説明

封止フィルムおよび封止フィルム付電極

【課題】金属箔にシーラントを積層した容器のラミネートフィルムと電極とを接合する際に、電池が大型の場合であっても、封止性に優れた封止フィルムおよびこの封止フィルムを予め電極に接着した封止フィルム付電極を提供する。
【解決手段】発電要素の電極を封止する封止フィルム1であって、電極に接着する酸変性ポリオレフィンからなる電極接着層2と該電極接着層2より高融点のポリオレフィンからなる内側の絶縁層3を有する内側の積層体4と、容器のラミネートフィルムに融着するポリオレフィンからなるシーラント5と該シーラント5より高融点のポリオレフィンからなる外側の絶縁層6を有する外側の積層体7とが、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂より低融点のポリオレフィンからなる連結層8を介して積層される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器で包装された二次電池やキャパシタ等の電極を封止する封止フィルムおよび該封止フィルムを電極に接着した封止フィルム付電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ノートパソコンや携帯電話などの電子機器の電源やハイブリッド車、燃料電池自動車や電池自動車のバッテリー等としてフィルムからなる容器に包装された二次電池やキャパシタ等が採用されてきている。特に上述した自動車は、環境への負荷が小さく、自動車メーカー各社は、開発に力を入れている。それらの自動車においては、充放電される電力が大きいため、電池も大型化している。
従来から、これらの二次電池やキャパシタは、アルミ箔などの金属箔にポリオレフィン等からなるシーラントを積層したラミネートフィルムからなる平袋や絞り成形された袋に扁平な発電要素が密封されて構成される。容器のフィルム基材には、充放電のための電極が一端を外部に突出させて封止される。封止に際しては、容器のフィルム基材にテープ状の電極が挟まれヒートシールされる。
【0003】
二次電池等の電極は容器のシーラントに比べて厚いので、封止に際して、電極の厚み方向の周囲に隙間なく樹脂を回り込ませることが難しく、電極の厚み方向の周囲に隙間が生じることがある。電極の周囲に隙間が生じると、電解液に非水系の有機電解質を使用した、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、電気二重層キャパシタ等、アルミ電解コンデンサ等(以下、これらを便宜的に「パック電池」という。)においては、長期の使用、高温や多湿等の過酷な環境下などで、電解液が封止部の界面に浸入することがある。また、水分が電池の内部に侵入してフッ酸が生成することもある。その結果、封止部が劣化したり、封止部における容器と電極との接着強度が低下したりして、封止部から電解液が漏洩する等の問題が生じていた。
この問題を回避するため、封止時の加熱や圧着の条件を厳しくすると、容器の金属箔と電極との間の樹脂が薄くなり、短絡が起こるという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、例えば、特許文献1には、ラミネートフィルムとリード線との間に、流動性の高い樹脂層と流動性の低い樹脂層とを積層した2層や3層の多層フィルムを介在させることにより、電極の厚み方向の周囲に隙間が生じることを防止することが提案されている。
特許文献2には、外装ケースの封止部と接するリード表面が金属接着性樹脂層、絶縁層、低融点接着性樹脂層を順に積層した三層の樹脂層を一体化したリードを用いることも提案されている。
【特許文献1】特開2003−7268号公報
【特許文献2】特開2001−297748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や2に記載の多層フィルムは、封止性が高く、小型の電池においては、有用である。ところが、大型の電池は、電極を厚くしたり、容器と電極との接着強度を高くしたりする必要があることから、介在させる多層フィルムを厚くする場合がある。この場合、金属接着性樹脂層や低融点接着性樹脂層あるいは流動性の高い樹脂層を厚くすれば、電極の封止性や容器と電極との接着強度は確保される。しかし、これらの樹脂層を必要以上に厚くすると、封止部の耐熱性が低下する。したがって、介在させる多層フィルムを厚くする場合は、主に絶縁層や流動性の低い樹脂層を厚くしなければならない。
絶縁層や流動性の低い樹脂層を厚くすると多層フィルムが固くなるので、金属接着性樹脂層や低融点接着性樹脂層が電極の周囲に回り込みにくくなり、封止性は向上しない。場合によっては、封止性は、むしろ低下する。
【0006】
また、絶縁層や流動性の低い樹脂層は、硬くて脆い傾向がある。電極が多層フィルムに熱圧着される際に、多層フィルムは、電極の稜線で強制的に折り曲げられる。また、完成したパック電池が機器に装着される際に、容器の封止部や封止部の際で電極が封止フィルムとともに急な角度で折り曲げられることがある。これらの折り曲げにより、これらの樹脂層にクラックが入ることがある。クラックが入ると電解液自体や電解液から発生したフッ酸(HF)が電極と樹脂層の界面に侵入し、これらの接着強度が低下することがある。このクラックによる接着強度の低下は、厚い樹脂層を用いる大型のパック電池で発生しやすいが、小型のパック電池でも発生する可能性がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、電池が大型の場合であっても、封止性に優れた封止フィルムおよびこの封止フィルムを予め電極に接着した封止フィルム付電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、封止性に優れた封止フィルムの研究中に、偶然、電極接着層/絶縁層の二層の封止フィルムを接着することなく二枚重ねた構造が電極接着層/厚い絶縁層/シーラントの三層の封止フィルムより封止性に優れることを発見した。しかし、二枚の封止フィルムを重ねて電極に熱圧着すると、作業性が低下するという問題があった。
本発明の発明者は、作業性の低下を防止するために、二枚の封止フィルムの一体化について検討を進めた結果、二枚の封止フィルムの間に低融点の連結層を介在させることにより、封止性に優れた封止フィルムが得られることを知見し、本発明はなされたのである。
【0009】
本発明は、以下の封止フィルムを提供する。
(1)発電要素の電極を封止する封止フィルムであって、前記電極に接着する酸変性ポリオレフィンからなる電極接着層と該電極接着層より高融点のポリオレフィンからなる内側の絶縁層を有する内側の積層体と、容器のラミネートフィルムに融着するポリオレフィンからなるシーラントと該シーラントより高融点のポリオレフィンからなる外側の絶縁層を有する外側の積層体とが、前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂より低融点のポリオレフィンからなる連結層を介して積層されたことを特徴とする封止フィルム。
(2)前記電極接着層、前記内側の絶縁層、前記シーラント、前記外側の絶縁層および前記連結層を形成する樹脂がポリプロピレン系樹脂からなる(1)に記載の封止フィルム。
(3)前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂の融点と前記連結層を形成する樹脂の融点との差が10℃〜30℃である(1)または(2)に記載の封止フィルム。
(4)前記連結層を形成する樹脂の融点と前記電極接着層を形成する樹脂の融点との差が絶対値で15℃以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の封止フィルム。
(5)前記連結層を形成する樹脂のMFRが前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRより大きい(1)〜(4)のいずれかに記載の封止フィルム。
(6)前記連結層を形成する樹脂のMFRと前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRとの差が2〜15g/10分である(5)に記載の封止フィルム。
(7)前記連結層を形成する樹脂のMFRが5〜15g/10分であり、かつ、前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRが0.5〜3g/10分以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の封止フィルム。
(8)前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層がエチレンとプロピレンとのブロック共重合体からなる(1)〜(7)のいずれかに記載の封止フィルム。
(9)前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層が同一の樹脂からなる(1)〜(8)のいずれかに記載の封止フィルム。
(10)前記連結層を形成するポリオレフィンがエチレンとプロピレンとのランダム共重合体である(1)〜(9)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0010】
また、本発明は、以下の封止フィルム付電極を提供する。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の封止フィルムを電極の少なくとも片面に接着したことを特徴とする封止フィルム付電極。
(12)ニッケル以外の電極の表面に高級アルコール系界面活性剤を配合したスルファミン酸ニッケルメッキ浴を用いて形成されたニッケルメッキ被膜を有する(11)に記載の封止フィルム付電極。
(13)電極の表面にキトサンおよびキトサン誘導体から選ばれる少なくとも1種のキトサン類を含有する表面処理層を有する(11)または(12)に記載の封止フィルム付電極。
【発明の効果】
【0011】
本発明の封止フィルムは、内側の絶縁層と外側の絶縁層が低融点の樹脂からなる連結層を介して積層されているため、電極と熱圧着する際、連結層を形成する樹脂が内側および外側の絶縁層より先に溶融するので、絶縁層が薄くなることなく電極の周囲へ回り込みやすい。また、電極の稜線により絶縁層にクラックが発生しにくい。これらにより、封止性と絶縁性が優れる。
電極接着層、内側の絶縁層、シーラント、外側の絶縁層および連結層を形成する樹脂は、ポリエチレン系樹脂であってもよいが、ポリプロピレン系樹脂であると耐熱性に優れる。
内側および外側の絶縁層を形成する樹脂の融点と連結層を形成する樹脂の融点との差が10℃〜30℃であると電極と熱圧着する際、内側および外側の絶縁層が薄くならずに連結層が溶融する温度の幅が広くなる。その結果、温度管理が容易で、熱圧着が確実となるので、封止性と絶縁性に優れる。
連結層を形成する樹脂の融点と電極接着層を形成する樹脂の融点との差が絶対値で15℃以下であると電極と熱圧着する際、両方の樹脂層が同時に溶融しやすいので、熱圧着時の温度の幅が広くなる。その結果、温度管理が容易で、熱圧着が確実となるので、封止性と絶縁性に優れる。
連結層を形成する樹脂のMFRが内側および外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRより大きいと電極と熱圧着する際、連結層、内側の絶縁層および外側の絶縁層が共に溶融しても、内側および外側の絶縁層が流動しにくいので薄くなることがなく、封止性と絶縁性に優れる。
内側の絶縁層と外側の絶縁層がエチレンとプロピレンとのブロック共重合体からなると融点を高くすることができるので、耐熱性に優れる。
内側の絶縁層と外側の絶縁層が同一の樹脂からなると共押出での成形が容易となる。
連結層を形成するポリオレフィンがエチレンとプロピレンとのランダム共重合体であるとプロピレンの単独重合体に比べて耐薬品性と柔軟性に優れる。柔軟性に優れると低温環境下でも脆くならない。また、電極を封止フィルムとともに折り曲げる場合に、作業が容易となる。
【0012】
本発明の封止フィルム付電極は、本発明の封止フィルムを電極の少なくとも片面に接着したので、電極を容器のラミネートフィルムにヒートシールしやすい。
電極が表面に高級アルコール系界面活性剤を配合したスルファミン酸ニッケルメッキ浴を用いて形成されたニッケルメッキ被膜を有するとメッキ被膜が低応力で柔軟性に優れるので、封止フィルム付電極が折り曲げられてもメッキ被膜にクラックが発生しにくい。また、メッキ被膜が薄くてもピンホールが発生しにくい。クラックやピンホールの発生が少ないと耐薬品性に優れるので、封止フィルムと電極の接着強度が低下することがない。
また、電極の表面にキトサンおよびキトサン誘導体から選ばれる少なくとも1種のキトサン類を含有する表面処理層を有すると封止フィルムと電極との接着強度が向上し、封止性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の封止フィルム1の概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示す封止フィルム1を、容器のラミネートフィルム20と電極11との間に介在させて融着した状態を示す電極11の長手方向に沿う断面図である。図3(a)は、図1に示す封止フィルム1を、電極11に接着した封止フィルム付電極10を示す斜視図である。図3(b)は、同封止フィルム付電極10を示す電極11の長手方向に直交する方向の断面図である。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明の封止フィルム1は、基本的な層構成として、電極接着層2/内側の絶縁層3/連結層8/外側の絶縁層6/シーラント5の少なくとも5層の積層構造を有する。この積層構造は、上述した知見に基づき、内側の絶縁層3を有する内側の積層体4の絶縁層3と外側の絶縁層6を有する外側の積層体7の絶縁層6とが、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂より低融点のポリオレフィンからなる連結層8を介して積層される。
パック電池は、使用時の発熱で封止フィルム1が溶融や軟化しにくいこと(耐熱性)も求められる。特に大型のパック電池は、発熱量が大きい。そのため、電極接着層2、内側の絶縁層3、シーラント5、外側の絶縁層6および連結層8を形成する樹脂がポリエチレン系樹脂であると低温環境下でも脆くならないので耐寒性に優れる。一方、これらの樹脂層がポリプロピレン系樹脂であると耐熱性に優れるので、大型のパック電池の用途に好ましい。
この形態例では、電極接着層2、内側の絶縁層3、シーラント5、外側の絶縁層6および連結層8を形成する樹脂が全てポリプロピレン系樹脂からなる封止フィルムを例にして説明する。これらの層が全てポリエチレン系樹脂からなる封止フィルムとすることも可能である。本発明においては、ポリプロピレン系樹脂は、エチレンとプロピレンの共重合体を含む。
【0015】
内側の積層体4の内側の絶縁層3および外側の積層体7の外側の絶縁層6は、容器のラミネートフィルム20の金属箔21と電極11との絶縁性を確保する。内側の絶縁層3および外側の絶縁層6は、絶縁性が確保される限り、薄いことが好ましい。内側の絶縁層3および外側の絶縁層6のそれぞれの厚さは、30μm〜80μmで、合計の厚さは、60μm〜150μmであることが好ましい。いずれか一方または両方の厚さが30μm未満または合計の厚さが60μm未満であると熱圧着時に薄くなって絶縁性が乏しくなることがある。いずれか一方または両方の厚さが80μmを超えるかまたは合計の厚さが150μmを超えても絶縁性のさらなる向上は期待できない。これらの層が必要以上に厚くなると二枚の容器のラミネートフィルム20、20に挟んだときに段差によって隙間が生まれる。この隙間は、融着時に埋めにくく、ピンホールとなることがある。また、上述した様に、高融点の樹脂層が厚くなると脆くなりやすく、折り曲げによるクラックが発生する可能性が高くなる。
内側の絶縁層3および外側の絶縁層6の厚さは、異なってもよいし、同一であってもよい。厚さが同一であると内側の絶縁層3および外側の絶縁層6の絶縁性を確保しつつ合計の厚さを最小化することが容易となる。
【0016】
内側の絶縁層3および外側の絶縁層6は、本発明の封止フィルム1を電極11に熱圧着する際に溶融や軟化しにくいことが求められるので、これらを形成する樹脂の融点は、高いほど好ましい。具体的には、ポリプロピレン系樹脂からなる封止フィルムの場合、JIS K6921−2 DSC法で測定される160℃以上の融点を有する樹脂が好ましい。その様な樹脂は、ポリプロピレン(PP)の単独重合体、エチレンとプロピレンのブロック共重合体やそれらのポリマーアロイが好ましい。PP系樹脂は、一般的に、低温環境下で脆くなりやすい。融点が高くても柔軟性に優れ、低温環境下でも脆くならないこと(耐寒性)から、エチレンとプロピレンのブロック共重合体が好ましい。
ポリエチレン系樹脂からなる封止フィルムとするために、内側の絶縁層3や外側の絶縁層6にポリエチレン系樹脂を採用する場合は、融点が130〜140℃程度の高密度ポリエチレンが好ましい。
内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂は、異なってもよいし、同一であってもよい。
内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂のMFRは、0.5g/10分〜3g/10分の範囲であることが好ましい。MFRがこの範囲より小さいと成形しにくい場合がある。MFRがこの範囲より大きいと熱圧着時に内側の絶縁層3および外側の絶縁層6が薄くなって絶縁性が低下することがある。
本発明においては、MFRは、JIS K7210においてポリプロピレン系樹脂の場合は全て230℃、ポリエチレン系樹脂の場合は全て190℃で測定される。
【0017】
内側の積層体4の電極接着層2は、電極11に加熱加圧されて熱圧着する層である。電極接着層2は、電極11との熱圧着が確保される限り、薄いことが好ましい。電極接着層2の厚さは、20μm〜30μmであることが好ましい。電極接着層2の厚さがこの範囲より小さいと電極接着層2と電極11との接着強度が低くなる場合がある。電極接着層2の厚さがこれらの範囲より大きいと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなる場合がある。
本発明においては、電極接着層2を形成する樹脂の融点は、内側の絶縁層3を形成する樹脂の融点より低い。電極接着層2を形成する樹脂の融点は、ポリプロピレン系樹脂からなる封止フィルムの場合、130℃〜150℃であることが好ましい。電極接着層2を形成する樹脂の融点がこの範囲より低いと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなることがある。電極接着層2を形成する樹脂の融点がこの範囲より高いと内側の絶縁層3を形成する樹脂との融点差を大きくしにくい。電極接着層2と内側の絶縁層3を形成する樹脂の融点差が30℃近いと熱圧着時の温度管理が容易となり好ましい。
【0018】
電極接着層2は、金属との接着性に優れる酸変性ポリオレフィンからなる。酸変性ポリオレフィンとしては、耐熱性に優れることから、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)が好ましい。酸変性PPは、PP、エチレン−プロピレン共重合体またはそれらのポリマーアロイに、カルボキシル基を有するモノマーをグラフト共重合させたカルボン酸変性ポリプロピレンである。ベースとなるエチレン−プロピレン共重合体は、ランダム共重合体やブロック共重合体が好ましい。
カルボキシル基を有するモノマーは、アクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸、アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、無水マレイン酸などの酸無水物などである。
酸変性PPは、不飽和カルボン酸と共重合させたPP系ポリマーに、金属水酸化物、アルコキシド、低級脂肪酸塩などでカルボン酸基を中和したアイオノマーを含む。
酸変性PPとして好適な樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性PPなどが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂からなる封止フィルムとするために、電極接着層2に酸変性ポリエチレンを採用する場合は、融点が90〜120℃程度の無水マレイン酸グラフト共重合ポリエチレンが好ましい。酸変性ポリエチレンは、カルボン酸基を中和したアイオノマーであってもよい。
【0019】
電極接着層2を形成する酸変性ポリオレフィンのMFRは、3g/10分〜30g/10分の範囲であることが好ましい。MFRが5g/10分〜10g/10分の範囲であるとより好ましい。MFRがこれらの範囲より小さいと、熱圧着時に電極11の周囲に酸変性ポリオレフィンが十分に回り込みにくいことがある。MFRがこれらの範囲より大きいと電極接着層2が薄くなって接着強度に乏しいことがある。電極接着層2を形成する樹脂のMFRは、内側の絶縁層3を形成する樹脂のMFRより高いと熱圧着時に内側の絶縁層3が薄くなることを抑制して、電極11の周囲に酸変性ポリオレフィンを十分に回り込ませることができる。
【0020】
外側の積層体7のシーラント5は、容器のラミネートフィルム20と加熱加圧されて融着する層である。容器のラミネートフィルム20との融着が確保される限り、薄いことが好ましい。シーラント5の厚さは、20μm〜40μmであることが好ましい。シーラント5の厚さがこれらの範囲より小さいと、シーラント5と容器のラミネートフィルム20との融着強度が低くなることがある。シーラント5の厚さがこれらの範囲より大きいと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなることがある。
シーラント5を形成する樹脂は、融着しやすいことから容器のラミネートフィルム20のシーラント22を構成する樹脂と同種または同一の樹脂が好ましい。
シーラント5を形成する樹脂は、容器のラミネートフィルム20のシーラント22に融着できる樹脂であれば特に制限はないが、耐熱性に優れることから、PP系樹脂が好ましい。具体的には、PPの単独重合体、エチレンとプロピレンのランダム共重合体やブロック共重合体またはそれらの混合物、あるいはこれらのポリマーアロイなどが挙げられる。これらのうち、柔軟性に優れることから、エチレンとプロピレンのランダム共重合体が好ましい。
【0021】
本発明においては、シーラント5を形成する樹脂の融点は、外側の絶縁層6を形成する樹脂の融点より低い。シーラント5を形成する樹脂の融点は、ポリプロピレン系樹脂からなる封止フィルムの場合、130℃〜150℃であることが好ましい。シーラント5を形成する樹脂の融点がこの範囲より低いと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなることがある。シーラント5を形成する樹脂の融点がこの範囲より高いと外側の絶縁層6を形成する樹脂との融点差を大きくしにくい。シーラント5を形成する樹脂の融点と外側の絶縁層6を形成する樹脂の融点との差が20℃以上であると、容器のラミネートフィルム20への融着時の温度管理が容易となり好ましい。
ポリエチレン系樹脂からなる封止フィルムとするために、シーラント5にポリエチレン系樹脂を採用する場合は、融点が100〜120℃程度の低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
シーラント5を形成する樹脂のMFRは、3g/10分〜30g/10分の範囲であることが好ましい。MFRが5g/10分〜10g/10分の範囲であるとより好ましい。
シーラント5を形成する樹脂のMFRがこれらの範囲より小さいと、押出ラミネートで積層しにくいことがある。シーラント5を形成する樹脂のMFRがこれらの範囲より大きいと共押出インフレーターで成形しにくいことがある。
【0022】
本発明において、連結層8は、次のように作用すると考えられる。
本発明の封止フィルム1を電極11に熱圧着する際、熱圧着時の初期温度では、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6は軟化する程度で溶融せず、連結層8の低融点のポリオレフィン層が先に溶融して、潤滑層として機能する。この潤滑層としての機能が内側の積層体4および外側の積層体7を摺動可能にする。この摺動により、内側の積層体4および外側の積層体7が、あたかも単に重ねられた状態であるかのように撓みやすくなる。この時、融点の低い樹脂からなる電極接着層2も溶融しているので、内側の絶縁層3の両側の溶融した樹脂層が内側の絶縁層3を摺動しやすくする。これより、電極11の周囲に内側の絶縁層3とともに内側の積層体4が撓んで回り込むことができる。続いて外側の積層体7の外側の絶縁層6が摺動して内側の積層体4の回り込みを後押しする。
この様な挙動により、二つの絶縁層3,6の合計厚さが厚くても電極11の周囲に空隙が発生しにくい。また、絶縁層3,6の合計厚さが厚くても脆くならず、上述した様な折り曲げによるクラックが発生する可能性が低くなる。さらに、熱圧着時の初期温度では、絶縁層3,6は溶融していないので、薄くなりにくい。熱圧着時の温度が高くて、内側の絶縁層3が溶融して電極11の稜線に押されて薄くなったとしても、内側の絶縁層3がクッションとして機能するので、外側の絶縁層6は、薄くなりにくい。また、外側の絶縁層6は、内側の絶縁層3に比べて、溶融流動のタイミングが遅いので、薄くなりにくい。これらにより、本発明の封止フィルム1は、高い封止性と絶縁性が確保される。
【0023】
連結層8の厚みは、熱圧着時に内側の積層体4と外側の積層体7が摺動可能となる限り、薄いことが好ましい。連結層8の厚さは、20μm〜30μmであることが好ましい。連結層8の厚さがこの範囲より小さいと内側の絶縁層3と外側の絶縁層6とがずれにくいことがある。連結層8の厚さがこれらの範囲より大きいと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなることがある。
連結層8を形成する樹脂は、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6に直接積層できる樹脂であれば特に制限はないが、耐熱性に優れることから、PP系樹脂が好ましい。PP系樹脂のうち、耐薬品性と耐寒性にも優れるので、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体がより好ましい。
【0024】
本発明においては、潤滑層としての機能する連結層8を形成する樹脂の融点は、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6の融点より低い。連結層8を形成する樹脂の融点は、ポリプロピレン系樹脂からなる封止フィルムの場合、130℃〜150℃であることが好ましい。連結層8を形成する樹脂の融点がこの範囲より低いと封止フィルム1の耐熱性が乏しくなることがある。連結層8を形成する樹脂の融点がこの範囲より高いと、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂との融点差を大きくしにくい。連結層8を形成する樹脂と、内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂との融点差は、大きいほど好ましい。具体的には、この温度差が10℃〜30℃であることが好ましい。融点差が10℃より小さいと連結層8が内側の絶縁層3および外側の絶縁層6より先に溶融する熱圧着時の温度の管理が難しいことがある。融点差が30℃より大きくても問題はないが、連結層8を形成する樹脂の融点が好ましい範囲から外れる場合がある。
ポリエチレン系樹脂からなる封止フィルムとするために、連結層8にポリエチレン系樹脂を採用する場合は、融点が100〜120℃程度の低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0025】
連結層8を形成する樹脂の融点と電極接着層2を形成する樹脂の融点との差も重要である。好ましい融点差は、絶対値で15℃以下である。融点差が絶対値で15℃以下であると熱圧着時に両方の樹脂層が同時に溶融しやすいので、電極11の周囲に内側の絶縁層3とともに内側の積層体4が回り込みやすい。また、融点差が小さいと熱圧着時の温度条件が広くなり、温度管理が容易で、熱圧着が確実となる。
連結層8を形成する樹脂の融点とシーラント5を形成する樹脂の融点との差は、特に制限はないが、この融点差も小さいことが好ましい。この融点差が絶対値で15℃以下であると熱圧着時に電極接着層2、シーラント5および連結層8が同時に溶融しやすくなる。これにより、電極11の周囲に外側の積層体7も回り込みやすくなる。
したがって、連結層8を形成する樹脂は、電極接着層2やシーラント5を形成する樹脂と同一または類似の樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
連結層8を形成する樹脂のMFRは、特に制限はないが、MFRが5〜15g/10分であることが好ましい。連結層8を形成する樹脂のMFRがこの範囲より小さいと、押出ラミネートで積層しにくい場合がある。連結層8を形成する樹脂のMFRがこの範囲より大きいと共押出インフレーターで成形しにくい場合がある。
連結層8を形成する樹脂のMFRが内側の絶縁層3および外側の絶縁層6を形成する樹脂のMFRより大きいと内側の絶縁層3および外側の絶縁層6がずれ易く好ましい。そのMFRの差は、特に制限はないが、2〜15g/10分であることが好ましい。MFRの差は、大きいほど好ましく、15g/10分より大きくても問題はないが、連結層8を形成する樹脂のMFRが好ましい範囲から外れる場合がある。
【0027】
本発明の封止フィルム1は、公知の積層方法を用いて製造することができる。本発明の封止フィルム1においては、電極接着層2のみならず、内側の絶縁層3や外側の絶縁層6の電極11の周囲への回り込みも重要である。したがって、封止フィルム1は、熱圧着時に溶融しない層を含まず、柔軟性も高いことが好ましい。この観点からは、押出ラミネートや共押出積層などで樹脂層同士が直接積層されることが好ましい。溶解や反応などの電解液との相互の影響がなければ、アンカー剤を用いてもよい。
具体的には、以下に例示する方法で積層される。
第1の方法は、全ての樹脂層を共押出インフレーターまたはTダイで成形する方法。
第2の方法は、まず、内側の絶縁層3/連結層8/外側の絶縁層6の積層体を共押出のインフレーターまたはTダイで成形する。次に、この積層体の両面に電極接着層2とシーラント5を押出ラミネートする方法。あるいは、電極接着層2とシーラント5を予めフィルムに成形しておき、熱ラミネートで積層する方法。この様な方法で連結層8を成形する場合、内側の絶縁層3と外側の絶縁層6は同一の樹脂であると二種三層の共押出が可能となる。
第3の方法は、まず、内側の積層体4および外側の積層体7を共押出のインフレーターまたはTダイで成形し、次に、これらの積層体の間に連結層8を押出ラミネートする方法。あるいは、連結層8を予めフィルムに成形しておき、これらの積層体の間に挟んで熱ラミネートで積層する方法。
これらの方法において、柔軟性の問題や電解液との相互の影響がなければ、シーラント5は、接着剤を用いてドライラミネートしてもよい。
【0028】
本発明の封止フィルム付電極10は、図3に示すように、本発明の封止フィルム1を電極11の少なくとも片面、好ましくは両面に封止フィルム1の電極接着層2を用いて熱圧着したものである。本発明の封止フィルム付電極10は、熱圧着された封止フィルム1のシーラント5を用いてラミネートフィルム20へ容易、かつ、確実に融着することができる。
【0029】
封止フィルム1と電極11の熱圧着には、ヒートシーラーやインパルスシーラー等を用いてシールバーで加熱して圧着することが好ましい。加熱に際しては、電磁誘導加熱や通電加熱を用いて電極11を直接加熱すると、外側の絶縁層6の溶融流動のタイミングを遅らせて内側の絶縁層3や電極接着層2の溶融を促すので好ましい。これらの加熱手段は、シーラーの熱源として単独で使用してもよい。これらのうち、装置が簡易なことから、通電加熱が好ましい。
熱圧着に用いるシールバーは、電極11の厚み分の変形が可能な弾性体で被覆されていることが好ましい。あるいは、弾性体に代えて、予めシールバーに電極11が収まる凹部を形成しておいてもよい。凹部を形成したシールバーは、弾性体を被覆したものに比べて、樹脂が電極11の周囲に回り込み易い。一方、弾性体で被覆されたシールバーは、電極11の幅や厚さが変わる度に金型を交換するという手間がない。
【0030】
本発明で用いる電極11の形状は、テープや丸棒などが例示される。電極11の大きさは、特に制限はないが、例えば、テープであれば、厚さ50μm〜500μm、幅5mm〜100mm、長さ40mm〜100mm程度である。テープの電極11は、稜線が丸められていてもよい。また、その表面は、圧延加工した加工面そのままであってもよいが、サンドブラスト等により粗面化することが好ましい。粗面化することによって、封止フィルム1の接着強度が向上する。
【0031】
電極11の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、金、白金や各種合金など、公知の金属を用いることができる。これらのうち、導電性に優れ、コスト的にも有利なことから、アルミニウムや銅が好ましく用いられる。ただし、アルミニウムや銅は、パック電池において電解液中に発生が懸念されるフッ化水素(フッ酸)に対する耐性が十分でない場合がある。また、PP系樹脂は、銅と接触すると、樹脂の劣化が促進される可能性がある。そこで、アルミニウムや銅の下地金属に、導電性が高くフッ酸の耐性に優れるニッケルをメッキすることが好ましい。
電極11にニッケルをメッキするに際しては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸等を主成分とするワット浴を用いて電気メッキしてもよいが、スルファミン酸ニッケルと硼酸を主成分とするスルファミン酸ニッケルメッキ浴を用いると形成されるメッキ被膜が低応力となり柔軟性に優れるので好ましい。柔軟性に優れるとメッキ被膜の割れ等の欠陥の発生が少なくなる。
【0032】
また、高級アルコール系界面活性剤を配合した電解ニッケルメッキ液を用いてメッキ被膜を形成するとピンホールの少ないニッケルメッキ被膜が得られるので好ましい。ニッケルメッキ液に配合する高級アルコール系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、これらを含む混合物等を用いることができる。高級アルコール系界面活性剤の配合量は、メッキ液中に1〜10ml/l、好ましくは3〜7ml/lとすればよい。ニッケルメッキ被膜の厚さについては特に限定はされず、下地の金属の表面を十分に被覆できる厚さであればよい。高級アルコール系界面活性剤を含有するメッキ液を用いることによって、ピンホールの少ないメッキ被膜を形成できるので、薄いメッキ被膜でも十分に下地の金属の溶出を防止することができる。この様なニッケルメッキ被膜の厚さは、0.5〜15μm、好ましくは0.8〜5μmとすればよい。この様に薄いメッキ被膜を形成すればよいので、低コストで本発明で用いる電極11を形成できる。
【0033】
メッキが施された、あるいは施されていない電極11に本発明の封止フィルム1を熱圧着して接着するに際し、電極11がアルミニウムである場合はクロメート処理や陽極酸化の化成処理等の下地処理を施すと封止フィルム1との接着に優れるので好ましい。
また、電極11の表面にキトサンおよびキトサン誘導体から選ばれる少なくとも1種のキトサン類を含有する表面処理剤からなる表面処理層を設けると封止フィルム1と電極11との接着強度に優れるので好ましい。
【0034】
この表面処理剤は、さらに分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する有機化合物を含有すると電極の表面に形成するキトサン類を含有する表面処理剤の架橋を促進して、皮膜の強度および電解液に対する耐食性が向上するので好ましい。このような有機化合物としては、例えば、酢酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、メリト酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、セバチン酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、エチレンジアミンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ジエチレントリアミン5酢酸、タンニン酸、フィチン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などが挙げられる。これらの中でも、架橋性の観点から3塩基酸、4塩基酸または5塩基酸がより好ましい。
【0035】
さらに、この表面処理剤がTi、Zr、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、Vおよび3価Crから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を含有すると電解液に対する耐食性が向上するので好ましい。これらの金属化合物は、金属酸化物、水酸化物、錯化合物、有機酸塩、無機酸塩などの形態で用いられる。
表面処理層の形成に際しては、キトサン類と必要に応じて上記金属化合物やその他の添加材を水に溶解して、水溶液とした表面処理剤を電極11の表面に塗布して乾燥させる。この表面処理層の表面に封止フィルム1を熱圧着することによって、強固な接着を行うことができる。
【0036】
この表面処理剤の主成分となるキトサンは、カニやエビなどの甲殻などから得られるキチンを脱アセチル化して得られる。キチンは、β−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミンである。キトサンは、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースを構成単位とするアミノ基を含む多糖類である。キトサンは、各種の酸と塩を形成し、水に溶解するとカチオン性を示す。キトサンは、高い反応性を有する。キトサン類を主成分とする表面処理剤は、親水性である電極11および疎水性である封止フィルム1のいずれの面とも接着が可能である。本発明において用いるキトサン類は、脱アセチル化度80%以上のものが好ましい。脱アセチル化度が、この範囲未満であると、水に溶解しにくくなることがある。
【0037】
表面処理剤に用いるキトサン類の重量平均分子量は、1000〜200万の範囲であることが好ましく、1万〜100万の範囲であることがより好ましい。分子量がこの範囲より小さいと、表面処理層の皮膜の強度が充分でないことがある。分子量がこの範囲より大きいと、水溶液の粘度が高くなりすぎ、取り扱いにくいことがある。
キトサンの誘導体は、キトサン、キトサンのピロリドンカルボン酸塩、ヒドロキシプロピルキトサン、グリセリル化キトサン、カチオン化キトサン、キトサン乳酸塩、キトサンアジピン酸塩などが好ましい。キトサンの誘導体は、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースのみから構成されてもよい。また、これらと他のグルコースとの共重合体であってもよい。さらに、グルコサミンの官能基の一部に他の置換基を導入してもよい。
【0038】
本発明の封止フィルム1が融着される容器のラミネートフィルム20は、例えば、図2に示すように、金属箔21の一方の面にシーラント22、他方の面にフィルム基材23を積層した積層フィルム等が挙げられる。ラミネートフィルム20は、他の層が積層されてもよい。
容器のラミネートフィルム20は、絞り成形した袋や平袋などの形態に成形される。金属箔21としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、鉄箔などがある。金属箔21は、化成処理等の下地処理が施されていてもよい。容器のラミネートフィルム20のシーラント22を形成する樹脂は、封止フィルム1のシーラント5と融着可能な樹脂が選ばれる。その様な樹脂としては、例えば、PP系樹脂の場合は、PPの単独重合体やPPとエチレンの共重合体等を用いることができる。ポリエチレン系樹脂の場合は、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン等を用いることができる。フィルム基材23を構成する樹脂は、特に制限はないが、強度の大きいポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)やPP等が好適に用いられる。これらの樹脂は延伸されたフィルムであると高い物理的強度が得られる。これらのフィルムは複数層積層されてもよい。
【0039】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、封止フィルム1は、各樹脂層間の接着性、物理的強度や絶縁性の向上等のために他の層を含んでもよい。この場合、他の層は、熱圧着時に溶融しない層で、柔軟性も高いことが好ましい。また、各層間のラミネート強度を適度な範囲に制御して封止フィルム1に容器内の温度や圧力が異常に上昇した場合に備えて安全弁の機能を付与してもよい。
【実施例】
【0040】
実施例の作成に使用した樹脂は、以下のとおりである。
樹脂A:エチレンとプロピレンのランダム共重合体(MFR7.5g/10分、融点142℃)
樹脂B:エチレンとプロピレンのランダム共重合体(MFR5.0g/10分、融点132℃)
樹脂C:エチレンとプロピレンのランダム共重合体(MFR1.5g/10分、融点146℃)
樹脂D:エチレンとプロピレンのブロック共重合体(MFR2.3g/10分、融点162℃)
樹脂E:エチレンとプロピレンのランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト重合した無水マレイン酸変性PP(MFR7.5g/10分、融点135℃)
【0041】
<実施例1>
樹脂Eからなる厚さ25μmの電極接着層2、樹脂Dからなる厚さ35μmの内側の絶縁層3、樹脂Eからなる厚さ25μmの連結層8、樹脂Dからなる厚さ35μmの外側の絶縁層6および樹脂Aからなる厚さ30μmのシーラント5を共押出インフレーターで厚さ150μmの5層の積層フィルムを成形した。この積層フィルムを幅15mmにスリットし、実施例1の封止フィルム1を作成した。
<実施例2>
連結層8に樹脂Aおよびシーラント5に樹脂Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の封止フィルム1を作成した。
<実施例3>
シーラント5に樹脂Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にして実施例3の封止フィルム1を作成した。
【0042】
<実施例4>
樹脂Eからなる厚さ25μmの電極接着層2と樹脂Dからなる厚さ40μmの内側の絶縁層3とを共押出Tダイで2層の積層フィルムを成形して内側の積層体4を作成した。樹脂Bからなる厚さ25μmのシーラント5と樹脂Dからなる厚さ40μmの外側の絶縁層6とを共押出Tダイで2層の積層フィルムを成形して外側の積層体7を作成した。内側の積層体4の絶縁層3と外側の積層体7の絶縁層6の間に樹脂Bからなる厚さ25μmの連結層8を押出ラミネートして一体化し、厚さ155μmの5層の積層フィルムを成形した。この積層フィルムを幅15mmにスリットし、実施例4の封止フィルム1を作成した。
<実施例5>
シーラント5に樹脂Aを用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例5の封止フィルム1を作成した。
【0043】
<比較例1>
樹脂Eからなる厚さ25μmの電極接着層2、樹脂Dからなる厚さ100μmの絶縁層および樹脂Aからなる厚さ25μmのシーラント5を共押出インフレーターで厚さ150μmの3層の積層フィルムを成形した。この積層フィルムを幅15mmにスリットし、比較例1の封止フィルム1を作成した。
<比較例2>
樹脂Eからなる厚さ30μmの電極接着層2および樹脂Eからなる厚さ120μmの絶縁層を共押出インフレーターで厚さ150μmの2層の積層フィルムを成形した。この積層フィルムを幅15mmにスリットし、比較例2の封止フィルム1を作成した。
【0044】
<封止フィルム付電極の作成>
電極11として厚さ300μm、幅50mm、長さ50mmの正方形のアルミニウム箔および銅箔を用いた。銅箔には、Ni(NHSO・4HO:500g/l、NiCl・6HO:30g/l、HBO:50g/lおよびラウリル硫酸ナトリウム5ml/lの組成のめっき浴を用いて、メッキを行った。メッキの条件は、浴温50℃、電流密度10A/dmとした。2種類の電極11の表面にグリセリルキトサンを水に溶解した表面処理剤を塗布して乾燥した。表面処理層の厚さは、0.8μmとした。
【0045】
各封止フィルム1を幅15mm、長さ60mmの長方形に切断し、二枚を一組とした。切断された一組の封止フィルム1、1の両端が5mmずつ突出するように、電極接着層2、2を内側にして電極11の上端から10mmの位置に一組の封止フィルム1、1の端縁が電極11の端縁に平行となるように重ね、ヒートシーラーを用いて190℃、2kgf/cm、5秒間の条件で熱圧着した。ヒートシーラーのシールバーの一本は、弾性体で被覆されたものを用いた。
熱圧着は、表側と裏側から各一度ずつ行い、図3に示す実施例1〜5および比較例1〜2を用いた封止フィルム付電極10のサンプルを作成した。
電極11として、アルミニウム箔を用いて作成した封止フィルム付電極10のサンプルをサンプルAとし、ニッケルメッキを施した銅箔を用いて作成した封止フィルム付電極10のサンプルをサンプルBとした。
【0046】
<ラミネートフィルムへのサンプルの融着>
フィルム基材23として厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム、金属箔21として厚さ40μmのアルミニウム箔およびシーラント22として厚さ40μmのエチレンとプロピレンのランダム共重合体フィルムをドライラミネートで積層し、一辺が100mmの正方形に切断して容器のラミネートフィルム20を作成した。
サンプルAおよびBの各サンプルの表面のシーラント5、5に二枚のラミネートフィルム20、20のシーラント22、22を重ねてヒートシールした。重ね方は、電極11と二枚のラミネートフィルム20、20互いの辺が平行となるように中心を一致させて配置して重ねた。重ねた各サンプルとラミネートフィルム20の封止フィルム1、1の存在する部分を両面から封止フィルム付電極の作成と同じ条件でヒートシールし、両面に封止フィルム付電極が融着されたラミネートフィルムを作成した。
【0047】
<接合強度の試験>
両面に封止フィルム付電極が融着されたラミネートフィルムの幅方向の中心において、二枚の封止フィルム1、1が幅30mmとなるように、二枚のラミネートフィルム20、20、二枚の封止フィルム1、1および電極11の全てを切断し、接合強度の試験サンプルとした。このサンプルについて、インストロン型引張試験機を用いて180度剥離強度を測定した。測定は、電極11に融着されていないラミネートフィルム20の端部と封止フィルム1が熱圧着されていない電極11の端部を試験機の二つのチャックに掴ませて10mm/分の速さで引張り、剥離強度を測定した。測定は、二枚のラミネートフィルム20のそれぞれについて行った。両方のラミネートフィルム20が100N/30mm以上の剥離強度を有する電極が接合されたラミネートフィルムを○、それ以外のものを×とした。結果を表1に示す。
【0048】
<封止性の試験>
サンプルAおよびBの各サンプルについて、封止フィルム1と電極11の端縁の封止性を確認するために、赤色染料を含有する炭化水素系の溶剤からなる浸透液を封止フィルム付電極10の熱圧着部の両側の端縁の際に滴下し、表裏の封止フィルム1を透して観察した。電極11の端縁に浸透液の浸入が認められたサンプルを×、認められないサンプルを○とした。結果を表1に示す。
【0049】
<硬さの試験>
実施例1〜5および比較例1〜2を用いた封止フィルム付電極10のサンプルについて、各電極11から突出している各封止フィルム1を各電極11の際で片側に180度に折り曲げ、次に反対側に180度に折り曲げて絶縁層の脆化による白化の発生を観察した。実際のパック電池においては、封止フィルム1は電極11と共に折り曲げられるので、この様な折り曲げは起こり得ないが、封止フィルム1の硬さの差が出やすくするために、過酷な試験方法を採用した。各封止フィルム1に発生する白化の状況を観察して、白化の多いものを×、少ないものを○、中間のものを△とした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、電極が接合されたラミネートフィルムにおける基本的な接合強度は、実施例と比較例の両方とも十分であることが確認された。しかし、厚い1枚の絶縁層を有する比較例1および2は、アルミニウム箔およびニッケルメッキ銅箔のいずれの電極に対しても電極端縁の封止性に劣ることがわかる。また、硬さ試験において、比較例1および実施例1〜5は、絶縁層が同じ樹脂であるにもかかわらず、結果が異なった。比較例2の結果から、絶縁層の厚さが100μmを超えると硬くて脆くなり、白化が起こりやすいことがわかる。このことは、比較例2は、低温の環境下において、折り曲げられた部分の絶縁層にクラックが発生する可能性があることを示唆する。一方、実施例1〜5および比較例1が白化が起こりにくく、各絶縁層の厚さが80μm以下であることが好ましいことがわかる。また、実施例4と5は、実施例1〜3よりも絶縁層が厚いにもかかわらず、最も白化が起こりにくい。このことから、Tダイによる共押出で内側の積層体4および外側の積層体7を予め積層しておき、連結層8を押出ラミネートすると絶縁層が脆くなりにくいことがわかる。この理由は、絶縁層が冷却ロールで急冷されるTダイキャスト法で作成された絶縁層は、インフレーション法で作成された絶縁層より結晶化度が低いので、柔軟性が高いためと推定される。そして、封止フィルム付電極10の作成時および封止フィルム付電極10のラミネートフィルム20への融着時に絶縁層が完全には溶融しなかったので、結晶化度に大きな変化がなかったと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の封止フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す封止フィルムを用いて、容器のラミネートフィルムと電極とを接合した状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す封止フィルムを電極に接着した封止フィルム付電極を示す(a)斜視図、および(b)断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…封止フィルム、2…電極接着層、3…内側の絶縁層、4…内側の積層体、5…シーラント、6…外側の絶縁層、7…外側の積層体、8…連結層、10…封止フィルム付電極、11…電極、20…容器のラミネートフィルム、21…ラミネートフィルムの金属箔、22…ラミネートフィルムのシーラント、23…ラミネートフィルムのフィルム基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素の電極を封止する封止フィルムであって、前記電極に接着する酸変性ポリオレフィンからなる電極接着層と該電極接着層より高融点のポリオレフィンからなる内側の絶縁層を有する内側の積層体と、容器のラミネートフィルムに融着するポリオレフィンからなるシーラントと該シーラントより高融点のポリオレフィンからなる外側の絶縁層を有する外側の積層体とが、前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂より低融点のポリオレフィンからなる連結層を介して積層されたことを特徴とする封止フィルム。
【請求項2】
前記電極接着層、前記内側の絶縁層、前記シーラント、前記外側の絶縁層および前記連結層を形成する樹脂がポリプロピレン系樹脂からなる請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項3】
前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂の融点と前記連結層を形成する樹脂の融点との差が10℃〜30℃である請求項1または2に記載の封止フィルム。
【請求項4】
前記連結層を形成する樹脂の融点と前記電極接着層を形成する樹脂の融点との差が絶対値で15℃以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項5】
前記連結層を形成する樹脂のMFRが前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRより大きい請求項1ないし4のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項6】
前記連結層を形成する樹脂のMFRと前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRとの差が2〜15g/10分である請求項5に記載の封止フィルム。
【請求項7】
前記連結層を形成する樹脂のMFRが5〜15g/10分であり、かつ、前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層を形成する樹脂のMFRが0.5〜3g/10分以下である請求項1ないし6のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項8】
前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層がエチレンとプロピレンとのブロック共重合体からなる請求項1ないし7のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項9】
前記内側の絶縁層および前記外側の絶縁層が同一の樹脂からなる請求項1ないし8のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項10】
前記連結層を形成するポリオレフィンがエチレンとプロピレンとのランダム共重合体である請求項1ないし9のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の封止フィルムを電極の少なくとも片面に接着したことを特徴とする封止フィルム付電極。
【請求項12】
ニッケル以外の電極の表面に高級アルコール系界面活性剤を配合したスルファミン酸ニッケルメッキ浴を用いて形成されたニッケルメッキ被膜を有する請求項11に記載の封止フィルム付電極。
【請求項13】
電極の表面にキトサンおよびキトサン誘導体から選ばれる少なくとも1種のキトサン類を含有する表面処理層を有する請求項11または12に記載の封止フィルム付電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−224218(P2009−224218A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68079(P2008−68079)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(506213223)株式会社ネッツ (4)
【出願人】(508081204)
【Fターム(参考)】