説明

射出延伸成形法とその金型

【課題】射出成形法に延伸を加えることにより、(1)0.15mm薄肉の成形品の成形、(2)分子配向による強度アップ、(3)金型代の低廉化、薄肉によるコストダウン、が可能となる金型、成形法を提供する。
【解決手段】 射出成形機を用い、一例として容器(コップ)で説明すると、先ず成形品1(原成形品)を成形し、完了と同時に金型を開き、成形品の底面10をコア−61で押さえ、側面部を確実に延伸させる周辺縁12、フランジ押さえプレ−ト22,コア−固定板23,コア−62により金型後退力を利用して延伸することによって、薄肉とする、また成形品底面10、成形品側面を更に薄肉とするためにコア−61を前進させる、と同時に適温度を選択して延伸する事により分子配向が起こり、強度アップを計ることが出来る、又(図1)に示すように金型は簡単構造であり、薄肉のためコストダウンに寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
射出成形機を用い真空成形法(含圧空成形法)のようにシ−ト成形後、真空成形する2段成形法ではなく、しかも残板の出ない成形法で射出成形法では不可能な薄肉成形品の成形に関する、また延伸による分子配向により強度アップ事項に関する。
【背景技術】
【従来の成形技術連続型】
【0002】
一例として円形型形状容器(コップ)を成形する場合について説明すると、先ずシ−ト成形用押出機とその先端に取り付けられた、シ−ト(平板)用金型を用いてシ−トを成形し、これをロ−ル状に巻き取る。 更に、このロ−ルシ−トを連続真空成形機(含圧空成形機)に掛けて連続加熱し、更にアルミ型を用いてコップを成形し、これを打ち抜き、更に周辺部分を折り返して、周囲のエッジをなくす、この方法の特徴は側面肉厚が薄肉(0.15mm程度)の成形品を得ることが出来るが、残板の不良が大きく約30%程度出るし、工程が二工程(シ−ト成形、真空成形)で更に折り返しのためのジグが必要でコスト高である。一方射出成形法では円形容器の場合(コップ)側面肉厚0.55mm程度が限界で成形機の精度(モ−ルドベ−スの平行度)の良いこと、金型の精度が良いことが必要で、真空成形品に比較して非常に厚肉、従って製品がコスト高で有ると同時に金型代も高価である。
【従来の成形技術単発型】
【0003】
この方法も前者と同様にシート成形、真空成形との二段成形法で、まず出来たシ−トのつかみ代を含めた大きさに裁断し、このシ−トを真空成形機に掛けて成形品を得る方法で比較的に厚物成形品、成形個数の少ない試作品等に用いられているが、二段成形法であること、残板の不良が出ることは同じで、効率的にもコスト的にも高コストである。
【特許文献1】 公開特許公報(A)特開2004−174714
【0004】
金型装置の型閉工程終了前に金型装置のキャビテ−えの樹脂の充填を開始し型閉工程終了前に所定量の樹脂を充填するというものであるが、この方法は射出圧縮成形法であり、公知公用なものであると同時に、この方法では実際には0.15mm程度のコップ状容器側面の薄肉成形品はコア−の固定の難しさにより、厚肉品であれば可能であるが薄肉成形品(0.15mm程度)では不可能であり(実際の成形実験よる)、本発明とは明らかに異なる。
【特許文献2】 公開特許公報(A)特開2004−268542
【0005】
射出成形法で成形した成形品のフランジ部の温度を上げて結晶化する、次にその成形品を結晶化開始温度以上で且つ融点以下の温度にして圧空及び真空成形すると共に熱固定し、更にプラグを挿入してシュリンクバックして賦形して冷却する方法であるが、これは理論的には可能でも、実際には温度幅が非常に狭く成形が難しいと思われる、また図面より判断すると、このフランジ幅及び形状ではプラグ挿入の際のプラグの確実な保持が不可能である(実際の実験結果より)、従って肉薄物は不可能と判断される、型構造、その操作面より、本発明とは明らかに異なる方法である。
【特許文献3】 特許公報(B2)平3−74169
【0006】
この特許は射出成形で平板を作るが、その平板を製品成形位置に移送し、平板成形のその位置で成形を行うものではなく、更にコア−プラグ等にて成形する方法で、本発明とは明らかに異なる。
【特許文献4】 公開特許公報(A)特開2004−10061
【0007】
広口容器において上面に向かって開いた容器を重ねる場合、その外側面が平滑なため重ねると、互いに付着して1個づつ使用の際に重なっているものを箇々にする事が困難、これを容易にするため、成形金型の底面R部分の表面粗さを大きくしている事が特徴となっている、従って本発明とは明らかに異なる。
【発明の開示】

【発明が解決しようする課題】
【0008】
角形(四角形等)、楕円形、円形等形状は問わず、その成形品の肉厚を薄肉(0.15mm程度)の成形品は真空成形(含圧空成形)では可能であるが、上記説明の如く残板を出さずに成形品を得ることは不可能である。そこで同時にその部分の強度を上げる、コスト低減をはかること、即ち▲1▼薄肉、▲2▼残板なし、▲3▼強度向上、▲4▼金型代の低廉化と薄肉によるコスト低減 、この4事項を同時になし得る方法は、これは今迄の成形法では不可能である。
【問題を解決するための手段】
【0009】
これを解決する手段として、一例として円形容器(コップ)で説明すると、薄肉0.60mm程度の肉厚で有れば射出成形機法で可能であるが、0.15mmの肉厚となると不可能である。 また薄肉0.15mm程度で有れば真空成形法(含圧空成形)で可能であるが、残板が出る事を防ぐことは出来ない(この真空成形法で円形容器を成形すると約30%の残板が出る、これは大変なロスであり不良品を作った事になる)、当然その分コスト高である。 更に強度向上、金型代廉価、薄肉等によるコストダウンの以上の問題を解決する方法を次に説明する。
【0010】
上記の如く一例を円形容器(コップ)で説明すると(図1〜4)までとなる。
先ず(図1)においてキャビテ−プレ−ト21、フランジ押さえプレ−ト22とコア−61,62のキャビテ−1に樹脂を圧入し太線で書かれた形状の成形品1(これが原成形品となる)を形成させる、樹脂充填完了と同時にキャビテ−プレ−ト21とフランジ押さえプレ−ト22との間PL面より金型は開くが(このPL面にスプリングを必要時には設置することもある)、また(図1)12は延伸を確実にするための周辺縁(図1)の成形品1は(図2)に示す如く金型後退によって、成形品1の底面10はコア−61により押さえられているため、容器(コップ)側面11が延伸されて薄肉となる、成形品底面10のコア−押さえは押出しプレ−ト26、27を射出成形機の稼働押出しロッド271が押さえ金型開きと共に開きと逆方向に前進する、次に(図3)に示す如く金型21のキャビテ−の底面101より離れが、金型の移動側は後退することなくコア−61が前進(当然押出し板26,27、成形機可動押出しロッド271前進)して金型キャビテ−底面101に当たり止まる、従って特に成形品底面10が薄肉となり、また側面13も延伸されて、更に薄肉となる。この場合も上記の如く成形機稼働押出しロッド271は261の隙間だけ更に前進する。
もし(図2)で側面11の肉厚が所定の肉厚、強度が得られれば(樹脂、温度により異なる)(図3)の方法は必要ない。
【0011】
延伸された成形品の内面が負圧となるのを解消するため、数個のエア−注入口4より内面にエア−が入るように設置してあり、その導管41は外気に繋がっている。
注入口4に繋がる導管41にコンプレッサ−よりエア−を送り内外圧バランス調整ををとる場合は、成形品11の内圧と外圧との差で太鼓型、または鼓型を形成する事は可能である。 また温度調節と金型後退力によって分子配向を起こさせ強度を上げることが出来る。
【0012】
また容器外面の温度を保持するため31よりエア−を送り円形リングを前進させて外気を遮断して成形品の温度を保持する(シャバラを設置しても良い)、また側面部分11を確実に延伸するためフランジ押さえプレ−ト22と23は強力な数個のマグネットによって一体とし、更に成形品の一部として形成され延伸を確実にするための周辺縁12を確実に抑えて延伸する、肉薄の場合は数秒にて固化する。
【0013】
固化完了すると(図4)に示す如くキャビテ−プレ−ト21より出ている数本のストッパ−ボルト8にてフランジ押さえプレ−ト22はとまり、成形品は更にコア−プレ−ト23及びコア−62に付着して後退し(コア−付着を確実にするため必要に応じ処置構造を設ける)、開き完了と同時にコア−61の先端の固定弁9からのエア−吹き出し(固定弁9のエア−は導管91を通って固定弁9に流れる)とコア−固定板23とコア−の隙間92(この隙間はエア−は通るが溶融原料は流れ込まない間隙)よりエア−を同時吹き出させることにより成形品(コップ)は金型から離れ落下し、一サイクルは完了する。
以上の説明で首記の目的である、▲1▼薄肉、▲2▼残板なし、▲3▼強度向上、▲4▼金型代の低廉化、薄肉によるコスト低減を達成することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
(1)真空成形(含圧空成形)にような残板が出ないで、しかも薄肉成形品を成形できる。 (2)肉厚0.15mm程度の成形品は射出成形法では成形不可能であるが、この成形法で有れば問題なく可能で且つ容易に成形できる、3)金型代金が低廉になるし、薄肉のためコスト的にも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)射出成形機、オイルフリ−のコンプレサ−を有し、成形品の延伸部分(この場合11)が延伸できるように、コア−61が押出しプレ−ト26,27により成形品底部10を溶融樹脂充填完了と同時に完全に押さえ、(2)移動側プレ−ト(22,23,24、25,28)が後退する際、成形品1の底面10を確実に抑えること即ちフランジ押さえプレ−ト22、コア−62及びコア−固定プレ−ト23により確実に成形品側面部分11を延伸させるための効果を発揮させる構造であることである。
【実施例】
【0016】
本発明の方法を用いて真空成形で成形したものと、ほぼ同形な容器、底面直径寸法43mm×上面直径寸法65mmmm×高さ寸法55mm、側面肉厚0.15mmの円形容器を問題なく成形できた、勿論金型構造、成形方法は本発明と同一であり、真空成形のように残板なしである。
この事実により、この成形法の合理性を確信した。
【産業上の利用可能性】
【0017】
上記実施例に示す如く、薄肉、残板のないこと等、この事実はコスト低減に結びつき、また側面肉厚0.15mmは射出成形法では不可能で有ることより産業界にとっても、非常に有利であり、大いに利用可能な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
各図面は一例として容器(コップ)成形をもって示す。
【図1】 射出成形機に取り付けられた金型が閉じ、キャビテ−に溶融樹脂1が充満したところを示す。
【図2】 金型がPL面より開きコア−61は押出し板26,27に押されて充填した樹脂の主として底面10のみがそのままの位置にとどまり、フランジ押さえプレ−ト22、コア−固定板23は強力なマグネット71により一体となって後退して成形品側面11を延伸している処をしめす。 又同時に円形リング3が導管31のエア−圧にて前進して外気との接触を防ぎ、内面の負圧は数個の注入口4は外気に連結してエア−供給し外圧との平行を保っているところを示す。
【図3】 成形品1が金型キャビテ−底面101より離れ更にコア−61の前進により延伸が始まるところを示す。
【図4】 金型が更に開きプレ−ト22はストップボルト8により引き離され、成形品は内面コア−の先端部9より出るエア−及びコア−固定板23とコア−との隙間92より出るエア−により成形品は金型より離れ落下するところを示す。
【符号の説明】
【0019】
1. 充填された成形品(原成形品)
10.充填された成形品の底面
11.延伸される成形品の側面
12.延伸を確実にするための周辺縁
20.固定側金型取り付け板
21.キャビテ−プレ−ト
22.フランジ押さえプレ−ト
23.コア−固定板
24.バックプレ−ト
25.スペサ−
26.押出し板前板
27.押出し板後板
28.移動側金型取り付け板
3. 外気遮断用円形リング
31.円形リング作動用エア−の導管
4. 延伸された成形品11の内部にエア−を入れる導管の開口部
41.延伸された成形品11の内部にエア−を入れる導管
5. マグネット
61.成形品1を押さえるコア−
62.コア−
71.キャビテ−プレ−ト温度を一定にさせるための電気ヒタ−
72.コア−温度を一定にさせるための電気ヒタ−
8. フランジ押さえプレ−ト22を所定の位置に止めるストッパ−ボルト
9. 成形品を金型から離型させる固定型エア−弁(コア−先端に設置)
91.上記9エア−弁に通ずる導管
92.コア−62とコア−固定板との隙間に通ずる固定型エア−弁
93.上記92エア−弁に通ずる導管
101.金型のキャビテ−の底部
261 コア−61、押出し板26,27成形機押出しロッド可動隙間
271.成形機稼働押出しロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形(四角形等)、楕円、円形等形状はいずれでもよいが、一例として円形薄肉容器(コップ)の成形を例に取りると、(図1)の1のごとき形状の成形品を先ず成形し、この成形品1の底面部分10を金型21のキャビテ−底面101とコア−61とで挟んで押さえ、図2に示す如く金型の移動側を後退させ、成形品の側面11を延伸して二点鎖線の如くに肉厚を薄くし、更に(図1)の1の底面部分10及び側面部分11を延伸するため(図3)の如くに成形品底面部分10を金型図(図3)のキャビテ−底面部分101から離して、更にコア−61の前進にて延伸し特に(図2)の成形品底面10また(図3)13を所定の薄肉厚にし、残板なし、強度アップする成形方法。
もし(図2)側面肉厚11等がこの方法の延伸で所定の肉厚、所定の寸法、強度に達する場合は、図3の更なる延伸は不要とする。
【請求項2】
延伸の際、延伸部分(成形品の外面部分)の温度低下を防ぐため成形品形状に合わせた最適形状、例えば円形の場合は円形リング3を31より送り込まれる、エア−又はスプリング等によって(図2)の如く稼働させる方法。(シャバラでも可)
【請求項3】
成形品は〔図2〕の如く延伸の際、成形品側内面が負圧となるため数個のエア−注入口4より大気エア−を導管41より入れて外圧と同一とする又は注入口4に通ずる導管41をコンプレッサ−に繋ぎエア−を入れ成形品の内外面との圧力の調整を計る。
この調整(内外圧の差)によって内圧が高ければ成形品11は外部に膨らんだ太鼓形状、内圧を外圧より稍負圧にすることにより鼓形状の成形品を得る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341574(P2006−341574A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195494(P2005−195494)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(391013069)池上金型工業株式会社 (10)
【出願人】(502321386)
【Fターム(参考)】