説明

射出成形された多層グレージング

【課題】溶融ポリマー材料の射出後および冷却後に、その結果得られる多層パネルが、適切な従来の安全グレージングのいずれの用途においても使用されうる安全パネルとして機能するように配置される、2つの剛性基板の間に、ポリマー中間層を直接形成するために、射出成形を使用することを対象とする。
【解決手段】方法は、安全グレージングにおいて通常見られる、グレージング基板の比較的狭い空間へのポリマーの射出を容易にするために、比較的低分子量のポリマー、多数の射出点、鋳型の圧縮および/または加熱された基板を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層グレージングの分野に属し、特に、本発明は、従来オートクレーブ積層を使用して、ポリマーシートとガラスなどの剛性層を組み合わせて積層安全グレージングとする、安全グレージングの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
安全ガラスは、改善された耐衝撃性およびガラス保持力が望ましい、多くのガラス用途において使用される。安全ガラスを使用するよく知られた例は、自動車用途の風防ガラスとしてである。
【0003】
安全ガラスは、多くの構成で使用することができる。通常、安全ガラスは、ガラスの2層の間に配設されたポリマー中間層から構成される。ポリマー中間層は、例えば、単一のまたは多層のシートでありうる。ポリマー材料は、通常、可塑化ポリ(ビニルブチラール)であり、事故の際にはエネルギーを吸収し、ばらばらにされたガラスを保持する両機能を果たす。
【0004】
安全ガラスは、最初に2枚のガラス板の間に1枚のポリマー中間層を組み合わせることにより通常作製される。次いで、このアセンブリは脱気オーブンに供給され、加熱および力が加えられて中間層がガラスに仮留めまたは部分的に結合させられる。このようにして形成される予備積層板は、次いでオートクレーブ中に設置され、結合工程を完結させ、光学的に透明な耐衝撃性安全グレージングを作製するために温度および圧力が加えられる。
【0005】
よく知られた、単純明解な技術であるが、この従来の積層技術は、労働集約型であり、時間が掛かり、安全に係わる問題を引き起こす、手順上の難題に満ちている。例えば、部品を最初に組み立てる間は、中間層シートは境を接するガラスより通常大きく、通常ガラスのエッジと面一に切り落とされる。この操作は、通常人手を必要とし、生産量をしばしば制限し、安全に係わる問題を引き起こす。
【0006】
さらに、従来の積層工程は、大量のエネルギーを消費し、時間が掛かり、この両方が、合わせガラスのコストおよび生産時間を上昇させる。例えば、3つの主要ステップ−組み立て、脱気およびオートクレーブ−は、それぞれ相当の時間を必要とし、その結果、開始から完了までが、容易に8時間になりうる全製造工程をもたらすことになる。さらに、脱気工程に供給される熱エネルギーなどの、1つの工程に供給されるエネルギーの大部分が、通常、次のオートクレーブステップへ移送されず、オートクレーブステップは追加の熱エネルギーが必要になる。
【0007】
従来の積層技術に本質的に内在する限界に対して提案された1つの解決策は、樹脂をガラス挿入物中に射出し、次いでモールドキャビティを圧縮することを開示している、欧州特許出願公開第0908287号明細書(コマツ(Komatsu))(米国特許第6,296,799号明細書、同第6,669,890号明細書および同第6,368,537号明細書も参照されたい)において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0908287号明細書
【特許文献2】米国特許第6,296,799号明細書
【特許文献3】米国特許第6,669,890号明細書
【特許文献4】米国特許第6,368,537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当技術分野において必要とされるものは、大規模な製造手順を必要とせず、多層グレージングを迅速に、費用を掛けずに形成することを可能にする、ガラスパネルおよびこの他のグレージングパネルを製造する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、溶融ポリマー材料の射出後および冷却後に、その結果得られる多層パネルが、適切な従来の安全グレージングのいずれの用途においても使用されうる安全パネルとして機能するように配置される、2つの剛性基板の間に、ポリマー中間層を直接形成するために、射出成形を使用することを対象とする。本発明の方法は、安全グレージングにおいて通常見られる、グレージング基板の比較的狭い空間へのポリマーの射出を容易にするために、比較的低分子量のポリマー、多数の射出点、鋳型の圧縮および/または加熱された基板を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】射出成形する前のガラスの2層の概略断面図である。
【図2】ガラス層の間の空間を十分に満たしていない、2つのガラス層の射出成形工程の概略断面図である。
【図3】本発明の圧縮射出成形法の概略断面図である。
【図4】本発明の圧縮射出成形法の概略断面図である。
【図5】4つの例の射出成形グレージングの、時間経過に伴う射出圧力の上昇を示す図である。
【図6】4つの例の射出成形グレージングの、時間経過に伴って充満されるモールドの体積を示す図である。
【図7】4つの異なる間隙および分子量構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴う射出圧力の上昇を示す図である。
【図8】4つの異なる間隙および分子量構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴って充満されるモールドの体積を示す図である。
【図9】4つの異なるゲート構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴う射出圧力の上昇を示す図である。
【図10】4つの異なるゲート構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴って充満されるモールドの体積を示す図である。
【図11】4つの異なる間隙および温度構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴う射出圧力の上昇を示す図である。
【図12】4つの異なる間隙および温度構成を有する射出成形グレージングの、時間経過に伴って充満されるモールドの体積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本発明は、射出成形を使用して多層グレージングを製造する方法を対象とする。本発明は、便宜上、ポリマー溶融体が間に射出される2枚のガラス板を有する多層構築体として記載されるが、さまざまな実施形態において別の剛性基板がガラスの代わりに使用されうることが理解され、以下において詳細に記載されよう。
【0013】
本発明の多層ガラスパネルは、比較的低分子量のポリマー、多数の射出点および/または加熱された基板の中の1つ、2つまたは3つを使用する射出成形技法を用いて形成される。
【0014】
本発明のさまざまな実施形態において、多層ガラスパネルは、以下に記載するように、2つの層の間の空間を画定するために、所与の距離で配置されたガラスの2層を提供することによって形成される。好ましい実施形態において、ガラスの2層は、射出成形モールドの内側の位置に保持される。ほとんどの場合、空間の幅は、最終製品のポリマー中間層の望ましい厚さに基づいて選択されることになる。最終製品におけるポリマー層の厚さは、通常、いくらかの加工変動を伴う、2つのガラス層の間にもたらされた空間の厚さにほぼ対応するはずである。
【0015】
ガラスパネルは、ポリマーを射出する前に、いずれかの適切な手段を用いて相対的な位置に保持されうる。例えば、真空を用いて、それぞれのモールドの半分にガラス板を引き付けることができる。別のやり方では、クランプを用いてガラス板の外側のエッジを固定することができる。例えば、クランプのサブポーション内で画定される間隙を有するクランプを、設計することができ、固定された多層グレージングの中へまたは固定された多層グレージングから外へポリマーを通過させることが可能になる。別の例において、2つの溝が刻まれた支持体エッジ部品または枠が提供され、ガラスの2つの層がそれぞれの溝に1つ配置され、この溝は、ガラスの層の間に所定の距離をもたらすように形成されている。クランプ、ガイド、枠および/または別の支持体は、ガラスパネルの一部または全体の周辺に沿って提供されうる。適切な孔および/または間隙を入れて、ポリマー射出または流出、または気体流出を可能にすることができる。
【0016】
ガラスが提供された後、ガラスパネルが形成され、続いてポリマー溶融体(添加物を含むまたは含まない)がガラス層の間の空間に射出される。熱可塑性ポリマーを溶融状態にする処理方法は、当技術分野においてよく知られている。ポリマー溶融体は、例えば、溶融体を空間中に射出成形する直前に、溶融相の間に構成成分をブレンドすることによって、または既にブレンドされ、その後ペレットの形に押出成形された、ペレット化されたポリマーを供給することによって形成されうる。いずれの場合も、溶融ポリマーは、2つのガラスパネル間の空間中に高圧で押し込まれる。
【0017】
好ましい実施形態において、ガラス板は、2つの向かい合うモールド表面にあてがって、射出成形機中に直接設置される。モールド表面は、ガラスの破損を低減させるまたは無くすために、およびガラスへの熱およびガラスからの熱を均一に伝導するために、次の高圧ステップの間、ガラスを均一に支持するように製造される。次いで、射出成形機は、通常の方法で運転され、その結果、射出成形機内部で、ポリマー溶融体がガラス層の間の空間中に高圧射出されることになる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、複数のガラス層の一方または両方の温度を高めて、射出ステップの間に確実に完全にモールドを充満させる。ある一例において、ガラスはモールドに充填される前に加熱されうる。別の場合、ガラスは、モールド中に充填され、引き続き、モールドからのまたは別法として外部熱源からの伝導により加熱される。本発明は、ガラスとモールドとの温度を一致させて、または異なる温度を維持して、実行されうる。後者の場合、ガラスは、モールドと過度の冷却が生じる前に実行される射出工程との温度を超えて、加熱することができる。モールドとガラスとの温度が異なる場合、この2つの間の温度差および表面全体にわたる温度変動は、温度差および変動が、ガラスが熱衝撃により破壊することになる大きさを超えないように制御される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、ガラス温度は、ポリマー溶融体を射出する前に、少なくとも80℃、100℃、150℃、200℃または250℃に上昇させられる。好ましい実施形態において、ガラスの温度は、少なくとも150℃に、または少なくとも200℃に、または150℃から250℃の間に、または175℃から225℃の間に上昇させる。ポリ(ビニルブチラール)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタンポリマー溶融体または本発明の部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを(モールドが、射出されるポリマーの凝固点より低いかまたは凝固点に近い温度に維持される射出成形の一般的な手法とは反対に)ポリマーの凝固点より高い温度に加熱されたガラス板の間に射出することより、大幅に低減された射出圧力で、モールドがより完全に充満される結果となる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー溶融体は、2つのガラス配置の周辺の少なくとも2つの場所に射出され、いくつかの好ましい実施形態において、ポリマー溶融体は、少なくとも3、4、6または10個の場所を通して射出される。さまざまな実施形態において、射出ゲートの1つは、空間の1つのエッジまたは空間の全体のエッジの一部と隣接するように形成される。例えば、風防ガラスに関しては、ガラスの間に形成された空間の長いまたは短い寸法と幅が等しいゲートの1つが形成されうる。別法として、一連のゲートが互いに隣接して設置され、射出用の連続した開口部を有する大きなゲートを模倣することができる。このような実施形態においては、少なくとも20個または少なくとも50個のゲートが使用されうる。
【0021】
これらの実施形態において、射出場所は、1を超える適切ないずれかの数でさまざまに存在することができ、互いに隣接して、互いに向かい合って設置されうるものであり、または積層板の周辺に適切に変化させた状態で分布させられて、空間の複数の面へ、例えば2個または3個の面へ、成功裏に射出するのを支援することができる。
【0022】
ノズルを取り付けた後、圧力を掛けると、ポリマー溶融体はガラスの2枚のパネルの間のモールドキャビティに押し込まれ、溶融体は全体の空間が充満されるまで、空間を通って2個以上の方向に向かう。空間が充満された後、モールドは、突出しに先立って部品を冷却するために、冷却されうる。最終使用の用途に応じて、エッジの余分なポリマーを切り落とし、突き出し後のパネルを仕上げることができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のポリマーは、ガラス層の間の空間中へ溶融ポリマーが容易に流れ込むように、比較的低い分子量を有する。本発明のさまざまな実施形態において、ポリマーは、10,000から150,000ダルトンの、または40,000から100,000ダルトンの分子量範囲を有する。本発明の好ましい実施形態において、ポリマーは、150,000ダルトン未満、100,000ダルトン未満または70,000ダルトン未満の分子量範囲を有する。本明細書においては、ポリマーの分子量範囲は、分子の少なくとも80%が、記載された範囲に入ることを意味する。例えば、40,000から100,000の分子量を有するポリマーは、指定された範囲内にこのポリマーの少なくとも80%を有する。
【0024】
本発明のさまざまな実施形態において、ここに記載した特徴(高い基板温度、低分子量ポリマーおよび多点射出)の2つまたは3つが組み合わされる。したがって、組合せには、高い基板温度と低分子量ポリマー、高い基板温度と多点射出、低分子量ポリマーと多点射出および3つのすべてを一緒にしたものが含まれる。
【0025】
本発明による1つの好ましい方法は、3つの特徴のすべてを一緒に使用することである。10,000から125,000ダルトンの低分子量調合物が部品の少なくとも2つの向かい合った側面上にある、2−6個のゲートを通過するように押し込まれ、100℃から250℃に加熱されたガラスの間に射出される手順がもっとも好ましい。
【0026】
別の好ましい実施形態において、10,000から125,000ダルトンの低分子量調合物が単一ゲートを通って押し込まれ、100℃から250℃に加熱されたガラスの間に射出される。
【0027】
さらに、一層好ましい実施形態において、10,000から125,000ダルトンの低分子量調合物が、部品の少なくとも2つの向かい合った側面上にある2−6個のゲートを通って押し込まれ、20℃から80℃の温度を有するガラスの間に射出される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、10,000から125,000ダルトンの低分子量調合物が単一ゲートを通って押し込まれ、20℃から80℃の温度を有するガラスの間に射出される。
【0029】
別の好ましい実施形態において、150,000から300,000ダルトンの標準的な、市販の分子量調合物が、部品の少なくとも2つの向かい合った側面上にある2−6個のゲートを通って押し込まれ、100℃から250℃に加熱されたガラスの間に射出される。
【0030】
さらに別の好ましい実施形態において、70,000から250,000ダルトンの分子量調合物が、部品の少なくとも2つの向かい合った側面上にある2−6個のゲートを通って押し込まれ、100℃から250℃に加熱されたガラスの間に射出される。
【0031】
好ましい実施形態において、ガラスは開いたモールドに装填され、200℃に加熱される。次いで、ガラス層が、仕上がり部品の中間層の所望の厚さにほぼ等しい距離だけ隔てられるように、モールドは完全に閉じられる。40,000から100,000ダルトンの範囲の分子量を有する分子のブレンドからなる低分子量調合物は、射出成形装置の可塑化スクリューに供給される。この調合物は、スクリュー中で溶融され、2つの射出ポートを通ってキャビティに射出される。これらのポートは、互いに真正面に向き合って設置され、積層されるべき部品の、2つの長いエッジに沿って中心に置かれる。キャビティが充満された後、溶融体を凝固させるためにモールドは冷却され、次いで部品が取り出される。
【0032】
射出成形溶融ポリマーのための、またはペレット化されたポリマーを溶融し、次いで溶融体を射出成形するための装置は、当技術分野においてよく知られている(Injection Molding Handbook、第3版、Dominick V Rosato、Donald V.Rosato、Marlene G.Rosato、Kluwer Academic Publishers、2000、ISBN 0−7923−8619−1)。一実施形態において、スクリュー型押出機を使用して、ポリマーを溶融し、圧力を発生させ、溶融体をノズル、ランナーおよび溶融体に圧力を掛けてガラスパネルの間の空間に導くゲートシステムに供給する。無論、ポリマー溶融体に圧力を掛ける別の装置を使用することができる。例えば、射出する直前にさまざまな構成成分(樹脂、可塑剤、添加物など)を溶融ブレンドすることにより、ポリマー溶融体が形成される実施形態の場合、得られた溶融体は、従来のホッパ/ペレット/スクリュー装置を必要とせず、圧力を掛けて空間に射出することができる。
【0033】
射出成形において通常参照される概念は、流路対厚さの比率、またはモールドの厚さと比較した、溶融体がモールドを充満させるために移動しなければならない全体の距離の比率である。したがって、最大の流路対厚さの比率は、所与のポリマーが、所与の間隙に関して、最適操業条件下で射出されうる最大の距離を、通常示す。もっとも一般的な熱可塑性物質は、流動性に乏しい材料の場合の100:1の比率から、流動性の高い材料の場合の300:1の比率の範囲に通常入る。好ましい実施形態において、本発明により、200:1から1250:1までの範囲の流れ対流路の比率を有するキャビティ中へ溶融射出することによって、可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含有する合わせガラスを製造することができる。実施例に記載の750mm×1250mmの部品などの、標準寸法の自動車部品の場合、本発明により、0.3mmからほぼ2mmの範囲のポリマー中間層の厚さを有するこれらの部品を製造することができる。
【0034】
適切ないずれの射出圧力でも使用することができ、本発明のさまざまな実施形態において、1.7×10パスカル、1.4×10パスカル、0.85×10パスカルまたは0.3×10パスカル未満の射出圧力が使用される。
【0035】
ガラス板の間の空間は、適切ないずれかの厚さでありうるものであり、パネルの意図されている用途および使用されるポリマー溶融体の特性によって、一般に決定されることになる。さまざまな実施形態において、空間は、0.1および0.4ミリメートル、0.2から2.0ミリメートル、0.25から1.0ミリメートルまたは0.3から0.7ミリメートルの厚さでありうる。
【0036】
ガラスパネルは、適切ないずれかの寸法でありうるものであり、さまざまな実施形態において、ポリマー溶融体に接触しているぞれぞれのガラスパネルの表面積は、200、500または1000平方センチメートルを超える。別の実施形態において、ポリマー溶融体に接触しているぞれぞれのガラスパネルの表面積は、2000、5,000、10,000または20,000平方センチメートルを超える。
【0037】
本発明のさらなる実施形態において、上記実施形態のいずれかにおけるガラス板の1つ以上は、剛性ポリマーフィルム基板と取り替えられる。ポリマーフィルムは、以下で詳細に記載される。これらの実施形態において、ポリマーフィルムを使用して、ポリマー溶融体が射出される空間に対して1つの境界を形成する。ポリマーフィルムは、ガラスと同様に、金型によって通常支持される。得られたグレージング構築体、ガラス/中間層/ポリマーフィルムは、バイレイヤとして知られ、多くの有用な用途を有する。
【0038】
さらなる実施形態において、2つのポリマーフィルムが剛性基板として使用され、ポリマーフィルム/中間層/ポリマーフィルム実施形態を形成する。
【0039】
別の実施形態において、1つ以上のガラス層が、アクリル(例えばPlexiglas(登録商標))、ポリカーボネート(例えばLexan(登録商標))およびグレージングとして従来使用されているこの他のプラスチックなどの、厚い剛性プラスチック層と取り替えられる。
【0040】
別の実施形態において、最初の射出の間にまたは次のステップとしてのどちらかで、積層板の外面に追加の射出が行われる。この第2の射出の目的は、追加のポリマーフィルムまたは構成成分を付着させて、最終部品の機能性を高めることである。例えば、自動車用グレージングにおいて、ミラーボタン、マウンティングクリップまたはガスケッティングは、部品の上に射出されうる。
【0041】
本発明のさまざまな実施形態において、所与の距離だけ隔てられた、通常は互いに平行なガラスの2層から始まる多層ガラスパネルの形成は、加熱されたガラス、低分子量ポリマーおよび多数の射出点という特徴のいずれか1つまたはこれらの組合せに加えて、圧縮を用いて達成される。ガラス層の間の最初の間隙は、最終多層ガラス製品の2つの層を隔てることになる間隙より大きい。次いで、ポリマー溶融体が2つのガラス層の間の空間に射出される。射出される溶融体の全体の量は、いくつかの実施形態においては、仕上がり部品のガラスの間の間隙を完全に充満するのに十分な量であり、したがって、最初の間隙全体を充満するには不十分である。溶融射出に続いて、ガラス層を互いに向き合う方向に圧縮し、層間の空間を所望の仕上がり仕様にまで減少させるような仕方で、2つのガラス層の一方または両方の外面に力を加える。この圧縮ステップの間、ポリマー溶融体は、2つの内面上で両方のガラス層と接触している連続層に形成される。
【0042】
射出/圧縮工程は、図1から4に模式的に示されている。図1において、ポリマー溶融体射出の準備ができている、ガラスの2層12、14が、10で全般的に示されている。ガラスの2つの層の間に形成された空間は、16として示されている。図2は、従来の射出成形の限界を示すものであり、ポリマーを空間16中に射出するポリマー射出装置20と共に、図1のガラスの2層12、14を示す。図2に示されているように、ガラスの2層12、14の間の距離が比較的小さいので、射出されたポリマーの前面18は、空間の末端まで押し込まれることができず、空間の一部が空気または不完全なポリマー層を有することになる。明らかに、このような結果は望ましくない。この流れの限界は、多層グレージングの射出成形の開発に対する障害となってきた。
【0043】
図3は、本発明の射出工程を示しており、上述の3つの特徴(低分子量ポリマー、2つ以上のゲートおよび加熱されたグレージング基板)の内の1つ以上を提供することに加えて、ガラスの2層12、14の間の距離dが、最初の射出ステップの間に増大されている。層12、14の間の距離が追加されたので、射出装置20は、ポリマー溶融体のいかなる空気間隙もまたは不連続部分も有することなしに、全空間16の隅々にわたって、ポリマー溶融体を効果的に射出することができる。図4は、ガラスの層12、14が圧縮されて、ガラス層の間の距離を「d」未満のある距離に減少させる、圧縮ステップを示す。圧縮ステップの間に、余分なポリマー溶融体は、ガラス層12、14のエッジの周辺のいずれかの開口部を通って追い出される。余分な、追い出されたポリマーは、ポリマー溶融体が冷却され、凝固した後、簡単な切り落としにより、除去されうる。
【0044】
空間の幅「d」およびガラス層の圧縮の量は、最終製品のポリマー中間層の所望の厚さおよびポリマー溶融体の加工処理パラメータおよび使用される射出装置に基づいて選択されることになる。最終製品のポリマー層の厚さは、2つのガラス層の間の、最終の低減された距離にほぼ相当し、いくらかの加工変動量を含む。
【0045】
本発明のさまざまな実施形態において、距離「d」は、0.25ミリメートルから10.0ミリメートルでありうる。さまざまな実施形態において、距離「d」は、圧縮により、元の距離「d」の75%未満、50%未満または25%未満に低減されうる。さまざまな実施形態において、距離「d」は、0.1ミリメートルから7.5ミリメートルの間で低減される。
【0046】
本発明のポリマー溶融体は、適切ないずれのポリマーをも含むことができ、好ましい実施形態においては、ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む。好ましい実施形態において、好ましいポリマーは、ポリ(ビニルブチラール)またはポリウレタンである。好ましい実施形態において、好ましいポリマーは、ポリ(ビニルブチラール)である。好ましい実施形態において、好ましいポリマーは、ポリウレタンである。
【0047】
ポリ(ビニルブチラール)をポリマー溶融体のポリマー構成成分として含む、本明細書において示される本発明の実施形態のいずれにおいても、ポリマー構成成分が、ポリ(ビニルブチラール)からなるまたは本質的になる別の実施形態が含まれる。これらの実施形態において、可塑剤を含む、本明細書において開示される添加物の、種々の異なる種類のいずれでも、ポリ(ビニルブチラール)からなるまたは本質的になるポリマーを有するポリマー溶融体と共に、使用されうる。
【0048】
一実施形態において、ポリマー溶融体は、部分的にアセタール化されたポリ(ビニルアルコール)に基づくポリマーを含む。さらなる実施形態において、ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)および1種以上の種類の別のポリマーを含む。好ましい範囲、値、および/または方法が、ポリ(ビニルブチラール)について(例えば、これに限らないが、可塑剤、構成成分の百分率、厚さおよび特性増強添加物について)明確に与えられる、本明細書におけるセクションのいずれにおいても、これらの範囲は、該当する場合、ポリマー溶融体における構成成分と同様に有用な、本明細書において開示される別のポリマーおよびポリマーブレンドに対しても当てはまる。
【0049】
ポリ(ビニルブチラール)を含む実施形態の場合、ポリ(ビニルブチラール)は、適切ないずれの方法によっても製造されうる。ポリ(ビニルブチラール)を製造するための適切な方法の詳細は、当分野の技術者には公知である(例えば、米国特許第2,282,057号明細書および第2,282,026号明細書を参照されたい)。一実施形態において、B.E Wade(2003)により、Encyclopedia of Polymer Science & Technology、第3版、第8巻、381−399頁、におけるVinyl Acetal Polymersに記載されている溶媒法を使用することができる。別の実施形態において、ここに記載されている水の方法を使用することができる。ポリ(ビニルブチラール)は、例えば、Solutia Inc.、セントルイス、ミズリー、からButvar(商標)樹脂として、種々の形態で市販されている)。
【0050】
さまざまな実施形態において、ポリ(ビニルブチラール)を含むポリマー溶融体を形成するために使用される樹脂は、ポリ(ビニルアルコール)として計算された10から35重量%(wt.%)のヒドロキシル基、ポリ(ビニルアルコール)として計算された13から30wt.%のヒドロキシル基またはポリ(ビニルアルコール)として計算された15から22wt.%のヒドロキシル基を含む。樹脂は、また、ポリ酢酸ビニルとして計算された、15wt.%未満の残留エステル基、13wt.%、11wt.%、9wt.%、7wt.%、5wt.%または3wt.%未満の残留エステル基を含むことができ、残部は、アセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであり、場合によって、少量の別のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基を含む(例えば、米国特許第5,137,954号明細書を参照されたい)。
【0051】
酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよびマグネシウム塩を含む、さまざまな接着調整剤を、本発明のポリマー溶融体中で使用することができる。本発明のこれらの実施形態において使用されうるマグネシウム塩には、これに限らないが、米国特許第5,728,472号明細書において開示されたもの、例えば、サリチル酸マグネシウム、ニコチン酸マグネシウム、マグネシウムジ−(2−アミノベンゾエート)、マグネシウムジ−(3−ヒドロキシ−2−ナフトエート)およびマグネシウムビス(2−エチルブチレート)(ケミカルアブストラクト番号第79992−76−0)が含まれる。本発明のさまざまな実施形態において、マグネシウム塩は、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)である。
【0052】
添加剤をポリマー溶融体に混合させて、最終の多層グレージング製品の性能を増強することができる。このような添加物には、これに限らないが、以下の薬剤:当技術分野で知られているような、ブロッキング防止剤、可塑剤、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、酸化防止剤、流動改質剤、補強充填材、衝撃改質剤、難燃剤、IR吸収剤および前記添加物の組合せなどが含まれる。好ましい実施形態において、本発明のポリマー溶融体には、1つ以上の潤滑剤、流動改質剤、光安定剤、離型剤または熱安定剤が含まれる。
【0053】
本発明のポリマー溶融体のさまざまな実施形態において、ポリマー溶融体は、樹脂100部当たり、5から60、25から60、5から80、10から70または20から80部(phr)の可塑剤を含むことができる。勿論、特定の用途に対して適切な、別の量を使用することができる。いくつかの実施形態において、可塑剤は、20個未満、15個未満、12個未満または10個未満の炭素原子の炭化水素のセグメントを有する。
【0054】
可塑剤の量を調節して、溶融体から形成されたポリ(ビニルブチラール)層のガラス転移温度(T)に変化を与えることができる。一般に、より多量の可塑剤が添加されると、Tが低下する。本発明の溶融体から形成されたポリ(ビニルブチラール)ポリマー中間層は、例えば、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下および15℃以下のTを有することができる。
【0055】
適切ないずれの可塑剤でも、ポリマー溶融体を形成するために、本発明のポリマー樹脂に添加されうる。本発明のポリマー溶融体中で使用される可塑剤は、特に多塩基酸または多価アルコールのエステルを含む。適切な可塑剤には、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルおよびノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、ポリマー可塑剤(油変性セバシン酸アルチド樹脂など)、米国特許第3,841,890号明細書に開示されたホスフェートとアジペートの混合物および米国特許第4,144,217号明細書に開示されたアジペートおよび前述のものの混合物および組合せが含まれる。使用されうる別の可塑剤は、米国特許第5,013,779号明細書に開示されたような、CからCのアルキルアルコールおよびCからC10のシクロアルコールおよびヘキシルアジペートなどのCからCのアジペートエステルから製造された混合アジペートである。さまざまな実施形態において,使用される可塑剤は、ジヘキシルアジペートおよび/またはトリエチレングリコールジ−2エチルヘキサノエートである。
【0056】
さまざまな実施形態は、米国特許第4,614,781号明細書、米国特許第5,415,909号明細書、米国特許第5,352,530号明細書および米国特許第4,935,470号明細書に記載されたような、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)とも呼ばれる)を含む。さまざまな実施形態には、例えば脂肪族イソシアネートポリエーテルを主成分とするポリウレタン(Noveon Inc.のThermedics Polymer Productから入手できる)を含む、ポリウレタンが含まれる。部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む実施形態において、好ましいイオノマーは、Surlyn(登録商標)であり、DuPontから入手できる。溶融体を形成する間に、UV安定剤およびガラスに対する高い接着性を付与する機能性化学薬品などの別の添加物を、ポリウレタン樹脂中に組み込むことができる。
【0057】
好ましい実施形態において、係属中の米国特許出願第11/264,510号明細書に開示されたものなどの、可塑化ポリ(ビニルブチラール)ペレットを使用して、ポリマー溶融体を形成する。このようなペレットをホッパから従来の射出成形機へ供給して、ポリ(ビニルブチラール)溶融体を製造することができる。
【0058】
本明細書においては、「ポリマーフィルム」は、剛性基板または性能増強層として機能する比較的薄い、剛性ポリマー層を意味する。ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムがこれ自体で、必要な耐貫通性およびガラス保持特性を多層グレージング構造物に付与することはないという点で、ポリマー溶融体から形成される中間層とは異なる。ポリ(エチレンテレフタレート)は、ポリマーフィルムとしてもっとも普通に使用される。
【0059】
さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層は、0.013mmから0.20mm、好ましくは0.025mmから0.1mmまたは0.04から0.06mmの厚さを有する。ポリマーフィルム層は、場合によって表面処理または被覆されて、接着性または赤外線反射などの、1つ以上の特性を改善することができる。これらの機能性能層は、例えば、太陽光に曝された場合、太陽赤外線を反射し、可視光線を透過するための多層積層体を含む。この多層積層体は、当技術分野において公知であり(例えば、国際公開第88/01230号パンフレットおよび米国特許第4,799,745号明細書を参照されたい。)、例えば、1つ以上の、オングストローム厚の金属層および1つ以上の(例えば、2つの)、順番に堆積され、光学的に協同する誘電体層を含むことができる。また、知られているように(例えば、米国特許第4,017,661号明細書および第4,786,783号明細書を参照されたい。)、金属層は、関連したガラス層の霜を取り除きまたは曇りを取り除くために、場合によって電気抵抗加熱されうる。
【0060】
本発明に使用することができ、米国特許第6,797,396号明細書に記載されている、さらなる種類のポリマーフィルムは、金属層により引き起こされうる干渉を生じることなく、赤外線を反射する機能を果たす、多数の非金属層を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、ポリマーフィルム層は、光学的に透明であり(すなわち、層の片面に隣接する物体を、この層の別の面からこの層を通して見る特定の観察者の眼で心地よく見ることができる。)、通常、隣接するいずれのポリマー層よりも大きな、いくつかの実施形態においては著しく大きな引張り係数を、組成に無関係に有する。さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層は熱可塑性材料を含む。適切な特性を有する熱可塑性材料の中には、ナイロン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、酢酸および三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマーおよびコポリマーなどがある。さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層は、名高い特性を有するリストレッチ熱可塑性フィルムなどの、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)グリコール(PETG)を含む材料を含む。さまざまな実施形態において、ポリ(エチレンテレフタレート)が使用され、さまざまな実施形態において、ポリ(エチレンテレフタレート)は二軸方向に引き伸ばされて強度を改善し、熱安定化されて、高温に供された場合、低伸縮特性をもたらす(例えば、150℃で30分の後、両方向において2%未満の伸縮)。
【0062】
本発明に使用されうるポリ(エチレンテレフタレート)フィルムのためのさまざまな被覆および表面処理技法は、公開された欧州出願第0157030号明細書に開示されている。本発明のポリマーフィルムは、また、当技術分野で知られているような、ハードコートおよび/または防曇層を含むこともできる。
【0063】
本発明の射出成形法には、多くの利点が存在する。例えば、ポリマーシートの製造、保管および取り扱いの際に遭遇する困難が回避され、コストを大幅に低減させることができる。加えて、本明細書において開示された射出成形工程は、例えば、多くの加熱ステップ、オートクレーブ条件およびこの他の手順的に困難なステップを必要とする可能性のある、現存する多ステップ工程より、遙かに簡単である。
【実施例1】
【0064】
次の表は、220℃の溶融体温度に加熱された、40,000から100,000の分子量範囲を有する低分子量の可塑化ポリ(ビニルブチラール)の射出の、射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示す。ポリマー溶融体は、充満されるべき部品の長いエッジの1つに沿って均等に間隔を空けて配置された、一連の51の射出口から供給される。キャビティの大きさは、1250mm幅×750mm長さ×1.2mm厚さである。射出表面は、50℃に加熱される。シミュレーションのために、射出時間はほぼ5秒であると想定され、装置により供給される最大射出圧力は1.72×10パスカル(1平方インチ当たり、25,000ポンド)に限定される。この、およびこの他の実施例のシミュレーションを、Moldflow(登録商標)ソフトウエアパッケージ(Moldflow Corporation、フレーミングハム、マサチューセッツ)を使用して実行した。
【0065】
【表1】

【実施例2】
【0066】
次の表は、実施例1の場合と同じポリ(ビニルブチラール)(ただし射出表面が100℃に加熱されている)の射出の、射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示す。
【0067】
【表2】

【実施例3】
【0068】
次の表は、実施例1の場合と同じポリ(ビニルブチラール)(ただし射出表面が150℃に加熱されている)の射出の、射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示す。
【0069】
【表3】

【実施例4】
【0070】
次の表は、実施例1の場合と同じポリ(ビニルブチラール)(ただし射出表面が200℃に加熱されている)の射出の、射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示す。
【0071】
【表4】

【実施例5】
【0072】
上記4つの実施例の、時間と共に上昇する射出圧力を、図5に示す。
【実施例6】
【0073】
上記4つの実施例の、時間と共に充満されるモールド体積を、図6に示す。
【実施例7】
【0074】
次の表は、1.8ミリメートルの間隙への、低分子量のポリ(ビニルブチラール)(「低MW PVB」)の射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示す。低分子量のポリ(ビニルブチラール)は、40,000から100,000の分子量範囲を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)を指す。調合物は、射出する前に220℃の溶融体温度に加熱される。ポリマー溶融体は、単一ゲートからキャビティに供給される。キャビティは、1250ミリメートル幅×750ミリメートル長さであり、ゲートは、1250ミリメートルの側のエッジの中心に存在する。射出表面は、50℃に加熱される。シミュレーションのために、射出時間はほぼ5秒であると想定され、装置により供給される最大射出圧力は1.72×10パスカル(1平方インチ当たり、25,000ポンド)に限定される。
【0075】
【表5】

【実施例8】
【0076】
次の表は、実施例7の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、キャビティは2.8ミリメートル幅を有する:
【0077】
【表6】

【実施例9】
【0078】
次の表は、実施例7の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、ポリ(ビニルブチラール)は、「標準の」ポリ(ビニルブチラール)(「Std.PVB」)であり、これは150,000から300,000ダルトンの分子量範囲を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)を意味する。
【0079】
【表7】

【実施例10】
【0080】
次の表は、実施例9の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、キャビティは2.8ミリメートル幅を有する:
【0081】
【表8】

【実施例11】
【0082】
実施例7から10における上記データの、時間経過に伴う射出圧力のグラフを、図7に示す。
【実施例12】
【0083】
実施例7から10における上記データの、時間経過に伴うモールド充満パーセントのグラフを、図8に示す。
【実施例13】
【0084】
次の表は、単一ゲートを通って、1.2ミリメートルの厚さのキャビティに射出される前に、220℃の溶融体温度に加熱された、40,000から100,000の分子量範囲を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)を射出するための、射出成形流動特性の、コンピュータで作成されたモデリングを示す。キャビティの大きさは、1250ミリメートル幅×750ミリメートル長さである。単一ゲートは、1250ミリメートルの側のエッジの中心に存在する。射出表面は、1250℃に加熱される。シミュレーションのために、射出時間はほぼ5秒であると想定され、装置により供給される最大射出圧力は1.72×108パスカル(1平方インチ当たり、25,000ポンド)に限定される。
【0085】
【表9】

【実施例14】
【0086】
次の表は、実施例13の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、第2ゲートが使用されており、この第2ゲートは第1ゲートの反対側に設置され、第2の1250mmのエッジの中心に置かれている:
【0087】
【表10】

【実施例15】
【0088】
次の表は、実施例14の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、第3および第4ゲートが使用されている。ゲートは、2組のゲートが、向かい合う長いエッジのそれぞれに沿って、互いに向かい合うように配置される。ゲート1およびゲート2は、したがって、第1の1250のmmエッジに沿って416mmおよび833mmの地点に設置され、一方、ゲート3およびゲート4は、第2の1250mmのエッジの416mmおよび833mmの地点に設置される。
【0089】
【表11】

【実施例16】
【0090】
次の表は、実施例15の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、第5および第6ゲートが使用されている。ゲートは、2組のゲートが、向かい合う長いエッジのそれぞれに沿って、互いに向かい合うように配置される。ゲート1、2および3は、したがって、第1の1250mmのエッジに沿って312.5mm、625mmおよび973.5mmの地点に設置され、一方、ゲート4、5および6は、第2の1250mmのエッジの312.5mm、625mmおよび973.5mmの地点に設置される。
【0091】
【表12】

【実施例17】
【0092】
実施例13から16における上記データの、時間経過に伴う射出圧力のグラフを図9に示す。
【実施例18】
【0093】
実施例13から16における上記データの、時間経過に伴うモールド充満パーセントのグラフを図10に示す。
【実施例19】
【0094】
次の表は、50℃の温度に加熱され、1.8ミリメートルの間隙を有するガラス板の間への射出の、射出成形流動特性のコンピュータで作成したモデリングを示す。40,000から100,000の分子量範囲を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)が、射出の前に、220℃の溶融体温度に加熱される。ガラス板の間のキャビティの大きさは、1250mm幅×750mm長さである。溶融体は、1250mmの側のエッジの中心に置かれた単一ゲートを通って供給される。シミュレーションのために、射出時間はほぼ5秒に想定され、装置により供給される最大射出圧力は1.72×108パスカル(1平方インチ当たり、25,000ポンド)に限定される。
【0095】
【表13】

【実施例20】
【0096】
次の表は、実施例19の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、キャビティは2.8ミリメートル幅を有する:
【0097】
【表14】

【実施例21】
【0098】
次の表は、実施例19の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示すが、ガラス板は200℃に加熱される:
【0099】
【表15】

【実施例22】
【0100】
次の表は、実施例19の場合と正確に同じの射出成形流動特性のコンピュータで作成されたモデリングを示しており、ガラス板は200℃に加熱され、キャビティは2.8ミリメートルの間隙を有する:
【0101】
【表16】

【実施例23】
【0102】
実施例19から22における上記データの、時間経過に伴う射出圧力のグラフを、図11に示す。
【実施例24】
【0103】
実施例19から22における上記データの、時間経過に伴うモールド充満パーセントのグラフを、図12に示す。
【0104】
本発明を、例示的な実施形態を参照して説明してきたが、当分野の技術者なら、本発明の範囲を逸脱することなく、さまざまな変化を加えうることおよびそれらの要素を同等物により置換しうることを理解するはずである。加えて、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多くの変更を加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させることができる。したがって、本発明は、本発明を実行するために企図された最善の様態として開示された、特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に入るすべての実施形態を含むものであることが意図されている。
【0105】
さらに、本発明のいずれの単独構成成分に与えられた、範囲、値または特性のいずれでも、本発明の別の構成成分のいずれの範囲、値または特性とも、交換可能な場合は交換して使用し、本明細書全体を通じて与えられたように、構成成分のそれぞれについて範囲の定められた値を有する、実施形態を形成しうることが理解されよう。例えば、適切な場合は、可塑剤の与えられた範囲のいずれかに加えて、与えられた範囲のいずれかに入る、残留ヒドロキシル含有量を含むポリマー樹脂を形成し、本発明の範囲内に存在するが、列挙するとすれば面倒なことになるはずの、多くの変形形態を形成することができる。
【0106】
要約またはいずれかの特許請求の範囲において示したいずれの図参照番号も、説明の目的だけのものであり、特許請求された本発明をいずれかの図における、いずれかの特定の実施形態に限定するものであると解釈されてはならない。
【0107】
図は、特段の指示がない限り、縮尺して描かれてはいない。
【0108】
定期刊行物の論文、特許、出願および本を含む、本明細書において参照される、それぞれの参考資料を、これによって、参照によりこの全体を本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層グレージングパネルを製造する方法であり、
2つの剛性グレージング基板を提供すること;
前記グレージング基板を互いに関連した位置に配置し、よって前記グレージング基板の間に間隙を形成すること;および
ポリマー溶融体を前記間隙中に射出し、よって多層グレージングパネルを形成すること
を含み、前記ポリマー溶融体は、150,000ダルトン未満の分子量を有するポリマーを含み、ならびに前記ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む、方法。
【請求項2】
前記分子量が100,000ダルトン未満である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記分子量が70,000ダルトン未満である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記基板がガラスである、請求項1の方法。
【請求項5】
多層グレージングパネルを製造する方法であり、
2つの剛性グレージング基板を提供すること;
前記グレージング基板を互いに関連した位置に配置し、よって前記グレージング基板の間に間隙を形成すること;および
ポリマー溶融体を前記間隙中に射出し、よって多層グレージングパネルを形成すること
を含み、前記剛性グレージング基板の一方または両方が、前記射出の前に少なくとも80℃に加熱され、ならびに前記ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む、方法。
【請求項6】
前記剛性グレージング基板の一方または両方が、前記射出の前に少なくとも150℃に加熱される、請求項5の方法。
【請求項7】
前記ポリマー溶融体がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項5の方法。
【請求項8】
前記基板がガラスである、請求項5の方法。
【請求項9】
多層グレージングパネルを製造する方法であり、
2つの剛性グレージング基板を提供すること;
前記グレージング基板を互いに関連した位置に配置し、よって前記グレージング基板の間に間隙を形成すること;および
ポリマー溶融体を前記間隙中に射出し、よって多層グレージングパネルを形成すること
を含み、少なくとも2つの分離したゲートが、前記射出のために使用され、ならびに前記ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む、方法。
【請求項10】
少なくとも4つの分離したゲートが使用される、請求項9の方法。
【請求項11】
前記ポリマー溶融体がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項9の方法。
【請求項12】
前記基板がガラスである、請求項9の方法。
【請求項13】
多層グレージングパネルを製造する方法であり、
2つの剛性グレージング基板を提供すること;
前記グレージング基板を互いに関連した位置に配置し、よって前記グレージング基板の間に間隙を形成すること;および
ポリマー溶融体を前記間隙中に射出し、よって多層グレージングパネルを形成すること
を含み、
前記ポリマー溶融体が、150,000ダルトン未満の分子量を有するポリマーを含み、
前記剛性グレージング基板の一方または両方が、前記射出の前に少なくとも80℃に加熱され、
少なくとも2つの分離したゲートが、前記射出のために使用され、および
前記ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含む、方法。
【請求項14】
前記分子量が100,000ダルトン未満であり、前記剛性グレージング基板の一方または両方が、前記射出の前に少なくとも150℃に加熱され、ならびに少なくとも4つのゲートが使用される、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ポリマー溶融体がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項13の方法。
【請求項16】
前記基板がガラスである、請求項13の方法。
【請求項17】
多層グレージングパネルを製造する方法であり、
2つの剛性グレージング基板を提供すること;
前記グレージング基板を互いに関連した位置に配置し、よって前記グレージング基板の間に間隙を形成すること;および
ポリマー溶融体を前記間隙中に射出し、よって多層グレージングパネルを形成すること
を含み、
前記ポリマー溶融体は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーまたは部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマーを含み;ならびに
A)前記ポリマー溶融体は、150,000ダルトン未満の分子量を有するポリマーを含み;
B)前記剛性グレージング基板の一方または両方が、前記射出の前に少なくとも80℃に加熱され;または
C)少なくとも2つの分離したゲートが、前記射出のために使用される、
方法。
【請求項18】
A)、B)およびC)の中のちょうど2つを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ポリマー溶融体がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項17の方法。
【請求項20】
前記基板がガラスである、請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63662(P2013−63662A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−248974(P2012−248974)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【分割の表示】特願2009−525744(P2009−525744)の分割
【原出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】