説明

密閉型洗浄装置及び洗浄方法

【課題】洗浄品質を向上できるとともに大気汚染や作業環境汚染を確実に防止する。
【解決手段】被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置において、前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に前記洗浄容器内を減圧する真空発生装置を設け、前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低沸点系洗浄剤での洗浄の場合、洗浄中及び休眠中を問わず大量に洗浄液が蒸発し、大気汚染や作業環境汚染を引き起こしている。これらの問題を解消する従来技術として、アキュムレータを用いて洗浄容器から排出される気化洗浄液などの気体を封じ込める密閉型洗浄装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3448009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低沸点系洗浄剤の能力をさらに引き出して洗浄品質を向上するために、洗浄容器内を減圧下にして洗浄する真空脱気洗浄装置が検討されている。しかしながら、洗浄容器内を減圧下にする場合、真空ポンプ等で、洗浄容器内を真空引きする必要がある為、洗浄容器内の気体が装置外に排出されて、大気汚染や作業環境汚染をもたらすおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、洗浄品質を向上できるとともに大気汚染や作業環境汚染を確実に防止することが可能な密閉型洗浄装置及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置において、前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に前記洗浄容器内を減圧する真空発生装置を設け、前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した密閉型洗浄装置が提供される。
【0007】
この場合、前記被洗浄物の洗浄後に行う前記被洗浄物の乾燥の際に、前記真空発生装置で前記洗浄容器内を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成することが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置を用いた洗浄方法において、前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に設けた真空発生装置を用いて、前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるようにした洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄品質を向上できるとともに大気汚染や作業環境汚染を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態による密閉型洗浄装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態による洗浄液供給工程を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態による真空脱気超音波洗浄工程を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による洗浄液排出工程を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態による蒸気洗浄工程を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による洗浄液蒸留再生工程を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態による乾燥工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施の形態を説明する。
【0012】
既に述べた通り、洗浄容器内を減圧下にして洗浄する場合、真空ポンプを用いて洗浄容器内を減圧すると、洗浄容器内の気体が装置外に排出されて、大気汚染や作業環境汚染をもたらすおそれがある。本発明の一実施の態様によれば、洗浄の際に洗浄容器内を真空発生装置を用いて気密状態で減圧し、減圧の際に真空発生装置内で生じる圧力変動を、洗浄液供給や洗浄の際に洗浄容器内の圧力変動を吸収させているアキュムレータを使って吸収させる。このように、減圧の際の真空発生装置内の気体の圧力変動をアキュムレータで吸収させることで、洗浄装置外に気体が排出されるのを防止できる。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態による密閉型洗浄装置の構成図である。密閉型洗浄装置100は、洗浄容器110と、アキュムレータ170と、真空発生装置160とを主に備えている。図1の例では、さらに、蒸気発生槽141、洗浄液回収槽131、洗浄液貯留槽121、及び蒸留再生装置150を備えている。
【0014】
洗浄容器110は、洗浄液を用いて被洗浄物の洗浄を行う真空引きが可能なチャンバで構成されている。この洗浄容器110は、例えば、1つのチャンバで、浸漬洗浄工程、蒸気洗浄工程、乾燥工程など複数の工程処理が行えるように構成されている。そのために、洗浄容器110は、被洗浄物を洗浄液に浸漬して洗浄する浸漬洗浄工程では液体洗浄槽として機能し、被洗浄物を洗浄液の蒸気で洗浄する蒸気洗浄工程では蒸気洗浄槽として機能し、蒸気を凝縮させることにより雰囲気を乾燥させて被洗浄物を乾燥させる乾燥工程では乾燥槽として機能するように構成される。なお、洗浄容器110内には、図示しないが、加熱手段(ヒータ)が設けられ、洗浄液を所定の温度に加熱するようになっている。
【0015】
洗浄容器110には、その上部に弁113を設けた配管115が接続される。この配管115は、洗浄液を洗浄容器110内に供給する洗浄液供給工程では洗浄液と置換される気体を追い出し(図2参照)、浸漬洗浄を行う真空洗浄工程では洗浄容器110内を減圧するために洗浄容器110内の気体を排気し(図3参照)、使用済みの洗浄液を洗浄容器110から排出する液排出工程では洗浄液と置換される気体を戻し(図4参照)、蒸気洗浄工程では蒸気と置換される気体を追い出し(図5参照)、乾燥工程では洗浄容器110内を減圧するために洗浄容器110内の気体を排気するようになっている(図7参照)。
【0016】
また、洗浄容器110には、その中間部に弁114を設けた配管116が接続され、洗浄液供給工程で洗浄液を洗浄容器110内に供給するようになっている。また、洗浄容器110には、その下部に弁142を設けた配管117が接続され、蒸気洗浄工程で蒸気を洗浄容器110内に供給するようになっている。さらに、洗浄容器110には、その底部に弁132を設けた配管118が接続され、液排出工程で洗浄液を洗浄容器110内から排出するようになっている。
【0017】
洗浄容器110内には、超音波振動子111が設けられて、浸漬洗浄工程時に洗浄容器110内の洗浄液に振動を与えるようになっている。
【0018】
洗浄容器110で処理される被洗浄物としては、金属加工品、プレス加工品、ダイキャスト、樹脂成型品、各種パネル、型抜き品などが挙げられる。これらの被洗浄物は洗浄籠180に収容されて処理されるようになっている。洗浄籠180は、例えば、被洗浄物を収容する網状または格子状のかごから構成されており、種々の形状がある。洗浄籠180を回転させたい場合、丸形バスケットは有用である。図示例では、回転カゴと呼ばれる回転専用丸型バスケットが用いられる。洗浄籠180は、洗浄容器110内に設けたローラ112上に跨がって支持され、モータにより水平軸を中心にチャンバ内で転動するようになっている。
【0019】
洗浄内容には、例えば動車部品精密機械部品などの切削加工油の脱脂洗浄、フラックスの洗浄、金属加工油の脱脂洗浄等がある。洗浄液には、例えば臭素系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系、または超純水、純水、水などの低沸点系洗浄剤が使用される。また、洗浄の補助剤として軽洗剤、アルカリ電解水、防錆剤、IPA又はエタノールが使用されることもある。
【0020】
アキュムレータ170は、洗浄容器110に接続されて洗浄容器110内の圧力変動を気密状態で吸収するように構成されている。アキュムレータ170には、弁166を設けた配管175が接続されている。この配管175が、前述した洗浄容器110の上部に設けた配管115と接続されることにより、アキュムレータ170と洗浄容器110とが連通される。これにより、アキュムレータ170は、洗浄容器110に溜まる気体をアキュムレータ170に出し入れすることにより、洗浄容器110内の圧力変動を吸収するようになっている。気体は大気や洗浄液が気化した気化洗浄液などである。
【0021】
アキュムレータ170は、例えば浮き屋根式貯蔵タンクで構成され、下容器171と蓋容器172とを備える。下容器171は、上部が開口し、下部に前記気体と反応しない水などの不活性液体176を貯める。蓋容器172は、この下容器171の開口を覆う。蓋容器172は所定の重量を持ち、下容器171の開口に嵌め込まれて不活性液体176上に浮いている。前記配管175が底部から下容器171内を通って蓋容器172の内部上方まで達するように挿入され、気体が蓋容器172内に導かれて、蓋容器172内に溜まるようになっている。蓋容器172内の空間に溜まるガス圧及び不活性液体176が与える浮力と、蓋容器172の重力とがバランスした位置で、蓋容器172が不活性液体176上に浮上支持される。洗浄容器110内の圧力の変動に応じて、蓋容器172内に溜まるガス量が変化して、蓋容器172が上下動して、洗浄容器110内を一定の圧力に保持する。
【0022】
真空発生装置160は、洗浄容器110内を減圧するとともに、洗浄容器110内の減圧時に伴う気体の容積変動をアキュムレータ170に気密状態で吸収させるように構成されている。真空発生装置160は、タンク161と、該タンク161の上部に設けた循環入口と下部に設けた循環出口とを接続する循環路161aと、該循環路161aの途中に設けられたフィルタ164と、液体循環ポンプ163と、エゼクタ162とから構成されている。真空発生装置160の入力となるエゼクタ162の気体吸込口は、弁165を設けた配管169に接続され、この配管169は洗浄容器110に通じる前記配管115に接続されている。また、真空発生装置160の出力となる前記タンク161の上部に設けた気体排出口は、配管181を介してアキュムレータ170に通じる配管175に接続されている。
【0023】
前記エゼクタ162は、洗浄容器110内の気体をタンク161内に引き込んで洗浄容器110内を減圧する。エゼクタ162は、流路の断面積が次第に小さくなったノズル部を有し、このノズル部の途中に吸込口が開口している。従って、液体循環ポンプ163から圧送されたタンク161内の駆動液体183がエゼクタ162のノズル部を通過すると
、ノズル部を通過する際に流速が急激に増加するとともに圧力が低下する。これによりノズル部に負圧が発生し、この負圧により洗浄容器110内の吸込気体がエゼクタ162の吸込口から吸い込まれ、駆動液体183とともにタンク161内に引き込まれ、洗浄容器110の内部を所定の減圧状態とすることができる。なお、タンク161内に貯められる駆動液体183は、前記アキュムレータ170の不活性液体176と同じものでもよく、気化洗浄液またはその他の気体と反応しない液体、例えば水である。
【0024】
前記タンク161は、循環させる駆動液体183を貯めるとともに、エゼクタ162によってタンク161内の駆動液体183中に引き込まれた気体を気液分離する。タンク161は、例えば、アキュムレータ170と同様に、浮き屋根式貯蔵タンクで構成され、下容器167と蓋容器168とを備える。下容器167は、上部が開口し、下部に駆動液体183を貯める。タンク161内に貯められた駆動液体183は液体循環ポンプ163により循環路161aを介して循環する。蓋容器168は、下容器167の上部開口を覆う。蓋容器168は所定の重量を持ち、下容器167の上部開口に嵌め込まれて駆動液体183上に浮いている。タンク161の循環入口に接続された循環路161aは蓋容器168の直下まで達するように挿入されている。循環入口から引き込まれたガスは、蓋容器168内の駆動液体183中に導かれた後、浮上して気液分離され、蓋容器168内に溜まるようになっている。蓋容器168内の空間に溜まった気体は、その圧力が所定値を超えると、アキュムレータ170に放出される。気体の放出は、蓋容器168内の空間に溜まるガス圧とアキュムレータ170内のガス圧とがバランスをとるようよう行われる。これにより、蓋容器168内の空間に溜まるガス圧、アキュムレータ170のガス圧、及び駆動液体183が与える浮力と、蓋容器168の重力とがバランスした位置で、蓋容器168は駆動液体183上に浮上支持される。
【0025】
タンク161の下容器167内に冷却手段182が設けられ、駆動液体183を冷却するようになっている。これにより、エゼクタ162を通って循環する駆動液体183の温度上昇を抑制することができる。温度上昇の抑制により、駆動液体183の密度が上がり、蓋容器168内の気体収納容積が増加するので、洗浄容器110内の真空到達度を向上することができる。
【0026】
蒸気発生槽141は加熱手段144を備え、内部に供給された洗浄液を加熱手段144で沸騰させて蒸気を発生する。蒸気発生槽141で発生した蒸気は、配管117を通じて洗浄容器110内に供給される。また、蒸気発生槽141は、弁143、フィルタ124、及びポンプ123を設けた配管145を介して洗浄液貯留槽121と接続されている。洗浄液貯留槽121内の洗浄液は、ポンプ123でくみ上げられ、フィルタ124で濾過されて蒸気発生槽141に供給されるようになっている。
【0027】
洗浄液回収槽(汚液槽)131は、その入口が洗浄容器110に通じる前記配管118に接続されている。洗浄液回収槽131は、その液位が洗浄容器110の液位よりも低い位置にあるように設けられており、洗浄容器110から排出される液体を重力で回収するようになっている。また、その出口がポンプ133、フィルタ134、及び弁153を設けた配管135を介して蒸留再生装置150に接続されている。これにより、洗浄容器110で使用された洗浄液を回収する。洗浄液回収槽131で洗浄容器110内の洗浄液を回収する際、この回収を気密状態で行うために、洗浄容器110はアキュムレータ170と連通させ、アキュムレータ170から洗浄容器110内に気体を戻すようになっている。
【0028】
洗浄液貯留槽(清液槽)121は、清浄な洗浄液を貯めるようになっている。洗浄液貯留槽121は、その供給口がポンプ123及びフィルタ124が設けられた配管126を介して、洗浄容器110に通じる弁114を設けた前記配管116に接続され、ポンプ1
23で洗浄液貯留槽121から洗浄液をくみ上げて濾過しつつ洗浄容器110に供給するようになっている。洗浄液を洗浄容器110内に供給する際、この供給を気密状態で行うために、洗浄容器110はアキュムレータ170と連通させ、洗浄容器110内の圧力上昇をアキュムレータ170で吸収するようになっている。また、洗浄液貯留槽121はその出口が弁122を設けた配管127を介して蒸留再生装置150に通じる配管135に接続され、蒸留再生時に洗浄液貯留槽121内の洗浄液を蒸留再生装置に送り出して、再度蒸留再生してから洗浄液貯留槽121内に戻すようになっている。洗浄液貯留槽121内に加熱手段が設けられ、洗浄液貯留槽121内に溜められた洗浄液を加熱するようになっている。
【0029】
蒸留再生装置150は、蒸留槽151と水分離器152と備えて、洗浄液だけを取り出すようになっている。蒸留槽151は、汚液槽130及び洗浄液貯留槽121とに配管135を介して接続される。給配管には弁153、ポンプ133、フィルタ134が設けられ、ポンプ133で洗浄液回収槽131または洗浄液貯留槽121から洗浄液をくみ上げて濾過しつつ蒸留槽151に供給するようになっている。蒸留槽151には加熱手段156が設けられ、洗浄液を所定の温度に加熱するようになっている。
【0030】
水分離器152は、その液位が蒸留槽151の液位よりも低い位置にあるように設けられており、蒸留槽151から配管154を介して排出される洗浄液を重力で回収するようになっている。水分離器152は配管155を介して洗浄液貯留槽121に接続され、水分離器152で分離された洗浄液は、配管155を介して洗浄液貯留槽121と接続される。洗浄液貯留槽121は、その液位が水分離器152の液位よりも低い位置にあるように設けられており、水分離器152から排出される洗浄液を洗浄液貯留槽121に重力で回収するようになっている。
【0031】
次に図2〜図7を参照して、上記構成に係る密閉型洗浄装置100を用いて実施する洗浄工程の各工程について説明する。なお、以下の説明において、密閉型洗浄装置100を構成する各部の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0032】
予め、被洗浄物を収容した洗浄籠180を、図示しない搬送手段により洗浄容器110内に降ろし、2本のローラ112上にセットする。セット後、洗浄容器110を気密状態とする。超音波振動子111、加熱手段125等を作動し、真空発生装置160の不活性液体を循環させて、洗浄装置を運転状態にする。
【0033】
[洗浄液供給]
図2に示すように、洗浄液貯留槽121の弁114を開にした後、洗浄液貯留槽121のポンプ123を作動して、洗浄液貯留槽121に貯めた洗浄液(例えば、炭化水素系洗浄液)Aをフィルタ124で濾過しつつ配管126、116を介して洗浄容器110内に供給する。この時、真空発生装置160に通じる配管169の弁165を閉じ、アキュムレータ170に通じる配管175の弁166、及び洗浄容器110に通じる配管115の弁113を開にして、洗浄容器110内の余分な気体Bを、配管175を通じてアキュムレータ170に逃がす。洗浄液供給は、洗浄籠180内の被洗浄物が洗浄液に浸かるまで継続する。洗浄液Aの供給が終了したら、ポンプ123を停止し、弁114を閉じる。
【0034】
[減圧洗浄]
図3に示すように、洗浄容器110に通じる配管115の弁113を開状態にしたまま、アキュムレータ170に通じる配管175の弁166を閉じ、真空発生装置160に通じる配管169の弁165を開にする。真空発生装置160により洗浄容器110内の気体Cが吸引されて、洗浄容器110内が減圧される。この減圧下で洗浄すると、洗浄容器110内に貯めた洗浄液(例えば炭化水素系洗浄液)の沸点温度が下がり、洗浄液が沸騰
して突沸状態になることにより、これに浸漬している被洗浄物の表面に付着している油脂類やコンタミ類の除去が促進される。
【0035】
また、超音波振動子111によって洗浄液が振動するので、被洗浄物からの汚れ成分除去が高まる。特に、大気圧下では、洗浄液中に含まれる気体が妨げになって、超音波による振動を十分に洗浄液に伝えることができないが、洗浄容器110内の減圧により洗浄液を容易に脱気させることができるので、そのような不具合を解消でき、洗浄液が十分に被洗浄物に接触して洗浄品質を向上できる。
【0036】
また、洗浄容器110内から真空発生装置160で吸引されてタンク161内に取り込まれた吸込気体は、タンク161内で気液分離され、タンク161の蓋容器168内に貯まる。タンク161の蓋容器168内とアキュムレータ172の蓋容器172内とは配管181を介して連通しているので、タンク161の蓋容器168内に貯まったガスは、タンク内圧力とアキュムレータ内圧力がほぼ同等に保たれるようにアキュムレータ170の内蓋172内に分配される。その結果、アキュムレータ170がタンク161の圧力変動を吸収する。このように、真空発生装置160内の圧力変動をアキュムレータが吸収するので、吸込気体が真空発生装置160から大気に放出されることを確実に防止できる。
【0037】
特に、本実施の形態では、洗浄容器110内をエゼクタ162を用いて減圧している。洗浄容器110内をエゼクタを用いて減圧すると、真空ポンプを用いる場合と異なり、可動部分が無く、シンプルな構造でありながら、洗浄容器110内を確実に減圧できる。また、駆動液体183が循環するとタンク内の駆動液体183の温度が不均一になるが、本実施の形態では、タンク161の蓋容器が洗浄液上を上下動して蓋容器168が熱を吸収するので、タンク161内の洗浄液の温度を均一化することができる。従って、洗浄容器110内の真空度をより確実に向上できる。
【0038】
また、本実施の形態では、タンク161内に冷却手段182を設けて、エゼクタ162を通過するたびに温度上昇する駆動液体183を冷却するようにしている。従って、駆動液体183の密度が上がり、タンク161内の駆動液体183の液位の上昇を抑えることができ、洗浄容器110内をより確実に減圧できる。
【0039】
また、蓋容器168内に充満する気体の圧力変動に応じて蓋容器168が上下動するという簡単な構成でありながら、真空発生装置160から気体を大気に放出することなく、洗浄容器110内をより確実に減圧できる。
【0040】
[液排出]
図4に示すように減圧洗浄が終了したら、洗浄容器110の底部に設けた配管118の弁132を開き、洗浄容器110内部の使用済み洗浄液Dを洗浄容器110の底部から配管118を介して洗浄液貯留槽121に重力作用で回収する。この使用済み洗浄液の回収の際、真空発生装置160に通じる配管169の弁165を閉じ、アキュムレータ170に通じる配管175の弁166を開く。これにより、減圧下にある洗浄容器110内にアキュムレータ170から気体Eを送り込むことができるので、重力作用での使用済み洗浄液の回収が円滑に行われる。
【0041】
[蒸気洗浄]
図5に示すように、洗浄液回収槽131内に使用済み洗浄液を回収したら、弁132を閉じ、蒸気発生槽141に通じる配管117の弁142、及び洗浄液貯留槽121に通じる配管145の弁143を開く。ポンプ123により洗浄液貯留槽121から洗浄液F1をフィルタ124で濾過しつつ配管145を介して蒸気発生槽141内に供給する。蒸気発生槽141内で発生した洗浄溶液の蒸気F2を配管117を介して洗浄容器110内に
導入し、被洗浄物を蒸気洗浄する。この際、配管115の弁113、及び配管175の弁166は開状態を維持して、蒸気洗浄中の過剰な蒸気Gをアキュムレータ170により吸引する。
【0042】
なお、蒸気洗浄工程においては、洗浄容器110内に連続して洗浄液蒸気を供給してもよいが、洗浄容器110内に洗浄液蒸気が充満した時点で供給を停止し、充満した洗浄液蒸気により被洗浄物の蒸気洗浄を行い、この供給と停止を繰り返すようにしてもよい。例えば、蒸気発生槽141に蒸気または蒸気源となる洗浄液の有無を検知するセンサを設け、蒸気発生槽141の蒸気または洗浄液が無くなるのをセンサで検知するたびに、洗浄液貯留槽121から蒸気発生槽141に洗浄液を供給するようにできる。
【0043】
蒸気洗浄が終了したら、弁142、143を閉じ、ポンプ123を停止して、蒸気源となる洗浄液の供給を停止する。図4の液回収工程と同様に、洗浄容器110の底部に設けた配管118の弁132を開き、洗浄容器110内部に凝縮した洗浄液を洗浄容器110の底部から配管118を介して洗浄液回収槽131に重力作用で回収する。
【0044】
[蒸留再生]
凝縮洗浄液の回収が終了したら、図6に示すように、蒸気発生槽141から洗浄容器11に通じる配管117の弁142、洗浄液貯留槽121から蒸気発生槽141に通じる配管145の弁145、洗浄容器110からアキュムレータ170に通じる配管115、175の弁113、166を閉じ、洗浄液回収槽131から蒸留再生装置150に通じる配管135の弁153を開く。これにより使用済みの洗浄液H1がポンプ133によりフィルタ134で濾過されて配管135を介して蒸留再生装置150内に供給される。蒸留再生装置150は、再生させようとする使用済み洗浄液H1を装置内の蒸留槽151に入れ、蒸留槽151に設けた加熱手段156で蒸留槽151内を加熱し、設定された温度まで温める。取り出したい溶剤を気化H2させ、水分離器152を通し、冷却させ再度液体H3に戻して、洗浄液貯留槽121内に回収する。
【0045】
[乾燥]
被洗浄物の乾燥は洗浄容器110で行われる。図3に示す減圧洗浄と同様に、洗浄容器110に通じる配管115の弁113を開状態にしたまま、アキュムレータ170に通じる配管175の弁166を閉じ、真空発生装置160に通じる配管169の弁165を開にする。真空発生装置160により洗浄容器110内の気体Iが吸引されて、洗浄容器110内が減圧される。この減圧により、被洗浄物に付着している洗浄剤の沸点温度を下げ、洗浄剤の揮発を促進させることにより、被洗浄物の微細加工部を容易に乾燥できる。さらに、乾燥効率を向上させるために洗浄容器内に冷却手段を設けて、被洗浄物に付着している洗浄液の液温との温度差を拡大させることにより、乾燥効率をより向上させるようにしてもよい。このように乾燥工程でも減圧するので、洗浄液の沸点が下がり、大気圧での環境と比べて乾燥効率を高めることができる。
【0046】
[取り出し]
乾燥の後、ローラ112のモータを停止し、洗浄籠180を搬送手段により洗浄容器110の外へ移送する。なお、取り出す前に上述した洗浄工程を2回繰り返す2次洗浄、またはそれ以上の回数繰り返す高次洗浄を行っても良い。
【0047】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態によれば、以下に挙げる一つ又はそれ以上の効果を有する。
【0048】
本実施の形態によれば、洗浄容器内で被洗浄物を浸漬洗浄する際、真空発生装置を用いて洗浄容器内を減圧するので、洗浄液が十分に被洗浄物に接触して洗浄品質を向上できる
。特に、低沸点系洗浄剤を用いた場合には、低沸点系洗浄剤の能力をさらに引き出すことができる。また、洗浄容器内の減圧時に伴う気体の圧力変動をアキュムレータを用いて吸収させるようにしたので、洗浄容器内を減圧する際に、真空発生装置から気体が大気に放出されることを確実に防止することができる。従って、大気汚染や作業環境汚染を解消することができる低環境負荷型の洗浄装置及び洗浄方法を提供できる。
【0049】
本発明の実施の形態によれば、被洗浄物が加工穴を有している場合や被洗浄物同士が密着状態の場合であっても、洗浄容器を減圧下にして洗浄するので、大気圧下での洗浄と異なり、洗浄液を被洗浄物の略全ての面に接触させることができ、洗浄効果を向上させることができる。
【0050】
また、洗浄容器を減圧下にして乾燥するので、洗浄液の沸点が下がり、大気圧での環境と比べて乾燥効率を高めることができる。特に、沸点が極端に高く、乾燥性が悪い洗浄剤を用いても、減圧することにより沸点を低下させることができるので、乾燥効果を向上させることができる。
【0051】
また、洗浄容器内をエゼクタを用いて減圧するので、真空ポンプを用いる場合と異なり、可動部分が無く、シンプルな構造でありながら、洗浄容器内を確実に減圧できる。
【0052】
また、洗浄液が循環するのでタンク内の洗浄液の温度が不均一になるが、タンクにタンク内の圧力変動に応じて駆動液体上を上下動する蓋容器を採用しているので、簡単な構成でありながら、蓋容器が熱を吸収するので、タンク内の洗浄液の温度を均一化することができ、洗浄容器内をより確実に減圧できる。
【0053】
また、タンク内に冷却手段を設けた場合には、駆動液体の冷却により、液体密度の密度が上がりタンク内の駆動液体の液位の上昇を抑えることができ、洗浄容器内をより確実に減圧できる。
【0054】
また、蓋容器内に充満する気体の圧力変動に応じて蓋容器が上下動するという浮き屋根式タンクを接続して、圧力変動に応じて蓋容器を連動させるようにしたので、真空発生装置から気体を大気に放出することなく、洗浄容器をより確実に減圧できる。
【0055】
また、本実施の形態の洗浄装置及び洗浄方法は、洗浄液供給及び洗浄液排出の際に洗浄容器内の圧力変動を吸収するアキュムレータを用いた密封型の洗浄装置があってはじめて可能になるものである。
【0056】
[付記]
以下に本発明の好ましい態様を付記する。
【0057】
被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置において、
前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に前記洗浄容器内を減圧する真空発生装置を設け、
前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した密閉型洗浄装置。
【0058】
上記密閉型洗浄装置において、前記被洗浄物の洗浄後に行う前記被洗浄物の乾燥の際に、前記真空発生装置で前記洗浄容器内を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した。
【0059】
前記真空発生装置は、
前記駆動液を貯める密閉型のタンクと、
前記タンク内の駆動液を該タンクから取り出して前記タンクとの間で循環させるための循環路と、
前記循環路と前記タンクとの間で前記駆動液を循環させる循環ポンプと、
前記循環路に循環する前記駆動液により前記洗浄容器から前記吸込気体を吸い込み、前記タンク内に吐き出すエゼクタとを備え、
前記タンク内は前記吐き出された吸込気体により圧力変動するように構成されている。
【0060】
前記タンクは、
上部が開口し、内部に前記駆動液を貯め、該駆動液を循環させる前記循環路が接続される循環入口と循環出口とを設けた下容器と、
前記下容器の上部開口を気密に塞ぎ、前記エゼクタから吐き出された前記吸込気体を貯め込み、該貯め込んだ前記吸込気体の浮力で前記駆動液上に浮上し、前記吸込気体の圧力に応じて上下動する蓋容器と、
前記蓋容器に前記アキュムレータと連通するように設けられ、前記蓋容器に貯まる吸込気体の圧力変動を前記アキュムレータに伝える連通口と
を備えている。
【0061】
前記タンクは、該タンク内に貯めた前記駆動液を冷却する冷却器を備えている。
【0062】
前記アキュムレータは、
前記気体とは反応しない不活性液体を貯める下容器と、
前記下容器に設けられ前記真空発生装置又は前記洗浄容器に通じる連通口と、
前記下容器の上部開口を気密に塞ぎ、前記真空発生装置から吐き出される前記吸込気体又は前記洗浄容器内の圧力変動を吸収する際に取り込む気体を貯め込み、該貯め込んだ前記気体の浮力で前記不活性液体上に浮上し、前記気体の圧力に応じて上下動する蓋容器と、
を備えて密閉状に構成されている。
【0063】
被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置を用いた洗浄方法において、
前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に設けた真空発生装置を用いて、前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるようにした洗浄方法。
【0064】
上記洗浄方法において、前記被洗浄物の洗浄後に行う前記被洗浄物の乾燥の際に、前記真空発生装置を用いて前記洗浄容器内を減圧するとともに、前記密閉型のアキュムレータを用いて前記減圧の際に前記真空発生装置内に吸い込まれる気体の圧力変動を吸収しつつ前記被洗浄物を乾燥する。
【符号の説明】
【0065】
100 洗浄装置
110 洗浄容器
111 超音波振動子
112 ローラ
120 洗浄液供給手段
121 洗浄液貯留槽
123 ポンプ
130 洗浄液回収手段
131 洗浄液回収槽
134 ポンプ
140 蒸気供給手段
141 蒸気発生槽
142 弁
150 蒸留再生装置
151 蒸留槽
152 水分離器
160 真空発生装置
162 エゼクタ
161 タンク
161a 循環路
163 ポンプ
170 アキュムレータ
180 洗浄籠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置において、
前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に前記洗浄容器内を減圧する真空発生装置を設け、
前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した密閉型洗浄装置。
【請求項2】
前記被洗浄物の洗浄後に行う前記被洗浄物の乾燥の際に、前記真空発生装置で前記洗浄容器内を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるように構成した請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項3】
被洗浄物の洗浄を行う洗浄容器内の圧力変動をアキュムレータで吸収するようにした密閉型洗浄装置を用いた洗浄方法において、
前記洗浄容器と前記アキュムレータとの間に設けた真空発生装置を用いて、前記被洗浄物の洗浄の際に、前記洗浄容器を減圧させるとともに、該減圧に伴う前記真空発生装置内の圧力変動を前記アキュムレータで吸収させるようにした洗浄方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77350(P2012−77350A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223424(P2010−223424)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(390034234)株式会社ワールド機工 (7)
【Fターム(参考)】