説明

射出成形機における樹脂漏れセンサ装置

【課題】樹脂漏れの発生の可能性が高い金型構成部材同士との接合面に通ずる溶融樹脂の流通路の接続部より漏れる樹脂を流動抵抗の低い溝に導いてセンサにより金型内部の温度と樹脂温度の温度差を利用して感知するようにした射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【解決手段】加熱溶融樹脂を射出成形させて金型内の流通路2を介して流通させて、ゲートよりキャビティ内に一定量宛供給するようにした射出成形機において、組込まれる各部材の接合部の前記流通路2の接合面の開口側に、前記流通路2を包囲する凹陥溝5を設け、この凹陥溝5と通ずる樹脂通路6を設け、かつ部材の外部にセンサ7を配設して、前記流通路2より漏出する樹脂を集合導出させて検知して成ることを特徴とする射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形時の樹脂漏出を検知する射出成形機における樹脂漏れセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の射出成形機にあっては、射出成形操作時に、装置機械の組立組成の不備,作動中の位置ずれなど不本意な樹脂漏れが不可避と謂われている。
【0003】
そして、この樹脂漏れに対し、漏れ状態を検知する方法,装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−127195号公報
【特許文献2】特開平8−90596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の先行技術にあって、特許文献1は、射出成形時の圧力値を把握し、その射出圧力値の低下を前回までの射出圧力値の平均値と対比して、検知することによって、樹脂漏れがあると見做して早期発見を可能とすると共に、特許文献2は金型の樹脂注入口とノズルとの間からの樹脂漏れを、金型と反対方向へ移動する射出装置の移動量を検知とすることによって判定するものであった。
【0006】
いずれにしろ、前者にあっては、成形品の原料樹脂の消費量と、予め計数した数値との差によって変化が認められた場合に、樹脂漏れであると認定しており、具体的な樹脂漏れ箇所は特定されないという問題があり、後者にあってはノズルと樹脂注入口との間の限られた場所での樹脂漏れしか検知できないという問題があった。
【0007】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、樹脂漏れの発生の可能性が高い金型構成部材同士との接合面、即ち、スプルーブッシュとマニホールド,親マニホールドと子マニホールド,マニホールドとホットランナーなどの部材間の接合面に通ずる溶融樹脂の流通路の接続部より漏れる樹脂を、流動抵抗の低い溝に導いてセンサにより金型内部の温度と樹脂温度の温度差を利用して感知するようにした射出成形機における樹脂漏れセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0009】
(1)加熱溶融樹脂を射出成形させて金型内の流通路を介して流通させて、ゲートよりキャビティ内に一定量宛供給するようにした射出成形機において、組込まれる各部材の接合部の前記流通路の接合面の開口側に、前記流通路を包囲する凹陥溝を設け、この凹陥溝と通ずる樹脂通路を設け、かつ部材の外部にセンサを配設して、前記流通路より漏出する樹脂を集合導出させて検知して成ることを特徴とする射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【0010】
(2)流通路を挟んで隣り合う互いに接合する部材のいずれかに、凹陥溝,樹脂通路を設けて成ることを特徴とする前記(1)記載の射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【0011】
(3)センサは、熱電対素子より成ることを特徴とする前記(1)記載の射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本来金型内を流通する高温加熱溶融樹脂は、流通路に沿って円滑に射出成形操作が行われるが、金型を構成する多数の部材との接合箇所の流通路の接合部での不良発生,異常発生などで高温加熱溶融樹脂が漏出すると、外方の包囲された凹陥溝内に流出し、さらに樹脂通路に沿って外方へ導出されてセンサにより自動的に検知され、作動停止,警報発生,漏洩箇所表示など、一連の警戒情報を得ることができ、常に安全な射出成形操作を行わせることができると共に、適正な射出成形を行って高品質の成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例を示す基本構成の断面図
【図2】同上のII−II線断面図
【図3】感熱用のセンサの取付構造の一例を示す斜視図
【図4】射出成形機にあって、マニホールドに対してバルブピン方式とボディヒータ本体方式とを併設した状態の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0015】
図1および図2は本発明に係る最も簡単な概略図を示すもので、1はマニホールドを示し、分岐される構造を説明する都合上、単に一本の流通路2のみとしている。3は、前記マニホールド1に基端を固着させた、前記流通路2と通ずる流通路と、バルブ開閉システムを設けたホットランナー本体、4は前記ホットランナー本体3を固着したキャビティプレートを示す。
【0016】
なお、図4に示すように、ホットランナー本体3と異なる斜めランナーを有するホットランナー本体3aについても全く同一である。
【0017】
5は、前記マニホールド1のホットランナー本体3またはホットランナー本体3aとの接合面1aにおいて、流通路2の外周に設けた環状の凹陥溝、6はこの凹陥溝5と通ずる樹脂通路、7はマニホールド1の外部において、前記流通路2の開口面に配設されるセンサを示し、例えば熱電対などを用いて熱エネルギーを感知して必要な電流を発生して感熱信号を発信できるようになっている。具体的には金型内の温度と、漏洩樹脂温度の温度差を利用して感知するものや、または他のセンサ,リミットスイッチ,光電管などを用いることができる。
【0018】
例えば図3に示すように、樹脂通路6のマニホールド1側の開口端に断熱板A8を付設し、さらに断熱板B9を介在させてセンサ7を固着し、電気通信線10と接続するものである。そして、この電気通信線10よりの検知信号によりコントローラに基づく作動停止,各種警報を働かせて緊急措置をとることができる。
【0019】
なお、前記凹陥溝5、特に樹脂通路6は流動抵抗を低くして漏洩樹脂の流通を促すよう配慮する。併せて、図面において符号11はゲート、12はキャビティを示す。
【0020】
以上は単にマニホールド1とホットランナー本体3或いはホットランナー本体3aとの流通路2の接続箇所のみの樹脂漏れ検知の構成を示しているが、同様に流通路2が設けられる親マニホールドと子マニホールドなど金型各部の各接続箇所において、上記構成の環状の凹陥溝5、これに通ずる樹脂通路6を設けると共に、併せて樹脂通路6の出口側に各種のセンサ7を付設することができる(図示せず)。
【0021】
さらに、両部材の接合面の一方の側に設けられる凹陥溝とこの凹陥溝と通ずる樹脂通路はいずれの側に設けても差し支えない。
【0022】
本発明によれば、以上述べたように、加熱溶融樹脂の射出成形操作の過程において、金型の各部接続箇所、特に凹陥溝5を設けた接続箇所の異常の発生によって高温の溶融樹脂が流通路2より溢出して、漏れた場合は外周の環状に設けられた凹陥溝5内に入り、さらにこの凹陥溝5と通ずる樹脂通路6に導入され、外部のセンサ7と接触するので、直ちに樹脂漏れが検知され、射出成形操作の停止,警防の発生などすべての緊急操作が作動して安全性を確保できる。
なお、センサ7は熱電対だけでなく、他の好みのセンサを用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 マニホールド
1a 接合面
2 流通路
3 ホットランナー本体
3a ホットランナー本体
4 キャビティプレート
5 凹陥溝
6 樹脂通路
7 センサ
8 断熱板A
9 断熱板B
10 電気通信線
11 ゲート
12 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融樹脂を射出成形させて金型内の流通路を介して流通させて、ゲートよりキャビティ内に一定量宛供給するようにした射出成形機において、組込まれる各部材の接合部の前記流通路の接合面の開口側に、前記流通路を包囲する凹陥溝を設け、この凹陥溝と通ずる樹脂通路を設け、かつ部材の外部にセンサを配設して、前記流通路より漏出する樹脂を集合導出させて検知して成ることを特徴とする射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【請求項2】
流通路を挟んで隣り合う互いに接合する部材のいずれかに、凹陥溝,樹脂通路を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。
【請求項3】
センサは、熱電対素子より成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機における樹脂漏れセンサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−20336(P2011−20336A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166820(P2009−166820)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(390029218)世紀株式会社 (11)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】