説明

容器内部の洗浄方法

【目的】容器内に配置された噴射ノズルからの洗浄液により容器の内部を洗浄する場合において、手作業によらずに粘着質の汚れを効果的に洗い落とせるようにする。
【構成】開口部30を有する函体3と、開口部30に対して開閉可能に装着された可動式扉4と、函体3内に配置された噴射ノズル71とを備えた容器の内部を洗浄する場合においては、先ず、函体3の開口部30を可動式扉4により閉鎖する。次に、容器内面、すなわち函体3の内面および可動式扉4の内側面へ向けて噴射ノズル71から温水を噴射し、続けて容器内面へ向けて噴射ノズル71から泡沫状洗剤を間欠的に噴射する。その後、容器内面へ向けて噴射ノズル71から高圧水を噴射し、泡沫状洗剤を洗い流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内部の洗浄方法、特に、開口部を有する函体と、当該開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、函体内に配置された噴射ノズルとを備えた容器の内部の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工において用いられる真空冷却装置は、冷却処理する食品を出し入れするための扉を有する容器と、当該容器内を減圧するための減圧装置とを主に備えている。この真空冷却装置により食品を冷却する場合は、扉を開放し、容器内に食品を収容する。そして、扉を閉鎖してから減圧装置を作動させ、容器内を減圧する。これにより、容器内圧が低下し、食品の水分が蒸発することで気化熱を奪われ、食品は冷却処理される。冷却処理後、容器から食品を取り出すときは、減圧装置を停止して容器内圧を大気圧に戻した後、扉を開放して容器内から処理された食品を取り出す。
【0003】
このような真空冷却装置の容器内部は、食品片が付着し、汚染される。特に、容器内を減圧する際、食品中の残留空気も併せて排出されるため、その勢いにより食品の一部が破裂し、容器内部に食品片が付着しやすい。このため、容器は、一定期間毎若しくは食品の冷却処理毎に内部を洗浄する必要がある。
【0004】
ところで、上述のような真空冷却装置において、容器内部の洗浄は、作業者の手作業による場合が多い(特許文献1の[0004])。この場合の洗浄作業は、ブラシ等の用具を用いて温水や洗剤により容器内面を清拭し、清拭された内面を清水で濯いでいる。この作業は、通常、扉を開放して実施することになるため、扉の構造によっては、その内側面の洗浄に長時間を要する場合がある。真空冷却装置が大型の場合は、作業者が容器内に立ち入って洗浄作業をすることができるので、扉を閉鎖して洗浄作業を実施すれば、扉の内側面の洗浄も可能であるが、容器内での作業中に他者が真空冷却装置を誤作動すると作業者に危険をもたらす可能性がある。
【0005】
そこで、容器の内部に洗浄液の噴霧ノズルを配置し、内部の自動洗浄を図ったものが提案されている。例えば、特許文献2は、食品を収容する容器の内部に噴霧ノズルを配置したフリーザーを提案している。このフリーザーは、容器内を洗浄する場合において、界面活性剤を含むムース状発泡体を噴霧ノズルから噴霧し、続いて噴霧ノズルから温水を噴霧している。これによれば、ムース状発泡体に含まれる界面活性剤により容器の内面を洗浄することができ、また、洗浄したムース状発泡体を温水により洗い流すことができる。
【0006】
しかし、この洗浄方法は、容器の内面に付着した汚れが米飯汚れのような粘着質の場合、当該汚れを効果的に洗い落せない場合が多く、洗い残りの粘着質の汚れを除去するためには手作業に頼らざるを得ない可能性が高い。
【0007】
本発明の目的は、開口部を有する函体と、開口部に対して開閉可能に装着された蓋体とを備えた容器の内部を函体内に配置された噴射ノズルからの洗浄液により洗浄する場合において、手作業によらずに、自動的に粘着質の汚れを効果的に洗い落とせるようにすることにある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−140101公報
【特許文献2】特開2004−8944公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄方法は、開口部を有する函体と、函体の開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、函体内に配置された噴射ノズルとを備えた容器内部の洗浄方法であり、函体の開口部を蓋体により閉鎖する工程と、函体の内面および蓋体の内側面へ向けて噴射ノズルから温水を噴射する前洗浄工程と、温水の噴射後に、函体の内面および蓋体の内側面へ向けて噴射ノズルから泡沫状洗剤を間欠的に噴射する主洗浄工程と、泡沫状洗剤の噴射後に、函体の内面および蓋体の内側面へ向けて噴射ノズルから高圧水を噴射する後洗浄工程とを含んでいる。
【0010】
この洗浄方法では、前洗浄工程において噴射ノズルから噴射される温水により、函体の内面および蓋体の内側面(以下、この説明において「容器内面」と云う)に付着した汚れが粗洗浄される。また、次の主洗浄工程において噴射ノズルから噴射される泡沫状洗剤により、容器内面に付着した粘着質の汚れが洗浄される。この際、噴射ノズルから噴射された泡沫状洗剤は、容器内面に付着し、粘着質の汚れを泡沫および洗剤の作用により容器内面から徐々に浮き上がらせながら、容器内面に沿って垂れ落ちる。このような泡沫状洗剤による洗浄作用は、泡沫状洗剤が噴射ノズルから間欠的に噴射されるため、容器内面に対して一定時間毎に繰り返される。この結果、容器内面に付着した粘着質の汚れは、容器内面から効果的に浮き上がる。そして、このような主洗浄工程の後、後洗浄工程を実施すると、容器内面から浮き上がった粘着質の汚れおよび容器内面に付着した泡沫状洗剤は、噴射ノズルから噴射された高圧水の衝撃により容器内面から洗い落される。
【0011】
この洗浄方法では、通常、噴射ノズルからの高圧水の噴射時を除き、開口部と蓋体との間に排水用の隙間を設ける。このようにすれば、温水および泡沫状洗剤などを容器内部に溜めずに排出することができるため、容器内面の隅々までより効果的に洗浄することができ、また、高圧水による飛沫が容器外へ飛散するのを防止することができる。
【0012】
本発明の容器は、開口部を有する函体と、函体の開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、函体の内部に配置された噴射ノズルと、噴射ノズルに対して温水を供給するための温水経路と、噴射ノズルに対して泡沫状洗剤を間欠的に供給するための洗剤経路と、噴射ノズルに対して高圧水を供給するための高圧水経路と、温水経路、洗剤経路および高圧水経路をこの順に作動させる制御手段とを備えている。
【0013】
この容器は、函体の開口部を蓋体により閉鎖した状態において、制御手段が温水経路を作動させると、温水経路から噴射ノズルに対して温水が供給される。この温水は噴射ノズルから函体の内面および蓋体の内側面(以下、この説明において「容器内面」と云う)へ向けて噴射される。これにより、容器内面に付着した汚れは、温水により粗洗浄される。次に、制御手段は、洗剤経路を作動させる。これにより、洗剤経路から噴射ノズルに対して泡沫状洗剤が供給され、この泡沫状洗剤は噴射ノズルから容器内面へ向けて噴射される。この結果、容器内面に付着した粘着質の汚れが洗浄される。この際、噴射ノズルから噴射された泡沫状洗剤は、容器内面に付着し、粘着質の汚れを泡沫および洗剤の作用により容器内面から徐々に浮き上がらせながら、容器内面に沿って垂れ落ちる。このような泡沫状洗剤による洗浄作用は、泡沫状洗剤が噴射ノズルから間欠的に噴射されるため、容器内面に対して一定時間毎に繰り返される。この結果、容器内面に付着した粘着質の汚れは、容器内面から効果的に浮き上がる。次に、制御部は、高圧水経路を作動させる。これにより、高圧水経路から噴射ノズルに対して高圧水が供給され、この高圧水は噴射ノズルから容器内面へ向けて噴射される。この結果、容器内面から浮き上がった粘着質の汚れおよび容器内面に付着した泡沫状洗剤は、噴射ノズルから噴射された高圧水の衝撃により容器内面から洗い落される。
【0014】
この容器において、蓋体は、通常、函体の開口部との間に排水用の隙間が生じるよう当該開口部に対して開閉可能に装着されており、また、排水用の隙間は、可動式のシール手段により、高圧水経路の作動中を除いて開放状態に設定され、また、高圧水経路の作動時に閉鎖状態に設定される。
【0015】
容器において、函体の開口部と蓋体との間に排水用の隙間が生じると、温水および泡沫状洗剤などを容器内部に溜めずに排出することができるため、容器内面の隅々までより効果的に洗浄することができる。また、排水用の隙間は、可動式シール手段により高圧水経路の作動時は閉鎖状態に設定されるため、噴射ノズルからの高圧水による飛沫が排水用の隙間から容器の外部へ飛散するのが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る容器内部の洗浄方法は、開口部を有する函体と、開口部に対して開閉可能に装着された蓋体とを備えた容器の内部を函体内に配置された噴射ノズルからの洗浄液により洗浄する場合において、噴射ノズルから泡沫状洗剤を間欠的に噴射しているため、函体の内面および蓋体の内側面に付着した汚れ、特に粘着質の汚れを手作業によらずに効果的に洗い落とすことができる。
【0017】
本発明の容器は、開口部を有する函体と、開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、函体の内部に配置された噴射ノズルと、噴射ノズルに対して泡沫状洗剤を間歇的に供給するための洗剤経路とを備えているため、函体の内面および蓋体の内側面に付着した汚れ、特に粘着質の汚れを手作業によらずに自動的に、かつ、効果的に洗い落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および図2(図1のII−II断面概略図)を参照して、本発明の実施の一形態に係る容器が採用された真空冷却装置を説明する。図1および図2において、真空冷却装置1は、食品を冷却するためのものであり、筐体2、食品Fを収容するための函体3、可動式扉4(蓋体の一例)、可動式扉4を収容するための扉格納部5、減圧装置6、洗浄装置7、可動式パッキン8(可動式シール手段の一例)、排水溝9および制御装置10(制御手段の一例)を主に備えている。
【0019】
筐体2は、函体3、減圧装置6、洗浄装置7、排水溝9および制御装置10などを一体的に収容するためのものであり、概ね直方体形状に形成されている。また、筐体2は、後述する函体3の開口部30に連絡する開口20を有している。
【0020】
函体3は、冷却する食品Fを収容するためのものであって開口部30を有する立方体形状に形成されており、開口部30を除いて気密に形成されかつ耐圧性を有している。開口部30は、筐体2の開口20と連絡しており、食品Fを函体2内へ出し入れするためのものである。函体3は、開口部30の周縁において、外側へ突出する一連のフランジ部31を有している。また、函体3の内部には、函体3の内圧や温度等のパラメータを計測するための各種センサー(図示せず)が装着されている。
【0021】
可動式扉4は、函体3のフランジ部31との間に隙間40を設けて配置されたシャッター状のものである。具体的には、可動式扉4は、細長い短冊状の部材を幅方向に気密に多数配列したものであり、部材間が屈曲可能に連結され、全体として屈曲可能なものである。また、可動式扉4は、筐体2において上下方向に形成された一対のガイドレール(図示せず)に両側縁部が嵌めこまれており、このガイドレールに沿って上下方向へスライド可能である。
【0022】
扉格納部5は、筐体2の上部に配置されており、断面形状が半円状に設定されている。扉格納部5は、筐体2側のガイドレールと繋がる一対の円弧状の格納レール50を備えており、また、可動式扉4をカイドレールに沿って上下方向へスライドさせるための開閉機構(図示せず)を備えている。
【0023】
減圧装置6は、主に減圧用の真空ポンプ60を備えている。真空ポンプ60は、函体3内の空気を吸引するためのものであり、吸引した空気を筐体2の外部へ排出可能である。
【0024】
洗浄装置7は、洗浄液を供給するための供給装置70と、函体3内に配置された噴射ノズル71とを主に備えている。図3を参照して、供給装置70を説明する。供給装置70は、函体3の内奥面の中央部において開口する洗浄液の供給路701を有している。供給路701の開口には、函体3内において、噴射ノズル71の接続管702が着脱可能に装着されている(図2)。接続管702は、先端部が函体3の略中心部に位置するよう、函体3において水平に突出している。また、供給路701には、函体3の外部において、温水経路710、高圧水経路720および洗剤経路730が集合して連絡している。
【0025】
温水経路710は、供給路701側から順に逆止弁711、第一電磁弁712および混合弁713をこの順に有しており、混合弁713には蒸気経路714と給水経路715とが連絡している。蒸気経路714は、混合弁713側から順に逆止弁716と第二電磁弁717とを有しており、蒸気供給路(図示せず)と連絡している。給水経路715は、混合弁713側から順に逆止弁718と第三電磁弁719とを有しており、水道水経路(図示せず)と連絡している。
【0026】
高圧水経路720は、供給路701側から順に逆止弁721、第四電磁弁722およびポンプ723を有しており、給水経路715と連絡している。ポンプ723は、給水経路715からの給水を加圧して供給路701へ供給するためのものである。
【0027】
洗剤経路730は、供給路701側から順に逆止弁731、第五電磁弁732、洗剤タンク733および第六電磁弁734を有しており、洗剤経路730内へ空気を供給するための、空気供給装置(図示せず)と連絡している。洗剤タンク733は、函体3の内面および可動式扉4の内側面を洗浄するための洗剤を貯留するためのものであり、空気導入路735と洗剤供給路736とを備えている。空気導入路735は、洗剤経路730から分岐しており、洗剤タンク733内の空間に空気供給装置からの空気を供給するためのものである。洗剤供給路736は、洗剤タンク733の底部から延びかつ洗剤経路730と連絡しており、洗剤タンク733内の洗剤を洗剤経路730へ供給するためのものである。
【0028】
上述の洗浄装置7において、各電磁弁712,717,719,722,732,734は、流路を開閉するためのものであり、また、開度を調節可能なものである。
【0029】
噴射ノズル71は、供給路701からの洗浄液を函体3の内面および可動式扉4の内側面に対して噴射可能な回転ノズルであり、接続管702の先端部に着脱可能に装着されている。
【0030】
可動式パッキン8は、図4に示すように、函体3のフランジ部31の全体に装着された、伸縮可能な一連のゴム製チューブからなり、空気供給装置(図示せず)から延びる空気供給経路80が連絡している。空気供給経路80は、可動式パッキン8内へ空気を供給して可動式パッキン8を膨張させるためのものであり、また、空気の供給量を制御可能でありかつ可動式パッキン8内の空気を排出するための排気装置(図示せず)を備えた第七電磁弁81を有している。
【0031】
排水溝9は、筐体2内において、函体3の下部に配置されており、また、筐体2の外部へ延びており、函体3と可動式扉4との隙間40と連絡している。
【0032】
制御装置10は、真空冷却装置1の動作を電子制御するためのものであり、コンピュータ装置を備えている。コンピュータ装置は、中央処理装置(CPU)、真空冷却装置1の動作プログラムを記憶した読出専用記憶装置(ROM)、動作に必要な各種情報を一時的に記憶するための書換可能記憶装置(RAM)および入出力ポート備えており、入出力ポートには、真空冷却装置1へ各種の動作指令を入力するための操作盤および動作状況を表示するための表示器、扉格納部5の開閉機構、減圧装置6、洗浄装置7および可動式パッキン8における各種作動部位並びに各種センサーが連絡している。
【0033】
次に、真空冷却装置1の動作を説明する。以下の動作は、制御装置10の操作盤から動作指令を入力すると実行される。
真空冷却装置1により食品Fを冷却処理する場合は、先ず、扉格納部5の開閉機構を作動させて函体3の開口部30を開放する。ここで、可動式扉4は、開閉機構により筐体2側のガイドレールに沿って図2の上方向へ移動し、格納レール50に沿って円弧状に屈曲しながら扉格納部5内に格納される。そして、噴射ノズル71と共に接続管702を供給路701から取り外し、供給路701の開口部を閉鎖具により気密に閉鎖する。また、開口部30から函体3内へ食品Fを搬入する。
【0034】
次に、開閉機構を作動させて開口部30を可動式扉4により閉鎖すると、可動式パッキン8が作動する。ここでは、第七電磁弁81が作動し、空気供給装置(図示せず)から空気供給経路80を通じて可動式パッキン8内へ空気が供給される。これにより、可動式パッキン8は、図4に二点鎖線で示すように膨張して可動式扉4に圧接し、隙間40を気密に閉鎖する。この結果、函体3および可動式扉4は、気密に維持された耐圧性の容器を形成することになる。その後、減圧装置6の真空ポンプ60を作動させると、函体3内の空気が外部へ排出される。これにより、函体3内が減圧状態となって温度が低下し、食品Fは冷却処理される。
【0035】
冷却処理された食品Fを取り出す場合は、減圧装置6を停止して函体3内を大気圧に戻し、また、可動式パッキン8を停止する。可動式パッキン8の停止時は、第七電磁弁81を作動させ、可動式パッキン8への空気の供給を停止すると共に排気装置により可動式パッキン8内の空気を排気する。これにより、可動式パッキン8は図4に実線で示すような収縮状態に復帰する。この結果、隙間40が復活し、可動式扉4がガイドレールに沿って移動可能になる。この状態で開閉機構により可動式扉4を扉格納部5内に格納すると、開口部30が現れ、食品Fを取り出すことができる。
【0036】
真空冷却装置1は、函体3内を減圧した場合に食品Fの一部が破裂することがあるため、函体3の内面および可動式扉4の内側面が食品Fの一部により汚染される場合がある。この場合、函体3の内面および可動式扉4の内側面は、洗浄装置7により自動洗浄することができる。そこで、次に、図5〜図7の動作フローチャートに基づいて、洗浄装置7による洗浄動作を説明する。
【0037】
自動洗浄を実行する場合は、先ず、供給路701に対して噴射ノズル71が装着された接続管702を接続する。そして、制御装置10の操作盤において洗浄開始指令を入力すると、動作プログラム(以下、単に「プログラム」と云う)は、ステップS1において、可動式扉4の閉鎖作業を実行する。ここでは、開閉機構を作動させて函体3の開口部30を可動式扉4により閉鎖する。この際、プログラムは、可動式パッキン8を作動させず、可動式扉4と開口部30との隙間40を確保する。
【0038】
次に、ステップS2において、噴射ノズル71へ供給する温水の温度設定作業を実行する。ここでは、第二電磁弁717および第三電磁弁719を開き、蒸気経路714を経由して蒸気を、また、給水経路715を経由して水道水を、それぞれ混合弁713に対して供給する。これにより、混合弁713において、蒸気と水道水とが混合され、温水が調製される。この温水の温度は、第二電磁弁717および第三電磁弁719の開度を調節すると、任意に設定することができる。
【0039】
次に、ステップS3において、プログラムは、第一電磁弁712を開放する。これにより、混合弁713において調製された温水は、温水経路710、供給路701および接続管702を通じて噴射ノズル71へ供給され、噴射ノズル71は、この温水の噴射を開始する。噴射された温水は、函体3の内面および可動式扉4の内側面の全体(以下、「容器内面」と云う場合がある)に対して均一に噴射され、容器内面を洗浄する(前洗浄工程)。
【0040】
ステップS3の後、プログラムは、ステップS4において、制御装置10の内部タイマーの経過時間tを0に設定する。そして、次のステップS5において、経過時間tが所定の経過時間t1に到達したか否かを判断する。経過時間tがt1に到達していない場合、プログラムは、前洗浄工程を継続する。そして、ステップS5において、経過時間tがt1に到達すると、プログラムは、ステップS6へ移行し、第一電磁弁712、第二電磁弁717および第三電磁弁719を閉鎖し、噴射ノズル71に対する温水の供給を停止する。これにより、噴射ノズル71からの温水の噴射が止まり、前洗浄工程が終了する。
【0041】
ステップS6の後、プログラムは、ステップS7へ移行し、洗剤経路730への空気の供給を開始する。具体的には、第六電磁弁734を開放し、また、空気供給装置(図示せず)を作動させ、洗剤経路730に対して空気を供給する。ここで、洗剤経路730へ供給された空気の一部は、空気導入路735を通じて洗剤タンク733へ供給される。洗剤タンク733へ供給された空気は、洗剤タンク733の内圧を高め、洗剤タンク733内に貯留された洗剤を洗剤供給路736を通じて洗剤経路730へ連続的に押出す。押出された洗剤は、洗剤供給路736と洗剤経路730との交差点において、洗剤経路730内を流れる空気により発泡して泡沫状洗剤になる。
【0042】
ステップS7に続き、プログラムは、ステップS8において、制御装置10の内部カウンターの数値nを1に設定する。また、次のステップS9において、制御装置10の内部タイマーの経過時間tを0にリセットする。そして、次のステップS10において、第五電磁弁732を開放する。この結果、洗剤経路730において調製された泡沫状洗剤は、供給路701および接続管702を経由して噴射ノズル71へ連続的に供給される。噴射ノズル71へ供給された泡沫状洗剤は、噴射ノズル71から容器内面に対して均一に噴射され、容器内面を洗浄する(洗剤洗浄工程)。ここで、容器内面へ噴射された泡沫状洗剤は、容器内面に付着した各種の汚れ、特に、米飯や麺類等に由来の粘着質の汚れを泡沫および洗剤の作用により容器内面から徐々に浮き上がらせながら、容器内面に沿って垂れ落ちる。
【0043】
次のステップS11において、プログラムは、経過時間tがt2に到達したか否かを判断する。経過時間tがt2に到達していない場合、プログラムは、噴射ノズル71からの泡沫状洗剤の噴射を継続する。一方、経過時間tがt2に到達したと判断した場合、プログラムは、ステップS12へ移行し、第五電磁弁732を閉鎖する。これにより、噴射ノズル71に対する泡沫状洗剤の供給が止まり、噴射ノズル71からの泡沫状洗剤の噴射が停止する。そして、次のステップS13において内部タイマーの経過時間tを0にリセットし、また、続くステップS14において内部カウンターの数値nに1を加える。
【0044】
次のステップS15において、プログラムは、内部カウンターの数値nが所定の数値N1に到達したか否かを判断する。内部カウンターの数値nが所定の数値N1に到達していない場合、プログラムは、ステップS16へ移行し、内部タイマーの経過時間tがt3に到達したか否かを判断する。経過時間tがt3に到達していない場合、プログラムはそのまま待機状態を維持する。一方、経過時間tがt3に到達した場合、プログラムは、ステップS16からステップS9へ戻り、ステップS9からステップS15を繰り返す。この結果、洗剤洗浄工程は、N1回繰り返されることになる。すなわち、ここでは、噴射ノズル71から泡沫状洗剤をt2時間噴射する洗剤洗浄工程と、t3時間の休止工程とがN1回繰り返される。換言すると、ここでは、泡沫状洗剤が一定時間毎に間欠的にN1回繰り返して噴射されることになる(主洗浄工程)。この結果、容器内面に付着した各種の汚れ、特に、米飯や麺類等の粘着質の汚れは、容器内面から効果的に浮き上がる。
【0045】
上述のような前洗浄工程および主洗浄工程において、噴射ノズル71から噴射された温水および泡沫状洗剤は、容器内面に沿って落下し、函体3と可動式扉4との隙間40から排水溝9へ流れて筐体2の外部へ排出される。このため、これらの洗浄工程において、函体3内は、温水や泡沫状洗剤が溜まり難く、容器内面は隅々まで効果的に洗浄することができる。
【0046】
ステップS15において、内部カウンターの数値nがN1に到達すると、プログラムはステップS17へ移行し、内部カウンターの数値nを1にリセットする。そして、次のステップS18において、可動式パッキン8を作動する。ここでは、第七電磁弁81を作動させ、空気供給経路80から可動式パッキン8内へ空気を供給する。これにより、可動式パッキン8は、図4に二点鎖線で示すように膨張して可動式扉4に圧接し、函体3と可動式扉4との隙間40を気密に閉鎖する。
【0047】
次に、プログラムは、ステップS19へ移行して制御装置10の内部タイマーの経過時間tを0にリセットし、次のステップS20において、高圧水の噴射工程を開始する。ここでは、第四電磁弁722を開放し、ポンプ723を作動させる。これにより、給水経路715からの水道水は、ポンプ723において加圧されて高圧水になり、この高圧水は、供給路701および接続管702を通じて噴射ノズル71から容器内面へ向けて噴射される。この結果、容器内面に付着した泡沫状洗剤や汚れは、高圧水の衝撃により容器内面から剥離し、容器内面から洗い落される(後洗浄工程)。この際、隙間40が気密に閉鎖されているため、高圧水による飛沫が筐体2の外部へ飛散するのが防止される。
【0048】
ステップS20の後、プログラムは、ステップS21において、経過時間tがt4に到達したか否かを判断する。経過時間tがt4に到達していない場合、プログラムはそのまま噴射ノズル71からの高圧水の噴射を継続する。一方、経過時間tがt4に到達した場合、プログラムは、ステップS22へ移行し、噴射ノズル71からの高圧水の噴射を停止する。ここでは、ポンプ723を停止すると共に、第四電磁弁722を閉鎖する。
【0049】
ステップS22の終了後、プログラムは、ステップS23へ移行して内部カウンターの数値nに1を加え、さらに、ステップS24へ移行して可動式パッキン8を停止する。ここでは、第七電磁弁81を作動させ、空気供給経路80から可動式パッキン8内への空気供給を停止すると共に、可動式パッキン8内の空気を排気装置から排気する。これにより、可動式パッキン8は図4に実線で示すような収縮状態に復帰し、隙間40が復活する。この結果、函体3内で噴射された高圧水に由来の水、洗剤および汚れ等は、当該隙間40から排水溝9へ流れ、筐体2の外部へ排出される(排出工程)。
【0050】
次に、ステップS25において、プログラムは、内部カウンターの数値nがN2回に到達したか否かを判断する。内部カウンターの数値nがN2回に到達していない場合、プログラムは、ステップS26へ移行し、内部タイマーの経過時間tを0にリセットする。そして、次のステップS27において、経過時間tがt5に到達したか否かを判断する。経過時間がt5に到達していない場合、プログラムは、そのままの状態を維持する。すなわち、函体3内からの水や洗剤の排出を継続するために、可動式パッキン8の停止状態を維持する。一方、経過時間tがt5に到達すると、プログラムは、ステップS18へ戻り、ステップS18からステップS27を繰り返す。この結果、噴射ノズル71からの高圧水の噴射回数がN2回に到達するまでの間、t4時間の後洗浄工程と、t5時間の排出工程とが繰返して実行される。
【0051】
ステップS25において、内部カウンターの数値nがN2に到達した場合、プログラムは、洗浄作業を終了する。
【0052】
上述の洗浄作業において、前洗浄工程のための所要時間t1、洗剤洗浄工程のための所要時間t2、洗剤洗浄工程の実行間隔時間(すなわち、休止工程の所要時間)t3、後洗浄工程のための所要時間t4および後洗浄工程の実行間隔時間(すなわち、排出工程の所要時間)t5並びに噴射ノズル71からの泡沫状洗剤の噴射回数N1および後洗浄工程の繰返し回数N2は、操作盤からの入力により任意に設定することができる。
【0053】
本実施の形態に係る真空冷却装置1は、上述のように、温水を噴射する前洗浄工程の次の主洗浄工程において、泡沫状洗剤を間欠的に噴射し、また、主洗浄工程後の後洗浄工程において高圧水を噴射して泡沫状洗剤を洗い流しているので、函体3の内面および可動式扉4の内側面を手作業によらずに自動的に洗浄することができる。
【0054】
[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態では、主洗浄工程における洗剤洗浄工程から休止工程への移行時において、第五電磁弁732の閉鎖により噴射ノズル71に対する泡沫状洗剤の供給を停止しているが、第六電磁弁734の閉鎖により泡沫状洗剤の供給を停止することもできる。
【0055】
(2)上述の実施の形態において、洗剤タンク733に貯留する洗剤は、酵素入りのものが好ましい。酵素は、函体3などの内面に付着した汚れ成分に応じて選択するのが好ましく、例えば、汚れ成分が主に米飯などの炭水化物の場合はアミラーゼを、また、汚れ成分がタンパク質の場合はプロテアーゼをそれぞれ用いるのが好ましい。
【0056】
(3)上述の真空冷却装置1は、減圧装置6において真空ポンプ60を用いているが、真空ポンプ60に代えてエゼクタを用いることもできる。
【0057】
(4)上述の実施の形態では、本発明を真空冷却装置に対して適用した場合について説明したが、本発明は、真空冷却装置以外の各種容器についても同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の一形態に係る容器が採用された真空冷却装置の斜視図。
【図2】図1のII−II断面外略図。
【図3】前記真空冷却装置において用いられる洗浄装置の概略図。
【図4】前記真空冷却装置において用いられる可動式パッキンの概略図。
【図5】前記真空冷却装置の動作の一部に関する動作フローチャート。
【図6】前記真空冷却装置の動作の一部に関する動作フローチャート。
【図7】前記真空冷却装置の動作の一部に関する動作フローチャート。
【符号の説明】
【0059】
3 函体
4 可動式扉
8 可動式パッキン
10 制御装置
30 開口部
40 隙間
71 噴射ノズル
710 温水経路
720 高圧水経路
730 洗剤経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する函体と、前記開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、前記函体内に配置された噴射ノズルとを備えた容器の内部の洗浄方法であって、
前記開口部を前記蓋体により閉鎖する工程と、
前記函体の内面および前記蓋体の内側面へ向けて前記噴射ノズルから温水を噴射する前洗浄工程と、
前記温水の噴射後に、前記函体の内面および前記蓋体の内側面へ向けて前記噴射ノズルから泡沫状洗剤を間欠的に噴射する主洗浄工程と、
前記泡沫状洗剤の噴射後に、前記函体の内面および前記蓋体の内側面へ向けて前記噴射ノズルから高圧水を噴射する後洗浄工程と、
を含む容器内部の洗浄方法。
【請求項2】
前記高圧水の噴射時を除き、前記開口部と前記蓋体との間に排水用の隙間を設ける、請求項1に記載の容器内部の洗浄方法。
【請求項3】
開口部を有する函体と、
前記開口部に対して開閉可能に装着された蓋体と、
前記函体の内部に配置された噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに対して温水を供給するための温水経路と、
前記噴射ノズルに対して泡沫状洗剤を間欠的に供給するための洗剤経路と、
前記噴射ノズルに対して高圧水を供給するための高圧水経路と、
前記温水経路、前記洗剤経路および前記高圧水経路をこの順に作動させる制御手段と、
を備えた容器。
【請求項4】
前記蓋体は、前記開口部との間に排水用の隙間が生じるよう前記開口部に対して開閉可能に装着されており、かつ、前記隙間は、可動式のシール手段により、前記高圧水経路の作動中を除いて開放状態に設定され、高圧水経路の作動時に閉鎖状態に設定される、請求項3に記載の容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272195(P2006−272195A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96509(P2005−96509)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】