且つr4≧0であり且つr3+r4=3である;
(4):[Mo(L1)r5(L2)r6];ここで、r5≧1且つr6≧0であり且つr5+r6=6である;
(5):[Bi(L1)r7(L2)r8];ここで、r7≧1且つr8≧0であり且つr7+r8=3である;
(6):[Mn(L1)r9(L2)r10];ここで、r9≧1且つr10≧0であり且つr9+r10=3である:
(7):[Fe(L1)r11(L2)r12];ここで、r11≧1且つr12≧0であり且つr11+r12=3である。
(ここで、
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、リガンドL1の数≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、リガンドL2の数≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0030】
本発明の別の好ましい実施態様に従えば、触媒系Xは、次の式(8)〜(33)の金属錯体又は塩より成る群から選択される少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含む。
(8):[Ce(t−Bu−acac)3];ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである;
(9):[Ce(acac)3];ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである;
(10):[Ce(EAA)3];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである;
(11):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2];ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである;
(12):[Mo(O2)(Cy−acac)2];ここで、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオン又は2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである;
(13):[Mo(O2)(acac)2];ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである;
(14):[Mo(O2)(Cp−acac)2];ここで、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオン又は2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである;
(15):[Mn(acac)3];ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである;
(16):[Fe(t−Bu−acac)3];ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである;
(17):[Fe(EAA)3];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである;
(18):[Fe(EAA)2(エチルヘキサノアート)];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである;
(19):[Fe(EAA)(エチルヘキサノアート)2];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである;
(20):[Fe(acac)3];ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである;
(21):[Fe(トリフルオロ−acac)3];ここで、トリフルオロ−acac=トリフルオロアセチルアセトナートアニオンである;
(22):[Fe(iPr−AA)3];ここで、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである;
(23):[Fe(iBu−AA)3];ここで、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである;
(24):[Fe(tBu−AA)3];ここで、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである;
(27):[Bi(hfacac)3];ここで、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオンである;
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];及び
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2]。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様に従えば、β−ジカルボニラートリガンドL1は、次式のβ−ジケトンから誘導されたβ−ジケトナートアニオン又は次式のβ−ケトエステルから誘導されたβ−ケトエステラートアニオンである。
1COCHR2COR3 (34)
{ここで、
1は置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C30炭化水素ベース基又は置換若しくは非置換芳香族基を表わし;
2は水素又は炭化水素ベース基、一般的にアルキル基、有利には最大4個の炭素原子を有するものを表わし;
3は置換若しくは非置換の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状C1〜C30炭化水素ベース基、置換若しくは非置換芳香族基、又は−OR4基(ここで、R4は置換若しくは非置換の直鎖状、環状若しくは分岐鎖状C1〜C30炭化水素ベース基を表わす)を表わし;
1及びR2は一緒になって環を形成することもでき;そして
2及びR4は一緒になって環を形成することもできる。}
【0032】
本発明に従う組成物にとって特に有利な式(34)のβ−ジケトンの中でも、次のβ−ジケトンより成る群から選択されるものが挙げられる:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac)];ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン及び4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタン。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様に従えば、β−ジカルボニラートリガンドL1は、次の化合物から誘導されるアニオンより成る群から選択されるβ−ケトエステラートアニオンである:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルエステル、又は仏国特許第1435882号明細書に記載されたもの。
【0034】
本発明に従う金属錯体Aの構成成分の性状をもう少し詳しく説明するために、L2が次のアニオンより成る群から選択されるアニオン性リガンドであることを明確にするのが重要である:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラト(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロヨーダト(1-)[IF6-、オキソクロラト(1-)(ClO)-、ジオキソクロラト(1-)(ClO2-、トリオキソクロラト(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラト(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ハイパーオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラト(C25S)-、2−クロロエタノラト(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラト[C64(NO2)O]-、ホルマト(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-, シアナト(NCO)-、チオシアナト(NCS)-、セレノシアナト(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N-NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナト(H2PO2-、カルボキシラト、エノラト、アミド、アルキラト及びアリーラト。
【0035】
1つの特に好ましい実施態様に従えば、L2は次のアニオンより成る群から選択されるアニオン性リガンドである:アセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネート及びオキシドO2-アニオン。
【0036】
中性リガンドYの性状はそれほど重要ではなく、当業者は当該金属に適した任意のタイプの中性リガンドを用いるであろう。
【0037】
本発明はまた、
(a)次の式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含むこと;並びに
(b)次の方法:
・工程1:前記金属錯体又は塩Aを少なくとも1種の油状オルガノポリシロキサンポリマーK(その粘度が少なくとも100mPa・s、好ましくは少なくとも5000mPa・s、より一層好ましくは少なくとも10000mPa・sであるもの)中に分散させ、そして
・工程2:この混合物を、随意に混練後に、触媒系Xである均質混合物が得られるまでミル粉砕する:
に従って調製されること
を特徴とする触媒系Xに関するものでもある。
【0038】
本発明に従う触媒系Xの量は、金属錯体又は塩Aが用途の要求に適合するのに充分な量となるように当業者によって調節される。一般的に、金属錯体又は塩Aは、組成物の総質量の0.01〜15重量%の範囲の量、好ましくは0.05〜10重量%の範囲の量で組成物中に存在させる。
【0039】
本発明の別の主題は、前記の本発明に従う触媒系Xをオルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒として使用することから成る。
【0040】
シリコーンベースBの説明:
【0041】
本発明において用いられる、重縮合反応によって架橋して硬化するシリコーンベースは、よく知られている。これらのベースは、特に多くの特許文献に詳細に記載されており、商品として入手できる。
【0042】
これらのシリコーンベースは、1構成型ベース、即ち単一の包装体の形で包装され、湿分の不在下において貯蔵安定性であり、湿分、特に周囲空気によって提供される湿分の存在下で架橋できるベース又は使用の際に該ベース内で発生する水によって架橋できるベースであることができる。
【0043】
1構成型ベースの他に、2構成型ベース、即ち2つの包装体の形で包装され、本発明に従う触媒系Xを加えたらすぐに硬化するベースを用いることができる。これらは、触媒を加えた後に、2つの別個の部分として包装され、その内の一方の部分は例えば本発明に従う触媒のみ又は架橋剤との混合物を含有することができる。
【0044】
本発明に従う組成物を製造するために用いられるシリコーンベースBは、次のものを含むことができる:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;並びに
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF。
【0045】
ポリオルガノシロキサンオイルCは、25℃において50〜5000000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであるのが好ましく、架橋剤Dは、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子当たり2個以上有する有機ケイ素化合物であるのが好ましい。ポリオルガノシロキサンオイルCはまた、ヒドロキシル官能基を有する前駆体と加水分解性基を有する架橋用シランとの縮合によって得られる加水分解性基で末端を官能化されたものであることもできる。
【0046】
架橋剤(D)としては、
・次の一般式のシラン:
1k Si(OR2)(4-k)
(ここで、記号R2は同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくは2−エチルヘキシル基、C3〜C6オキシアルキレン基を表わし、記号R1は直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系基、単環式若しくは多環式の飽和若しくは不飽和炭素環式基及び/又は単環式若しくは多環式の芳香族炭素環式基を表わし、kは0、1又は2である);並びに
・このシランの部分加水分解生成物:
を挙げることができる。
【0047】
3〜C6アルコキシアルキレン基の例としては、次の基を挙げることができる:
CH3OCH2CH2
CH3OCH2CH(CH3)−
CH3OCH(CH3)CH2
25OCH2CH2CH2−。
【0048】
記号R1はC1〜C10炭化水素系基であり、以下のものを包含する:
・C1〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル又はデシル基;
・ビニル及びアリル基;並びに
・C5〜C8シクロアルキル基、例えばフェニル、トリル及びキシリル基。
【0049】
架橋剤Dは、シリコーン市場において入手できる製品である;さらに、室温硬化性組成物中にそれらを使用することは周知である;特に、仏国特許第1126411号明細書、仏国特許第1179969号明細書、仏国特許第1189216号明細書、仏国特許第1198749号明細書、仏国特許第1248826号明細書、仏国特許第1314649号明細書、仏国特許第1423477号明細書、仏国特許第1432799号明細書及び仏国特許第2067636号明細書に記載されている。
【0050】
架橋剤Dの中では、より特定的には、有機基が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルキルトリアルコキシシラン、ケイ酸アルキル及びポリケイ酸アルキルが好ましい。
【0051】
架橋剤Dの別の例としては、より特定的には、次のシランを挙げることができる:
CH3Si(OCH3)3;C2H5Si(OC2H5)3;C2H5Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)3;CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3
C6H5Si(OCH3)3;[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH3] 2
Si(OCH3)4;Si(OC2H5)4;Si(OCH2CH2CH3)4;Si(OCH2CH2CH2CH3)4
Si(OC2H4OCH3)4;CH3Si(OC2H4OCH3)3;CICH2Si(OC2H5)3
【0052】
架橋剤Dの別の例としては、ポリケイ酸エチル又はポリケイ酸n−プロピルを挙げることができる。
【0053】
一般的に、重縮合によって架橋エラストマーになることができるポリオルガノシロキサンC100重量部当たり0.1〜60重量部の架橋剤Dが用いられる。
【0054】
本発明に従う組成物はまた、少なくとも1種の粘着促進剤E、例えば次の(1)及び(2)の両方を有する有機ケイ素化合物等を含むことができる。
(1)ケイ素原子に結合した1個以上の加水分解性基;及び
(2)窒素原子を含む基又は(メタ)アクリレート、エポキシ及びアルケニル基から選択される基で置換された1個以上の有機基、より一層好ましくは次の化合物より成る群から選択される有機基(単独のもの又は混合物として):
ビニルトリメトキシシラン(VTMO);
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO);
[H2N(CH2)3]Si(OCH2CH2CH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OC2H5)3
[H2N(CH2)4]Si(OCH3)3
[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH3)2
[H2NCH2]Si(OCH3)3
[n-C4H9-HN-CH2]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH2CH2OCH3)3
[CH3NH(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H(NHCH2CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
【化1】

又はこのような有機基を20%超の含有率で含有するポリオルガノシロキサンオリゴマー。
【0055】
1構成型及び2構成型ベースについて、無機フィラーFとして、平均粒径0.1μm未満の非常に微細に粉砕された物質が用いられる。これらのフィラーは、ヒュームドシリカ及び沈降シリカを包含する;それらのBET比表面積は一般的に40m2/g超である。これらのフィラーはまた、もっと粗大な平均粒径0.1μm超の物質の形にあってもよい。かかるフィラーの例としては、石英粉末、ケイ藻土シリカ、炭酸カルシウム、焼成クレー、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム又はマグネシウムの酸化物、様々な形のアルミナ(水和又は非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウム及びガラスミクロビーズを挙げることができる;それらの比表面積は一般的に30m2/gである。
【0056】
これらのフィラーは、様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面変性されたものであってよい。これらの有機ケイ素化合物は、この目的で慣用的に用いられているものであり、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであることができる(仏国特許第1126884号明細書、仏国特許第1136885号明細書及び仏国特許第1236505号明細書、並びに英国特許第1024234号明細書)。処理されたフィラーは、大抵の場合、それらの重量の3〜30%の有機ケイ素化合物を含有することができる。該フィラーは、様々な粒子寸法のいくつかのタイプのフィラーの混合物から成ることができる;従って、例えばこれらは、BET比表面積が40m2/g超の微粉砕シリカ30〜70%と、BET比表面積が30m2/g未満の粗粉砕シリカ70〜30%とから成ることができる。
【0057】
フィラーを導入する目的は、本発明に従う組成物を硬化させることによって得られるエラストマーに良好な機械的特性及びレオロジー特性を与えることである。
【0058】
これらのフィラーと組み合わせて、無機及び/又は有機顔料や、エラストマーの耐熱性改善剤(希土類元素の塩及び酸化物、例えば酸化セリウム及び水酸化セリウム等)並びに耐火性改善剤を用いることもできる。例えば、国際出願WO98/29488号に記載された酸化物の混合物を用いることができる。耐火性改善剤の中では、ハロゲン化有機誘導体、有機リン誘導体、白金誘導体、例えばクロロ白金酸(そのアルカノール若しくはエーテルとの反応生成物)又は塩化白金(II)−オレフィン錯体を挙げることができる。これらの含量及び改善剤は、合計で最大でもフィラーの20重量%を占める。
【0059】
他の慣用的な補助剤及び添加剤を本発明に従う組成物中に加えることができる;これらは組成物が用いられる用途に応じて選択される。
【0060】
本発明に従う組成物を製造するために用いられるシリコーンベースは、次のものを含むことができる:
・100部の重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC;
・0〜20部の架橋剤D;
・0〜20部の粘着促進剤E;及び
・0〜50部のフィラーF。
【0061】
主な成分に加えて、本発明に従う組成物の物理的特徴に対して及び/又はこれらの組成物を硬化させることによって得られるエラストマーの機械的特徴に対して作用させることを意図して、非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGを導入することができる。
【0062】
これらの非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGはよく知られている;これらはより特定的には:本質的にジオルガノシロキシ単位から成り且つ少なくとも1%のモノオルガノシロキシ及び/又はシロキシ単位を有し、25℃において少なくとも10mPa・sの粘度を有するα,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサンポリマーであって、ケイ素原子に結合した有機基がメチル、ビニル及びフェニル基から選択され、これらの有機基の内の少なくとも60%がメチル基であり、ビニルは最大でも10%であるものを含む。これらのポリマーの粘度は、25℃において数千万mPa・sに達することもできる;従ってこれらは流体乃至粘性外観を持つオイル及び軟質乃至硬質ゴムを包含する。これらは、より特定的には仏国特許第978058号明細書、仏国特許第1025150号明細書、仏国特許第1108764号明細書及び仏国特許第1370884号明細書に記載された通常の技術に従って調製される。25℃において10mPa・s〜1000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサンオイルを用いるのが好ましい。これらのポリマーは、可塑剤としての働きをし、重縮合によって架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルC100部当たり最大70部、好ましくは5〜20部の割合で導入することができる。
【0063】
本発明に従う組成物は、有利には、少なくとも1種のシリコーン樹脂Hをさらに含むことができる。これらのシリコーン樹脂は、よく知られていて商品として入手できる分岐鎖状オルガノポリシロキサンポリマーである。これらは、式R'''3SiO12(M単位)、R'''2SiO2/2(D単位)、R'''SiO3/2(T単位)及びSiO4/2(Q単位)のものから選択される少なくとも2個の異なる単位を1分子当たりに有する。R'''基は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はビニル、フェニル若しくは3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。好ましくは、アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する(境界を含む)。より特定的には、アルキル基Rとしては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を挙げることができる。これらの樹脂は好ましくはヒドロキシル化されたものであり、この場合には5〜500ミリ当量/100gヒドロキシル基重量含有率を有する。
【0064】
樹脂の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂を挙げることができる。
【0065】
本発明に従う組成物を製造するためには、1構成型組成物の場合には、湿分のない環境中で熱を加えて又は熱を加えることなく、様々な基本成分(随意にこれら成分に前記補助剤及び添加剤を添加したもの)を緊密に混合することが可能な装置を用いることが必要である。これらすべての成分は、任意の導入順序で装置中に装填することができる。例えば、最初にオルガノポリシロキサンオイルC及びフィラーFを混合し、次いで得られたペーストに架橋剤D、化合物E及び本発明に従う触媒を加えることができる。また、オイルC、架橋剤D、化合物E及びフィラーFを混合し、次いで本発明に従う触媒を加えることも可能である。これらの操作の間に、混合物を、大気圧下で又は揮発性物質の除去を促進するために減圧下で50〜180℃の範囲内の温度に加熱してもよい。
【0066】
本発明に従う1構成型組成物は、そのままで即ち希釈しないで又は希釈剤中の分散体の形で用いられ、水の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下では(分散体の場合には溶剤が除去された後に)低温において硬化してエラストマーになる。
【0067】
湿り気のある雰囲気中で固体基材上に組成物をそのままで塗布した後に、エラストマーへの硬化プロセスが起こるのが観察され、これは塗布した物質の外側から内側に向けて起こる。最初に表面においてスキン(膜)を形成し、次いで深部において架橋し続ける。スキンが完全に形成して表面が非粘着性の感触になるためには、数分の時間が必要である;この時間は、組成物を取り巻く雰囲気の相対湿度及び組成物の架橋しやすさに依存する。
【0068】
さらに、塗布層の深部硬化は、成形されたエラストマーの離型及び取扱いを可能にするのに充分なものでなければならず、より長い時間を必要とする。実際、この時間は非粘着性の感触の形成について上に挙げたファクターに依存するだけではなくて、塗布層の厚さにも依存し、この厚さは一般的に0.5mm〜数cmの範囲である。1構成型組成物は、多くの用途、例えば建築産業における接合、様々な材料の組立て(金属、プラスチック、天然及び合成ゴム、木材、板、陶器、煉瓦、セラミック、ガラス、石材、コンクリート、石工事部材)、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、又は合成樹脂若しくはフォーム製物品を製造するために用いられる成形型の製造に、用いることができる。
【0069】
本発明に従う2構成型組成物の製造もまた、好適な装置中で様々な成分を混合することによって実施される。均質組成物を得るためには、最初にポリマーAをフィラーCとを混合するのが好ましい;オイルによるフィラーの湿潤を完全なものにするために、この混合物全体を80℃超の温度に少なくとも30分間加熱してもよい。得られた混合物を好ましくは80℃以下の温度(例えば室温)にした後に、他の成分即ち架橋剤、触媒並びに随意としての各種添加剤及び補助剤、さらには水を添加することができる。
【0070】
本発明に従う組成物は、多くの用途、例えば建築産業及び輸送産業(例えば自動車産業、航空宇宙産業、鉄道業、海運業及び航空産業)における接合及び/又は連結、様々な材料(金属、プラスチック、天然及び合成ゴム、木材、板、ポリカーボネート、陶器、煉瓦、セラミック、ガラス、石材、コンクリート及び石工事部材)の組立て、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、並びに合成樹脂又はフォーム製物品を製造するために用いられる成形型の製造に、用いることができる。
【0071】
かくして、本発明の別の主題は、上で規定した本発明に従うオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる2構成型系であって、前記組成物を形成するために混合することが予定される2つの別個の部分P1及びP2の形にあること、並びにこれらの部分の内の1つが、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての上で規定した触媒系Xと架橋剤Dとを含み、もう一方の部分が上記の種を含まず、次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに;
・0.001〜10重量部の水:
を含むことを特徴とする、前記2構成型系から成る。
【0072】
本発明の別の主題はまた、湿分の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下で架橋してエラストマーになる1構成型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
・少なくとも1種の、アルコキシ、オキシム、アシル及び/又はエノキシタイプ(好ましくはアルコキシタイプ)の官能化された末端を有する架橋性線状ポリオルガノポリシロキサン;
・フィラー;並びに
・上で規定した本発明に従う触媒系X:
を含むことを特徴とする前記1構成型ポリオルガノシロキサン組成物からも成る。
【0073】
重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる本発明に従う1つのオルガノポリシロキサン組成物であって特に有利なものは、以下のものを含むものである:
(a)次のもの:
・有機基が炭化水素ベース基(好ましくは1〜20個の炭素原子を有するアルキル;3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル;2〜8個の炭素原子を有するアルケニル及び5〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニルより成る群から選択される炭化水素ベース基)である反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマーである、重縮合によって架橋し得る少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに、
・0.1〜60重量部の、ポリアルコキシシラン、ポリアルコキシシランの部分加水分解から得られた生成物及びポリアルコキシシロキサンより成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤D;
・0〜60重量部の、前記の粘着促進剤E;
・0〜250重量部、好ましくは5〜200重量部の、少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF;
・0.001〜10重量部の水;
・0〜100重量部の、少なくとも1種の非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーG(このポリマーGは、分子中のケイ素原子に結合した複数の一価有機置換基が互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリーレン及びアリールアルキレン基から選択される線状ホモポリマー又はコポリマーから成る);
・0〜70重量部のポリオルガノシロキサン樹脂H;
・0〜20重量部の着色用ベース又は着色剤I;並びに
・0〜20部の、当業者に周知の補助剤J、例えば可塑剤、架橋遅延剤、鉱油、抗菌剤又は熱安定剤、例えばチタン、鉄又はセリウム酸化物:
を含むシリコーンベースB;並びに
(b)0.1〜50重量部の、上に規定した本発明に従う触媒系X。
【0074】
本発明に従う2構成型組成物は、様々な形状に応じて造形し、押出し又は特に型成形することができ、次いで室温において硬化してエラストマーになることができる。
【0075】
さらに、これらは自動車産業において用いられる「現場」シールの形成にとって好適である。これらの「現場」シールには、様々なタイプのもの、即ち「扁平」シール(「流し込みガスケット」シールと称される)、「造形」シール(「形材」シールと称される)及び「射出成形」シールが包含される。
【0076】
「扁平」シールは、組み立てられるべき2つの金属又はプラスチック部品間の接触領域に組成物のペーストの帯状物(cordon)を塗布することによって形成される。最初に一方の部品上にペースト帯状物を塗布し、次いでこの第1の部品にもう一方の部品を押し当てる;これにより得られた帯を押し潰したものをエラストマーに転化させる。このタイプのシールは、通常は分解されることのない組立体を対象としたものである(油だめシール、タイミングケースシール等)。
【0077】
「造形」シールもまた、組み立てられるべき2つの部品間の接触領域に組成物のペーストの帯状物を塗布することによって得られる。しかしながら、一方の部品にベースとの帯状物を塗布した後に、完全に硬化してエラストマーになるのを待ち、その後に第1の部品に第2の部品を押し当てる。
【0078】
さらに、前記シールは、ゴム状又は流体状性状なので、シールを形成させるべき表面の不規則形状にぴったり当てはまり、そのため、(1)互いに接触させるべき金属表面を念入りに機械加工する必要はなく、そして(2)得られた組立体をきつく縛っておくようなことも必要ない。これらの特徴は、組立体の部品を補強し強化することが通常意図される固定シール、スペーサー又はリブを用いないことをある程度可能にする。
【0079】
本発明に従う組成物は密閉環境中でさえ室温において急速に硬化するので、これらの組成物から得られた「造形」シールは(そしてもう一方の「現場」シールも)自己粘着性であり、非常に制約がある工業的製造条件下でも製造できるということになる。例えば、これらは組成物を塗布するための自動式の装置を備えた自動車産業の通常の組立てライン上で製造することができる。この自動式装置は多くの場合混合ヘッド及び塗布ノズルを有し、後者は製造されるシールのアウトラインに沿って動く。
【0080】
この装置によって製造されて配給される組成物は、混合ヘッド中で組成物が固化するのを防ぐため及びシールを形成させるべき部品上にペースト帯状物を塗布した後に完全な架橋を得るために適切に調節された硬化時間を有する。これらの「造形」シールは、シリンダーヘッドカバーのシール、ギアボックスケースカバーのシール、タイミングスペーサーのシール及びさらに油だめのシールにとって特に好適である。
【0081】
射出成形シールは、密閉環境中で、しばしば完全に密閉されたキャビティ中で、形成される。これらのキャビティ中に入れられた組成物は、迅速にエラストマーに転化する。これらのシールは、例えばクランクシャフト軸受の気密性を保証することができる。
【0082】
本発明に従う組成物はまた、自動車産業以外の分野においても素早く硬化し且つ自己粘着性のシール及び/又は接着剤を形成させるのに好適である。例えばこれらは、プラスチックス製のスイッチキャビネットについて接着結合してシールを形成させるため、
・家庭電化製品用、特にオーブンのガラス及び金属壁、真空掃除機並びにアイロン部品のような部品の組立てのため;
・電子部品のハウジング用{例えば自動車産業に用いられるもの(例えばブレーキ出力ディストリビューター等)};並びに
・タンク(例えば自動車産業におけるもの)の組立て、接着結合、シール形成用:
に、シール及び/又は接着剤を製造するために用いることができる。
【0083】
本発明に従う組成物は、用途のタイプ故に熱処理を被りがちな密閉環境中のシールの形成にとって、例えばオーブンのような家庭電化製品の部品を接着結合するのに用いられるシール用に、特に好適である。実際、ある用途においては、シールは、用途の要求に応じた接着性を維持しつつ、100℃以上の温度に耐えなければならない。
【0084】
本発明の別の主題は、
・本発明に従うオルガノポリシロキサン組成物;又は
・上に規定した2構成型系の部分P1及びP2を混合することによって得られるオルガノポリシロキサン組成物
を周囲温度において硬化させることによって製造される自己粘着性シール及び/又は接着剤に関する。
【0085】
本発明の最後の主題は、上で規定した本発明に従う2構成型系の架橋及び硬化、又は上で規定した本発明に従う組成物の架橋及び硬化によって得られるエラストマーから成る。
【0086】
本発明の他の利点及び特徴は、以下に単に例示として与えた非限定的実施例を読めば、より一層明らかになるだろう。
【実施例】
【0087】
1)本発明に従う触媒系の製造
【0088】
a)金属塩の合成
【0089】
(10):[Ce(EAA)3];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである[Ce(エチルアセトアセタート)3
【0090】
12ミリモルの三塩化セリウム(3g)の水性エタノール性溶液(EtOH20ミリリットル、水10ミリリットル)に、68ミリモルのアセト酢酸エチル(8.88g)を添加し、次いで10分後に得られた無色の溶液に28重量%濃度のアンモニア水(4.1g)を添加した。40分間激しく撹拌した後に、生成した白色固体を濾過し、3ミリバール下で50℃において乾燥させた後に、少量の水酸化セリウムを含有する所期の物質(3g)が得られた。
【0091】
%Ce 計算値=26.6%、ICPによる実測値=34.5%
IRデータ(nm):2979、1611、1505、1239、1161、960
【0092】
(12):[Mo(O2)(Cy−acac)2];ここで、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオン又は2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである(MoO2(2−アセチルシクロヘキサノナート)2);及び
(14):[Mo(O2)(Cp−acac)2];ここで、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオン又は2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである。
【0093】
50ミリリットルの水をpH1の5N塩酸(10ミリリットル)で酸性にしたものの中に30ミリモルの水和モリブデン酸ナトリウム(7.26g)を含有させた溶液に、激しく撹拌しながら5分かけて、75ミリモルのβ−ジケトン(2−アセチルシクロペンタノン:9.46g、2−アセチルシクロヘキサノン:10.51g)を添加した。溶液の色が黄色から緑色に変化した。室温において5時間撹拌を続け、生成した沈殿を濾過し、次いで水で洗浄した。3ミリバール下で70℃において乾燥させた後に、緑色固体の形の10.51gの(16)(収率87%)及び明黄色固体の形の10.7gの(18)(収率94%)がそれぞれ得られた。
【0094】
【表1】

【0095】
(22):[Fe(iPr−AA)3];ここで、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである[Fe(イソプロピルアセトアセタート)3];及び
(23):[Fe(iBu−AA)3];ここで、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである[Fe(イソブチルアセトアセタート)3]。
【0096】
100ミリリットルのエタノール中に112ミリモルのナトリウムメチラート(6g)を含有させた溶液を蒸留によって20%まで濃縮し、次いで112.5ミリモルのβ−ケトエステル(16.2gのアセト酢酸イソプロピル又は17.8gのアセト酢酸イソブチル)を添加し、得られた溶液を80℃に1時間加熱して、透明な黄橙色の溶液を得た。20ミリリットルのエタノール中に37.1ミリモルの無水塩化鉄(6g)を含有させた溶液を80℃において30分かけて添加し、次いでこの混合物を80℃に3時間加熱し、冷却し、必要ならば濾過し、濃縮乾固させ、残渣を100ミリリットルのジイソプロピルエーテル中に取り出し、この均質混合物をセライトを用いて濾過した。蒸発乾固させた後に、濃赤褐色オイルが得られ、これらは、(22)の場合はある程度粘性があり、(23)の場合には固化した。これらはそれぞれ、15.9g(収率88.5%)及び15.8g(収率80.6%)だった。
【0097】
【表2】

【0098】
(18):[Fe(EAA)2(エチルヘキサノアート)];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである[Fe(エチルアセトアセタート)2(エチルヘキサノアート)];及び
(19):[Fe(EAA)(エチルヘキサノアート)2];ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである[Fe(エチルアセトアセタート)(エチルヘキサノアート)2]。
【0099】
ヘプタン(30ミリリットル)中に12.5ミリモルの2−エチルヘキサン酸鉄及び1又は2当量のアセト酢酸エチルを含有させた溶液を16時間加熱還流した。冷却後に、赤橙色の溶液を10℃において水性炭酸水素塩溶液で洗浄し、次いで水で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発乾固させた。2種の錯体が比較的ペースト状の固体の形で得られた。
【0100】
【表3】

【0101】
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)]、
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2]。
【0102】
ヘプタン(35ミリリットル)中に15ミリモルの2,2−ジメチル酪酸鉄及び1又は2当量のアセト酢酸エチルを含有させた溶液を16時間加熱還流した。冷却後に、赤橙色の溶液を10℃において水性炭酸水素塩溶液で洗浄し、次いで水で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発乾固させた。2種の錯体が比較的ペースト状の固体の形で得られた。
【0103】
【表4】

【0104】
b)触媒系の調製
【0105】
a)で合成した錯体をシリコーンオイル中に6.1%又は10%で分散させた:
a1:鎖の各末端を(CH3)2(OH)SiO0.5単位でブロックされた、25℃において14000mPa・sの粘度を有するヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル。
【0106】
次いでこの混合物を3本ロールミルによって微粉砕した。そのロール間の締め付け圧は、可能ならば均一混合物が得られるように調節した。こうして得られた触媒系を、それらの外観及びBrookfield粘度計を用いた粘度測定によって特徴付けした。
【0107】
比較用のオイルa4:鎖の両末端を(CH3)3SiO0.5単位でブロックされた、25℃において50mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンオイルを用いた時には、沈降する不均質の懸濁液が得られた。
【0108】
これらの結果は、本発明に従う触媒系を用いることが可能であるために均質混合物を得るためには少なくとも100mPa・sの粘度を有するシリコーンオイルを用いることが重要であることを示している。
【0109】
2)室温において重縮合反応によって架橋するシリコーン組成物
【0110】
1)に記載した触媒系をベースとする標準的な2構成型組成物を調製し、対照例と同等又はそれより優れた物理的特性を有するエラストマーを得た。得られたエラストマーは、スズベース触媒(対照例)を用いて得られたものと同様の良好な機械的特性(EB、TS及びSAH)を有する。
・EB=破断点伸び(%、ASTM−D412又はAFNOR−T−46002標準の手順に従って測定実施)。
・TS=引張強さ(MPa、ASTM−D412又はAFNOR−T−46002標準の手順に従って測定実施)
・SAH=Shore A硬度(ASTM−D2240標準の手順に従って測定実施)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと触媒として有効量の少なくとも1種の触媒系Xとを含むことを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物であって、
(a)該触媒系Xが下記の式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含み;そして
(b)該触媒系Xが次の方法:
・工程1:前記金属錯体又は塩Aを少なくとも1種の油状オルガノポリシロキサンポリマーK(その粘度が少なくとも100mPa・s、好ましくは少なくとも5000mPa・s、より一層好ましくは少なくとも10000mPa・sであるもの)中に分散させ、そして
・工程2:この混合物を、随意に混練後に、触媒系Xである均質混合物が得られるまでミル粉砕する:
に従って製造されたものであることを特徴とする、前記オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記ミル粉砕が3本ロールミルを用い、均質混合物が得られるようにロール間の締め付け圧を調節して、実施されたことを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記触媒系Xが次の式(2)の金属錯体又は塩Aを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
[M(L1r1(L2r2] (2)
(ここで、
r1≧1且つr2≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記触媒系Xが次の式(3)〜(7)の金属錯体又は塩より成る群から選択される少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(3):[Ce(L1)r3(L2)r4](ここで、r3≧1且つr4≧0であり且つr3+r4=3である);
(4):[Mo(L1)r5(L2)r6](ここで、r5≧1且つr6≧0であり且つr5+r6=6である);
(5):[Bi(L1)r7(L2)r8](ここで、r7≧1且つr8≧0であり且つr7+r8=3である);
(6):[Mn(L1)r9(L2)r10](ここで、r9≧1且つr10≧0であり且つr9+r10=3である):
(7):[Fe(L1) r11(L2)r12](ここで、r11≧1且つr12≧0であり且つr11+r12=3である)
(ここで、
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、リガンドL1の数≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、リガンドL2の数≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記触媒系Xが、次の式(8)〜(33)の金属錯体又は塩より成る群から選択される少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含むことを特徴とする、請求項4に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(8):[Ce(t−Bu−acac)3](ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(9):[Ce(acac)3](ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(10):[Ce(EAA)3](ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(11):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2](ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(12):[Mo(O2)(Cy−acac)2](ここで、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオン又は2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである);
(13):[Mo(O2)(acac)2](ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(14):[Mo(O2)(Cp−acac)2](ここで、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオン又は2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである);
(15):[Mn(acac)3](ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(16):[Fe(t−Bu−acac)3](ここで、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオン又は2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(17):[Fe(EAA)3](ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(18):[Fe(EAA)2(エチルヘキサノアート)](ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(19):[Fe(EAA)(エチルヘキサノアート)2](ここで、EAA=エチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(20):[Fe(acac)3](ここで、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオン又は2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(21):[Fe(トリフルオロ−acac)3](ここで、トリフルオロ−acac=トリフルオロアセチルアセトナートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](ここで、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](ここで、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(24):[Fe(tBu−AA)3](ここで、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオン又はアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである);
(27):[Bi(hfacac)3](ここで、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオンである);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];及び
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2]。
【請求項6】
前記のβ−ジカルボニラートリガンドL1が次式のβ−ジケトンから誘導されたβ−ジケトナートアニオン又は次式のβ−ケトエステルから誘導されたβ−ケトエステラートアニオンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
1COCHR2COR3 (34)
{ここで、
1は置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C30炭化水素ベース基又は置換若しくは非置換芳香族基を表わし;
2は水素又は炭化水素ベース基、一般的にアルキル基、有利には最大4個の炭素原子を有するものを表わし;
3は置換若しくは非置換の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状C1〜C30炭化水素ベース基、置換若しくは非置換芳香族基、又は−OR4基(ここで、R4は置換若しくは非置換の直鎖状、環状若しくは分岐鎖状C1〜C30炭化水素ベース基を表わす)を表わし;
1及びR2は一緒になって環を形成することもでき;そして
2及びR4は一緒になって環を形成することもできる。}
【請求項7】
式(34)のβ−ジケトンが次のβ−ジケトン:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac)];ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン及び4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタン:より成る群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
2が次のアニオン:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラト(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロヨーダト(1-)[IF6-、オキソクロラト(1-)(ClO)-、ジオキソクロラト(1-)(ClO2-、トリオキソクロラト(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラト(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ハイパーオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラト(C25S)-、2−クロロエタノラト(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラト[C64(NO2)O]-、ホルマト(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-, シアナト(NCO)-、チオシアナト(NCS)-、セレノシアナト(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N-NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナト(H2PO2-、カルボキシラト、エノラト、アミド類、アルキラト及びアリーラト:より成る群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
2が次のアニオン:アセテート、オキサレート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネート及びオキシドO2-アニオン:より成る群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
触媒として有効量の請求項1〜9のいずれかに記載の少なくとも1種の触媒系Xと、次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;並びに
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF:
を含むシリコーンベースBとを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる2構成型系であって、
前記組成物を形成するために混合することが予定される2つの別個の部分P1及びP2の形にあること、並びにこれらの部分の内の一方が、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての請求項1〜9のいずれかに記載の触媒系Xと架橋剤Dとを含み、もう一方の部分が上記の種を含まずに次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに;
・0.001〜10重量部の水:
を含むことを特徴とする、前記2構成型系。
【請求項12】
湿分の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下で架橋してエラストマーになる1構成型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
・少なくとも1種の、アルコキシ、オキシム、アシル及び/又はエノキシタイプ(好ましくはアルコキシタイプ)の官能化された末端を有する架橋性線状ポリオルガノポリシロキサン;
・フィラー;並びに
・請求項1〜9のいずれかに記載の触媒系X:
を含むことを特徴とする、前記1構成型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項13】
(a)次のもの:
・有機基が炭化水素ベース基(好ましくは1〜20個の炭素原子を有するアルキル;3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル;2〜8個の炭素原子を有するアルケニル及び5〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニルより成る群から選択される炭化水素ベース基)である反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマーである、重縮合によって架橋し得る少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに、
・0.1〜60重量部の、ポリアルコキシシラン、ポリアルコキシシランの部分加水分解から得られた生成物及びポリアルコキシシロキサンより成る群から選択される少なくとも1種の架橋剤D;
・0〜60重量部の、粘着促進剤E;
・0〜250重量部、好ましくは5〜200重量部の、少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF;
・0.001〜10重量部の水;
・0〜100重量部の、少なくとも1種の非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーG(このポリマーGは、分子中のケイ素原子に結合した複数の一価有機置換基が互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリーレン及びアリールアルキレン基から選択される線状ホモポリマー又はコポリマーから成る);
・0〜20重量部の着色用ベース又は着色剤H;
・0〜70重量部のポリオルガノシロキサン樹脂I;並びに
・0〜20重量部の、当業者に周知の補助添加剤J、例えば可塑剤、架橋遅延剤、鉱油、抗菌剤又は熱安定剤、例えばチタン、鉄又はセリウム酸化物:
を含むシリコーンベースB;並びに
(b)0.1〜50重量部の、請求項1〜9のいずれかに記載の触媒系X:
を含み、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる、請求項10に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の2構成型系又は請求項1〜10、12及び13のいずれかに記載の組成物を架橋させて硬化させることによって得られるエラストマー。
【請求項15】
(a)次の式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mは銅、銀、鉄、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウム及びマンガンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はβ−ジカルボニラートアニオン又はβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の少なくとも1種の金属錯体又は塩Aを含み、そして
(b)次の方法:
・工程1:前記金属錯体又は塩Aを少なくとも1種の油状オルガノポリシロキサンポリマーK(その粘度が少なくとも100mPa・s、好ましくは少なくとも5000mPa・s、より一層好ましくは少なくとも10000mPa・sであるもの)中に分散させ、そして
・工程2:この混合物を、随意に混練後に、触媒系Xである均質混合物が得られるまでミル粉砕する:
に従って製造されたものであることを特徴とする、触媒系X。
【請求項16】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての、請求項1〜9及び15のいずれかに記載の触媒系Xの使用。

【公表番号】特表2011−506741(P2011−506741A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538839(P2010−538839)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001772
【国際公開番号】WO2009/106722
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】